【解決手段】女性向けボトム衣類用パッドは、女性人体の股部分に対応するマチ部を有するボトム衣類に設けられるパッドであって、前記ボトム衣類の装着時において、装着者の会陰体に対応する位置に突起部を有するメイン部と、前記メイン部の一方側に設けられ前記装着者の前記会陰体の前方の体表面に対向配置されるサポート部と、を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、女性向けボトム衣類の一例として、1実施形態にかかるショーツ10について
図1乃至
図8を参照して説明する。
図1は、第1実施形態にかかるショーツ10を前方から見た説明図であり、
図2は、後方から見た説明図である。
図3は、ショーツ10のマチ部13の構成を示す説明図である。
図4は、女性向けボトム衣類用パッドの一例であるパッド20の構成を示す側面図であり、
図5はパッド20の構成を示す斜視図である。
図6は、パッド20の前面図である。
【0009】
図1乃至
図3に示すように、ショーツ10は、例えば綿や合成繊維からなる布地で構成され、前身頃11と、後身頃12と、前身頃11及び後身頃12の間に設けられ装着時に股部110に配されるマチ部13と、を備えている。
【0010】
前身頃11は、装着時に人体の下腹部101から股部110を覆う所定形状に構成されている。前身頃11は、腹部に配される上縁11aと、人体の左右両足の付け根に位置する一対の側縁11bと、縫合によりマチ部13に接続される下縁11cと、縫合により後身頃12に接続される上側縁11dと、で囲まれている。
【0011】
後身頃12は、装着時に人体の尻部を覆う所定形状に構成されている。後身頃12は、腰部分に配される上縁12aと、人体の左右両足の付け根に位置する一対の側縁12bと、縫合によりマチ部13に接続される下縁12cと、縫合により前身頃11に接続される上側縁12dと、で囲まれている。
【0012】
マチ部13は、所定幅を有し、前縁13aと後縁13bと両側縁13cとを備え、人体の股部110を覆う所定形状に構成されている。
【0013】
前身頃11と後身頃12とが上側縁で互いに縫合により接続されている。前身頃11の下縁11cはマチ部13の前縁13aに縫合により接続されている。後身頃12の下縁12cはマチ部13の後縁13bに縫合により接続されている。マチ部13の側縁13cと前身頃11及び後身頃12の側縁11b、12bとによって、脚繰りとなる一対の開口が形成されるとともに、前身頃11及び後身頃12の上縁11a,12aが連続することで腰回りの開口が形成される。
【0014】
マチ部13には、例えば生地が重ねられて袋状に構成されたポケット部14が形成されている。ポケット部14は、後端縁14aと両側縁14bが閉じられ、前縁14cが前方に開口している。
【0015】
ポケット部14の前縁14cには、装着時に人体側に配される内側の生地が表側の生地との間において後方に向かって折り返されるとともにその両側部が縫合された返し構造部14dを備えている。この返し構造部14dによって、内蔵されたパッド20の飛び出しを抑制する。ポケット部14には、所定形状に構成されたパッド20が配置されている。
【0016】
パッド20は、ショーツ10に設けられるショーツ用パッドであり、所定形状に成型された弾性変形可能で湾曲しやすいクッション材で構成されている。パッド20は、例えば表面がポリエステルに樹脂コーティングした生地でラミネートされた発泡性のポリウレタンシートが所定形状にモールド加工されて構成される。
【0017】
パッド20の外周縁は熱プレス処理によって圧縮されている。パッド20の外周縁には、中央側の部位よりも硬く、変形しにくく構成され、高い保形性を有するベースライン20aが形成されているが、この態様に限られるものではない。
【0018】
パッド20は、ショーツ10の装着時において、装着者の会陰体115に対応する位置に突起部23を有するメイン部21と、メイン部21の一方側に設けられ装着者の会陰体115の前方の体表面としての皮膚に対向配置されるサポート部22と、を備える。パッド20は、たとえば平面視において、略馬蹄状すなわち、略U字形状に構成されている。
【0019】
パッド20の長さは例えば、ポケット部14に収容可能な長さであって、人体の会陰体115後方近傍から尿道111前方近傍に至る長さに設定されている。例えばパッド20のX方向の長さは70〜190mmに構成されており、より好適には113〜133mm程度に構成されている。例えばパッド20は、ポケット部14の内寸より小さめに寸法設定され、ポケット部14内においてその位置が調整可能に構成されている。
【0020】
パッド20の幅寸法は、一般的なボトム衣類のマチ部に設けたポケット部14に収容可能であり、その範囲で膣孔112周りの骨盤底筋群120に対応した所定の幅に設定されている。例えばパッド20のY方向寸法は30〜100mmに構成されており、より好適には60〜75mm程度に構成されている。
【0021】
メイン部21は、パッド20部の一端側に配置され、一端側に円弧状に湾曲した外縁を有する。メイン部21には、Z方向に突出する突起部23が形成されている。突起部23は、その外面が略半球状に隆起する曲面を構成している。突起部23の頂部は例えば装着時に人体の会陰体115に対向する位置に設定される。
【0022】
また、メイン部21は、突起部23とは反対側に、緩やかに隆起する隆起部24が設けられている。すなわち、ベースライン20aを基準として、一方と他方にそれぞれ湾曲面を形成する凸部が設けられている。なお、メイン部21の構成は隆起部24を備える態様に限られるものではなく、例えば隆起部24を省略して一方のみに凸部を構成するものであってもよい。
【0023】
パッド20は、突起部23の外周縁と、脚部25の付け根の部位の厚みが小さくなるように凹んでいる。このため、
図4に破線で示すように、パッド20は装着時の外力に応じて脚部25の付け根で屈曲しやすくなっている。
【0024】
すなわち、パッド20は、隆起部24があることと、脚部25の付け根で屈曲しやすいことにより、メイン部21がサポート部22よりも内方に位置するように緩やかに屈曲あるいは傾斜する姿勢となりやすく、装着時に体に密着しやすく形成されている。
【0025】
一例として、サポート部22のベースライン20aに対して、メイン部21のベースライン20aが12度程度、傾斜するとともに、装着者の個体差にもよるが、サポート部22のベースライン20a自体も装着時に45度程度、湾曲する。
【0026】
突起部23は、パッド20がポケット部14に設置され、装着者がショーツ10を装着した状態で、装着者の会陰体115に位置する寸法に配置されている。例えば実施形態において、ベースライン20aを基準とした突起部23の厚みは12〜50mmに構成されており、より好適には14〜23mmに構成されている。ベースライン20aを基準とした隆起部24の厚みは1〜5mm程度に構成されている。
【0027】
サポート部22は、メイン部21から他端側に延びる一対の脚部25を有する。一対の脚部25は、装着時に尿道111及び膣孔112が並ぶ中央部位の両側部に、前後方向に沿って配される。一対の脚部25の間はスリット状に切り欠かれ、間隙部26が形成されている。寸法は7〜15mmに構成されており、より好適には9〜13mm程度に構成されている。
【0028】
一対の脚部25は、脚部25同士が互いに対向する内側部に、外側部28よりも厚く構成された突条部27をそれぞれ有している。すなわち、脚部25は、内側部が隆起して突条部27を構成し、突条部27の外側部28は突条部27よりも低くなっている。
【0029】
サポート部22の突条部27における厚さ寸法は、突起部23の厚さ寸法よりも小さく、例えば1〜30mmに構成されており、より好適には2〜9mmに構成されている。
【0030】
したがって、一対の脚部25はそれぞれ、会陰体115前方近傍から尿道111前方近傍に至る領域における人体の股部110の体表面の凹凸形状に沿う外面を有している。
【0031】
以上のように構成されたパッド20は、装着時に、その厚さによって、ショーツ10の内面を、内方すなわち人体側に押しつける方向に隆起させることで、装着時に人体の所定位置を押圧して刺激または支持する。
【0032】
本実施形態において、パッド20はポケット部14に着脱可能に設置される。すなわち、
図3に示すように、前縁の開口からポケット部14にパッド20を挿入し、返し構造部14dの生地で前端部を包み込むように生地を引っかけることによって、パッド20がポケット部14内に位置決めされる。
【0033】
次に、本実施形態のショーツ10を装着した状態について説明する。
図7及び
図8は、パッド20の装着位置を示す説明図であり、人体である装着者の各部位との位置関係を示している。
図7は人体の下腹部101を側方から見た説明図であり、
図8は人体の股部110の内部に配される筋肉や骨の位置を示す説明図であり、股部の下方から示している。なお、
図7及び
図8において筋肉の位置の説明のため、皮膚やその他構成を適宜省略して概略的に示している。
【0034】
図7及び
図8に示すように、人体の下腹部101内には、前方から順番に、膀胱103と、子宮104と、大腸105と、が配置されている。下腹部101の下方の股部110には、膀胱103に繋がる尿道111と、膣を介して子宮104に繋がる膣孔112と、大腸105に繋がる肛門113とが前方から後方に順番に配置されている。
【0035】
股部110には、肛門挙筋116、外尿道括約筋117、深会陰体横筋118、尾骨筋119、等の複数の筋肉から構成される骨盤底筋群120が配されている。骨盤底筋群120の筋繊維は、肛門113と膣孔112との間に配される会陰体115(会陰腱中心)に集中している。すなわち、会陰体115が骨盤底筋群120の要となる。この骨盤底筋群120の人体上方に、骨盤121、背骨122が配されている。会陰体115が、出産による自然裂傷や切開、体重増加、ホルモンバランスの影響、便秘による努責などの様々な要因によって損傷することで、骨盤底筋群120が脆弱し、失禁症が発生すると考えられている。一般に正常機能の会陰体は座骨結節よりも約2cm前上方に位置するが、骨盤底筋群が脆弱すると座骨結節と同等の高さまで下垂する場合もある。
【0036】
パッド20を設置したショーツ10を人体に装着した装着状態において、パッド20の隆起部24が会陰体115に位置し、その前方の体表面にサポート部22が対応して配置される。また、一対の脚部25の間の間隙部26は、膣孔112及び尿道111に対応して配置され、一対の脚部25は膣孔112及び尿道111の両側部の体表面である皮膚に密着して配される。
【0037】
装着者がショーツ10を装着することで、会陰体115が突起部23によって押圧されて刺激されるとともに、膣孔112及び尿道111の両側部分の骨盤底筋群120が脚部25によって押圧または支持される。このとき、脚部25は内側部位が外側部28よりも隆起していることにより股部110の体表面に密着して位置ずれが防止される。
【0038】
また、装着者はショーツ10を装着した際に、突起部23が会陰体115に当接することによって、会陰体115の位置を確認することができる。
【0039】
本実施形態にかかるショーツ10及びパッド20によれば、以下のような効果が得られる。すなわち、会陰体115を押圧するためのメイン部21と骨盤底筋群120に配置されるサポート部22とが一体に設けられていることから、簡単な構造で、会陰体115と骨盤底筋群120とを押圧することが可能である。したがって、骨盤底筋群120を効果的に支持または刺激することで、失禁症状を低減できる。すなわち、通常、会陰体115に部材を位置決めすることは困難であるが、本実施形態にかかるパッド20によればサポート部22が膣孔112や尿道111の周りの体表面に密着することで、サポート部22と一体に設けられたメイン部21の会陰体115への位置決めが実現できる。
【0040】
また、会陰体115に対応するメイン部21と骨盤底筋群120に対応するサポート部22とが一体に設けられたパッド20を用いることで、装着者がショーツ10を装着するだけで、パッド20の突起部23で会陰体115を支持及び挙上すると同時にサポート部22によって骨盤底筋群120を支持することができ、高い失禁抑制効果が得られる。
【0041】
なお、尿失禁の対策として、骨盤底筋群120を鍛えるいわゆる骨盤底トレーニングを行うことがあるが本実施形態にかかるパッド20及びショーツ10によれば、骨盤底トレーニングの際に、装着者が会陰体115の位置及び骨盤底筋群120の位置を意識しやすい。すなわち、パッド20によって会陰体115に機械的刺激を与えることにより、骨盤底筋群120の固有感覚を高め、常に骨盤底筋群120を意識できるように補助することができる。このため、例えば骨盤底トレーニングの際には装着者がこのパッド20をつかむように意識させることができ、また骨盤底筋群120の収縮や弛緩も認識しやすくなることで、トレーニング効果を高めることができる。
【0042】
なお、一般的に失禁症状のある人は、骨盤が後傾位で、骨盤底筋群120の筋力が十分に発揮できない姿勢となりがちであるが、その場合にも、本ショーツ10を装着して会陰体115にパッド20が当たるように意識することで、自然と骨盤の傾きが矯正される。このため、姿勢改善による失禁抑制効果も得られる。
【0043】
また、所定形状のパッド20をショーツ10のマチ部13に形成されたポケット部14に挿入するだけで、位置決めが容易にできるとともに、位置ずれを防止できる。
【0044】
また、パッド20がポケット部14内において位置調整可能に構成されていることにより、装着者が個々の体型に合せてパッド20の位置を適切に設定できる。このため、装着者の体型に左右されることなく高い失禁防止効果を提供できる。
【0045】
さらに、パッド20は弾性変形可能なクッション材で構成され、布などの可撓性のあるショーツ10に保持されることから、パッド20及びショーツ10が変形及び復元可能であり、運動追従性がよい。また、ポケット部14に着脱可能な構成としたことにより、洗濯時に取り外すこともでき取扱い性が良い。さらに、パッド20には間隙部26が設けられていることにより、個人によって太ももの大きさや股間の広さが異なることによる個体差に対して、ポケット部14内部にてフレキシブルにフィットするとともに、装着者の歩行等の妨げになることを防止できるという効果も得られる。
【0046】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0047】
例えば上記実施形態では女性向けボトムの1態様としてショーツで説明したが、これに限られるものではなく、例えばガードル、レギンス、パンツ、タイツとしてもよい。この場合にも上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0048】
例えば上記実施形態において一対の前記脚部25の間は、スリット状の切り欠きとしたが、これに限られるものではなく、一対の脚部25を一体に連続し、たとえば突条部27よりも薄い薄肉部で連続させる構成として、略釣鐘状のような構成にしてもよく、その他、略長方形や楕円形状のような構成にしても同様の効果を発揮する。
【0049】
また、パッド20の突起部23や突条部27に周辺部材よりも固い芯材を内蔵することで、さらに押圧効果を向上することも可能である。
【0050】
また、パッド20はショーツ10と別体で構成し、ショーツ10に着脱可能としたが、これに限られるものではない。例えば面ファスナやボタン、もしくはテープ類等の接続部材を用いてパッド20をショーツ10に設置してもよい。また、パッド20をマチ部13に挟み、あるいは吊るすことによりショーツ10のマチ部13に設置する構造であってもよい。さらに、パッド20はショーツ10のマチ部13に一体に設けられていてもよい。
【0051】
この他、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。