【実施例】
【0026】
以下に、本発明の実施例であるワーク浮上搬送装置について、
図1乃至
図6(B)に基づいて説明する。
ここで、
図1は、本発明の実施例であるワーク浮上搬送装置を示す概略斜視図であり、
図2は、
図1に示す符号2で視た平面図であり、
図3は、本発明の実施例である高精度浮上量領域プレートを示す平面図であり、
図4は、
図3に示す符号4の箇所を示す拡大平面図であり、
図5(A)は、コーティング処理領域における本発明の効果を説明する搬送方向から視た概略断面図であり、
図5(B)は、比較例を示す概略断面図であり、
図6(A)は、搬出領域における本発明の効果を説明する搬送方向から視た概略断面図であり、
図6(B)は、比較例を示す概略断面図である。
【0027】
本発明の実施例であるワーク浮上搬送装置100は、
図1および
図2に示すように、ワークWと、このワークWの搬送路100Aとの間に介在する圧縮空気でワークWを浮上させ、図示しない公知のワーク保持手段による搬送力で搬送するように構成されている。
例えば、ワーク保持手段は、搬送路上で浮上したワークWの一部を吸引吸着して把持してワークWを搬送方向下流側に搬送する。
なお、
図1にワークWの浮上方向U、幅方向S、搬送方向Cを示す。
【0028】
ワークWの搬送路100Aは、搬入領域A1と、この搬入領域A1より下流側で浮上状態のワークWにコーティング処理を施すコーティング処理領域A2と、コーティング処理領域A2より下流側の搬出領域A3とで構成されている。
このうち、搬入領域A1の搬送路100Aは、一例としてワークWの搬送方向Cに対する幅方向Sに並べて配置された4本の搬入領域レール110で形成されている。
そして、搬入領域レール110には、ワークWとの間に圧縮空気を噴射する複数の噴射口111と、大気と連通して搬送路100AとワークWとの間の圧縮空気を大気中へ開放する複数の大気排気穴112とが配置されている。
【0029】
搬送路100Aの搬送方向Cの中央部には、搬入領域A1とコーティング処理領域A2との間に配置される搬入側調整領域A4、コーティング処理領域A2およびコーティング処理領域A2と搬出領域A3との間に配置される搬出側調整領域A5により搬送方向Cの上流側から下流側に向かって構成される高精度浮上量領域プレート120が設置されている。
高精度浮上量領域プレート120のコーティング処理領域A2には、圧縮空気を噴射する複数の噴射口121と、圧縮空気を吸引する複数の吸引口123とが配置されている。
搬入側調整領域A4および搬出側調整領域A5には、複数の噴射口121と、複数の大気排気穴127とが配置されている。
【0030】
さらに、高精度浮上量領域プレート120の搬送方向下流側には、搬出領域A3の搬送路100Aを形成する搬出領域プレート130が設置され、搬出領域プレート130には、複数の噴射口131と、複数の大気排気穴132とが配置されている。
搬入領域A1では、第1浮上量でワークWを浮上させ、コーティング処理領域A2では、第1浮上量よりも小さい第2浮上量でワークWを浮上させ、搬出領域A3では、第2浮上量より大きい第3浮上量でワークWを浮上させるように構成されている。
【0031】
なお、搬入側調整領域A4では、ワークWが搬送方向下流側へ進むことに従って、ワークWの浮上量を第1浮上量から第2浮上量へ滑らかに変化させるように、複数の噴射口121と、複数の大気排気穴127とが配置されている。
同様に、搬出側調整領域A5では、ワークWが搬送方向下流側へ進むことに従って、ワークWの浮上量を第2浮上量から第3浮上量へ滑らかに変化させるように、複数の噴射口121と、複数の大気排気穴127とが配置されている。
また、第3浮上量は、第1浮上量と同じでもよいし、異なる浮上量でもよい。
【0032】
そして、ワークWが、搬入領域A1からコーティング処理領域A2を介して搬出領域A3へ搬送される際、コーティング処理領域A2に設置されたプロセスラインPLにおいて、図示しないコーティング手段によってワークWの表面がコーティングされる。
【0033】
噴射口121は、噴射口121に給気圧を発生させる給気圧発生手段(図示せず)と連通されている。
また、吸引口123は、吸引口123に吸引圧を発生させる吸引圧発生手段(図示せず)と連通されている。
【0034】
図3に示すように、コーティング処理領域A2は、プロセスラインPLの上流側第1列乃至下流側第1列を含むプロセスライン直下部分A2a、プロセスラインPLの上流側第2列乃至第5列および下流側第2列乃至第5列を含むプロセスライン近傍部分A2b、プロセスラインPLの上流側第6列乃至第17列および下流側第6列乃至第17列を含むプロセスライン周辺部分A2cから構成されている。
コーティング処理領域A2のプロセスラインPLの上流側では、噴射口121および吸引口123が、市松模様状に交互に配置されている。
【0035】
また、コーティング処理領域A2のプロセスラインPLの下流側でも、噴射口121および吸引口123が、市松模様状に交互に配置されている。
さらに、搬送方向Cにおける噴射口121および吸引口123の配置間隔が、プロセスライン直下部分A2a、プロセスライン近傍部分A2b、プロセスライン周辺部分A2cの順で広くなっている。
また、プロセスライン直下部分A2a、プロセスライン近傍部分A2b、プロセスライン周辺部分A2cのそれぞれにおいて、幅方向側端部位A2ab、A2bb、A2cbにおける幅方向Sの噴射口121および吸引口123の配置間隔が、幅方向中央部位A2aa、A2ba、A2caにおける幅方向Sの噴射口121および吸引口123の配置間隔より狭くなっている。
【0036】
具体的に、プロセスライン直下部分A2aの幅方向中央部位A2aaでは、幅方向Sにおいて、噴射口121および吸引口123が、所定間隔L1をあけて交互に配置され、搬送方向Cにおいて、噴射口121同士、吸引口123同士が、所定間隔L1より狭い所定間隔L2をあけて配置されている。
そして、プロセスライン直下部分A2aの幅方向側端部位A2abでは、幅方向Sにおいて、噴射口121および吸引口123が、所定間隔L1より狭く所定間隔L2より広い所定間隔L3をあけて配置され、搬送方向Cにおいて、噴射口121同士、吸引口123同士が、所定間隔L2をあけて配置されている。
【0037】
また、プロセスライン近傍部分A2bの幅方向中央部位A2baでは、幅方向Sにおいて、噴射口121および吸引口123が、所定間隔L1をあけて交互に配置され、搬送方向Cにおいて、噴射口121および吸引口123が、所定間隔L3をあけて交互に配置されている。
そして、プロセスライン近傍部分A2bの幅方向側端部位A2bbでは、幅方向Sにおいて、噴射口121および吸引口123が、所定間隔L1より狭い所定間隔L3をあけて配置され、搬送方向Cにおいて、噴射口121および吸引口123が、所定間隔L3をあけて交互に配置されている。
【0038】
さらに、プロセスライン周辺部分A2cの幅方向中央部位A2caでは、幅方向Sにおいて、噴射口121および吸引口123が、基本的に所定間隔L1をあけて交互に配置され、搬送方向Cにおいて、噴射口121および吸引口123が、所定間隔L1をあけて交互に配置されている。
そして、プロセスライン周辺部分A2cの幅方向側端部位A2cbでは、幅方向Sにおいて、噴射口121および吸引口123が、所定間隔L1より狭い所定間隔L3をあけて配置され、搬送方向Cにおいて、噴射口121および吸引口123が、所定間隔L1をあけて交互に配置されている。
【0039】
つまり、コーティング処理領域A2の幅方向側端部位A2ab、A2bb、A2cbに配置された噴射口121および吸引口123の分布密度が、コーティング処理領域A2の幅方向中央部位A2aa、A2ba、A2caに配置された噴射口121および吸引口123の分布密度より密になっている。
さらに、コーティング処理領域A2の幅方向中央部位A2aa、A2ba、A2caは、ワークWの幅方向中央部位Waと対面し、コーティング処理領域A2の幅方向側端部位A2ab、A2bb、A2cbは、ワークWの幅方向側端部位Wbと対面する。
これにより、プロセスライン直下部分A2aの幅方向SのワークWの浮上状態を示す
図5(A)のように、ワークWに作用する噴射口121からの噴射力および吸引口123からの吸引力がワークWの幅方向側端部位Wbで幅方向中央部位Waよりも大きく、そして、きめ細かに作用してワークWの幅方向側端部位Wbの浮上量が安定してワークWの幅方向側端部位Wbの沈み込みが阻止される。
【0040】
なお、参考までに、
図5(B)に比較例として、プロセスライン直下部分A2aの幅方向側端部位A2abに配置された噴射口521および吸引口523の分布密度が、コーティング処理領域A2の幅方向中央部位A2aaに配置された噴射口521および吸引口523の分布密度と同じであるものを示す。
図5(B)に示すように、比較例のプレート520には、幅方向Sにおいて、噴射口521および吸引口523が、所定間隔をあけて配置されている。
そして、プロセスライン直下部分A2aの幅方向側端部位A2abに配置された噴射口521および吸引口523の分布密度が、プロセスライン直下部分A2aの幅方向中央部位A2aaに配置された噴射口521および吸引口523の分布密度と同じになっている。
【0041】
図5(A)と
図5(B)とを比べて明らかなように、比較例の
図5(B)では、プレート520とワークWとの間の圧縮空気がプレート520の両側方域からワークWの外側へ逃げてコーティング処理領域A2の幅方向側端部位A2abと対向するワークWの幅方向側端部位Wbが、コーティング処理領域A2の幅方向中央部位A2aaと対向するワークWの幅方向中央部位Waよりも下がってワークWの平坦度が低下するが、本実施例の
図5(A)では、ワークWの幅方向側端部位Wbにおける所定の浮上量が確保され、ワーク幅方向の全域に亘ってワークWの平坦度が維持される。
そのため、コーティング処理を施したときにコーティング層W1が均一の厚みで形成される。
さらに、コーティング層W1の平坦度も維持される。
【0042】
なお、
図5(A)において、コーティング処理領域A2のプロセスライン直下部分A2aの幅方向Sについて図示したが、コーティング処理領域A2のプロセスライン近傍部分A2b、プロセスライン周辺部分A2cについても、コーティング処理領域A2の幅方向側端部位A2bb、A2cbに配置された噴射口121および吸引口123の分布密度が、コーティング処理領域A2の幅方向中央部位A2ba、A2caに配置された噴射口121および吸引口123の分布密度より密になっているため、プロセスライン直下部分A2aと同様の作用効果が得られる。
【0043】
また、本発明の実施例において、コーティング処理領域A2それぞれの幅方向側端部位A2ab、A2bb、A2cbにおける噴射口121の数と吸引口123の数との比率は、コーティング処理領域A2それぞれの幅方向中央部位A2aa、A2ba、A2caにおける噴射口121の数と吸引口123の数との比率と同じであることが好ましいが、同じでなくても適用可能である。
さらに、
図3および
図4に示すように、プロセスライン周辺部分A2cの幅方向中央部位A2caにおける噴射口121および吸引口123が、市松模様状に交互に配置され、市松模様状の縦横2配列方向のうちの搬送方向Cに近い配列方向が、搬送方向Cに対して幅方向1ピッチである所定間隔L1以内で傾いている。
【0044】
これにより、プロセスライン周辺部分A2cの幅方向側端部位A2cbの噴射口121および吸引口123の分布密度とプロセスライン周辺部分A2cの幅方向中央部位A2caの噴射口121および吸引口123の分布密度との大小関係を維持したまま、噴射口121の配置分布が幅方向Sに分散されてワークWが受ける給気温度エネルギーの分布も幅方向Sに分散される。
つまり、コーティング処理されたときの塗布ムラや乾燥ムラが幅方向Sにおいて小さくまたは無になってコーティング層W1の状態が幅方向Sで略均一になる。
【0045】
また、
図3に示すように、搬入側調整領域A4の幅方向側端部位A4bの噴射口121の分布密度が、搬入側調整領域A4の幅方向中央部位A4aの噴射口121の分布密度より密になっている。
これにより、搬入側調整領域A4においてワークWに作用する噴射口121からの噴射力がワークWの幅方向中央部位Waよりも下がろうとするワークWの幅方向側端部位WbでワークWの幅方向中央部位Waよりも大きくきめ細かに作用する。
つまり、搬入側調整領域A4においてワークWの幅方向側端部位Wbの浮上量とワークWの幅方向中央部位Waの浮上量との差が小さくまたは無になってワークWの平坦度が向上する。
【0046】
さらに、
図3および
図4に示すように、搬出側調整領域A5についても、搬入側調整領域A4と同様、幅方向側端部位A5bの噴射口121の分布密度が、搬出側調整領域A5の幅方向中央部位A5aの噴射口121の分布密度より密になっている。
これにより、ワークWの平坦度が向上する。
さらに、ワークWの平坦度を向上させた状態でコーティング層W1が変形することなくコーティング層W1を固化させながらコーティング処理後のワークWが搬送される。
【0047】
また、
図1および
図2に示すように、搬出領域A3の幅方向側端部位A3bの噴射口131の分布密度が、搬出領域A3の幅方向中央部位A3aの噴射口131の分布密度より密になっている。
さらに、搬出領域A3の幅方向中央部位A3aは、ワークWの幅方向中央部位Waと対面し、搬出領域A3の幅方向側端部位A3bは、ワークWの幅方向側端部位Wbと対面する。
【0048】
これにより、
図6(A)に示すように、搬出領域A3においてワークWに作用する噴射口131からの噴射力がワークWの幅方向中央部位Waよりも下がろうとするワークWの幅方向側端部位WbでワークWの幅方向中央部位Waよりも大きくきめ細かに作用する。
つまり、搬出領域A3においてワークWの幅方向側端部位Wbの浮上量とワークWの幅方向中央部位Waの浮上量との差が小さくまたは無になる。
さらに、ワークWの平坦度を向上させた状態でコーティング層W1が変形することなくコーティング層W1を固化させながらコーティング処理後のワークWが搬送される。
【0049】
なお、参考までに、
図6(B)に比較例として、搬出領域A3の幅方向側端部位A3bに配置された噴射口531の分布密度が、搬出領域A3の幅方向中央部位A3aに配置された噴射口531の分布密度と同じであるものを示す。
図6(B)に示すように、比較例のプレート530には、幅方向側端部位A3bおよび幅方向中央部位A3aの幅方向Sにおいて、噴射口531が、所定間隔をあけて配置されている。
そして、搬出領域A3の幅方向側端部位A3bに配置された噴射口531の分布密度が、搬出領域A3の幅方向中央部位A3aに配置された噴射口531の分布密度と同じになっている。
【0050】
図6(A)と
図6(B)とを比べて明らかなように、比較例の
図6(B)では、プレート530とワークWとの間の圧縮空気がプレート530の両側方域からワークWの外側へ逃げて搬出領域A3の幅方向側端部位A3bと対向するワークWの幅方向側端部位Wbが、搬出領域A3の幅方向中央部位A3aと対向するワークWの幅方向中央部位Waよりも下がってワークWの平坦度が低下するが、本実施例の
図6(A)では、ワークWの幅方向側端部位Wbにおける所定の浮上量が確保され、ワーク幅方向の全域に亘ってワークWの平坦度が維持される。
そのため、コーティング処理後にコーティング層W1が変形することがない。
【0051】
さらに、搬出領域A3の幅方向中央部位A3aにおける噴射口131が、格子状に配列され、格子状の配列方向が、搬送方向Cに対して傾いている。
これにより、搬出領域A3において噴射口131の配置分布が幅方向Sに分散されてワークWが受ける給気温度エネルギーの分布も幅方向Sに分散される。
つまり、コーティング処理された後の乾燥ムラが幅方向Sにおいて小さくまたは無になってコーティング層W1の厚みなどが幅方向Sで略均一になる。
【0052】
このようにして得られた本発明の実施例であるワーク浮上搬送装置100は、搬送路100Aにおけるコーティング処理領域A2の幅方向側端部位A2ab、A2bb、A2cbに配置された噴射口121および吸引口123の分布密度が、搬送路100Aにおけるコーティング処理領域A2の幅方向中央部位A2aa、A2ba、A2caに配置された噴射口121および吸引口123の分布密度より密になっていることにより、ワークWの幅方向側端部位Wbにおける所定の浮上量が確保され、ワーク幅方向の全域に亘ってワークWの平坦度を維持し、ワークWの幅方向に亘って均一なコーティング処理を施すことができる。
【0053】
さらに、コーティング処理領域A2の幅方向側端部位A2ab、A2bb、A2cbにおける噴射口121の数と吸引口123の数との比率が、コーティング処理領域A2の幅方向中央部位A2aa、A2ba、A2caにおける噴射口121の数と吸引口123の数との比率と同じに設けられていることにより、ワークWの幅方向側端部位Wbの浮上量とワークWの幅方向中央部位Waの浮上量との差を抑制することができる。
【0054】
また、コーティング処理領域A2の幅方向中央部位A2caにおける噴射口121および吸引口123が、市松模様状に交互に配置され、この市松模様状の縦横2配列方向のうちの搬送方向Cに近い配列方向が、搬送方向Cに対して幅方向1ピッチ以内で傾いていることにより、コーティング処理されたときの塗布ムラや乾燥ムラを幅方向Sにおいて小さくまたは無にしてコーティング層W1の状態を幅方向Sで略均一にすることができるなど、その効果は甚大である。