【課題を解決するための手段】
【0008】
図6に請求項1に記載の内循環軸対称上下段向流方式エアカーテン装置を示す。第1通風ボックス100a,第2通風ボックス100bおよび通路天板8で構成され、エアカーテン装置の吹出口幅D, 通路寸法は高さ2L,横幅Xg≦5Dとした。
図1(a)に示す平行流コアの長さX
1≒10Dであるが、平行流コアの強度が安全に維持される設計長さとして、1/2の5Dに設定した。第1通風ボックス100aと第2通風ボックス100bは同一構造物であり、長方形筐体1a,1bの内部に、案内羽根入り吹出エルボ2a,2b,整流格子3a,3b,有圧換気扇4a,4b,案内羽根入り吸込エルボ5a,5b,プレフィルタ6a,6bを順次格納し、案内羽根入り吹出エルボ2a,2bの吹出口14a,14bとプレフィルタ6a,6bを順次格納し、案内羽根入り吹出エルボ2a,2bの吹出口14a,14bとプレフィルタ6a,6bを筐体1a,1bの同一側面上に配置している。プレフィルタの詳細は(非特許文献8)および(非特許文献9)に依る。
吹出口14a,14bの高さは同一でLである。エアカーテン装置は、第1通風ボックス100aと第2通風ボックス100bとの倒立対面配置で構成されているので、上段非軸対称噴流コア幕20aと下段非軸対称噴流コア幕20bが中央水平面10を中心にした対称状態で向流する。中央水平面10上には非特許文献7に記載のケルビン・ヘルムホルツ不安定性のせん断層渦列11(
図12参照)が形成され、上段非軸対称噴流コア幕20aと下段非軸対称噴流コア幕20bを結合してせん断層渦列11を中心軸にした内部循環上下軸対称向流噴流コア幕が形成され、
図6のエアカーテン装置が構成された。上段吹出口14aと下段吹出口14bが向流対面配置の場合でも、中心軸10を軸対称にした三次元軸対称長方形吹出口と同様に、
図13に示すように実機試験により平行流エアカーテンが形成される事が実証された。
図2に示す乱流助走区間入口部では渦流を含む混合流が流入し、助走区間中に渦流が減少して助走区間出口端で渦流の無い同一方向流の平行流が形成されるので、助走区間の機能は渦流除去区間と考えることが出来る。
図4(a)に示す長方形ダクト助走区間端で形成される平行流横断面速度分布は、中心線X-Xより上段の非軸対称速度分布と、下段の非軸対称速度分布が合成されて形成された軸対称平行流の速度分布と見なすことが出来るので、
図6に示す内循環軸対称上下段向流方式エアカーテン装置は、
図7に示す非軸対称吹出口の案内羽根入り吹出エルボ2a,2bを、上下に配置した軸対称エアカーテン装置と見なすことが出来る。また、案内羽根入り吹出エルボが有する拡大流動に伴う動圧回収効果により、駆動用ファンに低圧大風量の有圧換気扇の採用が可能である。
【0009】
案内羽根入り吹出エルボ2a,2bは、特許第4884547号(特許文献1)の案内羽根入り吹出エルボであり、
図7に示すように、曲板の前後に平板を接続した案内羽根をエルボ内に配設した案内羽根入り吹出エルボで、次式に基づきm個の相似部分流路を形成し、エルボ内壁を隣接する案内羽根の曲板と同心の曲板に変形させ、n=1部分流路を流路幅が流路入口幅b
1の同心ベンド等幅流路としたことを特徴とする矩形断面で、拡大率が1<f≦5、流出口幅Wの案内羽根入り吹出エルボである。
p=h/[{f/(f-r)}
m-1]
(1式)
a
n=pr{f/(f-r)}
n
(2式)
b
n=a
n/f
(3式)
f=W
0/h
(4式)
W=W
0-(a
1-b
1)
(5式)
p:案内羽根流出端張出し長さ
h:流入口長さ
f:エルボ拡大率(f=W
0/h),
1<f≦5
m:部分流路数
a
n:n番目の部分流路出口幅(ただし、nが0の場合は内壁半径、nがmの場合は外壁半径を示す)
b
n:n番目の部分流路入口幅
W
0:基準流出口長さ
W:流出口長さ
r:部分流路縦横比(=縦寸法に対する横寸法の比=(横寸法)/(縦寸法)
r=(B
2C
1)/(A
1C
1)=(B
3C
2)/(A
2C
2)=(B
4C
3)/(A
3C
3)=(B
5C
4)/(A
4C
4)、
図7参照
図7に示すように、(1式),(2式),(3式),(4式)に基づいて設計した流入口幅がhで流出口幅が基準値W
0の案内羽根入り吹出エルボにおいて、内壁を第1案内羽根側に(a
1-b
1)だけ移動して通路幅b
1の第1部分通路を作成する。rの値はエルボ拡大率fおよび吹出し角度90°の関数で、実測値である。
【0010】
図8に
図7の案内羽根入り吹出エルボで形成される噴流流線図を示す。
図6のエアカーテン装置のファン4aで発生した回転混合気流は、
図15の整流格子3aで回転成分が除去されて吹出エルボに流入し、吹出エルボ内の各案内羽根により90°の方向変更を受けると共に、遠心力で案内羽根横方向の風速が均一化され、各部分流路の形状は相似で通路流動抵抗は同一のため、
図8に示す各案内羽根出口端14における風速は内壁および外壁部を除き各案内羽根で同一速度となる。吹き出し空気流は非対称の軸速度分布を形成するが、各速度成分のベクトル方向は略同一である。また、
図8に示す各部分流路は相似拡大流路のため案内羽根の背面に図示の相似固定渦が発生し、安定した拡大流動が形成される。
図9に
図8に示した噴流流線図の噴流幕写真を示す。この噴流写真よりエルボ拡大率fに対し、垂直噴流を示す部分流路縦横比rの値を求めることが出来る。写真に示す案内羽根入り吹出エルボ単独の噴流幕は、吹出部断面が軸対称でないので平行流コア幕は形成されず、混合流コア幕が形成される。前述のごとく、吹き出し空気流は非対称の軸速度分布を形成するが、各速度成分のベクトル方向は略同一である。
【0011】
案内羽根入り吸込エルボ5a,5bは、特許第2948199号 (特許文献2)の案内羽根入り吸込エルボであり、
図10(a)に示すように、曲板とこれに接続する平板からなる1枚以上の案内羽根により、次式に基づいて、互いに相似形の複数の部分流路に区分されたことを特徴とする案内羽根入り吸込エルボである。
p=h/[{f/(f-r)}
m-1]
(6式)
a
n=pr{f/(f-r)}
n
(7式)
b
n=a
n/f
(8式)
ここに
p:流入口張出し長さ
W:吸込口長さ
h:流出口長さ
f:エルボ縮小率(f=W/h,1<f≦5)
m:部分流路数(m≧2)
a
n:n番目の部分流路入口幅(ただし、a
0はエルボ内壁の曲率半径を示し、a
mはエルボ外壁の曲率半径を示す)
b
n:n番目の部分流路出口幅
r:部分流路縦横比(=縦寸法に対する横寸法の比=(横寸法)/(縦寸法)
r:部分流路縦横比(=縦寸法に対する横寸法の比=(横寸法)/(縦寸法)
r=(B
2C
1)/(A
1C
1)=(B
3C
2)/(A
2C
2)=(B
4C
3)/(A
3C
3)=(B
5C
4)/(A
4C
4)、
図10参照
(6式), (7式), (8式)で得られる吸込エルボは、案内羽根入り吹出エルボの計算式(1式), (2式), (3式)で得られる案内羽根入りエルボと同一形状のエルボである。
【0012】
図10(b)に、の縮小率f=5.0、吸込口長さ1,000mmの吸込エルボ吸込速度分布を示す。本吸込エルボは優れた均一吸込特性を有しており、平行流エアカーテン装置の有圧換気扇4aおよび4bの吸込部に吸込エルボ5aおよび5bを設置して、吸込プレフィルタ6aおよび6b全体の均一吸込を実現し、プレフィルタに圧力損失の小さいプレフィルタの使用が可能となり、有圧換気扇初期出口圧力P
1値の低下により長期連続運転が可能になった。
図11に、
図6に示す平行流エアカーテン装置の吸込フィルタ6a,6bの背面にそれぞれ設置した吸込エルボ5を示す。吸込エルボは吸込口フィルタ面積の約1/2を支持しながら誘引し、残りの吸込口フィルタの誘引気流はフアン4の側部吸込気流として誘引し、吸込口フィルタ全体の均一吸込みが可能になった。
【0013】
図12は中央水平面10上に形成する(非特許文献7)に記載のケルビン・ヘルムホルツ不安定性せん断層渦列11を示す。
図6に示した平行流エアカーテン装置において、上段非軸対称噴流コア幕20aと下段非軸対称噴流コア幕20bを結合して、せん断層渦列11を中心軸にした内循環上下段向流方式の合成軸対称平行流エアカーテンが形成された。上段非軸対称噴流コア幕20aと下段非軸対称噴流コア幕20bは同一平均速度で上下段対称の状態で向流しているので、
図12(b)の渦列11を構成する各渦流の大きさは同一寸法になる。
【0014】
図13に、請求項1に示した
図6のエアカーテン装置200の流速分布の測定値を示す。測定に使用したエアカーテン装置200の要目は、通路高さ2L=2,100mm,
吹出口幅D=400mm,通路横幅Xg=5D=2,000mmである。上段非軸対称噴流コア幕20aと下段非軸対称噴流コア幕20bは、上段と下段で向流するコア幕を形成しているので、流動状態の判定を容易にするために、上段コア幕の速度分布と下段コア幕の速度分布の測定値を同一方向に合わせて●点で示した。流速の測定は通路横幅Xg=2,000mmを4等分した(1),(2),(3)の3垂直線上で行った。通路の水平中央部には固定渦流のせん断層渦列11が存在するので、速度表示は無い。
図13から分かるように、流動形状は凹皿型で、(1),(2),(3)の平均流速値は何れも3.1m/sの同一数値を示し、流動状態は、流線ごとに特定速度で水平流動を保持し、一定の速度分布が平行移動する、平行流状態を示している。この測定結果により、上段非軸対称噴流コア幕20aと、下段非軸対称噴流コア幕20bが向流の場合でも軸対称平行流エアカーテンが形成される事が示された。
【0015】
さらに本試験において、
図1に示す平行流コアの噴流外縁上に発生する誘引流は、噴流コア幕の噴流外縁全面に均一に発生し、誘引速度は噴流速度3.1m/sの場合に0.2m/s均一であった。誘引流はエアカーテン通路面(高さ2100mm×横幅2000mm)の両側全面で発生し、浮遊塵の同伴取込みを行う。以上の試験結果より、
図6の内循環軸対称上下段向流方式エアカーテン装置の気流幕は
図5(b)の平行流コア幕であることが立証されたので、
図6の装置200は平行流エアカーテン装置である。
【0016】
以下に使用頻度の多い平行流エアカーテン装置設計例を示す。
図14に
図6に示す平行流エアカーテン装置200の通風ボックス100a内部の機械装置と各部の静圧および流速記号を示す。プレフィルタ6aの詳細は(非特許文献8)および(非特許文献9)による。
図15に
図14に示す機械装置内の整流格子3aおよび縮流ダクト12を示す。
整流格子3aは気流の回転成分を除去し、縮流ダクト12は吹出エルボ2aの吹出口幅Dの値を有圧換気扇口径F以下に縮小する場合に使用する。
表1および表2に平行流エアカーテン装置の設計値を示す。吹出口動圧回収値ΔP
1(16式)により有圧換気扇フリーエア風量運転が可能である。
V
2=Qa/LD
(9式)
V
2=2.0〜3.5m/s
(10式)(対人安全風速値)
f=W/h=L/F,(1<f≦5) (11式)
V
1=fV
2
(12式)
X
1=KD(1<K≦5) (13式)
V
3=Qa/LE
(14式)
ΔP
0=H
0(V
3/V
0)
2
(15式) (非特許文献9)
ΔP
1=(ρV
12/2)(1/f
2-1)
(16式) (非特許文献10)
P
1=ΔP
0+△P
1 (17式)
ここに、
F;換気扇口径
D;吹出エルボ奥行(D=F)(
図6参照)
2L;通路縦幅(
図6参照)
L;吹出エルボ出口高さ(W=L)(
図6参照)
L;プレフィルタ高さ(
図6参照)
W;吹出エルボ出口長さ(
図7参照)
h;吹出口エルボ入口長さ(h=D)
f;吹出エルボ拡大率(f=W/h, 1<f≦5)
P
1;有圧換気扇初期出口圧力(圧力はゲージ圧表示)
ΔP
1;動圧回収値Pa
Qa;有圧換気扇フリーエア風量m
3/s
(P
1=標準大気圧時の風量)
ρ;空気密度=1.204(kg/m
3)
A;吹出エルボ入口面積=D
2(m
2)
V
1;吹出エルボ入口初期風速=Qa/A(m/s)
V
2;吹出エルボ出口初期風速(m/s)=V
1/f
E;プレフィルタ幅(m)
V
3;プレフィルタ初期吸込風速m/s
V
0;プレフィルタ標準風速m/s(非特許文献9)
H
0;プレフィルタ標準圧力損失Pa(非特許文献9)
ΔP
0;プレフィルタ初期圧力損失Pa(非特許文献9)
X
1:乱流自由噴流初期領域長(平行流コア長X
1≦10D)(
図1参照)
Xg;エアカーテン装置通路横幅Xg≦5D(
図6参照)
K;平行流エアカーテン長さ倍率
注;
図1(a)の三次元ダクト形吹出口の吹出実験によれば平行流コア幕長さX
1≦10Dであるが、平行流エアカーテン装置の必要通路横幅Xgの設計値を1/2のXg≦5Dとしたので、気流幕強度が保持された。
【0017】
表1および表2に、換気扇径400mmおよび500mmを使用し、例1;対人通路(高さ2,100mm),例2;車両用通路(高さ2,500mm)および例3;(高さ2,800mm)計3例の平行流エアカーテン装置の設計例を示す。
注;換気扇径400mm以下および500mm以上の設計例は省略した。
【表1】
表1の内容
No.1; エアカーテン通路高さ2L(設計指定値)
No.2; 有圧換気扇口径F(非特許文献11)
No.3; 有圧換気扇フリーエア風量Qa(非特許文献11)
No.4; 吹出エルボ幅D
No.5; 吹出フリー風速V
2 (9式)
No.6; 通路横幅Xg (設計指定値)
No.7; 吹出エルボ拡大率f
【表2】
表2の内容
No.8; プレフィルタ幅E
No.9; プレフィルタ面積LE
No.9; プレフィルタ高さL
No.10; プレフィルタ初期吸込風速V
3 (14式)
No.11; プレフィルタ初期圧力損失△P
0 (15式)
No.12; 動圧回収値△P
1 (16式)
No.13; 有圧換気扇初期出口圧力P
1 (17式)
【0018】
本発明の平行流エアカーテン装置は(16式)に示した動圧回収効果により、プレフィルタ初期状態で換気扇出口圧力P
1値は負圧状態で運転を開始する。表1,表2の設計例No,1の場合について説明すると、初期状態ではP
1≒(-14.1Pa)の負圧の状態で運転を開始する。
P
1値はケーシング装着の気圧計に表示される。運転に伴い浮遊塵汚染によりプレフィルタ圧力損失が増加し、P
1値は負圧からゲージ圧ゼロに上昇する。この負圧の期間はフリー風量一定で風速V
2≒3.2m/sが保持される。汚染の進行でP
1値がプラス圧の領域に入ると風量は次第に減少してV
2≒2m/sでプレフィルタを交換する。
図26に示した射出成型工場の運転成績では、工場内浮遊塵はプラスチックス微粉が多いので、平均連続運転時間は24時間でプレフィルタを交換した。
図27に示した塗装工場使用例では、プレフィルタの汚染は塗装液体状の浮遊微滴が多いので、プレフィルタ上で乾燥した場合の固体浮遊塵が少ないために、プレフィルタ交換間隔が長くなった。
【0019】
「換気回数と換気効果」
平行流エアカーテン装置の適用建屋面積を下記に示す。
室内循環流による換気性能の計算例として、表1および表2の例1に示した通路開口高さ2,100mm,
通路開口横幅2,000mmの平行流エアカーテン装置に対する計算を示す。
(1),室内誘引風量Q1(=Q2)
Q1=エアカーテン通路面積xV4=2.1mx2mx0.2m/s=0.84m
3/s=3,024m
3/h
V4;室内誘引気流23の誘引速度、V4≒0.2m/s(実測値)
(2),標準換気室容積W
換気回数n=Q1/W,
W=Q1/n 換気回数n=8 (通常の事務室の場合)
室内容積W=Q1/n=3,024/8≒370m
3
(3),室内面積A=370/3≒120m
2。(室内天井高さ3mの場合)
平行流エアカーテン装置は片面あたり120m
2相当の室内浄化性能を有している。
(4),平行流エアカーテン装置を出入口に設置しないで室内に設置した場合、1台当たり240m
2相当の室内浄化性能を有している。
【0020】
請求項2に記載のイオン電極棒付き平行流エアカーテン装置を
図16に示す。
図13の流速分布測定に用いたエアカーテン装置200の吹出口14aおよび14bの中央部にイオン電極棒27aおよび27bを設置したイオン平行流エアカーテン装置300で測定した除電時間対除電距離線図を、
図18の除電性能曲線(2)に示した。
図17に示す従来のイオン送風型除電装置の除電時間対除電距離線図(1)を
図18に示した。除電性能曲線(1)は従来の口径120mm前後の小口径フアンを使用したイオン気流装置の代表例として、(特許文献3)より引用した。
図18において、従来のイオン送風型除電装置の除電性能曲線(1)と、イオン平行流エアカーテン装置の除電性能曲線(2)を比較すると、除電時間1.0秒の除電距離は性能曲線(1)では10cm、性能曲線(2)では50cm、除電時間2秒の除電距離は性能曲線(1)では40cm、性能曲線(2)では80cmである。イオン送風型除電装置では、渦流を含む混合気流を使用するために正負イオン間の接触によるイオン損耗が多いために除電距離が短くなり、イオン平行流エアカーテン装置では、渦流を含まない平行気流のためにイオン損耗が少ないために除電距離が長くなる結果が示された。エアカーテン装置では、除電時間2.0秒の除電距離を有効距離として、通路横幅Xg≒80cmに設定可能である。
図19に通路横幅Xg≒80cmのイオン平行流エアカーテン装置を示す。
イオン平行流エアカーテン装置のエアカーテン気流幕(幕厚さ400mm)を通過する時間を人員歩行速度より平均2秒に想定すれば、通路横幅Xg≒800mmが有効寸法になる。
図20において、イオン平行流エアカーテン装置を複式にすれば、通路横幅Xg≒1600mmmに拡大出来るので、小型車両の除塵通過が可能となる。
【0021】
図21に給気換気扇32および排気換気扇33を設置した第1種換気法を示す。換気室29の開放出入口に、平行流エアカーテン装置200または300を設置した場合の気流分布を示す。本例は機械給気量Q3≒機械排気量Q4、室内圧Pr≒0の場合を示し、噴流外縁25,26に沿って誘引気流23,24が発生し、装置上段気流20aにより内部誘引風量Q1および外部誘引風量Q2が誘起される。内部循環量Qaは常に一定の運転が継続されるので、室内では室内誘引量Q1=室内旋回量Q5である。
下段旋回流39は
図6に示す下段平行流コア幕20bで発生し、上段旋回流40は上段平行流コア幕20aで発生する。室内浮遊塵および付着塵は下段旋回流39および上段旋回流40に同伴して混合領域流21内に流入し、プレフィルタ6bで部分的にろ過捕集される。この捕集作業は連続して行われ、室内が清浄化される。工場および事業場(オフィス、小売業、飲食店、病院、ホテル、学校、サービス施設等)を総称する事業所に広く適用する事ができる。
【0022】
図22に給気量Q7>自然排気量Q8、室内圧Pr>0の正圧に保持する第2種換気室30を示す。
第2種換気法は外部有害浮遊塵の侵入を防止する換気法であり、室内旋回量Q9=室内誘引量Q1-(機械給気量Q7-排気量Q8)である。
下段旋回流39は
図6に示す下段平行流コア幕20bで発生し、上段旋回流40は上段平行流コア幕20aで発生する。
旋回する流れに室内浮遊塵が同伴輸送され、プレフィルタ6a,6bでろ過捕集される。付着塵はイオン平行流エアカーテン装置で人体や資材より剥離され、プレフィルタ6a,6bにより、粒子径dがd≧5μmの路上浮遊塵、花粉、Pm10,鳥インフルエンザウイールス汚染羽毛、放射性粒子等が捕集されるので、クリーンルーム、手術室、病棟、密閉型鶏舎、高線量休憩所、原発緊急時対策所等に適用が可能である。
【0023】
図23に機械排気量Q11>自然給気量Q12、室内圧Pr<0(負圧)の第3種換気室31を示す。
第3種換気法は室内汚染物質の流出防止を目的とし、(室内旋回量Q13)=(内部誘引風量Q1)+(Q11-Q12)である。
下段旋回流39は
図6に示す下段平行流コア幕20bで発生し、上段旋回流40は上段平行流コア幕20aで発生する。
旋回する流れに室内浮遊塵が同伴輸送され、プレフィルタ6a,6bでろ過捕集される。付着塵はイオン平行流エアカーテン装置で人体や資材より剥離され、プレフィルタ6a,6bでろ過捕集される。室内発生汚染気流や汚染浮遊塵の多い喫煙室、厨房、便所、塗装室、射出成形工場、アスベスト作業室等に適用される。
【発明の効果】
【0024】
建屋内の温度、湿度、気流速度、清浄度などの環境調整のために、機械換気により「室内空気の入れ替え」と「浮遊塵の排除」が行われ、さらに空調により温度調節が行われる。
しかし工場、施設、店舗などでは従業員、運搬車両、来客などの出入りのために、多くの出入口が開放状態で使用されている。このような開放出入口では、夏期における空調冷気や冬期における空調暖気が流出し、空調動力の約50%の損失が発生すると言われている。
さらに開放出入口より、路上浮遊塵、花粉、黄砂、PM10,火山灰、感染症蚊(デング熱、マラリヤ系)、放射性浮遊塵などが流入し、厨房・便所の臭気、喫煙室のたばこ煙、工場内部発生浮遊塵、乾燥室塗装液滴、アスベスト浮遊塵、感染症飛沫などが流出し、環境問題が発生する。
産業分類では、工場(生産設備、冷蔵倉庫等)および事業場(オフィス、小売業、飲食店、病院、ホテル、学校、サービス施設等)を一括して事業所という。(非特許文献12)によれば東京都内約69万事業所の内で、小売業と飲食店に代表される店舗約20万店の70%(約14万店)の開放出入口が存在する。工場関係を含めると20万個所以上の開放出入口が存在すると推定される。東京都だけでも20万個所以上の開放出入口が存在するので、世界全体の開放出入口の数は膨大な数値が予想される。開放出入口における空調動力の損失対策および環境汚染対策に有効なエアカーテン装置の開発は極めて重要な課題である。
【0025】
以下に請求項1および請求項1のエアカーテン装置の主な開放出入口適用対象を示す。更に独立の集塵装置および除電装置として使用する事が出来る。
1.工場開放出入口設置用
1-1;製造工場。1-2;組立工場。1-3;縫製工場。1-4;冷蔵冷凍倉庫。1-5;クリーンルーム。1-6;塗装室。1-7;アスベスト処理室。1-8;食品工場。1-9;植物工場。1-10;閉鎖型鶏舎。
2.事業場開放出入口用
2-1;喫煙室(非特許文献13)。2-2;飲食店。2-3;店舗。2-4;オフィス。2-5;ホテル。2-6;学校。2-7;病院(病室、集中治療室。手術室)。2-8;高線量休憩所。2-9;原発緊急時対策所。2-10;サービス施設(空港ロビー、展示会場、美術館等)。
3.独立使用例
3-1;空気清浄器。
本発明のエアカーテン装置を室内に設置して、空気清浄器として使用する事が出来る。
3-2;除電装置。
本発明のイオン平行流エアカーテン装置を独立の除電装置として使用する事が出来る。
【0026】
本発明のエアカーテン装置の設置による効果を列挙する。
1.冷気暖気流出入を防止。
各種の空調室や冷蔵倉庫の開放出入口に、本発明のエアカーテン装置を設置して場合、冷暖気の流入流出を防止して、空調動力損失を節減して省エネを図る。
2.雨天時の湿気流入防止。
工場開放出入口に、本発明のエアカーテン装置を設置した場合、雨天時の多湿空気の流入を防止して、食品のカビ発生や金属製品や精密金型等の発錆を防止する。
3.室内温度の均一化。
工場開放出入口に、本発明のエアカーテン装置を設置した場合、工場内に発生する旋回流により、工場内空気温度が均一化し生産性が向上する。
4.ガイドラインに対応した喫煙室の構成。
厚生労働省が示した喫煙室ガイドライン(非特許文献13)によれば、喫煙室には、1.出入口における室内タバコ煙やニオイの漏れ防止、2.出入口への近寄り風速0.2m/sの確保、3.喫煙室内の浮遊塵濃度0.15mg/m
3以下の3条件が示されている。
開放出入口に本発明のエアカーテン装置を設置した排煙装置付き喫煙室は、
図23に示したエアカーテン装置付き第3種換気室に相当する。本喫煙室では開放出入口における室内煙の漏煙はエアカーテンで防止される。出入口への近寄り風速0.2m/sは、
図23に示す誘引風速24により確保される。室内浮遊塵濃度は、
図26に示す射出成形工場の運転結果に示すように粒径5μm以上の濃度は300個/ft
3以下で、制限値以下に保持される。喫煙室はタバコ煙中のタール分が拡散して室内壁に附着し、常に強いタール臭を放つ。本発明のエアカーテン装置は、
図23に示す室内旋回流39,40によりタバコ煙を混合領域流21内に誘引し、プレフィルタ6a,6bでろ過してタール分はプレフィルタに附着捕集した後、換気扇で排出される。このため本発明のエアカーテンを装着した喫煙室は、タールの壁付着が少なく、タール臭も低い。
5.外部浮遊塵および付着塵の捕集。
平行流エアカーテン装置およびイオン平行流エアカーテン装置は、(非特許文献9)より粒径dがd≧5μmの浮遊塵および付着塵を捕集する。路上浮遊塵、ダスト、バクテリア、カビ、一般昆虫、毛髪、花粉、黄砂、PM10、感染症蚊、放射性浮遊塵、鳥インフルエンザ汚染の浮遊塵・付着羽毛等を捕集する。粒子径dが5μm以下の微細粒子は外気中では大気中に拡散し、建屋内ではHEPAフィルタ付着の空気清浄器で捕集する。
6.室内発生浮遊塵および付着塵の捕集。
室内発生の内部浮遊塵は、浮遊アスベスト粉塵、工場内発生粉塵、産業用プラスチックス粉塵、浮遊油滴、塗料噴霧等があるが、プレフィルタで捕集可能である。
7.感染症対策
病室内に平行流エアカーテン装置をセットすれば、MERS,SARSコロナウイルス等の感染症飛沫(非特許文献14)の捕集が可能である。また野外に単独に平行流エアカーテン装置をセットすれば、感染症媒介蚊(デング熱、マラリヤ等)の捕虫用として使用する事が出来る。
8.室内空気清澄化
室内空気中の粒子径5μm以上の浮遊塵が多いと、室内空気はミー散乱により霞んで見え、逆に粒子径5μm以上の浮遊塵が減少すると、レイリー散乱により青空の様に清澄化する。
図26に射出成形工場開放出入口に平行流エアカーテン装置を設置した場合の浮遊塵濃度の測定値を示す。平行流エアカーテン装置のプレフィルタにより5μm以上の浮遊塵濃度が減少し、工場内空気は青空のように清澄化し、室内降塵量も劇的に減少した。
室内空気が青空化して清澄に見える事は、室内浮遊塵と降塵量の減少を意味し、食品工場、生鮮食品販売店、展示会場、組立工場等に有効である。美術館等で、開放出入口に平行流エアカーテン装置を設置すれば、来館者の持ち込み浮遊塵を捕集して館内浮遊塵が減少し、館内空気が青空化して清澄になり展示品の鑑賞環境が保持される。会場が広い場合は室内にエアカーテン装置を単独設置して館内浮遊塵を捕集する事が出来る。
9.独立除電装置
イオン平行流エアカーテン装置を、独立の除電装置として自動車用バンパー等の大型帯電物の除電に利用できる。