【解決手段】FOUP1は容器本体2と蓋体3とを有している。蓋体3の内部空間Scには錠装置4が配置されている。蓋体3の第1蓋部20には、枠2Aの第1右溝2pに対向する位置に第1右貫通孔20pが形成されている。第1右貫通孔20pには、上ロックプレート41の上端部41aが配置されている。上端部41aと第1蓋部20の内周面(第1右貫通孔20pの周面)との間には、シール部材80が配置されている。蓋体3の第2蓋部30には、本体右開口31が形成されている。本体右開口31には、ディスク板40が配置されている。ディスク板40と第2蓋部30の内周面(本体右開口31の周面)との間には、シール部材50が配置されている。
前記移動体、前記本体部に形成された前記貫通孔及び前記第1シール部材が、前記駆動部材の両側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の収納容器の蓋体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の「大気EFEM」では、ロードポート上に載置されたFOUPから、EFEM、処理装置に至るウェーハ搬送経路において、FOUP内のみを不活性ガス環境にしておけばよかった。このため、FOUPの構造の密閉性は、単に、FOUP内に外気が入らないようにFOUP(本体)とFOUPの蓋部との間など、外気が出入りする経路の密閉性を担保すればよかった。
【0007】
しかしながら、「不活性ガスEFEM」においては、FOUPおよびEFEM内に要求される酸素濃度がPPMオーダー、湿度が数%以下を維持することが求められる。そこで、上記FOUPを「不活性ガスEFEM」に使用して実験を試みたところ、ロードポートとFOUPとの間をシール部材でシールした状態でFOUPの蓋のラッチを解除してドア部を開放した際、特にFOUP内の酸素濃度、および湿度が一時的に増加する現象が確認された。この現象は、従来の大気EFEMではそもそも問題とならないレベルである。しかし、特に最先端プロセスに用いられる不活性ガスEFEMではウェーハ表面が酸化・腐食するなど性状が変化し、ウェーハの品質が低下するおそれがある。
【0008】
この原因について本発明者らが調べたところ、FOUPの蓋体に形成された内部空間から酸素、水分およびパーティクルなどウェーハの性状を変化させる不純物が漏出することが原因であることがわかった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、FOUPの蓋体を開放した際に、蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止することができるFOUP蓋体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の収納容器の蓋体は、収納容器の容器本体の枠に囲まれた前面開口部に配置される蓋体であり、内部空間を有し、前記枠に形成された溝に対向する位置に貫通孔が形成された本体部と、前記本体部の内部空間に配置され、前記貫通孔を通過して前記溝内に移動可能な先端部を有する移動体と、前記本体部に形成された本体開口に配置され、前記移動体を移動させる駆動部材と、前記移動体と前記貫通孔の周面との間に配置された第1シール部材と、前記駆動部材と前記本体開口の周面との間に配置された第2シール部材とを備えている。
【0011】
収納容器(FOUP)の蓋体には、移動体が出入りする貫通孔と、移動体を駆動する駆動部材が配置される本体開口とが形成されている。本発明者らは、上記貫通孔の周面と移動体との隙間、及び本体開口周面と駆動部材との隙間から酸素や水分等が漏出するという知見を得た。上記構成では、貫通孔周面と移動体との間に第1シール部材を配置してこれらを密閉するとともに、本体開口周面と駆動部材との間に第2シール部材を配置してこれらを密閉している。これにより、蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止できるため、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
【0012】
また、上記構成において、前記本体部は、前記貫通孔が形成された第1蓋部と、前記本体開口が形成された第2蓋部とを有し、前記第1蓋部と前記第2蓋部との間に第3シール部材が配置されていることが好ましい。
【0013】
上記構成では、本体部を構成する第1蓋部と第2蓋部との間に第3シール部材が配置されている。これにより第1蓋部と第2蓋部が密封されるため、第1蓋部と第2蓋部との間に形成された蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止できる。これにより、ウェーハの品質をより向上させることができる。また、蓋体を製造する際、第1蓋部の貫通孔に移動体の先端部を配置し、第2蓋部の本体開口に駆動部材配置した状態で、第1蓋部と第2蓋部を、第3シール部材を介して対向させるとよいため、蓋体を簡易に組み立てることができる。
【0014】
また、上記構成において、前記移動体、前記本体部に形成された前記貫通孔及び前記第1シール部材が、前記駆動部材の両側に配置されていることが好ましい。
【0015】
上記構成では、蓋体において駆動部材の両側に移動体が出入りする貫通孔が形成されており、駆動部材の両側において貫通孔周面と移動体との間に第1シール部材を配置してこれらの間を密封している。これにより、駆動部材の両側において、蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを確実に抑止できる。
【0016】
また、上記構成において、前記駆動部材は磁性体を有しており、非接触駆動部材を前記駆動部材に近付けることにより、前記駆動部材が回転することが好ましい。
【0017】
上記構成では、非接触駆動部材を駆動部材に近付けると駆動部材が回転することにより蓋体を解錠又は施錠することができ、蓋体を解錠させる過程及び蓋体を施錠させる過程において、非接触駆動部材と駆動部材とが擦れ合わない。したがって非接触駆動部材と駆動部材とが擦れ合うことで発生するパーティクルが生じないため、ウェーハの品質をより向上させることができる。
【0018】
本発明の収納容器は、上述した蓋体と、前記蓋体が配置される前面開口部が形成された容器本体とを備えていることが好ましい。
【0019】
上記構成では、蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止できるため、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止できる。これにより、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
〔第1実施形態〕
FOUP(収納容器)1は、
図1に示すように、容器本体2と蓋体3とを備えている。容器本体2の前面部には、枠2Aと、枠2Aに囲まれた前面開口部2aとが形成されている。前面開口部2aには、蓋体3が配置されている。枠2Aと蓋体3との間には、
図2に示すように、シール部材10が配置されている。シール部材10により、枠2Aと蓋体3とが密封される。シール部材10には、例えばOリングを用いることができる。
【0024】
蓋体3は、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、容器本体2の内部空間Sfに対向して配置される第1蓋部20と、第1蓋部20に対向して配置された第2蓋部30とを有している。第1蓋部20及び第2蓋部30は蓋体3の本体部を構成し、第1蓋部20及び第2蓋部30により蓋体3に内部空間Scが形成されている(
図2(b))。第1蓋部20と第2蓋部30はシール部材(第3シール部材)11を介して当接している。シール部材11は、
図2(b)に示すように、第1蓋部20の縁部20xの内側において周回し、第1蓋部20と第2蓋部30との間に配置されている。シール部材11により、第1蓋部20と第2蓋部30とが密封されている。シール部材11には、Oリング等を用いることができる。
【0025】
第1蓋部20の縁部20xは、第1蓋部20の前面部に形成され、外側に拡径している。縁部20xに囲まれた開口には、第2蓋部30が配置されている。縁部20xは、容器本体2の枠2Aの前面部に形成された溝2xに配置されている。縁部20xと枠2Aとの間には、容器本体2と蓋体3とを密封するシール部材10が配置されている。シール部材10は、縁部20xに沿って周回するように配置されている。また、シール部材10は、後述する錠装置4の上ロックプレート(移動体)41及び下ロックプレート(移動体)42の前方に配置されている。FOUP1を前方からみたとき、蓋体3の前面には、第1蓋部20の縁部20xと第2蓋部30が露出している。
【0026】
第1蓋部20と第2蓋部30との間の空間(内部空間)Scには、錠装置4が配置されている。錠装置4は、
図1に示すように、蓋体3の中央を挟んで左右両側に配置されている。錠装置4は、円板状のディスク板(駆動部材)40と、ディスク板40の上下両側に配置された上ロックプレート(移動体)41及び下ロックプレート(移動体)42とを有している。
【0027】
ディスク板40は、蓋体3に形成された本体右開口(本体開口)31及び本体左開口(本体開口)32に配置されている。本体右開口31及び本体左開口32は、蓋体3の第2蓋部30に形成され(
図2(a)参照)、第2蓋部30の中央付近の高さにおいて左右両側に形成されている。
【0028】
本体右開口31側では、
図3(a)に示すように、ディスク板40と第2蓋部30の内側面(本体右開口31の周面)との間に、シール部材(第2シール部材)50が配置されている(
図2(a))。また、本体左開口32側でも、
図3(b)に示すように、ディスク板40と第2蓋部30の内側面(本体左開口32の周面)との間に、シール部材60が配置されている。シール部材50及びシール部材60により、第2蓋部30とディスク板40との間が密封される。シール部材50及びシール部材60には、例えばOリングを用いることができる。
【0029】
図4には、図中右側にFOUP1の正面図を示し、左側にFOUP1の断面図を示している。ディスク板40には、上溝カム40a及び下溝カム40bが周方向に形成されている。上溝カム40aは、ディスク板40の中心の上方から図中の右回りに約90°に亘って形成されている。下溝カム40bは、ディスク板40の中心の下方から図中の右回りに約90°に亘って形成されている。上溝カム40aの径及び下溝カム40bの径は右回りに進むほど小さい。
【0030】
上溝カム40aには、上連結ピン43が配置されている。上連結ピン43は、上ロックプレート41の下端部に取り付けられている。下溝カム40bには、下連結ピン44が配置されている。下連結ピン44は、下ロックプレート42の上端部に取り付けられている。
【0031】
容器本体2の枠2Aには、上枠部に第1右溝2p及び第1左溝2qが形成され、下枠に第2右溝2r及び第2左溝2sが形成されている。枠2Aに対向して配置された蓋体3には、第1右溝2pに対向する位置に第1右貫通孔20pが形成され、第1左溝2qに対向する位置に第1左貫通孔20qが形成され、第2右溝2rに対向する位置に第2右貫通孔20rが形成され、第2左溝2sに対向する位置に第2左貫通孔20sが形成されている。第1右貫通孔20p、第1左貫通孔20q、第2右貫通孔20r、及び第2左貫通孔20sは、蓋体3の第1蓋部20に形成されている(
図2(a)及び
図2(b)参照)。
【0032】
錠装置4の施錠時は、
図4の右側において、上ロックプレート41の上端部(先端部)41aが第1右貫通孔20p及び第1右溝2pに配置され、下ロックプレート42の下端部(先端部)42aが第2右貫通孔20r及び第2右溝2rに配置されている(
図2(a)及び
図2(b)参照)。
図4の左側では、上ロックプレート41の上端部(先端部)41aが第1左貫通孔20q及び第1左溝2qに配置され、下ロックプレート42の下端部(先端部)132aが第2左貫通孔20s及び第2左溝2sに配置されている。
【0033】
図4の右側において、蓋体3の第1右貫通孔20pでは、上ロックプレート41の上端部41aと蓋体3(第1蓋部20)の内周面(第1右貫通孔20pの周面)との間に、シール部材(第1シール部材)80が配置されている(
図2(a)及び
図2(b)参照)。シール部材80により、
図5(a)に示すように、第1蓋部20と上ロックプレート41の上端部41aとが密封される。
【0034】
図4に戻って、蓋体3の第2右貫通孔20rでは、下ロックプレート42の下端部42aと蓋体3(第1蓋部20)の内周面(第2右貫通孔20rの周面)との間には、シール部材(第1シール部材)90が配置されている(
図2(a)参照)。シール部材90により、
図5(b)に示すように、第1蓋部20と下ロックプレート42の下端部42aとが密封される。シール部材80及びシール部材90には、例えばOリングを用いることができる。
【0035】
また、
図4の左側においても、上ロックプレート41の上端部41aと蓋体3(第1蓋部20)の内周面(第1左貫通孔20qの周面)との間に図示しないシール部材(第1シール部)が配置され、下ロックプレート42の下端部42aと蓋体3(第1蓋部20)の内周面(第2左貫通孔20sの周面)との間に図示しないシール部材(第1シール部材)が配置されている。
【0036】
上記構成により、蓋体3の第1蓋部20と上ロックプレート41の上端部41aとが密封され、蓋体3の第1蓋部20と下ロックプレート42の下端部42aとが密封されている。
【0037】
図6に示すように、FOUP1は、蓋体3がEFEMのドア部100に対向するように配置される。蓋体3の本体右開口31及び本体左開口32からは、ディスク板40に形成された錠穴40Aがみえる。錠穴40Aは、FOUP1を前方からみたとき、長方形に形成され、錠装置4の施錠時に横長状に配置される。
図4では、錠装置4の施錠時を図示している。錠穴40Aには、EFEMのドア部100から後方に突出した右鍵部材101及び左鍵部材102が嵌まる。
【0038】
ドア部100の前面部には、右鍵部材101及び左鍵部材102に接続された平行リンク機構120と、平行リンク機構120の下方に流体圧シリンダ130及びロッド140とが配置されている。ロッド140は、流体圧シリンダ130内を軸方向に移動する。流体圧シリンダ130に供給する流体として、窒素、大気等を用いることが好ましい。
【0039】
右鍵部材101及び左鍵部材102は、先端部に、錠穴40Aよりやや小さい直方体状の鍵部を有している。
【0040】
平行リンク機構120は、右リンク板121と、左リンク板122と、右リンク板121及び左リンク板122をほぼ平行な状態で連結した連結板123とを有している。右リンク板121は、右回転軸111を介して右鍵部材101に接続されている。左リンク板122は、左回転軸112を介して左鍵部材102に接続されている。
【0041】
流体圧シリンダ130及びロッド140は、左右方向に平行に配置されている。流体圧シリンダ130の後端部は、支点ピン131によってドア部100に固定されている。ロッド140の先端部は、連結ブロック141によって連結板123に接続されている。
【0042】
ロッド140が流体圧シリンダ130内を軸方向に移動することにより、連結板123が左右方向に平行な状態を維持しながら回転するとともに、右リンク板121及び左リンク板122が右回転軸111及び左回転軸112を中心に回転する。これに伴い、右鍵部材101及び左鍵部材102が回転する。
【0043】
ここで、右鍵部材101及び左鍵部材102により錠装置4を解錠する過程を、
図7〜
図9を参照しつつ説明する。
図7(a)、
図8(a)及び
図9(a)は施錠時の状態を示し、
図7(b)、
図8(b)及び
図9(b)は解錠時の状態を示している。
【0044】
施錠時は、
図7(a)に示すように、ロッド140が流体圧シリンダ130内に配置されている。右鍵部材101及び左鍵部材102は横長状に配置されている。また、
図8(a)に示すように、錠装置4では、上連結ピン43が、上溝カム40aの径が最も大きい部分(半径Rの部分)に配置され、下連結ピン44が、下溝カム40bの径が最も大きい部分に配置されている。
【0045】
解錠するときは、
図9(a)に示すように、FOUP1の蓋体3に右鍵部材101を嵌める。そして、
図7(a)に示す状態から流体圧シリンダ130に空気を供給すると、
図7(b)に示すように、ロッド140が流体圧シリンダ130から押し出される。これに伴い、連結板123が回転するとともに、右リンク板121及び左リンク板122が図中左回転する。これに連動して右鍵部材101及び左鍵部材102が回転する。これにより、右鍵部材101及び左鍵部材102が縦長状に配置される。
【0046】
右鍵部材101及び左鍵部材102の回転にともなって、
図22(b)に示すように、ディスク板40が図中左回転し、上連結ピン43は上溝カム40aの径が最も小さい部分(半径R
1の部分)に配置されるとともに、下連結ピン44は下溝カム40bの径が最も小さい部分に配置される。これに伴い、上ロックプレート41が下方へ移動し、下ロックプレート42が上方へ移動する。
【0047】
これにより、
図9(a)に示すように、上ロックプレート41の上端部41aが容器本体2の第1右溝2pに配置されないようになるとともに、下ロックプレート42の下端部42aが容器本体2の第2右溝2rに配置されないようになる。これにより、錠装置4が解錠される。
【0048】
錠装置4を施錠するときは、
図7(b)に示す状態から流体圧シリンダ130内の空気を排気する。これにより、各部材が上述した動作と逆の動作を行う。これにより、
図9(a)に示すように、上ロックプレート41の上端部41aが第1右溝2pに配置されるとともに、下ロックプレート42の下端部42aが第2右溝2rに配置されて錠装置4が施錠される。
【0049】
以上に述べたように、本実施形態によると以下の効果を奏する。
FOUP1の蓋体3において、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、上ロックプレート41の上端部41aと第1蓋部20の内周面(第1右貫通孔20pの周面)との間にシール部材(第1シール部材)80が配置され、下ロックプレート42の下端部42aと第1蓋部20の内周面(第2右貫通孔20rの周面)との間にシール部材(第1シール部材)90が配置されている。また、ディスク板40と第2蓋部30の内周面(本体右開口31の周面)との間に、シール部材50が配置されている。
さらに、FOUP1の蓋体3の左側においても、上ロックプレート41の上端部41aと第1蓋部20の内周面(第1左貫通孔20qの周面)との間にシール部材(第1シール部材)が配置され、下ロックプレート42の下端部42aと第1蓋部20の内周面(第2左貫通孔20sの周面)との間にシール部材(第1シール部材)が配置されている。また、ディスク板40と第2蓋部30の内周面(本体右開口31の周面)との間に、シール部材60が配置されている(
図3(b)参照)。
これにより蓋体3の第1蓋部20と錠装置4とが密封されるとともに、蓋体3の第2蓋部30と錠装置4とが密封されるため、蓋体3の内部空間Sfから酸素や水分等が漏出することを抑止できる。したがって、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
例えば最先端プロセスへの実用化が望まれている不活性ガスEFEM(不活性ガスを循環させるEFEM)では、PPMオーダーで存在する酸素や数%以下の湿度でも、ウェーハ表面が酸化・腐食するなどして性状が変化するおそれがあるが、本実施形態の蓋体3を有するFOUP1を用いると、常時、蓋体3の内部空間Sfから酸素や水分等が漏出すること抑止できる。したがって、従来問題となっていた蓋体3を開放した際にも、酸素や水分等が漏出すること抑止できる。よって、高品質のウェーハを製造することができる。
【0050】
また、蓋体3の本体部を構成する第1蓋部20と第2蓋部30との間にシール部材(第3シール部材)11が配置されていることにより、第1蓋部20と第2蓋部30が密封されるため、第1蓋部20と第2蓋部30との間に形成された内部空間Sfから酸素や水分等が漏出することを抑止できる。これによりウェーハの品質をより向上させることができる。
また、蓋体3を組み立てる際、第1蓋部20の貫通孔(20p,20q,20r,20s)に上ロックプレート41の上端部41a及び下ロックプレート42の下端部42aを配置し、第2蓋部30の本体右開口31及び本体左開口32にディスク板40を配置した状態で、第1蓋部20と第2蓋部30を、シール部材11を介して対向させるとよいため、蓋体3を簡易に組み立てることができる。
【0051】
また、ディスク板40の上下両側で、
図2(a)に示すようにロックプレート(上ロックプレート41、下ロックプレート42)と第1蓋部20の内周面(第1右貫通孔20pの周面、第2右貫通孔20rの周面)との間に第1シール部材(シール部材80,90)を配置し、ロックプレートと第1蓋部20を密封している。これにより、ディスク板40の上下両側において、蓋体3の内部空間Sfから酸素や水分等が漏出することを確実に抑止できる。
【0052】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、
図10を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、容器本体202と蓋体203とを密封するシール部材210の位置である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0053】
FOUP201は、容器本体202と蓋体203とを備えている。蓋体203は、容器本体202の内部空間Sfに対向して配置された第1蓋部20と、第1蓋部20に対向して配置された第2蓋部230とを有している。第2蓋部230は、第1蓋部20の前方に配置され、第1蓋部20の先端面とシール部材(第3シール部材)11を介して当接している。第1蓋部20と第2蓋部230は、容器本体202の枠202Aの内側面に沿って配置されている。
【0054】
第1蓋部20と容器本体202との間には、これらを密封するシール部材210が配置されている。シール部材210は、錠装置4の上ロックプレート(移動体)41及び下ロックプレート(移動体)132の後方に配置されている。
【0055】
上記構成から、第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、蓋体203の内部空間Sfから酸素や水分等が漏出することを抑止できる。これにより、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
【0056】
〔変形例1〕
次に、本発明の第2実施形態の変形例について、
図11を参照しつつ説明する。変形例において第2実施形態と異なる点は、i)錠装置4の構成と、ii)錠装置4を解錠及び施錠する鍵部材400の構成である。なお、上述した第2実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0057】
ディスク板40の錠穴40Aには、N極とS極とを有する磁石300が配置されている。錠装置4の施錠時は、例えば、N極が上に配置され、S極が下に配置される。
【0058】
鍵部材(非接触駆動部材)400は、N極とS極とを有する磁石である。
【0059】
鍵部材400のN極とS極を磁石300のN極とS極に対向させながら、鍵部材400を磁石300に近付けると、磁石300のN極と鍵部材400のN極が反発するとともに、磁石300のS極と鍵部材400のS極が反発することにより、ディスク板40が回転し、錠装置4が解錠する。また、磁石300は、N極とS極が左右方向に並んで配置された状態となる。
【0060】
錠装置4を施錠するときは、鍵部材400のN極とS極を磁石300のN極とS極に対向させながら、鍵部材400を磁石300に近付ける。これにより、磁石300のN極と鍵部材400のN極が反発するとともに、磁石300のS極と鍵部材400のS極が反発することにより、ディスク板40が回転して錠装置4が施錠される。
【0061】
変形例1でも、第2実施形態と同様に、蓋体203の内部空間Sfから酸素や水分等が漏出することを抑止できる。これにより、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
【0062】
また、鍵部材400と錠装置4とを接触させることなく、錠装置4を解錠及び施錠できるため、鍵部材400と錠装置4とが擦れ合うことにより発生するパーティクルが生じない。したがって、ウェーハの品質をより向上させることができる。
【0063】
なお、変形例1では磁石300及び鍵部材400にN極とS極を有する磁石を用いたが、磁石に限られず、酸化鉄・酸化クロム・コバルト・フェライト等の磁性体を用いてもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0065】
例えば、第1実施形態では、第1蓋部20と第2蓋部30の間にシール部材11が配置されているが、シール部材11の代わりに、第1蓋部20と第2蓋部30を溶接していてもよい。また、第1蓋部20と第2蓋部30が1つの部材から構成されていてもよい。上記構成によっても、蓋体3の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止できる。第2実施形態及び変形例1でも同様である。
【0066】
また、第1実施形態では、第1蓋部20及び第2蓋部30の一方(第1蓋部20)に、ロックプレートが配置される貫通孔(第1右貫通孔20p、第1左貫通孔20q、第2右貫通孔20r及び第2左貫通孔20s)が形成され、他方にディスク板40が配置される本体開口(本体右開口31及び本体左開口32)が形成されているが、第1蓋部20及び第2蓋部30の一方に貫通孔と本体開口の両方が形成されていてもよい。第2実施形態及び変形例1でも同様である。
【0067】
さらに、第1実施形態では、ディスク板40の上下両側で、ロックプレート(上ロックプレート41、下ロックプレート42)と第1蓋部20の内周面(第1右貫通孔20pの周面、第2右貫通孔20rの周面)との間に第1シール部材(シール部材80,90)を配置し、ロックプレートと第1蓋部20を密封しているが(
図2(a)参照)、ディスク板40の一方側だけに、ロックプレートが配置され、ロックプレートと第1蓋部20とが第1シール部材によって密封されていてもよい。
【0068】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、錠装置4を解錠及び施錠する際、鍵部材(右鍵部材101、左鍵部材102)をディスク板40の錠穴40Aに嵌めて鍵部材を回転させることにより、鍵部材がディスク板40に接触する接触構造について説明したが、第1実施形態及び第2実施形態の蓋体は、変形例1のように、錠装置4を解錠及び施錠する際、非接触駆動部材をディスク板40に近付けるとディスク板40が回転するような構造、つまり、錠装置4を解錠及び施錠する際、非接触駆動部材がディスク板40に接触しない非接触構造を備えていてもよい。
さらに、変形例1では、錠装置4を解錠及び施錠する際、鍵部材(非接触駆動部材)400がディスク板40に接触しない非接触構造について説明したが、変形例1の蓋体は、第1実施形態及び第2実施形態のように、錠装置4を解錠及び施錠する際、鍵部材(右鍵部材101、左鍵部材102)がディスク板40に接触する接触構造を備えていてもよい。
このように、鍵部材によって錠装置4を解錠及び施錠する際に鍵部材が錠装置4に接触する接触構造と錠装置4に接触しない非接触構造との両方の構造を蓋体が備えていると、非接触駆動部材を有するロードポートと非接触駆動部材をしないロードポートのいずれにも対応できるため、使用できる環境の自由度が増す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の「大気EFEM」では、ロードポート上に載置されたFOUPから、EFEM、処理装置に至るウェーハ搬送経路において、FOUP内のみを不活性ガス環境にしておけばよかった。このため、FOUPの構造の密閉性は、単に、FOUP内に外気が入らないようにFOUP(本体)とFOUPの蓋部との間など、外気が出入りする経路の密閉性を担保すればよかった。
【0007】
しかしながら、「不活性ガスEFEM」においては、FOUPおよびEFEM内に要求される酸素濃度がPPMオーダー、湿度が数%以下を維持することが求められる。そこで、上記FOUPを「不活性ガスEFEM」に使用して実験を試みたところ、ロードポートとFOUPとの間をシール部材でシールした状態でFOUPの蓋のラッチを解除してドア部を開放した際、特にFOUP内の酸素濃度、および湿度が一時的に増加する現象が確認された。この現象は、従来の大気EFEMではそもそも問題とならないレベルである。しかし、特に最先端プロセスに用いられる不活性ガスEFEMではウェーハ表面が酸化・腐食するなど性状が変化し、ウェーハの品質が低下するおそれがある。
【0008】
この原因について本発明者らが調べたところ、FOUPの蓋体に形成された内部空間から酸素、水分およびパーティクルなどウェーハの性状を変化させる不純物が漏出することが原因であることがわかった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、FOUPの蓋体を開放した際に、蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止することができるFOUP蓋体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の収納容器の蓋体は、収納容器の容器本体の枠に囲まれた前面開口部に配置される蓋体であり、内部空間を有し、前記枠に形成された溝に対向する位置に貫通孔が形成された本体部と、前記本体部の内部空間に配置され、前記貫通孔を通過して前記溝内に移動可能な先端部を有する移動体と、前記本体部に形成された本体開口に配置され、前記移動体を移動させる駆動部材と、前記移動体と前記貫通孔の周面との間に配置された第1シール部材と、前記駆動部材と前記本体開口の周面との間に配置された第2シール部材とを備えている。
【0011】
収納容器(FOUP)の蓋体には、移動体が出入りする貫通孔と、移動体を駆動する駆動部材が配置される本体開口とが形成されている。本発明者らは、上記貫通孔の周面と移動体との隙間、及び本体開口周面と駆動部材との隙間から酸素や水分等が漏出するという知見を得た。上記構成では、貫通孔周面と移動体との間に第1シール部材を配置してこれらを密閉するとともに、本体開口周面と駆動部材との間に第2シール部材を配置してこれらを密閉している。これにより、蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止できるため、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
【0012】
また、上記構成において、前記本体部は、前記貫通孔が形成された第1蓋部と、前記本体開口が形成された第2蓋部とを有し、前記第1蓋部と前記第2蓋部との間に第3シール部材が配置されていることが好ましい。
【0013】
上記構成では、本体部を構成する第1蓋部と第2蓋部との間に第3シール部材が配置されている。これにより第1蓋部と第2蓋部が密封されるため、第1蓋部と第2蓋部との間に形成された蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止できる。これにより、ウェーハの品質をより向上させることができる。また、蓋体を製造する際、第1蓋部の貫通孔に移動体の先端部を配置し、第2蓋部の本体開口に駆動部材
を配置した状態で、第1蓋部と第2蓋部を、第3シール部材を介して対向させるとよいため、蓋体を簡易に組み立てることができる。
【0014】
また、上記構成において、前記移動体、前記本体部に形成された前記貫通孔及び前記第1シール部材が、前記駆動部材の両側に配置されていることが好ましい。
【0015】
上記構成では、蓋体において駆動部材の両側に移動体が出入りする貫通孔が形成されており、駆動部材の両側において貫通孔周面と移動体との間に第1シール部材を配置してこれらの間を密封している。これにより、駆動部材の両側において、蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを確実に抑止できる。
【0016】
また、上記構成において、前記駆動部材は磁性体を有しており、非接触駆動部材を前記駆動部材に近付けることにより、前記駆動部材が回転することが好ましい。
【0017】
上記構成では、非接触駆動部材を駆動部材に近付けると駆動部材が回転することにより蓋体を解錠又は施錠することができ、蓋体を解錠させる過程及び蓋体を施錠させる過程において、非接触駆動部材と駆動部材とが擦れ合わない。したがって非接触駆動部材と駆動部材とが擦れ合うことで発生するパーティクルが生じないため、ウェーハの品質をより向上させることができる。
【0018】
本発明の収納容器は、上述した蓋体と、前記蓋体が配置される前面開口部が形成された容器本体とを備えていることが好ましい。
【0019】
上記構成では、蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止できるため、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、蓋体の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止できる。これにより、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
〔第1実施形態〕
FOUP(収納容器)1は、
図1に示すように、容器本体2と蓋体3とを備えている。容器本体2の前面部には、枠2Aと、枠2Aに囲まれた前面開口部2aとが形成されている。前面開口部2aには、蓋体3が配置されている。枠2Aと蓋体3との間には、
図2に示すように、シール部材10が配置されている。シール部材10により、枠2Aと蓋体3とが密封される。シール部材10には、例えばOリングを用いることができる。
【0024】
蓋体3は、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、容器本体2の内部空間Sfに対向して配置される第1蓋部20と、第1蓋部20に対向して配置された第2蓋部30とを有している。第1蓋部20及び第2蓋部30は蓋体3の本体部を構成し、第1蓋部20及び第2蓋部30により蓋体3に内部空間Scが形成されている(
図2(b))。第1蓋部20と第2蓋部30はシール部材(第3シール部材)11を介して当接している。シール部材11は、
図2(b)に示すように、第1蓋部20の縁部20xの内側において周回し、第1蓋部20と第2蓋部30との間に配置されている。シール部材11により、第1蓋部20と第2蓋部30とが密封されている。シール部材11には、Oリング等を用いることができる。
【0025】
第1蓋部20の縁部20xは、第1蓋部20の前面部に形成され、外側に拡径している。縁部20xに囲まれた開口には、第2蓋部30が配置されている。縁部20xは、容器本体2の枠2Aの前面部に形成された溝2xに配置されている。縁部20xと枠2Aとの間には、容器本体2と蓋体3とを密封するシール部材10が配置されている。シール部材10は、縁部20xに沿って周回するように配置されている。また、シール部材10は、後述する錠装置4の上ロックプレート(移動体)41及び下ロックプレート(移動体)42の前方に配置されている。FOUP1を前方からみたとき、蓋体3の前面には、第1蓋部20の縁部20xと第2蓋部30が露出している。
【0026】
第1蓋部20と第2蓋部30との間の空間(内部空間)Scには、錠装置4が配置されている。錠装置4は、
図1に示すように、蓋体3の中央を挟んで左右両側に配置されている。錠装置4は、円板状のディスク板(駆動部材)40と、ディスク板40の上下両側に配置された上ロックプレート(移動体)41及び下ロックプレート(移動体)42とを有している。
【0027】
ディスク板40は、蓋体3に形成された本体右開口(本体開口)31及び本体左開口(本体開口)32に配置されている。本体右開口31及び本体左開口32は、蓋体3の第2蓋部30に形成され(
図2(a)参照)、第2蓋部30の中央付近の高さにおいて左右両側に形成されている。
【0028】
本体右開口31側では、
図3(a)に示すように、ディスク板40と第2蓋部30の内側面(本体右開口31の周面)との間に、シール部材(第2シール部材)50が配置されている(
図2(a))。また、本体左開口32側でも、
図3(b)に示すように、ディスク板40と第2蓋部30の内側面(本体左開口32の周面)との間に、シール部材60が配置されている。シール部材50及びシール部材60により、第2蓋部30とディスク板40との間が密封される。シール部材50及びシール部材60には、例えばOリングを用いることができる。
【0029】
図4には、図中右側にFOUP1の正面図を示し、左側にFOUP1の断面図を示している。ディスク板40には、上溝カム40a及び下溝カム40bが周方向に形成されている。上溝カム40aは、ディスク板40の中心の上方から図中の右回りに約90°に亘って形成されている。下溝カム40bは、ディスク板40の中心の下方から図中の右回りに約90°に亘って形成されている。上溝カム40aの径及び下溝カム40bの径は右回りに進むほど小さい。
【0030】
上溝カム40aには、上連結ピン43が配置されている。上連結ピン43は、上ロックプレート41の下端部に取り付けられている。下溝カム40bには、下連結ピン44が配置されている。下連結ピン44は、下ロックプレート42の上端部に取り付けられている。
【0031】
容器本体2の枠2Aには、上枠部に第1右溝2p及び第1左溝2qが形成され、下枠に第2右溝2r及び第2左溝2sが形成されている。枠2Aに対向して配置された蓋体3には、第1右溝2pに対向する位置に第1右貫通孔20pが形成され、第1左溝2qに対向する位置に第1左貫通孔20qが形成され、第2右溝2rに対向する位置に第2右貫通孔20rが形成され、第2左溝2sに対向する位置に第2左貫通孔20sが形成されている。第1右貫通孔20p、第1左貫通孔20q、第2右貫通孔20r、及び第2左貫通孔20sは、蓋体3の第1蓋部20に形成されている(
図2(a)及び
図2(b)参照)。
【0032】
錠装置4の施錠時は、
図4の右側において、上ロックプレート41の上端部(先端部)41aが第1右貫通孔20p及び第1右溝2pに配置され、下ロックプレート42の下端部(先端部)42aが第2右貫通孔20r及び第2右溝2rに配置されている(
図2(a)及び
図2(b)参照)。
図4の左側では、上ロックプレート41の上端部(先端部)41aが第1左貫通孔20q及び第1左溝2qに配置され、下ロックプレート42の下端部(先端部)132aが第2左貫通孔20s及び第2左溝2sに配置されている。
【0033】
図4の右側において、蓋体3の第1右貫通孔20pでは、上ロックプレート41の上端部41aと蓋体3(第1蓋部20)の内周面(第1右貫通孔20pの周面)との間に、シール部材(第1シール部材)80が配置されている(
図2(a)及び
図2(b)参照)。シール部材80により、
図5(a)に示すように、第1蓋部20と上ロックプレート41の上端部41aとが密封される。
【0034】
図4に戻って、蓋体3の第2右貫通孔20rでは、下ロックプレート42の下端部42aと蓋体3(第1蓋部20)の内周面(第2右貫通孔20rの周面)との間には、シール部材(第1シール部材)90が配置されている(
図2(a)参照)。シール部材90により、
図5(b)に示すように、第1蓋部20と下ロックプレート42の下端部42aとが密封される。シール部材80及びシール部材90には、例えばOリングを用いることができる。
【0035】
また、
図4の左側においても、上ロックプレート41の上端部41aと蓋体3(第1蓋部20)の内周面(第1左貫通孔20qの周面)との間に図示しないシール部材(第1シール部)が配置され、下ロックプレート42の下端部42aと蓋体3(第1蓋部20)の内周面(第2左貫通孔20sの周面)との間に図示しないシール部材(第1シール部材)が配置されている。
【0036】
上記構成により、蓋体3の第1蓋部20と上ロックプレート41の上端部41aとが密封され、蓋体3の第1蓋部20と下ロックプレート42の下端部42aとが密封されている。
【0037】
図6に示すように、FOUP1は、蓋体3がEFEMのドア部100に対向するように配置される。蓋体3の本体右開口31及び本体左開口32からは、ディスク板40に形成された錠穴40Aがみえる。錠穴40Aは、FOUP1を前方からみたとき、長方形に形成され、錠装置4の施錠時に横長状に配置される。
図4では、錠装置4の施錠時を図示している。錠穴40Aには、EFEMのドア部100から後方に突出した右鍵部材101及び左鍵部材102が嵌まる。
【0038】
ドア部100の前面部には、右鍵部材101及び左鍵部材102に接続された平行リンク機構120と、平行リンク機構120の下方に流体圧シリンダ130及びロッド140とが配置されている。ロッド140は、流体圧シリンダ130内を軸方向に移動する。流体圧シリンダ130に供給する流体として、窒素、大気等を用いることが好ましい。
【0039】
右鍵部材101及び左鍵部材102は、先端部に、錠穴40Aよりやや小さい直方体状の鍵部を有している。
【0040】
平行リンク機構120は、右リンク板121と、左リンク板122と、右リンク板121及び左リンク板122をほぼ平行な状態で連結した連結板123とを有している。右リンク板121は、右回転軸111を介して右鍵部材101に接続されている。左リンク板122は、左回転軸112を介して左鍵部材102に接続されている。
【0041】
流体圧シリンダ130及びロッド140は、左右方向に平行に配置されている。流体圧シリンダ130の後端部は、支点ピン131によってドア部100に固定されている。ロッド140の先端部は、連結ブロック141によって連結板123に接続されている。
【0042】
ロッド140が流体圧シリンダ130内を軸方向に移動することにより、連結板123が左右方向に平行な状態を維持しながら回転するとともに、右リンク板121及び左リンク板122が右回転軸111及び左回転軸112を中心に回転する。これに伴い、右鍵部材101及び左鍵部材102が回転する。
【0043】
ここで、右鍵部材101及び左鍵部材102により錠装置4を解錠する過程を、
図7〜
図9を参照しつつ説明する。
図7(a)、
図8(a)及び
図9(a)は施錠時の状態を示し、
図7(b)、
図8(b)及び
図9(b)は解錠時の状態を示している。
【0044】
施錠時は、
図7(a)に示すように、ロッド140が流体圧シリンダ130内に配置されている。右鍵部材101及び左鍵部材102は横長状に配置されている。また、
図8(a)に示すように、錠装置4では、上連結ピン43が、上溝カム40aの径が最も大きい部分(半径Rの部分)に配置され、下連結ピン44が、下溝カム40bの径が最も大きい部分に配置されている。
【0045】
解錠するときは、
図9(a)に示すように、FOUP1の蓋体3に右鍵部材101を嵌める。そして、
図7(a)に示す状態から流体圧シリンダ130に空気を供給すると、
図7(b)に示すように、ロッド140が流体圧シリンダ130から押し出される。これに伴い、連結板123が回転するとともに、右リンク板121及び左リンク板122が図中左回転する。これに連動して右鍵部材101及び左鍵部材102が回転する。これにより、右鍵部材101及び左鍵部材102が縦長状に配置される。
【0046】
右鍵部材101及び左鍵部材102の回転にともなって、図
8(b)に示すように、ディスク板40が図中左回転し、上連結ピン43は上溝カム40aの径が最も小さい部分(半径R
1の部分)に配置されるとともに、下連結ピン44は下溝カム40bの径が最も小さい部分に配置される。これに伴い、上ロックプレート41が下方へ移動し、下ロックプレート42が上方へ移動する。
【0047】
これにより、
図9(a)に示すように、上ロックプレート41の上端部41aが容器本体2の第1右溝2pに配置されないようになるとともに、下ロックプレート42の下端部42aが容器本体2の第2右溝2rに配置されないようになる。これにより、錠装置4が解錠される。
【0048】
錠装置4を施錠するときは、
図7(b)に示す状態から流体圧シリンダ130内の空気を排気する。これにより、各部材が上述した動作と逆の動作を行う。これにより、
図9(a)に示すように、上ロックプレート41の上端部41aが第1右溝2pに配置されるとともに、下ロックプレート42の下端部42aが第2右溝2rに配置されて錠装置4が施錠される。
【0049】
以上に述べたように、本実施形態によると以下の効果を奏する。
FOUP1の蓋体3において、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、上ロックプレート41の上端部41aと第1蓋部20の内周面(第1右貫通孔20pの周面)との間にシール部材(第1シール部材)80が配置され、下ロックプレート42の下端部42aと第1蓋部20の内周面(第2右貫通孔20rの周面)との間にシール部材(第1シール部材)90が配置されている。また、ディスク板40と第2蓋部30の内周面(本体右開口31の周面)との間に、シール部材50が配置されている。
さらに、FOUP1の蓋体3の左側においても、上ロックプレート41の上端部41aと第1蓋部20の内周面(第1左貫通孔20qの周面)との間にシール部材(第1シール部材)が配置され、下ロックプレート42の下端部42aと第1蓋部20の内周面(第2左貫通孔20sの周面)との間にシール部材(第1シール部材)が配置されている。また、ディスク板40と第2蓋部30の内周面(本体右開口31の周面)との間に、シール部材60が配置されている(
図3(b)参照)。
これにより蓋体3の第1蓋部20と錠装置4とが密封されるとともに、蓋体3の第2蓋部30と錠装置4とが密封されるため、蓋体3の内部空間
Scから酸素や水分等が漏出することを抑止できる。したがって、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
例えば最先端プロセスへの実用化が望まれている不活性ガスEFEM(不活性ガスを循環させるEFEM)では、PPMオーダーで存在する酸素や数%以下の湿度でも、ウェーハ表面が酸化・腐食するなどして性状が変化するおそれがあるが、本実施形態の蓋体3を有するFOUP1を用いると、常時、蓋体3の内部空間
Scから酸素や水分等が漏出すること抑止できる。したがって、従来問題となっていた蓋体3を開放した際にも、酸素や水分等が漏出すること抑止できる。よって、高品質のウェーハを製造することができる。
【0050】
また、蓋体3の本体部を構成する第1蓋部20と第2蓋部30との間にシール部材(第3シール部材)11が配置されていることにより、第1蓋部20と第2蓋部30が密封されるため、第1蓋部20と第2蓋部30との間に形成された内部空間
Scから酸素や水分等が漏出することを抑止できる。これによりウェーハの品質をより向上させることができる。
また、蓋体3を組み立てる際、第1蓋部20の貫通孔(20p,20q,20r,20s)に上ロックプレート41の上端部41a及び下ロックプレート42の下端部42aを配置し、第2蓋部30の本体右開口31及び本体左開口32にディスク板40を配置した状態で、第1蓋部20と第2蓋部30を、シール部材11を介して対向させるとよいため、蓋体3を簡易に組み立てることができる。
【0051】
また、ディスク板40の上下両側で、
図2(a)に示すようにロックプレート(上ロックプレート41、下ロックプレート42)と第1蓋部20の内周面(第1右貫通孔20pの周面、第2右貫通孔20rの周面)との間に第1シール部材(シール部材80,90)を配置し、ロックプレートと第1蓋部20を密封している。これにより、ディスク板40の上下両側において、蓋体3の内部空間
Scから酸素や水分等が漏出することを確実に抑止できる。
【0052】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、
図10を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、容器本体202と蓋体203とを密封するシール部材210の位置である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0053】
FOUP201は、容器本体202と蓋体203とを備えている。蓋体203は、容器本体202の内部空間Sfに対向して配置された第1蓋部20と、第1蓋部20に対向して配置された第2蓋部230とを有している。第2蓋部230は、第1蓋部20の前方に配置され、第1蓋部20の先端面とシール部材(第3シール部材)11を介して当接している。第1蓋部20と第2蓋部230は、容器本体202の枠202Aの内側面に沿って配置されている。
【0054】
第1蓋部20と容器本体202との間には、これらを密封するシール部材210が配置されている。シール部材210は、錠装置4の上ロックプレート(移動体)41及び下ロックプレート(移動体)
42の後方に配置されている。
【0055】
上記構成から、第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、蓋体203の内部空間
Scから酸素や水分等が漏出することを抑止できる。これにより、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
【0056】
〔変形例1〕
次に、本発明の第2実施形態の変形例について、
図11を参照しつつ説明する。変形例において第2実施形態と異なる点は、i)錠装置4の構成と、ii)錠装置4を解錠及び施錠する鍵部材400の構成である。なお、上述した第2実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0057】
ディスク板40の錠穴40Aには、N極とS極とを有する磁石300が配置されている。錠装置4の施錠時は、例えば、N極が上に配置され、S極が下に配置される。
【0058】
鍵部材(非接触駆動部材)400は、N極とS極とを有する磁石である。
【0059】
鍵部材400のN極とS極を磁石300のN極とS極に対向させながら、鍵部材400を磁石300に近付けると、磁石300のN極と鍵部材400のN極が反発するとともに、磁石300のS極と鍵部材400のS極が反発することにより、ディスク板40が回転し、錠装置4が解錠する。また、磁石300は、N極とS極が左右方向に並んで配置された状態となる。
【0060】
錠装置4を施錠するときは、鍵部材400のN極とS極を磁石300のN極とS極に対向させながら、鍵部材400を磁石300に近付ける。これにより、磁石300のN極と鍵部材400のN極が反発するとともに、磁石300のS極と鍵部材400のS極が反発することにより、ディスク板40が回転して錠装置4が施錠される。
【0061】
変形例1でも、第2実施形態と同様に、蓋体203の内部空間
Scから酸素や水分等が漏出することを抑止できる。これにより、ウェーハの品質を従来より向上させることができる。
【0062】
また、鍵部材400と錠装置4とを接触させることなく、錠装置4を解錠及び施錠できるため、鍵部材400と錠装置4とが擦れ合うことにより発生するパーティクルが生じない。したがって、ウェーハの品質をより向上させることができる。
【0063】
なお、変形例1では磁石300及び鍵部材400にN極とS極を有する磁石を用いたが、磁石に限られず、酸化鉄・酸化クロム・コバルト・フェライト等の磁性体を用いてもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0065】
例えば、第1実施形態では、第1蓋部20と第2蓋部30の間にシール部材11が配置されているが、シール部材11の代わりに、第1蓋部20と第2蓋部30を溶接していてもよい。また、第1蓋部20と第2蓋部30が1つの部材から構成されていてもよい。上記構成によっても、蓋体3の内部空間から酸素や水分等が漏出することを抑止できる。第2実施形態及び変形例1でも同様である。
【0066】
また、第1実施形態では、第1蓋部20及び第2蓋部30の一方(第1蓋部20)に、ロックプレートが配置される貫通孔(第1右貫通孔20p、第1左貫通孔20q、第2右貫通孔20r及び第2左貫通孔20s)が形成され、他方にディスク板40が配置される本体開口(本体右開口31及び本体左開口32)が形成されているが、第1蓋部20及び第2蓋部30の一方に貫通孔と本体開口の両方が形成されていてもよい。第2実施形態及び変形例1でも同様である。
【0067】
さらに、第1実施形態では、ディスク板40の上下両側で、ロックプレート(上ロックプレート41、下ロックプレート42)と第1蓋部20の内周面(第1右貫通孔20pの周面、第2右貫通孔20rの周面)との間に第1シール部材(シール部材80,90)を配置し、ロックプレートと第1蓋部20を密封しているが(
図2(a)参照)、ディスク板40の一方側だけに、ロックプレートが配置され、ロックプレートと第1蓋部20とが第1シール部材によって密封されていてもよい。
【0068】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、錠装置4を解錠及び施錠する際、鍵部材(右鍵部材101、左鍵部材102)をディスク板40の錠穴40Aに嵌めて鍵部材を回転させることにより、鍵部材がディスク板40に接触する接触構造について説明したが、第1実施形態及び第2実施形態の蓋体は、変形例1のように、錠装置4を解錠及び施錠する際、非接触駆動部材をディスク板40に近付けるとディスク板40が回転するような構造、つまり、錠装置4を解錠及び施錠する際、非接触駆動部材がディスク板40に接触しない非接触構造を備えていてもよい。
さらに、変形例1では、錠装置4を解錠及び施錠する際、鍵部材(非接触駆動部材)400がディスク板40に接触しない非接触構造について説明したが、変形例1の蓋体は、第1実施形態及び第2実施形態のように、錠装置4を解錠及び施錠する際、鍵部材(右鍵部材101、左鍵部材102)がディスク板40に接触する接触構造を備えていてもよい。
このように、鍵部材によって錠装置4を解錠及び施錠する際に鍵部材が錠装置4に接触する接触構造と錠装置4に接触しない非接触構造との両方の構造を蓋体が備えていると、非接触駆動部材を有するロードポートと非接触駆動部材を
有さないロードポートのいずれにも対応できるため、使用できる環境の自由度が増す。