特開2017-26114(P2017-26114A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017026114-外部制御式ファン・クラッチ装置 図000003
  • 特開2017026114-外部制御式ファン・クラッチ装置 図000004
  • 特開2017026114-外部制御式ファン・クラッチ装置 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-26114(P2017-26114A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】外部制御式ファン・クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 35/02 20060101AFI20170113BHJP
   F01P 7/08 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
   F16D35/02 G
   F01P7/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-148109(P2015-148109)
(22)【出願日】2015年7月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】菅原 大樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トルク伝達室への油の供給量を制御する電磁弁の動作特性を改善した外部制御式ファン・クラッチ装置を提供する。
【解決手段】回転軸体1側に固定した電磁石16に通電することにより駆動ディスク3や密封器匣2に設けられた、板ばね10−1とアーマチャー10−2とからなる弁部材10を作動させて油循環流通路8(油供給口)を外部から開閉制御する方式の外部制御式ファン・クラッチ装置において、弁部材10として、弁部材10の板ばね10−1に取着されるアーマチャー10−2を板ばね10−1の基端側から揺動端側に向かう方向において複数に分割して板ばね10−1の曲げ点を複数設けた構造となしたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ディスクを固着した回転軸体上に、軸受を介して支承された非磁性体のケースと該ケースに取着されたカバーとからなる密封器匣の内部に、駆動ディスクを内装するトルク伝達室と油溜り室を備え、前記油溜り室の側壁面にトルク伝達間隙に通ずる少なくとも一つの油循環流通路を有し、前記油循環流通路を開閉する磁性を有する弁部材を備え、前記弁部材は前記密封器匣にその一端を取着された板ばねにアーマチャーが取付けられた構成となし、前記回転軸体に軸受を介して支持した電磁石、同回転軸体の外周にリング形状の磁性部材を備え、前記電磁石により前記弁部材を作動させて前記油循環流通路を開閉制御する仕組みとなし、駆動側と被駆動側とのなすトルク伝達間隙部での油の有効接触面積を増減させて駆動側から被駆動側への回転トルク伝達を制御するようにしてなる外部制御式ファン・クラッチ装置において、前記弁部材として、当該弁部材の板ばねに取着されるアーマチャーを板ばねの基端側から揺動端側に向かう方向において複数に分割して板ばねの曲げ点を複数設けた構造となしたことを特徴とする外部制御式ファン・クラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に自動車等における機関冷却用のファン回転を外部周囲の温度変化あるいは回転変化に追従して制御する方式の外部制御式ファン・クラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の外部制御式ファン・クラッチ装置としては、駆動ディスクを固着した回転軸体(シャフト)上に、軸受を介して支承された非磁性体のケースと該ケースに取着されたカバーとからなる密封器匣の内部に、駆動ディスクを内装するトルク伝達室を備え、前記駆動ディスクの内部を中空となして設けた油溜り室の側壁面にトルク伝達間隙に通ずる少なくとも一つの油循環流通路(油供給口)を有し、前記油循環流通路を開閉する磁性を有する弁部材を備え、該弁部材を電磁石により作動させて駆動側と被駆動側とのなすトルク伝達間隙部での油(粘性流体)の有効接触面積を増減させて駆動側から被駆動側への回転トルク伝達を制御する方式のものが知られている。
【0003】
この種の外部制御式ファン・クラッチ装置としては、例えば回転軸体側に固定した電磁石に通電することにより駆動ディスクや密封器匣に設けられた弁部材をアーマチャーを介して作動させて油循環流通路(油供給口)を外部から開閉制御する方式の外部制御式ファン・クラッチ装置があり、その構造は、電磁石のコイルの励磁による磁束を透磁率の高い磁性体からなる回転軸体の磁路を通して板ばねからなる弁部材のアーマチャーに伝え、再び電磁石に戻る磁気回路(磁気ループ)を構成し、電磁石によりクラッチ装置内部の弁部材を作動させてトルク伝達油の流量を制御する方式となしたものである(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−238111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の外部制御式ファン・クラッチ装置の場合は、以下に記載する欠点がある。
即ち、従来の外部制御式ファン・クラッチ装置では、トルク伝達室への油供給量を弁部材によって制御しているが、油供給量を増大するためには弁部材のストローク(開閉動作量もしくは移動量)を大きくする必要がある。しかし、駆動ディスクや密封器匣に設けられる油循環流通路(油供給口)を開閉する油供給用の弁部材は、一体型(一枚物)のアーマチャーが一枚物の板ばねの裏面に貼り付けられた構造となっており、当該弁部材のアーマチャーが回転軸体近傍に位置するように板ばね基端部を駆動ディスクもしくは密封器匣に取着されているため、油供給量を増やすために弁部材のストロークを大きくして開放量を増大させると、弁部材の板ばねが油循環流通路から大きく離間し電磁石によるアーマチャーの吸引力が不足したり、板ばねの応力が増大するなどして弁開閉動作が不安定になる等の不具合が生じる。又、電磁石とアーマチャーによる板ばねの吸引力を高めるためにより磁力の大きい電磁石を使用すると、電磁石の寸法、重量が大きくなり、ファン・クラッチ装置の小型、軽量化が難しくなり、消費電力も多く必要となる。
【0006】
本発明は、上記した従来の外部制御式ファン・クラッチ装置の課題を解決するためになされたもので、弁部材のアーマチャーを従来の一体型から複数分割型にすることにより、弁部材の動作特性を改善した外部制御式ファン・クラッチ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る外部制御式ファン・クラッチ装置は、電磁弁における特性を改善するために弁部材のアーマチャーを複数分割型にして板ばねの曲げ点を増やすことにより、弁部材のストロークを容易に確保できるのみならず、板ばねの応力を分散することができるようにしたもので、その要旨は、駆動ディスクを固着した回転軸体上に、軸受を介して支承された非磁性体のケースと該ケースに取着されたカバーとからなる密封器匣の内部に、駆動ディスクを内装するトルク伝達室と油溜り室を備え、前記油溜り室の側壁面にトルク伝達間隙に通ずる少なくとも一つの油循環流通路を有し、前記油循環流通路を開閉する磁性を有する弁部材を備え、前記弁部材は前記密封器匣にその一端を取着された板ばねにアーマチャーが取付けられた構成となし、前記回転軸体に軸受を介して支持した電磁石、同回転軸体の外周にリング形状の磁性部材を備え、前記電磁石により前記弁部材を作動させて前記油循環流通路を開閉制御する仕組みとなし、駆動側と被駆動側とのなすトルク伝達間隙部での油の有効接触面積を増減させて駆動側から被駆動側への回転トルク伝達を制御するようにしてなる外部制御式ファン・クラッチ装置において、前記弁部材として、当該弁部材の板ばねに取着されるアーマチャーを板ばねの基端側から揺動端側に向かう方向において複数に分割して板ばねの曲げ点を複数設けた構造となしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る外部制御式ファン・クラッチ装置は、弁部材のアーマチャーを複数分割型にして板ばねに複数の曲げ点を設けることにより、板状ばねの応力を分散することが可能となり、油供給量を増やすために弁部材のストロークを大きく設定しても電磁石によるアーマチャーの吸引力を増大させずに弁部材を作動させることが可能となる。従って、本発明によれば、弁部材の板ばねが油循環流通路から大きく離間しても板ばねの応力が増大したり、電磁石によるアーマチャーの吸引力が不足するようなことがないため、通常の電磁石で安定した弁開閉動作が得られ、板ばねの吸引力を高めるために磁力の大きい電磁石を使用する必要がなくなることによりファン・クラッチ装置の小型、軽量化をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る外部制御式ファン・クラッチ装置の一実施例(弁開放状態)を示す概略縦断面図である。
図2図1に示す外部制御式ファン・クラッチ装置の弁部材(アーマチャー分割型)を示す説明図で、(A)は概略平面図、(B)は図(A)b−b線上の概略縦断面図である。
図3】従来の外部制御式ファン・クラッチ装置の弁部材(アーマチャー一体型)を示す説明図で、(A)は概略平面図、(B)は図(A)b−b線上の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す外部制御式ファン・クラッチ装置は、駆動部(エンジン)の駆動によって回転する回転軸体(駆動軸)1に、軸受13を介してケース2−1とカバー2−2とからなる密封器匣2が支承され、この密封器匣2内のトルク伝達室6内に回転軸体1に固着された駆動ディスク3が内装されている。ケース2−1には、前記トルク伝達室6に通じる油流通路9と、内部を中空となして設けた油溜り室5を備え、該油溜り室(オイル貯蔵室)5の上部に前記油流通路9と連通する油循環流通路(油供給口)8が設けられ、油溜り室5内の油が油循環流通路(油供給口)8及び油流通用空間部9を介してトルク伝達室6に供給される構造となっている。前記油循環流通路8を開閉する油供給用の弁部材10は、板ばね10−1とアーマチャー10−2とからなり、当該弁部材のアーマチャー10−2が回転軸体1近傍に位置するように当該回転軸体1に外嵌されかつ板ばね10−1基端部を前記油流通路9内のケース裏面側に設けた取付部11に捩子等により固着している。他方、密封器匣2の駆動部側には、回転軸体1に軸受14を介して支承されたリング状の電磁石支持体17にリング状の電磁石16が支持され、この電磁石16と前記弁部材10間の回転軸体1の外周に外嵌されたケース2−1の基部外周に第1磁性体リング18が配置され、さらに電磁石支持体17とケース2−1の間に前記第1磁性体リング18を囲むように第2磁性体リング19が固着されている。
【0011】
ここで、上記構成の外部制御式ファン・クラッチ装置における本願発明と従来の弁部材の構成を比較するため、まず従来の弁部材を図3に基づいて説明する。 即ち、図3(A)(B)に示す従来の弁部材10´(アーマチャー一体型)は、本体が環状となした板ばね10´−1とアーマチャー10´−2とからなり、板ばね10´−1は基端部10´−1aと反対側端部に三角形状の突出部10´−1bが形成され、この板ばね10´−1の環状部裏面に一体型の環状のアーマチャー10´−2が貼り付けられた構造となしている。そして、この従来の弁部材10´は、当該弁部材のアーマチャー10´−2が回転軸体1近傍に位置するように板ばね基端部10´−1aが当該回転軸体1に外嵌されかつケース裏面側に設けた取付部11に捩子等により固着されている。図中、10´−3は取付け孔である。しかしながら、一体型の環状のアーマチャー10´−2が板ばね10´−1に貼り付けられた弁部材10´の場合、電磁石16の非励磁状態においては板ばね基端部10´−1aの固着部のみを曲げ点として当該弁部材の板ばね10´−1が油循環流通路8から離間した状態になるため、油供給量を増やすために当該弁部材のストロークを大きくして開放量を増大させると、板ばねの三角形状の突出部10´−1bが油循環流通路から大きく離間し、電磁石16によるアーマチャー10´−2の吸引力が不足したり、板ばね10´−1の応力が増大するなどして弁開閉動作が不安定になる等の不具合が生じる。即ち、従来の弁部材10´は、一体型(一枚物)のアーマチャー10´−2を使用しているために当該弁部材の曲げ点が1つであることにその原因がある。
【0012】
これに対し、本願発明の弁部材10は、従来一体型であったアーマチャーを複数分割型にして板ばねの曲げ点を増やすことにより、板ばねの応力を分散することができるようにしたもので、その構造は図2(A)(B)に示すように複数分割型のアーマチャーを採用した以外は、前記図3(A)(B)に示す従来の弁部材10´と同様の構成を有するものである。即ち、本願発明の弁部材10は、本体が環状となしかつ基端部10−1aと反対側端部に三角形状の突出部10−1bが形成された板ばね10−1と分割型のアーマチャー10−2とからなり、板ばね10−1の環状部裏面に当該板ばねの基端部10−1a側から三角形状の突出部10−1b側に向かう方向において、例えばアーマチャー分割片10−2a、10−2bの二つに分割したアーマチャー10−2を板ばね10−1の裏面に貼り付け、その二つのアーマチャー分割片10−2a、10−2bの分割部10−2cを板ばね10−1のもう一つの曲げ点とするものである。この分割型のアーマチャー10−2を採用した本願発明の弁部材10は、前記したように当該弁部材のアーマチャー10−2が回転軸体1近傍に位置するように当該回転軸体1に外嵌されかつ板ばね10−1基端部を前記油流通用空間部9内のケース裏面側に設けた取付部11に捩子等により固着されている。図中、10−3は取付け孔である。
【0013】
上記構成の弁部材10を採用した本願発明の外部制御式ファン・クラッチ装置において、電磁石16がOFF(非励磁)の時はアーマチャー10−2が当該板ばね10−1の作用により油循環流通路8から離間することにより油循環流通路8が開き、油溜り室5とトルク伝達室6が連通し、油溜り室5内の油がトルク伝達室6に供給されるが、この時、弁部材10の板ばね10−1は二つのアーマチャー分割片10−2a、10−2bの分割部10−2cを曲げ点として開くため、二つのアーマチャー分割片10−2a、10−2bのうち板ばね基端部10−1a側のアーマチャー分割片10−2aは第2磁性体リング19にほぼ接触した状態にある。他方、電磁石16がON(励磁)の時はアーマチャー10−2が当該板ばね10−1に抗して吸引されることにより、当該板ばね10−1の三角形状の突出部10−1bにより油循環流通路8が閉じられ、油溜り室5内の油トルク伝達室6への供給が遮断されるが、この時、弁部材10の板ばね10−1は二つのアーマチャー分割片10−2a、10−2bの分割部10−2cを曲げ点として閉じるため、板ばね10−1基端部を曲げ点とする場合に比べてアーマチャーの吸引力を小さくできる。従って、例えばトルク伝達室への油供給量を増やすために弁部材10のストロークを大きく設定しても電磁石16によるアーマチャー10−2の吸引力を増大させずに弁部材10を作動させることが可能となる。又、アーマチャー10−2をさらに複数分割して板ばね10−1の曲げ点を増やすことにより、板ばね10−1に作用する応力をさらに分散させることができる。
このように本発明によれば、弁部材の板ばねが油循環流通路から大きく離間しても板ばねの応力が増大したり、電磁石によるアーマチャーの吸引力が不足するようなことがないため、通常の電磁石で安定した弁開閉動作が得られ、板ばねの吸引力を高めるために磁力の大きい電磁石を使用する必要がなくなることにより外部制御式ファン・クラッチ装置の小型、軽量化をはかることができる。
【0014】
なお、実施例は、板ばねの曲げ点及びアーマチャー分割片をそれぞれ2つとした弁部材を採用した外部制御式ファン・クラッチ装置を例にとり説明したが、板ばねの曲げ点及びアーマチャー分割片の数は板ばねのストロークや応力の分散等を考慮して適宜設定することとする。又、ここでは、外部制御式ファン・クラッチ装置として、密封器匣のケースに油溜り室を設けた形式のものに適用した場合について説明したが、駆動ディスク側に油溜り室を設けた構造の外部制御式ファン・クラッチ装置等にも適用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0015】
1 回転軸体(駆動軸)
2 密封器匣
2−1 ケース
2−2 カバー
3 駆動ディスク
5 油溜り室(オイル貯蔵室)
6 トルク伝達室
8 油循環流通路(油供給口)
9 油流通路(油流通用空間部)
10 弁部材
10−1 板ばね
10−1a バネ基端部
10−1b 三角形状の突出部
10−2 アーマチャー
10−2a、10−2b アーマチャー分割片
10−2c 分割部(曲げ点)
10−3 取付け孔
11 弁部材取付部
13、14 軸受
16 電磁石
17 電磁石支持体
18 第1磁性体リング
19 第2磁性体リング
図1
図2
図3