(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-25560(P2017-25560A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】ネットの昇降装置
(51)【国際特許分類】
E04H 17/00 20060101AFI20170113BHJP
A63B 71/02 20060101ALI20170113BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
E04H17/00
A63B71/02 E
A63B69/00 505F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-144578(P2015-144578)
(22)【出願日】2015年7月22日
(71)【出願人】
【識別番号】508310089
【氏名又は名称】株式会社三陽
(72)【発明者】
【氏名】奥田 邦晴
【テーマコード(参考)】
2E142
【Fターム(参考)】
2E142AA01
2E142BB01
2E142CC00
2E142HH03
2E142HH12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1台のウインチ手段を動作させることにより容易に防球ネットを昇降させることが可能なネット昇降装置の提供。
【解決手段】上下方向に延びる複数の支柱1〜6を備え、支柱間に貼設されるネット12を昇降動させるネット昇降装置において、複数の支柱のうち少なくとも1つの支柱2の下部にワイヤー部材13の一端が取付けられるとともに、ワイヤー部材を巻き取り可能とするウインチ手段14が設けられており、ウインチ手段に巻き取られているワイヤー部材の他端は、上方に延びて、支柱の上端に設けられているワイヤー分岐部材15を介して少なくとも左右方向に分岐され、分岐されたワイヤー部材の端部は、左右方向に配置されている支柱の上端部に設けられた滑車部材16、17、43、44を介してネットにそれぞれ連結されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる複数の支柱を備え、該支柱間に貼設されるネットを昇降動させるネット昇降装置において、前記複数の支柱のうち少なくとも1つの支柱の下部にワイヤー部材の一端が取付けられるとともに、該ワイヤー部材を巻き取り可能とするウインチ手段が設けられており、該ウインチ手段に巻き取られているワイヤー部材の他端は、上方に延びて、支柱の上端に設けられているワイヤー分岐部材を介して少なくとも左右方向に分岐され、該分岐されたワイヤー部材の端部は、左右方向に配置されている支柱の上端部に設けられた滑車部材を介してネットにそれぞれ連結されていることを特徴とするネットの昇降装置。
【請求項2】
前記ワイヤー分岐部材は、ベース部材と該ベース部材に取り付けられウインチ手段から延びてくるワイヤー部材を案内するローラー部材と、前記ワイヤー部材を左右に分岐するための左右2つの分岐ローラーとから構成されていることを特徴とする請求項1記載のネット昇降装置。
【請求項3】
前記ワイヤー分岐部材は、前記ローラー部材と前記分岐ローラーとの間に逆U字状のワイヤーガイド部材が設けられており、該ワイヤーガイド部材のガイド幅は、前記左右の分岐ローラーの間隔よりも広いことを特徴とする請求項1又は2記載のネットの昇降装置。
【請求項4】
前記ワイヤー分岐部材は、前記ローラー部材と前記分岐ローラーとの間に逆U字状のワイヤーガイド部材が設けられており、該ワイヤーガイド部材のガイド高さは、前記左右の分岐ローラーの高さよりも低いことを特徴とする請求項1ないし3の少なくともいずれか1項記載のネットの昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ施設などに設置されている防球ネット装置のネットを昇降するネット昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防球ネットは、支柱にネットを固定して張る固定式の防球ネットと、強風時にネットを降下させ風荷重を減少させる昇降式の防球ネットとが知られている。
(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第 3054813 号公報
【0004】
特許文献1に記載されているネット昇降装置においては、支柱1の下部に設けられたウインチ7と、支柱1の上部に設けられた滑車6、10を介してワイヤー5によってネットを昇降させる技術が開示されている。
しかしながら、この先行文献1の装置では、1つの支柱に1つのウインチが必要とするようになり、ネットを昇降させる装置が大がかりとなる上、コストも高くなる。
また、ネットを昇降させる際には、それぞれの支柱に作業者が1人づつ配置せざるを得ず作業効率も良くないものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したように、従来のネットを昇降させる装置においては、ウインチ手段1台の動力に対して滑車部材を介して前面ネットへの連結は1箇所となっているため、1台のウインチ手段で1箇所のネットしか昇降することが出来なかった。
また、一度にネットを昇降させるためには、複数台の支柱に設置されたウインチ手段を可動させなければならず、そのためには支柱数分の作業者が必要であった。
【0006】
また、裏面に設置してあるウインチ手段を支柱に対して後方より斜め前方上端の滑車部材を介してネットに連結させるために、ネットを昇降させる際にワイヤー部材が支柱に干渉して擦れてしまう状態となり、これに伴って柱の錆発生の原因、劣化に至ることもあった。
また、前記干渉することによりワイヤー部材がねじれて乱巻き状態となり、これに伴って摩耗、変形、切断することもあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するために、上下方向に延びる複数の支柱を備え、該支柱間に貼設されるネットを昇降動させるネット昇降装置において、前記複数の支柱のうち少なくとも1つの支柱の下部にワイヤー部材の一端が取付けられるとともに、該ワイヤー部材を巻き取り可能とするウインチ手段が設けられており、該ウインチ手段に巻き取られているワイヤー部材の他端は、上方に延びて、支柱の上端に設けられているワイヤー分岐部材を介して少なくとも左右方向に分岐され、該分岐されたワイヤー部材の端部は、左右方向に配置されている支柱の上端部に設けられた滑車部材を介してネットにそれぞれ連結されていることを特徴とする。
また、本発明は、ワイヤー分岐部材は、ベース部材と該ベース部材に取り付けられウインチ手段から延びてくるワイヤー部材を案内するローラー部材と、前記ワイヤー部材を左右に分岐するための左右2つの分岐ローラーとから構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、ワイヤー分岐部材は、前記ローラー部材と前記分岐ローラーとの間に逆U字状のワイヤーガイド部材が設けられており、該ワイヤーガイド部材のガイド幅は、前記左右の分岐ローラーの間隔よりも広いことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明は、ワイヤー分岐部材は、前記ローラー部材と前記分岐ローラーとの間に逆U字状のワイヤーガイド部材が設けられており、該ワイヤーガイド部材のガイド高さは、前記左右の分岐ローラーの高さよりも低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるネット昇降装置においては、上下方向に延びる複数の支柱を備え、該支柱間に貼設されるネットを昇降動させるネット昇降装置において、前記複数の支柱のうち少なくとも1つの支柱の下部にワイヤー部材の一端が取付けられるとともに、該ワイヤー部材を巻き取り可能とするウインチ手段が設けられており、該ウインチ手段に巻き取られているワイヤー部材の他端は、上方に延びて、支柱の上端に設けられているワイヤー分岐部材を介して少なくとも左右方向に分岐され、該分岐されたワイヤー部材の端部は、左右方向に配置されている支柱の上端部に設けられた滑車部材を介してネットにそれぞれ連結されていることを特徴とする。
これによって1つのウインチ手段に巻き取られているワイヤー部材が左右方向に分岐してウインチ手段が取り付けられている支柱の左右にある支柱のネットに連結されているため、1つのウインチ手段を操作することでその左右にある支柱に支持されているネットも一緒に上下動させることが出来る。
このため、少ない作業者でネットの昇降作業が出来、また、ウインチ手段を少なくすることができるため、コストも低減できるという効果がある。
【0011】
また、本発明においては、ワイヤー分岐部材は、ベース部材と該ベース部材に取り付けられウインチ手段から延びてくるワイヤー部材を案内するローラー部材と、前記ワイヤー部材を左右に分岐するための左右2つの分岐ローラーとから構成されていることを特徴とする。
このため、ウインチ手段に巻き取られているワイヤー部材の他端が左右に分岐されて左右方向に可動する際に分岐ローラーによってその動きがスムーズになる。
そして、ワイヤー分岐部材は、ベース部材にローラー部材と分岐ローラーが取り付けられているため、支柱の上端にベース部材を取付けるだけでワイヤー分岐部材が簡単に設置できるという効果がある。
【0012】
さらに、本発明においては、ワイヤー分岐部材は、前記ローラー部材と前記分岐ローラーとの間に逆U字状のワイヤーガイド部材が設けられており、該ワイヤーガイド部材のガイド幅は、前記左右の分岐ローラーの間隔よりも広いことを特徴とする。
この構成によれば、ワイヤー部材が緩んだ時にローラーから外れるのを防止すると共に、ワイヤーガイド部材のガイド幅が左右の分岐ローラーの間隔よりも広くしてあるため、ワイヤー部材がワイヤーガイド部材に接することなく分岐ローラーに直接接するようになり、その作動がスムーズとなる効果がある。
【0013】
さらに、本発明においては、ワイヤー分岐部材は、前記ローラー部材と前記分岐ローラーとの間に逆U字状のワイヤーガイド部材が設けられており、該ワイヤーガイド部材のガイド高さは、前記左右の分岐ローラーの高さよりも低いことを特徴とする。
この構造によれば、ワイヤーガイド部材の高さが分岐ローラーの高さより低いため、ワイヤー部材がワイヤーガイド部材を通過後に分岐ローラーから上方側へ外れるのを阻止することができるという効果がある。
そのため、ワイヤー部材の脱線や乱巻きによるワイヤーの切断や破損などによるトラブルを最小限に抑え、メンテナンス等の費用を大幅に減少させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】野球用の防球ネットのネット昇降装置を示す全体の構成図である。
【
図6】本発明のワイヤーガイド部材と分岐ローラーとの位置関係を示した図である。
【実施例】
【0015】
以下、本発明のネット昇降装置の一実施例を図に基づいて示す。
なお、本実施例においては、野球場などで使用される防球ネット装置を例として示す。
本発明のネット昇降装置は、地面から上下方向に延びる6本の支柱1〜6を備え、該6本の支柱間には側面ネット7、8、9、10、11が取付バンド等の適宜手段で取り付けられ、支柱1と6の間にはネットが設けられていない。
一方、各支柱1〜6の上端部には天井ネット12が設けられている。この天井ネット12は、強風や積雪時に柱に負荷がかかり倒れたり、雪の重みで破損するのを防止するために昇降動されるように構成されている。
【0016】
この天井ネット12の昇降について以下説明する。
左右の支柱1、3の間にある支柱2の外側下端部にはワイヤー部材13を巻き取り自在とするウインチ手段14がバンド等で固定されている。
このウインチ手段は、ワイヤー部材13の一端が巻き取られており、該ワイヤー部材13の他端は、3方向に分岐されている。
一方、支柱2の上端には、前記ワイヤー部材13を3方向に分岐させるためのワイヤー分岐部材15が取り付けられている。
このワイヤー分岐部材15は、長方形とされた平板状のベース部材26と、該ベース部材26の一端側に回動自在とされたローラー部材19と、他端側の上面に設けられた回動自在の左右2つの分岐ローラー22、23とを備えている。
【0017】
また、ベース部材26の上面には、前記ローラー部材19と、分岐ローラー22、23との間には前記ワイヤー部材13を案内する丸鋼を逆Uの字状に曲げ加工した第1ワイヤーガイド部材20と第2ワイヤーガイド部材21とが溶接によって固定されている。
【0018】
さらに、前記ベース部材26の両端には、それぞれ下方に向けて垂下する固定片28が設けられている。そして、この固定片28がバンド部材27によって支柱2に固定されるようになっている。
なお、ワイヤー分岐部材15の位置を固定するのは、前記固定片28に設けた切欠溝31とバンド部材27に設けた突起部29との係合によって行われる。そして、この突起部29に形成されたネジ部にナット30を螺合させて固定する。
【0019】
前記固定片28には、ウインチ手段14から延びてくるワイヤー部材13を案内するための逆Uの字状の第3ワイヤーガイド部材18が溶接で固定されている。また、前記固定片28にも逆Uの字状の第4ワイヤーガイド部材25が溶接によって固定されている。
この第4ワイヤーガイド部材25は、所定の角度、例えば45度程度上方に向けて傾斜している。
これによって、昇降時にワイヤー部材13cが該第4ワイヤーガイド部材25に干渉するのが防止でき、摩耗したり、切断されたりするのを防ぐことができる。
【0020】
前記したローラー部材19と分岐ローラー22、23と、各ワイヤーガイド部材18、20、21、25との位置、寸法の関係について説明する。
第1ワイヤーガイド部材20のガイド幅は、ローラー部材19のローラー幅よりも短くしている。このガイド幅を短くすることによってローラー部材19を通過したワイヤー部材13がローラー部材19から外れるのを防止するためである。
また、第2ワイヤーガイド部材21のガイド幅D(
図6参照)は、左右2つの分岐ローラー22、23の間隔E(
図6参照)よりも広くしている。( D>E )
このガイド幅Aを広くすることによって、ワイヤー部材13が第2ワイヤーガイド部材21に接することなく分岐ローラー22、23に直接接するようになり、その作動がスムーズになると伴に接触によりワイヤー部材13の摩耗や切断等による不具合を防ぐことができる。
さらに、第2ワイヤーガイド部材21のガイド高さF(
図6参照)を分岐ローラー22、23のローラーの高さG(
図6参照)よりも低くしている。( F<G )これによって、ワイヤー部材13が第2ワイヤーガイド部材21を通過後に分岐ローラー22、23から上方側へ外れるのを防止することができる。
【0021】
前記したワイヤー部材13は、その他方側が3方向に分岐(13a、13b、13c)されている。
分岐されたワイヤー部材13の第1分岐ワイヤー部材13aは、前記した分岐ローラー22に接した状態でその先端部が前記支柱1の上端部に設けられた滑車部材16を介して天井ネット12に連結されている。
また、分岐された第2分岐ワイヤー部材13bは、分岐ローラー23に接した状態で、その先端部が前記支柱3の上端部に設けられた滑車部材17を介して天井ネット12に連結されている。
一方、分岐された第3分岐ワイヤー部材13cは、ローラー部材24、第4ワイヤーガイド部材を経て天井ネット12にその先端部が連結されている。
【0022】
前記したウインチ手段14は、ウインチ手段41(
図1参照)として、さらに前記したワイヤー分岐部材15は、ワイヤー分岐部材42として支柱5にも同様に取り付けられている。さらに支柱4、6の上端部にも滑車部材43、44が設けられている。
【0023】
上記した構成によると、ウインチ手段14に巻き取られているワイヤー部材13を繰り出して行くことで、ワイヤー部材13が矢印Y方向(
図2参照)に出ていく。これによってワイヤー部材13の3方向に分岐された第1、第2、第3分岐ワイヤー部材13a、13b、13cが各滑車16、17、43、44を介して繰り出される。これによって第1、第2、第3分岐ワイヤー部材13a、13b、13c、40a、40b、40cの各先端部に連結されている天井ネット12が下方に下がっていく。
つまり、ウインチ手段14、41の巻取り、繰り出し操作によって、ウインチ手段14、41が取り付けられている支柱、およびその両側の支柱上端に連結されている天井ネット12を昇降動させることができる。
【0024】
本実施例によれば、ネットを昇降動させるには、従来6台のウインチ手段と6台の滑車部材が必要であったが、本実施例では2台のウインチ手段と4台の滑車部材で安心、安全に可動することができるようになり、その構成が簡素で、しかもその作業性を大幅に向上することができる。
【0025】
上記実施例では、天井ネットの昇降動について説明したが、支柱の側面に貼設する側面ネットに適用することも可能である。
また、本実施例では、支柱が6本の防球ネット装置について説明したが、これに限らず、支柱が複数本でも適用することも可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 支柱
2 支柱
3 支柱
4 支柱
5 支柱
6 支柱
7 側面ネット
8 側面ネット
9 側面ネット
10 側面ネット
11 側面ネット
12 天井ネット
13 ワイヤー部材
14 ウインチ手段
15 ワイヤー分岐部材
16 滑車部材
17 滑車部材
18 第3ワイヤーガイド部材
19 ローラー部材
20 第1ワイヤーガイド部材
21 第2ワイヤーガイド部材
22 分岐ローラー
23 分岐ローラー
24 ローラー部材
25 第4ワイヤーガイド部材
26 ベース部材
27 バンド部材
28 固定片
29 突起部
30 ナット
31 切欠溝
40 ワイヤー部材
41 ウインチ手段
42 ワイヤー分岐部材
43 滑車部材
44 滑車部材