(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-28854(P2017-28854A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】発電機
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20170113BHJP
H02J 7/14 20060101ALI20170113BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
H02P9/04 J
H02J7/14 L
H02J7/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-144820(P2015-144820)
(22)【出願日】2015年7月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊和
(72)【発明者】
【氏名】梁瀬 和哉
【テーマコード(参考)】
5G060
5G503
5H590
【Fターム(参考)】
5G060AA01
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB03
5H590AA04
5H590AB02
5H590CA07
5H590CD03
5H590CD10
5H590CE08
5H590FA08
5H590FB02
5H590GA04
5H590HA04
(57)【要約】
【課題】 負荷の始動時における負荷への過大な電力供給を防止できる発電機を提供すること。
【解決手段】 エンジン12により駆動され交流電流を発電するオルタネータ11と、オルタネータ11が発電した交流電流を直流電流に変換するコンバータ14と、コンバータ14で変換された直流電流を蓄電するキャパシタ16と、コンバータ14で変換された直流電流とキャパシタ16に充電された電荷を任意の周波数の交流電流に変換し負荷に供給する三相インバータ15とを有し、三相インバータ15が、PWM制御における変調率を変化させることにより、負荷17に供給する交流電流を制御する発電機10において、三相インバータ15への入力電流が、所定の制限電流値を越えたときに、変調率をマイナスに補正し、三相インバータ15への入力電流が、所定の制限電流値以下のときに、変調率をプラスに補正すること、を特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動され交流電流を発電するオルタネータと、前記オルタネータが発電した交流電流を直流電流に変換するコンバータと、前記コンバータで変換された直流電流を蓄電するキャパシタと、前記コンバータで変換された直流電流と前記キャパシタに充電された電荷を任意の周波数の交流電流に変換し負荷に供給するインバータとを有し、
前記インバータが、PWM制御における変調率を変化させることにより、前記負荷に供給する前記交流電流を制御する発電機において、
前記インバータへの入力電流が、所定の制限電流値を越えたときに、前記変調率をマイナスに補正し、前記インバータへの入力電流が、所定の制限電流値以下のときに、前記変調率をプラスに補正すること、
を特徴とする発電機。
【請求項2】
請求項1に記載する発電機において、
前記所定の制限電流値が、前記インバータの定格入力電力値を前記インバータの定格入力電圧値で除した値であること、
を特徴とする発電機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する発電機において、
前記発電機が、建設現場用発電機であること、
を特徴とする発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンにより駆動され交流電流を発電するオルタネータと、オルタネータが発電した交流電流を直流電流に変換するコンバータと、コンバータで変換された直流電流を蓄電するキャパシタと、コンバータで変換された直流電流とキャパシタに充電された電荷を任意の周波数の交流電流に変換し負荷に供給するインバータとを有し、インバータが、PWM制御における変調率を変化させることにより、負荷に供給する交流電流を制御する発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、エンジンにより駆動され交流電力を発電するオルタネータと、オルタネータが発電した交流電流を直流電流に変換するコンバータと、コンバータで変換された直流電流を蓄電するキャパシタと、コンバータで変換された直流電流とキャパシタに充電された電荷を任意の周波数の交流電力に変換し負荷に供給するインバータとを有する発電機が広く使用されている。
そして、負荷を始動した時に発生する突入電力を供給するためにキャパシタを利用することは、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-013308号公報
【特許文献2】特開2011-256729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発電機には、次のような問題があった。
すなわち、インバータ等を使わずに、オルタネータから直接負荷に交流電流を供給している場合には、負荷が始動して突入電流が流れた場合に、オルタネータのインピーダンスによって出力電圧が低下するため、負荷に流れる電流が抑えられ、オルタネータに過大な負荷がかかることはない。
しかし、インバータを用いて突入電流を供給する場合には、インバータが出力電圧実効値を維持しようとする。この時、キャパシタが突入電流を供給するが、インバータが出力電圧実効値を維持しようとするので、インバータが無い場合に比べて必要電力が多くなる。この必要電力をまかなうために、キャパシタを大きくする必要があり、コスト増につながる問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決して、負荷の始動時における負荷への過大な電力供給を防止できるコンバータ、キャパシタ、及びインバータを備える発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の発電機は、次の構成を有している。
(1)エンジンにより駆動され交流電流を発電するオルタネータと、オルタネータが発電した交流電流を直流電流に変換するコンバータと、コンバータで変換された直流電流を蓄電するキャパシタと、コンバータで変換された直流電流とキャパシタに充電された電荷を任意の周波数の交流電流に変換し負荷に供給するインバータとを有し、インバータが、PWM制御における変調率を変化させることにより、負荷に供給する前記交流電流を制御する発電機において、インバータへの入力電流が、所定の制限電流値を越えたときに、変調率をマイナスに補正し、インバータへの入力電流が、所定の制限電流値以下のときに、変調率をプラスに補正すること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する発電機において、前記所定の制限電流値が、前記インバータの定格入力電力値を前記インバータの定格入力電圧値で除した値であること、
を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する発電機において、前記発電機が建設現場用発電機であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発電機は、次のような作用、効果を奏する。
(1)エンジンにより駆動され交流電流を発電するオルタネータと、オルタネータが発電した交流電流を直流電流に変換するコンバータと、コンバータで変換された直流電流を蓄電するキャパシタと、コンバータで変換された直流電流とキャパシタに充電された電荷を任意の周波数の交流電流に変換し負荷に供給するインバータとを有し、インバータが、PWM制御における変調率を変化させることにより、負荷に供給する交流電流を制御する発電機において、インバータへの入力電流が、所定の制限電流値を越えたときに、変調率をマイナスに補正し、インバータへの入力電流が、所定の制限電流値以下のときに、変調率をプラスに補正すること、を特徴とするので、負荷が始動され突入電流が流れた時に、インバータを用いて突入電流を供給する時には、インバータが出力実効電圧値を維持しようとするが、インバータへの入力電流が大きくなると、変調率をマイナスに補正して出力電圧を降下させるため、キャパシタからの突入電流のピーク値の低減に寄与し、キャパシタの容量を小さくすることができる。
【0008】
(2)(1)に記載する発電機において、前記所定の制限電流値が、前記インバータの定格入力電力値を前記インバータの定格入力電圧値で除した値であること、を特徴とするので、すなわち、制限電流値をインバータの定格入力電力値(例えば、5.0kW)を定格入力電圧値(例えば、400V)で除した値(例えば、12.5A)としているため、負荷への電力供給が過大になることがなく、キャパシタから必要以上の電荷放出がなくなるため、キャパシタを小型化してコスト低減できる。
【0009】
(3)(1)または(2)に記載する発電機において、前記発電機が建設現場用発電機であること、を特徴とする。負荷として照明等が使用されている場合には、照明がついた後、電圧が下がると一時的に暗くなり問題である。しかし、建設現場では、主たる負荷は送風機や排水ポンプ等のモータであるため、モータの出力が一時的に低下しても問題がない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の1実施例である発電機10の構成を示す図である。
【
図2】発電機10の作用、効果を示すデータ図である。
【
図3】従来の発電機の作用、効果を示すデータ図である。
【
図4】インバータ制御手段181の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発電機10の一実施の形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1に、発電機10の基本構成を示す。
エンジン12の駆動軸に、交流電流を発電するオルタネータ11が接続している。エンジン12には、エンジン制御装置であるECU13が接続している。
オルタネータ11には、交流電流を直流電流に変換するコンバータ14が接続している。コンバータ14には、直流電流を蓄電するキャパシタ16、及び直流電流を任意の周波数の交流電力に変換し、負荷17に供給する三相インバータ15が接続している。キャパシタ16は、三相インバータ15にも接続している。三相インバータ15には、負荷17が接続されている。
三相インバータ15、ECU13には、制御装置18が接続している。発電機10は、オルタネータ11、エンジン12、ECU13、コンバータ14、三相インバータ15、キャパシタ16、及び制御装置18を備えている。
【0012】
三相インバータ15は、入力電流を計測する電流センサを備え、計測された入力電流は、制御装置18に読み込まれる。制御装置18は、インバータ制御手段181を有している。
インバータ制御手段181の内容を、
図4にフローチャートで示し、説明する。
始めに、三相インバータ15のPWM制御における変調率を計算する(S11)。変調率の計算は、三相インバータ15への入力電圧に基づいて計算される。
【0013】
次に、三相インバータ15への入力電流値が、所定の制限電流値を越えていないか否か判断する(S12)。入力電流値が所定の制限電流値を越えていれば(S12;YES)、現在の補正値から所定のステップ値をマイナスしたものを補正値とする(S13)。また、入力電流値が所定の制限電流値を越えていなければ(S12;NO)、現在の補正値に所定のステップ値をプラスしたものを補正値とする(S14)。
ここで、所定の制限電流値としては、本実施例では、インバータの定格入力電力値である5kWをインバータの定格入力電圧である400Vで除した値である12.5Aとしている。
【0014】
次に、新たな補正値が、補正最大値を越えている場合には(S15;YES)、補正最大値を新たな補正値とする(S17)。補正最大値を越えておらず(S15;NO)、補正最小値未満ならば(S16;YES)、補正最小値を新たな補正値とする(S18)。補正最小値以上ならば(S16;NO)、S13またはS14で算出した補正値を新たな補正値として、変調率を補正する(S19)。そして、S11に戻る。
【0015】
次に、上記構成を有する発電機の作用及び効果について説明する。
始めに、従来の発電機の作用及び効果について説明する。
図3に変調率を一定とした場合の従来の作用を示す。いずれのグラフも横軸は時間経過を示し、T1は負荷投入タイミングを示し、T2はキャパシタ16への充電開始タイミングを示す。
(a)の縦軸は三相インバータ15への入力電流値(A;アンペア)を示し、(b)の縦軸は変調率(%)の変化を示し、(c)の縦軸は三相インバータ15の出力電圧実効値(Vrms)を示し、(d)の縦軸は負荷電力(kW)を示す。
【0016】
(d)に示すように、負荷17、例えば建築現場において、送風機用のモータが1秒のタイミングで始動された場合、始動後突入電力が3秒程度の期間、最大電力値7kWが必要となる。
この負荷17に対して、(a)に示すように、突入電流が3秒程度の期間、最大電流値17A流れる。この電流は主として、キャパシタ16から供給される。キャパシタ16は数秒間突入電流を流すのには適している。インバータ15は出力電圧実効値を維持しようとする。
そのため、(d)に示すように、負荷17に流れる負荷電力は7kWまで上昇してしまう。これにより、キャパシタ16からの供給電力量が大きくなるため、キャパシタ16を大型化する必要があり、コスト増になる。
【0017】
次に、本発明の発電機10の作用及び効果について
図2を用いて説明する。
図2においては、いずれのグラフも横軸は時間経過を示し、1秒のタイミングで負荷投入された場合を示す。
(a)の縦軸は三相インバータ15への入力電流値を示し、(b)の縦軸は変調率の変化を示し、(c)の縦軸は三相インバータ15の出力電圧実効値を示し、(d)の縦軸は負荷17に供給される負荷電力を示す。
図3の(d)に示すように、負荷、例えば、建築現場における送風機用のモータが1秒のタイミングで始動された場合、始動後突入電力が3秒程度の期間、最大電力値7kW流れる。
【0018】
本実施例では、
図4のフローチャートのS12〜S18に示し、(b)に示すように、三相インバータ15への入力電流値が12.5Aを越える場合には、変調率を低下させているので、(c)に示すように、三相インバータ15の出力電圧実効値が150Vrmsまで低下するため、負荷17に供給される電力は、5kWを越えることがない。
これにより、負荷始動時に必要な電力が7kWから5kWになったため、キャパシタ16から供給される電力量が減り、キャパシタ16を小さくしてコスト低減できる。
【0019】
以上詳細に説明したように、本実施例の発電機10によれば、
(1)エンジン12により駆動され交流電流を発電するオルタネータ11と、オルタネータ11が発電した交流電流を直流電流に変換するコンバータ14と、コンバータ14で変換された直流電流を蓄電するキャパシタ16と、コンバータ14で変換された直流電流とキャパシタ16に充電された電荷を任意の周波数の交流電流に変換し負荷に供給する三相インバータ15とを有し、三相インバータ15が、PWM制御における変調率を変化させることにより、負荷17に供給する交流電流を制御する発電機10において、三相インバータ15への入力電流が、所定の制限電流値を越えたときに、変調率をマイナスに補正し、三相インバータ15への入力電流が、所定の制限電流値以下のときに、変調率をプラスに補正すること、を特徴とするので、負荷17が始動され突入電流が流れた時に、三相インバータ15を用いて突入電流を供給する時には、三相インバータ15が出力実効電圧値を維持しようとするが、三相インバータ15への入力電流が大きくなると、変調率をマイナスに補正して出力電流を低減させるため、キャパシタ16からの突入電流のピーク値の低減に寄与し、キャパシタ16の容量を小さくすることができ、コスト低減できる。
【0020】
(2)(1)に記載する発電機10において、所定の制限電流値が、三相インバータ15の定格入力電力値を三相インバータ15の定格入力電圧値で除した値であること、を特徴とするので、すなわち、制限電流値を三相インバータ15の定格入力電力値(例えば、5.0kW)を三相インバータ15の定格入力電圧値(例えば、400V)で除した値(例えば、12.5A)としているため、負荷への電力供給が過剰になることがなく、キャパシタ16から必要以上の電荷放出がなくなるため、キャパシタ16を小型化してコスト低減できる。
【0021】
(3)(1)または(2)に記載する発電機において、発電機10が建設現場用発電機であること、を特徴とする。負荷17として照明等が使用されている場合には、照明がついた後、電圧が下がると一時的に暗くなり問題である。しかし、建設現場では、主たる負荷17は送風機、排水ポンプ等のモータであるため、モータの出力が一時的に低下しても問題がない。
【0022】
本発明の発電機については、上記実施の形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、本実施例では、所定の制限電流値を三相インバータ15の定格入力電力値を三相インバータ15の定格入力電圧値で除した値としているが、その値未満であっても良い。
【符号の説明】
【0023】
10 発電機
11 オルタネータ
12 エンジン
13 ECU
14 コンバータ
15 三相インバータ
16 キャパシタ
17 負荷
18 制御装置
181 インバータ制御手段