特開2017-26183(P2017-26183A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017026183-重力給弾模擬銃専用軟質弾丸 図000004
  • 特開2017026183-重力給弾模擬銃専用軟質弾丸 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-26183(P2017-26183A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】重力給弾模擬銃専用軟質弾丸
(51)【国際特許分類】
   F42B 6/10 20060101AFI20170113BHJP
   F41B 7/08 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
   F42B6/10
   F41B7/08 P
   F41B7/08 K
   F41B7/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-142672(P2015-142672)
(22)【出願日】2015年7月17日
(71)【出願人】
【識別番号】592153584
【氏名又は名称】株式会社東京マルイ
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 巌
(57)【要約】
【課題】命中しても人や物を傷付けることなく安全に遊ぶことができ、かつまた、軟質であるにも拘らず確実に給弾され、発射される重力給弾模擬銃専用の軟質弾丸を提供する。
【解決手段】模擬銃に用いる球形の弾丸であって、弾丸本体1がプラスチックの型成形によって形成されており、上記プラスチックは熱可塑性弾性体より成ることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬銃に用いる球形の弾丸であって、
弾丸本体がプラスチックの型成形によって形成されており、
上記プラスチックは熱可塑性弾性体より成ることを特徴とする
重力給弾模擬銃専用軟質弾丸。
【請求項2】
熱可塑性弾性体は、その硬度がJIS K6253Aの測定方法において5〜40度の範囲を示す
請求項1記載の重力給弾模擬銃専用軟質弾丸。
【請求項3】
弾丸本体の硬度が、JIS K6253Aの測定方法において8〜12度の範囲にあり、かつ、その弾丸本体の表面に減摩剤が付着している
請求項1又は2記載の重力給弾模擬銃専用軟質弾丸。
【請求項4】
弾丸本体を構成するプラスチックがSEBSを主成分とするものであり、減摩剤が微粉状のもので、タルクとデンプンの少なくとも一方又は両方を含んで構成されている
請求項3記載の重力給弾模擬銃専用軟質弾丸。
【請求項5】
弾丸本体が縦横に配列されるとともに、上記弾丸本体の配列の外周の全部又は一部にランナー枠があり、全ての弾丸同士及び弾丸とランナー枠が繋がっており、使用時に1個ずつ切り離して使用するように構成された
請求項1乃至4の何れかに記載の重力給弾模擬銃専用軟質弾丸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模擬銃に用いる球形の弾丸であって、重力給弾模擬銃専用の軟質弾丸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
模擬銃には、俗に銀玉鉄砲と呼ばれる簡易な構造を持ったものがあり、特に、年少者を対象とするものして従来から普及している。それは、俗称から推測されるように、銀色の球状弾丸をトリガー操作だけで発射できることを特徴とするもので、複雑な弾丸の供給機構や発射機構等を必要としない。
【0003】
銀玉と称する弾丸は直径が7mmほどの石膏製や粘土製のものである。現在、模擬銃に使用されている弾丸にはプラスチック製のBB弾があり、より柔軟な素材を用いた軟質弾等もある。しかし、それらの弾丸でも、当たれば或る程度のショックを感じるのは当然であり、銀玉鉄砲でも威力は弱いが同様である。
【0004】
そこで、本発明者は弾丸が人の皮膚に当たっても物が当たったショックを感じない、模擬銃のシステムを開発して来た。それは銀玉鉄砲に代わる銃、というよりも全く新しい模擬銃であり、言ってみれば究極的な安全性を有するものである。本発明はそうした模擬銃に最適の弾丸として設計されたものである。
【0005】
一方、先行技術を調査したが、該当するものや類似するものなどは全く見出すことができなかった。軟質弾丸或いはソフト弾丸等の概念に該当する発明がそもそも存在しない。ソフトという文言は特表2007−505286号に見出され、請求項16にペイントボール、エアソフト・ボール、「bb」又はペレットのような弾丸との記載があるが、明細書には説明されていない。そのため詳細は不明であるが、電動式圧縮空気銃に関することから、本発明とは殆ど関係がないものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−505286号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたもので、その課題は、命中しても人や物を傷付けることなく安全に遊ぶことができる重力給弾模擬銃専用の軟質弾丸を提供することである。また、本発明の他の課題は、軟質であるにも拘らず確実に給弾され、かつ、発射される重力給弾模擬銃専用軟質弾丸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、本発明は、模擬銃に用いる球形の弾丸として、弾丸本体がプラスチックの型成形によって形成されており、上記プラスチックは熱可塑性弾性体より成るものとするという手段を講じたものである。
上記熱可塑性弾性体は、その硬度がJIS K6253Aの測定方法において5〜40度の範囲を示すものであることが望まれる。
【0009】
弾丸本体はプラスチックの型成形によって形成されるが、しかし、全てのプラスチックを型成形法によって成形できるものではない。試行錯誤の結果、本発明に係る軟質弾丸に適用する熱可塑性弾性体の場合は、その硬度がJIS K6253Aの測定方法において5〜40度の範囲の適当であることが判明した。
【0010】
硬度が5未満では、成形不可能ではないにしても困難であり、ランナーから切り離した後のゲート跡が大きくなる。その一方、硬度が40を超えるようになると成形は容易化するが、本発明の目的からは硬過ぎるため適当とはいえなくなる。なお、JIS K6253Aの測定方法は、高低何れでもない中硬度の一般ゴム用を対象とするタイプAデュロメーターを用いると規定されている。
【0011】
特に、弾丸本体の硬度がJIS K6253Aの測定方法において8〜12度の範囲にあり、かつ、その弾丸本体の表面に微粉状の減摩剤が付着しているものは、本発明に係る軟質弾丸として好適である。硬度の問題は軟質弾丸の供給とも関連する。硬度が20度を下回るようになると、成形は可能であるが接触している弾丸本体同士或いは弾丸本体と弾丸供給路との間の摩擦の影響が顕著になり、給弾と発射される弾丸の飛び方に大きな支障が出るという傾向が認められた。従って、減摩剤は弾丸の摩擦低減の目的で用いられる。
【0012】
上記8〜12度という硬度は、本発明の軟質弾丸の硬度として好適である反面、上記のように摩擦の影響が強く現れて来る。従って、互いに接触している弾丸本体同士或いは弾丸本体と弾丸供給路との間の摩擦の影響を低減するとともに、軟質弾丸を重力のみの作用によって供給可能にするには、減摩剤の併用が望まれる。減摩剤には後述する微粉状のものが適している。微粉状のものは、振りかけて弾丸本体表面に万遍なく付着させることが容易であり、また、必要があれば洗い落とすことも容易である。
【0013】
弾丸本体を構成するプラスチックはSEBS(スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体)を主成分とするものであり、また、微粉状の減摩剤はタルクとデンプンの少なくとも一方又は両方を含んで構成されているものが望ましい。SEBS(スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体)を主成分とするプラスチックは人体にも安全な材質として、例えば、医療用具や歯ブラシ等にも使用されており、本発明に係る軟質弾丸としても好ましいものである。
【0014】
また、上記に属する微粉状の減摩剤としては、天花粉、シッカロール(登録商標)、ベビーパウダー(登録商標)等が適切である。天花粉は黄カラスウリのデンプンを主成分とするものとして知られ、後の二者はタルクとデンプンを主成分とするものとして知られている。なお、減摩剤は、軟質弾丸を使用するまでの何時でも弾丸本体に付着させることができる。
【0015】
その他、例えば、シリコンオイルのようなものも使用可能であり、実験により効果のあることを確認している。しかしながら、上記の、例えばシッカロール(登録商標)等の方が、摩擦の低減においてより良い結果を得ており、また、人体に対する安全性も長年の使用実績によって確認され、また、安価で入手もより容易である。
【0016】
弾丸本体が縦横に配列されるとともに、上記弾丸本体の配列の外周の全部又は一部にランナー枠があり、全ての弾丸同士及び弾丸とランナー枠がつながっており、使用時に1個ずつ切り離して使用するようにした構成は本発明として好ましいものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上のように構成され、かつ、作用するものであるから、非常に硬度の低い熱可塑性弾性体を用いて型成形し全く新しい重力給弾模擬銃専用の軟質弾丸を提供することができるという効果を奏する。本発明に係る軟質弾丸は非常に軟質、かつ、軽量であるにも拘らず重力のみによって供給することができ、また、軟質弾丸は、命中しても人や物を傷付けることなく安全に遊ぶことができるものであるから、究極的な安全性を発揮する。さらにまた、本発明によれば、軟質であるにも拘らず、弾丸との接触摩擦が低減される結果、弾丸が確実に分離して給弾されるとともに、安定した発射が可能になり、正確な弾道を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る重力給弾模擬銃専用軟質弾丸の一例を示す説明図であり、Aは1個軟質弾丸の断面図、Bは多数個から成る軟質弾丸の外観図である。
図2】同軟質弾丸を用いる重力給弾模擬銃の内部機構を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は本発明に係る重力給弾模擬銃専用軟質弾丸BBを示すもので、弾丸本体1はプラスチック球形のものより成る。実施例の軟質弾丸BBはSEBS(スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体)を主成分とする熱可塑性弾性体である。
【0020】
実施形態における軟質弾丸BBは、弾丸本体の硬度がJIS K6253Aの測定方法において8〜12度の範囲にある。上記熱可塑性弾性体を用いて、硬度が8度、10度、12度のものを射出成型した。これら三点の軟質弾丸の実験結果について大差はないが、特に、10度の硬度を持つ実施例のものが、成形性、摩擦低減、発射性及び無ショック性のトータルのバランスにおいて最適であった。
【0021】
また、上記弾丸本体1の表面にはタルクとデンプンを主成分とする微粉状の減摩剤2が付着している。この減摩剤2は、型成形された軟質弾丸にシッカロール(登録商標)を、振りかけて弾丸本体表面に万遍なく付着させたものである。減摩剤2の付着は、次に述べるランナー枠3につながっている状態でも可能であるが、1個1個切り離した後、模擬銃に供給する前に、まとめて振りかけた方がより良い結果を得るであろう。
【0022】
図1Bは、弾丸本体1が縦横に配列されるとともに、上記弾丸本体1の配列の外周の全部又は一部にランナー枠3があり、全ての弾丸本体1同士及び弾丸本体1とランナー枠3がつながって構成されたものを示す。ランナー3に直接つながった弾丸本体1には太さの異なる枝ランナー4がつながっており、使用時に1個ずつ切り離して使用するように構成されている。
<効果確認の実験>
本発明に係る軟質弾丸の効果の一部を確認するために、その威力について比較する実験を行なったので、その結果を以下に示す。実験は、軟質弾丸と比較用BB弾(軟質弾丸とほぼ同じ質量)を同じ初速でプッシュゲージのセンサー部に衝突させ、衝突エネルギーの測定を行なった(なお、減摩剤はシッカロール(登録商標)を使用した。)。
<実験条件>
・軟質弾丸質量 0.109g(五発計測の平均)
・軟質弾丸の硬度 10度(JIS K6253A)
・BB弾質量(比較例)0.114g(五発計測の平均)
・弾の射出初速 60m/s
・センサー位置 銃口より1cm
・発射装置 調整済みのエアコッキングガン
<実験結果>




表1
【0023】
単位:ニュートン(N)
表1によれば、本発明の軟質弾丸を、上記の実験条件にて発射して得られた運動エネルギーは、五回の平均値で1.53Nである。これに対し、BB弾を、同じ実験条件にて発射して得られた運動エネルギーは、同様に2.86Nである。弾丸質量としてはほぼ同等であり、従って、仕事量はほぼ同じ値を示すはずであるが、プッシュゲージによって得られた、本発明に係る軟質弾丸による運動エネルギーは比較例のそれの53%にとどまっている。これは、軟質弾丸であるためセンサーへの衝突によって圧縮され、その変形にエネルギーが消費されたことを示す。従って、人体に及ぼす外力も著しく小さいものとなる。参考までに、本発明に係る軟質弾丸を手の平に命中させた場合の感触について、若年層を含む多数人に問診したところ、例外なく弾丸が当たった感触が殆ど感じられないという結果が得られた。
【0024】
このような本発明に係る軟質弾丸BBは、いわゆる銀玉鉄砲に属する模擬銃に用いられる。図2は、特に改良された模擬銃10を示しており、11は銃腔すなわち発射される弾丸Bが通過する空間であって、その内方部分に装弾部12が設定され、弾丸発射口である銃口13はその外方に開口する。
【0025】
装弾部12は供給された弾丸Bを発射まで保持する弾丸ホルダー12aを有している。弾丸ホルダー12aは弾丸を一時的に止めるに足りる程度の突条から成り、装弾部12の左右両側面に設けられている。上記弾丸Bと弾丸ホルダー12aのどちらか一方又は両方が、前進するストライカー15に押されて弾丸Bを通過させるために変形可能な素材、例えば、ナイロン(登録商標)、ゴム等の素材によって形成されている。
【0026】
従って、一般的なBB弾と同程度の硬質弾丸であっても、後述するストライカー15によって打圧されたときには、弾丸ホルダー12aが弾性変形して通過することができる。また、それ自体が指先で押したときに変形する程度の軟質弾丸の場合には、軟質弾丸が弾性変形して通過することができる。
【0027】
上記銃腔11の後方はストライカー移動路14となって連続しており、そこに後述するストライカー15が前進後退可能に設けられている。ストライカー15は、後退時には給弾口よりも後方の位置に下がり、前進時にはストライカー15の前端が装弾部12に達して弾丸Bを打圧する。ストライカー移動路14の上位には、弾丸Bが隣接して装弾部12まで重力供給される供給路16が位置している。
【0028】
重力給弾の手段として、上記供給路16は、水平部分から成る後側部分と傾斜面から成る前側部分とから構成されている。供給路16の先端は装弾部12に弾丸Bを落とすための装弾口17を構成し、その後端には給弾口18が形成され、その間に所要個数の弾丸Bを充填できるように構成されている。供給路16の前側部分は傾斜面から装弾口17に向けて滑らかな曲面を経てほぼ垂直に向きを変え(このため、装弾口17も僅かながら狭められる。)、また、弾丸Bが滑り落ちる傾斜面の一部に切り離し部材20が設けられている。
【0029】
上記切り離し部材20は後端上部の支軸19によって回転可能に設けられ、それによって、先端下部がストライカー移動路14及び供給路16に対して出入りするように構成されている。切り離し部材20は、ストライカー15の後退時に、ストライカー移動路14の上枠を兼ねる部分に設けられたストッパー21に係止し、それ以上は開かない。また、ストライカー15の前進時にはストライカー15の上面を摺動し、この状態では切り離し部材20の先端側は供給路16内に入り込んで装弾口17を狭め、弾丸Bの移動を途中で止めるように構成されている。
【0030】
弾丸発射機構としてトリガー22が設けられており、トリガー22はそれと一体のスライド部材23によって、銃本体側に設けられた前後動部24を前進後退可能に設けられている。スライド部材23には係合部材25が支軸26の回りに回転可能に取り付けられ、係合部材25の係合部27は、ストライカー15に設けられた係合相手部28と、後述するように係合可能な関係に置かれている。
【0031】
すなわち、トリガー22を引く操作によって、係合部27と係合相手部28が係合し、ストライカー15を後退させるとともに、係合部27の回転により係合相手部28との係合が外れることでストライカー15の前進を可能にする関係に設けられている。従って、ストライカー15は後退時にメインスプリング30を圧縮し、それによって蓄圧されたばね力で瞬時に前進する。
【0032】
メインスプリング30の後方バネ受け29は銃本体側に設けられており、前方バネ受け31はストライカー15の後端部に設けられている。前方バネ受け31は、銃本体内部の構造体32をストッパーとして前進限界が規定されている。
【0033】
本発明に係る軟質弾丸は上記のように構成されているので、適切に重力給弾され、発射させることができる。図2の模擬銃は、特に、発射位置にある弾丸を、次弾から機械的に完全に切り離す手段を具えるもので、それによって次弾の影響を断ち、弾丸の直進性を得るとともに、飛距離を増大するなど性能の向上を図ったものである。従って、本発明に係る軟質弾丸BBは、図2の模擬銃を使用しなければならないものではなく、従来の重力給弾構造を有する銀玉鉄砲を使用しても、当然発射可能である。
【符号の説明】
【0034】
BB 重力給弾模擬銃専用軟弾丸
1 弾丸本体
2 減摩剤
3 ランナー
4 枝ランナー
10 模擬銃
11 銃腔
12 装弾部
13 銃口
14 ストライカー移動部
15 ストライカー
16 供給路
17 装弾口
18 給弾口
19、26 支軸
20 切り離し部材
21 ストッパー
22 トリガー
図1
図2