特開2017-38629(P2017-38629A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-38629磁石が埋め込まれた木製物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-38629(P2017-38629A)
(43)【公開日】2017年2月23日
(54)【発明の名称】磁石が埋め込まれた木製物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47G 25/82 20060101AFI20170203BHJP
【FI】
   A47G25/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-160321(P2015-160321)
(22)【出願日】2015年8月17日
(71)【出願人】
【識別番号】512074559
【氏名又は名称】小山 祐之
(74)【代理人】
【識別番号】100104307
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 尚司
(72)【発明者】
【氏名】小山 祐之
【テーマコード(参考)】
3K099
【Fターム(参考)】
3K099BA15
3K099CB42
3K099DA06
3K099DA09
(57)【要約】
【課題】磁石が埋め込まれていることが外観上分からない木製の物品を提供する。
【解決手段】 角材10の木目面に磁石2を埋め込み、前記磁石2の埋め込み面に角材10の木目方向を一致させて板材20の木目面を貼り合わせて内部に磁石2が埋め込まれた合成材3を得る工程と、当該合成材3から、磁石2が露出することなく、例えば靴べらのような所望する形状に加工し、木製物品5を得る。このとき、1つの原材木1を木目方向と平行に分割して得られた角材10と板材20を重ね合わせるのが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木目方向を一致させて複数の製材の木目面を重ね合わせ、内部に磁石が埋め込まれた合成材を得る工程と、
当該合成材から、磁石を露出させることなく所望する形状に加工する工程と、
を有する磁石が埋め込まれた木製物品の製造方法。
【請求項2】
1つの原材木を木目方向に分割して得られた製材を重ね合わせる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記木製物品は、靴べらである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記木製物品は、半製品である請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は磁石が埋め込まれた木製物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石を埋め込み、金属製の壁面などに着脱できるようにした製品が数々提案されている。例えば、特許文献1には、マグネットシートを貼り付けた靴べらが提案されている。特許文献2や特許文献3には、持ち手や柄の部分に永久磁石が埋め込まれた靴べらが提案されている。さらには、特許文献4には木台に埋め込まれた永久磁石を利用して、ステーキ皿を固定させることができるステーキ皿用木台が、特許文献5には、天板の部分に永久磁石が埋め込まれた床頭台が提案されている。その他にも、永久磁石の磁力を利用した製品として、特許文献6には木製の扉に永久磁石を埋め込み、永久磁石によって扉の開閉を検知する建具が、特許文献7には、永久磁石を埋め込んだつぼ押し棒が提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1〜4で提案された製品においては、目視できる状態で磁石が製品に取り付けられていたので、製品の美観が損なわれていた。一方、特許文献5や6で提案された製品では、磁石の目隠しのために化粧用シートが用いられ、特許文献7で提案された製品では、磁石を納めた凹所に蓋が取り付けられているので、これらの製品では磁石により美観が損なわれるということは少なかった。
【0004】
しかしながら、化粧用シートや蓋を用いた場合でも、化粧用シートや蓋の木目模様が周囲のそれと一致せずに違和感が生じたり、木材の木目の美しさを十分に活かせているとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−152392号公報
【特許文献2】実開昭52−73775号公報
【特許文献3】登録実用新案第3130122号公報
【特許文献4】特開平8−299143号公報
【特許文献5】特開2007−159611号公報
【特許文献6】実開平5−92392号公報
【特許文献7】登録実用新案第3147249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明が解決しようとする課題は、天然木の有する木目を活かし、永久磁石が埋められたことが分からないように加工された木製物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明に係る製造方法は、木目方向を一致させて複数の製材の木目面を重ね合わせて、内部に磁石が埋め込まれた合成材を得る工程と、当該合成材から、磁石を露出させることなく、所望する形状に加工する工程と、を有する磁石が埋め込まれた木製物品の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によると、原材料として用いた木の木目がそのまま活かされると共に見た目に磁石が埋め込まれていることが分からない木製物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本願発明に係る製造方法の一例を示す工程図である。
図2図2は本願発明に係る製造方法の他例である工程図の一部を示す図である。
図3図3は本願発明に係る製造方法により得られた木製物品(半製品)の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明に係る製造方法は、磁石が埋め込まれた木製物品の製造方法であって、木目方向を一致させて複数の製材の木目面を重ね合わせて、内部に磁石が埋め込まれた合成材を得る工程と、当該合成材から、磁石を露出させることなく所望する形状に加工する工程とを有する。
【0011】
本願発明の方法は、端的に言うと磁石を埋め込んで得た合成材を所望する形に加工する方法である。用語「製材」は、一般には原木から加工された角材又は板材を意味するが、本明細書においては、それらに加えて角材や板材への加工前の状態にある樹皮の付いた素材を含む概念で用いられる。また、用語「合成材」とは、複数の製材を貼り合わせて得られた木材(角材や板材、棒材など)を意味する。
【0012】
本願発明で用いられる磁石は永久磁石である。磁力の強さや磁石の大きさは、使用目的によって適宜選択され得る。また、粒子状の永久磁石や、防水シートなどで被覆された永久磁石、防さび剤などが塗布された永久磁石なども用いられ得る。磁石の個数も1個に限らず、2個以上でもあり得る。
【0013】
磁石は、複数の製材を重ね合わせることで得られる合成材に埋められる。合成材に用いられる製材の数は複数であればよく、適宜決められる。磁石は、合成材の表面に露出しないように埋められる。合成材の作製に用いられる1乃至複数の製材に、例えば穴を設け、当該穴に磁石をはめた後に、当該磁石の露出面に他の製材を重ね合わせることで、磁石は埋め込められる。磁石は、年輪面(年輪模様が環状に現れる面)ではなく、木目面に埋められる。木目面は正目面や板目面の何れでもよい。得られた木製物品を壁などに固定する観点からは合成材の内部で動かないように磁石を埋め込むのが好ましいが、木製物品の用途によっては合成材の内部で動くように埋め込んでも差し支えない。埋められる箇所も適宜設定され、1箇所のみならず、複数の箇所に埋めることもできる
【0014】
複数の製材は各製材の木目方向を一致させてその木目面が重ね合わせられる。木目方向を一致させて木目面を重ね合わせることで、木製製品を外観した場合に合わせ目が分かりにくくなるからである。重ね合わせる複数の製材は、1つの原材木から得られた製材であることが好ましい。つまり、1つの原材木を木目方向に分割することで得られた複数の製材を用いることが好ましい。ここで用語「原材木」は、貼り合わせる製材を得るために用いられる、原材料である製材を意味する。原材木となる製材は、上記のように原木から加工された角材又は板材だけでなく、これらへの加工前の状態にある樹皮の付いた素材を含む概念で用いられる。分割は、分割面(切断面)に木目面が現れ、元の原材木にほぼ復元できるように行われる。例えば、角材を木目方向と平行に切断することでも、角材をブロック状に切り出すことでも差し支えない。得られた製材を元の原材木となるように重ね合わせることで、あたかも1つの原材木から加工されたような印象が付与されるからである。また、複数の原材木から得られた複数の製材を重ね合わせても差し支えない。異なる原材木から得られた製材を重ね合わせることで、得られた木製製品にアクセント(木目の違いや色目の違い)を与えることができるからである。
【0015】
次に磁石が埋め込まれた合成材を加工して目的とする物品を得る。埋め込まれた磁石が露出しない限り、加工方法に特段の制約はなく、いわゆる削り出し加工、つまり合成材を鋸やのみ、かんななどの各種加工道具を用いて所望する形状に加工する。所望する形状に加工した後に、必要に応じて着色やニス塗装などが施される。なお、着色に当たっては、予め着色された製材を重ね合わせることでもよい。また、加工において、ブロック状に切り出した製材を元の原材木の形に戻して得られた合成材では、木目を横断する継ぎ目を含まないように削り出すことが望ましい。板目を横断する継ぎ目が製品に現れ、木材を貼り合わせた跡が目立つからである。
【0016】
本発明で得られる物品は完成品だけでなく、完成品の一部に使用されるいわゆる半製品でもあり得る。完成品や半製品の種類は特に限定されるものではなく、完成品は例えば靴べらであり、定規であり、指圧具であり、ステーキ皿であり、置物でもあり得る。また、半製品は、例えばキーホルダーの握り手部分であり、スプーンやフォークなどのカトラリーの柄、包丁の柄のような部品でもあり得る。
【0017】
本願発明に係る方法によれば、木目面が貼り合わせられて得られた合成材から加工されているので、外観上、製材のつなぎ目がほとんど分からない木製物品を得ることができる。この結果、磁石の存在が知られることなく、壁などに磁着され得る木製物品が提供される。
【0018】
次に本願発明について下記の実施例に基づいて説明するが、本願発明は下記の実施例に限られないのは言うまでもない。
【実施例1】
【0019】
図1は本願発明に係る製造方法の一例を示す工程図である。図1は木製の靴べらの製造方法を示す。図1(a)に示すように1本の原材木(角材)1を用意する。次に同図(b)に示すように角材1を木目方向に二分割して、板材20と角材10を得る。そして、同図(c)に示すように、角材10に設けた穴11に磁石2をはめ入れる。その後、板材20を元の位置に貼り合わせて、同図(d)に示すように元の角材1とほぼ同じ角材に戻された合成材3を得る。その後、合成材3を加工して同図(e)に示すような木製物品5である靴べらを得る。
【実施例2】
【0020】
図2は本願発明に係る製造方法の他例を示す工程図の一部を示す図である。図2に示す合成材3は、6つの製材(5つの板材20と1つの角材10)を重ね合わせて作製されており、下側にある3つの製材(2つの板材20と1つの角材10)に設けた穴11に磁石2が埋められている。これら6つの製材も図1(a)に示すような1つの角材を木目方向に分割して作製されている。このように3以上の製材を重ね合わせて磁石が埋め込められた合成材から、当該製品を加工することもできる。
【実施例3】
【0021】
図3は本願発明に係る製造方法により製造された半製品の一例を示す斜視図である。当該半製品は、スプーンの柄である。このようにスプーン等のカトラリーの柄のような半製品(部品)としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本願発明によると、ぱっと見ただけでは木の継ぎ目が見分けられず、内部に磁石が埋め込まれていることが分からない木製製品が提供される。この結果、人の好奇心をくすぐる木製製品が提供される。
【符号の説明】
【0023】
1 原材木(角材)
2 磁石
10 原材木から得られた製材(角材)
20 原材木から得られた製材(板材)
図1
図2
図3