(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-25460(P2017-25460A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】抄紙用フェルト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21F 7/08 20060101AFI20170113BHJP
【FI】
D21F7/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】書面
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-155470(P2015-155470)
(22)【出願日】2015年7月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000180597
【氏名又は名称】イチカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】荻原 泰之
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055CE38
4L055CE39
4L055EA15
4L055EA16
4L055FA23
(57)【要約】
【課題】 搾水性、平滑性、走行安定性が改善された抄紙用フェルト及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 抄紙用フェルトの幅よりも狭い帯状体を螺旋状に巻回し、帯状体の側縁部同士を接合し、形成される層を少なくとも一層有し、該基布層と少なくとも一層のバット層が一体化された抄紙用フェルトにおいて、帯状体の経方向に等間隔の目印が配置され、隣接する帯状体の目印が一直線となるように、帯状体の側縁同士を接合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布層が、複数の地経糸、複数の地緯糸、第一側縁、第二側縁を有する抄紙用フェルトの幅よりも狭い幅の帯状体を、前記第一側縁及び前記第二側縁が隣接するように螺旋状に巻回することによって、側縁同士を接合し、形成される層を少なくとも一層有し、該基布層と少なくとも一層のバット層が一体化された抄紙用フェルトにおいて、複数の目印が前記帯状体の経方向において等間隔で配置されたことを特徴とする、抄紙用フェルト。
【請求項2】
前記目印が、前記地緯糸と異なる色彩の緯糸を配置することによって得られる目印である、請求項1に記載の抄紙用フェルト。
【請求項3】
前記異なる色彩の緯糸の材質と前記地緯糸の材質が同じ材質である、請求項2に記載の抄紙用フェルト。
【請求項4】
前記異なる色彩の緯糸の繊度と前記地緯糸の繊度が同じ繊度である、請求項2または3に記載の抄紙用フェルト。
【請求項5】
前記目印が、一本の前記異なる色彩の緯糸を配置することによって得られる目印である、請求項2から4のいずれか一項に記載の抄紙用フェルト。
【請求項6】
前記目印が、一本の前記異なる色彩の緯糸を、一本の前記地緯糸の代替として、前記帯状体と同じ組織で配置することによって得られる目印である、請求項2から5のいずれか一項に記載の抄紙用フェルト。
【請求項7】
前記目印が、カタン糸である、請求項1に記載の抄紙用フェルト。
【請求項8】
前記カタン糸の繊度が、450d以下である、請求項7に記載の抄紙用フェルト。
【請求項9】
前記目印が、蓄光糸である、請求項1に記載の抄紙用フェルト。
【請求項10】
前記目印が、発光糸である、請求項1に記載の抄紙用フェルト。
【請求項11】
前記目印が、前記帯状体の一部を着色することによって得られる目印である、請求項1に記載の抄紙用フェルト。
【請求項12】
前記目印の間隔が、1cm〜500cmの範囲の等間隔である、請求項1から11のいずれか一項に記載の抄紙用フェルト。
【請求項13】
前記目印の間隔が、2cm〜100cmの範囲の等間隔である、請求項1から12のいずれか一項に記載の抄紙用フェルト。
【請求項14】
前記目印の間隔が、5cm〜50cmの範囲の等間隔である、請求項1から13のいずれか一項に記載の抄紙用フェルト。
【請求項15】
基布層が、複数の地経糸、複数の地緯糸、第一側縁、第二側縁を有する抄紙用フェルトの幅よりも狭い帯状体を、前記第一側縁及び前記第二側縁が隣接するように螺旋状に巻回することによって、側縁同士を接合し、形成される層を少なくとも一層有し、該基布層と少なくとも一層のバット層が一体化された抄紙用フェルトの製造方法であって、複数の目印が前記帯状体の経方向において、等間隔で配置され、隣接する帯状体の前記目印が、帯状体の幅方向に一直線上に配置されることを特徴とする、抄紙用フェルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機に使用される抄紙用フェルト(以下単に「フェルト」ということもある。)に関する。
【0002】
紙の原料から水分を除去する抄紙機は、一般的にワイヤーパートとプレスパートとドライヤーパートとを備えている。これらワイヤーパート、プレスパートおよびドライヤーパートは、湿紙の搬送方向に沿ってこの順番に配置されている。湿紙は、抄紙機の進行方向(MD方向:Machine Direction)に垂直な方向(CMD方向:Cross Machine Direction)に一定の幅をもって帯状に抄紙機内を移動し、ワイヤーパート、プレスパート、およびドライヤーパートそれぞれに取り付けられた抄紙用具に次々と受け渡されながら搬送されるとともに搾水され、最終的にはドライヤーパートで乾燥される。
【0003】
プレスパートに配置されたプレス装置は、湿紙の搬送方向に沿って直列に並設された複数のプレス装置を具備する。各プレス装置は、無端状のフェルト、あるいは有端状のフェルトを抄紙機上で連結し無端状にしたフェルトと、当該フェルトそれぞれの一部を間に挟むように上下に対向配置される一対のロール(即ち、ロールプレス)あるいはロールおよびシューを内包する円筒ベルト(即ち、シュープレス)とを有しており、略同一速度で同一方向に走行するフェルトにより搬送されてくる湿紙を、該フェルトと共にロールとロールあるいはロールとシューを内包する円筒ベルトとでプレス・加圧することにより、該湿紙から水分を連続的に脱水する。
【0004】
プレス装置に用いられるフェルトの要求機能としては、搾水性、平滑性、走行安定性等がある。搾水性とは、湿紙に含まれる水分を除去することである。この機能を果たすためには、フェルトが優れた圧縮回復特性を有すること、即ち、フェルト無加圧時に、フェルト中にこの水分を除去するための空間(ボイドボリューム)が存在し、フェルト加圧時に、フェルトの密度が最大となって、この空間の容積が減少することによって、水分がフェルト外に放出されることが重要である。また、この搾水性はフェルトの使用期間中維持され、更に除去された水分が再び湿紙に戻らないこと(再湿防止)も重要である。
【0005】
平滑性とは、湿紙表面、フェルト表面(加圧下のフェルト表面も含む)の平滑性のことである。湿紙はフェルトを介して加圧されるため、フェルト表面状態が、湿紙表面に転写される。従って、湿紙の表面を平滑にするためには、フェルトの表面(加圧下のフェルトの表面も含む)を平滑にしなければならない。
【0006】
走行安定性とは、プレス装置に配置された無端状のフェルトが、片寄りおよび蛇行、並びに振動、波打ち等が発生せずに、安定して走行することである。
【0007】
新聞紙、上質紙、板紙、家庭紙などのように、紙には様々な種類があり、またこれらを製造する抄紙機にも様々な種類がある。現在、これらの紙や抄紙機に合わせて、様々な種類の抄紙用フェルトが製造されているが、一般的にこのフェルトは、基布層に不織繊維材料のバット層を一体化させることによって形成される。基布層は、例えば、モノフィラメント糸、モノフィラメント撚糸、マルチフィラメント糸またはマルチフィラメント撚糸から構成される織布でもよく、この織布は、一重品でも、多重品でもよく、またこれらを積層したラミネート構造でもよい。この糸は、一般に、抄紙用具技術分野の当業者がこの目的のために使用するポリアミド樹脂やポリエステル樹脂などの合成高分子樹脂のいずれかの押し出し成型されたもの、羊毛等の動物性繊維、綿、麻等の植物性繊維を使用する。
【0008】
上記基布層には、様々な種類の織布があり、例えば、織機上で無端状となるように製織したり(袋織)、平織された有端状の織布の端部同士を縫合して無端状としたり、また、有端状織布の二つの機械横断方向の端部にシームループを形成し、抄紙機上で両端部のシームループを噛み合わせ、この共通孔内に芯線を挿入することで、無端状としたものがある。
【0009】
いずれにしても、この基布層は、無端状の形態、または無端状の形態に継ぎ合わせが可能であり、この基布層(フェルト)の丈寸法及び巾寸法は、各抄紙機械に対応した寸法を有する。当然ながら、各抄紙機は種々の寸法を備えているため、フェルトの基布は、完全なオーダーメードで製造される。
【0010】
種々の寸法に適合させた基布層を織機で製織することは、非常に生産性が悪く、また歩留まりも悪い。これらの基布層をより効率的に製造するために、抄紙用フェルトの基布層が、抄紙用フェルトの幅寸法よりも狭い幅の帯状体を螺旋状に巻回して、帯状体の端部同士を接合し、形成された基布を、抄紙用フェルトの基布層として用いたものが提案されている(例えば特許文献1〜8)。また、抄紙用フェルトの幅寸法よりも狭い帯状体を螺旋状に巻回して、帯状体の端部同士を接合し、形成された基布を、折り畳んで、その折り目部にシームループを形成したもの(例えば特許文献9〜12)、更に、抄紙用フェルトの幅寸法よりも狭い帯状体を螺旋状に巻回して、帯状体の端部同士を接合し、形成された基布と無端状基布を積層させたもの(例えば特許文献13〜15)が提案されている。
【0011】
上記先行技術文献に開示される抄紙用フェルトの帯状体を利用した基布層は、非常に効率的に製造できるものであるが、各隣接する帯状体が抄紙用フェルトの丈寸法に一致するように螺旋状に巻回することの難易度が高く、抄紙用フェルトの幅方向(帯状体の一巻回部分ごと)で、フェルトの丈寸法にばらつきが生じる可能性があった。この結果、抄紙用フェルトの任意の部分で、密度差や目付差による搾水性や平滑性に斑が発生したり、寸法差による波打ちの発生や走行性の異常を引き起こす可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表平06−503385号公報
【特許文献2】特開平10−226978号公報
【特許文献3】特開2000−027089号公報
【特許文献4】特開2000−303378号公報
【特許文献5】特開2001−040594号公報
【特許文献6】特表2004−510896号公報
【特許文献7】特表2004−526877号公報
【特許文献8】特表2006−504873号公報
【特許文献9】特表平10−513511号公報
【特許文献10】特開2000−080585号公報
【特許文献11】特開2000−080586号公報
【特許文献12】特表2005−521807号公報
【特許文献13】特表2000−509772号公報
【特許文献14】特開2000−080584号公報
【特許文献15】特開2001−003290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、抄紙用フェルトの幅よりも狭い帯状体を、螺旋状に巻回することによって形成される層を少なくとも一層有し、該基布層と少なくとも一層のバット層が一体化された抄紙用フェルトにおいて、搾水性、平滑性、走行安定性が改善された抄紙用フェルト及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために、抄紙用フェルトの幅よりも狭い帯状体の一巻回部分ごとの抄紙用フェルトの丈寸法のばらつきをなくし、帯状体が螺旋状に巻回することによって形成された基布層の全巾に渡って、抄紙用フェルトの丈寸法が均一となることで達成でき、具体的には、以下の技術を適用したものである
【0015】
(1)基布層が、複数の地経糸、複数の地緯糸、第一側縁、第二側縁を有する抄紙用フェルトの幅よりも狭い幅の帯状体を、前記第一側縁及び前記第二側縁が隣接するように螺旋状に巻回することによって、側縁同士を接合し、形成される層を少なくとも一層有し、該基布層と少なくとも一層のバット層が一体化された抄紙用フェルトにおいて、複数の目印が前記帯状体の経方向において、等間隔で配置されたことを特徴とする、抄紙用フェルト。
【0016】
(2)前記目印が、前記地緯糸と異なる色彩の緯糸を配置することによって得られる目印である、(1)に記載の抄紙用フェルト。
(3)前記異なる色彩の緯糸の材質と前記地緯糸の材質が同じ材質である、(2)に記載の抄紙用フェルト。
(4)前記異なる色彩の緯糸の繊度と前記地緯糸の繊度が同じ繊度である、(2)または(3)に記載の抄紙用フェルト。
(5)前記目印が、一本の前記異なる色彩の緯糸を配置することによって得られる目印である、(2)から(4)のいずれか一つに記載の抄紙用フェルト。
(6)前記目印が、一本の前記異なる色彩の緯糸を、一本の前記地緯糸の代替として、前記帯状体と同じ組織で配置することによって得られる目印である、(2)から(5)のいずれか一つに記載の抄紙用フェルト。
【0017】
(7)前記目印が、カタン糸である、(1)に記載の抄紙用フェルト。
(8)前記カタン糸の繊度が、450d以下である、(7)に記載の抄紙用フェルト。
【0018】
(9)前記目印が、蓄光糸である、(1)に記載の抄紙用フェルト。
(10)前記目印が、発光糸である、(1)に記載の抄紙用フェルト。
(11)前記目印が、前記帯状体の一部を着色することによって得られる目印である、(1)に記載の抄紙用フェルト。
【0019】
(12)前記目印の間隔が、1cm〜500cmの範囲の等間隔である、(1)から(11)のいずれか一つに記載の抄紙用フェルト。
(13)前記目印の間隔が、2cm〜100cmの範囲の等間隔である、(1)から(12)のいずれか一つに記載の抄紙用フェルト。
(14)前記目印の間隔が、5cm〜50cmの範囲の等間隔である、(1)から(13)のいずれか一つに記載の抄紙用フェルト。
【0020】
(15)基布層が、複数の地経糸、複数の地緯糸、第一側縁、第二側縁を有する抄紙用フェルトの幅よりも狭い帯状体を、前記第一側縁及び前記第二側縁が隣接するように螺旋状に巻回することによって、側縁同士を接合し、形成される層を少なくとも一層有し、該基布層と少なくとも一層のバット層が一体化された抄紙用フェルトの製造方法であって、複数の目印が前記帯状体の経方向において、等間隔で配置され、隣接する帯状体の前記目印が、帯状体の幅方向に一直線上に配置されることを特徴とする、抄紙用フェルトの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
以上の構成により、本発明の抄紙用フェルトは、その基布層に、複数の地経糸、複数の地緯糸、第一側縁、第二側縁を有する抄紙用フェルトの幅よりも狭い幅の帯状体を、前記第一側縁及び前記第二側縁が隣接するように螺旋状に巻回することによって、側縁同士を接合し、形成される基布層を用いても、各巻回部分ごとの丈寸法のばらつきがなく、帯状体が螺旋状に巻回することによって形成された基布層の全巾に渡って、抄紙用フェルトの丈寸法が均一となり、搾水性、平滑性、走行安定性が改善された抄紙用フェルト及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の抄紙用フェルトの一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の抄紙用フェルトの基布層の一例及びその製法を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明による抄紙用フェルトの一例を示す斜視図である。このフェルト1は、複数の地経糸13、複数の地緯糸14、第一側縁11、第二側縁12を有する抄紙用フェルトの幅Wfよりも狭い幅Wsを有する帯状体10を、前記第一側縁11及び前記第二側縁12が隣接するように螺旋状に巻回することによって側縁同士を接合し、形成された基布層2とバット層3が一体化された抄紙用フェルト1である。なお、複数の地経糸13、複数の地緯糸14については一部についてのみ記載している。
【0024】
言うまでもないが、帯状体10の地経糸13と機械方向(MD方向)に平行なフェルト丈寸法方向には、帯状体の幅Wsとフェルト丈寸法Lで規定される一定の角度がついていることは自明である。なお、
図1においては、理解を容易とするために、バット層3の一部を省略して記載しているが、実際は、バット層3は、基布層2の少なくとも湿紙側面15の全面に均一に配置されている。また、帯状体10の経方向に配置される複数の目印についても省略している。
【0025】
また、
図1に例示したフェルトの基布層2は、帯状体10を右巻きで巻回して形成された基布層であるが、帯状体10を左巻きで巻回して形成された基布層を用いてもよい。更に、これらの積層体を基布層2として用いることもできる。更にまた、基布層2は、上記帯状体10を螺旋状に巻回することによって形成された基布層と、織機上で無端状となるように製織した織布、平織された有端状の織布の端部同士を縫合して無端状とした織布、有端状織布の二つの機械横断方向の端部にシームループを形成し、抄紙機上で両端部のシームループを噛み合わせ、この共通孔内に芯線を挿入することで、無端状とした織布などの公知の基布を積層して用いることもできる。
【0026】
図2は、本発明による抄紙用フェルトの基布層の一例及びその製造方法を示す上面図である。
図2に示すように、基布層2は、帯状体10の端部(目印)M
0を起点として、2本の平行に配置されたロール(フェルト丈寸法Lを規定するロール)に対し、帯状体10の第一側縁11及び第二側縁12が隣接するように螺旋状に、ロール4並びに帯状体のストックロール5を回転させながら、フェルトの幅Wfが確保されるまで巻回して接合形成される。なお、この時、ストックロール5は、基布層2の製作状況に合わせ、左方向に移動する。
【0027】
ストックロール5に巻かれている帯状体10には、一定間隔で目印Mが配置されている。従って抄紙用フェルトの丈寸法Lは、帯状体10の経方向に配置された目印Mについて、目印M
0から目印M
1間の目印Mの数を規定することによって、設定することができる。この規定された目印Mの数は、目印M
1から目印M
2、目印M
nから目印M
n+1にも同様に規定されるので、任意の巻回部分について常に一定のフェルト丈寸法Lが得られ、この丈寸法Lは、フェルトの全巾Wfにわたってばらつきがない。
【0028】
また、隣接する帯状体10において、任意の目印Mが一直線になるように帯状体10が螺旋状に巻回、接合されるので、基布層2の任意の部分において、基布層のメッシュ斑や目付斑が発生することはない。
【0029】
隣接する各帯状体10の側縁同士の接合方法は、特に限定されないが、隣接する帯状体10の各側縁部について、ミシン縫合、溶融、溶着等を利用して接合することができる。また、各側縁部は隙間が生じない程度に隣接され、接合されることが好ましい。なお、各側縁部が数mm程度重なっていてもよく、本明細書においては、この各側縁部が数mm程度重なる場合についても、隣接されていることに含むこととする。
【0030】
所望する抄紙用フェルトは、上記で得られた基布層2にバット層3を一体化し、フェルト走行方向に平行なフェルト巾寸法Wfで切断して得ることができる。なお、フェルト巾寸法Wfの切断は、基布層2について実施してもよいが、通常この場合、後工程での寸法変化を考慮し、フェルト巾寸法Wfよりも広い幅を確保し、最終工程で所望するフェルト巾寸法Wfで切断する。
【0031】
帯状体10の地経糸13、地緯糸14、バット層3の素材としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、脂肪族ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612等)、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、羊毛、綿、金属等を使用することができる。地経糸13、地緯糸14は、上記素材のモノフィラメント単糸、モノフィラメント撚糸、マルチフィラメント単糸、マルチフィラメント撚糸として使用することができる。また、地経糸13、地緯糸14、バット層3の繊度や長さといった形体は、特に限定されず、設計に応じて適宜選択することができる。
【0032】
帯状体10の形態は、上記素材を用いた織布とすることができるが、織布に限定せず、地経糸と地緯糸が上下に配置された格子状素材を用いることも可能である。
【0033】
目印Mについては、帯状体10の地緯糸14と異なる色彩の糸を配置することができ、この時の目印Mの素材並びに繊度は、上記地緯糸14と同一であってもよく、異なっていてもよい。一例として、目印Mは、一本の異なる色彩の緯糸を、一本の地緯糸14の代替として、帯状体10と同じ組織で配置することが好ましい。
また、目印Mにカタン糸を用いることも可能で、この場合カタン糸の繊度は450d(デニール)以下が好ましい。
【0034】
上記で説明した目印Mは、地緯糸14と異なる色彩の糸を使用したため、フェルトの要求特性上問題はないものの、仕上がった抄紙用フェルトの表面において、異なる色彩の糸が目立ち、見栄えが悪い場合がある。そこで見栄えを悪くさせないために、目印Mについて、蓄光糸や発光糸を使用し、蓄光糸や発光糸が帯状体10の側縁部を接合するときのみ光を放ち、接合時の目印とすることが可能である。
【0035】
例えば、目印Mに蓄光糸を使用した場合、帯状体10の側縁部の接合前に蓄光糸に光を照射し、側縁部の接合時のみに蓄光糸が光を放つことによって、隣接する帯状体10の蓄光糸を一直線上に接合する際の目印とすることができる。また、例えば、目印Mに発光糸(例えば紫外線発光糸)を使用した場合、帯状体10の側縁部の接合時に発光糸に光(例えば紫外線)を照射し、側縁部の接合時のみに発光糸が光を放つことによって、隣接する帯状体10の発光糸を一直線上に接合する際の目印とすることができる。
【0036】
いずれにしても、目印Mは、帯状体10の地組織に大きな斑を与えず、フェルト丈寸法Lを正確に規定でき、基布層2の任意の部分についてメッシュ斑や目付斑が発生させないように、帯状体10の側縁部の接合時の目印になるものであればよい。従って、目印Mに上記で説明した糸を使用せず、帯状体10の一部を着色して、これを目印Mとすることも可能である。
【0037】
帯状体10には、上記で説明した目印Mが、帯状体10の経方向に等間隔で配置されているため、
図2で例示した2本のロール4を用いることなく、抄紙用フェルトの丈寸法Lを規定することができる。即ち、帯状体10の第一側縁11と第2側縁12を、目印M
0から目印M
1間の目印Mの数が、所望のフェルト丈寸法Lになるように規定して配置すればよい。従って、2本のロール4を用いることなく、帯状体10のみを隣接配置し、これを直接接合することも可能である。なお、目印M
0から目印M
1間、目印M
nから目印M
n+1間の目印Mの数は、隣接する帯状体10の目印Mが一直線上になるように、帯状体10を弛ませることなく巻回、配置することで、目印M
0から目印M
1間の目印Mの数と同一になる。
【0038】
帯状体10の経方向に等間隔で配置される目印Mの間隔は、1cm〜500cm、好ましくは、2cm〜100cm、より好ましくは、5cm〜50cmとすることができる。目印Mの間隔が狭いと、抄紙用フェルト1の丈寸法Lを規定する精度や基布層2の任意の部分における地組織を均一にすることの精度が向上するが、懸念点として、目印M
0から目印M
1間の目印Mの数をカウントすることが煩わしくなる。そこで、目印Mについて、上記で説明した異なる2種以上の目印を用いることで、前記懸念点を解消することもできる。例えば、帯状体10の経方向に、地緯糸14と色彩のみが異なる目印M
Aを5cm間隔で地緯糸14の代替として配置し、更に地緯糸14及び目印M
Aと色彩のみが異なる目印M
Bを100cm間隔で目印M
Aの代替として配置することができる。
【0039】
フェルト1の目付は、特に限定されないが、通常500g/m
2〜2000g/m
2で製作され、抄紙する紙のグレードやフェルトが抄紙機で使用されるパートによって適宜選択される。フェルト1の厚みは、特に限定されないが、主として目付に応じて、通常1.5mm〜5.0mmで製作される。
【実施例】
【0040】
<帯状体>
経糸:ポリアミド6からなる1200dtexの無色透明のモノフィラメント単糸
緯糸:ポリアミド6からなる1200dtexの無色透明のモノフィラメント単糸
目印:ポリアミド6からなる1200dtexの青色のモノフィラメント単糸
組織:経糸40本/5cm、緯糸40本/5cm、1/1平組織、帯状体幅100cm
目印は、緯糸40本ごと(5cmごと)に緯糸の代替として挿入した。
【0041】
<基布層>
基布層は以下の基布層1と基布層2を積層したものを準備した。
基布層1:上記帯状体を隣接する帯状体の目印が一直線になり、かつフェルト丈寸法が15.0mとなるように螺旋状に巻回させながら、第一側縁部と第二側縁部をミシンで縫合した。基布層1の巾寸法は650cmで準備した(フェルト巾寸法は、520cm)。
基布層2:基布層1と同一のものを準備し、表裏反転した。すなわち、基布層1と基布層2は同一の材、組織であって、帯状体の巻回方向が異なる。
【0042】
<抄紙用フェルト>
抄紙用フェルトは、上記基布層の湿紙側面に繊度11dtex、ポリアミド6の短繊維バット500g/m
2、機械側面に繊度13dtex、ポリアミド6の短繊維バット200g/m
2を、ニードリングによって絡合一体化させ、乾燥・キュアー工程を得て、最終的にフェルト巾寸法520cmで切断した。
【0043】
上記抄紙用フェルトを抄紙機で使用すると、搾水性、平滑性、特に走行安定性が改善されることが期待できる。これは、基布層に、複数の地経糸、複数の地緯糸、第一側縁、第二側縁を有する抄紙用フェルトの幅よりも狭い幅の帯状体を、前記第一側縁及び前記第二側縁が隣接するように螺旋状に巻回することによって、側縁部同士を接合し、形成される基布層を用いても、各巻回部分ごとの丈寸法のばらつきがなく、帯状体が螺旋状に巻回することによって形成された基布層の全巾に渡って、抄紙用フェルトの丈寸法が均一となっており、更に、基布層の任意の部分についても、メッシュ斑や目付斑が発生していないからである。
【0044】
なお、上記基布層は、同じような基布層の構造を有する、抄紙用ワイヤー、湿紙搬送用ベルト、シュープレス用ベルト等の基布層に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
M・M
0・M
1・M
2・M
3・M
4・M
5・M
6:目印、L:抄紙用フェルトの丈寸法、Wf:抄紙用フェルトの幅寸法、Ws:帯状体の幅寸法、1:抄紙用フェルト、2:基布層、3:バット層、4:ロール、5:帯状体ストックロール、10:帯状体、11:第一側縁、12:第二側縁、13:帯状体地経糸、14:帯状体地緯糸、15:湿紙側面、16:機械側面、17:抄紙用フェルト巾方向端部