【解決手段】容器1は、接地面を構成する高台2の縁部と、縁部の一部を切り欠いて形成された切り欠き部3と、縁部に取り囲まれて設けられ、切り欠き部3への指向性を備える裏面4と、を有している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態の容器を、図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1および
図2は、第1の実施の形態の容器を示す図である。
【0011】
第1の実施の形態の容器(お椀)1は、高台2を有している。高台2の一部には、高台2の縁部(接地面)2aの一部を切り欠いて形成された切り欠き部3が設けられている。この切り欠き部3は、高台2内の水(流体)を排水する際の排水口として機能する。
高台2の縁部に取り囲まれた裏面(高台裏)4の形状は、切り欠き部3への指向性を備える流線型状をなしている。
【0012】
図1では、裏面4の起伏を点線で示している。切り欠き部3に向かう裏面4の形状は、切り欠き部3に向かって斜度が漸増している。これにより、水の表面張力による水の残存を抑制することができる。なお、裏面4の形状は、切り欠き部3への指向性を備える流線型状をなしていれば、これに限定されない。
図3は、裏面の形状を説明する図である。
図3は、実施の形態の容器1に適用できる裏面(容器1ではない裏面)の側部断面図を示している。斜線で示した部分が裏面の形状を示している。
【0013】
例えば、
図3(a)に示すように、切り欠き部側の部位10aから離れた部位10bの斜度は比較的急で、途中の部位10cの斜度が部位10bの斜度に比べてなだらかになり、切り欠き部10d近傍の部位10dの斜度が再び急になっていてもよい。
また、
図3(b)に示すように、部位10e〜10gの斜度が、部位10aに近づくにつれてなだらかになっていくもの等であってもよい。
再び
図1に戻って説明する。
【0014】
また、切り欠き部3近傍の水が集まる集水部5の断面形状は、なだらかなU字状をなしている。これにより、水との接触面積をなるべく少なくする(なるべく平面に近づける)ことで、集水部5への水の残存を抑制することができる。
また、排水口として機能する切り欠き部3の水が流出する部分の幅は、幅が狭すぎて集水部5に水が残存したりすることがないようになっている。
【0015】
なお、
図1、
図2における切り欠き部3の形状、および集水部5の断面形状はU字状であるが、前述した条件を満たせば切り欠き部の形状は、特に限定されず、例えばV字状、角型、富士山型、ハート型等であってもよい。
以下の説明では、切り欠き部3と裏面4とにより示したような排水の仕組みを「排水システム」と言う。
【0016】
このように、裏面4の形状を流線型にすることで、食器を洗った際に、容器1が立てかけられた場合はもちろん、水平に置かれた場合でも水が流れるようになるため、高台2の裏面4に水が残ることを抑制することができる。
【0017】
また、裏面4の形状を流線型にすることで、気流を面に沿って受けやすくなり、速く乾かせることができる。このため、食器乾燥機を用いて容器1を乾かす場合にも比較的乾き易い。従って、乾燥機の乾燥時間が短くて済み、電気代を節約することができる。
図4は、実施の形態の容器の排水の手順を説明する図である。なお、
図4では、容器1の容器本体の図示を省略している。
図4(a)に示すように、容器1においては水w1が円を描くように排水される。このため、表面張力により水滴が分裂しにくい。
【0018】
また、
図4(b)に示すように、仮に水滴が分裂した場合においても切り欠き部3に向かって斜度が漸増する形状をなしているため、水滴w2が結合し易く排水されやすい。
図5は、比較例の容器の排水の手順を説明する図である。比較例においても容器の高台部分を図示し、容器本体の図示を省略している。
【0019】
図5に示す容器90は、裏面94の形状が、容器1とは異なっている。比較例の容器90は、高台の頂面から底面まで達する切り欠き部93が形成されている。比較例の食器の高台92の裏面94の形状は、切り欠き部93に向かう斜面の傾斜が同方向、かつ、角度が一定となっている(特開2006−141930号参照)。
【0020】
図5では、水の流れる向きを矢印で示している。
図5(a)に示すように、比較例の容器90は、切り欠き部93から離れた水の上部w3は水が比較的速く捌けるが、切り欠き部93に近い下部w4は水捌けが遅い。さらに、水捌けが速い上部w3は、水面が水平となるので水の表面張力により水が水面の表面積をできるだけ小さくしようとするときに水面が分裂し、水の塊が出来易い。この水の塊は、水滴が残存する原因となる。
【0021】
また、
図5(b)に示すように、比較例の容器の裏面94は、排水口に向かう傾斜が同方向、かつ、一定角度となっている。このため、一度分離した水滴w5の再結合が容器1に比べ起こりにくく、これも、水滴w5が残存する原因となる。
次に、容器1、容器90それぞれに送風したときの様子を説明する。
図6は、比較例の容器を示す図である。
【0022】
図6(a)は、比較例の容器の高台を示す図であり、
図6(b)は、
図6(a)のA−A線での高台の断面図である。
図6(b)では、気流を矢印にて示している。
比較例の容器90では、高台と裏面94の設置角度が急なことにより水が残りやすく、さらに、裏面94に気流が当たりにくい箇所(死角)95、96が存在する。その死角95、96に水w6が残存する原因となる。
図7は、実施の形態の容器を示す図である。
【0023】
図7(a)は、実施の形態の容器の高台を示す図であり、
図7(b)は、
図7(a)のB−B線での高台の断面図である。
図7(b)では、気流を矢印にて示している。
【0024】
図7(b)に示すように、本実施の形態の容器1は気流が遮られる箇所が存在しないので、気流が裏面4に沿って流れる。これにより、仮に裏面4に水w7が残存してしまった場合にも乾燥しやすくなる。
【0025】
以上述べたように、容器1によれば、水を裏面4に留まらせずに切り欠き部3から排水することができる。また、切り欠き部3の形状は孔ではなく開口であるため、切り欠き部3に食べ屑等が詰まる可能性は低い。
また、容器1を洗浄する際には、死角が存在しないので、裏面4に水が残りにくい。
次に、実施の形態の排水システムを用いた容器の変形例を説明する。
<第1の変形例>
図8は第1の変形例の容器を説明する図である。
【0026】
図8に示す容器1aは、高台が設けられていない。容器1aの縁部(接地面)に取り囲まれた裏面4aの一部には、切り欠き部3aが設けられている。この切り欠き部3aは、裏面4aの水(流体)を排水する際の排水口として機能する。
この裏面4aの形状は、切り欠き部3aへの指向性を備える流線型状をなしている。
変形例の容器1aによれば、高台等がない容器においても水を裏面4aに留まらせずに切り欠き部3aから排水することができる。
<第2の変形例>
図9は第2の変形例の容器を説明する図である。
図9に示す容器1bは、ワイングラスである。容器1bは、ボウル1b1と、ステム1b2と、ベース1b3とを備えている。
【0027】
そして、ベース1b3の縁部(接地面)に取り囲まれた裏面4bの一部には、切り欠き部3bが設けられている。ワイングラスのように高台が設けられていない容器1bについては、ベースの縁を湾曲させることにより、切り欠き部3bを形成する。
【0028】
この切り欠き部3bは、裏面4bの水(流体)を排水する際の排水口として機能する。裏面4bの形状は、切り欠き部3bへの指向性を備える流線型状をなしている。
【0029】
このように、接地面が容器本体と離間しているような容器1bの場合は、接地面を形成する部位(
図7ではベース1b3)の裏面に排水システムを形成する。これにより、容器の主たる部分と裏面とが分離しているような容器においても水を裏面4bに留まらせずに切り欠き部3bから排水することができる。
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態の容器について説明する。
以下、第2の実施の形態の容器について、前述した第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図10は、第2の実施の形態の容器を示す図である。
図10に示す容器1cはマグカップである。容器1cの裏面4cの形状は、裏面4と同様の特徴を備えている。
【0030】
容器1cは、切り欠き部3cの下部(
図10中)に取っ手6が設けられている。取っ手6は、切り欠き部3cから流出した水を容器1cの外部に導くガイドとして機能する。具体的には、この取っ手6の外側の形状は、断面がU字状の溝部7をなしている。溝部7は、切り欠き部3cに連通しており、切り欠き部3cから流出した水は、この溝部7を通って容器1cの外部に排水される。ここで、連通するとは、切り欠き部3cから流出した水が容器1cの側面等に流れないという意味を含み、切り欠き部3cと溝部7とは、必ずしも接触していなくてもよい。
【0031】
切り欠き部3cの下部に溝部7を備える取っ手6を設けることで、切り欠き部3cから流出した水が容器1cの側部に留まらずに容器1cから離間する可能性を高めることができる。
また、食器乾燥機等を用いて容器1cを乾燥させる場合を考える。
図11は、第2の実施の形態の容器に風を当てたときの気流を説明する図である。
図11では、気流を矢印で示している。
図11(b)は、容器1cのC−C線での断面図である。
【0032】
図11中、紙面右側から風が吹いたときには、取っ手6を伝わった風が切り欠き部3cから流入し、裏面4cに導かれる。これにより、裏面4cが、より乾きやすくなるという利点がある。
なお、本実施の形態では、取っ手6にガイドを配置したが、取っ手以外にガイドを配置してもよい。
図12は、取っ手以外にガイドを配置した容器を示す図である。
図12(a)に示す容器1dの裏面4dの形状は、裏面4と同様の特徴を備えている。
容器1dは、容器の取っ手6a以外の側部8に、切り欠き部3dから流出した水を容器1dの外部に導くガイドとして機能する溝部7aが設けられている。
図12(b)は、容器1dの断面の一部を示す図である。溝部7aは、断面がハートの上半分を切り取ったような型をなしている。
なお、溝部7aの断面形状は特に限定されず、例えばU字状、V字状、角型、富士山型等であってもよい。
このような容器1dであっても、切り欠き部3dから流出した水が容器1dの側部8に留まらずに容器1dから離間する可能性を高めることができる。
【0033】
但し、取っ手以外にガイドを配置したカップの側面に絵柄をプリントする場合には、ガイドが邪魔になる場合が考えられるが、
図10に示した容器1cによれば、取っ手6にガイドを配置することで、カップ1cの側面に絵柄をプリントする場合もガイドが邪魔にならないという利点がある。
図13は、注ぎ口にガイドを配置した容器を示す図である。
図13に示す容器1eは急須である。容器1eの裏面4eの形状は、裏面4と同様の特徴を備えている。
【0034】
容器1eは、切り欠き部3eの下部に、注ぎ口9が設けられている。この注ぎ口9には、切断面がU字状の溝部7bが設けられている。この溝部7bは、切り欠き部3eから流出した水を容器1eの外部に導くガイドとして機能する。
【0035】
切り欠き部3eの下部に、溝部7bを備える注ぎ口9を設けることで、切り欠き部3eから流出した水が容器1eの側部に留まらずに容器1eから離間する可能性を高めることができる。
なお、
図13に示す溝部7bは、注ぎ口9の肩(付け根)から嘴(先端)に沿って配置した。しかし、溝部の配置位置は、
図13に示す位置に限定されない。
図14は、溝部の配置の他の例を示す図である。
図14において、
図13と同様の部分には同様の符号を付し、詳細の説明を省略する。
【0036】
図14に示す容器1fの溝部7cは、注ぎ口9の肩から注ぎ口の側面に向かって配置されている。溝部7cをこのように配置することにより、溝部の長さを短くすることができるため、溝部7cに水が滞留してしまうことを抑制することができる。
【0037】
なお、前述した各実施の形態の排水システムを適用できる容器としては、特に限定されない。また、容器の素材としては、例えば
土や木やステンレス綱や樹脂やガラス等が挙げられる。
【0038】
例えば、前述した例以外に、コーヒーカップ、グラス、四角皿、おちょこ、とっくり、多角形皿、タンブラー、醤油皿、湯飲み茶碗、急須、ポット、ラーメン皿、どんぶり、そばちょこ、ビールジョッキ、ピッチャー、ほ乳瓶、鍋の食器が挙げられる。
図15は、実施の形態の排水システムを適用したとっくりおよびおちょこを示す図である。
図16は、実施の形態の排水システムを適用したタンブラーを示す図である。
【0039】
また、食器に限らず、例えば、ビン、カン、タッパー、砂糖容器、醤油差等の容器や、灰皿等にも前述した各実施の形態の排水システムを適用することができる。
図17は、実施の形態の排水システムを適用した灰皿を示す図である。
図18は、実施の形態の排水システムを適用した缶を示す図である。
図19は、実施の形態の排水システムを適用したビンを示す図である。
図20は、実施の形態の排水システムを適用した蓋付きビンを示す図である。
また、容器の裏面の形状を用いて球を転がすような玩具も考えられる。
【0040】
また、例えば、実施の形態の排水システムを適用した複数のシャンパングラスを用いて任意の水流を作成したシャンパンタワーを演出する等、実施の形態の排水システムを、任意の目的で使用することができる。
【0041】
以上、本発明の容器を、図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。
また、本発明は、前述した各実施の形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。