【解決手段】本発明に係る電磁継電器1は、巻芯部2s及び鍔部2a,2bを備えた電気絶縁性のコイルスプール2と、前記巻芯部2sに卷回されたコイル3と、前記コイル3に対して磁気的に接続されるとともに前記コイル3と並行して軸線方向Xに伸びるヨーク5と、前記コイル3及び前記ヨーク5によって発生する磁力に応じて開閉可能に構成されるとともに前記ヨーク5に電気的に接続された接点機構6,7,8と、前記コイル3と前記ヨーク5との間に配置され、両側の前記鍔部2a,2bの外縁にそれぞれ係合する係合端部9a,9b、及び、両側の前記鍔部2a,2bの間に嵌合し、前記係合端部9a,9bよりも前記コイル3に近い位置に配置されて前記ヨーク5に対して前記コイル3を絶縁被覆する絶縁被覆部9cを備える絶縁部材9と、を具備する。
前記絶縁被覆部は、前記軸線方向と直交する仮想平面に沿った断面形状が幅方向の中央から側方へ向かうほど前記ヨークの内面から離れる向きに傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の電磁継電器。
前記絶縁被覆部は、前記ヨークの幅方向の範囲を少なくとも包含する幅方向の範囲にわたって設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電磁継電器。
前記係合端部は、前記ヨークの側から前記コイルの側に向う向きに、前記鍔部に対して係合していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電磁継電器。
前記係合端部は、前記ヨークの幅方向の範囲を少なくとも包含する幅方向の範囲にわたって設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電磁継電器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の電磁継電器においては、コイルとヨークとの間の電気絶縁性を高めるために、絶縁部材9の幅方向両端に張出縁部9a1,9a2及び9b1,9b2を設けたり(特許文献1の第2図参照)、絶縁部材3Dにコイル14を覆う折曲片3bを設けたりしている。このため、コイルやヨークの近傍の外形寸法が増大し、電磁継電器が大型化してしまうという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、小型化を妨げずに絶縁耐圧を高めることができる電磁継電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる実情に鑑み、本発明に係る電磁継電器(1)は、巻芯部(2s)及び前記巻芯部(2s)の軸線方向(X)の両側に設けられた鍔部(2a,2b)を備えた電気絶縁性のコイルスプール(2)と、前記巻芯部(2s)に卷回されたコイル(3)と、前記コイル(3)に対して磁気的に接続されるとともに前記コイル(3)と並行して軸線方向(X)に伸びるヨーク(5)と、前記コイル(3)及び前記ヨーク(5)によって発生する磁力に応じて開閉可能に構成されるとともに前記ヨーク(5)に電気的に接続された接点機構(6,7,8)と、前記コイル(3)と前記ヨーク(5)との間に配置される絶縁部材(9)であって、両側の前記鍔部(2a,2b)の外縁にそれぞれ係合する係合端部(9a,9b)、及び、両側の前記鍔部(2a,2b)の間に嵌合し、前記係合端部(9a,9b)よりも前記コイル(3)に近い位置に配置されて前記ヨーク(5)に対して前記コイル(3)を絶縁被覆する絶縁被覆部(9c)を備える絶縁部材(9)と、を具備することを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記絶縁被覆部(9c)は、前記軸線方向(X)と直交する仮想平面に沿った断面形状が前記コイル(3)の外周面に沿った形状を有することが好ましい。当該断面形状としては、例えば、前記絶縁被覆部(9c)が前記コイル(3)の外周面に沿って湾曲した形状、或いは、前記絶縁被覆部(9c)が幅方向(Y)の両側へ向けて前記ヨーク(5)から離れる向きに傾斜した形状などが考えられる。
【0009】
本発明において、前記絶縁被覆部(9c)は、前記ヨーク(5)の幅方向(Y)の範囲を少なくとも包含する幅方向(Y)の範囲にわたって設けられていることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記係合端部(9a,9b)は、前記ヨーク(5)の側から前記コイル(3)の側に向う向きに、前記鍔部(2a,2b)に対して係合していることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記係合端部(9a,9b)は、前記ヨーク(5)の幅方向(Y)の範囲を少なくとも包含する幅方向(Y)の範囲にわたって設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記係合端部(9a,9b)は、前記鍔部(2a,2b)の嵌合部(2aq,2bq)にそれぞれ嵌合する嵌合端(9ap,9bp)を備えることが好ましい。この場合において、前記嵌合端(9ap,9bp)は、前記鍔部(2a,2b)の嵌合部(2aq,2bq)に対して、前記ヨーク(5)が配置されている外側から、前記仮想平面に沿って、前記コイル(3)が配置されている内側に向かう向きに係合していることが望ましい。
【0013】
本発明において、前記係合端部(9a,9b)は、前記ヨーク(5)に当接する外側当接部(9at,9bt)を有することが好ましい。この外側当接部(9at,9bt)は、前記係合端部(9a,9b)に前記嵌合端(9ap,9bp)が設けられている場合には、当該嵌合端(9ap,9bp)の反対側に形成されることが望ましい。
【0014】
本発明において、前記絶縁被覆部(9c)は、前記ヨーク(5)に対向する外面(9co)上に凹部(9cd)を有することが好ましい。これによれば、ヨーク(5)に対する種々の加工作業を凹部(9cd)によって生じた隙間を用いて容易に行うことができる。例えば、前記接点機構(6,7,8)は、固定接点(8a,8b)に対して開閉可能に構成された可動接点(7a)を備えた可動ばね(7)を有し、該可動ばね(7)は、前記ヨーク(5)の外面上にカシメ加工により接続固定される場合がある。この場合には、前記絶縁被覆部(9c)の外面(9co)上に凹部(9cd)を設けることにより、前記絶縁被覆部(9c)と前記ヨーク(5)の内面との間に形成された凹部(9cd)による隙間に支持部材を挿入することが可能になる。このため、この支持部材上でヨーク(5)と可動ばね(7)との間のカシメ加工を実施することができる。したがって、このカシメ加工により絶縁部材(9)やコイル(3)が損傷することを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型化を妨げずに絶縁耐圧を高めることができる電磁継電器を提供できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、
図1、
図2及び
図6等を参照して、本発明に係る電磁継電器の実施形態の全体構造について説明する。なお、以下に説明する実施形態そのものは本発明を実施する際の一例に過ぎないので、実施形態の個々の記載事項は本発明を何ら限定するものではない。
【0018】
本実施形態の電磁継電器1には、合成樹脂等の電気絶縁性の材料からなるコイルスプール2と、このコイルスプール2の巻枠部2sの外周に卷回されたコイル3と、上記巻枠部2sの内部に挿通され、一方の端部に磁極4aを備える鉄芯4と、この鉄芯4の他方の端部4bに接続されたヨーク5と、このヨーク5に対して可動ばね7を介して回動可能に連結された接極子6とを有する電磁石構造が設けられる。また、コイルスプール2には、上記巻枠部2sの軸線方向の両側に、半径方向外周側に張り出した鍔部2a,2bが設けられている。
【0019】
鍔部2aにはコイル端子3A,3Bが取り付けられている。
図1に示すように、コイル3を構成するコイル線の両端は、鍔部2aの正面側に突出したコイル端子3Aの内端部3Aaとコイル端子3Bの内端部3Baとにそれぞれ導電接続されている。また、
図2及び
図6に示すように、コイル端子3A,3Bは、鍔部2aを軸線方向と交差する方向に横断(貫通)して鍔部2aの背面側から突出する外部端子部3Ab,3Bbを備えている。これらの外部端子部3Ab,3Bbは、
図6に示すベース板1Aを貫通して外部に突出した状態とされる。なお、ベース板1Aは、電磁継電器1の内部構造を収容するケースカバー1Bと接合されている。
【0020】
コイルスプール2の鍔部2bの軸線方向の外面上には上記磁極4aが配置され、この磁極4aに対して、接極子6が対向配置されている。接極子6は、ヨーク5に対して可動ばね7を介してヒンジ接合されている。可動ばね7は、ヨーク5の外面5o上にカシメ加工等によって固定された基部7sと、この基部7sに対して屈折部7pにより屈折した先に設けられ、上記接極子6にカシメ加工等によって固定された可動部7tとを有する。可動部7tは接極子6の先端を越えて伸び、固定接点8a,8bの間に達する可動部7tの先端部分に可動接点7aが取り付けられている。
【0021】
鍔部2bの側方には、上記可動接点7aが配置された領域に接点枠部2cが一体に形成されている。この接点枠部2cには、固定接点8a,8bを上記可動接点7aに対して接触及び離反可能となる位置に固定するための開口状の接点取付部2c1〜2c4が形成されている。これらの接点取付部2c1と2c2に固定接点8a(メーク接点、常開接点)を備えた接点端子8Aが装着されている。また、接点取付部2c1と2c3に固定接点8b(ブレーク接点、常閉接点)を備えた接点端子8Bが装着されている。
図6に示すように、接点端子8Aの外部端子部8Abはベース板1Aを貫通して外部に突出している。なお、図示例とは異なる構造となるが、接点端子8Bの一部を外部端子部として外部に突出させるように構成してもよい。また、ヨーク5の側部には共通端子部5Cが突出形成されている。この共通端子部5Cは
図6に示すようにベース板1Aを貫通して外部に突出している。
【0022】
コイルスプール2には絶縁部材9が取付固定されている。絶縁部材9は、コイル3の軸線方向の両端に設けられた係合端部9a,9bと、これらの係合端部9aと9bの間に設けられた絶縁被覆部9cとを有する。
図7に示すように、係合端部9a,9bは、絶縁被覆部9cの下部及び上部からそれぞれ幅方向に直線状に広がった基部9as,9bsが下方及び上方へ突出した後に、その基部9as,9bsの下端及び上端において内側及び外側へ広がることにより、幅方向に広がった略平坦な下面及び上面を備えた形状をそれぞれ有している。上記基部9as,9bsは、絶縁被覆部9cの軸線方向の端縁に設けられた肩部9dに対して外側に配置され、かつ、軸線方向に沿って突出するように形成されている。
【0023】
なお、本明細書においては、
図3に示すように、軸線方向Xは、コイル3の軸線(巻枠部2s及び鉄芯4の中心軸)が伸びる方向を言い、内外方向Zの内側とはコイル3が配置されている側を言い、外側とはヨーク5が配置されている側を言うものとする。また、幅方向Yは、軸線方向Xと内外方向Zの双方に直交する方向を言う。
【0024】
上記の係合端部9a,9bは、幅方向Yに直線状に伸びる延長された形状を備えている。この係合端部9aはコイルスプール2の鍔部2aの外縁と係合し、上記係合端部9bは鍔部2bの外縁と係合する。ここで、係合端部9a,9bが係合する鍔部2a,2bの外縁とは、図示例の場合には、略矩形の平面形状を有する鍔部2a,2bの矩形枠状の外縁のうちの一辺に相当する部分である。コイルスプール2の鍔部2a,2bの外縁の一辺は幅方向Yに直線状に伸びる端縁形状を有するので、係合端部9a,9bは幅方向Yのほぼ全範囲にわたって鍔部2a,2bの外縁と係合する。係合端部9a,9bと鍔部2a,2bの外縁との間の係合構造は、ヨーク5の幅方向Yの範囲Ex5(共通端子5Cを除いた範囲)を少なくとも包含する幅方向Yの範囲Ex9a,Ex9b(
図5及び
図7参照)を備えている。これによってコイル3をヨーク5に対して確実に絶縁遮蔽することができる。また、このような係合構造は、係合端部9a,9bと対向するコイルスプール2の鍔部2aと2bの外縁が幅方向Yに沿って共に直線状に延長された形状となっていることに対応し、コイルスプール2の鍔部2a,2bの外縁と係合端部9a,9bとが幅方向Yに沿った全幅において嵌合可能に構成する際に好適な形状である。
【0025】
基部9as,9bsの下方及び上方に配置された係合端部9a,9bの下端及び上端には、内側に突出した嵌合端9ap,9bpと、外側に突出した外側当接部9at,9btと、が形成されている。ここで、嵌合端9ap,9bpと外側当接部9at,9btは、係合端部9a,9bの全体形状と同様に、それぞれ幅方向Yに広がった延長形状(図示例では直線状の延長形状)に構成されている。嵌合端9ap,9bpは、内外方向Zの外側(ヨーク5の側)から内外方向の内側(コイル3の側)に向けて、コイルスプール2の鍔部2a,2bの外縁にそれぞれ設けられた凹状の嵌合部2aq,2bqに嵌入されている。また、外側当接部9at,9btには、外側からヨーク5の内面5iが当接した状態となっている。嵌合端9ap,9bp及び嵌合部2aq,2bqは、上述のように、ヨーク5の幅方向Yの範囲Ex5と一致するか、或いは、当該範囲を包含する、より広範な幅方向Yの範囲Ex9a,Ex9bにわたって設けられているので、ヨーク5の内面5iの幅方向Yの全幅が外側当接面9at,9btと当接している。
【0026】
コイルスプール2の鍔部2aの外縁に設けられた嵌合部2aqは、幅方向Yに広がった延長形状で、軸線方向Xの片側(図示下方)が開いた段差状の凹部である。この嵌合部2aqには、これに対応した形状の嵌合端9apが嵌合している。この嵌合状態で、
図8に示すように、係合端部9aの基部9asは嵌合部2aqの上側にある開口縁に密接している。また、鍔部2aの嵌合部2aqの幅方向両側にある端部は、嵌合部2aqの上記開口縁よりもさらに突出し、係合端部9aの幅方向両端を覆った状態となっている。
【0027】
一方、コイルスプール2の鍔部2bの外縁に設けられた嵌合部2bqは、幅方向Yに広がった延長形状の凹部であり、この凹部は、軸線方向Xと幅方向Yのいずれの方位にも閉じた形状で外側にのみ開口する凹形状を有している。嵌合部2bqには、これに対応した形状の嵌合端9bpが嵌合している。嵌合部2bqの上方には嵌合部2bqの開口面からさらに庇状に外側へ張り出した張出部2bgが設けられ、この張出部2bgが上記嵌合端9bpを上方から覆った状態となっている。
【0028】
図示例では、絶縁部材9の嵌合端9ap,9bpは凸部、コイルスプール2の嵌合部2aq,2bqは凹部として構成されているが、上記嵌合端9ap,9bpと上記嵌合部2aq,2bqが相互に嵌合していればよく、嵌合端が凹部、嵌合部が凸部であっても構わない。また、係合端部9a,9bの鍔部2a,2bに対する係合方向(嵌合方向)は、ヨーク5の側(内外方向Zの外側)からコイル3の側(内外方向Zの内側)へ向かう向きとなっている。なお、上記の嵌合構造においては、凸部の厚みや凹部の間隙(幅)をJISなどの規格で定められる所定寸法以上(例えば、1mm以上)とすることによって、空間距離や沿面距離の増加を図ることができる。また、このような規格に合わせた設計は、上記嵌合構造に限らず、絶縁被覆部9cの寸法などにおいても同様に考慮するべきである。
【0029】
絶縁部材9の絶縁被覆部9cは、
図4及び
図5にも示すように、全体として、鍔部2a,2bの外縁と係合(より具体的には嵌合)する上記係合端部9a,9bよりもコイル3の側(内外方向Zの内側)に配置されている。また、この絶縁被覆部9cは、一対の鍔部2a,2bの間に嵌合した状態で配置される。すなわち、絶縁被覆部9cの軸線方向Xの端部に形成された肩部9dが鍔部2a,2bのコイル3に隣接する内面外周部と当接若しくは対向する態様で嵌合する。
【0030】
また、絶縁被覆部9cは、コイル3の軸線方向Xと直交する仮想平面(例えば、
図4及び
図5の紙面と平行な平面)に沿った断面形状(いわゆる横断面の形状)がコイル3の外周面に沿った形状を有している。具体的には、絶縁被覆部9cの横断面は、コイル3の外周面に沿って湾曲した形状を備えている。特に、コイル3の外周面と直接対面する絶縁被覆部9cの内面9ciは、コイル3の外周面に沿った軸線周りに湾曲した凹曲面となっている。図示例では、コイル3の外周面が円筒形状であるため、内面9ciの多くの部分は、当該円筒形状に対応する凹状の円筒面となっている。なお、図示のように、絶縁部材9の絶縁被覆部9cの内面9ciは、幅方向Yの中央部近傍で平坦面になっているが、これは、上記仮想平面に沿った断面形状がコイル3の外周面に沿った形状、特に、当該外周面に沿って湾曲した形状であることを妨げるものではない。
【0031】
絶縁被覆部9cの外面9coは、幅方向Yの両側の端部を除いて、上記仮想平面に沿った断面形状が台形状に構成されている。すなわち、外面9coは、幅方向Yの中央から側方へ向けてヨーク5から離れていく向きに傾斜した表面形状を有している。ただし、当該外面9coが内面9ciと同様に湾曲した形状を有していてもよい。いずれにしても、絶縁被覆部9cは、上記仮想平面に沿った断面形状が幅方向Yの中央から両側に向けて、幅方向Y若しくは内外方向Zに対して傾斜した方向に伸びるように構成されている。
【0032】
上記外面9coの上側部分においては、幅方向Yの中央部分がヨーク5から見て下側部分よりも凹状に構成された凹部9cdが形成されている。また、絶縁被覆部9cの幅方向Yの両端には、幅方向Yの中央側よりも厚肉化された側端部9csが設けられている。この側端部9csは、幅方向Yに沿って直線状に伸び、ヨーク5の内面と平行な平坦な外縁面部9cs1と、この外縁面部と直交し、コイルスプール2の鍔部2aのうちの最も近傍にある内外方向Zに沿って直線状に伸びる外縁部分と平行な平坦な側端面部9cs2とを備えている。したがって、絶縁被覆部9cの外面9coについても、上記仮想平面に沿った断面形状がコイル3の外周面に沿った概略形状を有するものとなっている。
【0033】
なお、コイル3に対する絶縁被覆部9cの幅方向Yの被覆範囲Ex9cは、幅方向Yの両側縁部9csの側端面部9cs2の間の範囲であるが、当該範囲Ex9cは、ヨーク5の幅方向Yの範囲Ex5よりも広くなるように構成されている。また、絶縁被覆部9cの上記範囲Ex9cは、コイルスプール2の鍔部2a,2bの幅方向Yの範囲以下となるように構成されている。このため、絶縁部材9が配置されることによって、コイル3とヨーク5の間の空間距離は増大するが、電磁継電器1の外形寸法は増大しない。
【0034】
絶縁被覆部9cの外面9coに設けられた上記凹部9cdは、絶縁被覆部9cとヨーク5の内面5iとの間に他の領域よりも大きな隙間Sを生じさせる。この隙間Sは、ヨーク5の外面5oに設けられたカシメ加工用の突起5pの位置に対して内外方向Zに見たときに重なる場所に形成される。これにより、隙間Sに図示しない支持板等の支持部材を挿入し、この支持部材を固定した状態で、突起5pを可動ばね7のカシメ加工用の孔に挿入してから突起5pを外側から叩くといったカシメ加工を行う。このように支持部材を隙間Sに挿入して加工を行うことにより、背後に配置されている絶縁部材9やコイルスプール2及びコイル3に損傷を与えることを防止できる。
【0035】
なお、本実施形態の絶縁部材9では、全体として、絶縁被覆部9cが係合端部9a,9bよりもコイル3に近い側に配置されているので、係合端部9a,9bに外側から当接しているヨーク5と絶縁被覆部9cとの間隔は、電磁継電器1の外形寸法を増大させなくてもある程度大きく確保することができる。したがって、上記のヨークのカシメ加工位置に対応する凹部9cdに限らず、任意の他の箇所に、或いは、ほぼ全体にわたって、上記の隙間Sを設けることも可能である。
【0036】
本実施形態では、コイル3と、その両端に接続されたコイル端子3A,3Bとからなる電磁回路構造(コイル3、鉄芯4、ヨーク5及び接極子6からなる磁気回路を有する電磁ブロックを動作させるための電気回路構造)と、可動接点7aと固定端子8A,8Bとからなる接点回路構造との間に、高い絶縁性を確保する必要がある。本実施形態のヨーク5は、可動ばね7を介して接点回路構造と電気的に接続されているため、電磁回路構造におけるコイルスプール2の巻枠部2sに卷回されたコイル3及びコイル端子3A,3Bと、ヨーク5との間には、所定の絶縁耐圧が必要である。ここで、電磁回路構造と、接点回路構造に電気的に接続されたヨーク5との間の絶縁性は、主としてコイルスプール2によって確保される。しかし、ヨーク5は、コイルスプール2の一方の鍔部2aの外面上から外縁の側方に達したところで屈折して軸線方向Xに伸びて、コイル3の反対側にある鍔部2bの外縁の側方にまで至るL字状に構成されている。このため、コイル3及びコイル端子3A,3Bと、ヨーク5とは、空間を介して直接に対向配置される。
【0037】
本実施形態では、上記の状況において、コイル3及びコイル端子3A,3Bとヨーク5との間に絶縁部材9を配置し、この絶縁部材9をコイルスプール2に嵌合させることによって、コイル3及びコイル端子3A,3Bとヨーク5との間の空間距離及び沿面距離を十分に確保するようにしている。具体的には、この絶縁部材9は、コイルスプール2の一対の鍔部2aと2bの外縁にそれぞれ係合する係合端部9a,9bと、この係合端部9aと9bの間に配置された絶縁被覆部9cとを有し、ヨーク5に対してコイル3を絶縁被覆する絶縁被覆部9cは、コイルスプール2の一対の鍔部2aと2bの間に嵌合し、係合端部9a,9bよりもコイル3の側に近づいた位置に配置されている。このように、ヨーク5に対してコイル3を絶縁被覆する絶縁被覆部9cがコイル3に近い場所に配置されるため、絶縁被覆部9cがコイル3の外周面を広い範囲にわたって被覆するように構成しても、絶縁被覆部9cはコイルスプール2の外縁よりも外側に貼り出しにくくなる。したがって、高い絶縁性を確保しても、電磁継電器1の外形寸法の増大を回避することができる。
【0038】
また、コイルスプール2の鍔部2a,2bの外縁に係合端部9a,9bが係合するとともに、鍔部2aと2bの間に係合端部9a,9bよりもコイル3に近い位置に配置される絶縁被覆部9cが嵌合しているため、コイルスプール2の鍔部2a,2bと絶縁部材9の係合端部9a,9b及び絶縁被覆部9cとが段差状に密接して嵌合し、組み立てられることにより、電磁継電器1の外形寸法に影響を与えずに、コイル3とヨーク5の間の空間距離及び沿面距離をさらに長くすることができる。
【0039】
特に、本実施形態では、絶縁部材9の係合端部9a,9bは、それぞれ幅方向Yに沿った延長形状となるように形成され、しかも、ヨーク5の幅方向Yの範囲Ex5を少なくとも包含する範囲Ex9a,Ex9bにわたって設けられているため、上記空間距離及び沿面距離を確実に増大できる。また、
図8に示すように、係合端部9a,9bの嵌合端9ap,9bpがコイルスプール2の鍔部2a,2bの外縁に形成された嵌合部2aq,2bqにそれぞれ嵌合するため、嵌合構造の凹凸面に沿った距離の増大により、上記沿面距離をさらに大きくすることができる。
【0040】
一方、絶縁部材9の絶縁被覆部9cは、軸線方向Xと直交する仮想平面に沿った断面形状がコイル3の外周面に沿って湾曲した形状とされるため、コイル3と絶縁被覆部9cとの隙間が軸線方向X及び幅方向Yの全体にわたって低減される。特に、絶縁被覆部9cとヨーク5との距離は、上述の絶縁被覆部9cの傾斜形状により、幅方向Yの両側端側に進むほど増大する。このため、絶縁被覆部9cを幅方向Yの両端側に大きく張り出させることなしに、コイル3とヨーク5との間の空間距離及び沿面距離の双方を増大させることができる。したがって、絶縁部材9を配置したことによる電磁継電器1の外形寸法の増大を回避することが可能になる。
【0041】
また、本実施形態では、絶縁被覆部9cは、ヨーク5の幅方向Yの範囲Ex5を少なくとも包含する幅方向Yの範囲Ex9cにわたってコイル3を被覆している。したがって、絶縁被覆部9cによってコイル3とヨーク5との間の直接に対面する部分をなくすことができるため、空間距離を確実に増大できる。そして、このように絶縁被覆部9cの幅方向Yの被覆範囲Ex9cが大きくなっても、上述のように絶縁被覆部9cの上記仮想平面に沿った断面形状がコイル3の外周面に沿って湾曲しているか、或いは、ヨーク5の内面5iに対して傾斜しているため、絶縁被覆部9cの幅方向Yの両端部の張出量を抑制することができ、電磁継電器の寸法の増加を回避できる。
【0042】
さらに、本実施形態では、絶縁部材9の係合端部9a,9bは、コイルスプール2の鍔部2a,2bに対して、内外方向Zの外側(ヨーク5が配置されている側)から内外方向Zの内側(コイル3が配置されている側)に向かう向きに係合している。すなわち、コイルスプール2及びコイル3に対して、軸線方向Xと直交する仮想平面に沿って絶縁部材9を接近させることにより、絶縁部材9の係合端部9a,9bに形成した嵌合端9ap,9bpをコイルスプール2の鍔部2a,2bの嵌合部2aq,2bqに嵌入させることができる。したがって、コイルスプール2が一体に構成されているものであっても、上記仮想平面に沿って容易に絶縁部材9を装着できるため、絶縁部材9を取り付ける作業が容易になる。なお、本実施形態では内外方向Zに沿って絶縁部材9をコイルスプール2に係合若しくは嵌合させることで装着できるが、本発明においては、絶縁部材9の係合端部9a,9bを側方からコイルスプール2の鍔部2a,2bの外縁に嵌入させるような方法で、つまり、軸線方向Xの周りを周回する方向、或いは、幅方向Yに沿って絶縁部材9をコイルスプール2に係合若しくは嵌合させることで装着できるようにしても構わない。
【0043】
上記のようにコイルスプール2及びコイル3に絶縁部材9を装着したした後には、コイルスプール2の巻枠部2s内に挿通された鉄芯4の端部4bをヨーク5の開口部に挿入した状態で、ヨーク5の内面5iを絶縁部材9の係合端部9a,9bの外側当接部9at,9btに当接させ、端部4bとヨーク5をカシメ加工等により固定することによってヨーク5を取り付ける作業が完了する。このとき、ヨーク5の内面5iはコイルスプール2と係合した係合端部9a,9bの外側当接部9at,9btに当接する。これによって、ヨーク5はコイルスプール2に対する絶縁部材9の係合状態を保持する。このように、ヨーク5を取り付ける通常の作業を行うだけで、コイルスプール2に対する絶縁部材9の接着工程や固定工程を不要にすることができる。したがって、製造時の省力化や製造コストの低減を図ることができるとともに、製造後における外部振動などによる絶縁部材9の取り付けの緩みなどを防止できる。
【0044】
さらに、本実施形態では、絶縁部材9の外面9coに設けた凹部9cdにより、絶縁部材9とヨーク5との間に隙間Sを設けている。このため、絶縁部材9を取り付けた後の組立工程における、可動ばね7をヨーク5に固定するためのカシメ加工時において、カシメ加工時に用いる支持部材を隙間Sに挿入配置することができるため、コイルスプール2、コイル3、絶縁部材9などに損傷を与えるおそれをなくすことができる。
【0045】
尚、本発明の電磁継電器は、上記実施形態に記載の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づく種々の異なる態様を含む。たとえば、上記実施形態はいわゆるヒンジ形電磁リレーであるが、本発明はこのようなリレー形式に限らず、各種の構造を備えたリレーに適用することができる。