特開2017-25809(P2017-25809A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017025809-キャブレターの支持構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-25809(P2017-25809A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】キャブレターの支持構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 17/34 20060101AFI20170113BHJP
   F02M 15/06 20060101ALI20170113BHJP
   F02M 17/40 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
   F02M17/34 E
   F02M15/06 E
   F02M17/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-145951(P2015-145951)
(22)【出願日】2015年7月23日
(71)【出願人】
【識別番号】591278998
【氏名又は名称】コスモテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】緑川 昌廣
(72)【発明者】
【氏名】和田 平
(57)【要約】
【課題】 エンジン停止後の再始動を速やかにできるキャブレターの支持構造を提供すること。
【解決手段】 ガソリンエンジン1と、このガソリンエンジン1と隣接するキャブレター2とを備え、一端を上記ガソリンエンジン1に固定したボルトで上記キャブレター2をガソリンエンジン1に固定するキャブレター2の支持構造を前提とし、エンジニアリングプラスチックで構成したボルト9を用いるなどして、上記ボルト9とキャブレター2との接触部分3e,3fに断熱性を保持させた。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンエンジンと、このガソリンエンジンと隣接するキャブレターとを備え、一端を上記ガソリンエンジンに固定したボルトで上記キャブレターをエンジンに固定したキャブレターの支持構造であって、上記ボルトとキャブレターとの接触部分に断熱性を保持させたキャブレターの支持構造。
【請求項2】
キャブレターに対する上記ボルトの接触部分は、断熱性の高いエンジニアリングプラスチックからなる請求項1に記載のキャブレターの支持構造。
【請求項3】
キャブレターに対する上記ボルトの接触部分は、その周囲を断熱性の高い樹脂で被覆した請求項1に記載のキャブレターの支持構造。
【請求項4】
上記キャブレターに上記ボルトを貫通させるボルト孔を形成し、このボルト孔に断熱性を備えたブッシュをはめ込んでなる請求項1〜3のいずれか1に記載のキャブレターの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンに燃料を供給するためのキャブレターを支持する支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
小型エンジンで、ガソリンに適量のエアを混合して燃焼に適した割合にした混合ガスをエンジンに供給する装置としてキャブレターがある。このキャブレターは、霧吹きの原理を利用したもので、噴霧エアの勢いに応じてガソリンが自動的に吸い出されて、ガソリンとエアとを混合した混合ガスをエンジンに対して供給するものである。
図5には小型エンジンの一部を示しているが、エンジンブロック1において混合ガスを吸い込む吸込み口1aを開口させた側面1bにキャブレター2を取り付ける。この図5は、上記キャブレター2を取り付ける過程で、エンジンブロック1の側面1bに上記キャブレター2を密着させる前の状態を示している。
【0003】
上記キャブレター2は、内部に気体通路を設け、エアとガソリンとを混合する混合部3と、この混合部3の下方に設け、ガソリンを貯蔵した燃料カップ4とからなる。この燃料カップ4は、上記混合部3の気体通路に連通している。
上記混合部3には、上記気体通路の両端に吸気口3aと排気口3bとを備えている。上記吸気口3aには図示しないエアフィルタを介してエアを供給し、この吸気口3aから供給されたエアによって、上記燃料カップ4からガソリンを吸い込んで混合ガスとし、これを上記排気口3bから上記エンジンブロック1の吸込み口1aに供給するようにしている。
【0004】
さらに、キャブレター2の混合部3の外周であって、上記気体通路を挟んだ両側それぞれに、一対のフランジ部3c,3dを備えている。
これらフランジ部3c,3dにはボルト孔3e,3fが形成されている。これらボルト孔3e,3fに、上記エンジンブロック1に固定された金属製のボルト5を貫通させる。このボルト5は、両端にねじ部5aを形成したもので、その一端を上記エンジンブロック1に形成されたねじ孔に固定し、上記フランジ部3c,3dを貫通した他方のねじ部5aには、図示しないナットを締め付け、一対のボルト5,5によってキャブレター2をエンジンブロック1に固定するようにしている。
このとき、上記ボルト5は、上記ボルト孔3e,3fの内周に接触しているが、その他の部分においてはキャブレター2との間に空間を保持している。
【0005】
また、上記キャブレター2を、上記エンジンブロック1の側面1bに取り付ける際には、上記混合部3の端面とエンジンブロック1の側面1bとの間に樹脂製の断熱プレート6を介在させている。
なお、図5中の符号7は、上記吸気口3aの開度を調整するためのエア調整バルブの弁体であり、符号8は上記燃料カップ4に燃料を供給するための燃料供給口である。
そして、このようなエンジンにおいては、エンジンによって駆動する図示しない冷却ファンが設けられ、エンジンブロック1及びキャブレター2の温度上昇を抑えるようにしている。
【0006】
上記のように、断熱プレート6を設けて、エンジンブロック1からの熱がキャブレター2に伝わりにくくしたり、冷却ファンを設けたりしているのは、次の理由からである。
キャブレター2の混合部3では、気体通路に吸い込まれたガソリンとエアとによって混合ガスが生成されるが、この混合ガス中のガソリン濃度にはエンジンでの燃焼に適した濃度がある。もし、上記混合部3や燃料カップ4の温度が、エンジンの温度によって上昇すれば、ガソリンが気化しやすくなるので、圧力が変化して上記混合ガス中のガソリン濃度が変化してしまう。ガソリン濃度が変化して、燃焼に適した適正濃度範囲から外れてしまうと、それを供給されたエンジン側では不完全燃焼になったり、エンストしてしまったりすることが起こる。そのため、上記のように断熱プレート6を設けたり、冷却ファンを設けたりして、キャブレター2側の温度が上昇しないようにしているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−104521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5に示す従来例では、エンジンの運転中には冷却ファンが作動している。そのため、運転中にはキャブレター2の温度上昇が抑えられ、混合ガスの比率を適正に保つことができる。
しかし、エンジンが停止したときには、冷却ファンが停止してしまうため、エンジンブロック1の温度が上昇してしまう。エンジンブロック1が高温になると、その温度がキャブレター2に伝達されてキャブレター2も高温になってしまう。キャブレター2、特に燃料カップ4が高温になれば、上記したように混合ガス中のガソリン濃度を適正濃度に保つことが難しくなってしまう。
【0009】
そのため、運転したエンジンを停止して、エンジンブロック1が高温になった場合には、それによって高温になったキャブレター2の温度が下がるまでは、エンジンを始動させることができなかった。つまり、必要なときにエンジンの再始動ができないという問題があった。
この発明の目的は、ガソリンエンジンの再始動を速やかに行なうことができるキャブレターの支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、ガソリンエンジンと、このガソリンエンジンと隣接するキャブレターとを備え、一端を上記ガソリンエンジンに固定したボルトで上記キャブレターをエンジンに固定したキャブレターの支持構造であって、上記ボルトとキャブレターとの接触部分に断熱性を保持させたことを特徴とする。
上記ボルトの接触部分には、ボルトを貫通させるボルト孔だけでなく、ボルトの外周が接触する部分全てが含まれる。
【0011】
第2の発明は、キャブレターに対する上記ボルトの接触部分は、断熱性の高いエンジニアリングプラスチックからなることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、キャブレターに対する上記ボルトの接触部分は、その周囲を断熱性の高い樹脂で被覆したことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、上記キャブレターに上記ボルトを貫通させるボルト孔を形成し、このボルト孔に断熱性を備えたブッシュをはめ込んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、高温になったエンジンの熱が固定用のボルトの接触部分からキャブレターに伝達されにくくなるため、エンジンが停止して冷却ファンが停止したとしても、キャブレターが高温になることがない。
そのため、エンジン停止直後であっても、キャブレターで生成される混合ガスのガソリン濃度を適正に保つことができ、エンジンの再始動が可能になる。
【0015】
第2の発明では、ボルトにおけるキャブレターとの接触部分を断熱性の高いエンジニアリングプラスチックで構成することによって、エンジンの熱がボルトを介してキャブレターに伝わることを防止できる。
【0016】
第3の発明によれば、ボルトの接触部分に被覆した断熱性の高い樹脂で、エンジンの熱がキャブレターに伝わることを防止できる。
また、既存の金属製のボルトにおけるキャブレターとの接触部分に、断熱性の高い樹脂を被覆するだけで足りるので、ボルトとして必要な引っ張り強度は金属で実現することができる。ボルトを被覆する樹脂で強度を実現する必要がないため、被覆用の樹脂には断熱性があればよく、ボルト全体を形成するためのエンジニアリングプラスチックよりも安価な材料を使用できる。
さらに、樹脂の被覆は、樹脂のコーティングや、熱収縮性樹脂の筒を被せるといった方法で実現でき、加工も容易である。
【0017】
第4の発明では、ボルト孔に設けたブッシュによって、ボルトを介してエンジンからキャブレターへ伝わる熱を少なくできる。そのため、ボルトは従来のものを使用することもできる。
また、ボルトにも断熱性を保持させれば、ボルトとブッシュとによってさらに断熱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の全体構成を示す概略図である。
図2】エンジンの再起動実験の実験結果を示した表である。
図3】第2実施形態の部分断面図である。
図4】第3実施形態の部分断面図である。
図5】一般的な小型エンジンにおけるキャブレターの支持構造を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、この発明の第1実施形態の構成を示す概略図である。
この第1実施形態は、エンジンブロック1にキャブレター2を固定するためのボルト9がエンジニアリングプラスチック(以降「エンプラ」という)製である以外は、上記従来例と同じである。この第1実施形態において、上記従来例と同じ構成要素には、図5と同じ符号を用いるとともに以下の説明にも図5を参照する。
【0020】
この第1実施形態は、図1に示すようにエンジンブロック1に一端を固定したエンプラ製のボルト9を、キャブレター2のフランジ部3c,3dのボルト孔3e,3fを貫通させ、さらにエアフィルタケース10を貫通させ、ねじ部にナット11を締め付けて固定している。
また、この第1実施形態でも、エンジンブロック1とキャブレター2との間には従来例と同様に断熱プレート6を介在させている。
なお、図1中の符号12は、混合部3の吸気口3aの開度を調整する弁体7(図5参照)を備えたエア調整バルブであり、符号13は排気口3bから排出される混合ガス量を調整するための混合ガス調整バルブである。
【0021】
上記ボルト9の材質であるエンプラとしては、締結ボルトとしての機械的強度と耐熱性能を備えたもので、ここではポリエーテルエーテルケトンを用いている。ただし、フッ素系樹脂など、他のエンプラを用いてもよい。
このボルト9は、上記フランジ部3c,3dのボルト孔3e,3fの内周に接触し、上記ボルト孔3e,3fの部分がこの発明の接触部分となる。
また、上記ボルト9を構成するエンプラの熱伝導率は、約0.3〔W/(m・K)〕である。これは、鉄の48〔W/(m・K)〕、炭素鋼の36〔W/(m・K)〕〜56〔W/(m・K)〕と比べて圧倒的に小さい値である。
つまり、この第1実施形態では、ボルト9が上記接触部分において断熱性を発揮することになる。
【0022】
したがって、エンジン停止によってエンジンブロック1の温度が上昇しても、その熱がボルト9の接触部分である上記ボルト孔3e,3fを介してキャブレター2へ伝達される熱量を抑えることができる。
もし、エンジン停止後にエンジンブロック1からキャブレター2へ伝達される熱量を少なくできれば、キャブレター2の温度上昇が抑えられるので、エンジン停止後に長時間待たなくても再始動ができるはずである。
そこで、上記エンプラ製のボルト9を用いたこの第1実施形態のキャブレター支持構造を用いた場合の、断熱効果を確認する実験を行なった。
【0023】
この確認実験では、3種類の装置A〜Cを用いた。
装置Aは、金属製のボルト5を用いてキャブレターを支持する従来例そのものである。
また、装置Bは、装置Aにおけるエンジンブロック1の外周に断熱材を貼りつけたものである。このようにエンジンブロック1に断熱材を貼りつけたのは、エンジンブロック1の表面からの輻射熱がキャブレター2に伝わらないようにするためである。
さらに、装置Cは、上記エンプラ製のボルト9を用いたこの第1実施形態の装置である。この装置Cでは、エンジンブロック1の表面に断熱材を貼りつけていない。
【0024】
上記装置A〜Cのそれぞれについて、以下の手順で実験を行なった。
(1)エンジン全負荷にして、1時間連続運転をする。
(2)エンジン温度の上昇が飽和状態になったことを確認し、エンジンを停止する。なお、エンジン停止とともに、冷却ファンが停止する。
(3)エンジン停止20分後の燃料カップ4内のガソリンの温度を測定し、エンジン再始動のための操作を開始する。
エンジン再始動の操作をしても、エンジンが再始動しない場合には、連続して何回も再始動の操作を行なう。
また、上記手順(2)におけるエンジン温度は、エンジンオイルの温度を測定することによって確認している。エンジン温度上昇の飽和状態で、エンジンオイルは約120℃になっていた。
なお、実験環境は、戸外で、天候は晴れ、気温は27℃であった。
【0025】
上記エンジンの再始動を開始するエンジン停止20分後は、エンジンブロック1からの熱がキャブレター2に伝わって、燃料カップ4内の温度がピークに達する時間である。エンジン停止後20分で燃料カップ4内の温度がピーク値に達することは、別の実験で確認済みである。
また、この実験でも燃料カップ4内のガソリンの温度を測定するために、燃料カップ4内に温度センサを設置している。
【0026】
実験結果を、図2の表に示している。
この表に示すように、従来例の装置Aの場合には、エンジン停止20分後における、燃料カップ4内のガソリン温度は72℃で、エンジンの再始動はできなかった。再始動操作回数「不能」というのは、連続的に再始動操作を繰り返してもエンジンが始動できなかったことを示している。実際には、40分間で20回の始動操作を繰り返している。
そして、20回目の始動が失敗に終わった後、さらに20分以上放置することで燃料カップ4が自然冷却されてから、再始動することができた。つまり、従来例の装置Aでは、一旦全負荷で運転したエンジンを停止したら、1時間以上放置しなければ、再始動することができないということである。
【0027】
装置Bの場合は、エンジン停止20分後の燃料カップ4内のガソリン温度が64℃であった。その後、エンジンの始動操作を繰り返したところ、12回目の操作でエンジンを再始動させることができた。装置Bでは、再始動操作を開始してから、実際にエンジンが始動するまで20分間かかった。
装置Bはエンジンブロック1に断熱材を貼り付けることによって、エンジンブロック1からの輻射熱の影響を小さくしている。その分、燃料カップ4内のガソリン温度は装置Aよりも低くなり、再始動が可能になるまでの時間も短縮されている。ただし、エンジン停止後に直ちに再始動することはできなかった。
【0028】
一方、第1実施形態の装置Cの場合には、エンジン停止20分後の燃料カップ4内のガソリン温度は41℃であった。
そして、1回目の再始動操作によってエンジンを再始動させることができた。
以上の実験から、エンプラ製のボルト9を用いた第1実施形態のキャブレター支持構造を用いれば、エンジン停止後、直ちにエンジンを再始動できることが分かった。
【0029】
なお、上記実験ではエンジン停止20分後から再始動を試みているが、エンジン停止20分後に燃料カップ4内のガソリン温度がピークになるので、上記実験は、最も厳しい条件での確認実験になる。言い換えれば、上記第1実施形態の装置Cならば、エンジン停止後、いつでも1回で再始動できることになる。
また、上記装置Bのように、エンジンブロック1に断熱材を貼りつけただけでは十分な効果が得られなかったことから、エンジンブロック1から燃料カップ4への熱の伝達は、ボルトを介しての熱伝導が主であって、エンジンブロック1の表面からの輻射によるものはそれほどでもないことが想定される。したがって、エンジンブロック1に固定されたボルトとキャブレター2との接触部分での断熱が重要であることが分かった。
第1実施形態のように、エンプラ製のボルト9を用いれば、エンジンブロック1を断熱材で覆う必要もない。
【0030】
図3に示す第2実施形態は、金属製のボルト14の外周に樹脂被膜14aを設けたものである。上記樹脂被膜14aは、熱収縮性のフッ素系樹脂チューブをボルト14のねじ部以外の部分に被せてから加熱したもので、加熱後の上記樹脂被膜14aの厚みは約0.2〔mm〕である。
この第2実施形態は、エンプラ製のボルト9に替えて樹脂被膜14aを備えたボルト14を用いた以外は、上記第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と同様の構成要素には、図1,5と同じ符号を用いている。
図3には、上記混合部3における一方のフランジ部3cのボルト孔3e部分のみを拡大して示しているが、上記樹脂被膜14aを備えたボルト14はもう一方のフランジ部3dのボルト孔3fも貫通している。
【0031】
そして、この第2実施形態の装置についても、上記確認実験を行なったところ、第1実施形態の装置Aと同様に、問題なく1回でエンジンの再始動ができた。
したがって、金属よりも熱伝導率の低い上記樹脂被膜14aが、キャブレター2との間の接触部分において十分な断熱性を発揮することを確認できた。
この第2実施形態では、ねじ部には樹脂被膜14aを設けていないので、両端のねじ部は従来のまま利用でき、エンジンブロック1やナット11との結合にも影響を与えない。
【0032】
ただし、ねじ部を含めたボルトの全体を樹脂被膜14aで覆うようにしてもよい。あるいは、ボルトにおいて、上記ボルト孔3e,3fと接触する部分のみに樹脂被膜14aを設けるようにしてもよい。
なお、上記接触部分には断熱性を備える必要があるので、キャブレター2側のボルト孔がボルトの軸方向に長さを有する場合には、その全長にわたって樹脂被膜14aが接触するように設ける必要がある。
さらに、断熱性を発揮する樹脂被膜14aは、断熱性の高い樹脂塗料の塗布や、樹脂膜の巻き付けなどによって形成してもよい。
【0033】
図4に示す第3実施形態は、ボルト孔3e,3fに断熱性の高い樹脂製のブッシュ15を設けたものである。このブッシュ15に貫通させるボルトは従来例と同様の金属製のボルト5でもよい。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と同様の構成要素には、図1,5と同じ符号を用いている。
この第3実施形態では、一端をエンジンブロック1に固定されたボルトとキャブレター2との接触部分であるボルト孔3e,3fに上記ブッシュ15によって断熱性をもたせている。
これにより、エンジン停止後の燃料カップ4の温度上昇を抑えて再始動を可能にすることができる。
【0034】
また、この第3実施形態の上記ブッシュ15を貫通して上記キャブレター2を固定するボルトは、従来例の金属製のボルト5でもよいが、上記他の実施形態のようなエンプラ製のボルト9や樹脂被膜14aを備えたボルト14を用いてもよい。上記第1実施形態のボルト9や第2実施形態のボルト14を用いれば、さらに断熱性が高くなり、上記エンジンブロック1からキャブレター2へ熱伝導をさらに抑えることができる。その結果、上記燃料カップ4内のガソリン温度の上昇も抑えられて、再始動がより確実にできるようになる。
【0035】
なお、上記第1〜3実施形態では、ボルト孔を接触部分としているが、ボルト孔以外の部分でも、ボルトとキャブレター2とが接触する個所があれば、その接触部分にも断熱性を保持させる必要がある。もし、フランジ部3c,3d間(図1,5参照)で、キャブレター2の混合部3にボルトが接触する部分がある場合には、その接触部分にも断熱性を保持させるようにする。例えば、第1,2実施形態のボルト5,14ように、フランジ部3c,3d間においてもボルト側に断熱性を保持させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、キャブレターを用いた様々な小型のガソリンエンジンに適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 エンジンブロック
2 キャブレター
3 混合部
3e ボルト孔
3f ボルト孔
4 燃料カップ
9 ボルト
11 ナット
14 ボルト
14a 樹脂被膜
15 ブッシュ
図1
図2
図3
図4
図5