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特開2017-31418ゴムの加工に使用される改良型カーボンブラック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-31418(P2017-31418A)
(43)【公開日】2017年2月9日
(54)【発明の名称】ゴムの加工に使用される改良型カーボンブラック
(51)【国際特許分類】
   C08K 9/04 20060101AFI20170120BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20170120BHJP
   C09C 1/56 20060101ALI20170120BHJP
【FI】
   C08K9/04
   C08L21/00
   C09C1/56
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-177735(P2016-177735)
(22)【出願日】2016年9月12日
(62)【分割の表示】特願2013-543974(P2013-543974)の分割
【原出願日】2011年12月12日
(31)【優先権主張番号】3377/MUM/2010
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】IN
(71)【出願人】
【識別番号】512202808
【氏名又は名称】アディティア ビルラ ヌーヴォ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADITYA BIRLA NUVO LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ゴサル ランジャン
(72)【発明者】
【氏名】シュクラ メーナ
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン スニル クマル
(72)【発明者】
【氏名】モハンドス ブリンダ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J037
【Fターム(参考)】
4J002AC001
4J002DA036
4J002FB086
4J002FD016
4J002GN01
4J037AA02
4J037CC03
4J037EE03
4J037EE25
4J037EE47
4J037FF17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カーボンブラックおよび天然油を含む、ゴムの加工に使用される改良型カーボンブラック組成物の提供。
【解決手段】カーボンブラックと、その中に組み込まれた天然油とを含む、ゴムの加工に使用するための、処理され乾燥されたカーボンブラック組成物、及びカーボンブラック組成物とを含む、ゴム化合物組成物。好ましくは、油がカーボンブラックの1〜50質量%の割合いで存在するカーボンブラック組成物。好ましくは天然油が、食用植物油又は非食用植物油であり、特に好ましくは、米糠油、インドセンダン油、カランジャ油、ヤシ油、アフア油又はゴム種子油から選択される油である、カーボンブラック組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックと天然油を含む、ゴムの加工に使用される改良型カーボンブラック。
【請求項2】
前記天然油が、食用植物油および非食用植物油から選択される、請求項1に記載の改良型カーボンブラック。
【請求項3】
前記天然油が、米ぬか油(イネ)、インドセンダン油(インドセンダン(Azadirachta indica))、カランジャ油(クロヨナ(Milletia pinnata))、ヤシ油、マフア油(マドゥカ・ロンギフォリア(Madhuca longifolia))、ゴム種子油等の油から選択される、請求項1又は2に記載の改良型カーボンブラック。
【請求項4】
前記油が、カーボンブラックの1〜50質量%の割合で添加される、請求項1〜3のいずれか1項記載の改良型カーボンブラック。
【請求項5】
ゴム化合物と請求項1記載の改良型カーボンブラックを含む、ゴム化合物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムの加工に使用される改良型カーボンブラックに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックはゴムおよび他の重合体で性能増強充填剤として使用される材料である。カーボンブラックの強化作用はカーボンブラックと重合体マトリックス間の物理的相互作用に依る。カーボンブラックによって提供される性能の増強は大部分がカーボンブラック、重合体および他の添加物の混合物を調製するために用いられる加工の有効性に依る。
【0003】
カーボンブラックは高せん断ミキサー内で重合体、最も典型的にはゴムに、マトリックスにカーボンブラックを組み込み、ゴム化合物の不可分の部分とするために添加される。カーボンブラックに加えて、加工に必要な時間とエネルギーを低減するために、様々な化学物質と加工助剤が前記重合体に添加される。一般的に使用される加工助剤の1つは、混合装置が効率的に混合物を練って均一な統一体にするのを可能にする、前記混合物またはゴム、カーボンブラックおよび他の構成要素の柔軟剤または可塑剤を務めるある部類の芳香油である。タイヤ、ホース、ゴムのプロファイルなどの、最終製品の特性の一貫性を確実にする点で、混合物の均一性は非常に重要である。非均一な混合物は製品の最終用途での不具合を起こすことになり得る。したがって、使用される加工油は、効率的で効果的な混合工程を確実にする他に、最終製品の品質に重要な機能を果たす。
【0004】
しかしながら、ゴムの加工に使用される芳香油は通常、質量%で、高い割合(最大85%)の芳香族化合物を含み、その内の15%以上が多環芳香族化合物からなる場合がある。多環芳香族化合物は毒性が有り、癌誘発性である可能性があることが知られている。したがって、現在では、それらの使用は世界的に制限されている。タイヤは有害な多環芳香族化合物の主要な発生源であり、それらはタイヤや廃棄されたタイヤの構成成分から大気や地下水面に達する。ゴム製品工業は、多環芳香族化合物を含む加工油の使用を最小限にするために、他の選択肢を考慮しているところである。
【0005】
ゴム加工業者によって現在使用されている芳香族加工油の代替品は石油起源のものであり、したがって、非再生可能資源からなる。
【0006】
さらに、加工油をゴム化合物に添加することが必要とされるので、ゴム加工業者には油の在庫を持ち、それを化合物に添加するための工程を持ち、そして、油をゴム化合物と均一に混合することが必要とされる。
【0007】
さらに、あらゆる工業製品により大きい割合の再生可能材料を使用する、すなわち、石油や石油由来製品などの非再生可能資源の使用を最小限にすることについて世界的な圧力がある。
【発明の概要】
【0008】
それ故、ゴム製品の製造においてゴム加工油の使用を不要にすることができる、ゴム加工に使用される改良型カーボンブラックを提案することが本発明の課題である。
【0009】
ゴム化合物にいかなる加工油も添加することなくゴム最終製品に同等以上の特性を与える改良型カーボンブラックを提供することが本発明の別の課題である。
【0010】
ゴム化合物の再生可能内容物、すなわち、再生可能資源に由来するゴム化合物の割合を増加させることが本発明のさらなる課題である。
【0011】
ゴム化合物の加工に有用な化学物質の担体としてカーボンブラックを使用することが本発明のさらに別の課題である。
【0012】
これらの課題のいくつかは再生可能な処理剤をゴム化合物に直接添加することにより応じられ得るが、ゴムとたいへんよく混合するカーボンブラックに組み込まれた添加物を提供するほうがずっとすばらしい代替法であり、したがって、最小の労力で、添加物が、当然のこととして、ゴムとよく混合することが可能になる。
【0013】
この後の説明を読むことで本発明のこれらの様相および他の様相が明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に従って、ゴムの加工に使用される改良型カーボンブラックが提供される。
【0015】
本発明に従って、カーボンブラックが、その特性を改良するための再生可能資源起源の物質(「処理剤」)で処理されるので、ゴム化合物の混合工程でゴム加工油を使用する必要が無い。したがって、本発明の処理済みカーボンブラックが有害な多環芳香族化合物を含むゴム加工油または石油のような非再生可能資源起源の加工油を使用する必要性を排除する。
【0016】
処理剤は、ゴム、カーボンブラックおよび他の化学物質の混合物に必要な特性をもたらす任意の物質からなることができる。処理剤は好ましくは植物起源であることができ、油、線維などの形態であることができ、そして、カーボンブラックの特性を向上させる。好ましい実施形態では、天然油でカーボンブラックを処理し、結果、標準的なゴム加工油と混合した基準化合物に匹敵するまたは改善した特性を持つ混合ゴム化合物がもたらされる。使用される油は、米ぬか油(イネ)、インドセンダン油(インドセンダン(Azadirachta indica))、カランジャ油(クロヨナ(Milletia pinnata))、ヤシ油、マフア油(マドゥカ・ロンギフォリア(Madhuca longifolia))、ゴム種子油などの食用植物油もしくは非食用植物油、または他の一般に入手可能な油であり得る。最終ゴム混合物の特性を改善すると考えられているので、リノール酸とオレイン酸の含量が多い油を使用することがさらに好ましい。カーボンブラックの1質量%から50質量%までの量で処理剤を添加することができる。
【実施例】
【0017】
実施例1
10mlの米ぬか油を100mlのアセトンと混合し、次に、100gのN220カーボンブラックと十分に混合した。処理したカーボンブラックを70℃のオーブン中で乾燥させた。その後、いかなる加工油も添加することを省略しつつ、ロールミル内で処理乾燥済みカーボンブラックを標準的方法および加工技術でゴム化合物に混合し、そして、それにより生じた製品の特性を試験した。
【0018】
比較のために、1)従来のカーボンブラックおよび芳香族加工油を使用して、ならびに2)加工油を使用せずに従来のカーボンブラックを使用して、さらに2バッチのゴム化合物を調製した。3種のゴム化合物の全てをまた70℃で72時間エイジングさせ、そして、エイジングによる特性の損失を判定するために再度試験した。
【0019】
好ましい実施形態を用いて(すなわち、芳香族加工油を使用せず、処理済みカーボンブラックを使用して)得られたゴム化合物の特性は、従来のカーボンブラックと芳香族加工油を使用して得られたゴム化合物と同等以上の特性を示す。比較すると、加工油を使用せず、従来の(未処理の)カーボンブラックを使用して調製したゴム化合物は特性の顕著な損失を被る。さらに、本発明のカーボンブラックを使用するゴム化合物の特性はエイジングによるその特性の悪化を受けにくかった。表1にその比較を示す。
【0020】
表1:未処理カーボンブラックおよび本発明の処理済みカーボンブラックを用いるゴム組成物の特性の比較
【表1】
【0021】
実施例2
10mlの米ぬか油を100mlのアセトンと混合し、次に、100gのN220カーボンブラックと十分に混合した。処理したカーボンブラックを70℃のオーブン中で乾燥させた。その後、いかなる加工油も添加することを省略しつつ、ロールミル内で処理乾燥済みカーボンブラックを標準的方法および加工技術でゴム化合物に混合し、そして、それにより生じた製品の特性を試験した。比較のため、従来のN220カーボンブラックを使用して、そして、ゴム化合物を調製するための加工油を使用して、化合物を調製するために同じ手順に従った。
【0022】
表2に2つのゴム化合物の特性が示されている。行1は2つの化合物の(ゴムの加工での重要なパラメータである)ムーニー粘度を示す。行2および3は、その用途での使用中のゴム化合物によるエネルギー損失の指標である、損失係数および発熱を示す。行4、5および6では、2つのゴム化合物の他の重要な特性は基本的に変化していないことが示されている。本発明のカーボンブラックを使用するが、加工油を使用しない化合物の特性は、従来のカーボンブラックと加工油を使用して調製された化合物の特性と基本的に同じであることを表2は示す。これは、本発明のカーボンブラックが、加工油と共に使用される従来のカーボンブラックの代替物として使用され得ることを結論的に示している。
【0023】
表2:未処理カーボンブラックおよび本発明の処理済みカーボンブラックを用いるゴム組成物の特性の比較
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2016年9月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックと、その中に組み込まれた天然油とを含む、ゴムの加工に使用するための、処理され乾燥されたカーボンブラック組成物。
【請求項2】
前記天然油が、食用植物油および非食用植物油から選択される、請求項1に記載のーボンブラック組成物。
【請求項3】
前記天然油が、米ぬか油インドセンダン油カランジャ油ヤシ油マフア油、およびゴム種子油から選択される、請求項1又は2に記載のーボンブラック組成物。
【請求項4】
前記油が、カーボンブラックの1〜50質量%の割合で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のーボンブラック組成物。
【請求項5】
ゴム化合物と請求項1記載のーボンブラック組成物を含む、ゴム化合物組成物。
【請求項6】
前記天然油が、食用植物油および非食用植物油から選択される、請求項5に記載のゴム化合物組成物。
【請求項7】
前記天然油が、米ぬか油、インドセンダン油、カランジャ油、ヤシ油、マフア油、およびゴム種子油から選択される、請求項5又は6に記載のゴム化合物組成物。
【請求項8】
前記天然油が、カーボンブラックの1〜50質量%の割合で存在する、請求項5〜7のいずれか1項に記載のゴム化合物組成物。
【請求項9】
別個のゴム加工油を含まない、請求項6〜8のいずれか1項に記載のゴム化合物組成物。
【請求項10】
ゴム化合物組成物の製造方法であって、
a) カーボンブラックを天然油で処理し、処理されたカーボンブラックを形成すること、
b) 前記処理されたカーボンブラックを乾燥し、乾燥された、処理されたカーボンブラックを提供することであって、前記乾燥された、処理されたカーボンブラックが、その中に組み込まれた前記天然油を有すること、および
c) 前記乾燥された、処理されたカーボンブラックをゴム化合物と混合すること
を含む、前記方法。
【請求項11】
工程c) がゴム加工油の別個の添加を含まない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記天然油が、食用植物油および非食用植物油から選択される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記天然油が、米ぬか油、インドセンダン油、カランジャ油、ヤシ油、マフア油、およびゴム種子油から選択される、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記天然油が、カーボンブラックの1〜50質量%の割合で存在する、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程b) における乾燥が、70℃の温度で行われる、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
表2:未処理カーボンブラックおよび本発明の処理済みカーボンブラックを用いるゴム組成物の特性の比較
【表2】
本発明の一態様として、例えば以下のものがある。
〔1〕カーボンブラックと天然油を含む、ゴムの加工に使用される改良型カーボンブラック。
〔2〕前記天然油が、食用植物油および非食用植物油から選択される、前記〔1〕に記載の改良型カーボンブラック。
〔3〕前記天然油が、米ぬか油(イネ)、インドセンダン油(インドセンダン(Azadirachta indica))、カランジャ油(クロヨナ(Milletia pinnata))、ヤシ油、マフア油(マドゥカ・ロンギフォリア(Madhuca longifolia))、ゴム種子油等の油から選択される、前記〔1〕又は〔2〕に記載の改良型カーボンブラック。
〔4〕前記油が、カーボンブラックの1〜50質量%の割合で添加される、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の改良型カーボンブラック。
〔5〕ゴム化合物と前記〔1〕記載の改良型カーボンブラックを含む、ゴム化合物組成物。
【外国語明細書】
2017031418000001.pdf