【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係る無段変速機の主要部を示したもので、
図2のA−A線に沿った断面図である。
図2は、
図1におけるB−B線に沿った断面図である。両図ともに後述する入力軸10および出力軸12の中心線より上半分を描いている。
また、
図3は、
図2におけるL−L線に沿った、
図1に相当する部分断面を示しており、
図4は、
図1の状態から後述する速度比を変化させた状態を表した作動図である。
【0012】
ハブ軸7は、自転車などのフレーム8に固定されたものであり、該ハブ軸7を中心に本発明の無段変速機を構成する。
入力軸10は、ハブ軸7にベアリング10gで支持されるとともに、図示しないチェーンにより駆動されるスプロケット10hと一体になっている。
入力軸10にベアリング28gで支持された制御軸28cは、図示しないケーブル等により駆動可能な制御アーム28fが一体になっている。
【0013】
出力軸12は、一般的な無段変速機におけるケースを兼ねているとともに、自転車のハブも兼ねている。出力軸12はカバー12bと一体になっており、両者はベアリング12c、12dを介してハブ軸7および制御軸28cに回転自在に支持されている。したがって、入力軸10と出力軸12の軸中心は、ハブ軸7と同じである。
また、出力軸12の外周には図示しない車輪のスポーク9と連結するスポークフランジ12fを形成してある。
【0014】
ハブ軸7と一体の第1プレート4は後述する第2ステーター38を介して第2プレート5と連結されており、第1プレート4と第2プレート5は第2ステーター38とともに静止している。
入力軸10を中心にしたピッチ円上の等間隔位置に、4個の副軸14が入力軸10と平行に配置され、それらの両端部がそれぞれ第1プレート4および第2プレート5に、ベアリング4a、5aにより回転自在に支持されている。
なお、以下の説明において、特に断らない場合は「軸方向」「径方向」という表現は入力軸10を念頭においたものである。
【0015】
入力軸10と各副軸14の間には、それぞれ第1ボール20と第2ボール30とを軸方向に並べて配置し、それらのボール20、30は接点Eで接している。第1ボール20と第2ボール30とは、第1ボール軸22および第2ボール軸32に、それぞれベアリング22a、32aで回転自在に支持されている。
図2を参照しながら説明すると、第1ボール軸22および第2ボール軸32は、径方向両側を第1ステーター28と第2ステーター38とで支持されている。
すなわち、径方向内側の第1ステーター28には溝28bが、径方向外側の第2ステーター38には溝38bがそれぞれ形成され、
図1、
図2および
図4に示すように、第1ボール軸22および第2ボール軸32が溝28b、38bに沿ってスライドしながら傾転できるように支持されている。
【0016】
また、第1ステーター28は、
図3に示すように制御レバー28hを介して制御軸28cと連結している。
すなわち、制御レバー28hは径方向外側の端部がピン5bにより第2プレート5に揺動可能に支持され、径方向内側の端部28iが制御軸28cの溝28jに係合しており、両者の中間に孔28kが形成されている。孔28kには第1ステーター28の突起28mが係合しており、制御アーム28fによって制御軸28cが回転すると制御レバー28hが揺動し、これに連動して第1ステーター28が入力軸10を中心として若干(所定の回転範囲)回転するようになっている。
【0017】
なお、第1ボール20と第2ボール30とは、第1ステーター28および第2ステーター28に対して、第1ボール軸22および第2ボール軸32の軸方向に若干動くことができるような隙間を有している。
また、第1ステーター28と第2ステーター38の溝28b、38bは軸方向に形成してあるので、第1ボール20と第2ボール30とは軸方向に移動可能であり、前述したように互いに接することができる。
さらに、
図2に示すように第2ステーター38には組み立て性を確保するため、第1ボール20よりやや大きい切り欠き38dが形成されている。
【0018】
入力軸10と第1ステーター28との間にはガイドスリーブ16が備えてあり、このガイドスリーブ16には第1ガイド溝16a、第2ガイド溝16bがそれぞれ4本形成され、この第1、第2ガイド溝16a、16bにはそれぞれ第1ボール軸22および第2ボール軸32の入力軸10側の端部22b、32bが係合している。端部22b、32bは部分的に球状に成形してある。
また、第1、第2ガイド溝16a、16bはヘリカル状の溝であり、
図4に見るように、第1ボール軸22および第2ボール軸32が傾転するとともに、ガイドスリーブ16は入力軸10を中心として回転するようになっている。
【0019】
なお、
図2は第1ボール20側の断面であるが、第2ボール30側の断面もこれと同様である。
入力軸10には、第1ディスク40がスプライン10bとスナップリング10cで一体に設けられ、第2ディスク42がヘリカルボールスプライン10aを介して軸方向移動可能に設けてある。
第1ディスク40と第2ディスク42は、それぞれ第1ボール20、第2ボール30の外面20a、30aと接してトルクの伝達が可能な摩擦面40a、42aを形成している。
【0020】
入力軸10と第2ディスク42との間にはスプリング10iが挿入され、第2ディスク42を
図1において左側へ常時押圧している。
また、それに加えて入力軸10がスプロケット10hから駆動されて、後述するように第2ディスク42が第2ボール30を前進方向に駆動するトルクが作用すると、ヘリカルボールスプライン10aの作用でトルクに応じたスラストが生じて、第2ディスク42を左側へ押圧するようになっている。
【0021】
一方、副軸14には第3ディスク44と第4ディスク46とが一体に設けてあり、第1ディスク40と第2ディスク42と同様に、それぞれ第1ボール20、第2ボール30の外面20a、30aと接してトルクの伝達が可能な摩擦面44a、46aを形成している。
したがって、前述のスプリング10iおよびヘリカルボールスプライン10aが第2ディスク42にスラストを作用させると、第1ディスク40および第2ディスク42が2個の第1ボール20および第2ボール30とを軸方向に挟むように、前述の摩擦面40a、42aを第1ボール20、第2ボール30の外面20a、30aに押しつける。
【0022】
ここで、第1ボール20と第2ボール30は、前述のように第1ボール軸22および第2ボール軸32の軸方向に若干動くことができるので、第1ディスク40および第2ディスク42から第1ボール20および第2ボール30が受けたスラストにより、第1ボール20および第2ボール30は径方向外側へ移動して第3ディスク44および第4ディスク46に押しつけられるように作用する。
【0023】
すなわち、スプリング10iおよびヘリカルボールスプライン10aが発したスラストは、第1乃至第4ディスク40、42、44、46の摩擦面40a、42a、44a、46aと、2個の第1ボール20および第2ボール30の外面20a、30a同士をそれぞれ圧接することになり、それらのスラストは第1ボール20と第2ボール30の接点Eに作用して相殺される。
【0024】
4個の副軸14に固定された第3ディスク44と第4ディスク46の摩擦面44a、46aは、径方向外側においてサポートスリーブ50の内面50aと接している。
すなわち、内面50aは摩擦面44a、46aに沿った形状にしてある。
したがって、前述のようにスプリング10iおよびヘリカルボールスプライン10aが発したスラストで、第3ディスク44と第4ディスク46の摩擦面44a、46aが第1ボール20および第2ボール30の外面20a、30aから受ける力は、摩擦面44a、46aがサポートスリーブ50を軸方向に挟む力になる。
すなわち、副軸14および第1プレート4および第2プレート5は剛体ではないので、摩擦面44a、46aに大きなスラストが作用するとそれぞれが弾性変形して、結果として摩擦面44a、46aは第1ボール20および第2ボール30とサポートスリーブ50を、ほぼ等しい力で押圧することになる。
【0025】
前述したように、4カ所の摩擦面40a、42a、44a、46aから第1ボール20と第2ボール30に作用するスラストは接点Eにて相殺されるが、スラストに伴って4個の第1乃至第4ディスク40、42、44、46に作用する径方向の力は以下のようになる。
すなわち、第1および第2ディスク40、42は、それぞれ周囲に配置された4個の第1ボール20および第2ボール30に接して径方向の力を受けるので、スラストに伴う径方向の力は互いに打ち消し合って相殺される。
【0026】
一方、第3、第4ディスク44、46はそれぞれ1個の第1ボール20および第2ボール30から径方向の力を受けるので、それらの径方向の荷重はベアリング4a、5aを介して第1プレート4および第2プレート5に作用する。
しかし、4個の副軸14に接するサポートスリーブ50で、それらが相殺するように作用するので、ベアリングベアリング4a、5aには大きな力が作用しない。
つまり、サポートリング50は、4個の副軸14から大部分の径方向の荷重を受けるので、これを相殺することができる。
【0027】
副軸14には駆動歯車48が一体になっており、出力軸12と連結した被動歯車12aと噛み合っている。すなわち、被動歯車12aは4個の副軸14から駆動される。
また、出力軸12と被動歯車12aとの間には一方向クラッチ12eが備えてあり、出力軸12が図示しない車輪を前進方向に駆動する場合のみ出力軸12と被動歯車12aとを連結し、逆の場合は両者の連結が解除されるようになっている。
【0028】
次に、
図1と
図2、
図3に示した実施例1の無段変速機の作用を、
図4とともに説明する。
なお、図示は省略するが、
図1に示した無段変速機は各種センサーやコントローラーなどを備えることができ、以下の作動はコントローラーの指示に基づいて行ってもよい。また、実施例1の無段変速機には潤滑を兼ねた適切な作動油が用いられる。
以下の説明における回転方向は、
図1において左側から見た場合、または径方向中心側、つまり入力軸10側から見た場合を示す。
【0029】
入力軸10がスプロケット10hにより反時計回り方向(自転車の前進方向)に回転すると、前述したようにスプリング10iの張力に加えて、ヘリカルボールスプライン10aによって伝達トルクに応じたスラストが作用して、第2ディスク42を第2ボール30側へ押すとともに、第1ディスク40を第1ボール20側へ引き寄せて、前述したように4個の第3、第4ディスク44、46のそれぞれの接点も合わせて、摩擦面40a、42a、44a、46aと、2個の第1ボール20および第2ボール30の外面20a、30a同士をそれぞれ圧接する。
【0030】
これにより、入力軸10を反時計回りに回転した場合、第1ディスク40は第1ボール20を反時計回りに回転させ、第2ディスク42は第2ボール30を時計回りに回転させる。
また、第1、第2ボール20、30は第3、第4ディスク44、46を介して副軸14を時計回りに回転させる。なお、これと連動してサポートリング50も時計回りに回転する。
【0031】
ここで、
図4にも示すように、第1ディスク40と第1ボール20の接点をF、第2ディスク42と第2ボール30の接点をG、第3ディスク44と第1ボール20の接点をH、第4ディスク46と第2ボール30の接点をI、とする。厳密にはそれぞれの接点位置を特定するのは困難であるが、図示したように各接触部の中央付近を接点として説明する。
そして、接点Fと入力軸10の中心との距離をR1、接点Fと第1ボール軸22の中心との距離をR2、接点Gと第1ボール軸22の中心との距離をR3、接点Gと副軸14の中心との距離をR4、と定義する。なお、接点H、Iは第1、第2ボール20、30同士の接点Eを中心として接点F、Gと対称とみなして説明を省略する。
【0032】
これらの結果、入力軸10と副軸14の速度比(入力軸10の回転速度/副軸14の回転速度)は、各接点において滑りがないものとすると、R2・R4/R1・R3と定義できる。また、出力軸12の回転速度はこれに駆動歯車46bと被動歯車12aの歯数比を加味すれば算出できる。そして、出力軸12の回転方向は入力軸10と同じである。
【0033】
次に入力軸10と副軸14の速度比を変化させる場合について説明する。
図1は、入力軸10と副軸14に対して第1、第2ボール軸22、32が直角であるとともに、第1ボール軸22と第2ボール軸32が平行な状態であり、距離R2とR3が同じ値と言えるので、この場合の速度比は後述する速度比範囲のほぼ中央値である。
続いて、
図4に示したように第1ボール軸22を反時計回りに、第2ボール軸32をその逆方向に傾転させた場合は、前述の距離R3とR2が
図1から変化してR3がR2より小さくなっている。同様に距離R3、R4も変化するが説明を省略する。この結果、
図4の状態では
図1に較べて減速側に変化する。
【0034】
このとき、ガイドスリーブ16は
図1の位置から回転しているのが分かる。
なお、これらと逆に第1ボール軸22を時計回りに、第2ボール軸32を反時計回りに傾転させた場合は、
図1に較べて増速側に変化するが、図示は省略する。
このように、
図1を中心として、第1ボール軸22と第2ボール軸32を、接点Eを中心として対称に傾転させることで、速度比を無段階に変化させることができる。
【0035】
続いて、第1ボール軸22と第2ボール軸32の傾転角を変化させる方法について説明する。
前述したように、第1ボール軸22と第2ボール軸32の傾転角が変化するとともに、ガイドスリーブ16が回転するようになっている。したがって、ガイドスリーブ16を回転させることで第1ボール軸22と第2ボール軸32の傾転角を変化させることが可能であり、特に伝達トルクが小さい場合には有効な手段と言える。
【0036】
しかし、伝達トルクが大きい場合に、第1ボール軸22と第2ボール軸32の傾転角を変化させるには、以下のような方法で行う。
図2で分かるように、一定の速度比を保った定常状態では、入力軸10の中心と副軸14の中心を結んだ線と第1ボール軸22と第2ボール軸32の中心線が一致しているが、これを変化させることで第1ボール軸22と第2ボール軸32の傾転角を変化させることが可能である。
【0037】
すなわち、制御アーム28fを操作して制御軸28cを回転させると、前述したように制御レバー28hを介して第1ステーター28を僅かに回転させることができる。
以下、第1ボール20側で説明すると、
図2を参照すると分かるように、第1ステーター28を回転させると第1ボール軸22が傾いて、その中心線が入力軸10の中心と副軸14の中心を結んだ線から外れる。
これにより、
図2で見た場合の第1ボール軸22の中心線と接点F、Gの位置関係がずれることになる。この結果、接点F、Gにおいて第1ボール軸22を傾転させる偶力が作用して、それらを傾転させる。そして、所望の速度比に達したところで制御アーム28fを操作して、第1ステーター28を
図2で示した位置に戻す。これにより速度比が変化した定常状態になる。
これと同様のことが対称配置された第2ボール30側でも作用する。
なお、この際ガイドスリーブ16は、計8個の各ボール軸22、32の傾転角が互いにずれないように規制する機能を有する。
【0038】
この第1ステーター28を回転させる方法は、一つの手段であり、他の方法としては、例えば第1ボール軸22と第2ボール軸32を
図2において左右に平行移動または、それに近い移動をするようにしてもよい。
なお、制御アーム28fの操作は手動または電動モータで行えばよい。
【0039】
このように、実施例1によれば、動力伝達のために摩擦面40a、42a、44a、46aと、2個の第1ボール20および第2ボール30の外面20a、30a同士を圧接するスラストは、第1ボール20と第2ボール30の接点Eにおいて相殺するので、各ベアリング22a、32aには作用せず、これらベアリング22a、32aにあってはスラストに伴うロスが発生しない。
【0040】
一方、上記の各接点F、G、H、Iで生ずる径方向の力については、入力軸10は各副軸14の4方向から作用するのでそれらが互いに相殺する。
各副軸14については、第3ディスク40、第4ディスク42から受ける径方向の荷重を、第1、第2サポートリング50、52が受けられるので、ベアリング4a、5aに作用する荷重を大幅に減らすことができる。
【0041】
すなわち、入力軸10と副軸14の中心間距離は関連する部材の寸法精度や剛性、熱膨張などに左右されるが、サポートリング50の内面50aは寸法精度を確保しやすいので、上記した第3ディスク40、第4ディスク42から受ける径方向の荷重を受けるのに適している。
また、第1プレート4、第2プレート5を熱膨張係数の大きな材料で作成することで、特に温度が上昇した状態においてベアリング4a、5aに作用する荷重を減らし、第1、第2サポートリング50、52が受け持つ比率を高めて、ベアリング4a、5aのロスを減らすことができる。
【0042】
また、入力軸10と出力軸12の回転方向が同一であるとともに、両者間にスラストが作用するベアリングがないので、この面でもロスがない。
したがって、動力伝達に伴うスラストによる各部位のベアリングの回転ロスを大幅に減らして、従来例より動力伝達効率を向上することが可能である。
【0043】
そして、上記の説明では4個の各副軸14から駆動歯車48を介して出力軸12へ伝達すると説明したが、必ずしも全ての副軸14に駆動歯車48を設ける必要はない。
すなわち、サポートリング50は4個の副軸14と接しており、トルクの伝達が可能と言える。したがって、例えば4個の副軸14のうち対向する2個のみに駆動歯車48を設け、他の2個の副軸14のトルクはサポートリング50を介して駆動歯車48を備えた2個の副軸14に伝達して、その2個の駆動歯車48から出力軸12に伝達することができる。
さらに、第1、第2ステーター28、38には、スラストに起因する力は一切作用しないので、これらを頑丈に作る必要がなく、軽量かつ低コストで作ることができるのもメリットである。
【実施例3】
【0047】
次に、本発明の実施例3の無段変速機につき説明する。
図7は、本発明の実施例3に係る無段変速機の部分断面図であって、
図2におけるL−Lに沿った
図1に相当する部分断面を表している。
ここでは、実施例1と異なる部分を中心に説明し、実施例1と実質的に同じ部分については、同じ符号を付しそれらの説明を省略する。
【0048】
実施例3における実施例1との違いは、速度比を変化させる制御方法である。
すなわち、制御アーム28fとガイドスリーブ16および第1ステーター28の間に遊星歯車70を設けたことである。
具体的には、制御軸28cにサンギヤ28nが形成してあり、第1ステーター28と連結したリングギヤ70aとサンギヤ28nの間に、キャリア72に回転自在に支持された複数のピニオン74が設けてある。
キャリア72には駆動歯車76が一体に形成されており、これと噛み合った第1制御歯車78aがこれと一体の第2制御歯車78bとともに第1ステーター28に回転自在に支持されている。
一方、ガイドスリーブ16には歯車16cが形成され、第2制御歯車78bと噛み合っている。
その他の構成は、実施例1と同様である。
【0049】
続いて、実施例3の作用を説明する。上記したように実施例1との違いは速度比の制御のみであり、動力伝達の説明は省略する。
速度比の制御は以下のように行う。
すなわち、制御アーム28fを操作して制御軸28cを回転させると、サンギヤ28nで駆動し、リングギヤ70aが固定されて、キャリア72が出力する形態であり、制御軸28cの回転は遊星歯車70の作用で減速されることになる。
減速されたキャリア72と一体の駆動歯車76が、第1制御歯車78aと第2制御歯車78bを介してガイドスリーブ16と一体の歯車16cを回転させる。
【0050】
そして、これとともに第1ステーター28にも反力トルクが作用する。すなわち、第1制御歯車78aと第2制御歯車78bの歯数も関連するが、トータルで制御軸28cはガイドスリーブ16を減速駆動する。そのため、第1ステーター28に減速駆動に伴う反力トルクが作用する。
この第1ステーター28に作用する反力トルクにより、第1ステーター28が僅かに回転すると、実施例1で説明したのと同様に第1ボール軸22および第2ボール軸32が傾いて(
図2を参照)、その中心線が入力軸10の中心と副軸14の中心を結んだ線から外れる。
【0051】
これにより、トルク伝達により第1ボール軸22および第2ボール軸32が傾転して、同時にガイドスリーブ16が回転するとともに速度比が変化する。
所望の速度比に達したところで制御アーム28fへの操作力を減らすと、速度比の変化が止まり定常状態になる。
実施例1と異なるのは、ガイドスリーブ16の回転とともに制御アーム28fの回転方向の位置が変化することである。
したがって、手動で制御アーム28fを操作する場合、速度比の変化を制御アーム28fの移動量で感知することができるというメリットがある。
【0052】
以上説明したように、本発明の各実施例に係る無段変速機は、入力軸10と副軸14との間に第1ボール20と第2ボール30とを対にして設け、入力軸10側の第1ディスク40、第2ディスク42と、副軸14側の第3ディスク44、第4ディスク46とで4方から挟み、これらの4個のディスク40、42、44、46から受けるスラストを第1ボール20と第2ボール30との接点で相殺するようにしたため、入力軸10と副軸14を支持するベアリングにスラストが作用しないのが特徴である。
【0053】
また、サポートリング50により、複数の副軸14間の径方向の荷重を相殺することも可能であり、いずれも動力伝達効率の向上に貢献するというメリットがある。