【解決手段】蓄電モジュール電圧均等化回路内のスイッチングノードにおいて発生する矩形波状電圧を入力電圧として蓄電セル電圧均等化回路を動作させることにより、蓄電セル電圧均等化回路をスイッチレス化する。典型的な蓄電セル電圧均等化回路としては共振型倍電圧整流回路を用いることができ、また蓄電モジュール電圧均等化回路としては、スイッチトキャパシタ、共振型倍電圧整流回路、昇降圧コンバータ等を用いることができる。
第1から第n(nは2以上の整数)の蓄電モジュールの各々に対して各々接続されて、各々の蓄電モジュールに含まれる複数の蓄電セル間で蓄電セル電圧を均等化するよう各々構成された、第1から第nの蓄電セル電圧均等化回路と、
前記第1から第nの蓄電モジュール間で蓄電モジュール電圧を均等化するよう構成された、スイッチ切り替えにより動作する蓄電モジュール電圧均等化回路と
を備え、
前記第1から第nの蓄電セル電圧均等化回路の各々は、前記蓄電モジュール電圧均等化回路から、前記スイッチ切り替えに応じて変化する入力電圧の入力を受けて動作するよう構成された、
電圧均等化回路システム。
前記蓄電モジュール電圧均等化回路は、1以上の蓄電モジュール電圧均等化回路内キャパシタを更に備え、前記スイッチ切り替えにより、前記第1から第nの蓄電モジュールと該1以上の蓄電モジュール電圧均等化回路内キャパシタとの接続状態を変化させて、該第1から第nの蓄電モジュールに該1以上の蓄電モジュール電圧均等化回路内キャパシタを介した相互充放電をさせることにより、該第1から第nの蓄電モジュールの電圧を均等化するよう構成された、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電圧均等化回路システム。
前記蓄電モジュール電圧均等化回路内共振回路が、直列接続された共振回路内インダクタと共振回路内キャパシタとを備える、請求項5に記載の電圧均等化回路システム。
前記蓄電モジュール電圧均等化回路は、蓄電モジュール電圧均等化回路内インダクタを備えたスイッチ式コンバータとして構成され、前記スイッチ切り替えの時比率を調整することにより前記第1から第nの蓄電モジュールの電圧を均等化するよう構成された、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電圧均等化回路システム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これより図面を用いて、本発明に係る電圧均等化回路システムの構成、動作を説明する。但し、本発明に係る電圧均等化回路システムの構成、動作は、各図面を用いて説明される特定の具体的構成へと限定されるわけではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、以下において各キャパシタは主に単独の蓄電素子であるとして、また蓄電セルはコンデンサ、二次電池、電気二重層キャパシタ等であるとして説明するが、これらは充放電可能な任意の素子、複数の素子からなるモジュール、あるいはそれらモジュールを用いて構成される任意の装置であってもよい。各蓄電素子の容量も、それぞれ異なっていてよい。各スイッチについても、以下においてはMOSFETなどの半導体スイッチであるとして説明するが、任意の電子スイッチ、あるいは機械式スイッチを用いることも可能である。
【0020】
電圧均等化回路システムに用いられる回路要素
本発明の電圧均等化回路システムの構成、動作を説明するに先立ち、これを構成する蓄電セル電圧均等化回路、蓄電モジュール電圧均等化回路に利用することができるスイッチトキャパシタ、共振型倍電圧整流回路の構成、動作を、本発明の発明者の一部又は全てによりなされた先願発明の開示(特許文献1,2)に基づいて説明する。
【0021】
スイッチトキャパシタ
スイッチトキャパシタの構成、動作については、本発明者による先願発明(特願2009−202633,特許第4590520号)の明細書(特許文献2)において説明されているとおりである。
【0022】
すなわち、
図2aのスイッチトキャパシタを用いる場合は、直列にQ1〜Q6の順序で配置されているスイッチ群の接続状態を繰り返し切り替えることでキャパシタCa,Cbと蓄電セル(又は蓄電モジュール)B1〜B3が相互充放電することにより、各キャパシタ及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)の電圧が均等となる。
【0023】
具体的には、奇数番号のスイッチQ1,Q3,Q5がオンである時には、キャパシタCaと蓄電セル(又は蓄電モジュール)B1とが、キャパシタCbと蓄電セル(又は蓄電モジュール)B2とが、それぞれ並列接続されることとなるため、並列接続されたキャパシタ及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)間に電圧のばらつきが発生している場合には相互充放電が行われ、電圧ばらつきが解消される方向へと向かう。また一方で、偶数番号のスイッチQ2,Q4,Q6がオンである時には、キャパシタCaと蓄電セル(又は蓄電モジュール)B2とが、キャパシタCbと蓄電セル(又は蓄電モジュール)B3とが、それぞれ並列接続されることとなるため、並列接続されたキャパシタ及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)間に電圧のばらつきが発生している場合には相互充放電が行われ、電圧ばらつきが解消される方向へと向かう。
【0024】
したがって、奇数番号のスイッチを全てオンとする状態と偶数番号のスイッチを全てオンとする状態との間でスイッチングを繰り返すことにより、各々のキャパシタ及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)は他の全てのキャパシタ及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)と直接的、又は間接的に(他のキャパシタ等を介して)相互充放電を行うのであり、したがってキャパシタCa,Cb及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)B1〜B3の電圧が均等化される。
図2aのスイッチトキャパシタは蓄電セル(又は蓄電モジュール)の直列数が3の場合の例であるが、任意の直列数(2以上)の蓄電セル(又は蓄電モジュール)に対して構成されたスイッチトキャパシタも同様の原理で動作可能である。
【0025】
共振型倍電圧整流回路
共振型倍電圧整流回路の構成、動作については、本発明者のうち一部の発明者による先願発明(特願2012−46569)の明細書(特許文献1)において説明されているとおりである。
【0026】
図3の均等化回路は、特許文献1の提案する均等化回路の一例であり、多段倍電圧整流回路(キャパシタC1〜C4,ダイオードD1〜D8,出力側キャパシタCout1〜Cout4。ただし出力側キャパシタCout1〜Cout4は必須ではなく、これらを省いても動作原理は同様である。)と、ハーフブリッジ型の入力回路(スイッチQ1,Q2)と、共振回路(キャパシタCr,インダクタLr)とから構成されている。多段倍電圧整流回路と共振回路により直列共振型倍電圧整流回路が構成されている。
図3に示すとおり均等化回路を蓄電セル(又は蓄電モジュール)B1〜B4に接続してスイッチQ1,Q2を交互にスイッチングすることにより、蓄電セル(又は蓄電モジュール)B1〜B4の電圧が均等化される。以下、特許文献1の記載を用いることにより(本発明の内容に鑑みて適宜追記等する。)、上記各回路、及びこれらにより構成される特許文献1の提案する均等化回路についての詳細を説明する。
【0027】
多段倍電圧整流回路
図4は、特許文献1の提案する均等化回路において用いることができる、多段倍電圧整流回路の回路図である。多段倍電圧整流回路は、直列接続された蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6に対して2つの直列接続されたダイオードを並列に接続してなる、ダイオードD1〜D12と、2つの直列接続されたダイオードの各々における中間点にキャパシタを接続してなる、キャパシタC1〜C6とから構成される。後述のとおり、端子C,D(第3,第4の端子とする。第1,2の端子については後述。)又はE,F(第5,第6の端子とする。)からキャパシタC1〜C6、及びダイオードD1〜D12を介して交流電圧が入力されることにより、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の電圧が均等化される。なお、蓄電セル(又は蓄電モジュール)の直列接続数は、6に限らず2以上の任意の数であってよい。
【0028】
入力回路
図5a,
図5bは、それぞれ特許文献1の提案する均等化回路において入力回路として用いることができる、ハーフブリッジ型セル、フルブリッジ型セルの回路図である。
【0029】
ハーフブリッジ型セルは、直列接続されたスイッチQ1,Q2の各々にフライホイールダイオードDa,Dbを並列接続することにより構成される。スイッチQ1,Q2の両端間に電圧V
inが入力された状態で、これらスイッチのうちオンとするスイッチを経時的に切り替えることにより、端子A,B(第1,第2の端子とする。)の間には、ピーク電圧V
in、ボトム電圧ゼロの矩形状の電圧が出力される。
【0030】
フルブリッジ型セルは、スイッチQ1,Q2を直列接続してなるスイッチ組と、スイッチQ3,Q4を直列接続してなるスイッチ組と、を並列接続し、さらに各々のスイッチにフライホイールダイオードDa〜Ddを並列接続することにより構成される。スイッチQ1,Q2の両端間(スイッチQ3,Q4の両端間)に電圧V
inが入力された状態で、スイッチQ1及びQ4をオンとする状態と、スイッチQ2及びQ3をオンとする状態と、の間で接続状態を経時的に切り替えることによって、端子A,Bの間には、ピーク電圧V
in、ボトム電圧−V
inの矩形状の電圧が出力される。なお、入力回路としてフルブリッジ型セルを用いる場合、後段にはトランスを備えた共振回路を用いる等して、フルブリッジ回路と多段倍電圧整流回路との電圧レベルを独立させる必要がある。
【0031】
共振回路
図6a〜
図6dは、それぞれ特許文献1の提案する均等化回路において共振回路として用いることができる、直列共振回路、並列共振回路、直並列共振回路、LLC回路の回路図である。いずれの回路も1以上のインダクタと1以上のキャパシタとから構成されており、端子A,Bの間に矩形状の電圧が入力されたとき、端子C,Dの間に交流電圧を出力する。
【0032】
なお、交流電圧の波形は一般に正弦波状となるが、単独の周波数成分のみを有する完全な正弦波が得られるとは限らない。また、交流電圧の基本周波数成分f
s、及び振幅V
Mも、共振回路に含まれるインダクタのインダクタンス、キャパシタの容量だけでなく、端子C,D間に接続される負荷の特性に依存する。特に、負荷としてキャパシタC1〜C6を備えた多段倍電圧整流回路が接続される場合、f
sはそれらの容量にも依存して変わりうる。
【0033】
しかしながら、
図6a〜
図6dに示す共振回路のいずれを用いても、あるいは、少なくとも誘導性素子を備えた、他の如何なる回路を用いても(既に述べたとおり、負荷として接続される多段倍電圧整流回路がキャパシタを備える場合、それらキャパシタを容量性素子として、誘導性素子のみを接続することにより共振回路を構成してもよい。)、誘導性素子と容量性素子との共振現象により交流電圧が得られるのであり(後述の
図10に示すインダクタ電流i
Lrと同様の波形を有する電流が、多段倍電圧整流回路に入力される。)、周波数成分f
s、振幅V
Mの具体的な値に関わらず、特許文献1の提案する均等化回路を同様の原理で動作させることが可能である。
【0034】
なお、
図7a〜
図7dに示すとおり、端子C,Dの間に導線を設け、これをコアに対して巻回し、更に二次巻線をコアに対して巻回することによりトランスを形成すれば、端子C,Dの間に印加される交流電圧を変圧した上で、二次巻線の両端にある端子E,Fの間に出力することが可能となる。
【0035】
特許文献1の提案する均等化回路
図8は、
図4の多段倍電圧整流回路と、
図5aのハーフブリッジ型セルと、
図6aの直列共振回路とを接続することにより構成される、均等化回路の一実施形態を示している。
図8の均等化回路中に存在するスイッチは2つのみで、その他は全て受動部品により構成されている。必要となるスイッチは蓄電セルの直列数に関係なく2つであり、各種従来方式の均等化回路と比較して回路構成が飛躍的に簡素化されている。また回路内に存在する磁性素子はインダクタLrのみであり、すなわち必要となる磁性素子も蓄電セル(又は蓄電モジュール)の直列接続数に関係なく1つであるため、各種従来方式の均等化回路と比較して回路の小型化を図ることが容易である。
【0036】
特許文献1の提案する均等化回路による均等化動作
以下、特許文献1の提案する均等化回路による蓄電セル(又は蓄電モジュール)電圧の均等化動作を、
図9〜
図20を用いて詳しく説明する。
【0037】
なお、
図9〜
図20中では共振回路内キャパシタCrが描かれていないが、これは、
図8中、キャパシタCrとキャパシタC1〜C6とからなるキャパシタ群を、
図9中でキャパシタC1〜C6に統合して描いたためである。具体的には、
図8中のキャパシタCrの容量をC
r、キャパシタC1〜C6の容量をC
i(i=1〜6)としたときに、以下の式
1/C’
i=1/C
r+1/C
i …(1)
により計算される合成容量C’
iをキャパシタCiの容量として扱うことにより、キャパシタCrの存在を無視して動作を説明することが可能となる。
【0038】
また、
図9中、符号S
aはスイッチQ1とフライホイールダイオードDaとから構成される双方向スイッチセルS
aを表し、符号S
bはスイッチQ1とフライホイールダイオードDbとから構成される双方向スイッチセルS
bを表す。符号v
DSa,v
DSb、及び符号i
Sa,i
Sbは、これらスイッチセルS
a,S
bに印加された電圧、及びこれらを流れる電流を表し、符号i
LrはインダクタLrを流れる電流を表し、符合i
C1〜i
C6は、キャパシタC1〜C6を流れる電流を表し、符号V
SC1〜V
SC6は、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6に印加された電圧を表す。
【0039】
なお、
図9中では蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6に対して定電圧の外部充電器V
extが接続されているが、これは、特許文献1の提案する均等化回路が動作するために必須の要素ではない。
【0040】
動作開始時点において、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6にはそれぞれ任意の電圧が印加されているものとする。スイッチQ1,Q2の両端には、それら蓄電セルに印加された電圧の合計電圧、及び外部充電器V
extからの定電圧が印加されている。スイッチQ1のゲート電圧v
GSaとして所定の電圧を印加することにより、スイッチQ1をオンとし、スイッチQ2のゲート電圧v
GSbをゼロとしてスイッチQ2をオフとする状態と、スイッチQ1のゲート電圧v
GSaをゼロとしてスイッチQ1をオフとし、スイッチQ2のゲート電圧v
GSbとして所定の電圧を印加することによりスイッチQ2をオンとする状態と、の間で接続状態を経時的に切り替えることにより、時間に依存する電圧v
DSbが共振回路へと入力される。蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の容量がキャパシタC1〜C6の容量等に比較して十分大きく、スイッチングの1周期に亘って蓄電セル電圧V
SC1〜V
SC6がほぼ一定であるとすれば、スイッチQ1,Q2の両端に印加される電圧もスイッチングの1周期に亘ってほぼ一定であり、共振回路への入力電圧v
DSbは
図10に示すとおり矩形状の電圧となる。以下、スイッチングの周波数が共振回路の共振周波数よりも高い場合と低い場合とのそれぞれに関して、スイッチングの1周期を4つの期間に分割し、それぞれの期間に対応する動作のモード1〜4(
図10中、v
GSaのグラフ参照。)を説明する。
【0041】
スイッチングの周波数が共振周波数よりも高い場合
便宜上、まずモード2の動作を説明する。モード2の期間中においては、
図10中、v
GSa,v
GSbのグラフが示すとおり、スイッチQ1がオンとされ、スイッチQ2がオフとされており、インダクタLrを含む共振回路に対して、ほぼ一定の正電圧(
図9中、v
Dsbを示す矢印の向きに上昇する電圧。
図10中、v
DSbのグラフ参照。)が出力される。これによりインダクタLrに正の電流(
図9中、i
Lrを示す矢印の向きに流れる電流。蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6から、オン状態のスイッチQ1を通ってインダクタLrへと流れ込む。)が流れ、さらにこの電流が、キャパシタC1〜C6、ダイオードD2,D4,D6,D8,D12、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC2〜SC6を通って
図11に示すとおりの経路を流れる。なお、インダクタLrとキャパシタC1〜C6の共振現象により、インダクタLrを流れる電流i
Lrは正弦波状に変化する(
図10中、i
Lrのグラフ参照。)。この電流i
Lrは、
図11から明らかなとおり、スイッチセルS
aを流れる電流i
Saに等しい(
図10中、i
Saのグラフ参照。)。なお、
図11に示されるとおり、オフ状態のスイッチQ2に電流は流れず、すなわちスイッチセルS
bを流れる電流i
Sbはゼロである(
図10中、i
Sbのグラフ参照。)。また、同じく
図11に示されるとおり、インダンクタLrを流れる電流i
LrはダイオードD2,D4,D6,D8,D12を通るよう分流されるため、偶数番号のダイオードを流れる電流i
D2iは定性的にi
Lrと同様の波形を示し、さらに奇数番号のダイオードに流れる電流i
D(2i-1)はゼロである(
図10中、i
D2i及びi
D(2i-1)のグラフ参照。)。
【0042】
多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、スイッチセルS
bの電圧V
DsbとインダクタLrによる誘導起電力との合計電圧であり、モード2の期間中に最大値をとる。v
vmの最大値をV
VM-Eとし、各々のダイオードによる降下電圧をV
Dとすれば、スイッチQ2(
図5a中、端子B,A)、インダクタLr、キャパシタC1、ダイオードD2、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1を通る経路と、スイッチQ2、インダクタLr、キャパシタC2、ダイオードD4、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC2,SC1を通る経路と、スイッチQ2、インダクタLr、キャパシタC3、ダイオードD6、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC3,SC2,SC1を通る経路と、スイッチQ2、インダクタLr、キャパシタC4、ダイオードD8、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、スイッチQ2、インダクタLr、キャパシタC5、ダイオードD10、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、スイッチQ2、インダクタLr、キャパシタC6、ダイオードD12、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC6,SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、にそれぞれキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最大値V
VM-EをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1E〜V
C6Eを、以下の(2)式で表すことができる。
【0043】
スイッチQ1をオフとすることにより、モード2においてスイッチQ1を流れていた電流がフライホイールダイオードDbへと転流し、動作はモード3へと移行する。このとき、共振回路に入力される電圧V
Dsbはゼロとなるが(
図10中、V
DSbのグラフ参照。)、共振現象により、インダクタLrを流れる電流i
Lrは引き続き正弦波状に変化する(
図10中、i
Lrのグラフ参照。)。共振周波数よりも高い周波数でスイッチングを行っているため、モード3への移行時において、インダクタLrを流れる電流i
Lrは依然として正である。インダクタLrが誘導性素子であるため、電流i
Lrはモード3への移行時において連続である一方、モード2においてi
Lrと等しかった電流i
Saは、モード3への移行と同時にゼロとなる(
図10中、i
Saのグラフ参照。)。これに対応して、モード2においてゼロであった電流i
Sbが、モード3への移行と同時にi
Lrと等しい大きさを有することとなる(
図9に示すとおり電流i
Sbの極性を定義しているため、電流i
Sbと電流i
Lrの正負は逆となる。
図10中、電流i
Sb,i
Lrのグラフ参照。)。
【0044】
モード3の期間中において流れる電流の経路を
図12に示す。インダクタLrの電流i
LrはダイオードD2,D4,D6,D8,D12を通るよう分流されるため、偶数番号のダイオードを流れる電流i
D2iは定性的にi
Lrと同様の波形を示し、さらに奇数番号のダイオードに流れる電流i
D(2i-1)はゼロである(
図10中、i
D2i及びi
D(2i-1)のグラフ参照。)。
【0045】
モード3の期間中に、スイッチQ2がオンとされる。インダクタLrの電流i
Lrが負に切り替わるタイミングで、動作はモード4へと移行する。
【0046】
モード4の期間中においては、モード3の期間中と同様に、共振回路に入力される電圧V
Dsbはゼロであるが(
図10中、V
DSbのグラフ参照。)、共振現象により、インダクタLrを流れる電流i
Lrは引き続き正弦波状に変化する(
図10中、i
Lrのグラフ参照。)。電流i
Lrは負であり、さらにこの電流が、スイッチQ2、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC5、ダイオードD1,D3,D5,D7,D9,D11、及びキャパシタC1〜C6を通って
図13に示すとおりの経路を流れる。電流i
Lrは、
図13から明らかなとおり、スイッチセルS
bを流れる電流i
Sbと大きさが等しく、極性が逆である(
図10中、i
Sbのグラフ参照。)。なお、
図13に示されるとおり、オフ状態のスイッチQ1に電流は流れず、すなわちスイッチセルS
aを流れる電流i
Saはゼロである(
図10中、i
Saのグラフ参照。)。また、同じく
図13に示されるとおり、この電流i
LrはダイオードD1,D3,D5,D7,D9,D11を通るよう分流されるため、奇数番号のダイオードを流れる電流i
D(2i-1)は定性的にi
Lrと同様の波形を示し、さらに偶数番号のダイオードに流れる電流i
D2iはゼロである(
図10中、i
D2i及びi
D(2i-1)のグラフ参照。)。
【0047】
多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、モード4の期間中に最小値をとる。v
vmの最小値をV
VM-Oとすれば、スイッチQ2(
図5a中、端子B,A)、インダクタLr、キャパシタC1、ダイオードD1を通る経路と、スイッチQ2、インダクタLr、キャパシタC2、ダイオードD3、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1を通る経路と、スイッチQ2、インダクタLr、キャパシタC3、ダイオードD5、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC2,SC1を通る経路と、スイッチQ2、インダクタLr、キャパシタC4、ダイオードD7、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC3,SC2,SC1を通る経路と、スイッチQ2、インダクタLr、キャパシタC5、ダイオードD9、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、スイッチQ2、インダクタLr、キャパシタC6、ダイオードD11、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、にそれぞれキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最小値V
VM-OをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1O〜V
C6Oを、以下の(3)式で表すことができる。
【0048】
スイッチQ2をオフとすることにより、モード4においてスイッチQ2を流れていた電流がフライホイールダイオードDaへと転流し、動作はモード1へと移行する。このとき、インダクタLrを含む共振回路に対して、ほぼ一定の正電圧v
DSbが出力される(
図10中、v
DSbのグラフ参照。)。共振周波数よりも高い周波数でスイッチングを行っているため、モード1への移行時においてインダクタLrを流れる電流i
Lrは負であるが、上記正電圧v
DSb、及び共振現象により経時的に上昇する。インダクタLrが誘導性素子であるため、電流i
Lrはモード1への移行時において連続である一方、モード4においてi
Lrと等しかった電流i
Sbは、モード1への移行と同時にゼロとなる(
図10中、i
Sbのグラフ参照。)。これに対応して、モード4においてゼロであった電流i
Saが、モード1への移行と同時にi
Lrと等しくなる(
図10中、電流i
Sa,i
Lrのグラフ参照。)。
【0049】
モード1の期間中において流れる電流の経路を
図14に示す。インダクタLrの電流i
LrはダイオードD1,D3,D5,D7,D9,D11を通るよう分流されるため、奇数番号のダイオードを流れる電流i
D(2i-1)は定性的にi
Lrと同様の波形を示し、さらに奇数番号のダイオードに流れる電流i
D2iはゼロである(
図10中、i
D(2i-1)及びi
D2iのグラフ参照。)。
【0050】
モード1の期間中に、スイッチQ1がオンとされる。インダクタLrの電流i
Lrが正に切り替わるタイミングで、動作はモード2へと移行する。
【0051】
上記(2)式、及び(3)式を用いれば、スイッチングの1周期の間にキャパシタC1〜C6において生じる電圧変動ΔV
C1=V
C1E−V
C1O〜ΔV
C6=V
C6E−V
C6Oを、以下の(4)式により表すことができる。
【0052】
一般に、任意の時間tの間にキャパシタを介して運ばれる電荷量ならびにその際における電荷移動の等価抵抗R
eqを、以下の(5)式で表すことができる。
ただし、Qは電荷量、Iは時間tに亘って流れる平均電流、Cはキャパシタの容量、Vは時間tの間にキャパシタに生じる電圧変動である。ここにおいて時間tがスイッチングの1周期に等しいとすれば、その逆数1/tはスイッチングの周波数fである。
【0053】
(5)式中のIとして、キャパシタC1〜C6を経由して流れる、スイッチングの1周期における平均電流I
C1〜I
C6を用い、Vとしてスイッチングの1周期におけるキャパシタC1〜C6の電圧変動ΔV
C1〜ΔV
C6を用いれば、各キャパシタを介した電荷移動の等価抵抗R
eq1〜R
eq6を、以下の(6)式で表すことができる。
【0054】
式(6)とオームの法則から、
図9に示す均等化回路の、スイッチングの1周期に亘って平均化された動作を説明するための回路として、
図15に示すとおりの直流等価回路が得られる。この直流等価回路において、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6は2つのダイオードと1つの等価抵抗を介してV
VM-E−V
VM-Oの電圧値を持つ電圧源に接続されている。よって、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の電圧は、いずれも(V
VM-E−V
VM-O)−2V
Dで表される電圧へ向かって調整されることになるため、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の電圧は均等化される方向に向かう。
【0055】
スイッチングの周波数が共振周波数よりも低い場合
次に、スイッチングの周波数が共振周波数よりも低い場合の、
図9に示す均等化回路の動作を説明する。
【0056】
便宜上、まずモード2の動作を説明する。モード2の期間中においては、
図16中、v
GSa,v
GSbのグラフが示すとおり、スイッチQ1がオンとされ、スイッチQ2がオフとされており、インダクタLrを含む共振回路に対して、ほぼ一定の正電圧(
図16中、v
DSbのグラフ参照。)が出力される。これによりインダクタLrに正の電流(蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6から、オン状態のスイッチQ1を通ってインダクタLrへと流れ込む。)が流れ、さらにこの電流が、キャパシタC1〜C6、ダイオードD2,D4,D6,D8,D12、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC2〜SC6を通って
図17に示すとおりの経路を流れる。なお、インダクタLrとキャパシタC1〜C6の共振現象により、インダクタLrを流れる電流i
Lrは正弦波状に変化する(
図16中、i
Lrのグラフ参照。)。この電流i
Lrは、
図17から明らかなとおり、スイッチセルS
aを流れる電流i
Saに等しい(
図16中、i
Saのグラフ参照。)。なお、
図17に示されるとおり、オフ状態のスイッチQ2に電流は流れず、すなわちスイッチセルS
bを流れる電流i
Sbはゼロである(
図16中、i
Sbのグラフ参照。)。また、同じく
図17に示されるとおり、この電流i
LrはダイオードD2,D4,D6,D8,D12を通るよう分流されるため、偶数番号のダイオードを流れる電流i
D2iは定性的にi
Lrと同様の波形を示し、さらに奇数番号のダイオードに流れる電流i
D(2i-1)はゼロである(
図16中、i
D2i及びi
D(2i-1)のグラフ参照。)。
【0057】
多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、スイッチセルS
bの電圧V
DsbとインダクタLrによる誘導起電力との合計電圧であり、モード2の期間中に最大値をとる。v
vmの最大値をV
VM-Eとし、各々のダイオードによる降下電圧をV
Dとすれば、v
vmが最大値V
VM-EをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1E〜V
C6Eを、スイッチングの周波数が共振周波数よりも高い場合と同様にキルヒホッフの第二法則を適用することにより上記(2)式で表すことができる。
【0058】
スイッチングの周波数よりも共振周波数が高いため、スイッチQ1をオフとする前に電流i
Lrが負となる(
図16中、i
Lrのグラフ参照。)。これと同時に動作はモード3へと移行する。モード3において流れる電流の経路を
図18に示す。モード3への移行時において電流i
Lrは連続であるが、モード2とは異なり、この電流i
LrはダイオードD1,D3,D5,D7,D9,D11を通るよう分流されるため、奇数番号のダイオードを流れる電流i
D(2i-1)は定性的にi
Lrと同様の波形を示し、さらに偶数番号のダイオードに流れる電流i
D2iはゼロである(
図16中、i
D(2i-1)及びi
D2iのグラフ参照。)。
【0059】
モード3の期間中に、スイッチQ1がオフとされる。このとき、スイッチQ1を流れていた電流はフライホイールダイオードDaへと転流する。スイッチQ2をオンとすることにより、動作はモード4へと移行する。
【0060】
モード4の期間中においては、共振回路に入力される電圧V
Dsbはゼロであるが(
図16中、V
DSbのグラフ参照。)、共振現象により、インダクタLrを流れる電流i
Lrは引き続き正弦波状に変化する(
図16中、i
Lrのグラフ参照。)。電流i
Lrは負であり、さらにこの電流が、スイッチQ2、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC5、ダイオードD1,D3,D5,D7,D9,D11、及びキャパシタC1〜C6を通って
図19に示すとおりの経路を流れる。電流i
Lrは、
図19から明らかなとおり、スイッチセルS
bを流れる電流i
Sbと大きさが等しく、極性が逆である(
図16中、i
Sbのグラフ参照。)。なお、
図19に示されるとおり、オフ状態のスイッチQ1に電流は流れず、すなわちスイッチセルS
aを流れる電流i
Saはゼロである(
図16中、i
Saのグラフ参照。)。また、同じく
図19に示されるとおり、この電流i
LrはダイオードD1,D3,D5,D7,D9,D11を通るよう分流されるため、奇数番号のダイオードを流れる電流i
D(2i-1)は定性的にi
Lrと同様の波形を示し、さらに偶数番号のダイオードに流れる電流i
D2iはゼロである(
図16中、i
D2i及びi
D(2i-1)のグラフ参照。)。
【0061】
多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、モード4の期間中に最小値をとる。v
vmの最小値をV
VM-Oとすれば、v
vmが最小値V
VM-OをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1O〜V
C6Oを、スイッチングの周波数が共振周波数よりも高い場合と同様にキルヒホッフの第二法則を適用することにより上記(3)式で表すことができる。
【0062】
スイッチングの周波数よりも共振周波数が高いため、スイッチQ2をオフとする前に電流i
Lrが正となる(
図16中、i
Lrのグラフ参照。)。これと同時に動作はモード1へと移行する。モード1において流れる電流の経路を
図20に示す。モード1への移行時において電流i
Lrは連続であるが、モード4とは異なり、この電流i
LrはダイオードD2,D4,D6,D8,D10,D12を通るよう分流されるため、偶数番号のダイオードを流れる電流i
D2iは定性的にi
Lrと同様の波形を示し、さらに奇数番号のダイオードに流れる電流i
D(2i-1)はゼロである(
図16中、i
D2i及びi
D(2i-1)のグラフ参照。)。
【0063】
モード1の期間中に、スイッチQ2がオフとされる。このとき、スイッチQ2を流れていた電流はフライホイールダイオードDbへと転流する。スイッチQ1をオンとすることにより、動作はモード2へと移行する。
【0064】
上述のとおり、スイッチングの周波数が共振周波数よりも低い場合においても(2)式と(3)式とが成り立つのであり、これらの式を用いれば、スイッチングの1周期の間にキャパシタC1〜C6において生じる電圧変動を上記(4)式で表すことができる。したがって、スイッチングの周波数が共振周波数よりも低い場合においても、
図9に示す均等化回路の、スイッチングの1周期に亘って平均化された動作を説明するための回路として、
図15に示すとおりの直流等価回路が得られる。蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の電圧は、いずれも(V
VM-E−V
VM-O)−2V
Dで表される電圧へ向かって調整されることになるため、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の電圧は均等化される方向に向かう。
【0065】
既に述べたとおり、特許文献1の提案する均等化回路において、入力回路は、定電圧が入力されたときに矩形状の電圧を出力する任意の回路であってよい。一例として、
図5bに示すフルブリッジ型セルを入力回路として用いたときの均等化回路の構成を、
図21に示す(キャパシタCrはキャパシタC1〜C6に統合されている。)。なお、
図21においては、
図7aに示されるようなトランスを用いて、フルブリッジ回路と多段倍電圧整流回路との電圧レベルを独立させている。このような構成をとれば、二次巻線側のグラウンドとSC1〜SC6のグラウンドとの接続を確保しつつ、スイッチQ3がオンとなったときに蓄電セルSC1〜SC6がショートすることを回避できる。この均等化回路を用いて、スイッチQ1及びQ4をオンとする状態と、スイッチQ2及びQ3をオンとする状態と、の間で接続状態を経時的に切り替えたとき、共振回路に対してはピーク電圧V
in、ボトム電圧−V
inの矩形状の電圧が出力される。インダクタLrとキャパシタC1〜C6の共振現象により、インダクタLrを流れる電流i
Lrは、
図10に示すi
Lrのグラフと同様の交流電流となる。
【0066】
共振周波数よりも高い周波数で上記接続状態の切り替えを行ったとき、モード2,3,4,及び1の期間中において多段倍電圧整流回路内を流れる電流の経路は、それぞれ
図11,
図12,
図13,
図14に示されるものと同一である。多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、端子A,B間の電圧とインダクタLrによる誘導起電力との合計電圧であり、モード2の期間中に最大値をとる。
図9の均等化回路と同様に、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC1、ダイオードD2、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC2、ダイオードD4、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC3、ダイオードD6、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC4、ダイオードD8、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC5、ダイオードD10、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC6、ダイオードD12、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC6,SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、にそれぞれキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最大値V
VM-EをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1E〜V
C6Eを、上記(2)式で表すことができる。同じく、
図9の均等化回路と同様に、多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、モード4の期間中に最小値をとる。v
vmの最小値をV
VM-Oとすれば、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC1、ダイオードD1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC2、ダイオードD3、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC3、ダイオードD5、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC4、ダイオードD7、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC5、ダイオードD9、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC6、ダイオードD11、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、にそれぞれキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最小値V
VM-OをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1O〜V
C6Oを、上記(3)式で表すことができる。したがって、
図21に示す均等化回路の動作も
図15の直列等価回路によって説明することができるのであり、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の電圧は均等化される方向に向かう。
【0067】
共振周波数よりも低い周波数で上記接続状態の切り替えを行ったときも、モード2,3,4,及び1の期間中において多段倍電圧整流回路内を流れる電流の経路は、それぞれ
図17、
図18、
図19、及び
図20に示されるものと同一である。多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、端子A,B間の電圧とインダクタLrによる誘導起電力との合計電圧であり、モード2の期間中に最大値をとる。
図9の均等化回路と同様に、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC1、ダイオードD2、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC2、ダイオードD4、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC3、ダイオードD6、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC4、ダイオードD8、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC5、ダイオードD10、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC6、ダイオードD12、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC6,SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、にそれぞれキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最大値V
VM-EをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1E〜V
C6Eを、上記(2)式で表すことができる。同じく、
図9の均等化回路と同様に、多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、モード4の期間中に最小値をとる。v
vmの最小値をV
VM-Oとすれば、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC1、ダイオードD1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC2、ダイオードD3、及び蓄電セルSC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC3、ダイオードD5、及び蓄電セルSC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC4、ダイオードD7、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC5、ダイオードD9、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC6、ダイオードD11、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、にそれぞれキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最小値V
VM-OをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1O〜V
C6Oを、上記(3)式で表すことができる。したがって、
図21に示す均等化回路の動作も
図15の直列等価回路によって説明することができるのであり、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の電圧は均等化される方向に向かう。入力回路としてその他の回路を用いたときも同様である。
【0068】
また、既に述べたとおり、特許文献1の提案する均等化回路において、共振回路は、
図6aに限らず、1以上の誘導性素子を備えた任意の回路であってよい。一例として、
図6bに示す並列共振回路を共振回路として用いたときの均等化回路の構成を、
図22に示す。この均等化回路を用いて、スイッチQ1をオンとする状態と、スイッチQ2をオンとする状態と、の間で接続状態を経時的に切り替えたとき、共振回路に対してはピーク電圧V
in、ボトム電圧ゼロの矩形状の電圧が出力される。インダクタLr、共振回路内キャパシタCr、及びキャパシタC1〜C6の共振現象により、インダクタLrを流れる電流i
Lrは、
図10に示すi
Lrのグラフと同様の交流電流となる。
【0069】
共振周波数よりも高い周波数で上記接続状態の切り替えを行ったとき、モード2,3,4,及び1の期間中において回路内を流れる電流の経路は、それぞれ
図11,
図12,
図13,
図14に示されるものと同一である(但し、各モードにおいてキャパシタCrにも電流は流れるのであり、またこの電流の向きは、キャパシタCrの容量に依存して同一モード中でも随時変化する。)。多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、端子A,B間の電圧とインダクタLrによる誘導起電力との合計電圧であり、モード2の期間中に最大値をとる。
図9の均等化回路と同様に、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC1、ダイオードD2、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC2、ダイオードD4、及び蓄電セルSC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC3、ダイオードD6、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC4、ダイオードD8、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC5、ダイオードD10、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC6、ダイオードD12、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC6,SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、にそれぞれキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最大値V
VM-EをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1E〜V
C6Eを、上記(2)式で表すことができる。同じく、
図9の均等化回路と同様に、多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、モード4の期間中に最小値をとる。v
vmの最小値をV
VM-Oとすれば、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC1、ダイオードD1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC2、ダイオードD3、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC3、ダイオードD5、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC4、ダイオードD7、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC5、ダイオードD9、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC6、ダイオードD11、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、にそれぞれキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最小値V
VM-OをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1O〜V
C6Oを、上記(3)式で表すことができる。したがって、
図22に示す均等化回路の動作も
図15の直列等価回路によって説明することができるのであり、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の電圧は均等化される方向に向かう。
【0070】
共振周波数よりも低い周波数で上記接続状態の切り替えを行ったときも、モード2,3,4,及び1の期間中において回路内を流れる電流の経路は、それぞれ
図17、
図18、
図19、及び
図20に示されるものと同一である(但し、各モードにおいてキャパシタCrにも電流は流れるのであり、またこの電流の向きは、キャパシタCrの容量に依存して同一モード中でも随時変化する。)。多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、端子A,B間の電圧とインダクタLrによる誘導起電力との合計電圧であり、モード2の期間中に最大値をとる。
図9の均等化回路と同様に、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC1、ダイオードD2、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC2、ダイオードD4、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC3、ダイオードD6、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC4、ダイオードD8、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC5、ダイオードD10、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC6、ダイオードD12、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC6,SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、にそれぞれキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最大値V
VM-EをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1E〜V
C6Eを、上記(2)式で表すことができる。同じく、
図9の均等化回路と同様に、多段倍電圧整流回路に対する入力電圧v
vmは、モード4の期間中に最小値をとる。v
vmの最小値をV
VM-Oとすれば、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC1、ダイオードD1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC2、ダイオードD3、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC3、ダイオードD5、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC4、ダイオードD7、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC5、ダイオードD9、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、端子B,A、インダクタLr、キャパシタC6、ダイオードD11、及び蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC5,SC4,SC3,SC2,SC1を通る経路と、にそれぞれキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最小値V
VM-OをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1O〜V
C6Oを、上記(3)式で表すことができる。したがって、
図22に示す均等化回路の動作も
図15の直列等価回路によって説明することができるのであり、蓄電セルSC1〜SC6の電圧は均等化される方向に向かう。共振回路としてその他の回路を用いたときも同様である。
【0071】
また、特許文献1の提案する均等化回路において、共振回路にトランスを設けるならば、共振回路と多段倍電圧整流回路との接続点Fは、ダイオードD1〜D12の各々の両端のうち、任意の位置にとることができる。一例として、接続点DをダイオードD2とD3との中間点にとったときの均等化回路の構成を、
図23に示す。このような構成においても、スイッチQ1をオンとする状態と、スイッチQ2をオンとする状態と、の間で接続状態を経時的に切り替えたとき、共振回路に対してはピーク電圧V
in、ボトム電圧ゼロの矩形状の電圧が出力される。インダクタLr、共振回路内キャパシタCr、及びキャパシタC1〜C6の共振現象により、インダクタLrを流れる電流i
Lrは、
図10に示すi
Lrのグラフと同様の交流電流となる。
【0072】
図23に示す均等化回路を、共振周波数よりも高いスイッチング周波数で動作させたときのモード2,3,4,1における電流の経路を、それぞれ
図24、
図25、
図26、
図27に示す。
図9の均等化回路等と同様に、モード2に対応する
図24の回路にキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最大値V
VM-EをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1E〜V
C6Eを、以下の(2)’式で表すことができ、モード4に対応する
図26の回路にキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最小値V
VM-OをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1O〜V
C6Oを、以下の(3)’式で、それぞれ表すことができる。
【0075】
上記(2)’式、(3)’式から、
図9の均等化回路と同様に(4)式が得られる。したがって、
図23に示す均等化回路を共振周波数よりも高いスイッチング周波数で動作させたときにも、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の電圧は均等化される方向に向かう。
【0076】
さらに、
図23に示す均等化回路を、共振周波数よりも低いスイッチング周波数で動作させたときのモード2,3,4,1における電流の経路を、それぞれ
図28、
図29、
図30、
図31に示す。
図9の均等化回路等と同様に、モード2に対応する
図28の回路にキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最大値V
VM-EをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1E〜V
C6Eを、上記(2)’式で表すことができ、モード4に対応する
図30の回路にキルヒホッフの第二法則を適用することにより、v
vmが最小値V
VM-OをとるときのキャパシタC1〜C6の電圧V
C1O〜V
C6Oを、上記(3)’式で、それぞれ表すことができる。
【0077】
上記(2)’式、(3)’式から、
図9の均等化回路と同様に(4)式が得られる。したがって、
図23に示す均等化回路を共振周波数よりも低いスイッチング周波数で動作させたときにも、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の電圧は均等化される方向に向かう。接続点Dを他の位置にとった場合も、同様に(4)式が得られ、蓄電セル(又は蓄電モジュール)SC1〜SC6の電圧は均等化される方向に向かうことが示される。
【0078】
電圧均等化回路システム
以上のとおり先願発明により開示される回路要素の構成、動作を踏まえて、本発明の電圧均等化回路システムの概念を説明する。
【0079】
図32は、4直列構成の蓄電セルからなる蓄電モジュールを3つ直列接続してなる蓄電システムに対し、本発明に係る電圧均等化回路システムの一例として、図示するとおり蓄電モジュール電圧均等化回路と蓄電セル電圧均等化回路とからなるモジュラー式均等化回路を設けたときの概念図である。
【0080】
典型的な態様において、
図32中の蓄電モジュール電圧均等化回路はスイッチングコンバータの一種であり、蓄電モジュール電圧均等化回路内のスイッチングノードでは、その動作に伴い副次的に矩形波状電圧が発生している。本発明の教示するモジュラー式均等化回路においては、蓄電モジュール電圧均等化回路内で副次的に発生する、この矩形波状電圧を利用して蓄電セル電圧均等化回路を動作させることにより、蓄電セル電圧均等化回路を完全にスイッチレス化することが可能となる。すなわち、蓄電セル電圧均等化回路を構成するにあたって、特許文献1の均等化回路に含まれていた入力回路を設ける必要がない。蓄電セル電圧均等化回路には、
図3に示した回路中の直列共振型倍電圧整流回路を初めとして、特許文献1の記載に基づいてこれまでに説明した均等化回路を構成する多段倍電圧整流回路と共振回路とからなる、様々なタイプの共振型倍電圧整流回路を用いることができる。一方、蓄電モジュール電圧均等化回路には、スイッチ切り替えにより動作する様々な均等化回路方式を採用することができる。
【実施例1】
【0081】
電圧均等化回路システムの具体例として、スイッチトキャパシタにより蓄電モジュール電圧均等化回路を構成し、蓄電セル電圧均等化回路には
図3の直列共振型倍電圧整流回路を用いた場合のシステム構成を
図33に示す。
【0082】
キャパシタCmとスイッチQL1,QH1,QL2,QH2を含んでなるスイッチトキャパシタとして、蓄電モジュール電圧均等化回路が構成される。また、キャパシタCr1,インダクタLr1を含んでなる共振回路と、キャパシタC1−1〜C1−4,ダイオードD1−1〜D1−8,及び必須ではないが出力側キャパシタCo1−1〜Co1〜4を含んでなる直列共振型倍電圧整流回路として、第1の蓄電セル電圧均等化回路が構成され、キャパシタCr2,インダクタLr2を含んでなる共振回路と、キャパシタC2−1〜C2−4,ダイオードD2−1〜D2−8,及び必須ではないが出力側キャパシタCo2−1〜Co2〜4を含んでなる直列共振型倍電圧整流回路として、第2の蓄電セル電圧均等化回路が構成される。なお、
図33中のRbias1,Rbias2はバイアス抵抗であり、それぞれキャパシタCr1やC1−1〜C1−4、及びキャパシタCr2やC2−1〜C2−4の電圧を安定化させるために任意で設けられる。
【0083】
動作においては、
図33に示すとおり第1及び第2の蓄電セル電圧均等化回路を、蓄電セルB1−1〜B1−4からなる第1の蓄電モジュール、及び蓄電セルB2−1〜B2−4からなる第2の蓄電モジュールにそれぞれ接続した上で、スイッチトキャパシタにおいてスイッチQL1,QL2のみがオンとなった状態とスイッチQH1,QH2のみがオンになった状態とを、各状態の時比率(スイッチングの一周期に対する、各状態の実現する時間の割合)を等しくして交互に切り替える。ただし、上記時比率は等しくなくても動作可能である(スイッチトキャパシタを用いた蓄電モジュール電圧均等化回路の均等化性能の観点では等しい時比率が望ましい)。また、蓄電モジュール電圧均等化回路の実用上、必要に応じてスイッチングにはデッドタイムを適宜設ける。これにより、第1の蓄電モジュールと第2の蓄電モジュールとがキャパシタCmを介して並列接続されて相互充放電することで、両蓄電モジュールの電圧ばらつきが解消される方向に向かう(なお、「蓄電モジュールの電圧」とは蓄電モジュール両端間の電圧である。「蓄電セルの電圧」等についても同様。他の実施例においても同様。)。
【0084】
さらに、このような動作においては、スイッチQL1,QL2にそれぞれ矩形波状電圧が発生する。具体的に、まずスイッチQL1,QL2がオンのタイミングにおいては、スイッチQL1,QL2の両端に印加される電圧はそれぞれゼロであるが(説明の簡略化のため、ダイオードの順方向降下電圧はゼロとする。以下同様。)、QH1,QH2がオンのタイミングにおいては、スイッチQL1の両端に印加される電圧は「蓄電セルB1−1〜B1−4に印加される電圧の合計電圧(第1の蓄電モジュールの電圧)」であり、スイッチQL2の両端に印加される電圧は「蓄電セルB2−1〜B2−4に印加される電圧の合計電圧(第2の蓄電モジュールの電圧)」である。これら矩形波状電圧が、直列共振型倍電圧整流回路としてそれぞれ構成される、第1,第2の蓄電セル電圧均等化回路にそれぞれ入力される。
【0085】
特許文献1に基づいて説明したとおり、直列共振型倍電圧整流回路に矩形波状電圧が入力されるとき、矩形波状電圧は共振回路によって交流電圧へと変換され、多段倍電圧整流回路が交流電圧によって動作することにより、当該多段倍電圧整流回路に接続された蓄電セルの電圧が均等化される。すなわち、第1の蓄電セル電圧整流回路においては、スイッチQL1,QH1間のスイッチングノードから入力される矩形波状電圧が、キャパシタCr1,インダクタLr1を含む共振回路により交流電圧へと変換され、この交流電圧が、キャパシタC1−1〜C1−4,ダイオードD1−1〜D1−8,出力側キャパシタCo1−1〜Co1−4を含む多段倍電圧整流回路へと入力され、多段倍電圧整流回路の動作により蓄電セルB1−1〜B1−4の電圧が均等化される(出力側キャパシタCo1−1〜Co1−4の電圧が均等化され、これらにそれぞれ並列接続された蓄電セルB1−1〜B1−4の電圧が均等化される。出力側キャパシタCo1−1〜Co1−4を用いない場合は、蓄電セルB1−1〜B1−4の電圧が直接均等化される。)。第2の蓄電セル電圧整流回路においては、スイッチQL2,QH2間のスイッチングノードから入力される矩形波状電圧が、キャパシタCr2,インダクタLr2を含む共振回路により交流電圧へと変換され、この交流電圧が、キャパシタC2−1〜C2−4,ダイオードD2−1〜D2−8,出力側キャパシタCo2−1〜Co2−4を含む多段倍電圧整流回路へと入力され、多段倍電圧整流回路の動作により蓄電セルB2−1〜B2−4の電圧が均等化される(出力側キャパシタCo2−1〜Co2−4の電圧が均等化され、これらにそれぞれ並列接続された蓄電セルB2−1〜B2−4の電圧が均等化される。出力側キャパシタCo2−1〜Co2−4を用いない場合は、蓄電セルB2−1〜B2−4の電圧が直接均等化される。)。
【0086】
以上のとおり、蓄電モジュール電圧均等化回路による蓄電モジュール電圧の均等化と、第1,第2の蓄電セル電圧均等化回路による各蓄電モジュール内での蓄電セル電圧の均等化とが並行して進むことにより、蓄電システムに含まれる各蓄電セルの電圧を均等化することができる。
【0087】
図34に、蓄電モジュール電圧均等化回路(スイッチトキャパシタ)と蓄電セル電圧均等化回路(直列共振型倍電圧整流回路)とが統合されておらず、それぞれの回路が別個にスイッチを備える、従来の電圧均等化回路システムを示す。従来のシステムにおいては、スイッチトキャパシタに含まれるスイッチQL1,QH1,QL2,QH2と、それぞれの直列共振型倍電圧整流回路に接続されたスイッチQ1−1,Q1−2とQ2−1,Q2−2とを別個に制御することで、蓄電モジュール電圧の均等化と蓄電セル電圧の均等化とを別個に行っていた。
図34の従来例と比較して、
図33の均等化回路システムにおいてはスイッチが8個から4個へと削減されている。
【0088】
本発明の均等化回路システムによって電圧均等化が行われる蓄電モジュール、蓄電セルの直列数は任意である。
図35に、蓄電モジュールの直列数が3である場合のシステム回路図を示す。図面の簡素化のため、蓄電セル電圧均等化回路に関しては第1の蓄電モジュールに対して設けられる回路のみ図示しており、その他の蓄電モジュールに対して設けられる蓄電セル電圧均等化回路はブロック図で表している。
【実施例2】
【0089】
図33においては、蓄電モジュール電圧均等化回路にスイッチトキャパシタを用いた回路構成を示したが、その他の均等化回路方式を蓄電モジュール電圧均等化回路に用いることも可能である。一例として、
図36に、蓄電モジュール電圧均等化回路と蓄電セル電圧均等化回路の両方に直列共振型倍電圧整流回路を用いたモジュラー式電圧均等化回路システムを示す。
【0090】
キャパシタCrm,インダクタLr―mを含んでなる共振回路と、キャパシタCm1〜Cm3,ダイオードDm1〜Dm6とを含んでなる直列共振型倍電圧整流回路を、スイッチQL,QHの各々にフライホイールダイオードを並列接続してなる入力回路と接続することで蓄電モジュール電圧均等化回路が構成される。Rbias−mはバイアス抵抗であり、キャパシタCrmやCm1〜Cm3の電圧を安定化させるために任意で設けられる。3つの蓄電セル電圧均等化回路も、
図33に示したものと同様に直列共振型倍電圧整流回路として構成される。
【0091】
動作においては、蓄電モジュール電圧均等化回路の入力回路においてスイッチQLのみがオンの状態とスイッチQHのみがオンの状態とを交互に等しい時比率(スイッチングの一周期に対する、各状態の実現する時間の割合)で切り替えることにより矩形波状電圧を出力し、この矩形波状電圧をキャパシタCrm,インダクタLr―mを含んでなる共振回路で交流電圧へと変換し、この交流電圧が、キャパシタCm1〜Cm3,ダイオードDm1〜Dm6を含む多段倍電圧整流回路へと入力され、多段倍電圧整流回路の動作により第1〜第3の蓄電モジュール(
図36中、モジュール1〜3)の電圧が均等化される。ただし、実施例1と同様に上記時比率は等しくなくても動作可能であるし、必要に応じてスイッチングにはデッドタイムを適宜設ける。
【0092】
ここで、上記入力回路におけるスイッチ切り替えに伴い、ダイオードDm1とDm2間、Dm3とDm4間、及びDm5とDm6間にはそれぞれ矩形波状の電圧が発生する。具体的には、特許文献1に基づいて既に説明したとおり、キャパシタCm1〜Cm3,ダイオードDm1〜Dm6を含んでなる多段倍電圧整流回路においては奇数番号ダイオードDm1,Dm3,Dm5が導通した状態と、偶数番号ダイオードDm2,Dm4,Dm6が導通した状態とが交互に実現されるが(
図11〜
図14,
図17〜
図20等)、奇数番号ダイオードが導通しているとき、それらのダイオードDm1,Dm3,Dm5両端に印加される電圧はゼロであり(説明の簡略化のため、ダイオードの順方向降下電圧はゼロとする。以下同様。)、偶数番号ダイオードDm2,Dm4,Dm6両端に印加される電圧は、それぞれ第1の蓄電モジュールの電圧、第2の蓄電モジュールの電圧、第3の蓄電モジュールの電圧に等しくなり、一方で偶数番号ダイオードが導通しているとき、それらのダイオードDm2,Dm4,Dm6両端に印加される電圧はゼロであり、奇数番号ダイオードDm1,Dm3,Dm5両端に印加される電圧は、それぞれ第1の蓄電モジュールの電圧、第2の蓄電モジュールの電圧、第3の蓄電モジュールの電圧に等しくなる。したがって、
図33に示す電圧均等化回路システムの動作と同様に、各々の蓄電セル電圧均等化回路に対しては矩形波状電圧が入力される。
【0093】
3つの蓄電セル均等化回路は、
図33と同様に直列共振型倍電圧整流回路により構成されているため、既に特許文献1や実施例1で説明したとおり、これら直列共振型倍電圧整流回路が矩形波状電圧を入力電圧として動作することにより、各蓄電モジュール内で蓄電セル電圧が均等化される。
図36の構成においても蓄電セル電圧均等化回路はスイッチレスで動作可能であり、モジュラー均等化回路として構成される電圧均等化回路システム全体として必要となるスイッチ数は2つ(蓄電モジュール電圧均等化回路内のスイッチQL,QH)である。
【実施例3】
【0094】
蓄電モジュール電圧均等化回路の他の例として、スイッチQ1,Q2とインダクタLを含んでなるスイッチ式昇降圧コンバータを用いた電圧均等化回路システムの構成を
図37に示す。蓄電セル電圧均等化回路の構成は、
図33等と同様である。
【0095】
図37の電圧均等化回路システムにおいては、スイッチQ1,Q2のうちQ1のみがオンの状態と、Q2のみがオンの状態とを交互に切り替えることにより第1,第2の蓄電モジュール(
図37中、モジュール1,2)の電圧が均等化される。具体的には、スイッチQ1の時比率(スイッチングの一周期に対する、スイッチQ1のみがオンの状態の実現する時間の割合)をDとしたとき(0<D<1)、第1,第2の蓄電モジュールの電圧をV
M1,V
M2とすれば、定常状態でのインダクタLにおける磁束のバランスから、以下の式
DV
M1=(1−D)V
M2…(7)
が成り立つのであり、時比率を50%(D=0.5)とすることにより、V
M1=V
M2となって第1,第2の蓄電モジュールの電圧が均等化される。
【0096】
このとき、スイッチQ1のみがオンの状態でスイッチQ1に印加される電圧はゼロとなり、スイッチQ2のみがオンの状態でスイッチQ1に印加される電圧はV
M1+V
M2に等しい。したがって、スイッチQ1,Q2の切り替えに伴ってスイッチQ1,Q2間には矩形波状の電圧が発生する。この矩形波状電圧が、第1,第2の蓄電モジュールにそれぞれ接続された2つの直列共振型倍電圧整流回路(蓄電セル電圧均等化回路)にそれぞれ入力され、既に説明したとおり第1,第2の蓄電モジュール内でそれぞれ蓄電セル電圧が均等化されることとなる。