【課題】 表面処理を施したバネ状部材の表面特性を評価し、良否を判断し、良品と不良品とを選別する工程を効率的に行い、タクトタイムが短いバネ状部材の検査・選別に好適に適用することができる表面特性検査選別装置、表面特性検査選別システム及び表面特性検査選別方法を提供する。
【解決手段】 表面特性検査選別装置1は、表面処理が行われたバネ状部材Mの表面特性を評価し、良否を判断し、その判別結果に基づいて良品と不良品とに選別して搬出する装置であり、表面特性検査装置2と、バネ状部材Mを検査検出器23にそれぞれ案内する案内部材40と、バネ状部材Mの表面特性を測定する測定部材50と、バネ状部材Mを良品と不良品とに選別して搬出する選別部材60と、測定部材50を回動する回転駆動手段70と、回転駆動手段70及び選別部材60の動作を制御する制御装置80と、を備えている。
前記案内部材が、案内部に連通して形成され、搬送されたバネ状部材を貯留する貯留部材を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面特性検査選別装置。
良品と判断され選別されたバネ状部材を搬送するための良品搬送手段と、不良品と判断され選別されたバネ状部材を回収するための不良品回収手段と、を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の表面特性検査選別システム。
前記搬送手段は、搬送ベルトと、前記搬送ベルトの、バネ状部材を載置する位置を区画する区画部材と、を備えることを特徴とする請求項4に記載の表面特性検査選別システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術は、局所的な測定であるため、渦電流の集中による発熱の影響が生じやすく、表面処理部全体を検査しようとすると多大な時間を要する。弁バネなどのバネ状部材は、ギヤなどの大型の部材と比べ、表面処理に要する時間(タクトタイム)が短いため、表面特性の検査、良品と不良品との選別にかかる時間の方が長くなってしまい、検査・選別工程が全体の工程を律速するという問題があった。また、良否判断した後のバネ状部材を短時間で効率的に選別する具体的な構成は提案されておらず、選別作業にも多大な時間を要し、効率的な検査、選別を行うことができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ショットピーニング処理や熱処理、窒化処理などの表面処理を施したバネ状部材の表面特性を評価し、良否を判断し、良品と不良品とを選別する工程を効率的に行い、タクトタイムが短いバネ状部材の検査・選別に好適に適用することができる表面特性検査選別装置、表面特性検査選別システム及び表面特性検査選別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、表面処理が施されたバネ状部材の表面特性を評価し、良品と不良品とを選別する表面特性検査選別装置であって、交流ブリッジ回路と、前記交流ブリッジ回路に交流電力を供給する交流電源と、前記交流ブリッジ回路からの出力信号に基づいてバネ状部材の表面特性を評価する評価装置と、を備え、前記交流ブリッジ回路は、第1の抵抗と第2の抵抗とに分配比が可変に構成された可変抵抗と、交流磁気を励起可能なコイルを備えバネ状部材に渦電流を励起するように当該コイルを配置可能に形成された検査検出器と、前記検査検出器からの出力と比較する基準となる基準状態を検出する基準検出器とを有し、前記第1の抵抗、前記第2の抵抗、前記基準検出器及び前記検査検出器はブリッジ回路を構成し、前記評価装置は、前記交流ブリッジ回路に交流電力が供給され、前記検査検出器が前記バネ状部材の電磁気特性を検出し、前記基準検出器が基準状態を検出している状態における前記交流ブリッジ回路からの出力信号に基づいて、前記バネ状部材の表面特性を評価する表面特性検査装置と、複数個の前記検査検出器が配置される測定部材と、バネ状部材の表面処理を行う表面処理装置から搬送されたバネ状部材を前記測定部材の設けられた検査検出器の測定位置に案内する案内部が設けられた案内部材と、前記測定部材において表面特性を評価された後のバネ状部材を良品と不良品とに選別する選別部材と、を備え、前記測定部材は、バネ状部材を前記案内部材から前記選別部材へ搬送可能に構成され、前記測定部材がバネ状部材を前記案内部材から前記選別部材へ搬送する間に、前記表面特性検査装置によりバネ状部材の表面特性を評価し良否を判断する、という技術的手段を用いる。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、検査検出器のコイルによりバネ状部材に渦電流を励起し、交流ブリッジ回路から出力された出力信号に基づいてバネ状部材の表面特性を評価することができる。これにより、簡単な回路構成で高精度の表面状態の検査が可能である。
また、案内部材により、バネ状部材を検査検出器の測定位置に確実に案内することができる。測定部材は、バネ状部材を案内部材から選別部材へ搬送する間に、表面特性検査装置によりバネ状部材の表面特性を評価し良否を判断するため、この搬送する時間をバネ状部材の表面特性を評価し良否を判断する時間に充てることができる。これにより、短いタクトタイムに対応して、バネ状部材の表面特性の評価、良否の判断を行うことができる。そして、選別部材によりバネ状部材を良品と不良品とに確実に選別することができる。
なお、表面特性とは、「バネ状部材の最表面から内面の影響層までの特性」のことをいう。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の表面特性検査選別装置において、前記測定部材は、複数個の前記検査検出器が同心円状に配置され、バネ状部材の搬送方向と交差して回動可能に構成されており、前記選別部材では、前記表面特性検査選別装置により良品と判断されたバネ状部材を搬出するための良品搬出口と、前記表面特性検査選別装置により不良品と判断されたバネ状部材を搬出する不良品搬出口と、が、前記案内部材の案内部から見て、前記測定部材の回動方向の逆方向に並んで設けられており、前記選別部材は、バネ状部材を、前記良品搬出口及び前記不良品搬出口のどちらから搬出するかを選択する選択手段を備えている、という技術的手段を用いる。
【0009】
表面特性検査選別装置を請求項2に記載の発明のように構成すると、装置を小型化することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の表面特性検査選別装置おいて、前記案内部材が、案内部に連通して形成され、搬送されたバネ状部材を貯留する貯留部材を更に備える、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、案内部材が搬送されたバネ状部材を貯留する貯留部材を備えているため、貯留部材でバネ状部材を貯留し、バネ状部材を測定部材に送るタイミングを調節することができるので、バネ状部材が搬送されてくるタイミングの変動などに対応することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、表面特性検査選別システムが、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の表面特性検査選別装置と、表面処理装置にて表面処理が施されたバネ状部材を表面特性検査選別装置に搬送する搬送手段と、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0013】
請求項4に記載の発明のように、表面特性検査選別装置と、表面処理装置にて表面処理が施されたバネ状部材を表面特性検査装置に搬送する搬送手段とを組み合わせることにより、バネ状部材の搬送、評価、選別、搬出を連続して行うことができる表面特性検査選別システムを構築することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の表面特性検査選別システムであって、良品と判断され選別されたバネ状部材を搬送するための良品搬送手段と、不良品と判断され選別されたバネ状部材を回収するための不良品回収手段と、を更に備えた、という技術的手段を用いる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、良品搬送手段により良品を速やかに次工程に搬送することができるとともに、不良品回収手段により不良品のみを選別して回収することができるので、選別作業を効率的に行うことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項4に記載の表面特性検査選別システムにおいて、前記搬送手段は、搬送ベルトと、前記搬送ベルトの、バネ状部材を載置する位置を区画する区画部材と、を備える、という技術的手段を用いる。
【0017】
請求項6に記載の発明のように、搬送手段の搬送ベルトを区画部材により区画することにより、バネ状部材を所定のタイミングで1つずつ確実に搬送することができる。また、バネ状部材を表面特性検査選別装置に配置する前に貯留するための部材を設ける必要がなく、装置を簡素化することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、表面特性検査選別方法であって、請求項1ないし請求項3に記載の表面特性検査選別装置を用意し、表面処理装置にて表面処理が施され搬送されたバネ状部材を、前記案内部材を介して前記検査検出器の測定位置に配置し、バネ状部材を前記選別部材まで搬送し、前記選別部材に到達するまでの間に表面特性を評価し、前記表面特性検査装置により良否を判断し、前記表面特性検査装置による良否の判断に基づいて、バネ状部材を良品と不良品とに選別する、という技術的手段を用いる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、表面特性検査選別装置を用いて、案内部材により、バネ状部材を検査検出器の測定位置に確実に案内することができる。また、測定部材により、バネ状部材を案内部材から選別部材へ搬送する間に、表面特性検査装置によりバネ状部材の表面特性を評価し良否を判断するため、この搬送する時間をバネ状部材の表面特性を評価し良否を判断する時間に充てることができる。これにより、短いタクトタイムに対応して、バネ状部材の表面特性の評価、良否の判断を行うことができる。そして、選別部材によりバネ状部材を良品と不良品とに確実に選別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
表面特性検査選別装置1は、ショットピーニング装置などの表面処理装置により表面処理が行われ、搬送手段により搬送されたバネ状部材Mの表面特性を評価し、良否を判断し、その判別結果に基づいて良品と不良品とに選別して搬出する装置である。
図1に示すように、表面特性検査選別装置1は、後述する表面特性検査装置2と、バネ状部材Mの搬送方向の上流から下流に向けて、バネ状部材Mを検査検出器23にそれぞれ案内する案内部材40と、バネ状部材Mの表面特性を測定する測定部材50と、バネ状部材Mを良品と不良品とに選別して搬出する選別部材60と、測定部材50を回動する回転駆動手段70と、回転駆動手段70及び選別部材60の動作を制御する制御装置80と、を備えている。ここで、
図1(B)において、表面特性検査装置2、回転駆動手段70及び制御装置80は断面図ではなく、模式的に示している。
【0022】
案内部材40と選別部材60とは、外筒90により一体的に設けられ、回転駆動手段70などにより回転しないように固定されている。
【0023】
測定部材50には、表面特性検査装置2が備える複数個の検査検出器23が同心円上に等間隔で配置されている。測定部材50は回転駆動手段70の回転軸71に接続されており、案内部材40及び選別部材60に対し、バネ状部材Mの搬送方向と交差して回転可能に構成されている。
【0024】
検査検出器23は、
図2に示すように、バネ状部材M全体を覆うように形成された円筒状のコア23aと、コア23aの外周面に巻回されたコイル23bと、を備えている。コア23aは非磁性材料、例えば、樹脂からなり、バネ状部材Mを挿入するだけで所定の測定位置にバネ状部材Mを配置できる寸法に形成されている。
【0025】
複数個の検査検出器23は、それぞれが後述する
図5に示す回路を構成する。ここで、評価装置30は1つの評価装置30を共用することができる。
【0026】
検査検出器23は、渦電流の反応を高精度に捉えて表面特性を評価することを特徴としているため、表面特性を検査したい領域に渦電流が流れるように、バネ状部材Mに対して配置することが好ましい。つまり、コイル23bの巻方向が渦電流を流したい方向と同方向となるように配置することが好ましい。コイル23bの巻方向がバネ状部材Mの軸とほぼ直交するようにコイル23bを配置するとよい。これにより、バネ状部材Mの巻方向に磁界ループが発生するため、効率よく渦電流を励起させることができ、バネ状部材M全体の表面特性を一度に検査することができる。
【0027】
ここでは、測定部材50に、検査検出器23が8個(23A−23H)設けられた構成を例に説明する。検査検出器23A―23Hは上流側から見て反時計回りに順に配置されている。検査検出器23A−23Hが最初に配置されている位置を、検査検出器23Aを起点に時計回りでA1−A8とする。ここで、A1がバネ状部材Mを検査検出器23に配置する配置位置、A2−A6が測定区間、A7及びA8が選別を行う選別位置となる。
【0028】
案内部材40には、検査検出器23にバネ状部材Mを案内するための貫通孔である案内部41が、バネ状部材Mの配置位置A1に対応して設けられている。
【0029】
選別部材60は、選別位置A7に良品と判断されたバネ状部材Mを搬出する貫通部として形成された良品搬出口61と、選別位置A8に不良品と判断されたバネ状部材M搬出する貫通部として形成された不良品搬出口62と、を備えている。また、良品搬出口61の測定部材50側の開口部61aを開閉可能に構成されたシャッター63を備えている。シャッター63は、良品搬出口61と不良品搬出口62とのどちらからバネ状部材Mを搬出するかを選択する選択部材として作用する。なお、
図1ではシャッター63が閉じ、良品搬出口61の開口部61aが閉じられた状態を図示している。
【0030】
回転駆動手段70は、測定部材50を回動し、所定の位置に停止可能なステッピングモータやサーボモータなどを用いる。
【0031】
制御装置80は、回転駆動手段70を制御し、測定部材50を回転させ、検査検出器23の位置を制御する。また、制御装置80は、表面特性検査装置2の判断手段36と接続されており、判断手段36におけるバネ状部材Mの表面処理状態の良否の判断結果に基づいてシャッター63の動作を制御する。
【0032】
図3に示すように、表面特性検査選別装置1は、ピーニング装置などの表面処理装置で処理されたバネ状部材Mを表面特性検査選別装置1に向かって搬送する搬送手段100、選別部材60により良品として選別されたバネ状部材Mを搬送する良品搬送手段110、選別部材60により不良品として選別されたバネ状部材Mを回収する不良品回収手段120などと組み合わせて、表面特性検査選別システムSを構成することができる。ここで、表面特性検査選別装置1は、バネ状部材Mが自重で内部を移動可能なように案内部材40、測定部材50、選別部材60が搬送方向と対向して傾斜するように設置されている。なお、
図3ではシャッター63が開き、良品搬出口61の開口部61aが開放された状態を図示している。
【0033】
搬送手段100として、搬送ベルト101と、搬送ベルト101の、バネ状部材Mを載置する位置を区画する区画部材である複数のピン102が設けられ、隣接するピン102とピン102との間にバネ状部材Mを1つずつ配置し搬送する構成を好適に用いることができる。これにより、バネ状部材Mを所定のタイミングで1つずつ確実に搬送することができる。また、バネ状部材Mを表面特性検査選別装置1に配置する前に貯留するための部材を設ける必要がなく、装置を簡素化することができる。搬送ベルト101が反転する位置には、バネ状部材Mを下方に位置する表面特性検査選別装置1に案内するスロープ103が設けられている。
【0034】
良品搬送手段110はベルトコンベアなどで構成され、良品搬出口61の下方に設けられている。不良品回収手段120は、不良品を貯留する貯留箱などで構成され、不良品搬出口62の下方に設けられている。
【0035】
このような表面特性検査選別システムSによれば、搬送手段100を備えているので、バネ状部材Mの搬送、評価、選別、搬出を連続して行うことができる表面特性検査選別システムとして構築することができる。また、良品搬送手段110により良品を速やかに次工程に搬送することができるとともに、不良品回収手段120により不良品のみを選別して回収することができるので、選別作業を効率的に行うことができる。
【0036】
次に、表面特性検査選別装置1を用い、バネ状部材Mを良品と不良品とに選別する表面特性検査選別方法について説明する。簡単のため、
図4においてシャッター63及び外筒90の図示を省略している。
【0037】
図4(A)に示すように、測定部材50は、検査検出器23Aが配置位置A1にある状態で停止している。まず、搬送ベルト101により搬送されてきたバネ状部材M1は、スロープ103を滑り落ちて、案内部材40により案内部41を介して配置位置A1にある検査検出器23Aに案内される。
【0038】
続いて、回転駆動手段70を駆動させ、検査検出器23Aを測定区間の位置A2に移動させると、
図4(B)に示すように、バネ状部材M1は、検査検出器23AとともにA2まで移動する。案内部41には検査検出器23Bが面することになり、バネ状部材M2が案内部材によりバネ状部材M配置位置A1にある検査検出器23Bに案内される。
【0039】
上記動作をバネ状部材Mの搬送タイミングに合わせた一定時間間隔で繰り返すことにより、
図4(C)に示すように、バネ状部材M1は検査検出器23Aとともに測定区間の位置A6まで移動する。このとき、検査検出器23Bは測定区間の位置A5,検査検出器23Cは測定区間の位置A4、検査検出器23Dは測定区間の位置A3、検査検出器23Eは測定区間の位置A2、検査検出器23Fは配置位置A1にあり、それぞれ内部には案内されたバネ状部材M2−M6が配置されている。バネ状部材M1は配置位置A1から測定区間の位置A6に移動する間に、表面特性検査装置2により表面特性が評価され、良否が判定される。ここで、案内部材40または測定部材50に光電センサなどのセンサを設けて、このセンサによりバネ状部材Mが測定部材50に配置されたことを検出して、その検出信号に基づいて測定部材50の回転駆動を行うこともできる。これによれば、より確実にバネ状部材Mを測定部材50に配置することができる。
【0040】
まず、バネ状部材M1が良品と判断された場合について説明する。
図3では、バネ状部材M1が良品と判断された場合について模式的に示している。バネ状部材M1が良品と判断されると、表面特性検査装置2の判断手段36により制御装置80に判断結果が入力される。回転駆動手段70により検査検出器23Aを選別位置A7に移動させると、制御装置80は、判断結果に基づいてシャッター63を開く。これにより、検査検出器23Aと良品搬出口61とが連通するので、バネ状部材M1は良品搬出口61を経由して外部に搬出され、良品搬出口61の下方に設けられた良品搬送手段110により次工程に搬送される。
【0041】
バネ状部材M1が不良品と判断されると、判断手段36により制御装置80に判断結果が入力される。回転駆動手段70により検査検出器23Aを選別位置A7に移動させると、制御装置80は、判断結果に基づいてシャッター63を閉じた状態に維持する。これにより、バネ状部材M1は検査検出器23Aの外部に搬出されず、選別位置A7に保持される。続いて、回転駆動手段70により検査検出器23Aを選別位置A8に移動させると、検査検出器23Aと不良品搬出口62とが連通するため、バネ状部材M1は不良品搬出口62を経由して外部に搬出され、不良品搬出口62の下方に設けられた不良品回収手段120により回収される。
【0042】
上記操作が連続して行われることより、バネ状部材Mの表面特性を連続して評価し、良否を判断し、バネ状部材Mを良品と不良品とに選別することができる。
【0043】
表面特性検査選別装置1によれば、案内部材40により、バネ状部材Mを検査検出器23の測定位置に確実に案内することができる。測定部材50は、バネ状部材Mを案内部材40から選別部材60へ搬送する間に、表面特性検査装置2によりバネ状部材Mの表面特性を評価し良否を判断するため、この搬送する時間をバネ状部材Mの表面特性を評価し良否を判断する時間に充てることができる。これにより、短いタクトタイムに対応して、バネ状部材Mの表面特性の評価、良否の判断を行うことができる。そして、選別部材60によりバネ状部材Mを良品と不良品とに確実に選別することができる。
【0044】
検査検出器23の数、測定部材50の回動タイミングは、タクトタイム、検査時間に合わせ、適宜設定することができる。例えば、搬送タイミングが1秒間隔で、検査・良否判断に3秒要するとすれば、測定区間に検査検出器23を3個設ければよいため、案内位置、選別位置に対応する位置にある3個を加えた6個の検査検出器23を設けた構成とすることができる。
【0045】
(表面特性検査装置)
次に表面特性検査装置2の詳細な構成について説明する。
図5に示すように、本発明の実施形態による表面特性検査装置2は、交流電源10、交流ブリッジ回路20及び評価装置30を備えている。
【0046】
交流電源10は、交流ブリッジ回路20に周波数が可変の交流電力を供給可能に構成されている。
【0047】
交流ブリッジ回路20は、可変抵抗21、バネ状部材Mに渦電流を励起するようにコイルを配置可能に形成された検査検出器23及び検査検出器23からの出力と比較する基準となる基準状態を検出する基準検出器22を備えている。
【0048】
可変抵抗21は、抵抗R
Aを抵抗R1と抵抗R2とに分配比γを可変に分配することができるように構成されている。抵抗R1、抵抗R2は、基準検出器22及び検査検出器23とともにブリッジ回路を構成している。本実施形態では、抵抗R1と抵抗R2とを分配する点A及び基準検出器22と検査検出器23との間の点Bが評価装置30の交流電源10に接続され、抵抗R1と基準検出器22との間の点C及び抵抗R2と検査検出器23との間の点Dが増幅器31に接続されている。また、ノイズの低減のため、基準検出器22及び検査検出器23側が接地されている。
【0049】
評価装置30は、交流ブリッジ回路20から出力される電圧信号を増幅する増幅器31、全波整流を行う絶対値回路32、直流変換を行うローパスフィルタ(LPF)33、交流電源10から供給される交流電圧と増幅器31から出力される電圧の位相を比較する位相比較器34、交流電源10から供給される交流電圧の周波数を調整する周波数調整器35、R1とR2の分配を最適化する非平衡調整を行うとともに、LPF33からの出力に基づいてバネ状部材Mの表面状態の良否を判断する判断手段36及び判断手段36による判断結果を表示、警告する表示手段37、評価位置の温度を検出する温度測定手段38を備えている。
【0050】
増幅器31は、点C及び点Dに接続され、点Cと点Dとの間の電位差が入力される。また、絶対値回路32、LPF33の順に判断手段36に接続されている。位相比較器34は、交流電源10、増幅器31及び判断手段36に接続されている。周波数調整器35は、交流電源10及び増幅器31に接続されている。また、判断手段36は、制御信号を出力することにより、交流ブリッジ回路20の点Aの位置、即ち、抵抗R1と抵抗R2の分配比γを変更することができるように構成されており、これにより、後述する可変抵抗設定工程が実行される。
【0051】
温度測定手段38は、非接触式の赤外センサや熱電対などからなり、バネ状部材Mの表面の温度信号を判断手段36に出力する。判断手段36は、温度測定手段38で検出されたバネ状部材Mの温度が所定範囲内である場合に、バネ状部材Mの表面処理状態の良否を判断し、温度測定手段38で検出された温度が所定範囲外である場合に、バネ状部材Mの表面処理状態の良否の判断を行わない。これにより、バネ状部材Mの温度が検査の精度に影響を及ぼすような場合にバネ状部材の表面処理状態の良否の判断を行わないようにすることができるので、精度の高い検査を行うことができる。ここで、熱電対などで評価位置Tsの温度を測定し、バネ状部材Mの表面の温度を代表する温度としてバネ状部材Mの表面処理状態の良否を判断するか否かの判断を行う構成を採用することもできる。
【0052】
検査検出器23及び検査検出器23と同様の構成の基準検出器22として、バネ状部材の評価部を挿通可能なコアの外周にコイルが巻回されて形成され、コイルをバネ状部材Mの表面と対向させて近接させバネ状部材Mに渦電流を励起可能な検出器を用いる。すなわち、このコイルは、バネ状部材の表面特性検査領域を囲むように対向されて巻回されている。ここで、バネ状部材の表面特性検査領域を囲むとは、少なくとも表面特性検査領域の一部を包囲する(包むよう囲む)ことで、表面特性検査領域に渦電流を励起することを含むことを意味している。
【0053】
コイル23bがバネ状部材Mの検査対象面を囲むように対向させて検査検出器23を配置し、交流電源10によりコイル23bに所定の周波数の交流電力を供給すると交流磁界が発生し、バネ状部材Mの表面に交流磁界に交差する方向に流れる渦電流が励起される。渦電流は残留応力層の電磁気特性に応じて変化するため、残留応力層の特性(表面処理状態)に応じて増幅器31から出力される出力波形(電圧波形)の位相及び振幅(インピーダンス)が変化する。この出力波形の変化により表面処理層の電磁気特性を検出し、検査を行うことができる。
【0054】
検査検出器23の外方であってバネ状部材Mを囲んで配置される磁気シールド23cを設けることもできる。磁気シールド23cを用いると、外部磁気を遮蔽することができるため、電磁気特性の検出感度を向上させることができ、表面処理状態に対応する電磁気特性の検出感度が向上するので、バネ状部材Mの表面処理状態をより精度良く評価することができる。
【0055】
(交流ブリッジ回路からの出力)
次に、非平衡状態に調整された交流ブリッジ回路20からの出力について、
図6の等価回路を参照して説明する。基準検出器22には基準出力を出力するための、例えば、表面処理状態が良好であると保証されている基準検体Sが近接され、検査検出器23には表面処理状態の良否を判定すべきバネ状部材Mが近接されている。ここで、基準検出器22に基準検体Sを近接させない、すなわち基準検体Sを用いない構成を採用してもよい。以下に、基準検体Sを用いる場合の出力について説明するが、基準検体Sを用いない場合には、後述のiαが0になることを除いて同様であるので説明は省略する。なお、後述する表面特性検査方法では、基準検体Sを用いない構成について説明する。
【0056】
可変抵抗R
Aの分配比をγとした場合、抵抗R1はR
A/(1+γ)、抵抗R2はR
Aγ/(1+γ)となる。基準検出器22のインピーダンスをR
S+jωL
S、検査検出器23のインピーダンスをR
T+jωL
Tとする。また、点Aの電位をEとし、基準検出器22、検査検出器23に各検体(基準検体S、バネ状部材M)を近接させていないときのブリッジの各辺に流れる励磁電流をそれぞれi
1、i
2、各検体を基準検出器22、検査検出器23に近接させることにより磁気量が変化し、その変化量に応じて流れる電流をそれぞれiα、iβとする。このときの基準検出器22及び検査検出器23の電位E1、E2及び励起電流i
1、i
2は以下の式(1)〜(4)で表される。
【0061】
増幅器31に出力される電圧はE1、E2の差分であり、次式で表される。
【0063】
式(3)〜(5)より次式が導かれる。
【0065】
式(6)の右辺を次の成分A、Bに分けて差分電圧の各成分について考える。
成分A:
成分B
:
【0066】
成分Aは、各検出器成分:(R
S+jωL
S)、(R
T+jωL
T)、各検出器に各検体が近接したときに変化する電流量:iα、iβにより構成される。iα、iβは各検体の透磁率、導電率などの電磁気特性に起因する検体を通る磁気量によって大きさが変化する。このため各検出器から発生する磁気量を左右する励磁電流i
1、i
2を変えることでiα、iβの大きさを変化させることができる。また、式(3)、式(4)より、励磁電流i
1、i
2は可変抵抗の分配比γによって変わるので、可変抵抗の分配比γを調整することにより成分Aの大きさを変化させることができる。
【0067】
成分Bは、各検出器成分:(R
S+jωL
S)、(R
T+jωL
T)、可変抵抗の分配比γで分けられた抵抗のパラメーターにより構成される。このため、成分A同様に可変抵抗の分配比γの調整により成分Bの大きさを変化させることができる。
【0068】
バネ状部材Mを所定の位置に配置し、交流電源10により検査検出器23のコイル23bに所定の周波数の交流電力を供給すると、バネ状部材Mの表面に交流磁界に交差する方向に流れる渦電流が励起される。渦電流は残留応力層の電磁気特性に応じて変化するため、残留応力層の特性(表面処理状態)に応じて増幅器31から出力される出力波形(電圧波形)の位相及び振幅(インピーダンス)が変化する。この出力波形の変化により残留応力層の電磁気特性を検出し、表面処理状態の検査を行うことができる。
【0069】
ブリッジの増幅器31から出力される信号は、基準検出器22及び検査検出器23の電圧波形の差分面積を抽出した信号であり、検出器を流れる電流(励磁電流)を一定にする回路構成になっているので、抽出された電圧信号は電力信号として考えることができる。また、検出器へ供給する電力は常に一定であり、バネ状部材Mへ供給する磁気エネルギーも一定とすることができる。
【0070】
(表面特性検査方法)
次に、表面特性検査装置2によるバネ状部材Mの表面特性検査方法について
図7を参照して説明する。
【0071】
まず、準備工程S1では、表面特性検査装置2と、表面処理が良好な基準検体Sと、を用意する。併せて、表面処理を施していない検体または表面処理状態が不良な検体である参照検体を用意しておいてもよい。
【0072】
次に、可変抵抗設定工程S2を行う。可変抵抗設定工程S2では、まず、交流電源10から交流ブリッジ回路20に交流電力を供給する。この状態で、表面特性検査装置2による検体の検出感度が高くなるように、可変抵抗21の分配比γを調整する。即ち、検査検出器23に検体を近接させずに、交流ブリッジ回路20の出力信号が小さくなるように、可変抵抗21の分配比γを調整する。このように可変抵抗21を設定しておくことにより、検査検出器23に近接したバネ状部材Mの表面処理状態が不良である場合と、表面処理状態が良好である場合の出力信号の差異が大きくなり、検出精度を高くすることができる。具体的には、オシロスコープなど波形表示機能を持つ表示装置(例えば、判断手段36が備えている)にて交流ブリッジ回路20からの出力信号の電圧振幅、またはLPF33からの電圧出力をモニターし、出力が小さくなるように分配比γを調整する。好ましくは、出力が最小値又は極小値(局所平衡点)をとるように、可変抵抗21の分配比γを調整して、設定する。
【0073】
可変抵抗21の分配比γの調整は、差分電圧(E2−E1)を小さくすることにより表面状態の差異に応じた出力差を増大させ、検査精度を向上させるために行われる。上述したように成分A、Bは分配比γを調整することにより変化するため、基準検出器22、検査検出器23のインピーダンス(R
S+jωL
S)、(R
T+jωL
T)に応じて、可変抵抗21の分配比γを調整し、交流ブリッジ回路20からの出力である差分電圧(E2−E1)を小さくすることができる。これにより、基準検出器22と検査検出器23との特性の違いを軽減して、バネ状部材Mの本来の特性を少しでも大きく抽出することができるので、検査精度を向上させることができる。
【0074】
周波数設定工程S3では、基準検体Sを検査検出器23に近接させた状態で、交流電源10から交流ブリッジ回路20に交流電力を供給し、周波数調整器35により交流ブリッジ回路20に供給する交流電力の周波数を変化させて交流ブリッジ回路20から電圧振幅出力またはLPF33からの電圧出力をモニターする。
【0075】
周波数調整器35は、周波数調整器35において設定された初期周波数f1になるように交流電源10へ制御信号を出力し、周波数f1における増幅器31からの出力電圧Ef1が周波数調整器35に入力され、記憶される。続いて、周波数f1よりも所定の値、例えば100Hz高い周波数f2になるように交流電源10へ制御信号を出力し、周波数f2における増幅器31からの出力電圧Ef2が周波数調整器35に入力され、記憶される。 続いて、Ef1とEf2との比較を行い、Ef2>Ef1であれば、周波数f2よりも所定の値高い周波数f3になるように制御信号を出力し、周波数f3における増幅器31からの出力電圧Ef3が周波数調整器35に入力され、記憶される。そして、Ef2とEf3との比較を行う。これを繰り返し、Efn+1<Efnとなったときの周波数fn、つまり出力が最大となる周波数fnを、しきい値設定工程S4及び交流供給工程S5で用いる周波数として設定する。これにより、表面処理状態、形状などが異なりインピーダンスが異なるバネ状部材Mに対応して交流ブリッジ回路20からの出力を大きくする周波数を一度の操作により設定することができる。最適な周波数は、バネ状部材の材料、形状、表面処理状態により、変化することとなるが、これがあらかじめわかっている場合、周波数の設定は不要である。これにより、表面処理状態の変化に出力が敏感に対応し、検査の感度を向上させることができる。
ここで、周波数設定工程S3は、可変抵抗設定工程S2よりも先に実施することもできる。また、基準検体Sを用いると、最適な周波数を選定して、バネ状部材M本来の特性を少しでも大きく抽出することができるが、基準検体Sに代えて参照検体を用いて周波数を設定することもできる。
【0076】
しきい値設定工程S4では、基準検体Sを検査検出器23に近接させ、周波数設定工程S3において設定された周波数の交流電力を交流電源10から交流ブリッジ回路20に供給する。交流ブリッジ回路20から出力された電圧出力は、増幅器31で増幅され、絶対値回路32において全波整流を行い、LPF33において直流変換を行い、判断手段36へ出力される。検査検出器23に表面処理が良好な基準検体Sを近接させたときに判断手段36へ出力された出力値を正常しきい値として設定し、判断手段36に記憶させておく。ここで、検査検出器23に参照検体を近接させたときに判断手段36へ出力された出力値を不良しきい値として設定し、しきい値を増やすことにより、検査の利便性を高めることもできる。
【0077】
後述する良否判断工程S8において、バネ状部材Mを検査検出器23に近接させたときの出力値と、正常しきい値及び不良しきい値を比較して、バネ状部材Mの良否が判断する場合、バネ状部材Mの出力値が、正常しきい値と不良しきい値の間の値である場合には、良否を判定できないことになる。そこで、表面状態が異なる複数の参照検体を用いて出力測定を行い、正常しきい値との差が小さくなるように不良しきい値を設定することもできる。また、バネ状部材の破壊検査を併用することにより、不良しきい値をより精密に決定しても良い。
【0078】
交流供給工程S5では、周波数設定工程S3において設定された周波数の交流電力を交流電源10から交流ブリッジ回路20に供給する。ここで、基準検体Sは検査検出器23に近接していない。
【0079】
次いで、配置工程S6では、表面処理状態の良否を判定すべきバネ状部材Mを検査検出器23に近接させ、バネ状部材に渦電流が励起されるように配置する。このとき、交流ブリッジ回路20から電圧出力信号が出力され、出力信号は、増幅器31で増幅され、絶対値回路32において全波整流され、LPF33において直流変換される。
【0080】
温度測定手段38は、バネ状部材Mが検査検出器23に近接する前、またはバネ状部材Mの配置後にバネ状部材Mの表面の温度を測定し、バネ状部材Mの表面の温度信号を判断手段36に出力する。
【0081】
検査状態判断工程S7では、位相比較器34により交流電源10から供給される交流電力の波形と交流ブリッジ回路20から出力される交流電圧波形を比較し、それらの位相差を検出する。この位相差をモニターすることにより、検査状態が良好である(例えば、検査検出器23とバネ状部材Mの位置ずれがない)か否かを判断することができる。交流ブリッジ回路20からの出力が同じであっても、位相差が大きく変化した場合には、検査状態に変化があり、検査が適正に行われていない可能性があると判断することができる。また、判断手段36は、温度測定手段38で検出されたバネ状部材Mの温度が所定範囲内である場合に、バネ状部材Mの表面処理状態の良否を判断し、温度測定手段38で検出された温度が所定範囲外である場合に、バネ状部材Mの表面処理状態の良否の判断を行わない。ここで、所定の温度範囲は、バネ状部材Mの温度変化が検査に実質的に影響を及ぼさない温度範囲であり、例えば、0〜60℃と設定することができる。バネ状部材Mの表面の温度が所定の温度範囲外であった場合には、バネ状部材Mが所定の温度範囲内になるまで待機する、バネ状部材Mにエアを吹き付ける、バネ状部材Mの検査を行わず別のラインに移動させる、などを行うことができる。
【0082】
良否判断工程S8では、LPF33において直流変換された信号が判断手段36に入力
され、判断手段36は、入力された信号に基づいてバネ状部材Mの表面状態の良否を判断する。つまり、本工程は交流ブリッジ回路20から出力された出力信号に基づいて、バネ状部材の表面特性を評価する評価工程である。判断手段36による判断結果は、表面特性検査選別装置1の制御装置80に出力される。また、表示手段37により表示し、表面状体が不良である場合には警告することもできる。
【0083】
バネ状部材Mの表面処理状態の良否の判断は、LPF33からの出力値(測定値)と、しきい値設定工程S4において設定された正常しきい値と、を比較することにより行われる。不良しきい値を設定した場合には、LPF33からの出力値(測定値)と、正常しきい値及び不良しきい値と、を比較することにより行われる。
【0084】
以上の工程により、バネ状部材Mの表面処理状態の良否を簡単かつ高精度に検査することができる。バネ状部材Mの検査を連続して行うには、配置工程S6、検査状態判断工程S7、良否判断工程S8を繰り返し行うことになる。バネ状部材Mの種類、表面処理の種類などを変更する場合には、再度、可変抵抗設定工程S2、周波数設定工程S3、しきい値設定工程S4を実施する。
【0085】
検査検出器23は、バネ状部材Mの表面を流れる渦電流の変化を捉えることにより、表面抵抗変化を間接的に捉えている。ここで、表面処理としてショットピーニング処理を行った場合には、渦電流の流量が変化する要因としてはショットピーニングによる歪みや組織の微細化、転位が挙げられるが、これらは測定環境の温度変化(0℃〜40℃)程度ではほぼ一定である。検査検出器23で検出する磁気変化は、渦電流の反磁界の変化によるものであり、渦電流が変化する要因が、測定環境の温度変化の影響を受けにくいことから、温度変化による検査精度への影響を小さくすることができる。なお、基準検出器22において基準状態を検出するために、基準出力を出力するための基準検体Sを用いることもできる。これによれば、例えば、表面処理状態が良好な基準検体Sを用いれば、バネ状部材Mの表面状態の良否を基準検体Sと比較して評価することができる。
【0086】
検査状態判断工程S7を実施しない場合には、表面特性検査装置2は位相比較器34を省略することができる。例えば、レーザー変位計などの位置検出手段にて検査検出器23とバネ状部材Mの位置関係の検出を行い、検査検出器23の軸とバネ状部材Mの軸とのずれが所定の範囲内であるか否かを光電センサ(レーザ)等で判定する、などを行う構成とすることができる。また、位相比較器34、周波数調整器35または表示手段37は、判断手段36に内蔵させるなど一体的に設けることもできる。
【0087】
バネ状部材Mの測定時の交流ブリッジ回路20からの出力が十分に大きい場合には、可変抵抗設定工程S2、周波数設定工程S3を省略することもできる。周波数設定工程S3を省略する場合には、表面特性検査装置2は周波数調整器35を省略することができる。
【0088】
(変更例)
図3に示す実施形態では、バネ状部材Mをスロープ103を介して表面特性検査選別装置1に搬送したが、バネ状部材Mの表面特性検査選別装置1への搬送方法はこれに限定されるものではない。例えば、表面特性検査選別装置1を搬送ベルト101の端部下方に配置し、落下してくるバネ状部材Mを案内部材40で受ける構成を採用することもできる。この場合、
図8に示すように、上方に向かって広く開口する案内部41を備えた案内部材40を好適に用いることができる。ここで、
図8における断面は、
図1(B)における断面に対応する。
【0089】
図9に示すように、案内部材40が、案内部41に連通して形成され、搬送されたバネ状部材Mを貯留する貯留部材42を備える構成を採用することもできる。これによれば、貯留部材42でバネ状部材Mを貯留し、バネ状部材Mを測定部材50に送るタイミングを調節することができるので、バネ状部材Mが搬送されてくるタイミングの変動などに対応することができる。また、前述した落下してくるバネ状部材Mを案内部材40で受ける構成を採用する場合にも好適に用いることができる。ここで、
図9における断面は、
図1(B)における断面に対応する。
【0090】
図10に示すように、案内部材40が複数個の案内部41を備え、各案内部41と検査検出器23の連通を制御するために案内部41下方にシャッターなどの開閉機構(図示せず)を備えた構成を採用することもできる。これにより、案内部41でバネ状部材Mを貯留し、所定のタイミングで測定部材50に送ることができ、効率的な検査を行うことができる。
【0091】
良品搬出口61と不良品搬出口62とのどちらからバネ状部材Mを搬出するかを選択する選択部材としてシャッター63を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、良品搬出口61付近にエアノズルを配置し、良品搬出口61に搬送されてくるバネ状部材Mが不良品と判断された場合、エアノズルからエアを噴射し、良品搬出口61からバネ状部材Mが排出されることを妨げる構成などを採用することができる。
【0092】
測定部材の回転方向の上流側(選別位置A7)に不良品搬出口62を配置し、下流側(選別位置A8)に良品搬出口61を配置することもできる。この場合、選別位置A7に搬送されるバネ状部材Mが不良品であるときには、シャッター63が開き、良品である場合にはシャッター63が閉じるように制御される。
【0093】
制御装置80は判断手段36とは別々に設けなくてもよく、一体で構成することもできる。
【0094】
[実施形態の効果]
本発明の表面特性検査選別装置1及び表面特性検査方法によれば、検査検出器23のコイル23bによりバネ状部材Mに渦電流を励起し、交流ブリッジ回路20から出力された出力信号に基づいてバネ状部材Mの表面特性を評価することができる。これにより、簡単な回路構成で高精度の表面状態の検査が可能である。
また、案内部材40により、バネ状部材Mを検査検出器23の測定位置に確実に案内することができる。測定部材50は、バネ状部材Mを案内部材40から選別部材60へ搬送する間に、表面特性検査装置2によりバネ状部材Mの表面特性を評価し良否を判断するため、この搬送する時間をバネ状部材Mの表面特性を評価し良否を判断する時間に充てることができる。これにより、短いタクトタイムに対応して、バネ状部材Mの表面特性の評価、良否の判断を行うことができる。そして、選別部材60によりバネ状部材Mを良品と不良品とに確実に選別することができる。
また、本発明の表面特性検査選別システムSによれば、搬送手段100を備えているので、バネ状部材Mの搬送、評価、選別、搬出を連続して行うことができる表面特性検査選別システムとして構築することができる。また、良品搬送手段110により良品を速やかに次工程に搬送することができるとともに、不良品回収手段120により不良品のみを選別して回収することができるので、選別作業を効率的に行うことができる。