特開2017-36836(P2017-36836A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017036836-拡張制御ホース 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-36836(P2017-36836A)
(43)【公開日】2017年2月16日
(54)【発明の名称】拡張制御ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/10 20060101AFI20170127BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20170127BHJP
【FI】
   F16L11/10 B
   B32B1/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-180247(P2016-180247)
(22)【出願日】2016年9月15日
(62)【分割の表示】特願2013-76822(P2013-76822)の分割
【原出願日】2009年2月20日
(31)【優先権主張番号】12/037,626
(32)【優先日】2008年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,アラン シー.
(72)【発明者】
【氏名】エヌジー,アレクサンドラ メイ
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111BA24
3H111CB01
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK48B
4F100AK48C
4F100AT00A
4F100AT00D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100DA11
4F100DG11B
4F100DG11C
4F100JK02
4F100JK08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液圧システムで圧力変動を平滑化するように構成され、内側チューブ、繊維補強材及び外側被覆を有する拡張ホースを提供する。
【解決手段】補強材が複数のヤーンを含み、そのヤーンが順々に、第1の繊維材料種類の複数のフィラメント及び第2の繊維材料種類の複数のフィラメントを有し、第1の繊維種類が少なくとも約4%の伸びで第2の繊維種類より高い伸びを有する。拡張ホースは、接続具、連結具、ブラケット、ホースクランプ又はその他のホースを含む組立品の一部であって良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側チューブと、
繊維補強材を含む第1、第2編組層と、
外側被覆とを備え、
前記繊維補強材にナイロンヤーンおよびポリエステルヤーンが含まれる
ことを特徴とする拡張ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してパワーステアリング用途に適した高圧拡張制御ホースに関し、特に、ナイロン及びポリエステルの両方のフィラメントを備えた繊維補強層を有する拡張ホースに関し、具体的には、ナイロンの第1の編組補強層と、ポリエステルの第2の編組補強層とを備える拡張ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
拡張ホースは、例えば、液圧システム、パワーステアリングシステム、又は同等物のように、高圧流体輸送システムや流体動力システムにおいて使用される。圧力振動がホースに作用される斯様な動的アプリケーションにおいて、制御された又は所定の量の容積拡張を有する拡張ホースは、圧力変動を平滑化し、振動を減衰させ、ノイズを減少させ、或いは他の方法で圧力パルスに対するシステム応答を改善するのに有用である。容積拡張は、高圧流体が供給されたときのホースの内部容量の変化に言及する。拡張制御は、所定の内部圧力で所定量の容積拡張を示すように設計されたホースに言及する。斯様なホースは、一般的に“拡張ホース(expansion hose)”と言及される。拡張ホースに使用されても良い1つの分類体系は、cc/mで特定されるホースのユニット長さ当たりの容積拡張に基づく。SAEインターナショナルのSAE J2050によって示される標準は、9.85mmの内径(“ID”)を有するホースにおいて、内部圧力9.0MPaで10〜46cc/mの範囲の容積拡張を有する、パワーステアリング圧力ホース用途のための拡張ホースを記載する。乗物製造業者によって示される他の仕様は、高拡張パワーステアリングホースに、約10mmのIDにおいて、9.0MPaで27〜40cc/mの容積拡張を有することを要求する。このように、拡張ホースは、多少任意で低拡張ホース又は高拡張ホースにさらに分類されても良い。低拡張ホースは、所定の最大動作圧力で、約13%〜約35%の相対容積拡張を有しても良い。高拡張ホースは、所定の最大動作圧力で、約35%より大きい容積拡張を有しても良い。
【0003】
拡張ホースは概して、最大動作圧力の約4倍の破裂圧力を有するように設計される。高破裂圧力は概して、高強度のワイヤ、繊維又はヤーンの補強層を使用することによって得られる。しかし、高破裂圧力及び高容積拡張は、相反する目的であろう。
【0004】
拡張ホースが繰り返し高圧パルスのような動的条件下にさらされるとき、耐疲労性も要求される。例えば、SAE J2050は、設計動作圧力10.5MPaにおける100%ピーク圧力サイクル200,000の最低性能を要求する。残念ながら、拡張ホースにおける要求が、概してより高い圧力、温度及び耐疲労性に向かっていくとき、ある程度の最小破裂圧力、ある程度の動作圧力における所定の容積拡張、及び高い耐衝撃疲労性を有するという3つの目的は、相反することが見出される。単純に動作圧力を高めることは、容積拡張を増加させるとともに疲労寿命を短くする。補強材の量を増加させることは、破裂圧力を増加することができるが、同時に容積拡張を減少させる。編組角度又はスパイラル角度のような補強材のパラメータは、容積拡張を若干制御するために使用され得るが、通常の最適設定からのずれは、長さ安定性のようなホース性能の他の側面にも悪影響を引き起こす。
【0005】
米国特許第5172729号明細書は、外側圧力ホースに対して同軸的に広がる、内側可撓性中空本体を有する拡張ホースの一例を開示する。斯様な二重ホース設計は複雑である。
【0006】
米国特許第7063181号明細書は、例えばナイロンのような材料が編組され、螺旋にされ又は織られた形状にある2つのチューブ状の補強層によって被覆された、多層内側コアを有するパワーステアリングホースを開示する。ホースの拡張は、ヤーンの伸長やそれに適用される角度を通じて制御されることが報告されているが、その例は提供されていない。
【0007】
米国特許第5660210号明細書は、10%破断伸びを有するポリエステルスレッド(thread)の下側層、及びポリエステル又はポリビニルアルコールスレッドの上側層を含む、少なくとも2つの補強スレッド層を有する補強ホースを開示する。結果物であるホースは、優れた耐疲労性を有するが、非常に小さい容積拡張を有することが報告されている。米国特許第5660210号明細書は、2つの特徴、すなわち耐疲労性及び容積拡張を、同時に満足させる補強スレッドがなかったことを教示する。2つの層の材料が変更させられたときでも、これら2つの相反する特徴を満足に調整する構造は未だにない。
【0008】
米国特許第6807988号明細書は、少なくとも第1及び第2の繊維の第1及び第2の補強層を有し、かつ、2つの層がフィラメントの一部のみを濡らす接着剤によって共に接着される熱可塑性補強ホース構造を開示する。径方向拡張及び軸方向伸長は、捩り撚り効果を平衡させるために2つ1組で反対に巻かれた、螺旋層のピッチ角度によって影響されるといわれている。
【0009】
米国特許第5316046号明細書は、有機繊維の1以上の補強層を有するパワーステアリングホースを開示する。ホースは、9MPaにおいて20〜26cc/m(91kgf/cm2において6〜8cc/フィート)の容積拡張を示し、これは約35%の容積拡張に対応する。
【0010】
米国特許第5077108号明細書は、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、綿、ビニロン、アラミド、及び同等物から選択される材料の編組形状である繊維補強材を含むホースのための複合積層体を開示する。
【0011】
米国特許第6677018号明細書は、スチールワイヤ補強層及び芳香族ポリアミドベースの有機繊維補強層を含む、複数の補強層を有する高圧ホースを開示する。
【0012】
米国特許第7143789号明細書は、好ましくは同一、又は少なくともそれらの弾性率が同様である奇数の補強プライ層を有する高圧ホースを開示する。
【0013】
米国特許第3383258号明細書は、ポリエステルフィラメントを備え、かつ編組されたヤーンの少なくとも1つの層を有する高圧ホースを開示する。
【0014】
米国特許第3605818号明細書は、合成又は天然フィラメントを備える無撚りマルチフィラメントヤーンのバインダー含浸されたリボンの少なくとも1つの編組層を有する高圧ホースを開示する。好ましい材料は、溶融ブレンドされたナイロンとポリエステルの複合フィラメントである。
【0015】
特開平2−147328号公報は、ポリエステルコアとナイロンシース(sheath)のコア・シース複合体繊維を備える補強樹脂ホースのための心線を開示する。しかしながら、当分野では異なる性能の2つの繊維をブレンドすることは、概してブレンド比に対する一次関係には従わず、結果として得られる性能は、比例未満である(ウエリントンシアーズ産業繊維ハンドブック[Wellington Sears Handbook of Industrial Textiles]§292(1963年)参照)。
【0016】
米国特許第4898212号明細書は、約7〜11g/デニールの強力、及び約9%〜約17%の破断伸びを有する第2の繊維(好ましくはポリエステル)に対して、交互に隣接するような関係で配置され、かつ約12〜約25g/デニールの強力、及び約2%〜約8%の破断伸びを有する第1の繊維(芳香族ポリアミド)を備える、螺旋状に反対に巻かれた一対の補強層を有する可撓性補強ホースを開示する。ケブラーの第1の編組層、及びポリエステルの第2の編組層を有するホースの一例は、凡庸な耐曲げ疲労性を示した。開示されたホースの容積拡張は、非常に低く拡張ホースとは考えられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、例えばパワーステアリングホースのような高圧力用途に、所定の容積拡張及び優れた耐圧力衝撃疲労性を提供する拡張ホースを対象とする。特に、本発明は、従来のホースより高い容積拡張及び/又は動作圧力において、改良された耐衝撃疲労性及び破裂圧力を有する拡張ホースに関する。換言すると、本発明は、2つの相反する特性、すなわち耐衝撃疲労性及び容積拡張制御を同時に最適化する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、内側チューブ、繊維補強材及び外側被覆を有する拡張ホースを対象とする。繊維補強材は、順に第1の繊維材料種類と第2の繊維材料種類のフィラメントを含む複数のヤーンを含む。一実施形態において、第1の繊維種類は、第2の繊維種類よりも少なくとも約4%伸びが高い破断伸びを有する。他の実施形態において、第1の繊維種類はナイロンであって、第2の繊維種類はポリエステルである。
【0019】
繊維補強材は、各々が各繊維種類である2つの分離した繊維層として存在して良い。これら層は、平衡にされた補強層であって、第1の繊維種類のヤーンの層は、第2の繊維種類のヤーンの層の内側にあって良い。繊維層は、編組され、巻かれ又は螺旋状にされた、巻き方向が反対である一対であって良い。
【0020】
拡張ホースは、2つの補強層の間にさらに摩擦層を含んでいて良い。繊維補強材は、接着処理によって実質的に含浸されていて良い。
【0021】
他の実施形態では、拡張ホースの繊維補強材は、編組され、螺旋状にされ又は巻かれたヤーンの平衡にされた補強層であって良く、そのとき、ヤーンは第1及び第2の繊維材料種類のブレンドである。1つより多い斯様な層が使用されても良い。
【0022】
他の実施形態では、拡張ホースの繊維補強材は、編組され、螺旋状にされ又は巻かれたヤーンの平衡にされた補強層であって良く、そのとき、2種類の繊維材料は2つの各種類のヤーンとして存在し、2種類のヤーンは平衡にされた補強層において交互形式で配置される。2種類の繊維材料は、ナイロンとポリエステルであって良い。
【0023】
本発明の拡張ホースの一実施形態は、約1000psi〜約3000psiの範囲の圧力で、13%〜約35%の範囲の容積拡張を有していて良い。このようにして、拡張ホースは、液圧システムにおいて圧力変動を減少し、又は平滑化するのに適したものとなって良い。
【0024】
本発明は、上記の拡張ホースと、少なくとも1つの接続具(fitting)、連結具(coupling)、ブラケット(bracket)、又は他のホースを含む組立品も対象とする。
【0025】
下記の発明の詳細な説明によってさらに良く理解させるために、前記は、本発明の特徴及び技術的な優位点をむしろ広く概説したものである。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明の付加的な特徴及び優位点は、この後述べられる。開示される概念及び特定の実施形態は、本発明と同じ目的を達成するために、他の構造を改変又は設計する根拠として直ちに使用されて良いことを、当分野の当業者によって理解されるに違いない。斯様な等価の構成は、添付の特許請求の範囲に記載された発明の精神及び範囲から逸脱しないことを、当業者によって直ちに理解されるに違いない。構成及び操作方法の両方に関し、更なる目的及び優位点とともに、本発明の特徴であると信じられる新規の特徴は、添付図面との関係が考慮されたとき、下記の説明からより良好に理解される。しかしながら、各図面は、単に説示及び説明を目的として提供されるものであって、本発明の限定を定義するものとして意図されたものでないことは、明らかに理解される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
添付図面は、明細書に組み入れられかつその一部を形成し、同等の符号が同等の部材を示し、かつ本発明の実施形態を示し、本記載とともに本発明の本質を説明するために提供される。図面において:
【0027】
図1】本発明に従って構成された拡張ホースの一部破断斜視図である。
【0028】
図2】本発明の一実施形態に従ったホース組立品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に従って構成された拡張ホースが示される。拡張ホース10は、内側チューブ11、摩擦層13によって分離された編組層12、14を備える補強材、及び補強層14上に位置される外側被覆15を備える。チューブ11は、例えばエラストマー又はプラスチックのような1以上の可撓性材料の1以上の層を備えていて良い。概して補強材は、1以上の異なる繊維層を備えていて良く、それら層は、平衡にされた編組層、又は平衡にされた螺旋層であって良く、かつ2種類の繊維を備える。平衡にされたは、ホース周りの各方向において、等しい数の巻かれ、螺旋状にされ、又は編組された同等のヤーンを有することを意味する。それはさらに、反対巻き方向のヤーンが事実上、等しいが反対の巻き角度を有することを意味する。反対に巻かれたヤーンが、半径方向において同じ位置、すなわち同じ層にない場合、半径方向位置が異なることを補償するために、僅かに異なる巻き角度が使用されて良い。平衡にすることは、ホースがねじれようとする傾向を最小化する。図1の実施形態は、内側チューブ11上で編組された、2つの編組補強層12、14を示す。チューブの内側表面材料は、流体及びホース内部が曝露される環境条件に耐久するように選択された、1以上の適当な可撓性エラストマー又はプラスチック材料で形成されて良い。被覆15は、外部接触環境に耐久するように設計された、1以上の適当な可撓性エラストマー又はプラスチック材料で形成されて良い。被覆15は、耐摩耗性又は他の特別な特性のための繊維被覆部材を含んでいて良い。摩擦層13は、2つの繊維補強層を共に結合又は接着するように設計された、1以上の適当な可撓性エラストマー又はプラスチック材料で形成されて良い。チューブ11、摩擦層13及び被覆15は、同一の材料又は異なる材料で形成されて良い。チューブ10は、例えば型成形、巻き付け、加硫及び/又は押し出しのようなステップを含む方法によって成形されて良い。
【0030】
本発明に従うと、補強材は2つの異なる種類の合成ポリマーフィラメントの繊維を備える。2種類の合成繊維は、ポリアミド、ポリエステル、芳香族ポリアミドすなわちアラミド、レーヨン、アクリル、アセテート、ポリビニルアルコール、ポリアリーレンサルファイド、ポリオレフィン及び同等物から選択されて良い。好ましくは、一方の繊維種類は、他のものより破断伸びが高いものである。2つの繊維種類の伸びの差は、パーセント伸びにおいて、4%以上であって良い。一実施形態において、内側繊維層12は、例えばナイロン、アクリル及び同等物のような相対的に高い伸び材料の繊維を備える。好ましい内側繊維層12のための高い伸び材料は、ナイロンである。好ましいナイロンは、ナイロン66である。同じ実施形態において、外側繊維層14は、例えばアラミド、ポリエステル、レーヨン、ポリフェニレンサルファイド(“PPS”)、ポリエチレンナフタレート(“PEN”)、ポリベンゾビスチアゾール(“PBT”)、超高分子量ポリエチレン(“UHMWPE”)、及び同等物のように、相対的に高いモジュラスで低い伸び材料の繊維を備える。好ましい低い伸び材料は、ポリエステルである。好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(“PET”)である。このように一実施形態では、内側層12はナイロンフィラメントを備えるとともに、外側層14はポリエステルフィラメントを備える。代替的に、内側繊維層12は低い伸び繊維から構成され、外側繊維層14は高い伸び繊維から構成されても良い。
【0031】
本発明に従うと、拡張ホース補強材としての高い伸びと低い伸び繊維の組み合わせは、いずれか一方の材料で達成されるより良好な性能特性を提供することが見出された。性能改良は、繊維特性に基づく一次関係によって予測されるよりも顕著であろう。例えば、ナイロンとポリエステル補強材の組み合わせは、例えばパワーステアリング用途において要求されるように、高破裂圧力、高い耐圧力衝撃疲労性及び相対的に高い容積拡張を要求する拡張ホースにとって優位である。本発明はさらに、特定の用途のためにホース拡張を調整し、液圧システムにおける共振を減少させ、液圧又は非液圧システムにおけるノイズを減少させる改良された方法を提供する。例えば米国特許第5172729、6155378号明細書に記載されるように、ケーブル又は他の複合装置を調整することを必要とせずに、これら優位点は成立して、より単純なシステム及び/又はコスト削減をもたらす。
【0032】
本発明の一実施形態において、補強層12、14は、例えば、規則的な交互の配列で編組された、いくつかのナイロンヤーンといくつかのポリエステルヤーンのように、いくつかの高い伸びヤーンといくつかの低い伸びヤーンを含む単一の編組層に一体化されていて良い。例えば、複数キャリア編組機における1つおきのブレーダーキャリアにポリエステルヤーンが適用され、他のキャリアにナイロンヤーンが適用され得る。キャリアがマルチ−エンド機能(multi-end capability)を有する場合、編組パターンは、多数のナイロンエンドが、他の多数のポリエステルエンドと交互になり得る。または他の例として、1つおきのヤーンのエンドが、ナイロンヤーンと交互にあるポリエステルヤーンになり得る。ホースは、拡張ホース用途の設計要求に従って、2以上の同様の補強ヤーン層を有していても良い。補強層は、摩擦層又は接着層によって分離されていても良い。
【0033】
更なる他の実施形態では、補強層12、14は、例えばナイロンフィラメントとポリエステルフィラメントのブレンドのように、高い伸びフィラメント又は繊維と、低い伸びフィラメント又は繊維のブレンドを備えるブレンドヤーンの単一編組層に一体化されて良い。ブレンドは好ましくは、2つのステープル繊維混合のヤーンスパンであり、または2つの材料が共に撚られたフィラメント諸撚りヤーン(filament plied yarn)である。好ましくはブレンドヤーンは、コア・シース構造ではない。好ましくは、各フィラメントは、高い伸び材料又は低い伸び材料、すなわちナイロン又はポリエステルから構成され、2つの材料の分子的ブレンドではない。ホースは、ホース用途の設計要求に従って、2以上の同様の層を有していて良い。
【0034】
ナイロンは、例えばポリヘキサメチレンジアミンアジパミドであるナイロン66、及びポリカプロラクタムであるナイロン6を含む、ポリマー鎖の主要部分として繰り返しのアミド基を有するいかなる長鎖合成ポリアミドに言及する。高強力ポリアミド繊維又は標準強力繊維は、本発明の実施形態において使用されて良い。代表的なナイロン繊維は、例えばデュポン(DuPont)、アコーディス(Acordis)、ソルーシア(Solutia)のような会社によって販売される。有用なナイロンヤーン又はスレッドは、約13%〜約27%、好ましくは少なくとも17%、又は約19%〜約21%の破断伸びを示していて良い。有用なナイロンヤーンは500〜5000デニールの範囲にあって良く、及び/又は、選択的に約1〜5回/インチの撚りで、より小さい多数のスレッドから撚られても良い。
【0035】
ポリエステルは、例えばポリエチレンテレフタレートすなわちPETを含む、ポリマー鎖の主要部分として繰り返しのアミド基を有する、少なくとも約85重量%の、2価アルコールとテレフタル酸のエステルによって構成されるいかなる長鎖合成ポリマーに言及する。高強力又は標準強力ポリエステル繊維が使用されて良い。代表的なポリエステル繊維は、例えばデュポン、アコーディス、コーサ(KoSa)のような会社によって販売される。有用なポリエステルヤーン又はスレッドは、約10%〜約19%、又は約11%〜約19%、又は約15%の破断伸びを示していて良い。有用なポリエステルヤーンは500〜5000デニールの範囲にあって良く、及び/又は、選択的に約1〜5回/インチの撚りで、より小さい多数のスレッドから撚られても良い。
【0036】
このように、本発明の一実施形態では、補強材として、高い伸びすなわち約17%より大きい伸びを有するヤーンと、それより低い伸びのヤーンであって、高い伸びのヤーンより少なくとも約4%小さい伸びを有するヤーンとを選択することによって、所定の容積拡張及び優れた疲労寿命が、拡張ホースにおいて達成され得る。他の実施形態では、2つのヤーン両方は、9%又は10%より大きい伸びを有するとともに、少なくとも約4%伸びの伸び差を有していて良い。このようにして、本発明に従う拡張ホースは、6.9MPa(1000psi)から17.2MPa(2500psi)まで又は20.7MPa(3000psi)までの範囲にある所定の動作圧力において、およそ13%〜35%の範囲にある容積拡張を示すように形成されて良い。
【0037】
ヤーンは、チューブ、摩擦層又は被覆に対する接着性を改良するために、及び/又は工程や操作性を改良するために接着処理されて良い。レゾルシノールホルムアルデヒドラテックス(“RFL”)、エポキシ、イソシアネート、ウレタン及び同等物を含む、当分野で知られている種々の処理が有用であろう。好ましい実施形態において、ヤーンは、接着処理によって、ヤーンが結果として実質的に完全に含浸されるような方法で処理される。ヤーンは、ゴム糊又はRFLをコートしかつ乾燥することによって、接着するために処理されて良い。含浸は一般的に、十分に低粘度の接着処理剤を有するディップタンク中にヤーンを走行させ、かつ、ディップタンク内部及び/又は外部で、ヤーンに処理剤が作用されるように、1以上のダイ又はローラが使用されることによって達成され得る。ホースの加硫と同時に、接着剤は熱によって反応させられて良く、これにより、ヤーン又はフィラメントが、互いに及び/又はホースの1以上のゴム又はプラスチック層に強力に接着される。
【0038】
繊維補強層は、編組され又は螺旋に巻かれていて良い。編組層は、各方向においてチューブ周りに巻かれ、かつ、オーバー/アンダーが繰り返される方法で置かれた一定数のエンドを含む。1つの有用な配置は、2オーバー2アンダーパターンで編組された4エンドである。他の有用な編組パターンは、3オーバー3アンダーである。それでもなお、いかなる所望の編組パターン及び/又はエンド数が使用されても良い。螺旋角度は、ホースの長手軸に対して約54°44′のいわゆる“中立角度(neutral angle)”若しくは“ロック角度(lock angle)”、又はこれらに近似したものであって良い。そして、螺旋巻きが使用される場合、層は好ましくは、等しい数のヤーン及び等しいピッチであるが、平衡のために反対の巻き方向である2つの層を含む。反対方向で螺旋にされた層は、それらの間に摩擦層又は接着層を含んで良い。螺旋又は編組構造のいずれの場合も、螺旋角度は、約40〜60°の範囲にあって良く、好ましくは47〜60°の範囲又は約54°である。
【0039】
典型的な編組工程において各ブレーダーデッキは、完成される層のために、要求される数のヤーンキャリア又はスピンドルを有することが可能である。キャリアの半分は時計回りに、半分は反時計回りに進行することが可能である。各キャリアは、シングル−又はマルチ−エンドヤーンを包含するコップ又はスプールを有しても良い。エンド数、ヤーンの径又は体積、及び編組密度は、所望レベルの被覆率を提供するために選択されても良い。50%〜約100%、又は約60%〜約95%の範囲の被覆率が優位であろう。概して、接着性のために良好なゴム含浸ができる十分な開口を可能にしつつ、可能な限り高い編組密度であることが望ましい。
【0040】
チューブ、摩擦層及び/又は被覆に有用なゴム材料は、クロロスルフォン化ポリエチレン(“CSM”)、塩素化ポリエチレンエラストマー(“CPE”)、ニトリル、水素化ニトリル、フロオロエラストマー、エチレン−α−オレフィンエラストマー(例えば、EPM,EPDM及び同等物)及び同等物を含む。ゴム材料は、例えばフィラー、短繊維、可塑剤、酸化防止剤、オゾン亀裂防止剤、安定剤、加工助剤、エキステンダー、定着剤、助剤、加硫剤、硬化剤、及び同等物のように、当分野で周知である種々の原料が含まれるように配合されて良い。プラスチック材料又は熱可塑性エラストマーは、同様に配合され、及び/又はゴムの代わりに又はゴム材料に加えて、チューブ、摩擦層及び/又は被覆に使用されて良い。
【0041】
本発明に従うと、ホースを製造する公知の方法は概ね使用されて良い。チューブは押し出され、又はマンドレル上に積み重ねられて良い。補強材は、上記したようにチューブに取り付けられて良い。摩擦層は、必要に応じて補強材の上に巻かれ、積層され又は押し出されて良い。同様にゴムの被覆層は、最後の層として巻かれ、積層され又は押し出されて良い。代替的に又は加えて、繊維被覆が、ホースの上に編組され、巻かれ又は螺旋状にされて良い。繊維被覆材料は限定されないが、好ましくは、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、綿、アラミド、又はいかなる他の適当な繊維、又はこれらのブレンドを備えて良いスパンヤーンで構成されて良い。
【実施例】
【0042】
パワーステアリング用の拡張ホースが、本発明の一実施形態に従って作製され、ここでは実施例ホースとして言及される。本拡張ホースの性能ターゲットは、62MPa(9000psi)の最小破裂圧力、15.5MPa(2250psi)における22〜30%の容積拡張を含んでいた。
【0043】
3つの比較ホースは、従来の方法に従って作製され、ここでは比較例A、B及びCとして言及される。例A及びB及び実施例ホースは、同一の設備で作製され、かつ約1.5mm(0.060インチ)厚さの塩素化ポリエチレン(“CPE”)の同一の内側チューブと、CPEゴムの同一の外側被覆を有していた。各ホースの最終的な外径は、約23.5mm(0.925インチ)であって、内径は約12.7mm(0.5インチ)であった。比較例Cは、CPEの代わりにクロロスルフォン化ポリエチレン(“CSM”)ゴムを使用し、かつゴムの内側チューブ層が他の比較例に比べて若干厚かった。全てのホースは、24キャリア、2オーバー2アンダーパターンで、中立角度で又は近似し、4エンドを有する、編組されたスパンポリエステルヤーン(8’s/3)の外側繊維被覆を含んでいた。外側繊維被覆は、環境条件に耐久するために意図されたが、実質的な機械的強度を提供しなかった。編組補強層は全て、24キャリアのそれぞれにおいて4エンドで、約54°のおよそ中立角度で2オーバー2アンダーパターンで製造された、平衡にされた編組であった。補強ヤーンは下記でさらに詳しく述べられる。2つの編組された補強層の間に、0.25〜0.5mm(10〜20ミル)厚さで、チューブ及び被覆と同じ組成物から成る摩擦層があった。
【0044】
比較例Aのホースは、ナイロン66ヤーン(840−3デニールヤーン、4エンド編組)の2つの編組層によって作製された。比較例Bのホースは、ポリエステルヤーン(1500/2デニールヤーン、4エンド編組)の2つの編組層によって作製された。ヤーンの引張強さ及び伸びは、表1に示される。比較例Cは比較例Aと同様に作製されたが、比較例Aに比べて容積拡張を減少させるために、2mm(0.080インチ)厚さのより厚い内側層を有していた。本発明の実施例は、ナイロン66ヤーン(840−2デニールヤーン、4エンド編組)の1つの編組層、続いてポリエステルヤーン(1500/2デニールヤーン、4エンド編組)の1つの編組層によって作製された。ヤーンは全て、実質的に完全にヤーンに含浸したRFLによって接着処理されていた。
【0045】
ホースは容積拡張試験が行われ、15.5MPa(2250psi)の内部圧力で、かつSAE J2050の手順に従って容積拡張%が測定された。ホースはさらに、ASTM D380“ゴムホース用標準試験方法”の手順に従って、破裂圧力試験が行われ、2回試験の平均として報告された。ホースはさらに、15.5MPa(2250psi)の衝撃圧力及び135℃(275°F)の温度下で、SAE J343に従って衝撃寿命試験が行われた。平均衝撃寿命は、3回試験の平均に基づいて報告される。さらにホースの長さ変化%が、SAE J343の試験手順及びSAE J517の測定手順に従って測定された。
【0046】
【表1】
【0047】
ナイロン補強材のみ使用した比較例Aは、所望の特性ターゲットの組み合わせに合致しなかった。所望の破裂圧力評価を達成するために、十分なナイロンヤーンを使用したことによって、非常に高い容積拡張(約40%)がもたらされた。衝撃試験条件において、ホースは平均258,134サイクルのみで破損した。比較例Cは、同じナイロン補強層において、容積拡張を低下させるように調整するために、他の変数、すなわち内側チューブ厚さを利用したことを示す。それでもなお比較例Cは、277,399サイクルの衝撃試験寿命を示した。
【0048】
ポリエステル補強材のみを使用した比較例Bは、所望の特性ターゲットの組み合わせに合致しなかった。所望の破裂圧力評価を達成するために、十分なポリエステルヤーンを使用したことによって、非常に低い容積拡張がもたらされた。衝撃試験結果は十分であったが、低い容積拡張は、特定のパワーステアリング用途、例えばある程度のノイズ限界、ダンピング要求及び同等のものを要する用途にとっては十分でなかった。
【0049】
一方、ナイロン補強層と、ポリエステル補強層を使用した実施例ホースは、特性ターゲットに合致し又は上回った。特に、衝撃試験寿命は予想を遥かに上回り、1,882,789サイクルの平均寿命を示した。実施例は、より少ない合計補強ヤーンを有していたにもかかわらず、比較例Aと比較例Bの間くらいで機能する代わりに、衝撃寿命及び破裂圧力の両方が、比較例よりも良好であることを示した。
【0050】
各ホースの長さ変化は正常限界内であった。
【0051】
本発明はさらに、本発明の一実施形態に従った拡張ホースと、1以上の接続具、連結具、取付具(mount)、その他ホース及び同等物とを有する拡張ホース組立品に関する。本発明の一実施形態に従った拡張ホース組立品は、図2に示される。図2を参照すると、拡張ホース組立品20は、拡張ホース10と、リターンホース21とを有する。拡張ホース10の2つの端部は、高圧接続具24、26を有する。接続具24は、ホースへのクリンプ接続と、液圧システムの一部であっても良い他のネジ式液圧接続具に、取り付けられるためのスイベルナットとを有する。接続具26は、同様のクリンプ接続、ナット及びエルボを含む。リターンホース21の一方の端部は、バンドクランプ又は同等物(不図示であるが、場合により拡張ホース組立品の一部)によって、ニップル若しくは有刺(barbed)接続具、又は同等物に取り付けるための開口である。リターンホース21の他方の端部は、同様にネジ式スイベルナットとエルボを有するクリンプ接続具である接続具28を有する。組立品20はさらに、所望の平行関係で2つのホースを共に保持するバンド接続具22を有する。バンド接続具22は、本実施形態に示されるように、バンド接続具に一体的に成型された取付ブラケット29を含む。
【0052】
本発明はさらに、改良された性能を有する拡張ホースを製造する方法に関する。一実施形態において、本方法は、(1)高い伸びの1又は複数の繊維補強層を有するホース設計を取り入れるステップ;及び(2)より低い破断伸びを有する繊維を、高い伸びの繊維の一部分に置換するステップを備える。置換された低い伸びの繊維量は、置換された高い伸びの繊維量より10又は20%以下少ない。高い伸びと低い伸びの繊維の破断伸びの差は、少なくとも約4%伸びであっても良い。好ましくは高い伸び繊維は、少なくとも17%又はそれより大きい伸び、あるいは19%〜27%の伸びを有する。高い伸び繊維はナイロンであって良く、低い伸び繊維はポリエステルであって良い。このようにして、拡張ホースは、1000psi〜3000psiの範囲の圧力で、少なくとも13%の又は13%〜35%の範囲にある所定の又は特定の容積拡張を有するものから形成されて良い。
【0053】
本発明及びその優位点が詳細に述べられたが、種々の変更、置換及び代替が、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、なされ得ることが理解されるに違いない。さらに本出願の範囲は、明細書で述べられた工程、機械、製法、物の組成物、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定されることが意図されていない。当分野の当業者が本発明の開示から直ちに理解するとき、ここで述べられた実施形態に対応するものと、実質的に同一の機能を果たし、又は実質的に同一の結果を達成する、現在ある又はその後開発される工程、機械、製法、物の組成物、手段、方法又はステップは、本発明に従って使用されても良い。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内における斯様な工程、機械、製法、物の組成物、手段、方法又はステップを含むことが意図されたものである。ここで開示された発明は、ここで特に開示されないいかなる要素を欠く場合、適当に実施されても良い。
図1
図2