特開2017-26501(P2017-26501A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-26501(P2017-26501A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】傾斜検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/12 20060101AFI20170113BHJP
   G01C 9/06 20060101ALI20170113BHJP
   H01H 35/02 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
   G01C9/12 P
   G01C9/06 E
   H01H35/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-146100(P2015-146100)
(22)【出願日】2015年7月23日
(71)【出願人】
【識別番号】594026251
【氏名又は名称】田中鉄筋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】田中 進
(72)【発明者】
【氏名】永友 久男
(57)【要約】
【課題】検出できる傾斜検出角度を簡単に調整できるようにした傾斜検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】錘部31の自重によって常に鉛直方向に向くように揺動可能に設けられた振子部3と、当該振子部3に接触可能に設けられた金属製ナットなどの導電体5とを備え、前記振子部3を導電体5に接触させることによって傾斜状態を検出できるようにした傾斜検出装置1において、前記振子部3と導電体5における鉛直方向の距離を調整可能に設けるようにする。そして、金属製ナットで構成された導電体5を下げることで、振子部3の上端に設けられた尖状体34の外周を金属製ナットの下端縁部に接触させ、一方、その導電体5を上げることで、尖状体34の先端を金属製ナットの内壁に接触させて傾斜検出角度を調整する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錘部の自重によって鉛直方向に向くように揺動可能に設けられた振子部と、
当該振子部に接触可能に設けられた導電体とを備え、前記振子部が導電体に接触することによって傾斜状態を検出できるようにした傾斜検出装置において、
前記振子部と導電体の距離を調整可能に設けたことを特徴とする傾斜検出装置。
【請求項2】
前記振子部が、端部を尖状にした尖状部を設けてなるものであり、前記導電体の距離を変えることにより、当該尖状部の先端もしくは外周部を導電体に接触させるようにした請求項1に記載の傾斜検出装置。
【請求項3】
前記振子部が、下方に錘部を有し、中央部分に設けられた球状体を円形穴に載せて揺動支点とし、上端部を前記導電体に接触させるようにしたものである請求項1に記載の傾斜検出装置。
【請求項4】
前記球状体を凸状の金属プレートに設けられた円形穴に載せるようにした請求項3に記載の傾斜検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂崩れなどを事前に検出できるようにした装置に関するものであり、より詳しくは、傾斜面に設置した装置の傾斜検出角度を調整できるようにした傾斜検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、集中豪雨などの増加に伴って土砂崩れなどが多く起こってきており、道路の寸断や宅地被害などが多く報告されている。そこで、このような土砂崩れを事前に察知して報知できるようにした装置として、例えば、下記の特許文献1などに記載されるような装置が提案されている。
【0003】
このような装置は、図6に示すように、金属線91に吊された金属球92をリング状の導電体93に接触させるようにしたものであって、この傾斜検出装置を設置した地盤が傾斜した際に、金属球92をリング状の導電体93に接触させ、これによって、土砂崩れなどを事前に検出できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−241919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような傾斜検出装置を用いて傾斜状態を検出する場合、次のような問題がある。
【0006】
すなわち、このような傾斜検出装置を傾斜面などに設置する場合、地盤の状態に応じて傾斜検出角度を設定する必要がある場合があるが、上記特許文献1に記載されるような装置では、金属球92をリング状の導電体93に接触させるような構造となっているため、傾斜検出角度を大きくするには、その導電体93を内径の大きな別の導電体93に付け替えなければならない。しかるに、このように導電体93を付け替える場合、その装置を一旦持ち帰って分解し、他の導電体93に付け替える必要があるため、非常に手間や時間がかかるといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、検出できる傾斜検出角度を簡単に調整できるようにした傾斜検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、錘部の自重によって常に鉛直方向に向くように揺動可能に設けられた振子部と、当該振子部に接触可能に設けられた導電体とを備え、前記振子部を導電体に接触させることによって傾斜状態を検出できるようにした傾斜検出装置において、前記振子部と導電体における鉛直方向の距離を調整可能に設けるようにしたものである。
【0009】
このように構成すれば、振子部と導電体との鉛直方向の距離を変えることによって、検出できる傾斜検出角度を調整することができるため、従来のようにリング状の導電体を付け替える必要がなく、設置現場で簡単に傾斜検出角度を調整することができるようになる。
【0010】
また、このような発明において、端部を尖状にした尖状部を有するように振子部を構成し、当該尖状部と導電体の鉛直方向の距離を変えることによって、当該尖状部の先端もしくは当該尖状部の外周部を導電体に接触させるようにする。
【0011】
このように構成すれば、例えば、筒状の導電体に振子部を接触させるような場合、尖状部の先端部分や外周部分を接触させることで、傾斜検出角度を調整することができる。
【0012】
さらに、前記振子部を構成する場合、下方を錘部とし、中央部分に設けられた球状体を円形穴に載せて揺動支点とし、上端部を前記導電体に接触させるように構成する。
【0013】
このように構成すれば、導電体が上側に配置されているので、結露などで水滴を生じた場合であっても、その導電体の内部に水が溜まるようなことがなくなる。
【0014】
加えて、前記球状体を凸状の金属プレートに設けられた円形穴に載せるようにする。
【0015】
このように構成すれば、重い錘部を設けた場合であっても、凸状の金属プレートに設けられた円形穴に載せるようにしているので、金属プレートが撓むようなことがなくなり、また、結露によって金属球と円形穴との間に水が溜まるようなことがなくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、錘部の自重によって常に鉛直方向に向くように揺動可能に設けられた振子部と、当該振子部に接触可能に設けられた導電体とを備え、前記振子部を導電体に接触させることによって傾斜状態を検出できるようにした傾斜検出装置において、前記振子部と導電体における鉛直方向の距離を調整可能に設けるようにしたので、導電体との鉛直方向の距離を変えることで、検出できる傾斜検出角度を調整することができる。これにより、従来のようにリング状の導電体を付け替える必要がなく、設置現場で簡単に傾斜検出角度を調整することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態における傾斜検出装置の概略図
図2】同形態における傾斜検出部の拡大図
図3】同形態における振子部が傾斜した状態を示す図
図4】同形態における導電体を下ろした状態の検出角度を示す図
図5】他の実施の形態における振子部と導電体を示す図
図6】従来例における傾斜検出装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の位置実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
この実施の形態における傾斜検出装置1は、道路や宅地横の傾斜面などに設置されるものであって、図1に示すように、下端部を地面から起立するように埋設される筐体部2と、その筐体部2の内部に設けられ、筐体部2の傾斜状態を検出する傾斜検出部8と、その傾斜検出部8が一定角度以上の傾斜状態を検出した場合に報知を行う報知部7とを設けるようにしたものである。そして、特徴的に、その傾斜検出部8を、下端に設けられた錘部31の自重によって常に鉛直方向に向くように揺動可能に設けられた棒状の振子部3と、その振子部3の上端部分に設けられた尖状体34に接触可能に設けられた導電体5とを設け、図3図4に示すように、その導電体5と尖状体34を接触させることによって報知させるとともに、傾斜検出角度を調整する場合は、導電体5と尖状体34との鉛直方向の距離を調整することで、傾斜検出角度を調整できるようにしたものである。以下、本実施の形態における傾斜検出装置1の構成について詳細に説明する。
【0020】
まず、筐体部2は、図1に示すように、下端部分を地面に埋設させるようにした埋設部21と、地面の上方に位置するように設けられる中空部22とを設けるように構成されている。このうち、埋設部21は下端部分を尖らせて地面に差し込めるような形状となっており、一方、中空部22については、密閉された内部空間内に傾斜検出部8を設けるように構成されている。また、この中空部22の上部には開閉可能な蓋部23が設けられており、この蓋部23を開けることで後述する傾斜検出角度を調整できるようにしている。
【0021】
この中空部22に設けられる傾斜検出部8は、振子部3の傾斜状態を検出できるようにしたものであって、振子部3を構成する金属製の棒状部材32の下方に設けられた錘部31を振れさせ、これによって、上端部分である尖状体34を導電体5に接触させて傾斜状態を検出できるようにしたものである。この振子部3を揺動させる場合、図2から図4に示すように、中央部分に設けられた金属製の球状体33を金属プレート4の円形穴41に載せ、これによって、錘部31の自重によって球状体33を支点として棒状部材32を揺動させるようにしている。ところで、このような金属プレート4に円形穴41を設けて球状体33を載せる場合、その重みで金属プレート4が下方に撓んで、円形穴41と球状体33との接触部分に結露で生じた水などが溜まってしまう可能性がある。このため、この実施の形態では、金属プレート4の中央部分を上方に湾曲させた凸状部42を設け、その凸状部42の中央部分に円形穴41を形成して球状体33を載せるようにしている。そして、このように構成することによって、仮に結露で水滴を生じた場合であっても、その水滴を凸状部42から下方に流し、球状体33との接触部分に水を付着させないようにしている。
【0022】
一方、この棒状部材32の上端部分には、尖状体34が設けられる。この尖状体34は先端部分を尖らせた円錐形状をなす金属部材で構成されており、棒状部材32の先端部分に形成されたネジ山に螺着させることで着脱可能に取り付けられている。
【0023】
導電体5は、この振子部3の軸方向の真上に設けられるものであって、例えば、金属ナットなどの中空状の金属部材で構成されている。この導電体5は、上方に設けられたボルト6に螺着されるように取り付けられており、この金属ナットを回転させることによって鉛直方向の位置を変位可能に取り付けられている。また、この導電体5は、振子部3の尖状体34を内側中空部22に収められるような位置に設けられており、振子部3を振れさせることによって、尖状体34の先端部分を内壁面に接触させたり、あるいは、尖状体34の外周部分を導電体5の下端部の縁部に接触させるようになっている。
【0024】
また、このような金属プレート4および金属ナットで構成された導電体5には、図1に示すように、導線を介して通電部81が接続されている。そして、振子部3の尖状体34が導電体5に接触することによって、金属製の振子部3と導電体5を通電させ、報知部7を介して傾斜したことを外部に報知できるようにしている。この報知部7は、筐体部2の上部に設けられたLEDなどの照明を点灯させたり、スピーカーを介して警報音を出力したり、あるいは、図示しない無線部を介して中継局などに傾斜状態を通報できるようにしている。
【0025】
次に、このように構成された傾斜検出装置1の作用について説明する。
【0026】
まず、傾斜面に筐体部2を鉛直方向に差し込んでいる状態で地盤がずれた場合、傾斜検出装置1が傾斜するようになる。すると、図3に示すように、相対的に振子部3が傾斜するため、その筐体部2に設けられた導電体5の内壁と尖状体34の先端が接触するようになる。すると、金属プレート4から球状体33、尖状体34の先端部を介して導電体5へと通電し、報知部7を介して傾斜状態が外部に報知されるようになる。なお、図3などにおいては、筐体部2を起立させた状態を示しているが、実際には、振子部3が鉛直状態になって筐体部2が傾斜した状態となる。
【0027】
一方、この傾斜検出装置1の傾斜検出角度を調整する必要がある場合は、この傾斜検出装置1の筐体部2の蓋部23を取り外して導電体5である金属ナットを回転させ、図4に示すように、金属ナットを下方へと移動させる。このとき、尖状体34との隙間が僅かながら空くような近い位置に金属ナットを位置させておく。そして、筐体部2の蓋部23を閉じて再び傾斜面に設置させる。
【0028】
このような状態で傾斜検出装置1が傾斜すると、錘部31の自重によって相対的に振子部3が傾斜し、その上端部である尖状体34が導電体5に接触するようになる。このとき、尖状体34は導電体5に近い位置まで下げられているため、尖状体34の外周部分が導電体5の下端部の縁部に接触するようになり、導電体5を下げれば下げるほど、傾斜検出角度が小さくなって、わずかな角度でも検出できるようになる。
【0029】
このように上記実施の形態によれば、錘部31の自重によって常に鉛直方向に向くように揺動可能に設けられた振子部3と、当該振子部3に接触可能に設けられた導電体5とを備え、前記振子部3を導電体5に接触させることによって傾斜状態を検出できるようにした傾斜検出装置1において、前記振子部3と導電体5における鉛直方向の距離を調整可能に設けるようにしたので、導電体5との鉛直方向の距離を変えることで、検出できる傾斜検出角度を調整することができるようになる。これにより、従来のようにリング状の導電体93を付け替えることなく、設置現場で簡単に傾斜検出角度を調整することができるようになる。
【0030】
また、端部を尖状にした尖状体34を有するように振子部3を構成し、当該尖状体34と導電体5の鉛直方向の距離を変えることによって、当該尖状体34の先端もしくは当該尖状体34の外周部を導電体5に接触させるようにしたので、中空状の導電体5に振子部3を接触させるような場合、尖状体34の先端部分や外周部分を接触させて、傾斜検出角度を調整することができる。
【0031】
さらに、振子部3を構成する場合、下方を錘部31とするとともに、中央部分に設けられた球状体33を円形穴41に載せて揺動支点とし、上端部を前記導電体5に接触させるように構成したので、導電体5を上側に配置させることができ、結露などを生じた場合であっても、導電体5の内部に水が溜まってしまうようなことがなくなる。
【0032】
加えて、球状体33を金属プレート4の凸状部42に設けられた円形穴41に載せるようにしたので、重い錘部31を設けた場合であっても、金属プレート4が撓むようなことがなくなり、結露によって球状体33と円形穴41との間に水が溜まるようなことがなくなる。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく種々の態様で実施することができる。
【0034】
例えば、上記実施の形態では、金属ナットで構成された導電体5をボルト6に螺着させて上下動させるようにしたが、図5に示すように、金属ナット以外のリング状の金属部材5aを棒状部材32に通して、その位置を上下動させるようにしてもよい。このように構成すれば、リング状の金属部材5aを上側に位置させた場合には、検出角度を小さくすることができ、また、リング状の金属部材5aを下側に位置させた場合には、検出角度を大きくすることができるようになる。
【0035】
また、上記実施の形態では、上側に設けられた尖状体34を導電体5に接触させるような逆振子の構成を例に挙げて説明したが、下端側が尖状体や導電体となっているような構成とし、その尖状体と導電体の鉛直方向の距離を離間させて検出角度を調整させるようにしてもよい。また、この場合においても、その金属ナットに替えてリング状の金属部材を棒状部材32に通すような構成としてもよい。
【0036】
さらに、上記実施の形態では、筐体部2の蓋部23を空けて導電体5の鉛直方向の位置を調整するようにしたが、筐体部2の外部からネジを回すことなどによって導電体5の位置を調整できるようにしてもよい。この場合、例えば、ボルト6の頭部を筐体部2の上面に表出させておき、そのボルト6を回転させることによって、そのボルト6に螺着された金属ナットを上下動させるようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態では、導電体5の位置を上下動させることによって傾斜検出角度を調整できるようにしたが、尖状体34の位置を上下動させることによって傾斜検出角度を調整できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1・・・傾斜検出装置
2・・・筐体部
21・・・埋設部
22・・・中空部
23・・・蓋部
3・・・振子部
31・・・錘部
32・・・棒状部材
33・・・球状体
34・・・尖状部
4・・・金属プレート
41・・・円形穴
42・・・凸状部
5、5a・・・導電体
6・・・ボルト
7・・・報知部
8・・・・傾斜検出部
81・・・通電部
図1
図2
図3
図4
図5
図6