【課題】既存の切換信号発生システムを採用した場合でも、切換信号を迅速に発生させることができ、しかも断線や故障等により切換信号が出力されなくなったときに、軸発電機兼モータの運転を停止することができる排熱回収システムを備えた船舶推進システムを提供する。
【解決手段】制御信号発生部23は、電力計測部41が計測する出力電力又は入力電力が予め定めた切換準備電力より小さくなると、制御信号を連続信号として切換準備時間よりも長い予め定めた時間出力した後、制御信号の出力を停止する。切換動作をする際に、連続する制御信号が入力時間累積部45に入力されるため、パルス幅が短くなる制御信号が入力される場合よりも、短い時間で累積時間が切換準備時間に達するようになる。制御信号を連続信号とすることにより、累積時間の累積を連続して行えるので、迅速に切換信号を発生することができる。
排熱をエネルギ源として電気エネルギを供給するタービン及び発電機を備え、前記発電機で発電した電気エネルギを船内の電気ネットワークに供給する排熱回収システムと、
プロペラシャフトに連結された軸発電機兼モータを備え、前記発電機で発電した電気エネルギを前記電気ネットワークに供給しても余る余剰電力を前記軸発電機兼モータに供給して、前記余剰電力を前記プロペラシャフトを駆動するための機械エネルギに変換することにより、前記プロペラシャフトによる船の推進をアシストするアシスト動作を行い、前記余剰電力が無くなると前記軸発電機兼モータを軸発電機として前記プロペラシャフトにより駆動して発電した電気エネルギを前記電気ネットワークに供給する給電動作を行い、切換信号が入力されると前記軸発電機兼モータを軸発電機からモータに又は前記モータから前記軸発電機に切り換える切換機能を備える船舶推進アシストシステムと、
前記軸発電機兼モータの駆動制御装置に前記軸発電機からモータに又は前記モータから前記軸発電機に切り換える際に徐々に又は段階的にパルス幅が短くなる制御信号を与える制御信号発生部と、
前記軸発電機兼モータから出力される出力電力及び前記軸発電機兼モータに入力される入力電力を計測する電力計測部と、
前記電力計測部の出力及び前記制御信号に基づいて、前記軸発電機兼モータを軸発電機からモータに、又は前記モータから前記軸発電機に切り換える前記切換信号を出力する切換信号発生部とを備え、
前記切換信号発生部が、前記電力計測部が計測する前記出力電力又は前記入力電力が
予め定めた切換準備電力より小さくなった後、前記出力電力又は前記入力電力が0kWになると前記制御信号の入力時間を累積して累積時間として記憶する入力時間累積部と、
前記累積時間が予め定めた切換準備時間を経過すると、前記切換信号を出力する切換信号出力部とを備えてなる排熱回収システムを備えた船舶推進システムであって、
前記制御信号発生部は、前記電力計測部が計測する前記出力電力又は前記入力電力が前記予め定めた切換準備電力より小さくなると、前記制御信号を連続信号として前記切換準備時間よりも長い予め定めた時間出力した後、前記制御信号の出力を停止することを特徴とする排熱回収システムを備えた船舶推進システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
図1は、本発明の排熱回収システムを備えた船舶推進システムの一実施の形態の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1の実施の形態の主要部コンピュータを利用して実現する場合に用いるソフトウエアのアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図2のフローチャートは、軸発電機兼モータがモータとして使用できる状態にあることを前提条件としている。
【0012】
本実施の形態の排熱回収システムを備えた船舶推進システムは、排熱回収システム1と船舶推進アシストシステム3とを備えている。排熱回収システム1は、排熱をエネルギ源として電気エネルギを供給するタービン5と、タービン5によって駆動されて発電をする発電機(STG)7とを備え、発電機7で発電した電気エネルギを船内の電気ネットワーク9に供給する。
【0013】
発電機7としては、任意のものを用いることができるが、主機排ガスの熱エネルギを回収し、エコノマイザにより蒸気を発生させて駆動する蒸気タービン(S/T)に加えて、排ガス自体の圧力エネルギを回収して駆動するパワータービン(P/T)を組み合わせた複合型発電装置を用いるのが好ましい。蒸気タービンS/TとパワータービンP/Tは、エネルギ効率が最適となるように、船内電力に応じて各々負荷分担ができる制御装置としてタービン制御システム(Turbine Control System)を有している。
【0014】
船舶推進アシストシステム3は、プロペラシャフト11に連結された軸発電機兼モータ(Shaft Generator Motor:SGM)13を備えている。船舶推進アシストシステム3は、発電機7で発電する電気エネルギを電気ネットワーク9に供給しても余る余剰電力を軸発電機兼モータ13に供給して、余剰電力をプロペラシャフト11を駆動するための機械エネルギに変換することにより、プロペラシャフト11による船舶の推進をアシストするアシスト動作を行う。
【0015】
軸発電機兼モータ13は主機の回転エネルギを電力に変換して発電するシステムすなわち軸発電機(SG)として使用され、船内電源に余剰が出た場合には余剰エネルギを主機に供給し、主機加勢を行うシステムすなわちモータ(SM)として使用できる装置である。具体的には、主機回転数が例えば53rpm以上で起動が可能であり、また回転数によって電動機定格が変化する。燃費向上を目的とする場合には、主に主機加勢を行うシステムにおけるモータとして使用され、発電機7と軸発電機兼モータ13が並列運転している状態で、主機加勢が可能である。
【0016】
本実施の形態の船舶推進アシストシステムは、船内の電気ネットワーク9における周波数を測定する周波数測定部15と、周波数変動幅が予め定めた第1の値(例えば0.2Hz)以上になったか否かを判定する周波数変動幅判定部17と、周波数変動幅が予め定めた第1の値以上になったときにアシスト動作を抑制して、周波数変動を抑制する周波数変動抑制部19を有している。周波数変動抑制部19は、軸発電機兼モータ13の目標負荷を低減することにより、周波数変動を抑制する。具体的には、周波数変動抑制部19が軸発電機兼モータ13の駆動を制御する駆動制御装置21の制御信号発生部23に目標負荷の低減を指示する。制御信号発生部23は、軸発電機兼モータ13の駆動制御装置21の駆動回路25に軸発電機からモータに又は前記モータから軸発電機に切り換える際に、徐々に又は段階的にパルス幅が短くなる制御信号[パルス幅が可変の制御信号(ガバナ信号)]を与える。
【0017】
なお周波数変動抑制部19は、船内周波数を測定し(ステップST1)、アシスト動作以外の原因で、電気ネットワーク9における周波数変動幅が第1の値以上になると(
図2のステップST2における5秒に1回行われる0.2Hz低下の判定がYesになると)、軸発電機兼モータ13の目標負荷を低減することにより、周波数変動を抑制する(ステップST3)。周波数変動抑制部19による1回当たりの低減量には、所定の制限(ハンチング防止リミット)を設けておくのが好ましい(ステップST4)。本実施の形態では、ステップST2で5秒に1回の確認が行われるため、低減量に制限を設けておくほうが、急激な周波数変動の発生(ハンチング)を防止できる。ちなみにこのステップST4による制限は30%程度にする(例えば低減量0%を30%にする)のが好ましい。周波数変動幅判定部17と周波数変動抑制部19は、
図2に示すフローチャートのステップST1乃至ST4により実現されている。
【0018】
また本実施の形態では、発電機の発生可能電力量を演算する発生可能電力量演算部27と、電力量制限部28と、電気ネットワーク9で使用されている船内電力を測定する船内電力測定部29と、発生可能電力量から船内電力を減算して余剰電力を演算する余剰電力演算部31と、余剰電力演算部31が求めた余剰電力値が正の値であるか負の値であるかを判定する余剰電力値判定部33と、余剰電力に基づいて軸発電機兼モータ13の目標負荷を決定する目標負荷決定部35と、目標負荷により増加する電気ネットワークにおける周波数変動幅が第1の値(例えば0.2Hz)よりも小さい第2の値(例えば0.18Hz)より大きくならないように目標負荷を制限する目標負荷リミット部39を備えている。
【0019】
本実施の形態では、電力量制限部28を設けて、発生可能電力量に制限を加えるため、船内で使用可能な電力に余裕を持たせることができる。その結果、アシスト動作が船内での電力不足を発生する可能性を低減することができる。発生可能電力量演算部27は、
図2に示すフローチャートのステップST14により実現されている。また電力量制限部28は、
図2に示すフローチャートのステップST15により実現されている。余剰電力演算部31は、
図2に示すフローチャートのステップST6により実現されている。余剰電力値判定部33は、
図2に示すフローチャートのステップST7により実現されている。目標負荷決定部35は、
図2に示すフローチャートのステップST8により実現されている。目標負荷リミット部39は、
図2に示すフローチャートのステップST10及び11により実現されている。
【0020】
目標負荷決定部35は、余剰電力値判定部33が判定した(ステップST7)余剰電力値が正の値「+」を有するときには目標負荷を演算により決定し(ステップST8)、余剰電力値が負の値「−」を有するときには前に決定された目標負荷をハンチング現象が発生しない範囲で低減する(ステップST9)。余剰電力値が0であればステップST6に戻る。また演算上余剰電力が負の値になっても、短い時間で余剰電力が正の値になることもある。そこで余剰電力値が負の値を有するときでも、目標負荷を低減してアシスト動作を減少させることにより対応すればよい。ただし目標負荷の低減量を大きくし過ぎると、船内周波数が不安定になるハンチング現象が発生する。そこで目標負荷をハンチング現象が発生しない範囲で低減するのが好ましい。本実施の形態では、目標負荷決定部35は、余剰電力値が負の値を有するときには、負の値を有する余剰電力値を0又は0に近い値になるように目標負荷の低減量を決定することを所定の時間間隔(5秒)で行う。所定の時間間隔で目標負荷の低減量を決定すれば、ハンチング現象の発生を抑制できる。なお
図2のフローチャートにおいて、上記の判定をすることを「余剰≧0」と表記してある。
【0021】
また本実施の形態では、目標負荷決定部35が、軸発電機兼モータ13の許容負荷を設定する許容負荷設定部37を備えている。許容負荷設定部37により、軸発電機兼モータ13の許容負荷を設定することができると、船の運航状況を考慮して、軸発電機兼モータ13の許容負荷を設定することにより、軸発電機兼モータ13に無理をかけることなくアシスト動作を実施できる。
【0022】
本実施の形態のように、目標負荷リミット部39(ステップST10及びST11)を設けると、目標負荷リミット部39で設定する第2の値(ステップST10の0.18Hz以内)よりも目標負荷により増加する電気ネットワーク9における周波数変動幅が大きくなることを阻止できる。そのため、軸発電機兼モータ13を用いて行う積極的なアシスト動作を有効に利用することができる(ステップST12)。またアシスト動作以外の原因で、電気ネットワーク9における周波数変動幅が第1の値以上になると(例えば
図2のステップST2における0.2Hz低下の判定)、周波数変動抑制部19がアシスト動作を抑制して、周波数変動を抑制する。ステップST13でアシスト動作の終了指令(又は切換指令)の入力の有無を判定し、終了指令(又は切換指令)が入力されなければ、制御の始点に戻る。ステップST13でアシスト動作の終了指令(又は切換指令)が入力されたことを検知するとアシスト動作を終了する。
【0023】
なお電気ネットワーク9における周波数変動幅の制限値である第1の値は、0.2Hz以上0.3Hz以下の値であり、目標負荷リミット部39で設定する第2の値と第1の値との差が0.02Hz以上になるように第2の値を定めるのが好ましい。この数値範囲であれば、船内の電力周波数の変動を大きくすることなく、アシスト動作を実施できる。
【0024】
更に船舶推進アシストシステム3は、船内の電気ネットワーク9における瞬時電力量が予め定めた値以上になったときに、船舶推進アシストシステム3によるアシスト動作を抑制する瞬時電力増加対応部34を更に備えている。瞬時電力増加対応部34は、瞬時電力量が予め定めた値以上になったときに、瞬時電力量の増加分を補うように、目標負荷を低減することによりアシスト動作を抑制する。瞬時電力量の増加に対しては、ハンチングが発生したとしても、目標負荷を低減してアシスト動作を犠牲にしても、積極的に船内に電力を配分することが好ましい。この瞬時電力増加対応部34を設けると、急激な瞬時電力の増加に余剰電力を使うことができるので、船内の電力需要に応えることができる。具体的には、瞬時電力増加対応部34が軸発電機兼モータ13の駆動を制御する駆動制御装置21の制御信号発生部23に目標負荷の低減を指示する。瞬時電力増加対応部34は、
図2に示すフローチャートのステップST21及びST22により実現されている。ステップST21で、瞬時電力量が100kW増加を検知すると、ステップST22において目標負荷の低減を指示する。本実施の形態では、低減量を特に制限していない。なお低減量に一定の制限を加えるようにしてもよいのは勿論である。なお「100kW増加」は、発電機の出力と負荷との関係から定められたものであり、本発明を実施するにあたって「100kW」に限定さるものではない。
【0025】
なお本実施の形態では、周波数変動幅判定部17における周波数変動の判定及び余剰電力値判定部33による判定は、同じタイミング周期で行っている。そのため目標負荷の低減が重複して行われることを防止することができる。また発生可能電力量演算部27の演算及び船内電力測定部29での測定は、常時行っている。
【0026】
なお
図2においてステップST16乃至ST19は、発電機7の制御ステップである。この制御ステップは公知であるためここでは説明を省略する。ステップST16において、発生可能電力量の増減を判断する。発生可能電力量が「増」の場合には、発電機7の目標負荷を増加し(ステップST18)、発生可能電力量が「減」の場合には、発電機7の目標負荷を低減(ステップST17)する。ステップST19では、ステップST17又はステップST18の結果を受けて、発電機(STG)7の動作を制御し、ステップST14へと戻る。またステップST16において、発生可能電力量が「零」の場合には、現状維持としてステップST14へと戻る。
【0027】
[切換信号発生システム]
船舶推進アシストシステム3は、余剰電力が無くなると軸発電機兼モータ13を軸発電機としてプロペラシャフト11により駆動して発電した電気エネルギを電気ネットワークに供給する給電動作を行い、切換信号が入力されると軸発電機兼モータ13を軸発電機からモータに又はモータから軸発電機に切り換える切換機能を備えている。この切換機能を具体的に実現するシステムの構成は任意である。本実施の形態を開発する以前には、
図4(B)に示すような軸発電機兼モータの制御信号(ガバナ信号)として軸発電機からモータに又はモータから軸発電機に切り換える際に徐々に又は段階的にパルス幅が短くなるような制御信号を与え、所定の累積時間が予め定めた切換準備時間に達すると切換信号を発生する切換信号発生システムがあった。しかしこのような既存のシステムでは、所定の累積時間が予め定めた切換準備時間に達するまでにかなり長い時間を要し、迅速な切換が行えない問題が生じる。また断線や故障などにより切換信号出力部から切換信号が出力されなくなると切換動作を行うことができなくなる問題が生じる。そこで本実施の形態では、既存の切換信号発生システムを採用した場合でも、切換信号を迅速に発生させることができ、しかも断線や故障等により切換信号が出力されなくなったときに、軸発電機兼モータの切換動作を停止することができるようにしている。
【0028】
図3は、上記切換機能を有する切換信号発生システムを、コンピュータを用いて実行する際に使用されるソフトウエアのアルゴリズムを示すフローチャートである。
図4(A)は、電力計測部41が計測する出力電力又は入力電力と0kWとの偏差の関係を説明するために用いる図であり、(B)は従来の制御信号(ガバナ信号)の一例を示す図であり、(C)は切換機能を実施する際の比較例における制御信号(ガバナ信号)の例を示す図であり、(D)は本実施の形態において、切換機能を実施する際の制御信号発生部から出力される制御信号(ガバナ信号)の例を示す図である。切換機能を実現するために、本実施の形態の船舶推進アシストシステム3は、軸発電機兼モータ13から出力される出力電力及び軸発電機兼モータ13に入力される入力電力を計測する電力計測部41と、電力計測部41の出力及び制御信号に基づいて、軸発電機兼モータ13を軸発電機からモータに、又はモータから軸発電機に切り換える切換信号を出力する切換信号発生部43とを備えている。切換信号発生部43は、入力時間累積部45と切換信号出力部47とを備えている。電力計測部41は、軸発電機兼モータ13がモータとして機能しているときには、入出力ラインIOLを通して軸発電機兼モータ13に供給される入力電力を公知の電力計測技術を用いて計測し、軸発電機兼モータ13が発電機として機能しているときには入出力ラインIOLを通して船内の電気ネットワーク9に供給される出力電力を公知の電力計測技術を用いて計測する。
【0029】
切換信号発生部43の入力時間累積部45は、電力計測部41が計測する軸発電機兼モータ13の出力電力又は入力電力が予め定めた切換準備電力より小さくなった後(ステップST22)、軸発電機兼モータ13の出力電力又は入力電力が0kW状態になると(ステップST25)、制御信号(ガバナ信号)の入力時間を累積して累積時間として記憶する(ステップST26)。なお
図3のステップST22では、本来ならば「SGM出力<5%以下又はSGM入力<5%以下」と記載すべきであるが、便宜上SGM出力<5%以下と記載してある。またステップST25では、「SGM出力=0%又はSGM入力=0%」と記載すべきであるが、便宜上SGM出力=0%と記載してある。
【0030】
そして切換信号出力部47は、累積時間が予め定めた切換準備時間(本実施の形態では、累積3秒)を経過すると(ステップST27)、切換信号を出力し(ステップST28)、切換動作を終了する(ステップST29)。切換準備時間は、経験則に基づくものであり、切換準備時間があまり短いと切換動作の誤動作が発生しやすくなり、切換準備時間が長いと切換遅れが発生する。
【0031】
本実施の形態では、
図4(A)に示すように、入力時間累積部45は、電力計測部41が計測する出力電力又は入力電力(軸発電機兼モータの出力電力又は入力電力)が予め定めた切換準備電力(5%)より小さくなると(ステップST22)、制御信号発生部23に連続信号出力指令を出力する(ステップST23)。制御信号発生部23は、連続信号出力指令を受信すると、
図4(D)に示すように、連続信号を駆動回路25に出力する。制御信号発生部23は、制御信号(ガバナ信号)を連続信号として切換準備時間(累積で3秒)よりも長い予め定めた時間(連続8秒)駆動回路25に出力した後(ステップST23及びST24)、又は切換動作の終了を確認した後に、制御信号発生部23は制御信号(ガバナ信号)の出力を停止する(ステップST30)。その後、軸発電機兼モータ13の制御は通常の制御に復帰する(ステップST31)。
【0032】
このようにすると切換動作をする際に、連続する制御信号が入力時間累積部45に入力されるため、従来のようにパルス幅が短くなる制御信号が入力される場合よりも、短い時間で累積時間が切換準備時間に達するようになる。そのため本実施の形態によれば、既存の切換信号発生システムを用いて、しかも軸発電機からモータに又はモータから軸発電機に切り換える際に徐々に又は段階的にパルス幅が短くなるような制御信号を与える場合であっても、軸発電機兼モータ13の出力電力又は入力電力が予め定めた切換準備電力より小さくなった後に、制御信号を連続信号とすることにより、累積時間の累積を連続して行える。したがって迅速に切換信号を発生することができる。また切換信号発生部で断線や故障が発生して切換信号が出力されなくなった場合でも、制御信号発生部23が発生する連続信号としての制御信号は、予め定めた時間で停止する。その結果、切換信号が出力されない事態が発生しても、制御信号の出力を停止して軸発電機兼モータ13の切換動作を停止することができる。
【0033】
切換信号発生部43及び制御信号発生部23は、ステップST23及びST24の処理と、ステップST25〜ST29の処理とが同時に実行されている。
図4(D)はステップST23及びST24により発生する制御信号である。ステップST25〜ST29の処理では、制御信号として連続信号が出力されるため、予め定めた時間(連続8秒)よりも短い時間内で、「3秒」の累積を完了して、切換信号が出力される。しかし切換信号発生部43で断線や故障が発生して切換信号が出力されなくなった場合(累積が完了しない場合)でも、ステップST23及びST24の処理が並行しているため、切換準備時間よりも長い予め定めた時間(8秒)制御信号が出力され続けると、制御信号発生部23は制御信号の出力を停止する。その結果、切換信号が出力されないときには、制御信号の出力を停止して軸発電機兼モータの切換動作を停止することができる。その結果、本発明によれば、切換信号が出力されなくなって、軸発電機兼モータの動作を切り換えることができなくなる事態の発生を防止することができる。ちなみに
図4(C)に示すように制御信号発生部23が連続信号を出し続けると、
図4(A)に「C」の曲線で示すように、出力が異常上昇を続けることになる。
【0034】
上記の切換オペレーションでは、モードが切り換わる条件として、軸発電機兼モータ13が0kW認識後、制御信号(ガバナ信号)を3秒以上累計して出力しなければならない。しかし、制御信号が途切れるような事態が発生すると、スムーズな切換が行われないことがある。しかし本実施の形態によれば、軸発電機兼モータ13の切換時にモータ又は発電機の定格値5%以内に入れば制御信号(ガバナ信号)を連続8秒間出力し、切換信号が入ればその時点で制御信号(ガバナ信号)を停止することとした。これによりスムーズな切換が可能となった。
【0035】
本実施の形態において、ステップST25〜ST29は、大洋電機株式会社が販売する切換システム「SGH105BS−20」を利用することにより実現した。なお切換準備電力は、定格電力の4%以上6%以下の間の値であることが好ましい。切換準備電力を4%より小さくすると、時間がかかる問題が発生し、6%より大きくすると、負荷変動が大きくなるという問題が発生するからである。
【0036】
[運転効率表示]
電動機において、エネルギ変換のプロセスでは必ず一部のエネルギが損失してしまう。そのため、主機回転数及び電力負荷によって変動する主機加勢(SM)の運転効率は、本船の燃費を左右する重要な情報であり、常時算出する必要があった。しかし、図示しない主配電盤では軸発電機兼モータ13へ入力する電力量は把握できるが、実際に主機加勢を行う仕事量は分からず、効率値を計算できない。そのため現状の排熱回収システムを備えた船舶推進アシストシステムでも、船舶の運転者に船舶推進アシストシステムの運転効率に関する情報を提示することはしていない。現状では、船舶の運転者は、船舶推進アシストシステムが効率良く運転されているか否かを知らずに、アシストのモードを選択しているのが実情である。そのため船舶推進アシストシステムに複数の運転モードを持たせようとしても、運転者に運転モードを選択するための情報がなく、適切な運転モードを選択できない状況がある。
【0037】
そこで本実施の形態では、軸発電機兼モータ13の陸上での試験データを利用して、主機回転数と電力負荷率から効率を計算し、軸発電機兼モータ13の仕事量を算出することにした。これにより瞬時に効率の算出と表示が可能になった。具体的に本実施の形態では、軸発電機兼モータ13の効率を主配電盤のモニタの表示画面に表示するために、軸発電機兼モータ13から発電される出力電力及び軸発電機兼モータ13に入力される入力電力を計測する電力計測部41と、回転数計測部49と効率演算部51と相互関係表示部53とを備えている。
図5は、これらの構成部材を用いてモニタの表示画面に軸発電機兼モータの効率を表示する場合に用いるソフトウエアのアルゴリズムの一例を示している。
【0038】
回転数計測部49は、軸発電機兼モータ13が回転しているときに、プロペラシャフト11の回転数を計測する(ステップST41)。効率演算部51は、回転数計測部49により検出した回転数と、電力計測部41で計測した(ステップST42)出力電力又は入力電力と、予め求めたプロペラシャフト11の回転数と軸発電機兼モータ13の効率との関係を示すデータとに基づいて軸発電機兼モータの効率を演算する(ステップST43)。ここで予め求めたプロペラシャフト11と軸発電機兼モータ13の効率との関係を示すデータは、軸発電機兼モータ13の製造メーカが仕様書に示したショップデータを用いることができる。相互関係表示部53は、回転数計測部49により計測した回転数、効率演算部51により演算した効率、電力計測部41で計測した出力電力又は入力電力を、相互の関係が視覚により分かるように図示しないモニタに表示する(ステップST44)。
【0039】
軸発電機兼モータ13の効率を視覚により認識できるように表示すると、自動運転を好まない運転者は効率とその他の状況を考慮して、好ましい運転モードを自由に選択することができる。
【0040】
図6(A)には、相互関係表示部53によりモニタの表示画面に表示する回転数、出力電力又は入力電力、効率の表示の一例が示されている。
図6(A)の表示では、X軸に回転数、Y軸に出力電力又は入力電力、Z軸に効率を表示する3軸グラフにより相互の関係をモニタに表示している。また
図6(A)の表示には、その他の計測値又は演算値が3軸グラフと一緒に表示されている。相互関係表示部53が表示する3軸の値の交点は、プロペラシャフト11を駆動する主機の現在のトルクに関連する。なおこの交点の位置を確認すると、次のようなことができる。すなわち
図6(B)に示すように運転者が設定した好ましい運転ゾーンZNを予め表示画面に表示しておくと、アシスト運転を実行する際に交点(R1,R2)がこの好ましい運転ゾーンZNから外れている場合には、アシストを中止する等の対応をとればよいことになる。またこれらの3値を表示すると、主機の回転数が増加して軸発電機兼モータ13の回転数も増加しているのに、効率が上がらない場合に、その原因が入力電力に制限を加える制御が行われているために入力電力が不足状態にあることが一見して分かる。このような場合には、入力電力の制限を解除する運転モードで制御を行えばよいことが分かる。また海が荒れていて、主機の回転数が高い場合には、主機の負荷の変動が激しくなるために、3値表示の交点(R1,R2)が揺れる現象が現れる。このような状態では、効率が高くても、軸発電機兼モータ13では一時的に脱調又はトリップ現象が発生し、過電流が流れる事態が発生することもある。そのためこのような状況では、安全を考えて、アシスト動作を停止する運転モードを選択することも可能になる。
【0041】
[停止時の0kW保持及び運転モードの選択]
従来の排熱回収システムを備えた船舶推進システムでは、船舶推進アシストシステムを運転開始する前には、軸発電機兼モータ13を駆動制御系から切り離しておき、船舶推進アシストシステムを動作させる際に、軸発電機兼モータ13を駆動制御系に接続することが一般的に行われている。しかしながら船舶推進アシストシステムを動作させたときに、アシスト動作を開始しようとすると、軸発電機兼モータが、給電動作をすることがある。
【0042】
そこで本実施の形態の船舶推進アシストシステム3では、発電機(STG)7が発電している状態で、アシスト動作又は給電動作を行っていないときには、軸発電機兼モータ13の出力が0kW状態になるように軸発電機兼モータ13を制御することとした。
【0043】
ここで「軸発電機兼モータを出力が0kW状態になるように軸発電機兼モータを制御する」とは、軸発電機兼モータ13の巻線に流れる電流をできるだけ0に近付けるように制御してその出力が0kW状態(例えば、0kW±定格出力の2%の範囲)になるように制御することを意味する。0kW状態では、軸発電機兼モータ13のロータが回転していても軸発電機兼モータ13の出力を0に近い状態で維持している。そのため本発明によれば、休止状態からアシスト動作を開始する場合に、巻線に流れる電流が制御されて制限されているので、無制御状態から給電動作を開始するような事態が発生することを防止できる。したがって本実施の形態では、船舶推進アシストシステム3が休止している状態から、アシスト動作を開始する際に、確実にアシスト動作を開始することができる。なお
図6(B)に示すように、0kW状態においては、3値表示の交点は、R3のようになる。
【0044】
この制御は、
図1におけるモード選択部55を介した運転モードの選択に基づいて、駆動制御装置21において実施される。
図7には、この制御をコンピュータを利用して実行する場合に用いるソフトウエアのアルゴリズムを示してある。
【0045】
具体的には、モード選択部55は、軸発電機兼モータ13を軸発電機又はモータとして運転する第1の運転モードと、軸発電機兼モータ13をモータとして運転する第2の運転モードとを選択可能である。この選択に応じて、船舶推進アシストシステムは制御信号発生部23において、第1の運転モード又は第2の運転モードが選択される前、第1の運転モード又は第2の運転モードが選択されて実行されるまで、軸発電機兼モータ13の出力が0kW状態になるように軸発電機兼モータ13を制御する(ステップST51及びST52)。具体的には、軸発電機兼モータ13の巻線に流れる電流をできるだけ0に近付けるように制限することにより0kW状態を作ることができる。このようにすると確実に選択したモードでアシスト動作を実行できる。なお駆動制御装置21は、
図4(A)に示すように、0kWを中心にして定格の±2%以内の所定の不感帯を設定して軸発電機兼モータ13を出力が0kW状態になるように電流を制限するのが好ましい。このような不感帯を設けると、制御が不安定になることを防止できる。
【0046】
図7のフローチャートでは、発電機7と軸発電機兼モータ13とが並列運転直後、第2の運転モードであるSM MODE又は第1の運転モードであるSM/SG MODEのどちらかをモード選択部55により手動で選択することになる(ステップST53)。その選択を待つ間、軸発電機兼モータ13を機能させないために、発電機7は全ての船内負荷を負担し、軸発電機兼モータ13は0kWを維持する。
図8は発電機7と軸発電機兼モータ13が並列運転中、発電機7が全ての船内負荷を負担し、軸発電機兼モータ13は常に0kWを維持する様子を示している。
【0047】
SM/SG MODEが選択されると、余剰電力の有無を判断し(ステップST57)、余剰電力があればSM運転(モータ運転)を実行し、余剰電力がなければ、SG運転(発電機運転)を実行する(ステップST59、ST61)。すなわちSM/SG MODEでは、SM MODEの機能に加えて、船舶に実装しているディーゼル発電機の自動バックアップ回数を減らすことを目的として軸発電機兼モータ13を発電機としても使用する。もし発電機7に余剰電力が無くなり、発電機7のみで船内負荷を賄いきれなくなった場合は軸発電機兼モータ13を自動的にモータから発電機へ切り換えて、発電を行う。なお、発電機として発電を行っても船内電力を賄い切れない場合は、一定以下の余剰電力になると自動的に船舶に実装しているディーゼル発電機がバックアップし、軸発電機兼モータ13は自動的に切り離される。船舶の通常航海中は、基本このモードが選択される。
図9は発電機7と軸発電機兼モータ13が並列運転中、軸発電機兼モータ13は発電機7の余剰電力分主機加勢を行うとともに、発電機7の電力が不足すれば発電機に切り換えて不足分の船内負荷を賄う様子を示している。
【0048】
またSM MODEが選択されると、余剰電力の有無を判断し(ステップST65)、余剰電力があるときだけSM運転(モータ運転)を実行する(ステップST67)。なおステップST65において、発電機7に余剰電力が無ければ、軸発電機兼モータ13は0kW運転を維持する。このモードは、軸発電機兼モータ13を発電機として使用したくない場合に選択される。
図10は発電機7と軸発電機兼モータ13が並列運転中、発電機7が船内負荷と軸発電機兼モータ13のモータ負荷を最大限負担し、軸発電機兼モータ13は発電機7の余剰電力分で主機加勢を行う様子を示している。
【0049】
そしてモード選択部55により、運転モードのOFF MODE(軸発電機兼モータ13を使用しないモード)が手動で選択されると(ステップST69)、ステップST51へと戻って0kW保持が再度開始される。
【0050】
上記実施の形態の主要制御部分は、1台のコンピュータ(プロセッサ)と1台の記憶装置を用いて実現できるが、複数台のコンピュータ(プロセッサ)と複数台の記憶装置を組み合わせて実現してもよいのは勿論である。