【実施例】
【0015】
本発明に係る化学式(1)で表される化合物の単離・精製・構造決定
沖縄県石垣島吉原で採取した藍藻50g(湿重量)を冷凍保存し、小石を取り除いてから含水メタノール中にてブレンダーで粉砕した。抽出液を吸引濾過し、エバポレーターを用いて濾液を濃縮した。粗抽出物を酢酸エチル(100ml×3)と水(100ml)とで分配した。得られた酢酸エチル層を減圧濃縮し、濃縮物を90%メタノール−水(50ml)に溶解し、ヘキサン(50ml×3)で脱脂した。得られた90%メタノール層を減圧濃縮し、濃縮物をODSカラムクロマトグラフィー[Cosmosil(登録商標) 75C
18−OPN(φ20×120mm)、メタノール/水(20/80→40/60→60/40→80/20→メタノール)]により5画分(Fr.1〜5)に分離した。
(
図1参照)
【0016】
得られた各溶出画分の内、メタノール溶出画分(Fr.5)55.4mgを逆相高速液体クロマトグラフィー[Develosil(登録商標)ODS HG−5(φ10×250mm)、アセトニトリル/水(70/30)→(グラジェント30分)→(100/0)、検出UV215nm、流速2.0mL/分]により4画分(Fr.5−1〜4)に分離した。この内の第3画分(Fr.5−3)にHeLa細胞増殖阻害活性が認められた。得られたFr.5−3を逆相高速液体クロマトグラフィー[Develosil ODS HG−5(φ10×250mm)、アセトニトリル/水(85/15)→(グラジェント10分)→(90/10)→(10分)→(90/10)→(グラジェント5分)→(100/0)、検出UV215nm、流速1.5mL/分)]により6画分(Fr.5−3−1〜5−3−6)に分離した。この内の第5画分(Fr.5−3−5)にHeLa細胞増殖阻害活性が認められた。得られたFr.5−3−5を減圧濃縮・乾固して化学式(1)で表される化合物(1.5mg)を不定形白色粉末として得た。
(
図2参照)
【0017】
図1および
図2に示した操作により得られた不定形白色粉末である本発明に係る化学式(1)で表される化合物について、高分解能ESI−MSにより分子イオンピーク[m/z926.4544(M+H)
+]が観測され、分子式がC
45H
75N
5O
13Sであることが判明した。
さらに、
1H−NMR、
13C−NMRおよびHMBCを測定し、得られたスペクトルを解析することにより、不定形白色粉末であって、C
45H
75N
5O
13Sの分子式を有する化合物の構造を以下のとおり決定した。
【化2】
【0018】
図1および
図2に示した操作により得られた不定形白色粉末である本発明の化学式(1)で表される化合物についての
1H−NMR、および
13C−NMRのスペクトルデータを以下に示す。
1H−NMR(600MHz,CD
3OD)δ:7.98(1H),7.95(1H,NH),7.39(1H,NH),5.30(1H),4.97(1H),4.88(1H),4.44(1H),3.93(1H),3.84(1H),3.82(1H),3.69(1H),3.64(1H),3.40(1H),3.35(1H),3.28(1H),3.26(3H),3.10(1H),2.99(1H),2.49(1H),2.32(1H),2.21(1H),1.90(1H),1.73(3H),1.61(1H),1.60(3H),1.60(1H),1.51(1H),1.40−1.20(2H),1.35(1H),1.29,(2H),1.29(2H),1.25(3H),1.22(1H),1.13(1H),1.08(3H),1.01(3H),0.97(3H),0.97(3H),0.95(3H),0.92(3H),0.92(3H),0.89(3H),0.89(3H),0.82(3H)
13C−NMR(150MHz,CD
3OD)δ:178.6,177.0,175.5,173.3,172.8,171.3,166.2,149.9,124.8,86.5,85.5,82.2,78.9,77.9,75.3,73.5,68.7,60.4,58.2,55.3,47.2,44.0,43.1,39.9,38.5,38.0,37.2,35.8,35.0,33.3,32.4,31.3,27.3,26.1,26.1,24.2,21.0,19.8,17.9,16.6,15.2,14.9,13.1,12.0,11.2,10.7
【0019】
試験例(化学式(1)で表される化合物の癌細胞増殖阻害活性試験(HeLa))
ヒト子宮頸がん由来細胞株(HeLa)は、10%ウシ胎児血清含有のDMEM培地にて炭酸ガス培養器(5%CO
2、37℃)で培養した。HeLa細胞を96穴プレートに播種し(1×10
4cells/well)、16時間培養後にDMSOに溶解した本発明に係る化学式(1)で表される化合物を所定の濃度(1μg/mLから開始して、1/2段階希釈を10段階)になるように細胞に添加した。48時間培養を続けた。細胞数の測定にはcell counting kit(同仁化学)を用い、取扱説明書に従って行った。その結果、IC
50=0.10μg/mLの濃度で癌細胞の増殖を阻害した。