(Qはジケトピロロピロール顔料の残基;Rは水酸基、又は−NH−A−Zで示される基;Aは置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基;Zは、−SO
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る顔料誘導体、顔料分散体及び着色感光性組成物について説明する。
【0015】
<顔料誘導体>
本発明の顔料誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【0017】
(一般式(1)中、Qは、下記式(2)で示されるジケトピロロピロール顔料の残基を表す。Rは、水酸基、又は−NH−A−Zで示される基を表す。Aは、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基を表し、Zは、−SO
3H及び−COOH、並びに、これらの金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選択される置換基を表す。nは1〜4の整数を表す。)
【0019】
本発明では、このように、一般式(1)において、式(2)で示される特定のジケトピロロピロール顔料(以下、ジケトピロロピロール顔料を「DPP顔料」と称する。)の残基を導入している。これにより、特に、顔料分散体や着色感光性組成物に含まれる顔料がDPP顔料である場合に、塗膜のコントラストを従来より向上させることができる。これは、顔料誘導体がDPP顔料を顔料分散体及び着色感光性組成物中で安定して分散させていることに加え、塗膜を加熱処理した時に、結晶の生成を抑制していることによるものと考えられる。この結晶の生成を抑制する効果は、より高温側で加熱処理する場合や、臭素化DPP顔料を用いた場合により顕著に現れる。
【0020】
式(2)で示されるDPP顔料は、カラーインデックスナンバーでは、Pigment Orange 73(以下、「P.O.73」と称する場合がある。)で示される。このP.O.73は、それ自体では鮮明な黄味のオレンジを呈し、耐熱性や耐候性が非常に良好で、焼付け塗料、紛体塗料、コイルコーティングに適性を有しているとされている(カラーオフィス編、有機顔料ハンドブック、2006年5月)。本発明者らは、顔料としてDPP顔料を用いた場合に、得られる塗膜のコントラストを向上させ得る顔料誘導体を鋭意検討したところ、特許文献1に明示されているような顔料誘導体に比べて、このP.O.73を導入した一般式(1)で示される顔料誘導体がコントラスト向上に大きく寄与することを初めて見出した。
尚、以下では、式(2)で示されるDPP顔料をP.O.73と称する場合がある。
【0021】
前述の通り、一般式(1)におけるAは、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基を表す。
置換基を有してもよいアルキレン基としては、高コントラスト化の観点から、炭素数が好ましくは1〜6のアルキレン基、または、これらのアルキレン基に置換基を導入したものである。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。このうち、炭素数2または3のアルキレン基が特に好ましく、エチレン基が最も好ましい。
置換基を有してもよいアリーレン基としては、高コントラスト化の観点から、炭素数が好ましくは6〜18のアリーレン基、または、これらのアリーレン基に置換基を導入したものである。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。このうち、炭素数6又は10のアリーレン基、即ち、フェニレン基又はナフチレン基が特に好ましく、フェニレン基が最も好ましい。
このうち、後述するDPP顔料の顔料分散体や着色感光性組成物における分散性の観点から、Aはフェニレン基であることが好ましい。
【0022】
一般式(1)におけるZは、−SO
3H、−COOH、又は、これらの金属塩、アンモニウム塩、及びアミン塩から選択される置換基を表す。
Zが酸基の金属塩である場合、酸基と塩を形成する金属としては、Mn、Sr、Ba、Ca、Al等が挙げられる。
Zが酸基のアミン塩である場合、酸基と塩を形成するアミンとしては、デヒドロアビエチルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。
Zが酸基のアンモニウム塩である場合、酸基と塩を形成するアンモニウムとしては、アンモニア、第四級アンモニウム類が挙げられる。
【0023】
一般式(1)中の−NH−A−Zで示される基のうち、Zとしてスルホン基1個を有する基を構成しうる代表的な脂肪族又は芳香族アミンとしては、タウリン、スルファニル酸、メタニル酸、オルタニル酸、ナフチオン酸、トビアス酸、2−アミノフェノール−4−スルホン酸、2−メトキシアニリン−5−スルホン酸、4−クロロアニリン−3−スルホン酸、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸、4B酸(p−トルイジン−m−スルホン酸)、2B酸(o−クロロ−p−トルイジン−m−スルホン酸)、C酸(3−アミノ−6−クロロトルエン−4−スルホン酸)、CB酸(3−アミノ−6−クロロ安息香酸−4−スルホン酸)、ガンマー酸(2−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸)などが挙げられる。
また、一般式(1)中の−NH−A−Zで示される基のうち、Aがフェニレン基であって、且つ、Z基としてカルボキシル基1個を有する基を構成しうる代表的な芳香族アミンとしては、アンスラニル酸(o−アミノ安息香酸)、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸等が挙げられる。
【0024】
一般式(1)におけるRは、水酸基、又は−NH−A−Zで示される基を表す。尚、−NH−A−Zで示される基中、A及びZは前述の通りである。
【0025】
一般式(1)におけるnは1〜4の整数を表し、高コントラスト化の観点から、好ましくは1又は2である。尚、nが2〜4の場合、一般式(1)中のR、A、Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0026】
以下に、本発明に係る顔料誘導体におけるR、A、Zの組み合わせの例を提示する。
【0027】
(a)Rは水酸基で、−NH−A−Zは下記式(3)で示す構造を有する。
【0029】
(b)Rは水酸基で、−NH−A−Zは下記式(4)で示す構造を有する。
【0031】
(c)R及び−NH−A−Zが、上記式(3)で示す構造を有する。
【0032】
(d)Rが水酸基で、−NH−A−Zが、下記式(5)で示す構造を有する。
−NH−(CH
2)
2−SO
3− H
3N
+H
37C
18 (5)
【0033】
(e)Rが水酸基で、−NH−A−Zが、下記式(6)で示す構造を有する。
【化9】
【0034】
(f)下記式(7)で示される顔料誘導体。
【化10】
【0035】
式(7)中、Q及びnは一般式(1)と同義である。
【0036】
一般式(1)におけるR、A、Zの組み合わせとしては、分散性及び分散安定性の点から、Rが水酸基であり、且つ、Aがフェニレン基、Zが−SO
3Hであるのが好ましい。
【0037】
一般式(1)で示される顔料誘導体は、例えば、4−アミノフタルイミドメチル化したP.O.73を調製した後、下記の1)または2)の合成方法で調製することができる。以下では、R、A、Zの組み合わせが上記(a)または(b)の場合を例にして説明するが、同様の方法でこれら以外のR、A、Zの組み合わせの一般式(1)で示される顔料誘導体が得られる。
【0038】
4−アミノフタルイミドメチル化したP.O.73は、濃硫酸中でP.O.73とパラホルムアルデヒド及び4−アミノフタルイミドとを添加して加熱して、P.O.73に4−アミノフタルイミドメチル基を導入することにより得ることができる。
より詳細には、例えば、次のようにして得ることができる。濃硫酸中でパラホルムアルデヒド及び4−アミノフタルイミドを室温より低い温度で0.5〜2時間反応させた後に、この反応液にP.O.73を加えて室温〜40℃で1〜6時間反応させる。この反応液を多量の冷水と混合して結晶を析出させる。得られた結晶を濾別し、純水等で洗浄することで、含水ペースト状の4−アミノフタルイミドメチル化したP.O.73が得られる。
4−アミノフタルイミドメチル化したP.O.73は上記のような方法で得るのが有利であるが、他の方法でP.O.73に4−アミノフタルイミドメチル基を導入してもよい。
【0039】
1)の合成方法は以下の通りである。
まず、4−アミノフタルイミドメチル基1個を導入したP.O.73のアミノ基と、塩化シアヌルと、を反応させる。この反応物と、スルファニル酸1個と、を反応させた後、残りの1個のClを加水分解することで、一般式(1)におけるR、A、Zの組み合わせが上記(a)である顔料誘導体が得られる。
【0040】
2)の合成方法は以下の通りである。
まず、塩化シアヌルとスルファニル酸1個とを反応させた後、この反応物と、4−アミノフタルイミドメチル基1個が導入されたP.O.73と、を反応させた後、残りの1個のClを加水分解することで、一般式(1)におけるR、A、Zの組み合わせが上記(a)である顔料誘導体が得られる。
より詳細には、例えば次の通りである。上記の含水ペースト状の4−アミノフタルイミドメチル化したP.O.73に必要に応じて水を加えて液状とし、この液と、予め塩化シアヌルとスルファニル酸とを室温以下の温度で0.5〜3時間反応させた反応液とを混合し、70〜100℃で0.5〜3時間撹拌して反応させた後、50〜70℃に冷却する。その後、濾別し、純水等で洗浄した後、乾燥することで一般式(1)で示される顔料誘導体が得られる。
【0041】
前述の1)及び2)の合成方法において、スルファニル酸に替えて、オルタニル酸を用いることで、一般式(1)におけるR、A、Zの組み合わせが上記(b)の顔料誘導体が得られる。
【0042】
一般式(1)中のnの数は、濃硫酸中でO.P.73と、パラホルムアルデヒド及び4−アミノフタルイミドとを反応させる際に、これらの仕込み比を変化させることで調整することができる。
【0043】
<顔料分散体>
本発明に係る顔料分散体は、上述した一般式(1)で表される顔料誘導体、ジケトピロロピロール顔料及び溶媒を含む。このように、DPP顔料を溶媒に分散させる際に本発明に係る顔料誘導体を用いることで、DPP顔料の微細化処理の有無にかかわらず、DPP顔料を安定して分散させることができる。そのため、これを含む着色感光性組成物も、DPP顔料が安定して分散しており、この着色感光性組成物を用いて形成される塗膜、ひいては、カラーフィルターのコントラストを従来のもより向上させることができる。即ち、本発明に係る顔料分散体は、カラーフィルターの製造に用いられる着色感光性組成物に好適である。
【0044】
本発明に係る顔料分散体で用いるDPP顔料は、窒素原子1個を持つ5員環複素環化合物ピロールに、カルボニル基が2つ結合した発色団を基本構造とする顔料である。構造は、下記一般式(8)で示され、黄味のオレンジから青味の赤色のものが知られている。DPP顔料はイミノ基による分子間水素結合によって強力に結びついて結晶成長するため、耐候性、耐溶剤性、耐熱性等において卓越した諸物性を有するとされている(カラーオフィス編、有機顔料ハンドブック、2006年5月)。しかし、前述のように、塗膜形成時の高温加熱処理により結晶が生成する場合がある。この加熱処理により結晶が生成し、コントラストが低下する場合があるという点では、カラーフィルター用途における耐熱性については、必ずしも十分とはいえない。
【0046】
(式(8)中、R
1〜R
4は、独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基又はハロゲン基を示す。)
【0047】
一般式(8)で示されるDPP顔料の具体例としては、カラーインデックスナンバーで示すと、Color Index Pigment(以下、「C.I.P.」と略記する場合がある。) Red 254、255、264、272及びC.I.P. Orange 71、73、81が挙げられる。
【0048】
本発明では、DPP顔料のうち、臭素化DPP顔料を用いることができる。臭素化DPP顔料は、他の多くのDPP顔料に比べて高い色再現性の要求にこたえ得る顔料であると期待される。しかし、前述のように、臭素化DPP顔料は、臭素化しないDPP顔料に比べて、より高温側の加熱処理時の結晶生成が顕著になることが本発明者らの検討により確認された。前述のように、カラーフィルターはフォトレジスト工程を経て得られる。このフォトレジスト工程では、概ね80〜90℃でのプリベイクと、その後の100〜280℃でのポストベイクの工程が含まれるが、臭素化DPP顔料を用いた場合は、臭素化しないDPP顔料に比べて、ポストベイク後、特により高温側の加熱条件の場合に塗膜中に多量の結晶が形成され実使用に耐えない塗膜が形成されることが判明した。
ところが、本発明に係る顔料誘導体を用いることで、ポストベイク時、特に、より高温条件でも結晶の形成を著しく抑制することが可能になり、塗膜のコントラストを向上させることが可能になった。
【0049】
臭素化DPP顔料は、一般式(8)においてR
1〜R
4のいずれかを臭素化したものである。このような臭素化DPP顔料は、市販のものを使用することができる。例えば、BASF社製、Irgaphor RED S3621CF等が挙げられる。
【0050】
DPP顔料の粒子径は、コントラスト等に影響がない範囲で適宜調整することができる。平均一次粒子径としては、10〜100nmが好ましく、10〜50nmがより好ましく、10〜30nmが特に好ましい。一次粒子径は、例えば、顔料を透過型電子顕微鏡にて倍率10万倍で撮影した画像から測定できる。また、平均一次粒子径については、例えば、100個の粒子を測定し、その平均値を平均一次粒子径とすることができる。
【0051】
本発明では、目的に応じてDPP顔料と他の有機顔料とを組み合わせてもよい。このような他の有機顔料としては、カラーインデックスナンバーで示すと、例えば、C.I.P. RED 122、177、202、209、C.I.P.YELLOW 138、139、150、160、165、180、185等が挙げられる。
他の有機顔料と組み合わせる場合、DPP顔料の割合は、求められる色相によって任意に変えることができるが、一般的には全有機顔料に対して、0.1重量%以上100重量%未満が好ましく、40重量%以上95重量%以下がより好ましい。
【0052】
本発明では、DPP顔料、及び、必要に応じて用いる他の有機顔料に対して微細化処理を施すことができる。微細化処理としては、粗顔料を機械的に磨砕する方法が一般的である。磨砕方法には湿式と乾式があるが、良好な粒度分布の顔料を得る観点からは、湿式の磨砕方法が好ましい。
【0053】
湿式の磨砕方法としては、DPP顔料、水溶性無機塩及び水溶性無機塩を実質的に溶解しない水溶性有機溶剤を混練した後、水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を除去する方法であるソルベントソルトミリング法が好ましい。混練の際には、分散剤や顔料誘導体等を添加してもよい。
湿式の磨砕方法の実施形態について説明すると次の通りである。
双腕型混練機(ニーダー)等の混練機に、顔料、磨砕剤としての水溶性無機塩、水溶性無機塩を実質的に溶解しない水溶性有機溶剤を投入し、ニーダー内の混練物の温度が30〜60℃になるように温度制御しながら3〜15時間混練する。混練物と脱イオン水を混合し、撹拌装置を用いて撹拌し、混練物を脱イオン水中に分散させる。この時の撹拌時間は0.5〜1時間である。
水溶性無機塩としては、水に溶解するものであれば特に限定されず、例えば、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム(芒硝)、無水硫酸ナトリウム(無水芒硝)等が挙げられる。環境面や価格面から芒硝や無水芒硝が好ましい。水溶性無機塩を実質的に溶解しない水溶性有機溶剤としては、水に溶解(混和)するものであれば特に限定はないが、安全性の観点から混練時に蒸発しないものが好ましく、沸点120℃以上の高沸点溶剤を用いることが好ましい。例えば、ジエチレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。混練の際には、上述のように、必要に応じて本技術分野において一般的に使用される分散剤や顔料誘導体等のほか、本発明に係る顔料誘導体を添加してもよい。
前述のようにして得られた脱イオン水中に分散した混練物を濾過し、脱イオン水で水洗する。この時、洗浄排水の電気伝導度が3μS/cm以下になるまで洗浄するのが好ましい。水溶性無機塩を完全に除去するためである。その後、必要に応じて40〜110℃で、3〜15時間乾燥させる。得られた混練物の乾燥ブロックを粉砕機で粉砕することで微細化顔料が得られる。乾燥せずに含水ペーストを所謂フラッシング処理して水を所望の有機溶媒に置換して使用することも可能である。
【0054】
尚、特許文献1に記載のようにして処理顔料を得てもよい。
【0055】
本発明に係る顔料分散体を調製する際に使用する溶媒としては、カラーフィルター用途の観点からは、有機溶媒が好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トルエン、キシレンなどが挙げられる。本発明では、これらの溶媒は、1種でもよいし、2種以上組み合わせたものでもよい。
溶媒の添加量は、後述する着色感光性組成物の調製に用いる場合には、取り扱い性の観点から、DPP顔料等を含む固形分濃度が5〜50重量%となるように添加することができる。
【0056】
本発明に係る顔料分散体では、前述した一般式(1)で表される顔料誘導体の少なくとも1種を用いる。また、必要に応じて、本発明に係る一般式(1)で示される顔料誘導体以外の顔料誘導体を含んでもよい。
【0057】
本発明に係る一般式(1)で示される顔料誘導体以外の顔料誘導体としては、DPP顔料の種類等に応じて、公知の顔料誘導体を適宜選択可能である。このような顔料誘導体としては、例えば、特許文献1に記載されているものを用いることができる。具体的には、前記一般式(1)におけるQを式(2)で示されるDPP顔料の残基に替えて、銅フタロシアニン顔料、DPP顔料であるC.I.P. RED254、C.I.P. RED255、キナクリドン系顔料であるC.I.P. RED122、アンスラキノン系顔料であるC.I.P. RED177としたもの等が挙げられる。このうち、式(2)で示されるDPP顔料以外のDPP顔料の残基を有するもの好ましい。一般式(1)で示される顔料誘導体以外の顔料誘導体は、1種でもよいし、2種以上組み合わせたものでもよい。
【0058】
本発明に係る顔料分散体における、顔料誘導体の含有量としては、所望の色相に影響がない程度であれば、特に限定はないが、高コントラスト化と粘度安定性の観点からは、顔料と顔料誘導体の合計に対して1〜12重量%が好ましく、3〜8重量%がより好ましい。
この場合、顔料には、DPP顔料以外の有機顔料を用いる場合は、それを含むものとし、一般式(1)で示される顔料誘導体以外の顔料誘導体を用いる場合は、それを含むものとする。
【0059】
本発明の顔料分散体には、前述した成分以外に、分散剤、分散樹脂、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤等の添加剤を含んでもよい。
【0060】
分散剤としては特に限定されず、例えば、樹脂型分散剤、界面活性剤型分散剤等が挙げられる。これらの中でも、粘度安定性の観点から、樹脂型分散剤が好ましい。樹脂型分散剤には、油性樹脂型分散剤、水性樹脂型分散剤等がある。
【0061】
油性樹脂型分散剤としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、不飽和ポリアミド、燐酸エステル、ポリカルボン酸及びそのアミン塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩、ポリカルボン酸エステル、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、変性ポリアクリレート等が挙げられる。
【0062】
水性樹脂型分散剤としては、例えば、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム等の水溶性高分子化合物;スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−メタクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸エステル樹脂、メタクリル酸−メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ビニル−エステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のエチレン性二重結合含有樹脂;ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等のアミン系樹脂;等が挙げられる。
【0063】
樹脂型分散剤は種々のものが市販されており、その具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
日本ルーブリゾール株式会社製:ソルスパース 3000、9000、13240、17000、20000、24000、26000、27000、28000、32000、32500、38500、39000、55000、41000、
ビックケミー・ジャパン株式会社製:Disperbyk 108、110、112、140、142、145、161、162、163、164、166、167、171、174、182、2000、2001、2050、2070、2150、LPN6919、LPN21116、
BASF社製:EFKA 4401、4403、4406、4330、4340、4010、4015、4046、4047、4050、4055、4060、4080、5064、5207、5244、
味の素ファインテクノ株式会社製:アジスパー−PB821(F)、PB822、PB880、
川研ファインケミカル株式会社製:ヒノアクトT−8000、
楠本化成株式会社製:ディスパロンPW−36、ディスバロンDA−325、375、7301、等。
【0064】
樹脂型分散剤の分子量は、特に限定はないが、重量平均分子量が1000〜30000が好ましい。
【0065】
界面活性剤型分散剤としては、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル等のアニオン活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン活性剤、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン活性剤等が挙げられる。界面活性剤型分散剤も種々のものが市販されており、その具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
花王株式会社製:デモール N、RN、MS、SN−B、エマルゲン 120、430、アセタミン 24、86、コータミン24P、
第一工業製薬株式会社製:プライサーフ AL、A208F、
ライオン株式会社製:アーカード C−50、T−28、T−50、等。
【0066】
以上のような分散剤は、1種でもよいし、2種以上組み合わせたものでもよい。
顔料分散体中における分散剤の含有量は特に限定されないが、顔料の分散効果を得る観点から、顔料(顔料誘導体を含む。)100重量部に対し、好ましくは10〜80重量部、より好ましくは20〜60重量部である。ただし、分散剤の最適な添加量は、使用する処理顔料の種類、溶剤の種類などの組み合わせ等により、適宜、調整するとよい。
【0067】
本発明では、前述の樹脂型分散剤の他に、顔料等の分散性をより向上させ、ひいては、塗膜のコントラストをより向上させるために、着色感光性組成物に添加可能な樹脂を予め顔料分散体に添加することができる。本発明では、このような樹脂を分散樹脂と称する。本発明で使用可能な分散樹脂としては、後述するアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。分散樹脂は、着色感光性組成物に添加するアルカリ可溶性樹脂と同じものでも異なっていてもよい。分散樹脂の含量は、顔料(顔料誘導体を含む。)100重量部に対し、好ましくは5〜50重量部である。
【0068】
顔料分散体は、各種の混合機、分散機を使用してDPP顔料等を混合し、分散することによって、調製することができる。
この際、混練分散に続けて微分散処理を行うのが好ましいが、混練分散を省略することも可能である。
【0069】
具体的には、前述したような顔料分散体の構成成分を混合して予備分散を行った後に、ビーズ等の分散媒体をさらに添加して本分散を行い微分散させる。その後、必要に応じて、溶媒をさらに添加して希釈分散を行う方法等が挙げられる。希釈分散の後、必要に応じてフィルターを用いて濾過し、濾液を顔料分散体として用いてもよい。
【0070】
具体的には、予備分散では、ディスパー、ホモジナイザー等の分散機を用いて顔料等を分散させる。ディスパーを用いる場合は、500〜2000rpmで10〜60分間処理するのが好ましい。本分散では、ビーズ分散機等を用いて微分散させる。ビーズを用いる場合は、顔料分散体1重量に対して2〜6倍重量を添加するのが好ましい。ビーズとしては、0.01〜1mmの粒子径のガラスビーズ、ジルコニアビーズ等を用いることができる。本分散の処理は、ディスパーを用いる場合は、1500〜2500rpmで1〜12時間程度が好適である。ビーズ分散機としては、例えば、縦型若しくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等が挙げられる。
【0071】
尚、本発明の顔料分散体を、カラーフィルターの製造に用いられる着色感光性組成物に適用する場合には、アルカリ水溶液に可溶とすることが好ましい。
【0072】
<着色感光性組成物>
本発明の着色感光性組成物は、前述の本発明に係る顔料分散体、光重合性化合物及び光重合開始剤を含む。このように、本発明に係る顔料分散体を含むことで、着色感光性組成物中においても、DPP顔料が本発明に係る顔料誘導体の作用により分散状態を安定して維持することが可能になり、塗膜の際に成膜性が良好で、塗膜、ひいては、カラーフィルターのコントラストを従来よりも向上させることが可能になる。
【0073】
本発明の着色感光性組成物では、前述の顔料分散体を少なくとも1種を用いることができる。着色感光性組成物中における顔料分散体の含有量としては、着色感光性組成物の全固形分(重量)に対して、顔料(顔料誘導体を含む)の含有量が5〜70重量%であるのが好ましく、15〜60重量%がより好ましい。顔料分散体の含有量がこの範囲内であると、色濃度が充分で優れた色特性を確保するのに有効である。
【0074】
本発明の着色感光性組成物を構成する光重合性化合物としては、特許文献1に記載のものを用いることができる。その記載を参照すると概ね、以下の通りである。
即ち、このような光重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。光重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0075】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
尚、これらの具体例は、特許文献1に記載の通りであるが、脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0076】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な着色感光性組成物の性能設計にあわせて任意に設定できる。
例えば、次のような観点から選択される。感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
【0077】
また、着色感光性組成物中の他の成分(例えば、アルカリ可溶性樹脂などのバインダーポリマー、光重合開始剤、着色剤(顔料)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。
また、基板等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。光重合性化合物である付加重合性化合物は、着色感光性組成物中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜60重量%含まれる。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。その他、光重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。
【0078】
本発明の着色感光性組成物を構成する光重合開始剤としても、特許文献1に記載のものを用いることができる。
即ち、本発明に好適に用いることができる光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾイル系、キサントン系、活性ハロゲン化合物(トリアジン系、オキサジアゾール系、クマリン系)、アクリジン系、ビイミダゾール系、オキシムエステル系等である。
これらの具体例は、特許文献1に記載の通りであるが、ベンゾフェノン系光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。
【0079】
光重合開始剤の着色感光性組成物中における含有量としては、着色感光性組成物の全固形分に対して、0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。光重合開始剤の含有量がこの範囲内であると、重合反応を良好に進行させて強度の良好な膜形成が可能である。
【0080】
本発明に係る着色感光性組成物は、前述の成分以外に、アルカリ可溶性樹脂、溶剤を含有してもよい。
【0081】
本発明に係る着色感光性組成物においてアルカリ可溶性樹脂を含有すると、着色感光性組成物をフォトリソグラフィ工程におけるパターン形成に適用した際において、パターン形成性をより向上させることができる。
【0082】
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、特許文献1に記載のものを用いることができる。その記載を一部参照すると概ね、以下の通りである。
【0083】
即ち、本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0084】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の好適なものとしては、特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸とを合わせた総称であり、以下も同様に(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの総称である。
(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH
2=CR
5R
6、CH
2=C(R
5)(COOR
7)(ここで、R
5は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R
6は炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、R
7は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。)等を挙げることができる。
【0085】
分散樹脂は、種々のものが市販されており、その具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
昭和高分子株式会社製:リポキシSPC−2000、
三菱レイヨン株式会社製:ダイヤナ−ルNRシリーズ、
Diamond hamrock Co.Ltd.,製:Photomer6173(COOH含有Polyurethane acrylic oligomer)、
大阪有機化学工業株式会社製:ビスコートR−264、KSレジスト106、
ダイセル化学工業株式会社製:サイクロマーPシリーズ、プラクセルCF200シリーズ、
ダイセルユーシービー株式会社製:Ebecryl 3800、等。
【0086】
これら共重合可能な他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ可溶性樹脂の着色感光性組成物中における含有量としては、着色感光性組成物の全固形分中で、1〜20重量%が好ましく、より好ましくは、2〜15重量%であり、特に好ましくは、3〜12重量%である。
【0087】
本発明の着色感光性組成物は、前述の各成分と共に溶剤を用いることで、好適に調製することができる。
このような溶剤としては、エステル類、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル;3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;ケトン類、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン;等が挙げられる。
溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶剤の着色感光性組成物中における含有量としては、顔料分散体中の溶媒の種類、含有量を考慮して、着色感光性組成物中の全固形分(不揮発成分)含量が5〜50重量%となるように含まれるのが好ましい。
【0088】
本発明の着色感光性組成物には、必要に応じて、増感色素、エポキシ樹脂、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、熱重合防止剤、充填剤、前述のアルカリ可溶性樹脂(分散樹脂)及び樹脂型分散剤以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの各種添加物を含有することができる。
【0089】
着色感光性組成物は、前述した必須成分である、本発明に係る顔料分散体、感光性化合物及び光重合開始剤、並びに、前述した任意成分である、アルカリ可溶性樹脂、溶剤及び各種添加剤を所望の成分組成になるように調整して混合槽内で撹拌することで得ることができる。混合槽内での撹拌を、ディスパー等の分散機を用いて行うことで、着色感光性組成物中で顔料等を分散させることができる。
【0090】
このようにして得られた着色感光性組成物は、ガラス等の基板上への優れたコントラストを有する塗膜の形成に好適に用いることができる。したがって、優れたコントラストを有するカラーフィルターの製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0091】
本発明の実施形態につき、以下の製造例により具体的に説明する。
【0092】
(製造例1):顔料誘導体aの製造
濃硫酸375重量部、パラホルムアルデヒド2.8重量部、4−アミノフタルイミド15.2重量部を混合し、20℃で1時間撹拌して反応させた。次いで、これにPigment Red 255(BASF社製、Irgazine Red L3551HD、以下「L3551HD」と称する。)を21.6重量部加え、30℃に加熱し、3時間撹拌して反応させた。得られた反応液を多量の冷水と混合して結晶を析出させた。得られた結晶を濾別した後、純水で洗浄し、310重量部(固形分10重量%)の赤褐色水ペーストを得た。これを、水340重量部に分散させ、反応混合液aを得た。
水470重量部、オルタニル酸19.9重量部、塩化シアヌル21.2部を混合し、5℃で1時間撹拌して反応させ、反応混合液bを得た。
反応混合液a650重量部と反応混合液b511重量部を混合した後、85℃に加熱し、1時間撹拌した。その後、70℃まで冷却した後、濾別し、さらに純水で洗浄し、80℃で乾燥させ、顔料誘導体a35.5重量部を得た。
得られた顔料誘導体aの化学構造の同定は、(株)島津製作所製AXIMA−CFR plus型マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF−MS)にて、α−シアノ−4−ヒドロキシけい皮酸(CHCA)をマトリックスとして、正イオンモードで測定することにより行った。その結果、m/z=728に分子イオンピークが観測された。この値は、一般式(1)におけるQがPigment Red 255の残基、Aがフェニレン基、Rが水酸基、Zが−SO
3H、nが1に相当するモノアイソトピック質量と一致する。
【0093】
(製造例2):顔料誘導体bの製造
Pigment Red 255(L3551HD)を21.6重量部用いるのに替えて、Pigment Orange 73(BASF社製、Irgazine DPP Orange RA)を30.0重量部用いた以外は、製造例1と同様の操作を行い、顔料誘導体b52.0重量部を得た。
また、製造例1の場合と同様にして得られた顔料誘導体bの化学構造の同定を行ったところ、m/z=840に分子イオンピークが観測された。この値は、一般式(1)におけるQがPigment Orange 73即ち一般式(2)で示されるDPP顔料の残基、Aがフェニレン基、Rが水酸基、Zが−SO
3H、nが1に相当するモノアイソトピック質量と一致する。
【0094】
(製造例3):顔料分散体Aの製造
臭素化DPP顔料(BASF社製、Irgaphor RED S3621CF、以下では「S3621CF」と称する。)24.19重量部、顔料誘導体b2.02重量部、樹脂型分散剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、ディスパービックLPN6919、以下、「LPN6919」と称する。固形分61.5%)18.73重量部、分散樹脂(昭和高分子株式会社製、リポキシSPC−2000、以下、「SPC−2000」と称する。固形分35%)32.92重量部、顔料誘導体a2.59重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)24.00重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)55.55重量部を内容量500mlの混合槽に投入し、ディスパーを用いて2000rpmで10分間撹拌し、予備分散を行った。
得られた予備分散物に直径0.5mmのジルコニアビーズ640.00重量部を添加し、2000rpmで2時間撹拌して本分散を行った後、PMA80.00重量部を添加して、さらに1500rpmで10分間撹拌して、希釈分散を行って、赤色分散物を得た。
得られた赤色分散物を2.5μmメッシュのフィルター(商品名:PALL HDC II Membrene Fillter、PALL社製。以下、単に「フィルター」と称する。)を用いて濾過し、顔料分散体A(固形分21.6重量%)を得た。
【0095】
(製造例4):顔料分散体Bの製造
臭素化DPP顔料(S3621CF)26.21重量部、樹脂型分散剤(LPN6919)18.73重量部、分散樹脂(SPC−2000)37.58重量部、顔料誘導体a2.59重量部、PM24.00重量部、PMA50.89重量部を内容量500mlの混合槽に投入し、ディスパーを用いて2000rpmで10分間撹拌し、予備分散を行った。
得られた予備分散物に直径0.5mmのジルコニアビーズ640.00重量部を添加し、2000rpmで2時間撹拌して本分散を行った後、PMA80.00重量部を添加して、さらに1500rpmで10分間撹拌して、希釈分散をおこなって、赤色分散物を得た。
得られた赤色分散物を2.5μmメッシュのフィルターを用いて濾過し、顔料分散体B(固形分21.6重量%)を得た。
【0096】
(製造例5):顔料分散体Cの製造
<微細化顔料の調製>
双腕型混練機(モリヤマ製、5LニーダーΣ型、以下、ニーダーという。)に、DPP顔料(Pigment Red 254、BASF社製、Irgazin DPP RED BTR)300重量部、無水芒硝3000重量部、ジエチレングリコール((株)日本触媒製)900重量部を投入して、ニーダー中の混練物の温度が50℃になるように温度コントロールをしながら10時間混練した。
混練物を、予め脱イオン水を20L溜めておいた温調可能なタンク内に移し、撹拌装置で回転数150rpmにて2時間撹拌し、混練物を分散させた。その分散液をヌッチェに移して濾過した。濾過後、洗浄排水の電気伝導度が3μS/cm以下になるまで脱イオン水で水洗した。水洗後の残渣を、乾燥機に移して80〜105℃、15時間乾燥させた。乾燥ブロックを粉砕機(協立理工(株)製、小型粉砕機、サンプルミルSK−M2)で粉砕し微細化顔料を得た。
<顔料分散体の調製>
臭素化DPP顔料(S3621CF)に替えて、前述の微細化顔料を用いた以外は、製造例3と同様にして、顔料分散体C(固形分21.6重量%)を得た。
【0097】
(製造例6):顔料分散体Dの製造
臭素化DPP顔料(S3621CF)に替えて、製造例5で調製した微細化顔料を用いた以外は、製造例4と同様にして、顔料分散体D(固形分21.6重量%)を得た。
【0098】
(製造例7):着色感光性組成物及びその塗膜の作製
製造例3〜6で得られた顔料分散体A〜Dを用いて、以下のようにして、それぞれ着色感光性組成物A〜Dを作製した。その後、着色感光性組成物A〜Dを用いてガラス板上にそれぞれ塗膜A〜Dを形成した。
顔料分散体A〜D60g、感光性化合物(多官能アクリレート、新中村化学株式会社製、A−DPH)10g、光重合開始剤(和光純薬工業株式会社製、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン)1.5g、アルカリ可溶性樹脂(SPC−2000)32g、PMA45g、PM30gを混合槽に投入し、ディスパーで撹拌し、着色感光性組成物A〜Dを得た。
得られた着色感光性組成物A〜Dを、スピンコーター(ミカサ株式会社製、スピンコーターMS−150A)を用いて、厚さ1mm、100mm角のガラス板にそれぞれ塗布した。この際、各着色感光性組成物について、色度x(後述するポストベイク後の値)が異なる3つの塗膜が形成されるように塗布した3枚の塗布板を作製した。即ち、スピンコーターの回転数を変化させて厚みを変え、3枚のうちの1枚の色度xが必ず0.648より小さい値となるように、他の1枚の色度xが必ず0.648より大きい値となるようにした。
これらの塗布板を90℃で2.5分乾燥した(プリベイク)後、露光装置(株式会社三永電機製作所製、商品名:UVE−1001S 型露光光源装置、YSH−100SA 型超高圧水銀ランプ)を用いて40mJ/cm
2の露光強度となるよう紫外線(UV)をプリベイク後の着色感光性組成物A〜Dに照射した。
UV照射後の各ガラス板を230℃、30分間乾燥し(ポストベイク)、ガラス板上に形成された各塗膜A〜Dを得た。
【0099】
(色度y、輝度Y、コントラストの測定)
塗膜A〜Dが形成されたガラス板(塗布板)について、色度計(株式会社日立製作所製、U3310)を用いて、xyY表色法による三刺激値を求めた。各塗膜につき前述のようにして用意した3枚の塗布板の測定値から近似直線(検量線)を求め、色度xが0.648の時の色度yと輝度Yの値を各塗膜A〜Dの結果として採用した。
偏光板がクロスニコルの位置にある時の輝度と、偏光板がパラレルの位置にある場合の輝度との比(%)として、コントラスト(CR)を求めた。
また、塗膜Bを基準に塗膜AのCR比(A/B)、塗膜Dを基準に塗膜CのCR比(C/D)を求めた。
結果を表1に示す。
【0100】
(耐熱性)
塗膜A〜Dが形成されたガラス板を280℃に設定した乾燥機内で1時間放置した。冷却後、塗膜A〜Dをデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−900)により観察した。評価基準は以下の通りである。
〇:5ヶ所以上観察して、結晶の生成がない。
×:5ヶ所以上観察して、結晶の生成がある。
【0101】
【表1】
【0102】
塗膜A、Bに関し、本発明の顔料誘導体bを用いた顔料分散体を含む着色感光性組成物により形成された塗膜Aは、顔料誘導体bを含まない塗膜Bに比べて、CR比が100%より大きくなっている。また、塗膜A、Bとは顔料の異なる塗膜C、Dに関しても、本発明の顔料誘導体bを含む塗膜Cは、CR比が100%より大きくなっている。これらの結果より、本発明の顔料誘導体は、カラーフィルターのコントラストの向上に有効であることが分かる。
また、顔料誘導体bを用いた顔料分散体を含む着色感光性組成物により形成された塗膜A、Cは、ポストベイク後にさらに280℃で加熱処理しても、塗膜に結晶の生成がなく、耐熱性も向上していることが分かる。尚、前述した「耐熱性」の評価で撮影した観察画像によると、臭素化DPP顔料を用いた塗膜Bでは、画像一面に結晶が生成しており、結晶の生成量は、臭素化ではないDPP顔料を用いた塗膜Dより顕著に多かった。したがって、本発明の顔料誘導体は、臭素化DPP顔料に対する加熱処理時の結晶生成抑制効果がより優れることが分かった。