(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-26293(P2017-26293A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステム。
(51)【国際特許分類】
F23G 7/06 20060101AFI20170113BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20170113BHJP
F23G 7/07 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
F23G7/06 101Z
B01D53/86 150
F23G7/07 TZAB
F23G7/07 W
F23G7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-154565(P2015-154565)
(22)【出願日】2015年7月16日
(71)【出願人】
【識別番号】599092723
【氏名又は名称】株式会社沖山製作所
(72)【発明者】
【氏名】沖山 雅哉
【テーマコード(参考)】
3K078
4D048
【Fターム(参考)】
3K078CA21
3K078DA02
3K078DA08
3K078DA14
3K078DA24
4D048AA23
4D048AB01
4D048BA30X
4D048BB02
4D048CC42
(57)【要約】
【課題】 本発明は乾燥炉または加熱炉内で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステムに関し、特に触媒を通して排気ガスを分解処理し、無害化した排気ガスの熱エネルギーを熱交換器にて新鮮空気と効率よく置き換え、昇温された新鮮空気を乾燥炉または加熱炉の昇温用熱エネルギーとして利用するするシステムに関する。
【解決手段】 乾燥炉または加熱炉内で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステムであって、特に乾燥炉または加熱炉の排気ガスを助燃バーナーで昇温し、触媒を通して排気ガスを触媒分解処理し、無害化した排気ガスを大気に放出すると共に、無害化した排気ガスの熱エネルギーを熱交換器にて排気ガスと同等量の新鮮空気と効率よく置き換え、昇温された新鮮空気を乾燥炉または加熱炉の昇温用熱エネルギーとして利用するするシステムを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガス流路に、排気ガス加温用バーナー燃焼室を設け、加温された排気ガスを触媒燃焼部に導入して分解無害化し、分解された排気ガスを熱交換器に導入し、該熱交換器において、効率良く排気ガスの熱エネルギーを新鮮空気と置き換えて、昇温用熱エネルギーとして乾燥炉または加熱炉へ循環させるように構成したことを特徴とする乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステム。
【請求項2】
新鮮空気導入用ファンを経て熱交換器に導入された新鮮空気は、同等量の排気ガスの熱エネルギーと熱交換され、乾燥炉または加熱炉への昇温用熱エネルギーとして供給されると共に、排気ガスは熱交換後排気路を経て外気に放出されるように構成したことを特徴とする請求項1記載の乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステム。
【請求項3】
触媒燃焼過程における触媒は、白金触媒であり、バーナー燃焼室に排気ガスを導入し、400℃前後まで昇温するため、効率良く触媒燃焼が行われることを特徴とする請求項1記載の乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステム。
【請求項4】
排気ガスの分解は、白金触媒での燃焼温度を活性効率の高い400℃前後にすることを特徴とする請求項1記載の乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥炉または加熱炉内で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステムに関し、特に、乾燥炉または加熱炉の排気ガスを助燃バーナーで加温し、触媒を通して排気ガスを触媒分解処理し、昇温し、無害化した排気ガスを熱交換器にて、同等量の空気と熱交換を同時に行うシステムに関するものである。
【0002】
従来、乾燥炉または加熱炉内で発生する排気ガスは無害化処理及び熱回収されることなく大気中に放出していたが、本発明により、排気ガスの無害化処理及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うことができる。
【背景技術】
【0003】
本発明の乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステムにおいては、排気ガスの流路に排気ガス加温用バーナーを設け、加温された排気ガスは触媒燃焼部を通り分解無害化される。
【0004】
分解無害化された排気ガスの熱エネルギーを熱交換器にて排気ガスと同等量の新鮮空気に効率良く置き換えて乾燥炉の昇温用熱エネルギーとして利用するシステムを提供するものであり、このシステムは既存の乾燥炉または加熱炉の排気ガス経路に取付けることも可能であり、燃費の向上と同時に排気ガスを無害化することのできるハイブリッド装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−281525号公報「排ガス熱回収システム」
【特許文献2】平3−217273号公報「乾燥炉排ガス処理装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、乾燥炉または加熱炉より発生する排気ガスの処理は、800℃程度まで加温する直接燃焼方式または300℃程度まで加熱し触媒を通して排気ガスを処理する方法が知られているが、いずれも処理排気ガスを乾燥炉または加熱炉に単独で取り付けられ、効率良く熱回収ができていない状況であった。
【0007】
また、従来の一般の間接式乾燥炉には、炉内に新鮮空気を導入する機能はなく、炉内から排気ガスを引き出すと炉内は負圧状態になり、引き出された排気ガスと同等量の塗装室内の冷たい空気が乾燥炉出入口より流入するが、出入口は冷めてヤニが発生するので、ヤニが落ちて塗装製品の不良原因となることがある。
【0008】
本発明では、乾燥炉出入口から排気ガスと同量の塗装室内の冷たい空気が流入し続けないため、乾燥炉の燃費が良くなる。
【0009】
そこで、350℃付近の高沸点物質の処理ができ、高効率で熱回収可能で、その熱を乾燥炉または加熱炉に再利用できるシステムが必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステムによれば、乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガス流路に排気ガス加温用バーナー燃焼室を設け、加温された排気ガスを触媒燃焼部に導入して分解無害化し、触媒分解された排気ガスを熱交換器に導入し、該熱交換器において、排気ガスの熱エネルギーを効率よく排気ガスと同等量の新鮮空気と置き換えて、昇温用熱エネルギーとして乾燥炉または加熱炉へ循環させるように構成したことを特徴とし、新鮮空気導入用ファンを経て熱交換器に導入された排気ガスと同等量の新鮮空気は、排気ガスの熱エネルギーと熱交換され、乾燥炉または加熱炉への昇温用熱エネルギーとして供給されると共に、排気ガスは熱交換後排気路を経て大気に放出されるように構成したことを特徴とし、触媒燃焼過程における触媒は、白金触媒であり、バーナー燃焼室に排気ガスを導入して昇温するため、触媒燃焼のための加温装置を別途必要とせず、熱交換サイクルにて触媒燃焼を可能にしたことを特徴とし、且つ、排気ガスの分解は、白金触媒での燃焼温度を活性効率の高い400℃前後にすることを特徴とする乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステムである。
【発明の効果】
【0011】
乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱回収を同時に行うことのできるシステムによれば、間接式加温方式にもかかわらず、排気ガスの熱を回収し再利用するため、エネルギーコスト(燃料消費量)を大幅に削減することができる。
【0012】
また、触媒燃焼のための排気ガスを加温する装置が必要なく、通常のシステム過程で発生する熱をコントロールすることにより、触媒燃焼に適切な温度を得ることができるため、省エネでの排気ガス無害化システムを提供することができる。
【0013】
また、外気より新鮮空気を導入することにより、乾燥炉または加熱炉に塗装室内からの空気の流入を防ぐことができるため、この空気に混入している塵の流入も防止され、ゴミ・ホコリによる塗装不良が減少すると共に、塗装室内の冷たい空気の流入も防止されるため熱効率も向上する。
【0014】
以下に、触媒にハニカム形状または粒状の白金触媒を採用し、通常の白金触媒よりも白金の含有量を増加させた素材を使用した触媒の特徴について説明する。
【0015】
白金は各種ガス成分に対して低い温度で触媒燃焼する能力があるため、複数のガスが含まれている排気ガス浄化の用途に適しており、特にVOC(臭気物)に対しても白金触媒が優れている。
【0016】
本発明で使用する触媒はハニカム形状の白金触媒で、圧力損失が少なく、耐熱性、耐久性に優れており、粒状に比べて活性は劣るといわれているが、白金の含有量が通常の約2倍の白金を使用しているので、高い活性を実現している。
【0017】
排気ガスを高温で直接燃焼させて無害化する直接燃焼方式よりも、触媒を通すことにより低温で完全酸化(脱臭)する触媒燃焼方式の方がエネルギーコスト(燃料消費量)を大幅に削減することができる上に、本発明のシステムでは通常のシステムの過程で発生する熱を使用するため触媒燃焼のために特に燃料を必要としない。
【0018】
触媒燃焼方式は直接燃焼方式と比べ燃焼温度が低いためNOx(窒素酸化物)の発生量が少なく、環境にやさしい方式である。
【0019】
本発明では、排気ガスは通常システムの過程で発生する熱を380〜420℃にコントロールし、白金触媒に接触させることにより、空気と反応し、炭酸ガスと水に変化する。
【0020】
触媒を用いた接触燃焼は最も経済的な燃焼方法であるが、触媒表面での反応であるため外部より化学的あるいは物理的な影響を受けると、永久的に活性が行われず、触媒毒で劣化が進行する。
【0021】
塩化化合物や硫黄化合物は接触表面で酸化分解され、その時の触媒反応温度は350℃以上必要である。反応温度以下ではそれらが触媒表面に吸着し、劣化の原因となる。
また、排気ガス中にシリコーンや有機燐化合物を含む場合、触媒表面を被覆し活性を低下させ、更に処理ガス中にダスト(殆どの場合金属酸化物)が含まれる場合は被毒し、触媒が劣化する。
【0022】
本発明におけるバーナー燃焼室及び触媒燃室の排気ガス温度は380〜420℃に制御されるので触媒毒の影響を受けづらい構造になっている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】 本発明に係る乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステムの構成例のフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を実施するための形態を具体的に説明する。
【0025】
乾燥炉内雰囲気排気ダクト21及び乾燥炉出入口排気ダクト22から排出される排気ガスは排気ガス流路3を経てバーナー燃焼室4に送り込まれる
【0026】
バーナー燃焼室4で加温された排気ガスは、バーナー燃焼室4温度は380℃程度で連結ダクト41を経て触媒燃焼器5を経由して熱交換器6へ導入される。
【0027】
触媒の温度は380℃〜420℃で触媒燃焼器5を通過した排気ガスは熱交換器6へ導入される。
【0028】
新鮮空気導入用ファン2を経て熱交換器に導入された新鮮空気は、排気ガスの熱エネルギーと熱交換され、乾燥炉または加熱炉への昇温用熱エネルギーとして循環供給される。
【0029】
排気ガスはバーナー熱排気用ファン1及び熱交換後排気路61を経て外気に放出されるように構成されている。
【0030】
新鮮空気導入路20を経て熱交換器6に導入された新鮮空気は、熱交換機6内で熱交換され220℃〜270℃程度に加温されて乾燥炉または加熱炉7内に放出される。
【0031】
以下、触媒燃焼に白金触媒を選定した理由を述べる。
白金は各種ガス成分に対して低い温度で触媒燃焼する能力があるため、複数のガスが含まれている排気ガス浄化の用途に適しており、VOC(臭気物)に対しても白金触媒が優れている。
【0032】
本発明で使用する白金触媒はハニカム状または粒状の白金触媒を使用している。
特にハニカム形状の触媒は圧力損失が少なく、耐熱性、耐久性に優れており、粒状形状に比べて活性は劣るといわれているが、白金の含有量が通常の約2倍の白金を使用しているので、高い活性を実現している。
【0033】
排気ガスを高温で直接燃焼させて無害化する直接燃焼方式よりも、触媒を通すことにより低温で完全酸化(脱臭)する触媒燃焼方式の方がエネルギーコスト(燃料消費量)を大幅に削減することができる上に、本発明のシステムでは通常のシステムの過程で発生する熱を使用するため触媒燃焼のために特に燃料を必要としていない。
【0034】
触媒燃焼方式は直接燃焼方式と比べ燃焼温度が低いためNOx(窒素酸化物)の発生量が少なく、環境にやさしい方式である。
【0035】
本発明では、排気ガスは通常システムの過程で発生する熱を380〜420℃に制御して白金触媒に接触させることにより、空気と反応し、炭酸ガスと水に変化する。
【0036】
触媒を用いた接触燃焼は最も経済的な燃焼方法であるが、触媒表面での反応であるため外部より化学的あるいは物理的な影響を受けると、一時的または永久的に活性が劣化してしまう。
【0037】
塩化化合物や硫黄化合物は接触表面で酸化分解され、その時の触媒反応温度は350℃以上必要である。反応温度以下ではそれらが触媒表面に吸着し、劣化の原因となる。
また、排気ガス中にシリコーンや有機燐化合物を含む場合、触媒表面を被覆し活性を低下させ、更に処理ガス中にダスト(殆どの場合金属酸化物)が含まれる場合は被毒し、触媒が劣化する。
【0038】
本発明におけるバーナー燃焼室及び触媒燃焼室の排気ガス温度は380〜420℃に制御されるので触媒毒の影響を受けづらい構造になっている。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の乾燥炉または加熱炉で発生する排気ガスの無害化及び排気ガスと同等量の空気の熱交換を同時に行うシステムは、以上説明したような構成であるため、排気ガスを高温で直接燃焼させて無害化する直接燃焼方式よりも、触媒を通すことにより低温で完全酸化(脱臭)する触媒燃焼方式の方がエネルギーコスト(燃料消費量)を大幅に削減することができ、本発明のシステムでは通常のシステムの過程で発生する熱を使用することにより触媒燃焼のために特に燃料を必要としない。
【0040】
また、触媒燃焼方式は直接燃焼方式と比べ燃焼温度が低いためNOx(窒素酸化物)の発生量が少なく、環境にやさしい方式であり、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0041】
1.バーナー熱排気用ファン
2.新鮮空気導入用ファン
20.新鮮空気導入路
21.乾燥炉内雰囲気排気ダクト
211.排気ダクトダンパー
22.乾燥炉出入口排気ダクト
221.排気ダクトダンパー
3.排気ガス流路
4.バーナー燃焼室
41.バーナーと触媒燃焼部連結ダクト
42.熱交換器保護用緊急ダンパー
5.触媒燃焼部
6.熱交換器
61.熱交換後排気路
62.導入空気熱交換後乾燥炉内導入路
7.乾燥炉又は加熱炉
T−1.乾燥炉内雰囲気温度(160℃〜200℃)
T−2.乾燥炉内排気温度(160℃〜200℃)
T−3.バーナー燃焼室温度(想定温度380℃)
T−4.白金触媒通過温度(想定温度380℃)
T−5.導入空気導入側温度(想定温度130℃)
T−6.熱交換後排気温度(外気温度5℃〜40℃)
T−7.導入空気熱交換後乾燥炉内導入温度(想定温度220℃〜270℃)