特開2017-38614(P2017-38614A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-38614(P2017-38614A)
(43)【公開日】2017年2月23日
(54)【発明の名称】ヒト胚性幹細胞の分化
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0735 20100101AFI20170203BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20170203BHJP
   A61K 35/545 20150101ALN20170203BHJP
   A61K 35/39 20150101ALN20170203BHJP
【FI】
   C12N5/0735
   A61P3/10
   A61K35/545
   A61K35/39
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-199159(P2016-199159)
(22)【出願日】2016年10月7日
(62)【分割の表示】特願2013-527098(P2013-527098)の分割
【原出願日】2011年8月17日
(31)【優先権主張番号】61/378,448
(32)【優先日】2010年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147131
【弁理士】
【氏名又は名称】今里 崇之
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】フライアー,ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BA25
4B065BB15
4B065BB19
4B065CA44
4C087AA10
4C087BB51
4C087BB63
4C087NA14
4C087ZC35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多能性幹細胞からのインスリン産生細胞への分化を促進する方法の提供。
【解決手段】細胞集団のうち、80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を生成する方法であって、多能性幹細胞集団を培養する工程と、グルコース濃度が10.5mMを超えない培地中で、多能性幹細胞集団を、細胞集団のうち80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化させる工程と、を含む、方法を提供、細胞集団の80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を生成することにより、ヒト胚性幹細胞からの、インスリンを発現する細胞への分化効率を改善させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞集団のうち、80%超の細胞が胚体内胚葉系(definitive endoderm lineage)に
特徴的なマーカーを発現する、細胞集団。
【請求項2】
細胞集団のうち、80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集
団を生成する方法であって、
a.多能性幹細胞集団を培養する工程と、
b.グルコース濃度が10.5mMを超えない培地中で、多能性幹細胞集団を、細胞集
団のうち80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化
させる工程と、を含む、方法。
【請求項3】
前記多能性幹細胞集団が、アクチビンAとWntリガンドとを用い、細胞集団のうち8
0%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化される、請
求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多能性幹細胞集団が、GDF−8と、アニリン−ピリジノトリアジン、環状アニリ
ン−ピリジノトリアジン、N−{[1−(フェニルメチル)アゼパン−4−イル]メチル
}−2−ピリジン−3−イルアセトアミド、4−{[4−(4−{[2−(ピリジン−2
−イルアミノ)エチル]アミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピリジン−2−
イル]オキシ}ブタン−1−オール、3−({3−[4−({2−[メチル(ピリジン−
2−イル)アミノ]エチル}アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]ピリジン−
2−イル}アミノ)プロパン−1−オール、N〜4〜−[2−(3−フルオロフェニル)
エチル]−N〜2〜−[3−(4−メチルピペラジン−1−イル)プロピル]ピリド[2
,3−d]ピリミジン−2,4−ジアミン、1−メチル−N−[(4−ピリジン−3−イ
ル−2−{[3−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}−1,3−チアゾール−5
−イル)メチル]ピペリジン−4−カルボキサミド、1,1−ジメチルエチル{2−[4
−({5−[3−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾ
ール−3−イル}アミノ)フェニル]エチル}カルバマート、1,1−ジメチルエチル{
[3−({5−[5−(3−ヒドロキシプロピル)−2−(メチルオキシ)フェニル]−
1,3−オキサゾール−2−イル}アミノ)フェニル]メチル}カルバマート、1−({
5−[6−({4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)スルホニル]フェニル}アミ
ノ)ピラジン−2−イル]チオフェン−2−イル}メチル)ピペリジン−4−オール、1
−({4−[6−({4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)スルホニル]フェニル
}アミノ)ピラジン−2−イル]チオフェン−2−イル}メチル)ピペリジン−4−カル
ボキサミド、及び2−{[4−(1−メチルエチル)フェニル]アミノ}−N−(2−チ
オフェン−2−イルエチル)−7,8−ジヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン−6(
5H)−カルボキサミドからなる群から選択される少なくとも1つの他の因子と、を用い
、細胞集団のうち80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団
へと分化される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの他の因子が14−プロパ−2−エン−1−イル−3,5,7,1
4,17,23,27−ヘプタアザテトラシクロ[19.3.1.1〜2,6〜.1〜8
,12〜]ヘプタコサ−1(25),2(27),3,5,8(26),9,11,21
,23−ノナエン−16−オンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
グルコース濃度が5.5mMを超えない、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2010年8月31日に出願された、米国特許仮出願第61/378,44
8号の利益を主張するものであり、当該出願を、本明細書にその全容において、かつあら
ゆる目的について援用するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、多能性幹細胞からのインスリン産生細胞への分化を促進する方法を提供する
。具体的には、本発明は、細胞集団を生成する方法を提供し、この細胞集団のうち、80
%超の細胞が胚体内胚葉系(definitive endoderm lineage)に特徴的なマーカーを発現
する。
【背景技術】
【0003】
I型糖尿病の細胞補充療法の進歩及び移植可能なランゲルハンス島の不足により、生着
に適したインスリン産生細胞すなわちβ細胞の供給源の開発に注目が集まっている。1つ
の手法として、例えば、胚性幹細胞などの多能性幹細胞から機能性のβ細胞を生成するも
のがある。
【0004】
脊椎動物の胚発生において、多能性細胞は、原腸形成として公知のプロセスにて、3つ
の胚葉(外胚葉、中胚葉、及び内胚葉)を含む細胞のグループを生じる。例えば、甲状腺
、胸腺、膵臓、腸、及び肝臓等の組織は、内胚葉から中間段階を経て発達する。このプロ
セスにおける中間段階は、胚体内胚葉の形成である。胚体内胚葉細胞はHNF3 β、G
ATA4、MIXL1、CXCR4及びSOX17などの多数のマーカーを発現する。
【0005】
膵臓の形成は、胚体内胚葉の膵臓内胚葉への分化により生じる。膵臓内胚葉の細胞は膵
臓−十二指腸ホメオボックス遺伝子、PDX1を発現する。PDX1が存在しない場合、
膵臓の発達は、腹側芽及び背側芽の形成より先に進行しない。したがって、PDX1の発
現は、膵臓器官形成において重要な工程を運命づける。成熟した膵臓は、他の細胞型の中
でも、外分泌組織及び内分泌組織を含む。外分泌組織及び内分泌組織は、膵臓内胚葉の分
化によって生じる。
【0006】
島細胞の特徴を保持する細胞がマウスの胚細胞から誘導されたことが報告されている。
例えば、Lumelskyら(Science 292:1389、2001年)は、マ
ウスの胚幹細胞の、膵島と同様のインスリン分泌構造への分化を報告している。Sori
aら(Diabetes 49:157、2000年)は、ストレプトゾトシン糖尿病の
マウスにおいて、マウスの胚幹細胞から誘導されたインスリン分泌細胞が糖血症を正常化
することを報告している。
【0007】
一例において、ホリ(Hori)ら(PNAS 99:16105,2002)は、ホ
スホイノシチド3−キナーゼ(LY294002)の阻害剤でマウス胚性幹細胞を処理す
ることにより、β細胞に類似した細胞が生成されたことを開示している。
【0008】
他の例では、Blyszczukら(PNAS 100:998、2003年)が、P
ax4を構成的に発現するマウス胚幹細胞からのインスリン産生細胞の生成を報告してい
る。
【0009】
Micallefらは、レチノイン酸は、胚幹細胞のPDX1陽性膵臓内胚葉形成に関
する予定運命を制御できることを報告している。レチノイン酸は、胚における原腸形成の
終了時に相当する期間中に、胚性幹細胞分化の4日目に培養液に添加すると、Pdx1発
現の誘導に最も効果的である(Diabetes 54:301、2005年)。
【0010】
Miyazakiらは、Pdx1を過剰発現するマウス胚幹細胞株を報告している。こ
の結果は、外因性のPdx1発現が、得られた分化細胞内でインスリン、ソマトスタチン
、グルコキナーゼ、ニューロゲニン3、p48、Pax6、及びHnf6遺伝子の発現を
明らかに増加させたことを示している(Diabetes 53:1030,2004)
【0011】
Skoudyらは、マウス胚性幹細胞内で、アクチビンA(TGF−βスーパーファミ
リーのメンバー)が、膵臓外分泌遺伝子(p48及びアミラーゼ)、並びに内分泌遺伝子
(Pdx1、インスリン及びグルカゴン)の発現を上方制御することを報告している。最
大の効果はアクチビンAを1nM用いた場合に観察された。Skoudyらはまた、イン
スリン及びPdx1のmRNA発現レベルはレチノイン酸による影響を受けなかった一方
で、Pdx1の転写レベルは3nMのFGF7による処理により増加したことも観察して
いる(Biochem.J.379:749,2004)。
【0012】
Shirakiらは、胚幹細胞のPDX1陽性細胞への分化を特異的に高める増殖因子
の効果を研究した。Shirakiらは、TGF−β2によってPDX1陽性細胞がより
高い比率で再現性よく得られたことを観察している(Genes Cells.2005
Jun;10(6):503〜16)。
【0013】
Gordonらは、血清の非存在下、かつアクチビンとWntシグナル伝達阻害剤の存
在下での、マウス胚性幹細胞からの短尾奇形[陽性]/HNF3β[陽性]内胚葉細胞へ
の誘導を示した(米国特許第2006/0003446(A1)号)。
【0014】
Gordonら(PNAS、103巻、16806頁、2006年)は、「Wnt及び
TGF−β/nodal/アクチビンシグナル伝達は、前側の原始線条の生成の際に同時
に必要である」と述べている。
【0015】
しかしながら、胚幹細胞発達のマウスモデルは、例えば、ヒト等のより高等な哺乳動物
内の発達プログラムを正確に模倣しない恐れがある。
【0016】
Thomsonらは、ヒト胚盤胞から胚幹細胞を単離した(Science 282:
114、1998年)。これと同時に、Gearhart及び共同研究者は、胎児生殖腺
組織から、ヒト胚生生殖(hEG)細胞株を誘導した(Shamblottら、Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 95:13726,1998)。単に白血病抑
制因子(LIF)と共に培養すれば分化が阻止され得るマウス胚幹細胞とは異なり、ヒト
胚幹細胞は、非常に特殊な条件下で維持する必要がある(米国特許第6,200,806
号、国際公開第99/20741号;国際公開第01/51616号)。
【0017】
ダムールら(D’Amour)は、高濃度のアクチビン及び低濃度の血清の存在下で、
ヒト胚性幹細胞由来の胚体内胚葉の濃縮化された培養物が調製されたことを述べている(
Nature Biotechnology 2005)。これらの細胞を、マウスの腎
臓皮膜下で移植することにより、いくつかの内胚葉性器官の特徴を有する、より成熟した
細胞への分化が見られた。ヒト胚幹細胞由来の胚体内胚葉細胞は、FGF−10の添加後
、PDX1陽性細胞に更に分化し得る(米国特許出願公開第2005/0266554A
1号)。
【0018】
D’Amourら(Nature Biotechnology−24,1392〜1
401(2006))は、「我々はヒト胚性幹(hES)細胞を、膵臓ホルモンインスリ
ン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド及びグレリンを合成できる内分泌細
胞へと変換させる分化プロセスを開発した。このプロセスは、胚体内胚葉、腸管内胚葉、
膵臓内胚葉及び内分泌前駆体が、内分泌ホルモンを発現する細胞へと向かう段階に類似し
た段階を通して細胞を指向させることにより、インビボでの膵臓器官形成を模倣する。」
と述べている。
【0019】
別の例において、Fiskらは、ヒト胚幹細胞から膵島細胞を産生するシステムを報告
している(米国特許出願公開第2006/0040387(A1)号)。この場合、分化
経路は3つの段階に分割された。ヒト胚性幹細胞は、まず始めに酪酸ナトリウム並びにア
クチビンAを組み合わせて処理することで内胚葉へと分化された。次いで、ノギンなどの
TGF−βアンタゴニストとEGF又はベータセルリンを組み合わせて用い、細胞を培養
し、PDX1陽性細胞を生成した。最終分化は、ニコチンアミドにより誘導した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
よりβ細胞に類似している、機能性のインスリン発現細胞を生成するためのin vi
tro法の開発が未だに強く求められている。本発明は、細胞集団の80%超の細胞が胚
体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を生成することにより、ヒト胚性幹細
胞からの、インスリンを発現する細胞への分化効率を改善させるという代替アプローチを
用いた。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一実施形態では、本発明は、細胞集団を提供し、この細胞集団のうち、80%超の細胞
が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する。
【0022】
一実施形態では、本発明は、細胞集団のうち、80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的
なマーカーを発現する細胞集団を生成する方法であって、
a.多能性幹細胞集団を培養する工程と、
b.グルコース濃度が10.5mMを超えない培地中で、多能性幹細胞集団を、細胞集
団のうち80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化
させる工程と、を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞株H1の細胞で示された、発現タンパク質についてのFACS解析を示す。
図2】実施例2に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞株H1の細胞におけるCXCR4発現レベル(パネルB)並びに細胞数及び生存率(パネルB)に対する、培地中グルコース濃度の影響を示す。
図3】実施例2に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞株H1の細胞におけるCXCR4発現レベル及び培養細胞外観写真(パネルA)並びにSOX17発現に対する培地中グルコース濃度の影響を示す。
図4】実施例2に開示される最初の方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞株H1の細胞で示された遺伝子発現のリアルタイムPCR解析を示す。
図5】実施例2に開示される第2の方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞株H1の細胞で示された遺伝子発現のリアルタイムPCR解析を示す。
図6】実施例2に開示される方法の第1日目〜第4日目に細胞を24時間曝露させた後の各種培地のpHを示す。
図7】実施例3に開示される第2の方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞株H1の細胞で示される遺伝子発現に対する、培地中pHの影響を示す。
図8】実施例4に開示される方法に従って分化させたヒト胚性幹細胞株H1の細胞で示される遺伝子発現のリアルタイムPCR解析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
開示を分かりやすくするため、限定を目的とすることなく、「発明を実施するための形
態」を、本発明の特定の特徴、実施形態、又は用途を説明又は例示する下記の小項目に分
割する。
【0025】
定義
幹細胞は、単独の細胞レベルで自己複製し、分化して後代細胞を生成するという、これ
らの両方の能力で定義される未分化細胞であり、後代細胞には、自己複製前駆細胞、非再
生前駆細胞、及び最終分化細胞が含まれる。幹細胞はまた、インビトロで複数の胚葉層(
内胚葉、中胚葉及び外胚葉)から様々な細胞系の機能的細胞へと分化する能力によって、
また移植後に複数の胚葉層の組織を生じ、胚盤胞への注入後、すべてではないとしても殆
どの組織を提供する能力によっても、特徴付けられる。
【0026】
幹細胞は、発生能によって、(1)全胚及び胚体外細胞型を生じる能力を意味する全能
性、(2)全胚細胞型を生じる能力を意味する多能性、(3)細胞系の小集合を生じるが
、すべて特定の組織、器官、又は生理学的システム内で生じる能力を意味する複能性(例
えば、造血幹細胞(HSC)は、HSC(自己再生)、血液細胞に限定された寡能性前駆
細胞、並びに血液の通常の構成要素である全細胞型及び要素(例えば、血小板)を含む後
代を産生できる)、(4)複能性幹細胞と比較して、より限定された細胞系統の小集合を
生じる能力を意味する寡能性、並びに(5)1つの細胞系(例えば、精子形成幹細胞)を
生じる能力を意味する単能性に分類される。
【0027】
分化は、専門化されていない(「中立の」)又は比較的専門化されていない細胞が、例
えば、神経細胞又は筋細胞などの専門化された細胞の特徴を獲得するプロセスである。分
化細胞又は分化誘導した細胞は、細胞系内でより専門化された(「分化決定された」)状
況を示す細胞である。分化プロセスに適用した際の用語「傾倒した」は、通常の環境下で
特定の細胞型又は細胞型の小集合に分化し続ける分化経路の地点に進行しており、通常の
環境下で異なる細胞型に分化し、又はより分化されていない細胞型に戻ることができない
細胞を指す。脱分化は、細胞が細胞系統内で比較的特殊化されて(又は傾倒して)いない
状況に戻るプロセスを指す。本明細書で使用される場合、細胞系統は、細胞の遺伝、即ち
その細胞がどの細胞に由来するか、またどの細胞を生じ得るかを規定する。細胞系とは、
発生及び分化の遺伝スキーム内にその細胞を位置付けるものである。系統特異的マーカー
とは、対象とする系統の細胞の表現型と特異的に関連した特徴を指し、分化決定されてい
ない細胞の、対象とする系統への分化を評価するために使用することができる。
【0028】
本明細書で使用するとき、「胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞」又は「
ステージ1細胞」又は「ステージ1」とは、以下のマーカー、すなわち、SOX17、G
ATA4、HNF3 β、GSC、CER1、Nodal、FGF8、短尾奇形、Mix
−様ホメオボックスタンパク質、FGF4、CD48、eomesodermin(EO
MES)、DKK4、FGF17、GATA6、CXCR4、C−Kit、CD99、又
はOTX2のうちの少なくとも1つを発現する細胞を指す。胚体内胚葉系に特徴的なマー
カーを発現する細胞としては、原始線条前駆体細胞、原始線条細胞、中内胚葉細胞及び胚
体内胚葉細胞が挙げられる。
【0029】
本明細書で使用するとき、「膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞」とは、
以下のマーカー、すなわち、PDX1、NKX6.1、HNF1 β、PTF1 α、H
NF6、HNF4 α、SOX9、HB9、又はPROX1のうちの少なくとも1つを発
現する細胞を指す。膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞としては、膵臓内
胚葉細胞、原腸管細胞、後部前腸細胞が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用するとき、「胚体内胚葉」は、原腸形成中、胚盤葉上層から生じ、胃腸
管及びその誘導体を形成する細胞の特徴を保持する細胞を指す。胚体内胚葉細胞は、以下
のマーカー、すなわち、HNF3 β、GATA4、SOX17、Cerberus、O
TX2、goosecoid、C−Kit、CD99、及びMIXL1を発現する。
【0031】
本明細書で使用するとき「マーカー」とは、対象とする細胞で差異的に発現される核酸
又はポリペプチド分子である。この文脈において、差異的な発現は、陽性マーカーのレベ
ルの増大及び陰性マーカーのレベルの減少を意味する。マーカー核酸又はポリペプチドの
検出限界は、他の細胞と比較して対象とする細胞において充分に高いか又は低いことから
、当該技術分野において知られる各種方法のいずれを用いても対象とする細胞を他の細胞
から識別及び区別することが可能である。
【0032】
本明細書で使用するとき、「膵臓内分泌細胞」又は「膵臓ホルモン発現細胞」又は「膵
内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞」とは、以下のホルモン、すなわち、インス
リン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチドのうちの少なくとも1つを発
現することが可能な細胞を指す。
【0033】
多能性幹細胞の単離、増殖及び培養
多能性幹細胞の特徴付け
多能性幹細胞は、ステージ特異的胚抗原(SSEA)3及び4、並びにTra−1−6
0及びTra−1−81と呼ばれる抗体によって検出可能なマーカーのうちの1つ以上を
発現する(Thomsonら、Science 282:1145,1998)。インビ
トロで多能性幹細胞を分化させると、SSEA−4、Tra−1−60、及びTra−1
−81の発現が減少し(存在する場合)、SSEA−1の発現が上昇する。未分化の多能
性幹細胞は、典型的には、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定した後、製造業者(V
ector Laboratories(Burlingame Calif.))によ
って記載されるようにVectorRedを基質として現像することによって検出するこ
とができる、アルカリホスファターゼ活性を有しする。未分化の多能性幹細胞はまた、R
T−PCRにより検出されるように、一般にOCT4及びTERTも発現する。
【0034】
増殖させた多能性幹細胞の別の望ましい表現型は、3つの胚葉のすべて、すなわち、内
胚葉、中胚葉、及び外胚葉組織の細胞に分化する能力である。多能性幹細胞の多能性は、
例えば細胞を重症複合型免疫不全症(SCID)マウスに注入し、4%パラホルムアルデ
ヒドを使用して、形成された奇形腫を固定した後、それらを3つの胚葉由来の細胞型の痕
跡に関して組織学的に検査することにより確認することができる。代替的に、多能性は、
胚様体を形成し、この胚様体を3つの胚葉に関連したマーカーの存在に関して評価するこ
とにより決定することができる。
【0035】
増殖させた多能性幹細胞株は、標準的なGバンド法を使用し、対応する霊長類種の発表
されている核型と比較することで、核型を決定することができる。細胞は「正常な核型」
を有することが望ましく、「正常な核型」とは、細胞が正倍数体であり、ヒト染色体がす
べて揃っておりかつ目立った変化のないことを意味する。
【0036】
多能性幹細胞の供給源
使用が可能な多能性幹細胞の種類としては、妊娠期間中の任意の時期(必ずしもではな
いが、通常は妊娠約10〜12週よりも前)に採取した前胚性組織(例えば胚盤胞など)
、胚性組織又は胎児組織などの、妊娠後に形成される組織に由来する多能性細胞の樹立株
が含まれる。非限定的な例としては、例えばヒト胚性幹細胞株H1、H7及びH9(Wi
Cell)などのヒト胚性幹細胞又はヒト胚生殖細胞の樹立株が挙げられる。更に、こう
した細胞の初期の株化又は安定化の際に本開示の組成物を使用することも考えられるが、
その場合は、供給源となる細胞は供給源の組織から直接採取される1次多能性細胞である
。フィーダー細胞の不在下で既に培養された多能性幹細胞集団から採取した細胞も好適で
ある。例えば、BG01v(BresaGen,Athens,GA)などの変異型ヒト
胚幹細胞株も好適である。
【0037】
一実施形態では、ヒト胚性幹細胞は、Thomsonらに開示される方法の通りに調製
される(米国特許第5,843,780号;Science 282:1145,199
8;Curr.Top.Dev.Biol.38:133 ff.,1998;Proc
.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:7844,1995)。
【0038】
多能性幹細胞の培養
一実施形態において、多能性幹細胞は、フィーダー細胞の層上で培養され、このフィー
ダー細胞は、多能性幹細胞を様々な方法で支持する。代替的に、多能性幹細胞は、基本的
にフィーダー細胞が存在しないにも関わらず、ほぼ分化を受けないで多能性幹細胞の増殖
を支持する培養液システム中で培養される。多能性幹細胞を分化させずに無フィーダー培
養液中で増殖させる際には、以前に他の細胞種を予め培養しておいて馴化させた培地を使
用することでこの操作が支持される。代替的に、多能性幹細胞を無フィーダー培養液中で
分化させずに増殖させる際は、合成培地を使用することでこの操作が支持される。
【0039】
一実施形態において、多能性幹細胞は、Reubinoffら(Nature Bio
technology 18:399〜404(2000))に開示されている方法に従
って、マウス胚性線維芽細胞フィーダー細胞層上で培養されてもよい。あるいは、多能性
幹細胞は、Thompsonらに開示されている方法に従ってマウス胚性線維芽細胞フィ
ーダー細胞層上で培養されてもよい(Science 6 November 1998
:Vol.282.no.5391,pp.1145〜1147)。あるいは、多能性幹
細胞は、Richardsら(Stem Cells 21:546〜556,2003
)に開示されているフィーダー細胞層の任意の1つの上で培養されてもよい。
【0040】
一実施形態では、多能性幹細胞は、Wangら(Stem Cells 23:122
1〜1227,2005)に開示されている方法に従って、ヒトフィーダー細胞層の上で
培養されてもよい。代替実施形態では、多能性幹細胞は、Stojkovicら(Ste
m Cells 2005 23:306〜314,2005)に開示されているヒトフ
ィーダー細胞層の上で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、Miyamoto
ら(Stem Cells 22:433〜440,2004)に開示されているヒトフ
ィーダー細胞層の上で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、Amitら(Bi
ol.Reprod 68:2150〜2156,2003)に開示されるヒトフィーダ
ー細胞層上で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、Inzunzaら(Ste
m Cells 23:544〜549,2005)に開示されているヒトフィーダー細
胞層の上で培養されてもよい。
【0041】
一実施形態では、多能性幹細胞は、米国特許出願公開第2002/0072117号に
開示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能性
幹細胞は、米国特許第6642048号に開示されている方法に従って誘導された培地の
中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、国際公開第2005014799に
開示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能性
幹細胞は、Xuら(Stem Cells 22:972〜980,2004)に開示さ
れている方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞
は、米国特許出願公開2007/0010011号に開示されている方法に従って誘導さ
れた培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、米国特許出願公開200
5/0233446号に開示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されても
よい。あるいは、多能性幹細胞は、米国特許第6800480号に開示されている方法に
従って誘導された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、国際公開第
2005065354号に開示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されて
もよい。
【0042】
一実施形態では、多能性幹細胞は、国際公開第2005065354号に開示される培
養培地中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、国際公開第20050868
45号に開示される培養培地中で培養されてもよい。
【0043】
一実施形態では、多能性幹細胞は、Cheonら(BioReprod DOI:10
.1095/biolreprod.105.046870,October 19,2
005)に開示される方法に従って培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、Le
vensteinら(Stem Cells 24:568〜574,2006)に開示
されている方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細
胞は、米国特許出願公開2005/0148070号に開示されている方法に従って誘導
された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、米国特許出願公開20
05/0244962号に開示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されて
もよい。あるいは、多能性幹細胞は、国際公開第2005086845号に開示されてい
る方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよい。
【0044】
多能性幹細胞は、好適な培養基質上に播くことができる。一実施形態において、好適な
培養基質は、例えば基底膜から誘導されたもの、又は接着分子受容体−リガンド結合の一
部を形成し得るもの等の細胞外マトリクス成分である。一実施形態において、好適な培養
基材はMATRIGEL(登録商標)(Becton Dickenson)である。M
ATRIGEL(登録商標)は、Engelbreth−Holm Swarm腫瘍細胞
由来の可溶性製剤であり、室温でゲル化して再構成基底膜を形成する。
【0045】
他の細胞外マトリクス成分及び成分混合物は代替物として好適である。増殖させる細胞
型に応じて、これは、ラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、
ヘパラン硫塩、及び同様物を、単独で又は様々な組み合わせで含み得る。
【0046】
多能性幹細胞は、細胞の生存、増殖、及び所望の特徴の維持を促進する培地の存在下、
基質上に好適な希釈率にて播かれてもよい。これらの特徴のすべては、播種分布に細心の
注意を払うことで利益を得られるものであり、当業者は容易に決定することができる。
【0047】
好適な培地は、以下の成分、すなわち例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM
)、Gibco # 11965−092;ノックアウトダルベッコ改変イーグル培地(
KO DMEM)、Gibco #10829−018;ハムF12/50% DMEM
基本培地;200mM L−グルタミン、Gibco # 15039−027;非必須
アミノ酸溶液、Gibco # 11140−050;β−メルカプトエタノール、Si
gma # M7522;ヒト組み換え塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、Gib
co # 13256−029等から調製することもできる。
【0048】
多能性幹細胞からの胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞の生成
本発明は、多能性幹細胞集団からの、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞
集団の生成方法を提供する。一実施形態では、本発明は、胚体内胚葉系に特徴的なマーカ
ーを発現する細胞を、膵内分泌系マーカーを発現する細胞へと更に分化させる方法を提供
する。一実施形態では、この操作は、段階的分化プロトコルを用いて実施される。このプ
ロトコルでは、まず始めに、多能性幹細胞集団は胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現
する細胞集団へと分化される。次に、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集
団は膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化される。次に、膵臓内
胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団は膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現す
る細胞集団へと分化される。
【0049】
本発明は、80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提
供する。この細胞集団は更に処理されて、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細
胞集団を生成してもよい。この膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団は更
に処理されて、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を生成してもよい。
【0050】
分化の効率は、処理した細胞集団を、所望の細胞型に特徴的なマーカーを発現する細胞
によって発現されるタンパク質マーカーを特異的に認識する作用剤(例えば、抗体など)
に暴露することにより測定することができる。
【0051】
培養又は単離された細胞中のタンパク質及び核酸マーカーの発現を評価する方法は、当
技術分野にて標準的である。この方法としては、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(R
T−PCR)、ノーザンブロット、インサイツハイブリダイゼーション(例えば、Cur
rent Protocols in Molecular Biology(Ausu
belら、eds.2001 supplement)を参照されたい)、並びにイムノ
アッセイ、例えば、免疫組織化学的分析、ウェスタンブロッティング、及びインタクトな
細胞で利用できるマーカーについてのフローサイトメトリー分析(FACS)(例えば、
Harlow及びLane,Using Antibodies:A Laborato
ry Manual,New York:Cold Spring Harbor La
boratory Press(1998)参照)が挙げられる。
【0052】
多能性幹細胞の特徴は当業者に周知であり、多能性幹細胞の更なる特徴は、継続して同
定されている。多能性幹細胞のマーカーとして、例えば、以下のもの、すなわち、ABC
G2、cripto、FOXD3、CONNEXIN43、CONNEXIN45、OC
T4、SOX2、Nanog、hTERT、UTF1、ZFP42、SSEA−3、SS
EA−4、Tra 1−60、Tra 1−81の1つ以上の発現が挙げられる。
【0053】
多能性幹細胞を本発明の方法で処理した後、処理した細胞集団を、胚体内胚葉系統に特
徴的なマーカーを発現する細胞により発現される、例えばCXCR4等のタンパク質マー
カーを特異的に認識する薬剤(例えば、抗体等)に暴露することにより、分化した細胞を
精製することができる。
【0054】
本発明で用いるのに好適な多能性幹細胞としては、例えば、ヒト胚性幹細胞株H9(N
IHコード:WA09)、ヒト胚性幹細胞株H1(NIHコード:WA01)、ヒト胚性
幹細胞株H7(NIHコード:WA07)、及びヒト胚性幹細胞株SA002(Cell
artis,Sweden)が挙げられる。多能性細胞に特徴的な以下のマーカー、すな
わち、ABCG2、cripto、CD9、FOXD3、CONNEXIN43、CON
NEXIN45、OCT4、SOX2、Nanog、hTERT、UTF1、ZFP42
、SSEA−3、SSEA−4、Tra 1−60、及びTra 1−81のうちの少な
くとも1つを発現する細胞も本発明で用いるのに好適である。
【0055】
胚体内胚葉系に特徴的なマーカーは、SOX17、GATA4、HNF3 β、GSC
、CER1、Nodal、FGF8、短尾奇形、Mix様ホメオボックスタンパク質、F
GF4、CD48、エオメソダーミン(EOMES)、DKK4、FGF17、GATA
6、CXCR4、c−Kit、CD99、及びOTX2からなる群から選択される。胚体
内胚葉系に特徴的なマーカーのうちの少なくとも1つを発現する細胞は本発明での使用に
好適である。本発明の一態様では、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞は、
原始線条前駆細胞である。別の態様では、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細
胞は、中内胚葉細胞である。別の態様では、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する
細胞は、胚体内胚葉細胞である。
【0056】
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーは、PDX1、NKX6.1、HNF1 β、PTF
1 α、HNF6、HNF4 α、SOX9、HB9、及びPROX1からなる群から選
択される。膵臓内胚葉系に特徴的なこれらのマーカーのうちの少なくとも1つを発現する
細胞が本発明における使用に適している。本発明の一態様では、膵臓内胚葉系に特徴的な
マーカーを発現する細胞は、膵臓内胚葉細胞である。
【0057】
膵内分泌系に特徴的なマーカーは、NGN3、NEUROD、ISL1、PDX1、N
KX6.1、PAX4、NGN3、及びPTF−1 αからなる群から選択される。一実
施形態では、膵内分泌細胞は、以下のホルモン:インスリン、グルカゴン、ソマトスタチ
ン、及び膵臓ポリペプチドのうちの少なくとも1つを発現することができる。本発明で使
用するに好適なものは、膵内分泌系の特徴を示すマーカーを少なくとも1つ発現する細胞
である。本発明の一態様において、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞は、膵
内分泌細胞である。膵内分泌細胞は、膵臓ホルモン発現細胞であってよい。また、膵内分
泌細胞は膵臓ホルモン分泌細胞であってもよい。
【0058】
本発明の一態様では、膵内分泌細胞は、β細胞系に特徴的なマーカーを発現する細胞で
ある。β細胞系に特徴的なマーカーを発現する細胞は、PDX1と、以下の転写因子、す
なわち、NGN3、NKX2.2、NKX6.1、NEUROD、ISL1、HNF3
β、MAFA、PAX4、及びPAX6のうちの少なくとも1つを発現する。本発明の一
態様では、β細胞系に特徴的なマーカーを発現する細胞は、β細胞である。
【0059】
多能性幹細胞からの胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞の生成
本発明の一態様では、グルコース濃度が10.5mMを超えない培地で多能性幹細胞を
培養することで、多能性幹細胞集団は胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集
団へと分化されてもよい。一実施形態では、多能性幹細胞集団の胚体内胚葉系に特徴的な
マーカーを発現する細胞集団への分化は、多能性幹細胞をアクチビンA及びWntリガン
ドにより活性化処理することで実施される。
【0060】
別の実施形態では、多能性幹細胞の胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集
団への分化は、GDF−8と、次の:アニリン−ピリジノトリアジン、環状アニリン−ピ
リジノトリアジン、N−{[1−(フェニルメチル)アゼパン−4−イル]メチル}−2
−ピリジン−3−イルアセトアミド、4−{[4−(4−{[2−(ピリジン−2−イル
アミノ)エチル]アミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピリジン−2−イル]
オキシ}ブタン−1−オール、3−({3−[4−({2−[メチル(ピリジン−2−イ
ル)アミノ]エチル}アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]ピリジン−2−イ
ル}アミノ)プロパン1−オール、N〜4〜−[2−(3−フルオロフェニル)エチル]
−N−2〜−[3−(4−メチルピペラジン−1−イル)プロピル]ピリド[2,3−d
]ピリミジン−2,4−ジアミン、1−メチル−N−[(4−ピリジン−3−イル−2−
{[3−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}−1,3−チアゾール−5−イル)
メチル]ピペリジン−4−カルボキサミド、1,1−ジメチルエチル{2−[4−({5
−[3−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3
−イル}アミノ)フェニル]エチル}カルバマート、1,1−ジメチルエチル{[3−(
{5−[5−(3−ヒドロキシプロピル)−2−(メチルオキシ)フェニル]−1,3−
オキサゾール−2−イル}アミノ)フェニル]メチル}カルバマート、1−({5−[6
−({4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)スルホニル]フェニル}アミノ)ピラ
ジン−2−イル]チオフェン−2−イル}メチル)ピペリジン−4−オール、1−({4
−[6−({4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)スルホニル]フェニル}アミノ
)ピラジン−2−イル]チオフェン−2−イル}メチル)ピペリジン−4−カルボキサミ
ド、及び2−{[4−(1−メチルエチル)フェニル]アミノ}−N−(2−チオフェン
−2−イルエチル)−7,8−ジヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン−6(5H)−
カルボキサミドからなる群から選択される少なくとも1つの他の因子とで多能性幹細胞を
処理することで実施される。使用に好適な因子の例は、米国特許出願公開第12/494
,789号に見ることができる。一実施形態では、少なくとも1つの他の因子は14−プ
ロパ−2−エン−1−イル−3,5,7,14,17,23,27−ヘプタアザテトラシ
クロ[19.3.1.1〜2,6〜.1〜8,12〜]ヘプタコサ−1(25),2(2
7),3,5,8(26),9,11,21,23−ノナエン−16−オンである。
【0061】
多能性幹細胞集団は、グルコース濃度が10.5mMを超えない培地で約1日〜約7日
間にわたって培養することができる。あるいは、多能性幹細胞集団は、グルコース濃度が
10.5mMを超えない培地で約1日〜約6日間にわたって培養することができる。ある
いは、多能性幹細胞集団は、グルコース濃度が10.5mMを超えない培地で約1日〜約
5日間にわたって培養することができる。あるいは、多能性幹細胞集団は、グルコース濃
度が10.5mMを超えない培地で約1日〜約4日間にわたって培養することができる。
あるいは、多能性幹細胞集団は、グルコース濃度が10.5mMを超えない培地で約4日
間にわたって培養することができる。
【0062】
一実施形態では、GDF−8は約5ng/mL〜約500ng/mLの濃度で使用され
る。別の実施形態では、GDF−8は約5ng/mL〜約50ng/mLの濃度で使用さ
れる。別の実施形態では、GDF−8は約5ng/mL〜約25ng/mLの濃度で使用
される。別の実施形態では、GDF−8は約25ng/mLの濃度で使用される。
【0063】
アクチビン−Aは、約1pg/mL〜約100μg/mLの濃度で使用されてもよい。
代替的な実施形態において、濃度は、約1pg/mL〜約1μg/mLであってもよい。
別の代替的な実施形態において、濃度は、約1pg/mL〜約100ng/mLであって
もよい。別の代替的な実施形態において、濃度は、約50ng/mL〜約100ng/m
Lであってもよい。別の代替的な実施形態において、濃度は、約100ng/mLであっ
てもよい。
【0064】
Wntリガンドは、Wnt−1、Wnt−3a、Wnt−5a及びWnt−7aからな
る群より選択されてもよい。一実施形態において、Wntリガンドは、Wnt−1である
。代替的な実施形態において、Wntリガンドは、Wnt−3aである。
【0065】
Wntリガンドは、約1ng/mL〜約1000ng/mLの濃度で使用されてもよい
。代替実施形態では、Wntリガンドは、約10ng/mL〜約100ng/mLの濃度
で使用されてもよい。一実施形態では、Wntリガンドの濃度は約20ng/mLである
【0066】
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の生成
一実施形態では、本発明の方法により生成された胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発
現する細胞集団は、当該技術分野の任意の方法により、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカー
を発現する細胞集団へと更に分化する。
【0067】
例えば、本発明の方法に従って得られた胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細
胞集団は、D’Amourら、Nature Biotechnology 24,13
92〜1401(2006)に開示される方法に従って処理することで、膵臓内胚葉系に
特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと更に分化させることができる。
【0068】
例えば、本発明の方法に従って得られた胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細
胞集団は、米国特許出願公開第11/736,908号に開示される方法に従って処理す
ることで、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと更に分化させること
ができる。
【0069】
膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞の生成
一実施形態において、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団は、当技術
分野における任意の方法により、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと
更に分化する。
【0070】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団は、D’Amourら、
Nature Biotechnology,2006に開示されている方法に従って処
理することで、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと更に分化させるこ
とができる。
【0071】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団は、D’Amourら、
Nature Biotechnology,2006に開示されている方法に従って処
理することで、膵内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと更に分化させるこ
とができる。
【0072】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団は、米国特許出願公開第
11/736,908号に開示される方法に従って処理することで、膵内分泌系に特徴的
なマーカーを発現する細胞集団へと更に分化させることができる。
【0073】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団は、米国特許出願公開第
11/779,311号に開示される方法に従って処理することで、膵内分泌系に特徴的
なマーカーを発現する細胞集団へと更に分化させることができる。
【0074】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団は、米国特許第60/9
53,178号に開示される方法に従って処理することで、膵内分泌系に特徴的なマーカ
ーを発現する細胞集団へと更に分化させることができる。
【0075】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団は、米国特許第60/9
90,529号に開示される方法に従って処理することで、膵内分泌系に特徴的なマーカ
ーを発現する細胞集団へと更に分化させることができる。
【0076】
本発明を以下の実施例によって更に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定さ
れるものではない。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
ヒト多能性幹細胞の胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞への分化における
培地及び播種プロトコルの役割
継代数41のヒト胚性幹細胞株H1の細胞(p41)をTrypLE(カタログ番号1
2604−013(Invitrogen、CA))により剥離させ、MATRIGEL
(登録商標)コーティングしたディッシュ(1:30希釈)で、20ng/mLのFGF
2(カタログ番号100−18B(PeproTech、NJ))及び10μMのY−2
7632(Rhoキナーゼ阻害剤、カタログ番号Y0503(Sigma、MO))を添
加したMEF−CM(マウス胚性線維芽細胞馴化培地)に、個別の細胞として密度100
,000個/cmで播種した。
【0078】
並行して、継代数41のヒト胚性幹細胞株H1の細胞を、Dispase(カタログ番
号17105−041,Invitrogen,CA)により剥離させ、細胞コロニーと
して、継代比1:3で、MATRIGEL(登録商標)コーティングしたディッシュ(1
:30希釈)内の20ng/mlのFGF2を添加したMEF−CMに播種した。単細胞
に分散させた状態での細胞培養及びコロニー状態での培養のいずれについても、播種後2
4時間及び48時間で、培地を20ng/mlのFGF2を添加した新鮮なMEF−CM
培地と交換した。
【0079】
播種後72時間で、次の通りに培養物を胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細
胞へと分化させた:
a.追加で0.0025g/mlの重炭酸ナトリウム(カタログ番号S3187,Si
gma,MO)を含有させ、2%脂肪酸不含BSA(カタログ番号68700,Prol
iant,IA)と1XのGlutaMax(商標)(カタログ番号35050−079
,Invitrogen,Ca)と100ng/mlのアクチビンA(R&D Syst
ems,MN)に加えて20ng/mlのWNT−3a(カタログ番号1324−WN−
002,R&D Systems,MN)を添加したMCDB−131(カタログ番号1
0372−019,Invitrogen,CA)で1日、次に追加で0.0025g/
mlの重炭酸ナトリウムと2%のBSA、Glutamaxと100ng/mlのアクチ
ビンAを添加したMCDB−131で3日間培養した(条件1)、又は
b.2%脂肪酸不含BSA(カタログ番号68700,Proliant,IA)及び
100ng/mlのアクチビンA(R&D Systems,MN)に加えて20ng/
mlのWNT−3a(カタログ番号1324−WN−002,R&D Systems,
MN)を添加したRPMI−1640(カタログ番号22400−105,Invitr
ogen,CA)で1日間、次に2%のBSA及び100ng/mlのアクチビンAを添
加したRPMI−1640培地で、更に3日間、毎日同様の培地で培地交換して培養した
(条件2)。
【0080】
4日目にFACS解析に備えて試料を回収した。図1では、CXCR4及びCD9発現
に関してのフローサイトメトリー結果を、Y軸はCXCR4発現をプロットしX軸はCD
9発現をプロットする分散プロット形式で示す。CXCR4、CD9、及びCD99(他
の分化マーカー)を発現する細胞の割合を表1に要約する。細胞表面マーカーCXCR4
及びCD99の発現の増加により測定される分化は、MCDB−131培地を使用した場
合に改善され、CXCR4及びCD99の発現は、コロニー形態で培養する形式から単細
胞を培養する形式へと変化させた場合に更に上昇した。更に、これらのデータは、フロー
サイトメトリーにより測定されたCD9の発現低下と相関した。CD9は未分化の細胞に
関する細胞マーカーである。
【0081】
興味深いことに、図1において、クラスタ又はコロニー形式の形態のいずれかでMCD
B−131を使用した場合、どちらのマーカーも陰性(CXCR4/CD9)である
細胞はより少なくなることが示された。すなわち、MCDB−131培地で処理した培養
物中には、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現していない細胞は、より少なかったこ
とが示された。総じて、これらのデータは、H1ヒト胚性幹細胞は、RPMI−1640
培地よりもMCDB−131培地の存在下でより効率的に分化し、かつMCDB−131
の分化は、細胞をコロニー形式で播種及び培養するよりも、単細胞として播種及び培養す
ることでより改善され得ることを意味する。
【0082】
【表1】
【0083】
(実施例2)
ヒト多能性幹細胞の胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞への分化における
グルコースの役割
グルコースは可溶性のヘキソース糖であり、Ames’培地;イーグル基本培地(BM
E);Fitton−Jackson変法BGJb培地;Click’s培地;CMRL
−1066培地;ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM);DMEM/HamF−12
栄養培地(50:50);Coon’s変法F−12培地;Fischer’s培地;H
−Y培地(Hybri−Max(登録商標));Iscove’s改変ダルベッコ培地(
IMDM);McCoy’s 5A改変培地;MCDB培地;培地199;イーグル最少
培地(EMEM);NCTC培地;HamF−10栄養培地;HamF−12栄養培地;
Kaighn変法HamF−12栄養培地(F12K);RPMI−1640;無血清/
無タンパク質ハイブリドーマ培地;Waymouth培地MB;Williams培地E
並びに各種専用培地など、ほとんどすべての細胞培養培地に添加される。http://
www.sigmaaldrich.com/life−science/cell−c
ulture/learning−center/media−expert/gluc
ose.htmlを参照されたい。
【0084】
細胞培養培地に含まれるグルコース濃度は異なる。MCDB系の培地では、グルコース
は3.9〜10mMの範囲の濃度で含有され、ほとんどの培地は1g/L(5.5mM)
〜10g/L(55mM)の範囲の濃度でグルコースを含有するのに対し、RPMI−1
640はグルコースを11mM含有する。10mMのグルコース濃度は、細胞培養系では
、糖尿病条件と類似する。in vivoの細胞及び分子に影響を及ぼすものと同様の工
程がin vitroにおいても生じ得ることから、この濃度の類似性は重要である。本
質的に糖尿病性のものである条件下で細胞を増殖させると、細胞及び細胞産物は糖化及び
糖酸化(glyoxidation)過程により変更を受け、グルコースに介在される酸化及びカルボ
ニルストレスにより損傷を受ける恐れがある。http://www.sigmaald
rich.com/life−science/cell−culture/learn
ing−center/media−expert/glucose.htmlを参照さ
れたい。
【0085】
現在、胚性内胚葉の生成に使用されている培地としては、例えば25mMのグルコース
を含有しているIscove’s改変ダルベッコ培地(IMDM)(Kuboら;Apr
il 1,2004,Development 131,1651〜1662)、11m
Mのグルコースを含有しているRPMI(D’Amourら、Nat Biotechn
ol.2005 Dec;23(12):1534〜41)又は17.5mMのグルコー
スを含有しているDMEM−F12が挙げられる。これらの各培地のグルコース濃度は糖
尿病性の条件と同様10mMを超える。これらを踏まえ、我々は、高グルコース培養培地
により細胞に生じ得るストレスを減少させるために、ヒト胚性幹細胞を胚体内胚葉系に特
徴的なマーカーを発現する細胞へと分化させる際にグルコース濃度を10mMよりも低く
することを試みた。グルコース濃度が10mMよりも低い培地としては、例えば、基本的
にグルコース濃度が5.5mMであるMCDB−131が挙げられる。
【0086】
継代数41のヒト胚性幹細胞株H1の細胞(p41)をTrypLE(カタログ番号1
2604−013,Invitrogen,CA)により剥離させ、MATRIGEL(
登録商標)コーティングしたディッシュ(1:30希釈)で、20ng/mLのFGF2
(カタログ番号100−18B(PeproTec,NJ))及び10μMのY−27
632(Rhoキナーゼ阻害剤、カタログ番号Y0503(Sigma、MO))を添加
したMEF−CM(マウス胚性線維芽細胞馴化培地)に、個別の細胞として密度100,
000個/cmで播種した。播種後24時間及び48時間の時点で、培地を20ng/
mlのFGF2を含有させた新鮮なMEF−CMと交換した。72時間後、次の通りに培
養物を胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞へと分化させた。
【0087】
a.2%の脂肪酸不含BSA(カタログ番号68700,Proliant,IA)と
0.0025g/mlの重炭酸ナトリウム(カタログ番号S3187,Sigma,MO
)と使用濃度のGlutaMax(商標)(カタログ番号35050−079,Invi
trogen,Ca)と100ng/mLのアクチビンA(R&D Systems,M
N)と20ng/mlのWNT−3a(カタログ番号1324−WN−02,R&D
Systems,MN)と、0、5、10、15、20、又は25mMのいずれかの濃度
のグルコース(カタログ番号G8769,Sigma,MO)を添加したMCDB−13
1(カタログ番号10372−019,Invitrogen,CA)培地で1日培養し
、次に
b.2%のBSAと重炭酸ナトリウムとGlutamaxと100ng/mLのアクチ
ビンAと、0、5、10、15、20、又は25mMのいずれかの濃度のグルコースを添
加したMCDB−131培地で更に3日間培養した。
【0088】
4日目に、FACS解析、リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析、並びにViaC
ount(登録商標)(Guava(登録商標),Millipore,Billeri
ca,MA)による細胞計数のために、試料を回収した。実施例1で得られた結果と同じ
く、多能性幹細胞から胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞へと分化させた細
胞は、胚体内胚葉系に関連するマーカーを強く発現していた(図2A)。培地に添加され
るグルコース濃度が0、5、10、15、20、又は25mM(それぞれ最終濃度:5.
5、10.5、15.5、20.5、25.5,又は30.5mM)である場合、図2B
に示す通り、更に10mMのグルコース(最終グルコース濃度15.5mM)で処理した
試料において、細胞数の最も穏やかな増加が観察された。図2Aに示す通り、更に5mM
グルコース(最終グルコース濃度10.5mM)を添加した場合、細胞ではCXCR4発
現の中程度の増加が観察された。しかしながら、細胞数及びCXCR4の増加は、合計細
胞生存率の低下により相殺された(図2B)。
【0089】
基本濃度のグルコース(5.5mM)では、培養物中のほとんどすべての細胞がSOX
17陽性であり、細胞は培養皿中に均一に分散していた(図3A及びB)。グルコース濃
度を増加させると、細胞は、SOX17の高発現を維持しつつもクラスタを形成するよう
になったことが観察された。これらのクラスタを形成している細胞は、基本濃度のグルコ
ースで培養した細胞集団と比べ、培養皿表面に不均一に分散していた。この影響は、クラ
スタを形成した細胞において、未分化細胞の細胞マーカーCD9及びOCT4、並びに胚
体外外胚葉の細胞マーカーSOX7の発現が僅かに上昇し、かつホメオボックスHB9(
HLXB9)としても公知である膵臓ホメオボックス1(MNX1)の遺伝子発現が減少
したことと相関した(図4)。
【0090】
5.5mM(低)又は25mM(高)のいずれかの濃度でグルコースを含有させたDM
EM(カタログ番号10567−014及び21063−029,Invitrogen
,CA)で分化させた培養物においても、グルコース濃度に相関して同様の影響が観察さ
れた。上記のように、対照については、細胞は単細胞として播種し、MEF馴化培地で3
日間培養し、5.5mM若しくは25mMのグルコースを添加したMCDB−131培地
、又は2%の脂肪酸不含BSAと100ng/mlのアクチビンAと20ng/mlのW
NT−3aとを添加した高若しくは低グルコースDMEM培地で1日分化させ、続いて2
%脂肪酸不含BSAと100ng/mlのアクチビンAを添加した日用培養培地と交換し
て更に3日間培養した。
【0091】
MCDB−131培地により得られた結果、すなわち、グルコース濃度を上昇させるこ
とで、低濃度のグルコースで培養した場合と比較して胚胎内胚葉形成が阻害されるという
結果と同様、DMEM中のグルコース濃度を上昇させた場合にhES細胞の分化が低下す
ることが観察された。胚体内胚葉への分化後のフローサイトメトリーによると、5.5m
Mグルコースを含有している培地では細胞の88.6%はCXCR4陽性であったのに対
し、25mMグルコースを含有している培地ではCXCR4陽性細胞は80%であった。
加えて、qRT−PCR(SOX17)により測定したところ、高グルコースの細胞供給
培地では、低グルコースの細胞供給培地と比べ、胚体内胚葉への分化マーカーが減少した
一方で、未分化の細胞(OCT4)又は別の分化運命(CDX2)に関するマーカーが増
加していた(図5)。この影響は、4日間の分化工程において分化を開始して48時間後
に培地pHが低下したと我々が指摘する培地pHの変化に少なくとも部分的に起因した。
更に、胚体内胚葉生成の開始及び終了時の培養培地のpHが高くなる程(8.1>pH>
7.6)(図6)、より完全に胚体内胚葉へと変換された。
【0092】
要約すると、我々の示す結果により、細胞の80%超が胚体内胚葉系に特徴的なマーカ
ーを発現する細胞集団を生成するにあたり、基本濃度のグルコース(5.5mM)を分化
培地に含有させれば十分であることが示される。分化培地に含まれるグルコース濃度を1
0.5mMに増加させた場合、この濃度は同様の集団を生成するのに十分な濃度であった
ものの、グルコース濃度が10.5mMを超えると、多能性/未分化度を示すCD9若し
くはOCT4などのマーカーの発現が増加する、又は別の分化運命/胚体外外胚葉に関連
付け得られるSOX7若しくはCDX2などのマーカーの発現が増加する恐れがある。
【0093】
(実施例3)
ヒト多能性幹細胞の胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞への分化における
pH調整の役割
継代数46のヒト胚性幹(hES)細胞株H1の細胞(p46)を、Dispase(
カタログ番号17105−041,Invitrogen,CA)により剥離させ、細胞
コロニーとして、MATRIGEL(1:30希釈)コーティングしたディッシュ内の、
20ng/mlのFGF2を添加したMEF−CMに継代比1:3で播種した。次の通り
に胚体内胚葉(DE)への分化を開始するまで、毎日この培地を20ng/mlのFGF
2を添加した新鮮なMEF−CMと交換した:
a.2%の脂肪酸不含BSA(カタログ番号68700,Proliant,IA)と
1XのGlutaMax(商標)(カタログ番号35050−079,Invitrog
en,Ca)と100ng/mlのアクチビンA(R&D Systems,MN)に加
えて20ng/mlのWNT−3a(カタログ番号1324−WN−002,R&D S
ystems,MN)を添加したMCDB−131(カタログ番号10372−019,
Invitrogen,CA)培地で1日培養し、続いて2%のBSAとGlutama
xと100ng/mlのアクチビンAを添加したMCDB−131で更に3日間、毎日同
様の培地で培地交換して処理した;又は
b.更に0.0025g/mlの重炭酸ナトリウム(カタログ番号S3187,Sig
ma,MO)を含有させ、2%の脂肪酸不含BSA(カタログ番号68700,Prol
iant,IA)と1XのGlutaMax(商標)(カタログ番号35050−079
,Invitrogen,Ca)と100ng/mlのアクチビンA(R&D Syst
ems,MN)に加え20ng/mlのWNT−3a(カタログ番号1324−WN−0
02,R&D Systems,MN)を添加したMCDB131培地で1日間培養し、
続いて更に0.0025g/mlの重炭酸ナトリウムを含有させ、2%のBSAとGlu
tamaxと100ng/mlのアクチビンAを添加したMCDB−131で更に3日間
、毎日同様の培地で培地交換して処理した。
【0094】
4日目に、FACS解析、リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析、並びにViaC
ount(登録商標)(Guava(登録商標),Millipore,Billeri
ca,MA)による細胞計数のために、試料を回収した。実施例2で示す通り、我々は、
分化培地のpHを比較的より酸性のもの(pH7.6未満)にすることで、分化指向性が
低下しかつ他の分化指向性が増加することに起因して、CXCR4発現が低下し得ること
に気づいた。
【0095】
この効果がpHによるものなのか試験するために、我々は公開濃度の1g/Lの重炭酸
ナトリウムを含有させたMCDB−131基本培地で細胞を分化させ、並びに重炭酸塩濃
度3.7g/LのDMEMで細胞を分化させた。細胞表面マーカーCXCR4の発現の増
加とCD9の発現の低下により分化を測定したところ、緩衝剤を使用することで分化が改
善されることが観察された。緩衝剤として3.7g/lの重炭酸ナトリウムを添加したM
CDB−131培地で分化させた細胞では、重炭酸ナトリウムを基本濃度(1g/l)で
含有させたMCDB−131で分化させた細胞と比較して、有意にCXCR4の発現レベ
ルが高くかつCD9の発現レベルは低かった(図7A及びB)。これは、MCDB−13
1培地のpHが7.5であり、かつ2.7g/lの重炭酸ナトリウムを添加することでp
Hが7.6に上昇していたことに一部起因する。
【0096】
更に、分化の終了時には、pH指示薬のフェノールレッドを含有させた未分化培地で増
殖させた培養物の培地では、有意に黄色みが増し、酸性が増していたのに対し、重炭酸ナ
トリウムを添加し緩衝化させた培地で培養させた培養物は赤色を保持していた。これらの
結果により、培地のpHを7.6以上に上昇させることで多能性幹細胞から胚体内胚葉へ
のより効率的な分化が促進され、また、培地のpHを上昇させかつ安定させるには、重炭
酸塩系の緩衝剤の代わりに、限定するものではないが、CO濃度を増加させたインキュ
ベータ、並びにHEPES又はリン酸などのその他の可溶性緩衝系を使用することができ
ることが示される。
【0097】
(実施例4)
ヒト多能性幹細胞の胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞への分化における
RPMI−1640又はMCDB−131培地並びにTGF−βスーパーファミリーメン
バーのアクチビンA及びGDF−8の役割
継代数47のヒト胚性幹細胞株H1の細胞(p47)をTrypLE(カタログ番号1
2604−013,Invitrogen,CA)により剥離させ、単細胞として、MA
TRIGEL(登録商標)コーティングしたディッシュ(1:30希釈)内の、20ng
/mLのFGF2(カタログ番号100−18B,PeproTech,NJ)及び3μ
MのH−1152,glycyl(Rhoキナーゼ阻害剤,カタログ番号555554,
EMD chemicals,Gibbstown,NJ)を添加したMEF−CM(マ
ウス胚性線維芽細胞馴化培地)に、密度100,000個/cmで播種した。
【0098】
播種後72時間で、次の通りに培養物を胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細
胞へと分化させた:
a.更に0.0025g/mlの重炭酸ナトリウム(カタログ番号S3187,Sig
ma,MO)を含有させ、2%の脂肪酸不含BSA(カタログ番号68700,Prol
iant,IA)と1XのGlutaMax(商標)(カタログ番号35050−079
,Invitrogen,Ca)と100ng/mlのアクチビンA(R&D Syst
ems,MN)に加え20ng/mlのWNT−3a(カタログ番号1324−WN−0
02,R&D Systems,MN)を添加したMCDB−131(カタログ番号10
372−019,Invitrogen,CA)で1日間培養し、次に更に0.0025
g/mlの重炭酸ナトリウムと2%のBSAとGlutamaxと100ng/mlのア
クチビンAを添加したMCDB−131で3日間培養した。
【0099】
b.更に0.0025g/mlの重炭酸ナトリウム(カタログ番号S3187,Sig
ma,MO)を含有させ、2%の脂肪酸不含BSA(カタログ番号68700,Prol
iant,IA)、1XのGlutaMax(商標)(カタログ番号35050−079
,Invitrogen,Ca)と100ng/mlのGDF−8(R&D Syste
ms,MN)に加え2.5μMのGSK3B阻害剤14−プロパ−2−エン−1−イル−
3,5,7,14,17,23,27−ヘプタアザテトラシクロ[19.3.1.1〜2
,6〜.1〜8,12〜]ヘプタコサ−1(25),2(27),3,5,8(26),
9,11,21,23−ノナエン−16−オンを添加したMCDB−131(カタログ番
号10372−019,Invitrogen,CA)で1日間培養し、次に、更に0.
0025g/mlの重炭酸ナトリウムと2%のBSAとGlutamaxと100ng/
mlのGDF−8を添加したMCDB−131で3日間培養した。又は
c.更に0.0025g/mlの重炭酸ナトリウム(カタログ番号S3187,Sig
ma,MO)を含有させ、2%の脂肪酸不含BSA(カタログ番号68700,Prol
iant,IA)と1XのGlutaMax(商標)(カタログ番号35050−079
,Invitrogen,Ca)と100ng/mlのGDF−8(R&D Syste
ms,MN)を添加したMCDB−131(カタログ番号10372−019,Invi
trogen,CA)で4日間培養した。又は
d.2%の脂肪酸不含BSA(カタログ番号68700,Proliant,IA)と
100ng/mlのアクチビンA(R&D Systems,MN)に加え20ng/m
lのWNT−3a(カタログ番号1324−WN−002,R&D Systems,M
N)を添加したRPMI−1640(カタログ番号22400−105,Invitro
gen,CA)で1日間培養し、次に2%のBSAと100ng/mlのアクチビンAを
添加したRPMI−1640培地で、更に3日間、毎日同様の培地で培地交換して処理し
た。
【0100】
e.2%の脂肪酸不含BSA(カタログ番号68700,Proliant,IA)と
100ng/mlのGDF−8(R&D Systems,MN)に加え2.5μMのG
SK3B阻害剤14−プロパ−2−エン−1−イル−3,5,7,14,17,23,2
7−ヘプタアザテトラシクロ[19.3.1.1〜2,6〜.1〜8,12〜]ヘプタコ
サ−1(25),2(27),3,5,8(26),9,11,21,23−ノナエン−
16−オンを添加したRPMI−1640(カタログ番号22400−105,Invi
trogen,CA)で1日間培養し、次に2%のBSAと100ng/mlのGDF−
8を添加したRPMI−1640培地で、更に3日間、毎日同様の培地で培地交換して処
理した。
【0101】
4日目に、FACS解析並びにqRT−PCRに備えて試料を回収した。表2に、CX
CR4、CD9、及びCD99(その他の分化マーカー)を発現する細胞の割合を要約し
た。細胞表面マーカーCXCR4の発現の増加により測定された分化は、RPMI−16
40を使用した場合よりもMCDB−131培地を使用した場合の方が改善され、CXC
R4の発現は、アクチビンA及びWnt3aを使用した場合よりも、GDF−8とGSK
3Bを組み合わせて使用した場合に更に上昇した。MNX−1遺伝子についてのqRT−
PCRにより、MCDB−131培地を使用した場合に、RPMI−1640よりも分化
が改善され、また、GDF−8とGSK3B阻害剤と組み合わせて使用した場合に、アク
チビンAとWnt3aを併用した場合よりも分化が改善されるという同様の結果が観察さ
れた(図8)。更に、これらのデータは、フローサイトメトリーによって測定された、未
分化の細胞に関する細胞マーカーのCD9発現の低下(表2)、又はqRT−PCRによ
り測定された、OCT4及びCD9の発現の低下(図8)と相関した。これらのデータは
、H1ヒト胚性幹細胞の分化は、RPMI−1640培地よりもMCDB−131培地の
存在下でより効率的であり、かつMCDB−131での分化効率は、細胞をGDF−8と
GSK3B阻害剤の存在下で分化させることで、アクチビンAとWnt3aを用い分化さ
せた場合よりも更に改善できることを意味する。
【0102】
【表2】
【0103】
本明細書の全体を通じて引用した刊行物は、その全体を参照により本明細書に組み込む
ものとする。以上、本発明の様々な態様を実施例及び好ましい実施形態を参照して説明し
たが、本発明の範囲は、上記の説明文によってではなく、特許法の原則の下で適宜解釈さ
れる以下の特許請求の範囲によって定義されるものである点は認識されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2016年10月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0103
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0103】
本明細書の全体を通じて引用した刊行物は、その全体を参照により本明細書に組み込むものとする。以上、本発明の様々な態様を実施例及び好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲は、上記の説明文によってではなく、特許法の原則の下で適宜解釈される以下の「特許請求の範囲」によって定義されるものである点は認識されるであろう。
本発明は以下を提供する。
[1]
細胞集団のうち、80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している、細胞集団。
[2]
細胞集団のうち、80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞集団を生成する方法であって、
a.多能性幹細胞集団を培養する工程と、
b.グルコース濃度が10.5mMを超えない培地中で、多能性幹細胞集団を、細胞集団のうち80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞集団へと分化させる工程と、を含む、方法。
[3]
前記多能性幹細胞集団を、アクチビンAとWntリガンドを用い、細胞集団のうち80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞集団へと分化させる、請求項2に記載の方法。
[4]
前記多能性幹細胞集団を、GDF−8と、アニリン−ピリジノトリアジン、環状アニリン−ピリジノトリアジン、N−{[1−(フェニルメチル)アゼパン−4−イル]メチル}−2−ピリジン−3−イルアセトアミド、4−{[4−(4−{[2−(ピリジン−2−イルアミノ)エチル]アミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピリジン−2−イル]オキシ}ブタン−1−オール、3−({3−[4−({2−[メチル(ピリジン−2−イル)アミノ]エチル}アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]ピリジン−2−イル}アミノ)プロパン1−オール、N〜4〜−[2−(3−フルオロフェニル)エチル]−N〜2〜−[3−(4−メチルピペラジン−1−イル)プロピル]ピリド[2,3−d]ピリミジン−2,4−ジアミン、1−メチル−N−[(4−ピリジン−3−イル−2−{[3−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}−1,3−チアゾール−5−イル)メチル]ピペリジン−4−カルボキサミド、1,1−ジメチルエチル{2−[4−({5−[3−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル}アミノ)フェニル]エチル}カルバマート、1,1−ジメチルエチル{[3−({5−[5−(3−ヒドロキシプロピル)−2−(メチルオキシ)フェニル]−1,3−オキサゾール−2−イル}アミノ)フェニル]メチル}カルバマート、1−({5−[6−({4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)スルホニル]フェニル}アミノ)ピラジン−2−イル]チオフェン−2−イル}メチル)ピペリジン−4−オール、1−({4−[6−({4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)スルホニル]フェニル}アミノ)ピラジン−2−イル]チオフェン−2−イル}メチル)ピペリジン−4−カルボキサミド、並びに2−{[4−(1−メチルエチル)フェニル]アミノ}−N−(2−チオフェン−2−イルエチル)−7,8−ジヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン−6(5H)−カルボキサミドからなる群から選択される少なくとも1つの他の因子と、を用い、細胞集団のうち80%超の細胞が胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現している細胞集団へと分化させる、請求項2に記載の方法。
[5]
前記少なくとも1つの他の因子が14−プロパ−2−エン−1−イル−3,5,7,14,17,23,27−ヘプタアザテトラシクロ[19.3.1.1〜2,6〜.1〜8,12〜]ヘプタコサ−1(25),2(27),3,5,8(26),9,11,21,23−ノナエン−16−オンである、請求項4に記載の方法。
[6]
グルコース濃度が5.5mMを超えない、請求項2に記載の方法。
【外国語明細書】
2017038614000001.pdf