【解決手段】内部通信用アンテナと、外部通信用アンテナと、電源とを含むRFIDリーダライタを備える。RFIDタグが取り付けられた物品を、RFIDタグのアンテナが内部通信用アンテナに対面するように保持する物品保持具を備えた通箱1を用意する。物品を、RFIDタグのアンテナと内部通信用アンテナとの間で通信可能に物品保持具に保持し、RFIDリーダライタを起動させて、内部通信用アンテナとRFIDタグのアンテナとの間で通信させてRFIDタグに記録されている物品情報を読み取り、外部通信用アンテナを介してRFIDリーダライタと輸送者の携帯端末9との間で通信して、物品情報を通箱の回収先の情報処理装置B及び/又は出荷元の情報処理装置Aに伝送する。
少なくとも1対の対向する内壁面に設けられた内部通信用アンテナ、外側面に設けられた外部通信用アンテナおよび電源を含むRFIDリーダライタを備え、側面にRFIDタグを取り付けられた物品を、そのRFIDタグのアンテナが内部通信用アンテナのいずれか一つに対面するように保持する物品保持具を備えている通箱と、
側面にRFIDタグを取り付けられ、そのRFIDタグのアンテナが通箱の内部通信用アンテナのいずれか一つに対面するように物品保持具に保持される物品と、
輸送者に携帯され、通箱の外部通信用アンテナとの間で通信を行い、RFIDタグから読み取った物品情報を通箱の回収先および/または出荷元の情報処理装置に伝送する、スマートフォン、タブレット端末、またはウェアラブル端末のいずれかである携帯端末と、
を含むことを特徴とする物品輸送管理システム。
請求項2に記載の物品輸送管理システムにおいて、前記物品は円筒状であり、前記RFIDタグ付きラベルはその物品の側面に貼り付けられ、前記物品保持具は物品を直立状態でマトリックス状に保持するものであり、前記通箱の内部通信用アンテナは、通箱の2対の互いに対向する内壁面に設けられ、前記RFIDリーダライタの制御部は、前記通箱の物品保持具に保持された物品のRFIDタグと通信するときは、4つの内壁面の内部通信用アンテナを順次有効化することを特徴とする物品輸送管理システム。
請求項2または3に記載の物品輸送管理システムにおいて、前記通箱にはその収容空間内の温・湿度を一定に保つ手段が備えられているとともに、その収容空間内の温・湿度を測定して、定期的に記録する手段が設けられ、前記RFIDリーダライタの制御部には、前記携帯端末から物品情報の送信を求められた時に、記録された温・湿度情報を送信する機能が付加されていることを特徴とする物品輸送管理システム。
請求項2、3または4に記載の物品輸送管理システムにおいて、前記通箱に衝撃センサと、その通箱の輸送中に前記衝撃センサにより検出された衝撃度を記録する手段とが設けられ、前記RFIDリーダライタの制御部には、前記携帯端末から物品情報の送信を求められた時に、記録された衝撃度情報を送信する機能が付加されていることを特徴とする物品輸送管理システム。
請求項2、3、4または5に記載の物品輸送管理システムにおいて、前記通箱に蓋の開閉を検知する開閉センサが設けられるとともに、前記RFIDリーダライタの制御部に、前記開閉センサが前記蓋の開閉を検知した時刻と開閉した累積回数の少なくとも一方(開閉情報)を記録し、前記携帯端末から物品情報の送信を求められた時に、記録された開閉情報を送信する機能が付加されていることを特徴とする物品輸送管理システム。
請求項2、3、4、5または6に記載の物品輸送管理システムにおいて、前記通箱に電磁波の透過を遮断する電磁波シールド材が埋設されていることを特徴とする物品輸送管理システム。
請求項2、3、4、5、6または7に記載の物品輸送管理システムにおいて、前記通箱の外部通信用アンテナは、前記通箱に設けられた通信許可スイッチが操作された時のみ、有効にされることを特徴とする物品輸送管理システム。
請求項2、3、4、5、6、7または8に記載の物品輸送管理システムにおいて、前記通箱に測位手段を備えるとともに、前記RFIDリーダライタの制御部に、前記携帯端末から物品情報の送信を求められた時に、前記測位手段により取得された位置情報を前記携帯端末を介して前記通箱の出荷元および/または回収先の情報処理装置に伝送する機能を付加したことを特徴とする物品輸送管理システム。
請求項2、3、4、5、6、7、8または9に記載の物品輸送管理システムにおいて、前記通箱に遮光性等を制御する光管理手段を付加したことを特徴とする物品輸送管理システム。
請求項2、3、4、5、6、7、8、9または10に記載の物品輸送管理システムにおいて、前記通箱に、出荷時に計時を開始し、回収時に輸送に要した時間を記録する、輸送時間管理手段を付加したことを特徴とする物品輸送管理システム。
【背景技術】
【0002】
一般的に、出荷人が物品を所定の荷受人に届けることを輸送業者に依頼する場合は、その物品を通箱に収容し、その通箱を輸送業者が輸送車により荷受人のいる目的地まで輸送する。
【0003】
通箱に収容される物品には、その物品に関する情報(以下、物品情報という。)、たとえば、出荷人名、物品の名称または種類、生産日時もしくは産出日時または製造日時、出荷日時、荷受人名などが記録される。
【0004】
この物品情報の記録媒体として、一般的にはバーコードラベルが使用され、物品に貼り付けられる。バーコードラベルは、出荷人または輸送業者のコンピュータで構成された情報処理装置において入力された物品情報をバーコード発行機に与え、そのバーコード発行機で物品情報をバーコードデータに変換し、ラベルにバーコードを印刷して、発行される。そのため、出荷人または輸送業者でのバーコードラベルの発行と、物品へのバーコードラベル貼付けに時間と手間がかかる。また、物品が一旦通箱に収容されると、通箱に収容された各物品の物品情報を出荷直前に目視確認することはできない。通箱が荷受人に到着した後、物品に貼り付けられているバーコードラベルを荷受人の情報処理装置に接続されているバーコードスキャナで読み取り、その情報処理装置により文字情報に変換して表示されるまでは、すなわち、輸送途中では、その物品の物品情報を知ることができない。
【0005】
物品を収容した通箱が届いた荷受人においては、通箱から物品を取り出し、バーコードスキャナにより物品のバーコードを読み取り、情報処理装置により文字情報に変換して表示することにより、初めて物品情報の目視確認が可能になる。この段階で初めて、荷受人は出荷元から出荷時に電気通信回線などを経て通知された物品情報と照合して、物品の同一性、安全性、保全性などの確認が可能になる。また、その物品情報に基づいて、その後に必要な検品または分析などの準備開始が可能になる。
【0006】
しかしながら、物品によっては、輸送中の高い安全性と保全性が求められる場合がある。通箱の積み下ろしの際に通箱を落としたり、不慮の事故により通箱が強い衝撃を受けたりして、通箱が割れて物品が壊れたり、物品の中身が漏れ出すことがある。また、あってはならないことであるが、テロなどにより通箱が奪取されたり、故意に破壊されたりすることもあり得る。さらに、気温や気圧の上昇により物品が膨張して中身が飛散することもあり得る。このような場合は、通箱を開けて、どの物品が破損、中身の漏出または飛散をしたかを確認し、あるいは奪取に対する善後策として、出荷元に物品の再発送を至急要請するべきところであるが、上記バーコード方式の場合は、輸送途中で物品情報を目視確認することが不可能であるため、このような事故に対処することができない。
【0007】
また、上記バーコード方式の場合は、出荷元での生産時刻または産出時刻から荷受人での検品・分析の準備開始時刻までの時間(物品検査準備時間)が必然的に長くなるので、検品・分析に緊急性が求められる場合に対応できるように、物品検査準備時間の短縮化が望まれていた。
【0008】
特許文献1には、(a)物品に取付けられたRFIDタグと通信する内蔵アンテナと、その内蔵アンテナに接続され、ケースの外表面に設けられる、外部のRFIDリーダライタと通信するための外面同軸コネクタまたは中継用送受信アンテナを含む通信用構造体とを有する物品収容ケースと、(b)リードライト機構と送受信アンテナを備え、通信用構造体に接続してRFIDタグにアクセスするRFIDリーダライタと、を含むRFIDシステムが提案されている。このRFIDシステムは、収容される物品に関する情報(物品情報)の記録媒体として、バーコードラベルに代えてRFIDタグを物品に取付け、情報読み取り手段としてバーコードリーダに代えてRFIDリーダライタを用いるものである。
【0009】
特許文献1のRFIDシステムによれば、物品収容ケースに収容される物品には物品情報を記録したRFIDタグが取り付けられるので、物品を物品収容ケースに収容した後、またはさらに物品収容ケースを密閉した後も、RFIDリーダライタを通信用構造体を介してRFIDタグに接続して、全ての物品の物品情報を読み取り、その情報を情報処理装置により文字情報に変換して、物品の中身を出荷側、回収側のいずれにおいても迅速容易に確認することができる。したがって、このRFIDシステムを用いれば、物品検査準備時間の短縮化が可能である。
【0010】
特許文献2には、金属ケース内にRFIDシステム全体、すなわち、ICタグ付き物品、RFIDリーダライタ、送受信アンテナおよび電源回路を格納して、金属ケースの蓋を開けずにケース内でID情報を読み取り、その情報をケース外面のコネクタに接続した外部コネクタを介して別の機器に送信することにより、電波の金属ケース外への漏洩の防止を図った金属ケース内の物品の識別装置が開示されている。
【0011】
特許文献3には、物品収容ケースの送受信アンテナに関し、通箱の側面(6面)に送信アンテナおよび受信アンテナを設け、各面のアンテナを順次有効化する、レンタル品回収検出装置が記載されている。しかし、通箱内の物品のIDタグの情報を読み取るには、通箱を、受信アンテナを備えた検出箱を通過させなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1のRFIDシステムにおいては、次のような問題点がある。第1の問題点は、物品収容ケースおよび物品のアンテナの設置位置及び設置数の問題である。すなわち、物品収容ケースの内蔵アンテナは、物品収容ケースの蓋の下面に、物品収容ケースの本体の内側底面に対面するように設けられている。そして、収容される物品には、その物品を既定の向きで収容したときにRFIDタグのアンテナが物品収容ケースの内蔵アンテナと対面するように、RFIDタグが設けられている。つまり、物品収容ケースの内蔵アンテナは、物品のRFIDタグとの間で1方向においてのみ通信可能である。
【0014】
ところが、物品には、試験管のように細長い円筒状(多角筒状を含む。以下、同じ。)の容器がある。このような細長い円筒状の物品は、通箱内のラックなどの物品保持具に直立姿勢で保持される。また、1個の通箱には数個から数十個の物品が収容される。そのため、通箱のアンテナの設置数または設置位置によっては、物品のRFIDタグとの間の通信(アクセス)が行えない場合がある。つまり、RFIDタグからの物品情報読み取りに漏れ(読み取りミス)が発生する虞がある。
【0015】
特許文献1のRFIDシステムの第2の問題点は、RFIDリーダライタが物品収容ケースから分離して設けられ(特許文献1の段落0019)、電源がRFIDリーダライタまたはRFIDリーダライタの外に設けられる(特許文献1の段落0021)点である。電源は重量が大きいため、物品収容ケースの輸送中は、RFIDリーダライタが物品収容ケースから分離されているので、物品収容ケースの所在位置を知ることができない。また、物品収容ケースに何らかのトラブル、たとえば、落下、その他の衝撃、温度または湿度の過度な変化などが生じた場合に、その物品収容ケースに収容されている物品の安全性、保全性に関する情報を出荷側または回収側のいずれでも速やかに収集することはできない。
【0016】
したがって、特許文献1のRFIDシステムは、輸送中の物品の所在位置、安全性、保全性の確認および輸送中の事故に対する迅速な対処能力が十分であるとは言えない。
【0017】
特許文献2の物品の識別装置が別の機器にICタグ付き物品のID情報を送信できるのは、金属ケース外面のコネクタに別の機器の外部コネクタを接続した時のみに限られる。したがって、特許文献2の物品の識別装置も、輸送中の物品の安全性、保全性の確認および輸送中の事故に対する迅速な対処能力が十分であるとは言えない。
【0018】
さらに、特許文献3の装置は、通箱内の物品のIDタグの情報を読み取るには、通箱を受信アンテナを備えた検出箱を通過させなければならないので、輸送中の物品の所在位置、安全性、保全性の確認および輸送中の事故に対する迅速な対処能力が十分であるとは言えない。
【0019】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものである。そして、通箱に収容された物品の物品情報の随時読取りおよび送信を可能にして、輸送途上(出荷時、輸送途中、回収時)の物品の所在位置、安全性、保全性の確認および輸送中に事故が発生した場合の迅速な対処を可能にする物品輸送管理方法および物品輸送管理システムを提供することを主位的目的とする。
【0020】
本発明は、通箱に収容された物品の保存状態の記録を行って、輸送される物品に品質悪化などが生じなかったことを保証できるようにすることを第1の付随的目的とする。
【0021】
本発明は、通箱の出荷時から回収時までの間の開閉事実の痕跡(開閉回数および開閉時刻等)の送信または記録を可能にして、輸送される物品の安全性が脅かされなかったことを保証できるようにすることを第2の付随的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る物品輸送管理方法は、上記主位的目的を達成するため、次の工程からなることを特徴とする。
少なくとも1対の対向する内壁面に設けられた内部通信用アンテナと、外側面に設けられた外部通信用アンテナと、電源とを含むRFIDリーダライタを備え、側面にRFIDタグが取り付けられた物品を、そのRFIDタグのアンテナが内部通信用アンテナの少なくとも一つに対面するように保持する物品保持具を備えた通箱を用意する第1工程。
側面にRFIDタグが取り付けられた物品を、そのRFIDタグのアンテナが通箱の内部通信用アンテナの少なくとも一つに対面するように通箱の物品保持具に保持する第2工程。
通箱のRFIDリーダライタを起動させて、内部通信用アンテナとRFIDタグのアンテナとの間で通信させてRFIDタグに記録されている物品情報をRFIDリーダライタに読み取る第3工程。
RFIDリーダライタの外部通信用アンテナを介してRFIDリーダライタと輸送者の携帯端末との間で通信して、RFIDタグから読み取った物品情報を受け取り、その物品情報をその携帯端末から通箱の回収先および/または出荷元の情報処理装置に伝送する第4工程。
【0023】
また、本発明に係る物品輸送管理システムは、上記主位的目的を達成するため、次の通箱と、物品と、携帯端末とを含むことを特徴とする。
通箱は、少なくとも1対の対向する内壁面に設けられた内部通信用アンテナと、通箱の外側面に設けられた外部通信用アンテナと、電源とを含むRFIDリーダライタを備え、側面にRFIDタグを取り付けられた物品を、そのRFIDタグのアンテナが内部通信用アンテナのいずれか一つに対面するように保持する物品保持具を備えている。
物品は、側面にRFIDタグを取り付けられ、そのRFIDタグのアンテナが通箱の内部通信用アンテナのいずれか一つに対面するように物品保持具に保持される。
そして、携帯端末は、輸送者に携帯され、通箱の外側面に設けられた外部通信用アンテナとの間で通信を行い、RFIDタグから読み取った物品情報を通箱の回収先および/または出荷元の情報処理装置に伝送するものである。携帯端末は、スマートフォン、タブレット端末、またはウェアラブル端末のいずれを用いてもよい。
【0024】
物品が円筒状である場合は、RFIDタグ付きラベルが物品の側面に貼り付けられ、通箱の物品保持具は物品を直立状態でマトリックス状に保持するものであり、通箱の内部通信用アンテナは、通箱の2対の互いに対向する内壁面に設けられ、RFIDリーダライタの制御部は、通箱の物品保持具に保持された物品のRFIDタグと通信するときは、4つの内壁面の内部通信用アンテナを順次有効化することを特徴とする。
【0025】
上記第1の付随的目的を達成するため、通箱にはその収容空間内の温度と湿度の一方または双方(以下、温・湿度という。)を一定に保つ手段が備えられているとともに、その収容空間内の温・湿度を測定して、定期的に記録する手段が設けられ、RFIDリーダライタの制御部には、携帯端末から物品情報の送信を求められた時に、記録された温・湿度の推移(温・湿度情報)を送信する機能が付加されている。
【0026】
好ましい実施の形態では、通箱に衝撃センサと、その通箱の輸送中に衝撃センサにより検出された衝撃度を記録する手段が設けられ、RFIDリーダライタの制御部には、携帯端末から物品情報の送信を求められた時に、記録された衝撃度情報を送信する機能が付加されている。
【0027】
上記第2の付随的目的を達成するため、通箱には、通箱の蓋の開閉を検知する開閉センサが設けられるとともに、RFIDリーダライタの制御部には、開閉センサが蓋の開閉を検知した時刻と開閉の累積回数の少なくとも一方(開閉情報)を記録し、携帯端末から物品情報の送信を求められた時に、記録された開閉情報を送信する機能が付加されている。
【0028】
通箱のRFIDリーダライタを構成する電源および制御部は、通箱の底部に設けられることが好ましい。RFIDタグから物品情報が部外者により不正に読み取られることを防止するため、通箱には電磁波の透過を阻止する電磁波シールド材が埋設されていることが望ましい。また、RFIDタグから読み取った物品情報が部外者により不正に取得されることを防止するため、通箱の外部通信用アンテナは、通箱に設けられた通信許可スイッチが操作された時のみ、有効にすることが望ましい。
【0029】
さらに、通箱には、GPS(Global Positioning System)などの測位手段を備えるとともに、RFIDリーダライタの制御部に、携帯端末から物品情報の送信を求められた時に、その測位手段により取得された位置情報をその携帯端末を介して通箱の出荷元および/または回収先の情報処理装置に伝送する機能を付加することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る物品輸送管理方法によれば、通箱に収容された物品のRFIDタグに記録された物品情報の読取りおよび送信が、輸送者の携帯端末を介して随時可能であり、輸送途上の物品の安全性、保全性の確認および輸送中に事故が発生した場合の迅速な対処が可能である。そして、RFIDリーダライタと携帯端末との間の通信により、RFIDタグから物品情報を読み取り、通箱の出荷元および/または回収先の情報処理装置に伝送するのは、通箱の出荷時、輸送途中の必要時、通箱の回収時の任意のタイミングで行うことができる。したがって、輸送経路の任意の地点で必要に応じて随時、RFIDタグから物品情報を読み取って通箱内の物品の存否、安全性、保全性等を確認することができる。
【0031】
本発明に係る物品輸送管理システムによれば、上記物品輸送管理方法を使用することができ、RFIDタグが取り付けられた物品は、RFIDタグのアンテナが通箱の4つの内壁面に設けられた内部通信用アンテナのいずれか一つに対面するように通箱の物品保持具に保持されるので、全ての物品の物品情報が読み取られ、読取ミスの発生が防止される。したがって、欠落の無い物品輸送管理が可能である。
【0032】
また、通箱に収容された物品の温・湿度、衝撃の有無などの保存状態が記録され、携帯端末を介して保存状態の情報が出荷元または回収先の情報処理装置に送信されるから、通箱から受信した情報に基づいて、輸送中のまたは回収先到着後の物品について保全性(品質悪化や破損の可能性の有無)を容易に知ることができる。
【0033】
また、通箱の出荷時から回収時までの間の、通箱の蓋の開閉情報を送信することにより、出荷元または回収先で、輸送される物品の安全性が脅かされなかったか否かを知ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
続いて、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0036】
本発明に係る物品輸送管理方法を使用するには、
図1に模式的に示すように、出荷元において通箱1を用意する必要がある。通箱1は、物品を収容するための収容空間2を有する本体3と、その本体3の収容空間2の上面を密閉する蓋4とを有する。蓋4は、図示の例では、本体3に対してヒンジ(図示省略)により開閉可能に結合されている。しかし、蓋4は、ヒンジを有しない、本体3から分離可能なものであってもよい。物品の安全性確保のため、蓋4には、所定の鍵を有する管理者(輸送者を含む。)がその鍵を用いないと開錠されない錠5を備えることが望ましい。また、通箱1は、蓋4の上面に取付けられている手提げ用取っ手6を持って、または、図示されていないベルトなどを肩に掛けて、水平状態で移動することができる。
【0037】
通箱1は、
図2に示すように、RFIDリーダライタ7を備えている。このRFIDリーダライタ7は、
図3にも示すように、通箱1の本体3の内壁面2aに設けられた内部通信用アンテナ7aと、通箱1の外側面に設けられた外部通信用アンテナ7bと、電源7cと、制御基板7dとを含む。好ましい実施の形態では、電源7cから制御基板7dへの電源供給のON/OFFをするためのスイッチ7eが設けられている。
【0038】
電源7cには、できるだけ軽量なバッテリ、たとえば、リチウムイオン電池、アルカリ電池、ニッケル電池等が使用されている。制御基板7dには、制御部71、データ記憶部72、データ処理部73が搭載されている。
【0039】
内部通信用アンテナ7aは、後述されるように、通箱1に収容される物品11に取付けられているRFIDタグ12との間で無線通信を行なうためのアンテナであり、パッシブ型のRFIDタグ12に対して電力を供給するとともに、RFIDタグ12のアンテナから発信される電波を受信する。
【0040】
また、内部通信用アンテナ7aは、通箱1の本体3の少なくとも1つの内壁面2aに設けられていればよいが、物品11が比較的細い円筒状または多角筒状である場合は、互いに対向する4つの内壁面2a1〜2a4に設けられる。そして、本体2の各側壁の中にカプラー調整部7ac1〜7ac4が設けられ、各カプラー調整部は制御部71に接続されて、4個の内部通信用アンテナ7a1〜7a4を順次有効化させる。
【0041】
データ処理部73は、複数の内部通信用アンテナ7aを介して、通箱1に収容されている後記物品11のRFIDタグ12から受信した情報同士を比較し、同一のRFIDタグから複数の情報を読み取った場合は、最も明確な一つの情報のみを保持し、他の情報を消去する。
【0042】
そして、RFIDリーダライタ7の内部通信用アンテナ7aが通箱1に収容されている後記物品11のRFIDタグ12以外からの不要な電磁波(ノイズ)を受信することを避けるため、また、物品11のRFIDタグ12から出される電波の通箱1外への漏出を防止するため、通箱1の本体2および蓋3の中に既知の電磁波シールド材8が設けられている。
【0043】
外部通信用アンテナ7bは、RFIDリーダライタ7と輸送者が所持する携帯端末9との間でブルートゥースによる通信をするためのものである。外部通信用アンテナ7bは、
図2に示すように、本体2の外面に設けてもよいし、
図8に示すように、蓋4の上面に設けてもよい。携帯端末9には、無線送受信機能を有する携帯端末、たとえば、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末等を使用することができる。また、携帯端末9との間の通信は、
図8に示すように、外部通信用アンテナ7bをコネクタ7b’に代えて、そのコネクタにUSBを結合して通信するようにしてもよい。
図8は、RFIDリーダライタ7の電源として、蓋4に電池ケース7c’を設けた例をも示している。
【0044】
通箱1の本体3の収容空間2の底部には、物品保持具であるラック10が静置され、または固定されている。ラック10は、上面に開口する穴101を1個または複数個有する。この穴101には、物品11の下部を挿入することができる。物品11が比較的細い円筒状または多角筒状である場合は、穴101は、物品11を挿入して直立状態に保持することができるように形成される。そして、穴101は、多数個をマトリックス状に配設することが好ましい。
【0045】
この実施の形態においては、
図4に例示するように、側面にRFIDタグ12が取付けられた物品11が、通箱1の中のラック10に収容され、直立状態に保持される。ラック10は、物品11の破損などにより物品から液状の中身が漏出した場合に、これを吸収できるように、吸水性を有する材料で作られていることが好ましい。
【0046】
RFIDタグ12は、
図5に例示するように、アンテナ12aと、ICチップにより構成された制御部12bと記憶部12cとを有する。
図4に例示するように、RFIDタグ12はラベル12dに設けられ、そのRFIDタグ付きラベル12dが物品11の側面に貼り付けられる。そして、RFIDタグ12の記憶部12cには、物品情報、たとえば、出荷人名、物品の名称または種類、生産もしくは産出または製造日時、出荷日時、荷受人名などが記録される。
【0047】
通常、RFIDタグ12には、出荷元に設置されているコンピュータで構成される情報処理装置Aから入力された情報に基づいて、その情報処理装置Aに接続されている既知のタグ記録装置(図示省略)により物品情報の記録が行われる。したがつて、RFIDタグ12に記録された物品情報は、出荷元の情報処理装置Aにも保存され、管理される。また、同じ物品情報は、通箱1の発送前に、通箱1の回収先に設置されているコンピュータで構成される情報処理装置Bに、インターネットCその他の電気通信回線を介して伝送され、管理される。
【0048】
上記のようにして、出荷元に用意された通箱1に、それぞれ物品情報が記録されたRFIDタグ付きラベルが貼り付けられた物品を収容し終えた時は、通箱1の蓋3が密閉され、施錠される。したがって、通箱1の中の物品を輸送中の盗難、紛失、加害行為などから保護することができる。
【0049】
通箱1の施錠に続き、RFIDリーダライタ7の電源ON/OFFスイッチ7eをONすると、RFIDリーダライタ7が起動する。RFIDリーダライタ7では、制御部61が物品情報読み取りプログラムを実行させる。まず、各カプラー調整部を介して4個の内部通信用アンテナ6a1〜6a4を順次有効化させる。内部通信用アンテナ6a1〜6aは、それぞれ通箱1の収容空間2の1つの内壁面から対向する内壁面に向けて電力供給波を放射する。通箱1の収容空間2に直立状態で保持されている物品のうち、電力供給波の照射を受けるアンテナ12aを有する物品11のRFIDタグ12は、電力を発生するとともに、記録部12cに記録されている物品情報を読み出して、そのアンテナ12aから通箱1のアンテナ12aに対向している内部通信用アンテナ6aに物品情報を送信する。
【0050】
図6は、通箱1の内部通信用アンテナ6a1〜6aの配置位置と、通箱1の中に収容され、直立状態で保持されている12個の物品11
1,11
2,11
3,〜11
10,11
12のRFIDタグ12のランダムな向きの例を示している。1番目の物品11
1のRFIDタグ12は、その全面が内部通信用アンテナ6a1に対向しているので、そのRFIDタグ12は、内部通信用アンテナ6a1からの電力波をアンテナ12aで受信し、記録部12cから物品情報を読み出して内部通信用アンテナ6a1に送信する。すなわち、1番目の物品11
1の物品情報は内部通信用アンテナ6a1を経てRFIDリーダライタ7に読み取られ、データ記憶部72に格納される。
【0051】
また、2番目の物品11
2のRFIDタグ12は、その全面が内部通信用アンテナ6a3側に対向しているので、そのRFIDタグ12は、内部通信用アンテナ6a3からの電力波をアンテナ12aで受信し、記録部12cから物品情報を読み出して内部通信用アンテナ6a3に送信する。すなわち、2番目の物品11
2の物品情報は内部通信用アンテナ6a3を経てRFIDリーダライタ7に読み取られ、データ記憶部72に格納される。
【0052】
3番目の物品11
3のRFIDタグ12は、内部通信用アンテナ6a1側に対向しているが、3番目の物品11
3のRFIDタグ12よりも内部通信用アンテナ6a1に近い位置に、1番目の物品11
1のRFIDタグ12が全面的に内部通信用アンテナ6a1側に対向しているので、3番目の物品11
3のRFIDタグ12と内部通信用アンテナ6a1との間の電磁結合力が弱ぃ。これに対し、3番目の物品11
3のRFIDタグ12は一部が内部通信用アンテナ6a3にも対向していて、そのRFIDタグ12と内部通信用アンテナ6a3との間の電磁結合力が内部通信用アンテナ6a1との間の電磁結合力よりも強いので、3番目の物品11
3の物品情報は内部通信用アンテナ6a3を経てRFIDリーダライタ7に読み取られ、データ記憶部72に格納される。
【0053】
同様の原理で、他の物品11
4,11
5〜11
12の物品情報は、各RFIDタグ12の向きにおいて最も強い電磁結合力が発生する内部信用アンテナ7a1〜7a4との間の通信によりRFIDリーダライタ7に読み取られ、データ記憶部72に格納される。すなわち、内部信用アンテナ7a1〜7a4を通箱1の4つの内壁面に設けたことにより、通箱1に収容された物品(RFIDタグ12)の向きに関わりなく、その物品情報の読み取りが可能であるという利点を有する。したがって、物品を通箱に収容する際に、その物品のRFIDタグ12の向きに注意を払う必要がないので、物品収容能率が高い。また、いずれの物品も、物品情報読み取り漏れが生じることがない。
【0054】
上記のように、RFIDリーダライタ7の電源ON/OFFスイッチ7eをONすると、通箱1内の物品の物品情報が瞬時に読み取られ、データ記憶部72に格納される。収容されている全ての物品からの物品情報の読み取りを終了したときは、通箱1の外面、たとえば、蓋4の上面に設けた表示手段(図示省略)により、読み取り終了を表示することが望ましい。
【0055】
物品情報の読み取り終了に続き、RFIDリーダライタ7の制御部71は、所定の携帯端末9からのアクセス要求を待機する。輸送者が、所持する携帯端末9を起動させると、通箱1の外部通信用アンテナ7bを経て予め定めてあるアドレスに宛てて通信回線を接続し、その通箱1のRFIDリーダライタ7と携帯端末9との間での通信(アクセス)を要求する。これに基づき、RFIDリーダライタ7の制御部71は、データ記憶部72に格納されているその通箱1の中の物品の物品情報を呼び出し、これを携帯端末9に送信する。携帯端末9は受信した物品情報を、インターネット等Cを介して所定の送信先に送信する。その送信先の一つは、通箱1の出荷元の情報処理装置Aであり、もう一つは、通箱1の回収先の情報処理装置Bである。
【0056】
出荷元の情報処理装置Aは、受信した物品情報を先にRFIDタグ12に記録した物品情報と照合することにより、所定の物品が指示通り、通箱1に収容されたか否かを確認することが可能である。また、回収先の情報処理装置Bは、出荷時点に、すなわち、通箱1が回収先に到着する前に物品情報を受信するので、回収先は通箱1が到着するまでの間に十分な時間的余裕をもって検品・分析などの準備を始めることが可能である。
【0057】
また、通箱1が回収先に到着した時点にも、輸送者は、通箱1を開錠する前に、所持する携帯端末9を起動させ、その通箱1のRFIDリーダライタ7にアクセスして通信を行い、データ記憶部72に格納されている物品情報を呼び出し、再びインターネット等Cを介して、出荷元の情報処理装置Aおよび回収元の情報処理装置Bに送信することができる。これにより、出荷元および回収元は、通箱1を開けずに、出荷時に通箱1に収容された物品が確実に回収元に届いたか否かを確認することができる。
【0058】
図7は、上記実施の形態の物品輸送管理方法の基本的な動作の流れを示すフローチャートである。ステップS1において通箱の用意をする。ステップS2において出荷元の情報処理装置を用いて物品情報を記録したRFIDタグ付きラベル12dを貼り付けた物品を通箱に収容する。ステップS3において通箱のRFIDリーダライタの制御部は、電源スイッチがONされたか、否かをチェックする。電源スイッチがONされた場合は、ステップS4においてRFIDリーダライタが物品のRFIDタグから物品情報を読み取り、記録する。続いて、ステップS5において読み取りを終了したか否かをチェックし、終了した場合は、ステップS6において終了した旨を表示する。その後、ステップS7において所定の携帯端末からアクセス要求があったか否かをチェックする。アクセス要求があった場合は、ステップS8においてRFIDリーダライタがRFIDタグから読み取って記録した物品情報を携帯端末に送信する。したがって、
図7のフローチャートには表れていないが、携帯端末はその物品情報を出荷元および/または回収先に送信する。RFIDリーダライタが出荷元を携帯端末に送信した後は、ステップS9においてRFIDリーダライタの電源スイッチがOFFされたか否かをチェックする。OFFされていない場合は、ステップS7に戻る。これに対して、電源スイッチがOFFされた場合は、ステップS10において待機し、ステップS3に移行する。
【0059】
通箱1の輸送途中で、万一、通箱1に何らかの衝撃が加わった場合、その衝撃が通箱1内の物品に破損、漏れなどの影響を与えられた可能性があるときは、通箱1中の物品の保存状態を確認することが望ましい。このような場合は、輸送者は、通箱1を開けずに、携帯端末9を起動させ、通箱1のRFIDリーダライタ7にアクセスして、再度、物品情報読み取りプログラムを実行させ、読み取りができた物品情報をデータ記憶部72に記憶させ、携帯端末9によりその読み取られた物品情報を出荷元の情報処理装置Aおよび/または回収先の情報処理装置Bに送信することができる。
【0060】
物品の破損の程度によっては、RFIDタグ12の物品情報の送信が不可能になる。したがって、出荷元および/または回収先で受信された情報の中にその物品情報が欠落していることから、所要の物品の到着不能が予測可能であるので、出荷元は迅速に物品の再生産等を行って輸送し直すことができる。あるいは、回収先が出荷元に対して物品の再生産等を速やかに要請することができる。
【0061】
[第1の実施の形態の拡張例 その1]
輸送される物品には、通箱1内の温度の上昇により品質が悪くなるものがある。鮮魚、生鮮野菜、生菓子、検体などはその一つである。そこで、このような物品の輸送に供される通箱1には、通箱1の収容空間内温度を一定の低い温度に保つ手段(保温手段)が備えられている。
図10は、通箱1Aの蓋3に開閉可能な保冷剤収容部13を形成し、その保冷剤収容部13に保冷剤14を交換可能に収容できるようにした物理的保温手段の例を示している。
【0062】
保温手段を備えた通箱1Aには、
図10および
図11に示すように、本体3および蓋4に断熱材15が備えられることが好ましい。通箱1Aの一番外側には、軽くて硬い金属、たとえばアルミニウム板1aが設けられ、その内側に断熱材15が設けられ、断熱材15の内側にカプラー調整部7ac1〜7ac4が設けられ、通箱1Aの一番外側には、内部信用アンテナ7a1〜7a4が設けられている。
【0063】
図10および
図11に例示された断熱材15には、衝撃吸収ウレタンフォーム15aと、発泡スチロール15bと、真空断熱材15cとを積層して用いられている。また、発泡スチロール15bの間に電磁波シールド材8が設けられている。しかし、衝撃吸収ウレタンフォーム15a、発泡スチロール15bおよび真空断熱材15cの配置順序は任意である。
【0064】
図12は、通箱1Aの保温手段として電気的保温手段16を用いる例を示す。この電気的保温手段16は、蓋4に設けられ、電源としてのバッテリ16aと、ペルチェ素子16bと、バッテリ16aからペルチェ素子16bに与えられる電流を制御する制御基板16cと、ペルチェ素子16bの上下両側に配置され、それぞれ反対方向に送風するファン16d,16eと、ファン16d,16eに駆動電源を供給するバッテリ16fとを有する。ペルチェ素子16bは、電源を与えられると、上面に温熱を発生し、下面に冷熱を発生する。そして、温熱はファン16dにより蓋4の外方に放散され、冷熱はファン16eにより通箱1の収容空間2に流下される。
【0065】
通箱1Aの収容空間2内の温度は、常に一定とは限らず、通箱1Aの外気温で変動する可能性がある。その変動を阻止するため、収容空間2内の温度を測定する温度センサ(図示省略)を設け、測定温度が制御基板16cの制御部による設定温度からずれた場合は、その制御部がペルチェ素子16bに与える電流を測定温度が設定温度と等しくなるように制御するようになっている。
【0066】
電気的保温手段16に、何らかの故障、たとえばバッテリ16a、16fまたはペルチェ素子16bのいずれかに不具合が発生して、収容空間2内の温度が物品の品質等に影響を与える程度に上昇した場合に、その事実を検証できるようにするため、上記温度センサの測定温度を時系列的に記録しておくことが好ましい。
【0067】
このような温度記録手段を備えた場合は、通箱1Aの輸送中または検査機関に到着後に、携帯端末9によりその記録された測定温度を読み取り、出荷元または/および回収先の情報処理装置A,Bに送信して、記録内容から温度の異常上昇の有無、したがって、また、物品の品質悪化の有無を確認することができる。したがって、物品の保全性の確認に資することができる。
【0068】
電気的保温手段16には、加温手段と冷却手段の両方を備え、かつ、収容空間2内の測定温度が通箱に収容される物品の保存適温よりも所定範囲以下に下がったとき、または所定範囲以上に上がった時に、それぞれ加温手段と冷却手段を作動させる制御部を備えてもよい。
【0069】
第1の実施の形態の拡張例その1は、通箱1Aに温度管理手段を設けたものであるが、収容される物品によって、温度管理手段に加えて、または温度管理手段に代えて、加湿と除湿を行い、湿度を調整する湿度管理手段を設けてもよい。
【0070】
[第1の実施の形態の拡張例 その2]
輸送中の通箱1に何らかの衝撃が加わったとき、たとえば、輸送車の交通事故、悪路走行による振動、あるいは通箱の落下などが生じた場合は、通箱1に収容されている物品に破損、漏れなどが発生する場合があり得る。物品に破損または中身の漏れが生じた場合は、速やかな物品の再輸送が望まれる。しかし、従来の物品輸送管理方法では、このような輸送中の物品の破損などを知る術はなく、したがって、輸送中の物品の破損などに基づく迅速な物品の再生産などおよび再輸送の対応を行うこともなかった。
【0071】
本発明の好ましい実施の形態の一つとして、
図13に例示するように、通箱1Bの本体3または蓋4のいずれかに、通箱1Bに加わる衝撃を検知し記録する手段17が備えてある。この衝撃検知記録手段17は、たとえば、加速度センサからなる衝撃センサ17aと、その衝撃センサ17が出力する測定値(衝撃度)が所定の閾値を超えた場合に測定値を出力する処理手段17bと、その測定値を記録するデータ記録部17cとを含む。データ記録部17cは、RFIDリーダライタのデータ記録部72で兼ねてもよい。そして、輸送者は、通箱に衝撃が加わった時、または通箱が回収先に到着した時に、携帯端末9によりデータ記録部18または72から衝撃情報を読み出して、出荷元または/および回収先に送信する。これにより、出荷元は出荷された通箱1Bの物品に衝撃による異常の発生した可能性を知ることができるので、迅速に物品の再生産などおよび再輸送の準備をすることができる。また、回収先は届いた通箱の中を見て、物品の破損状況を確認し、必要な場合は、出荷元に対して物品の再生産などおよび再輸送の要請を行うことができる。
【0072】
[第1の実施の形態の拡張例 その3]
さらに、本発明の好ましい実施の形態においては、通箱1、1A、1Bのいずれか、または全てに、GPSなどの測位手段と時計が設けられる。そして、その測位手段により取得される通箱の所在位置データが、携帯端末9からアクセスするたびに、その時の時刻データとともに、その携帯端末9に出力される。したがって、携帯端末9から出荷元または/および回収先に、その通箱がいつ、どこに存在するかを送信することができるから、輸送中の通箱の現在位置と安全性と保全性を確認することができる。また、通箱1Bの物品に衝撃による異常が発生したときは、異常発生時刻と異常発生位置を送信することができる。これは、たとえば通箱1Bで危険度の特に高い物品等を輸送する場合などの各種対策に有効である。
【0073】
[第1の実施の形態の拡張例 その4]
好ましい実施の形態においては、通箱に、蓋4の開閉を検知する開閉センサが設けられる。また、RFIDリーダライタ7の制御部71には、開閉センサが蓋4の開閉を検知した時刻と開閉した累積回数(開閉情報)を記録し、かつ、携帯端末9を介して開閉情報の伝送を求められた時に、開閉情報を伝送する機能が付加されている。
【0074】
これにより、通箱の出荷時から回収時までの間の蓋4の開閉痕跡(開閉時刻および開閉回数等)の送信または記録を可能にして、輸送される物品の安全性が脅かされなかったか、否かを確認することができる。開閉の痕跡がない場合は、輸送中に物品の安全性が脅かされなかったことを保証することができる。
【0075】
[第1の実施の形態の拡張例 その5]
また、RFIDタグから読み取った物品情報が部外者により不正に取得されることを防止するため、通箱の外部通信用アンテナは、通箱に設けられた通信許可スイッチ(図示省略)が操作された時のみ、有効にすることが望ましい。
【0076】
[他の実施の形態]
以上には、収容される物品がすべて同一または類似の形状、大きさのものである場合の適用例を説明したが、収容される物品の形状、大きさには限定されない。そして、通箱は、被収容物品の大きさや数あるいは形状などに応じて、小型から大型まで様々なものを用いることができる。また、温・湿度管理が必要な物品、温・湿度管理を必要としない物品の輸送管理にも適用することができる。鮮魚、生鮮食料品などは、1個または複数個を樹脂シートパックに収容される。したがって、樹脂シートパックに物品情報が記録されたRFIDタグ付きラベルが貼り付けられ、電気的保温手段(冷却手段)を備えた通箱に収容して輸送される。物品の種類により、適温・湿度が異なることが多いので、冷却温度・湿度を物品に応じて適宜設定できる冷却手段や加湿手段を用いると良い。
【0077】
同じ通箱1を他の物品の輸送に用いる場合は、物品保持具は、ラック10の代わりに、物品の収容・保持に適する任意の形の穴、凹部または溝を有するものを交換可能に、本体3の収容空間2の底部に交換可能に静置または固定することが良い。
【0078】
温・湿度管理を必要としない物品の輸送に用いられる通箱には、保温手段を設けない。しかし、保温手段を備えた通箱に保温手段のON/OFFスイッチを設けた場合は、その通箱を温・湿度管理が必要でない物品の輸送に用いることもできる。これらの物品には、物品を収容する、または包装するラッピングなどにRFIDタグラベルが貼り付けられる。また、通箱の収容空間の底部には、その物品の安定した保持に適するトレイ、受け座などを備えるとよい。さらに、通箱の内部通信用アンテナは、その通箱に収容される物品の数や形状に応じて、物品のRFIDタグとの間で確実に通信が可能な数が設けられる。
【0079】
本発明は、医療機関で採取される検体を検査機関まで輸送する場合に適用するのに好適である。検体とは、検査の対象となる血液、髄液、穿刺液、膿、尿、大便などである。採取された検体は試験管に収容され、輸送用の容器に収容されて輸送される。この場合、検体が収容された試験管、すなわち一次容器は、輸送される物品に相当し、一次容器が収容される二次容器、すなわち輸送用の容器は、通箱に相当する。RFIDタグ付きラベルは、試験管の側面に貼り付けられ、RFIDタグには、物品情報に相当する検体情報として、たとえば、これに限定されないが、医療機関名、被検査者名、検体の種類、採取日時、出荷日時、検査機関名などが記録される。
【0080】
輸送される物品には、直射日光を避けることが望まれるものがある。たとえば、直射日光によりビリルビン、ビタミンC、ボルフィリン、葉酸、KC活性等が低下する物品である。このような物品を収容する通箱には、遮光性等の光管理が可能な材質、構造のものが使用される。
【0081】
さらに、品質、鮮度等が輸送時間に依存する物品の輸送に使用される通箱には、計時手段と記録手段を設け、出荷時に計時を開始し、回収時に輸送に要した時間を記録することにより、輸送時間の管理を行うことが望ましい。