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特開2017-2606足場の揺れ検出システム及び同システムが配設された足場
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-2606(P2017-2606A)
(43)【公開日】2017年1月5日
(54)【発明の名称】足場の揺れ検出システム及び同システムが配設された足場
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/00 20060101AFI20161209BHJP
【FI】
   E04G5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-118854(P2015-118854)
(22)【出願日】2015年6月12日
(71)【出願人】
【識別番号】306035122
【氏名又は名称】信和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山田 博
(72)【発明者】
【氏名】青山 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】水谷 嘉宏
(57)【要約】
【課題】例え大きく揺れたとしてもその揺れ状態を検出手段で検出することのできる足場の揺れ検出システム及びそのようなシステムが配設された足場を提供すること。
【解決手段】揺れ検出装置11は本体ケースと、本体ケースに挿貫され本体ケースに対して相対的に長手方向に進退可能とされる検出ロッドと、検出ロッドの長手方向の位置変位を検出する検出ロッドに隣接して配置されるリミットスイッチと、を備えており、本体ケースを足場側に補助ロッド40を介して連結固定するとともに検出ロッドの先端側を壁Wに連結固定する。足場1の揺れによる足場1と建築物Sとの間の位置変位を検出ロッドの本体ケースに対する相対的な位置変位としてリミットスイッチによって相対的な位置変位によって移動する検出ロッドの外周を長手方向に検出するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、同筐体に挿貫され同筐体に対して相対的に長手方向に進退可能とされる長尺体と、同長尺体の長手方向の位置変位を検出する前記長尺体に隣接して配置される検出手段と、を備え、
前記筐体を足場側に連結固定するとともに前記長尺体の一端側を固定物側に連結固定し、
前記足場の揺れによる前記足場と前記固定物との間の位置変位を前記長尺体の前記筐体に対する相対的な位置変位とし、前記検出手段によって相対的な位置変位によって移動する前記長尺体の被検出部を検出するようにしたことを特徴とする足場の揺れ検出システム。
【請求項2】
前記被検出部は長手方向において前記検出手段が連続的に検出状態となる領域と連続的に非検出状態となる領域を有していることを特徴とする請求項1に記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項3】
前記連続的に検出状態となる領域と前記連続的に非検出状態となる領域との境界部分の位置は変更可能であることを特徴とする請求項2に記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項4】
前記検出手段は前記筐体に装着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項5】
前記固定物は固定構築物の壁部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項6】
前記筐体を前記足場側に連結固定ための連結手段はクランプ装置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項7】
前記筐体を前記足場側に連結固定ための連結手段は前記筐体に形成された係止手段であり、前記足場側の構成部材に形成された被係止手段に係止させるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項8】
前記長尺体の一端側と連結される前記足場側又は前記固定物側との間には自在継ぎ手機構が配設されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項9】
前記検出手段によって検出された検出値に基づいて制御手段は揺れ情報を報知手段から報知させるようにしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項10】
前記制御手段は前記検出手段によって検出されている時間と検出されてない時間の間隔が長いことによって揺れが大きいと判断することを特徴とする請求項9に記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項11】
前記報知手段は情報端末装置であり、前記制御手段は通信ネットワークを介して前記揺れ情報を前記情報端末装置に送信することを特徴とする請求項9又は10に記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項12】
風速測定手段によって測定された測定値に基づいて前記制御手段は風速情報をモニター上に表示させるようにしたことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項13】
前記モニターは情報端末装置に設けられ、前記制御手段は通信ネットワークを介して前記風速情報を前記情報端末装置に送信することを特徴とする請求項12に記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項14】
前記制御手段は前記情報端末装置からの通信ネットワークを介した指示によって前記揺れ情報の報知条件を変更するようにしたことを特徴とする請求項11又は13に記載の足場の揺れ検出システム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の足場の揺れ検出システムが配設された足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は足場の揺れ検出システム及びそのようなシステムが配設された足場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から足場用の鋼管を縦横に接続し、足場板を設置して架設の足場を構築するようにしている。足場は構築物の施工あるいは修理に使用され、例えば既設の建築物を補修したり新築の建築物を構築する場合や擁壁を修理したりする場合にも使用される。このような足場の一例として特許文献1の図8を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−22186号公報 図8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1のような足場は基本的に骨組みだけで構成される構造体であるため、例えば風によってそれほど大きく揺れるということがないので、従来から足場の揺れについての意識はそれほど高くはなかった。しかし、足場も構造物である限り外力を受けて揺れるわけであり、かつ一般的に仮設されているものであるため堅牢な構造物というわけでもない。また、近年では落下防止用のメッシュシートを足場に装着することが多くなっており、風に対する抵抗も大きくなってきている。そのため、大きな外力がかかった場合に足場の揺れを検出するシステムを設けることが求められている。しかし、揺れを検出するにしても例えば一般的なリミットスイッチやマイクロスイッチのような対象物に対する接離によって検出するようなセンサの動作スケールはごく小さく数mmから10mm程度であるため、足場の揺れを直接このような小さなセンサで検出するにはスケール的に無理がある。そのため、足場において揺れを検出するために好適な揺れ検出システムが求められていた。
本発明の目的は、例え大きく揺れたとしてもその揺れ状態を検出手段で検出することのできる足場の揺れ検出システム及びそのようなシステムが配設された足場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために手段1として、筐体と、同筐体に挿貫され同筐体に対して相対的に長手方向に進退可能とされる長尺体と、同長尺体の長手方向の位置変位を検出する前記長尺体に隣接して配置される検出手段と、を備え、前記筐体を足場側に連結固定するとともに前記長尺体の一端側を固定物側に連結固定し、前記足場の揺れによる前記足場と前記固定物との間の位置変位を前記長尺体の前記筐体に対する相対的な位置変位とし、前記検出手段によって相対的な位置変位によって移動する前記長尺体の被検出部を検出するようにした。
このような構成では、筐体を足場側に連結固定するとともに長尺体の一端側を固定物側に連結固定するため、実際には長尺体は固定物側に固定的に支持されているが、足場と固定物との接近又は離間に伴って相対的に筐体との間で長手方向に進退して位置が変位する。この変位に伴って移動する長尺体の被検出部を検出手段によって検出することで足場と固定物との間の間隔の変化を検出する。これによって揺れ幅の大きな足場について、その揺れの量を筐体と長尺体の間の相対的な位置変位と捉えることができるので検出手段を使用した揺れの検出が可能となる。
【0006】
ここに「足場」とは一般的には架設足場であることが多いが、恒常的に設置されている足場を排除するものではない。また、用途としては広く構築物の施工あるいは修理に使用されるものであればよい。また、一般に足場は金属鋼管で骨組みを構築することが多いが、一部あるいは全部を金属鋼管以外で骨組みとする場合を排除するものではない。
また、「検出手段」とは被検出部との実際の接触状態による検出する場合のみならず、例えば磁気や光による無接触の検出等でもよく、検出手法について限定されるものではない。「長尺体」の形状、長さ、材質等は特に限定されるものではない。
【0007】
また、手段2として、前記被検出部は長手方向において前記検出手段が連続的に検出状態となる領域と連続的に非検出状態となる領域を有しているようにした。
このような構成とすることで、2つの領域の境界を挟んで例えば検出手段が連続的に検出状態となる領域を検出していれば、検出信号が途切れることなくその間出力されることになる。これによって例えば頻繁に検出信号が入り切りされればそれほど揺れは大きくはないが、一回の出力時間が長くなると揺れが大きいと判断することができる。
「連続的に検出状態となる領域と連続的に非検出状態となる領域」とは、例えば長尺体の径や太さを二段階とし検出手段までの距離を2つのパターンで構成したり、一方の領域にのみ磁性体を配設したりして長尺体全体の形状はフラットでも領域毎で属性を変える等することが可能である。
また、手段3として、前記連続的に検出状態となる領域と前記連続的に非検出状態となる領域との境界部分の位置は変更可能であるようにした。
このようにしきい値位置となる境界部分の位置を変更できるとすると、検出手段の感度を任意に変更することが簡単にできる。また、このような構成とすれば、検出手段の初期配置する際にも便利である。例えば、連続的に検出状態となる領域からは遠く、かつ非検出状態となる領域内に検出手段を配置するようにすることで少しの外力では検出状態とはならないように設定することができるわけである。
【0008】
また、手段4として、前記検出手段は前記筐体に装着されているようにした。
つまり、逆にいえば検出手段は筐体に装着されていなくとも足場のどこかに筐体とは別個に配設することで長尺体の被検出部を検出することは可能である。しかし、当初から筐体に装着することで検出手段と被検出部との位置合わせや筐体とは別個に固定する手間等の作業がなくなるため、このように構成することで作業効率が向上する。
【0009】
また、手段5として、前記固定物は固定構築物の壁部であるようにした。
固定構築物の壁部は足場の柱材に沿って立設されており、足場からの距離がほぼ一定しているため、長尺体の一端側を連結させやすいからである。
また、手段6として、前記筐体を前記足場側に連結固定ための連結手段はクランプ装置であるようにした。
クランプ装置を使用して筐体を固定するのであれば、筐体は足場側の任意の位置に取り付けることができ、例えば上記の手段3の実現が容易である。また、固定物の形状や位置の応じた位置に筐体を取り付けることができるので足場における筐体の設置条件が悪くとも対応しやすくなる。
また、手段7として、前記筐体を前記足場側に連結固定ための連結手段は前記筐体に形成された係止手段であり、前記足場側の構成部材に形成された被係止手段に係止させるようにした。
このように係止手段と被係止手段の関係で筐体を固定させることができれば筐体の取り付け作業が効率化する。係止手段と被係止手段とは例えば、くさび部材とこのくさび部材が挿入される枠状体が挙げられる。
また、手段8として、前記長尺体の一端側と連結される前記足場側又は前記固定物側との間には自在継ぎ手機構が配設されているようにした。
長尺体は固定物に連結され筐体に対して相対的に進退するため、この進退方向以外の動きが加わると筐体に対する長尺体の相対的な位置変位(移動)に支障を来すおそれがある。しかし、このように自在継ぎ手機構を配置することで長尺体を筐体に対して相対的にスムーズに進退させることができる。
【0010】
また、手段9として、前記検出手段によって検出された検出値に基づいて制御手段は揺れ情報を報知手段から報知させるようにした。
このように構成することによって、検出手段によって検出した検出値に基づく揺れ情報を報知手段を介してユーザーが認識することができる。「揺れ情報」とは揺れの有無、ある一回の揺れ状態、継続したある揺れ状態、揺れの強弱等の様々な揺れに関する情報である。「報知手段」とは例えば、音声や光での報知やユーザーの情報端末装置のモニター画面上への表示や情報端末装置へのeメール送信等で行うことがよい。これらは単独でも組み合わせて報知するようにしてもよい。
また、手段10として、前記制御手段は前記検出手段によって検出されている時間と検出されてない時間の間隔が長いことによって揺れが大きいと判断するようにした。
つまり、上記のような検出手段を用いた場合ではこのようなインターバルの長さがそのまま揺れの大きさとなるからである。例えば、それほど揺れていなければ検出されている時間と検出されてない時間の短い繰り返しとして検出されるはずだからである。
また、手段11として、前記報知手段は情報端末装置であり、前記制御手段は通信ネットワークを介して前記揺れ情報を前記情報端末装置に送信するようにした。
報知手段が情報端末装置である場合にはユーザーは揺れ情報を通信ネットワークを介して送信することで足場の近くにいなくとも得ることができる。「通信ネットワーク」としては、例えば電話回線網やインターネット等を使用することがよい。「情報端末装置」としては、例えば電話機(固定、携帯のいずれでも。携帯電話であれば多機能携帯電話機(スマートフォン)がよい)、コンピュータ装置がよい。コンピュータ装置の場合には軽便なタブレット型やノートパソコン型がよい。
【0011】
また、手段12として、風速測定手段によって測定された測定値に基づいて前記制御手段は風速情報をモニター上に表示させるようにした。
風速情報を揺れ情報とともに報知することで風速との関係でより正確な揺れ状態を分析することができることとなる。例えば、風速が強くても揺れがないことが分かれば足場の補強の必要はないが、風速が弱くても揺れを検知するようであれば足場の補強を検討する必要がある。あるいは、異なる足場毎に揺れを検知する風速が異なれば相対的に早く揺れが検知される足場の補強をする必要がある。このように揺れ情報単独では分析できない内容を補完することができる。
ここに「風速情報」とは風速に関する情報であって具体的な数値だけでなく風速が強くなることによる注意度合いの報知も含む。
また、手段13として、前記モニターは情報端末装置に設けられ、前記制御手段は通信ネットワークを介して前記風速情報を前記情報端末装置に送信するようにした。
このように構成することで、ユーザーは風速情報を通信ネットワークを介して送信することで足場の近くにいなくとも得ることができる。特に揺れ情報を情報端末装置に送信する場合に一緒に情報として送ることができるので便利である。
また、手段14として、前記制御手段は前記情報端末装置からの通信ネットワークを介した指示によって前記揺れ情報の報知条件を変更するようにした。
これによって、揺れの報知条件や風速情報の報知条件を現場にいなくとも変更することができるため、便利である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、足場における揺れの量を筐体と長尺体の間の相対的な位置変位と捉えることができるので検出手段を使用した足場における揺れの検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の足場の揺れ検出システムを設置した足場を説明する一部切り欠き斜視図。
図2図1のシステムに使用する揺れ検出装置と補助ロッドを非連結状態で示す斜視図。
図3】同じ実施の形態の揺れ検出装置の一部省略縦断面図。
図4】同じ実施の形態の揺れ検出装置の図3のA−A線での横断面図。
図5】同じ実施の形態の補助ロッドの(a)は垂直方向で切断した縦断面図、(b)は(a)と直交する方向での縦断面図。
図6】同じ実施の形態において揺れ検出装置と補助ロッドとを連結した状態の斜視図。
図7図1の斜視図において円で包囲した付近の要部拡大斜視図。
図8】ロッド固定ボルトの(a)は斜視図、(b)は一部切り欠き側断面図。
図9】実施の形態のシステムの電気的構成を説明するブロック図。
図10】実施の形態のシステムにおいて情報通信を行う際のイメージ図。
図11】他の実施の形態において揺れ検出装置と補助ロッドとを連結した状態の斜視図。
図12】他の実施の形態の揺れ検出装置の横断面図。
図13図1のシステムに他の実施の形態の揺れ検出装置を適用した状態の要部拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態である足場の揺れ検出システムを設置した足場について図面に基づいて説明する。
図1は既設の建築物Sの外壁Wの補修をするケースを一例として足場1を構築したものである。実際には建築物Sの外壁W全周に足場1を構築するものであるが、本実施の形態では要部の説明のためにある一面の外壁Wのみに沿って足場1を構築した状態で図示している。まず、足場1の概要を説明する。
足場1は複数の支柱材2を上下方向にほぞとほぞ孔の関係で直列に接続した複数の支柱3と、隣接する支柱材2間に連結固定された長さの異なる2種類の布材4A、4Bから基本的な骨格が構築されている。支柱3は外壁Wに対して平行となる方向に所定間隔に配置されている。この支柱3の列は内側と外側の二列で構成されている。各支柱材2の外周には連結枠6が形成されており、布材4A、4Bはその両端に形成されたクサビ片5を隣接する支柱材2の対向位置にある一対の連結枠6に上方から落とし込むことで固定されている。外壁Wの面方向に対して直交する方向に配置された短い布材4Bには足場板7が架設されている。各支柱3の下端は地盤上に設置された受け金具23にほぞとほぞ孔の関係で接続されて支持されている。足場1の揺れを防止するために外壁Wには足場1が外壁Wから離間する方向の動きを規制する第1のアンカー8と、足場1が外壁W方向に接近する動きを規制する第2のアンカー9が外壁Wと支柱3との間に配設されている。本実施の形態では図1における図示では第1及び第2のアンカー8、9は手前内側の支柱3に配設固定されているが、この配設位置は適宜変更可能である。
所定の支柱3(ここでは図1における図示で奥側内側の支柱3)の上方側開放端にはプロペラ装置10が配設されている。プロペラ装置24は風を受けて回転する回転部の回転数データを後述するサブコントローラ53に出力する。
【0015】
足場1には足場1の外壁Wに対する接近方向及び離間方向の揺れを検出するための揺れ検出装置11が配設されている。揺れ検出装置11は本実施の形態では第1及び第2のアンカー8、9の上部位置(図1における円で示す位置)に配設されている。図2図4に示すように、揺れ検出装置11は断面円形形状の筒状の合金製の本体ケース12を備えている。本実施の形態では本体ケース12の長さは80mm、外径は43mmとされている。本体ケース12の前後の開口部には合金製の蓋13A、13Bが装着されている。蓋13A、13Bは円形の底部14と底部14の周囲から立ち上がる包囲部15とから構成されている。底部14の中央には円形の透孔16が形成されている。図3において本体ケース12の左側開口部を塞ぐ蓋13Aは溶接によって固着されている。図3において本体ケース12の右側開口部を塞ぐ蓋13Bは包囲部15の内周面に形成された雌ネジ15aと本体ケース12の端部外周に形成された雄ネジ12aとの螺合関係によって着脱可能に装着されている。
【0016】
蓋13Bの底部14の内側の中央位置には断面円形形状の筒状の合金製のカラー17が溶接によって固着されている。カラー17の軸心は底部14の中央(つまり透孔16の中心)と一致する。カラー17の内径は透孔16の直径よりもわずかに小径に構成されている。カラー17の長さは本体ケース12の全長よりもわずかに短く構成されている。カラー17の長手方向の中央位置にはカラー17の内外に連通する長手方向に長径が配置された楕円形状の透孔18が形成されている。カラー17の外周上の透孔18に隣接した位置には取り付け板19が溶接によって立設固定されており、検出手段としてのリミットスイッチ20が取り付け板19に固着されている。リミットスイッチ20は検出部としてのレバー21が透孔18からカラー17内に一部突出状態となるように取り付けられている。リミットスイッチ20に接続されたケーブル23は蓋13Bから外部に導かれている(一部図示を省略)。
カラー17内には検出ロッド25が挿貫されている。検出ロッド25は断面円形の中実のステンレス製の長尺体であり、透孔18からカラー17内に突出するリミットスイッチ20のレバー21が常時その外周に当接している。本実施の形態の検出ロッド25は350mmの長さとされている。検出ロッド25は長手方向中央位置で段違いとなる2つの径の異なる領域を有している。小径(本実施の形態ではφ10mm)側はリミットスイッチ20のレバー21がオフ状態となる非検出領域L1とされ、大径(本実施の形態ではφ13mm)側はリミットスイッチ20のレバー21が非検出領域L1位置からリミットスイッチ20側に押動されてオン状態となる検出領域L2とされている。非検出領域L1と検出領域L2との接続部分、つまり境界部分Bはレバー21がスムーズに移行できるようにするために径の大きさが徐々に変位するようにテーパ状に構成されている。検出ロッド25の先端寄り外周には雄ネジ26が形成されている。
【0017】
このように構成される揺れ検出装置11は図1図6及び図7に示すようにクランプ装置27によって支柱3の任意の支柱材2に固定されている。クランプ装置27は90度位相がずれて背中合わせに接合された一対のキャッチ部28から構成されている。各キャッチ部28はキャッチ本体29とヒンジ部30によって揺動するアーム部31を備えている。キャッチ本体29とアーム部31は支柱材2、布材4A、4B及び本体ケース12の外周曲面に対応する内周面を備えており、支柱材2、布材4A、4B又は本体ケース12の外周をキャッチ部28で挟み、キャッチ本体29とアーム部30先端との間をボルト及びナットから構成される締め付け部32による協働作用で締め付け固定する。図6に示すように、揺れ検出装置11は本体ケース12がクランプ装置27の一方のキャッチ部28によって支持され、クランプ装置27は支柱3に対して他方のキャッチ部28によって支持されている。この状態で揺れ検出装置11の検出ロッド25の軸方向と支柱3の軸方向とは直交している。
【0018】
揺れ検出装置11の検出ロッド25の先端側には補助ロッド40が連結されている。図1及び7に示すように、補助ロッド40は外壁Wと揺れ検出装置11の間に介在されて揺れ検出装置11の検出ロッド25を外壁Wに連結固定させる部材である。図5(a)及び(b)に示すように、補助ロッド40は合金製のケース41とケース41内に基端が連結されたステンレス製の補助ロッド本体42から構成されている。ケース41は基端側が縮径された前後ともに開口された筒形状とされている。ケース41の小径部41Aの内周には雌ネジ43が形成されており、検出ロッド25の雄ネジ26がこの雌ネジ43に対して螺合されることで揺れ検出装置11に対して補助ロッド40が連結される。補助ロッド本体42は断面円形の中実の長尺体である。補助ロッド本体42の先端寄り外周には雄ネジ44が形成されている。補助ロッド本体42の基部には円筒状の継手部45が一体的に形成されている。継手部45には補助ロッド本体42の長手方向に対して直交する方向に軸孔46が形成されている。図5(b)に示すように、軸孔46は孔の中央からそれぞれ開口部方向に向かってテーパ状に拡がって構成されている。補助ロッド本体42は継手部45がケース41の先端側に挿入された状態で継手部45の軸孔46を貫通する軸兼用固定ボルト37によってケース41に支持されている。軸兼用固定ボルト37はナット38との協働によってケース41に固定され継手部45を保持している。
このような構成とすることによって、補助ロッド40ではケース41に対して補助ロッド本体42は補助ロッド本体42の外周がケース41の開口部前端41aに当接して移動が規制される範囲内でいずれの方向(つまり検出ロッド25の軸線方向についてその軸回りの360度方向)にも自在に揺動が可能となっている。
【0019】
図7に示すように、補助ロッド40の補助ロッド本体42の先端は外壁Wに埋設されたロッド固定ボルト47に連結されている。つまり、ロッド固定ボルト47によって揺れ検出装置11は補助ロッド40を介して外壁Wに連結固定されることとなる。図8に示すように、ロッド固定ボルト47は通常の六角ボルトと同様に正六角形ヘッド部48と本体49を備え、本体49外周に雄ネジ50が形成されている。本体41内部には軸方向に透孔が形成されその内周面に雌ネジ51が形成されている。ロッド固定ボルト47は前もって外壁Wに雄ネジ50によって螺着されて埋設されており、その雄ネジ51に対して補助ロッド本体42の雄ネジ44が螺合されている。
図1に示すように、揺れ検出装置11の装着位置に隣接してコントローラボックス52が配設されている。
このような構成においては、まず、外壁Wにロッド固定ボルト47を埋設し、その後補助ロッド40をロッド固定ボルト47に固定する。次いで揺れ検出装置11の検出ロッド25を補助ロッド40に連結する。そして、本体ケース12に対する検出ロッド25の相対的な位置を調整し、クランプ装置27によって本体ケース12を支柱3に固定することで揺れ検出装置11の取り付けが完了する。
【0020】
次に、本実施の形態の足場の揺れ検出システムの電気的構成について説明する。
図9に示すように、コントローラボックス52内には制御手段としてのコントローラ55が収納されている。コントローラ55は周知の中央処理装置(CPU)やROM及びRAM等のメモリを備える。コントローラ55には上記リミットスイッチ20やサブコントローラ53が接続されている。またコントローラ55には通信インターフェイスとして3G規格の通信モジュール56が接続されている。ROMにはリミットスイッチ20からの揺れ検出信号データとサブコントローラ53からの風速データをクラウドサーバ57に転送する送信制御プログラムや通信制御プログラム等を備えている。RAMには検出信号データや風速データが一時的に保存される。揺れ検出信号データは足場1が揺れることによって揺れ検出装置11の検出ロッド25が本体ケース12との間で相対的にスライド移動し、リミットスイッチ20のレバー21がオン状態となることに基づいて取得される。揺れは外壁Wへの足場1の接近と離間であるため接近方向と離間方向に滞在する時間が長くなると揺れが大きいと判断できる。つまり、リミットスイッチ20のある一往復のオン状態とオフ状態の時間が長いことで大きな揺れが生じていると判断できる。風速データはプロペラ装置24から常時取得されてサブコントローラ53に出力され、本実施の形態では風速が秒速7m、10m、15mのそれぞれ異なる風速段階でサブコントローラ53はその風速に応じた3種類の風速データを出力する。
【0021】
図10に示すように、本システムではコントローラ55は通信ネットワークを介してクラウドサーバ57に接続され、クラウドサーバ57に揺れ検出信号データと風速データを転送する。また、クラウドサーバ57は通信ネットワークを介して情報端末装置58に接続され、クラウドサーバ57から情報端末装置58にeメールが送信される。また情報端末装置58からクラウドサーバ57にクラウドサーバ57上のプログラムの設定情報を変更するための命令が送信される。情報端末装置58としては例えば、パソコンやスマートフォンである。情報端末装置58ではこのeメール受信があった場合に音声やモニター画面での表示として受信した旨の特有の受信報知をさせるように設定する。クラウドサーバ57はネットワークを介して複数のコンピュータを利用して処理を行うコンピュータ分散処理の1つである。クラウドサーバ57は、制御部60を備え、制御部60は情報端末装置58と通信するための通信インターフェイスと、周知の中央処理装置(CPU)やROM及びRAM等のメモリ、タイマ等を備える。制御部60のROMにはコントローラ55から送信されたデータに基づいてeメールを作成するとともに情報端末装置58から出力される命令に基づいてeメールを送信するタイミングやeメールの内容を変更するメール作成プログラム、作成されたeメールを設定されている情報端末装置58宛てに送信するメール送信プログラム、通信制御プログラム等を備えている。
【0022】
次に、クラウドサーバ57の制御部60が実行するメール送信の内容を説明する。
制御部60は所定時間内における揺れ検出信号データのオン時間とオフ時間のインターバルが長くなることによって大きな揺れが生じていると判断する。そのインターバル時間の長さと回数がしきい値を越えたと判断した場合に「揺れ状態である」と判断し、第1のeメールを送信する。本実施の形態では第1のeメール送信では、
A「揺れを検知しました。」という定型文章を添付する。同時にeメール本文中にその揺れを測定した時間を表示する。この第1のeメールを送信した後は同じメールの繰り返しを避けるために、揺れを検出しても所定時間(例えば10分)はそのデータをキャンセルし、所定時間経過後に次の送信するようにする。
一方、制御部60は上記3種類の風速データに基づいて第2〜第4のeメールを送信する。例えば、第2のeメール送信では、
B「風速が7mを越えました。」という定型文章を添付する。同時にeメール本文中に風速を測定した時間を表示する。第3と第4のeメールは「7m」がそれぞれ「10m」「15m」と変更された文章となる。
上記のインターバル時間の長さと回数は情報端末装置58から設定が可能である。また、第2〜第4のeメールを送信する際にメールの送信制御、例えば第2のeメールの送信が不要であれば情報端末装置58から設定が可能である。これら第2〜第4のeメールを送信した後は同じメールの繰り返しを避けるために、揺れを検出しても所定時間(例えば10分)はそのデータをキャンセルし、所定時間経過後に次の送信するようにする。但し、異なるeメール間、例えば第2のeメールと第3のeメールとの間ではそのような制限は適用しないので(上記第1のeメールも同様)、第2のeメールを送信したことは第3のeメールを送信することの制限とはならず、急激に風が強くなる場合には第1〜第4のeメールがごく短時間に送信される場合もある。
【0023】
このような構成とすることで、本実施の形態の足場の揺れ検出システムでは次のような効果が奏されることとなる。
(1)足場1は外壁Wに対して接近及び離間する方向に大きく揺れる場合があるがそのような場合でも11検出ロッド25は本体ケース12との間でスライド移動することとなって小さな検出スケールのリミットスイッチ20に大きな負荷がかかることはなく、小さなリミットスイッチ20を使用して揺れを検出することが可能となっている。
(2)検出ロッド25は本体ケース12との間で相対的にスライド移動するだけであり、スライド移動する間に両者間に突起等による部材干渉する部分がないため、足場1の揺れによって検出ロッド25が相対的に動く際に検出ロッド25や本体ケース12に負荷がかかって破損あるいは故障等することがない。
(3)検出ロッド25は補助ロッド40を介して外壁Wに固定されているが、補助ロッド40はケース41に対して補助ロッド本体42が360度自在に揺動するため、足場1が複雑に揺れたとしても検出ロッド25の本体ケース12に対する移動に支障を来すことがない。
(4)揺れ検出装置11をクランプ装置27を使用して足場1に連結固定するようにしたため、ユーザの所望により任意の位置に揺れ検出装置11を配設することが可能となっている。
(5)検出ロッド25はリミットスイッチ20のレバー21に対して連続的にオン状態又はオフ状態となることができる。つまり、連続的なオン又はオフ状態を検出できるため、このような状態の時間量によって揺れの大きさを検出することが可能となっている。
(6)揺れの状態や風速は通信ネットワークを介して情報端末装置58に連絡されるため、現場にいなくとも揺れの状態や現場の風速を遠方のユーザーが取得することができて便利である。
(7)風が強いかどうかに関わりなく揺れ情報が報知され、一方でいくつかの風力のタイミングで風力情報が報知されるようになっている。そのため、どの程度の風で揺れが報知されているかも判断材料とすることができ風の強さとある足場の揺れやすさとの関係を判断することができる。
(8)コントローラ55からは3G規格の通信モジュール56によってクラウドサーバ57に通信するようにしているため、現場が無線LANや有線ランを設定できない環境であっても電話網を使用してインターネット通信が可能となっている。
【0024】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施の形態ではクランプ装置27を使用して揺れ検出装置11の本体ケース12を足場1に連結固定するようにしていたが、図11〜13に示すような足場の連結枠6を利用するようにしてもよい。図11〜13では上記実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明は省略する。図11〜13では揺れ検出装置61として上記実施の形態の本体ケース12の側方に実施の形態のクサビ片5と同形状のクサビ片62を一体的に形成した。このように構成すれば、図12に示すように既設の連結枠6を利用して連結固定することができ作業効率の向上が望める。
・リミットスイッチ20以外の検出手段を使用してもよい。また、レバー21のような接触型の被検出部でなくとも、例えば磁気を利用して検出するようにしてもよい。磁性体を長尺体に内蔵(あるいは表面に装着)すれば上記のような段差のある検出ロッド25以外の段差のない長尺体として構成することが容易である。
・揺れの検出は足場1の状況に応じて例えばオン時間検出の長さで判断するようにしてもよい。上記リミットスイッチ20のオン・オフ位置は逆でもよい。
・サブコントローラ53が出力する風速データは上記では一例として秒速7m、10m、15mであったが、その風速や取得回数は適宜変更可能である。
・上記実施の形態では揺れ情報をeメールに添付して遠方の情報端末装置58にしたが、eメール以外の例えばラインのような通信手段でもいい。また、eメールに揺れ情報を添付するのではなく本文中に書き込むようにしてもよい。
・上記実施の形態で使用したクランプ装置27は一対のキャッチ部28が固定されているタイプであったが、キャッチ部が相対的に回動できるタイプのクランプ装置を使用してもよい。
・上記実施の形態ではクラウドサーバ57を使用したが使わなくともよい。
その他本発明はその趣旨を逸脱しない態様で変更して実施することは自由である。
【符号の説明】
【0025】
1…足場、12…筐体としての本体ケース、20…検出手段としてのリミットスイッチ、25…長尺体としての検出ロッド。
図1
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図6
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図13