【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。尚、本項において括弧内に記載した図面内参照符号などは理解を容易化するための一例である。
【0012】
〔1〕<境界部はソース・ドレイン領域とチャネル領域とをゲート幅方向から挟み、挟まれたソース・ドレイン領域は境界部からゲート幅方向に離間>
半導体装置は、半導体基板の主面に分離領域(3)で画定された活性領域(2)を有し、前記活性領域に電界効果トランジスタ(Q1a〜Q1c,Q2a〜Q2e,Q3a〜Q3d)を有する。前記活性領域と前記分離領域との境界でゲート電極パターンが跨いでいる境界部(7)は、その活性領域に形成される前記電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域(4,5)とチャネル領域(6)とを少なくともゲート幅(W)方向に挟み、前記ソース・ドレイン領域とこれを前記ゲート幅方向に挟む前記境界部との間を離間させる離間部(14)を有する。
【0013】
これによれば、境界部はソース・ドレイン領域から離間部で離間されるから、境界部でゲート酸化膜厚が薄くなっても、また、不純物濃度が低くなっても、離間部が介在する部分では境界部とソース・ドレイン領域は接していない。従って、境界部が電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域の双方に接していない場合には境界部は一方のソース・ドレイン領域から他方のソース・ドレイン領域に電流を流すサイドチャネルを構成しない。仮に境界部が電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域の双方に接している場合には不所望な上記電流を流すサイドチャネルを構成することになるが、その電流経路は離間部を介在する分だけ当該電界効果トランジスタのチャネル長よりも長くなり、不所望な上記電流経路が長くなる分、当該不所望な電流の程度を緩和することができる。このように、不純物の注入工程やフォトマスクを増やすことなく、ゲート電極パターンのレイアウトによってキンク電流の発生を抑制することができる。更に、境界部がソース・ドレイン領域とチャネル領域をゲート幅方向に挟むという構造は、ソース・ドレイン領域へ不純物を注入するときのマスクにゲート電極パターンを用いることが可能であることを暗黙的に意味している。
【0014】
〔2〕<境界部は電界効果トランジスタのペアを成すソース・ドレイン領域の少なくとも一方に非接触>
項1において、前記ゲート電極パターンに覆われている前記境界部は、その活性領域に形成される前記電界効果トランジスタのペアを成すソース・ドレイン領域の少なくとも一方に非接触とされる(Q1a〜Q1c,Q2a〜Q2e)。
【0015】
これによれば、境界部が電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域の少なくとも一方に接していないから、境界部は一方のソース・ドレイン領域から他方のソース・ドレイン領域に電流を流すサイドチャネルを構成しない。
【0016】
〔3〕<平面視で境界部は双方のソース・ドレイン領域を取り囲む(双方に接しない)>
項2において、前記ゲート電極パターンに覆われている前記境界部は、その活性領域に形成される前記電界効果トランジスタの夫々のソース・ドレイン領域とチャネル領域とを平面視で4方向から取り囲み、前記夫々のソース・ドレイン領域と接しない(Q1a〜Q1c)。
【0017】
これによれば、境界部が電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域の双方に接していないから、境界部は一方のソース・ドレイン領域から他方のソース・ドレイン領域に電流を流すサイドチャネルを構成しない。キンク電流の抑制効果の信頼性が向上する。但し、活性領域及びゲート電極パターンの面積は大きくなる。
【0018】
〔4〕<境界部で取り囲まれるソース・ドレイン領域は隣接MOSの一部で共通化>
項3において、前記境界部は複数個の電界効果トランジスタを取り囲み、取り囲まれた夫々のソース・ドレイン領域の一部は隣接する電界効果トランジスタ(Q1b,Q1c)間で共通化される。
【0019】
これによれば、ゲートを共通化し一方のソース・ドレインを共通化する2個の電界効果トランジスタのチップ占有面積の縮小に寄与する。例えば2個の電界効果トランジスタのゲートを共通接続し、ソースを共通接続するカレントミラー負荷などに適用可能である。
【0020】
〔5〕<平面視で境界部はソース・ドレイン領域の何れか一方及びチャネル領域をゲート幅方向から挟む(一方に接しない)>
項2において、前記境界部は、その活性領域に形成される前記電界効果トランジスタの一方のソース・ドレイン領域に接し、他方のソース・ドレイン領域とチャネル領域とを平面視で3方向から取り囲み、前記他方のソース・ドレイン領域は前記境界部に非接触である(Q2a,Q2d,Q2e)。
【0021】
これによれば、境界部に接する一方のソース・ドレイン領域側において活性領域及びゲート電極パターンのチップ占有面積を項3及び項4の構造(Q1a〜Q1c)に比べて縮小することができる。
【0022】
〔6〕<境界部で挟まれたソース・ドレイン領域は隣接MOS間で個別化>
項5において、前記電界効果トランジスタの2個を一単位とし、夫々の前記一方のソース・ドレイン領域を共通化し、夫々の前記他方のソース・ドレイン領域を個別化して構成される(Q2d,Q2e)。
【0023】
これによれば、一方のソース・ドレインを共通化する2個の電界効果トランジスタのチップ占有面積の縮小に寄与する。例えば2個の電界効果トランジスタのソースを共通接続し、ドレイン及びゲートを個別化する差動入力回路等に適用可能である。
【0024】
〔7〕<境界部で挟まれたソース・ドレイン領域は隣接MOS間で共通化>
項5において、前記境界部を跨ぐゲート電極パターンは隣接する2個の電界効果トランジスタに共有され、前記2個の電界効果ランジスタは前記他方のソース・ドレイン領域を共有し、前記境界部は、共有されたソース・ドレイン領域及び夫々のチャネル領域をゲート幅方向に挟む(Q2b,Q2c)。
【0025】
これによれば、ゲートを共通化し一方のソース・ドレインを共通化する2個の電界効果トランジスタのチップ占有面積の縮小に寄与する。例えば2個の電界効果トランジスタのゲートを共通接続し、ソースを共通接続するカレントミラー負荷などに適用可能である。特に、境界部に接する一方のソース・ドレイン領域側において活性領域及びゲート電極パターンのチップ占有面積を項4の構造(Q1b,Q1c)に比べて縮小することができる。
【0026】
〔8〕<一方のソース・ドレイン領域に接する境界部から他方のソース・ドレイン領域に接する境界部までの非接触長さは当該電界効果トランジスタのゲート長よりも長い>
項1において、前記ゲート電極パターンが跨いでいる前記境界部は、その活性領域に形成される前記電界効果トランジスタのペアを成すソース・ドレイン領域の双方に接し、一方のソース・ドレイン領域(5)は前記境界部(7)との間に前記離間部(14)が形成され、前記境界部と一方の前記ソース・ドレイン領域(5)が接する位置から前記離間部(14)を経て他方の前記ソース・ドレイン領域(4)に前記境界部が接する位置までの当該境界部の長さは当該電界効果トランジスタのゲート長(L)よりも長い(Q3a〜Q3d)。
【0027】
これによれば、境界部が電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域の双方に接している場合に境界部は、一方のソース・ドレイン領域から他方のソース・ドレイン領域に電流を流すサイドチャネルを構成することになるが、その電流経路は離間部14を介在する分だけ当該電界効果トランジスタのチャネル長よりも長くなり、不所望な上記電流経路が長くなる分、当該不所望な電流の程度を緩和することができる。
【0028】
〔9〕<平面視で境界部はソース・ドレイン領域の何れか一方とチャネル領域をゲート幅方向から挟む>
項8において、前記一方のソース・ドレイン領域(5)のゲート幅方向の長さは前記他方のソース・ドレイン領域のゲート幅方向の長さよりも短くされ、前記ゲート電極パターンに覆われている前記境界部は、その活性領域に形成される前記電界効果トランジスタの前記一方のソース・ドレイン領域(5)とチャネル領域(6)とをゲート幅方向に挟む(Q3a)。
【0029】
これによれば、ゲート長方向にソース・ドレイン領域を超えて活性領域を形成しなくてもよく、ゲート電極パターンも広げることを要しないので、それらのチップ面積を項5の構造(Q2a)に比べて縮小することができる。
【0030】
〔10〕<境界部で挟まれたソース・ドレイン領域は隣接する電界効果トランジスタ間で個別化>
項9において、前記電界効果トランジスタの2個を一単位とし、夫々の前記他方のソース・ドレイン領域を共通化し、夫々の前記一方のソース・ドレイン領域を個別化する(Q3b,Q3c)。
【0031】
これによれば、一方のソース・ドレインを共通化する2個の電界効果トランジスタのチップ占有面積の縮小に寄与する。例えば2個の電界効果トランジスタのソースを共通接続し、ドレイン及びゲートを個別化する差動入力回路等に適用可能である。
【0032】
〔11〕<平面視で境界部はソース・ドレイン領域の双方及びチャネル領域をゲート幅方向から挟む>
項8において、前記電界効果トランジスタの夫々のソース・ドレイン領域は前記境界部との間に前記離間部を有し、前記境界部は前記双方のソース・ドレイン領域とチャネル領域とをゲート幅方向に挟む(Q3d)。
【0033】
これによれば、境界部のソース・ドレイン領域との非接触長さが項9の構造(Q3a)よりも長くなるので、その分だけ境界部のサイドチャネルを不所望に流れる電流の程度を更に緩和することができる。
【0034】
〔12〕<境界部は電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域の少なくとも一方に非接触>
半導体装置は、半導体基板の主面に分離領域で画定された活性領域を有し、前記活性領域に電界効果トランジスタ(Q1a〜Q1c,Q2a〜Q2e)を有し、前記活性領域(2)と前記分離領域(3)との境界でゲート電極パターンが跨いでいる境界部(7)は、その活性領域に形成される前記電界効果トランジスタのゲート長方向の一辺の長さが当該ゲート長よりも長くされると共に、前記電界効果トランジスタのペアを成すソース・ドレイン領域の少なくとも一方に非接触とされる。
【0035】
これによれば、境界部はペアを成すソース・ドレイン領域の少なくとも一方に非接触であるから、境界部でゲート酸化膜厚が薄くなっても、また、不純物濃度が低くなっても、境界部は一方のソース・ドレイン領域から他方のソース・ドレイン領域に電流を流すサイドチャネルを実質的に構成せず、これによってキンク電流の発生を抑制することができる。境界部がソース・ドレイン領域の少なくとも一方に非接触であることについては、電界効果トランジスタのゲート長方向における境界部の一辺の長さが当該ゲート長よりも長くされる構造によって実現できるから、不純物の注入工程やフォトマスクを増やすことなく、ゲート電極パターンのレイアウトによってキンク電流の発生を抑制することを可能とする。
【0036】
〔13〕<平面視で境界部は双方のソース・ドレイン領域に非接触>
項12において、前記境界部はその活性領域に形成される前記電界効果トランジスタの双方のソース・ドレイン領域から離間する(Q1a〜Q1c)。
【0037】
これによれば、キンク電流の抑制効果の信頼性が向上する。
【0038】
〔14〕<境界部で取り囲まれるソース・ドレイン領域の一部は隣接する電界効果トランジスタ間で共通化>
項13において、前記境界部に係る活性領域にはソース・ドレイン領域の一部とゲート電極パターンを共通化して前記電界効果トランジスタが隣接して形成される(Q1b,Q1c)。
【0039】
これによれば、ゲートを共通化し一方のソース・ドレインを共通化する2個の電界効果トランジスタのチップ占有面積の縮小に寄与する。例えば2個の電界効果トランジスタのゲートを共通接続し、ソースを共通接続するカレントミラー負荷などに適用可能である。
【0040】
〔15〕<平面視で境界部は一方のソース・ドレイン領域に非接触>
項12において、前記境界部はその活性領域に形成される前記電界効果トランジスタの一方のソース・ドレイン領域に接し、他方のソース・ドレイン領域から離間する(Q2a,Q2d,Q2e)。
【0041】
これによれば、境界部に接する一方のソース・ドレイン領域側において活性領域及びゲート電極パターンのチップ占有面積を項13及び項14の構造(Q1a〜Q1c)に比べて縮小することができる。
【0042】
〔16〕<境界部で挟まれたソース・ドレイン領域は隣接する電界効果トランジスタ間で共通化>
項15において、前記境界部を跨ぐゲート電極パターンは隣接する2個の電界効果トランジスタに共有され、前記2個の電界効果ランジスタは前記他方のソース・ドレイン領域を共有する(Q2b,Q2c)。
【0043】
これによれば、ゲートを共通化し一方のソース・ドレインを共通化する2個の電界効果トランジスタのチップ占有面積の縮小に寄与する。例えば2個の電界効果トランジスタのゲートを共通接続し、ソースを共通接続するカレントミラー負荷などに適用可能である。特に、境界部に接する一方のソース・ドレイン領域側において活性領域及びゲート電極パターンのチップ面積を項14の構造(Q1b,Q1c)に比べて縮小することができる。
【0044】
〔17〕<境界部で挟まれたソース・ドレイン領域は隣接する電界効果トランジスタ間で個別化>
項15において、前記電界効果トランジスタの2個を一単位とし、夫々の前記一方のソース・ドレイン領域を共通化する(Q2d,Q2e)。
【0045】
これによれば、一方のソース・ドレインを共通化する2個の電界効果トランジスタのチップ占有面積の縮小に寄与する。例えば2個の電界効果トランジスタのソースを共通接続し、ドレイン及びゲートを個別化する差動入力回路等に適用可能である。
【0046】
〔18〕<一方のソース・ドレイン領域に接する境界部から他方のソース・ドレイン領域に接する境界部までの非接触長さは当該電界効果トランジスタのゲート長よりも長い>
半導体装置は、半導体基板の主面に分離領域(3)で画定された活性領域(2)を有し、前記活性領域に電界効果トランジスタを有する。前記活性領域(2)と分離領域(3)との境界でゲート電極パターンが跨いでいる境界部は、その活性領域に形成される前記電界効果トランジスタのペアを成すソース・ドレイン領域(4,5)の双方に接し、一方の前記ソース・ドレイン領域(5)に接する前記境界部から他方の前記ソース・ドレイン領域(4)に接する前記境界部までの、前記ソース・ドレイン領域と非接触とされる前記境界部の非接触長さは当該電界効果トランジスタのゲート長(L)よりも長くされる。
【0047】
これによれば、境界部が電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域の双方に接している場合に境界部は、一方のソース・ドレイン領域から他方のソース・ドレイン領域に電流を流すサイドチャネルを構成することになるが、その電流経路は当該電界効果トランジスタのチャネル長よりも長く、不所望な上記電流経路が長くなる分、当該不所望な電流の程度を緩和することができる。
【0048】
〔19〕<平面視で一方のソース・ドレイン領域のゲート幅方向の長さが短くされる>
項18において、前記一方のソース・ドレイン領域のゲート幅方向の長さは前記他方のソース・ドレイン領域のゲート幅方向の長さよりも短くされる。前記一方のソース・ドレイン領域は前記境界部から離間する分離部を経て前記境界部に接触する(Q3a)。
【0049】
これによれば、ゲート長方向にソース・ドレイン領域を超えて活性領域を形成しなくてもよく、ゲート電極パターンも広げることを要しないので、それらのチップ面積を項15の構造(Q2a)に比べて縮小することができる。
【0050】
〔20〕<ゲート幅方向の長さが短くされたソース・ドレイン領域を隣接する電界効果トランジスタ間で個別化>
項19において、前記電界効果トランジスタの2個を一単位とし、夫々の前記他方のソース・ドレイン領域を共通化し、夫々の前記一方のソース・ドレイン領域を個別化する(Q3b,Q3c)。
【0051】
これによれば、一方のソース・ドレインを共通化する2個の電界効果トランジスタのチップ占有面積の縮小に寄与する。例えば2個の電界効果トランジスタのソースを共通接続しゲートを個別化する差動入力回路等に適用可能である。
【0052】
〔21〕<平面視で境界部はソース・ドレイン領域の双方及びチャネル領域をゲート幅方向から挟む>
項18において、前記電界効果トランジスタの夫々のソース・ドレイン領域は前記境界部から離間する分離部を経て前記境界部に接触する(Q3d)。
【0053】
これによれば、境界部のソース・ドレイン領域との非接触長さが項19の構造(Q3a)よりも長くなるので、その分だけ境界部のサイドチャネルを不所望に流れる電流の程度を更に緩和することができる。