(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-26319(P2017-26319A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】プロペラ曲面形状記録具及びプロペラ曲面形状記録方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/20 20060101AFI20170113BHJP
B63H 1/26 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
G01B5/20 C
B63H1/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-141514(P2015-141514)
(22)【出願日】2015年7月15日
(71)【出願人】
【識別番号】512194019
【氏名又は名称】齋藤 拓馬
(74)【代理人】
【識別番号】100107711
【弁理士】
【氏名又は名称】磯兼 智生
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 拓馬
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA02
2F062AA61
2F062AA62
2F062BC40
2F062CC08
2F062CC22
2F062CC25
2F062CC27
2F062EE07
2F062EE14
2F062EE41
2F062EE64
2F062EE66
2F062GG44
2F062HH15
2F062HH31
2F062HH41
2F062MM06
2F062MM07
2F062MM23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の接点要素によりプロペラ表面に多接点で接触することでプロペラ表面の形状を記録する器具において、接点数を増やしても各接点要素の強度を確保することができるプロペラ曲面形状記録具を提供する。
【解決手段】板体からなる回転要素11を2以上端部同士で重なるように直列に配置し、重なった部分において板面に垂直な回転軸回りに回転可能に連結したリンク部が設けられ、回転要素11の曲縁部又は角部により接触部が形成されるゲージ体と、プロペラの中心に固定可能に形成されたプロペラ固定部30と、一端側に回転要素11が固定されるとともに他端側にプロペラ固定部30が固定され、プロペラ固定部30をプロペラに固定したときに前記ゲージ体の前記接触部が前記プロペラ表面に接触可能に形成される連結体とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラの曲面形状を記録する器具であって、
板体からなる回転要素を2以上端部同士で重なるように直列に配置し、重なった部分において板面に垂直な回転軸回りに回転可能に連結したリンク部が設けられるゲージ体であって、当該ゲージ体を前記回転要素の配列方向に関して最も長くなるような状態としたときに、前記リンク部を通り当該ゲージ体の長手方向に延びる直線で分けられる一面側において前記各回転要素の当該直線から最も離れた部位に当該直線から離れるように突出する曲縁部又は角部からなる接触部が形成されるゲージ体と、
プロペラの中心に固定可能に形成されたプロペラ固定部と、
一端側に前記回転要素が固定されるとともに他端側に前記プロペラ固定部が固定され、前記プロペラ固定部をプロペラに固定したときに前記ゲージ体の前記接触部が前記プロペラ表面に接触可能に形成される連結体と
を有するプロペラ曲面形状記録具。
【請求項2】
前記ゲージ体を2以上有し、
当該各ゲージ体の前記回転要素は、当該回転要素を含むゲージ体を回転要素の配列方向に関して最も長くなるような状態としたときに、前記リンク部を通り当該ゲージ体の長手方向に延びる直線上に穴が存するようなリング状体により形成され、
少なくとも一の前記リンク部により連結される一組の前記回転要素は、当該回転要素を含むゲージ体とは別のゲージ体の前記回転要素を当該回転要素が構成するリングの穴内に当該リンク部が存する状態で狭持する
請求項1に記載のプロペラ曲面形状記録具。
【請求項3】
各ゲージ体の少なくとも一の前記回転要素は、他のゲージ体の回転要素に狭持される請求項2に記載のプロペラ曲面形状記録具。
【請求項4】
前記ゲージ体を3以上有し、
前記リンク部に、前記回転要素の一面側に突出する針状部材が設けられる請求項2又は3に記載のプロペラ曲面形状記録具。
【請求項5】
前記リンク部には連結する回転要素同士の回転抵抗を調節する回転抵抗調節手段が設けられる請求項1から4のいずれか1項に記載のプロペラ曲面形状記録具。
【請求項6】
請求項4に記載のプロペラ曲面形状記録具を用いたプロペラの曲面形状記録方法であって、
前記プロペラ固定部をプロペラの中心に固定する固定工程と、
前記固定工程の後に各回転要素の接触部をプロペラ表面に当接させるゲージ体位置合わせ工程と、
ゲージ体位置合わせ工程の後に、前記針状部材が刺さるブロック体からなる一以上の留め部材を、一連の隣接し互いに異なるゲージ体に属する前記針状部材が一の該留め部材に刺さり、かつ、全ての針状部材がいずれかの留め部材に刺さるように、前記針状部材に固定するゲージ固定工程と
を有するプロペラの曲面形状記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターボートのプロペラの曲面形状を記録する器具及び当該器具を用いたプロペラ曲面の記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
競艇のモーターボートに取り付けられるプロペラは、レース前に加工や修整作業が行われる。特にプロペラ形状はモーターボートのスピードに重大な影響を与えるので、競艇選手は好みのプロペラ形状に合わせるためにプロペラゲージという器具を用いてプロペラの修正作業を行う。プロペラゲージは、プロペラの翼面の仕上がりをチェックする誤差確認用の測定機器であり、プロペラの中央部に形成された穴(ボス穴)に基端側が挿入固定される棒状の連結体と、連結体の先端に設けられたプラスチックの板とから構成される。このプロペラゲージを、好みの形状のプロペラに装着して、プラスチックの板の下端縁をやすりで削ってプロペラの曲面とプラスチック板の下端縁とが合致するように調節することでプロペラの形状を記録する。そして、プロペラの修整作業を行う場合には、プロペラゲージを修整するプロペラに装着して、プロペラゲージの記録した曲面に合致するようにハンマーで叩いてプロペラの形状を記録したものに合わせる作業を行う。
ところで競艇におけるプロペラは抽選で競艇選手に与えられる制度が採用されており、プロペラゲージが形状を記録したプロペラと、異なる形、大きさのプロペラが与えられることがある。このような場合、必ずしも記憶したプロペラゲージの形状が最適とは限らず、このような場合はプロペラの形状を変える必要が生じる。最適なプロペラ形状を探し出すためには、プロペラの形状を変えてはモーターボートに取り付けて試乗する作業を繰り返す必要があるが、上述したプラスチックを削ることでプロペラ曲面を記録するプロペラゲージで、1回1回プロペラ曲面を記録する作業を行うことは極めて煩雑であり、また、削った部分を元に戻すことができないという問題があった。
これに対して、下記特許文献には複数の長手方向に移動可能に配置された棒体を先端面がプロペラ面に向かうように配置し、各棒体の先端をプロペラ表面に接触させ、この状態で棒体の位置を固定することでプロペラの形状を記録する器具が開示されている。このような器具を用いれば、プロペラ形状を記録する度に板を削るといった煩雑な作業が不要となり、簡単にもとの状態に戻すこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−224903号公報
【特許文献2】特開2014−16331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、競艇に使用するプロペラゲージには金属を使用することが禁止されている。従って、特許文献1、2に記載の発明も棒体をプラスチックなどで製作する必要があるが、記録の精度を高くするためには棒体を細く形成しなければならない一方で、プラスチックで棒体を形成すると細く形成した場合撓みやすくなり、精度が落ちるという問題が生じる。
本発明は、このような問題を解決すべく、複数の接点要素によりプロペラ表面に多接点で接触することでプロペラ表面の形状を記録する器具において、接点数を増やしても各接点要素の強度を確保することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。
請求項1に記載の発明は、プロペラの曲面形状を記録する器具であって、板体からなる回転要素を2以上端部同士で重なるように直列に配置し、重なった部分において板面に垂直な回転軸回りに回転可能に連結したリンク部が設けられるゲージ体であって、当該ゲージ体を前記回転要素の配列方向に関して最も長くなるような状態としたときに、前記リンク部を通り当該ゲージ体の長手方向に延びる直線で分けられる一面側において前記各回転要素の当該直線から最も離れた部位に当該直線から離れるように突出する曲縁部又は角部からなる接触部が形成されるゲージ体と、プロペラの中心に固定可能に形成されたプロペラ固定部と、一端側に前記回転要素が固定されるとともに他端側に前記プロペラ固定部が固定され、前記プロペラ固定部をプロペラに固定したときに前記ゲージ体の前記接触部が前記プロペラ表面に接触可能に形成される連結体とを有するプロペラ曲面形状記録具である。なお、連結体と回転要素との固定は、連結体の一端側が回転要素に直接固定される場合の他、連結体の一端側がリンク部に固定される等間接的に回転要素が連結体に固定される場合が含まれる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記プロペラ曲面形状記録具において、前記ゲージ体を2以上有し、当該各ゲージ体の前記回転要素は、当該回転要素を含むゲージ体を回転要素の配列方向に関して最も長くなるような状態としたときに、前記リンク部を通り当該ゲージ体の長手方向に延びる直線上に穴が存するようなリング状体により形成され、少なくとも一の前記リンク部により連結される一組の前記回転要素は、当該回転要素を含むゲージ体とは別のゲージ体の前記回転要素を当該回転要素が構成するリングの穴内に当該リンク部が存する状態で狭持するものである。
請求項3に記載の発明は、前記プロペラ曲面形状記録具において、各ゲージ体の少なくとも一の前記回転要素は、他のゲージ体の回転要素に狭持されるものである。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のプロペラ曲面形状記録具において、前記ゲージ体を3以上有し、前記リンク部に、前記回転要素の一面側に突出する針状部材が設けられるものである。
請求項5に記載の発明は、前記プロペラ曲面形状記録具において、前記リンク部には連結する回転要素同士の回転抵抗を調節する回転抵抗調節手段が設けられるものである。回転抵抗調節手段には、連結する回転要素同士の狭持力を調節するものや、回転要素同士を連結する軸の外径を変えるもの等が例示される。
【0007】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のプロペラ曲面形状記録具を用いたプロペラの曲面形状記録方法であって、前記プロペラ固定部をプロペラの中心に固定する固定工程と、前記固定工程の後に各回転要素の接触部をプロペラ表面に当接させるゲージ体位置合わせ工程と、ゲージ体位置合わせ工程の後に、前記針状部材が刺さるブロック体からなる一以上の留め部材を、一連の隣接し互いに異なるゲージ体に属する前記針状部材が一の該留め部材に刺さり、かつ、全ての針状部材がいずれかの留め部材に刺さるように、前記針状部材に固定するゲージ固定工程とを有するものである。なお、留め部材は、発泡スチロール、発泡ウレタン等の発泡合成樹脂、天然ゴム、合成ゴム等のエラストマー、コルク材、バルサ材などの軟質な木材等、針状部材が刺さる種々の素材により形成することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のような構成により本発明は、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明は、接点部を有する回転要素が板状で、厚さに直交する方向の幅の制限が少ないので、接点部間を小さくするために回転要素を小さくしても板体の厚さ及び厚さ方向に直交する幅を確保でき、回転要素の強度を比較的維持することが可能となる。
請求項2に記載の発明は、一つのゲージ体の回転要素同士の間に他のゲージ体の回転要素が位置することになるので、すべてのゲージ体の接触部をより密に配置することができ、プロペラ曲面の記録の精度を高くすることができる。
請求項3に記載の発明は、すべてのゲージ体の少なくとも一つの回転要素は必ず他のゲージ体の回転要素同士の間に挟まれるので、各ゲージ体は一体に組み合わさることとなってばらばらになることがなく、扱いやすさを向上させることができる。
請求項4に記載の発明は、すべての接触部をプロペラ曲面に接触させた後に、隣接し互いに異なるゲージ体に属する針状部材を発泡合成樹脂等のブロックからなる留め部材に突き刺して固定すると、3以上の針状部材が拘束され、これによってゲージ体の回転要素の回転が拘束されるので、プロペラ曲面の形状を記録した状態で全ゲージ体を固定することが可能となる。
請求項5に記載の発明は、すべての接触部をプロペラ曲面に接触させた後に、回転要素同士の回転抵抗を動けない程度に高くすることで回転要素同士の回転を拘束し、これによってプロペラ曲面の形状を記録した状態で全ゲージ体を固定することができる。
請求項6に記載の発明は、プロペラ表面にゲージ体の接触部を当接させた状態で、針状部材に留め部材を刺すことで回転要素の回転を拘束してプロペラ曲面を記録した状態にゲージ体を固定できるので、簡易かつ迅速にプロペラ曲面に記録を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るプロペラ曲面形状記録具の正面側の斜視図である。
【
図2】実施形態に係るプロペラ曲面形状記録具の背面側の斜視図である。
【
図4】
図3において、各ゲージ体を分離して示した断面図である。
【
図5】(a)〜(d)は実施形態に係るプロペラ曲面形状記録具の使用手順を示す図である。
【
図6】変形例に係るプロペラ曲面形状記録具の背面側の斜視図である。
【
図7】変形例に係るプロペラ曲面形状記録具の正面図である。
【
図8】(a)(b)(c)は変形例に係る回転要素の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に実施形態に係るプロペラ曲面形状記録具Xの正面側から見た斜視図を示し、
図2にプロペラ曲面形状記録具Xの背面側から見た斜視図を示す。プロペラ曲面形状記録具Xは記録部10、連結体20、プロペラ固定部30を有する。プロペラ固定部30は、プロペラ中心の穴にがたつきなく係合する外径を有する丸棒からなる挿入部31と挿入部31上端に設けられる挿入部31よりも大きな外径の円柱体からなるヘッド部32とから構成される。連結体20は記録部10とプロペラ固定部30との間を連結固定する棒状の部材であり、プロペラ中心に固定されるプロペラ固定部30のヘッド部32に対する記録部10の位置を定める。なお、プロペラの形状は複数個所の曲面を記録する必要があり、連結体20はプロペラ上の記録する曲面の位置に応じて長さや曲がり方などの形状が変わることとなる。
【0011】
記録部10は、薄い板からなる円形のリング体により構成される回転要素11とこれをつなぐリンクピン12とから構成される。回転要素11は一の直径上の両端近傍にリンクピン12がきつく嵌る貫通孔がそれぞれ設けられる。リンクピン12は先端側が尖った針状部材で基端側に抜け止めとなる偏平な円板状のピンヘッドが形成される。リンクピン12は正面に先端側が突出するように回転要素11の貫通孔に嵌められる。なお、真ん中に位置するリンクピン12B2はピンヘッドが形成されることに代えて、連結体20の先端に一体に連結される。
【0012】
図3に
図1のA−A線一部断面図を示す。
図3からわかるように回転要素11はすべてがリンクピン12によって一連に繋がっているのではなく、一連に繋がった回転要素11が3組重なったような形状をしている。それぞれの一連に繋がった回転要素の組は、第一ゲージ体10A、第二ゲージ体10B、第三ゲージ体10Cを構成する。
図4に模式的に
図3から第一ゲージ体10A、第二ゲージ体10B、第三ゲージ体10Cを分解した断面図を示す。
図3、
図4からわかるように第一ゲージ体10Aのリンクピン12A1で連結される回転要素11A1、11A2は、第二ゲージ体10B、第三ゲージ体10Cを構成する回転要素11B1、11C1を、リング状の回転要素11B1、11C1の穴にリンクピン12A1が収まるように狭持している。同様に、第二ゲージ体10Bのリンクピン12B2で連結される回転要素11B2、11B3は、第一ゲージ体10A、第三ゲージ体10Cを構成する回転要素11A3、11C2を、リング状の回転要素11A3、11C2の穴にリンクピン12B2が収まるように狭持している。同様に、第三ゲージ体10Cのリンクピン12C3で連結される回転要素11C3、11C4は、第一ゲージ体10A、第二ゲージ体10Bを構成する回転要素11A4、11B4を、リング状の回転要素11A4、11B4の穴にリンクピン12C3が収まるように狭持している。このように第一ゲージ体10A、第二ゲージ体10B、第三ゲージ体10Cの一部の回転要素が他のゲージ体の回転要素に狭持され、また、狭持される回転要素のリングの穴にリンクピン12が位置するので、第一ゲージ体10A、第二ゲージ体10B、第三ゲージ体10Cは互いに分離することなく一体となる。以上のような構成を有する記録部10は、各回転要素11を適宜回転させ、各回転要素11の下端縁により構成される当接部が、すべてプロペラ表面に当接するようにすることでプロペラの曲面を記録する。この際、各ゲージ体を構成する互いにリンクピン12で連結された回転要素11の間に他の二つのゲージ体の回転要素11が等間隔で挟まるように位置するので、プロペラ表面に当接する当接部間の距離を小さくすることができ、プロペラの曲面形状の記録精度を高めることができる。なお、両端の回転要素11A1、11C4以外は、リングの穴内にリンクピン12が通ることで回転量が規制されるが、リングの穴を十分に大きくすることで、プロペラの曲面を記録するために必要な回転量は十分に確保することができる。
【0013】
次に、以上のような構成を有するプロペラ曲面形状記録具Xの使用方法について説明する。
図5(a)に示すように、使用者は曲面形状を記録するプロペラPのボス穴hに、プロペラ固定部30の挿入部31を挿入する。そして、連結体20の角度を所定の角度に調節して、
図5(b)に示すように記録部10の各回転要素11の下端縁により構成される当接部が全てプロペラPの表面に当接するようにする。次に、
図5(c)に示すように、回転要素11の9本のリンクピン12の隣接する3本ずつにブロックBを突き刺して固定する。ブロックBは直方体の発泡スチロールにより形成される。これによって、各回転要素11は回転動作が拘束される。即ち、プロペラPに接触した回転要素11の当接部の状態が保持され、記録部10はプロペラPの曲面形状を記録した状態に固定されることとなる。その後、
図5(d)に示すように、プロペラ曲面形状記録具XをプロペラPから取り外すことで作業は完了する。
【0014】
なお、実際にプロペラ曲面を記録するためには、プロペラ表面の複数の断面位置における曲線を記録する必要があるので、連結部の形状や角度が異なる複数のプロペラ曲面形状記録具Xを用い、それぞれのプロペラ曲面形状記録具Xによってプロペラの異なる位置における曲面形状を記録する。
以上説明したように、本実施形態に係るプロペラ曲面形状記録具Xは、回転要素11の回転角度を調節することで任意のプロペラの曲面を記録することができる。そして、プロペラ表面に接触する接触部を板状体からなるリング状の回転要素11によって形成することで、回転要素11を小さくして、回転要素11の数を増やすことで接点部の数を増加させる場合において、回転要素11を小さくしても回転要素11の厚さは変わらず、円形のリング状なので幅方向の強度も維持することができるので、接点部を増やす場合においても撓みなどで精度が低下することを抑制することができる。
さらに、プロペラ曲面形状記録具Xは3つのゲージ体を重ねることで隣接する回転要素間隔即ち接点部同士の間隔を小さくすることができるので、曲面の記録精度を高くすることができる。また、3つのゲージ体の回転要素のいくつかが他のゲージ体の回転要素に狭持されるように重なるので、3つのゲージ体が一体に形成でき、これによって、ブロック体を3以上のリンクピン12に挿すことで回転要素の回転を固定することができる。
【0015】
なお、上記実施形態では連結体20は記録部10のリンクピン12の一つに一体に固定されているが、中心近傍の回転要素11に固定するようにしてもよい。さらに、
図6に示すプロペラ曲面形状記録具Yのように、記録部10の両端近傍の回転要素11に連結体20を固定するようにすることもできる。
図6に示すプロペラ固定具Yは連結体20の記録部10側が二股に分かれた固定端部21が設けられ固定端部21のそれぞれの先端が記録部10両端の回転要素11に固定されるものである。なお、両端の回転要素11の間隔はプロペラの曲面形状によって変わるので固定端部21は可撓性又は可塑性を有する素材により形成するか、一部が鉛直な回転軸回りに回転可能に形成する。
また、上記実施形態では記録部はリング体からなる回転要素からなる3つのゲージ体を、重ねるような形状を採用しているがゲージ体の数は2又は4以上でもよい。さらに、単純にゲージ体を一つにすることもできる。
図7に、このような記録部10zの例を示す。ゲージ体を一つにすると接点部間の距離が大きくなるのでプロペラ曲面形状記録具Zでは回転要素11zの形状を縦に細長いものとしている。このように回転要素の形状は円形に限定されるものではなく、必要に応じて任意の形状を採用することができる。なお、プロペラ曲面形状記録具Zの記録部10zは両端の回転要素11zのリンクを構成しない端部にもリンクピン12zを設けており、プロペラ曲面を記録する場合には、すべてのリンクピン12に長い一つのブロックを突き刺して固定するようにする。
【0016】
さらに、上述したように回転要素の形状は適宜変更できるので、例えば、
図8(a)に示す回転要素11pのように、隣接する回転要素に干渉されにくいようにリンク位置の外側を切り欠いたり、
図8(b)に示す回転要素11qのように接触部をプロペラの曲面に近い曲率の大きなものとしたりすることができる。さらに、
図8(c)に示す回転要素11rのように接触部を曲縁ではなく角により形成することもできる。なお、
図8(c)において回転要素を正三角形とすると貫通孔同士の間にリング体の穴が位置しなくなるが、この場合はリング体の穴に他の回転要素のリンクピンを通すことができなくなるので、リング体の穴は貫通孔を結んだ線分上に存することを要する。
そして、上記実施形態では、連結体20は記録部10のプロペラ固定部30側の面に固定しているが、連結体20を上方側から回りこませるような形状として、記録部10のプロペラ固定部30とは反対側の面に固定するようにすることもできる。
また、上記実施形態では回転要素11の固定をリンクピン12にブロックBを刺して固定するようにしているがその他の方法で固定することも可能である。例えば、リンクピンをボルトとして当該ボルトにナットを嵌めて、ナットとボルトで回転要素11を狭持するようにし、ナットとボルトの狭持力によって回転要素11を固定したり、当該ボルトにゴムチューブを外挿しナットとボルトを締め付けることでゴムチューブの外径を大きくすることで回転要素11を固定したりする等、回転要素同士の回転抵抗を高くすることで回転要素を固定する方法なども採用することができる。
【符号の説明】
【0017】
X、Y プロペラ曲面形状記録具
B ブロック
10、10z 記録部
11、11z、11p、11q、11r 回転要素
12 リンクピン
20 連結体
30 プロペラ固定部
31 挿入部
32 ヘッド部