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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-38841(P2017-38841A)
(43)【公開日】2017年2月23日
(54)【発明の名称】ミシンモーターの電源回路
(51)【国際特許分類】
   D05B 69/12 20060101AFI20170203BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20170203BHJP
【FI】
   D05B69/12
   H02M7/06 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-163519(P2015-163519)
(22)【出願日】2015年8月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】塚原 慎也
(72)【発明者】
【氏名】北田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】氏家 宗久
(72)【発明者】
【氏名】中山 元
【テーマコード(参考)】
3B150
5H006
【Fターム(参考)】
3B150AA00
3B150CE27
3B150JA02
3B150JA08
3B150JA37
3B150KA04
3B150KA08
3B150QA04
3B150QA06
5H006BB05
5H006CB01
5H006CB04
5H006CC01
5H006DC05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】交流電源の電圧や相数に応じて適切な制御を行う。
【解決手段】交流電源12に接続される第一のダイオードブリッジ20と、その二つの出力部23,24の間で直列に接続された二つのコンデンサー41,42と、二つのコンデンサー41,42の中間と第一のダイオードブリッジ20の一方の入力部22とを短絡状態と切断状態とに切り替える切替部43と、交流電源に第一のダイオードブリッジと並列に接続される二つの入力部31,32を備えた第二のダイオードブリッジ30と、第二のダイオードブリッジの二つの出力部33,34の電圧を検出する電圧検出部44とを備え、電圧検出部の検出電圧の連続的な変化における最小電位Vlの継続時間Tlを求め、当該最小電位の継続時間から切替部が倍電圧整流状態か全波整流状態かを判定する判定部53と、判定部が求めた整流状態からミシンモーターの出力制御を行うモーター制御部52とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続される二つの入力部と負荷に接続される二つの出力部とを備えた第一のダイオードブリッジと、
前記第一のダイオードブリッジの二つの出力部の間で直列に接続された二つのコンデンサーと、
前記二つのコンデンサーの中間と前記第一のダイオードブリッジの一方の入力部とを短絡状態と切断状態とに切り替える切替部と、
前記第一のダイオードブリッジと並列に前記交流電源に接続される二つの入力部を備えた第二のダイオードブリッジと、
前記第二のダイオードブリッジの二つの出力部の電圧を検出する電圧検出部とを備え、
前記電圧検出部の検出電圧の連続的な変化における最小電位の継続時間を求め、当該最小電位の継続時間から前記切替部が倍電圧整流状態か全波整流状態かを判定する判定部と、
前記判定部が求めた整流状態からミシンモーターの出力制御を行うモーター制御部とを備えることを特徴とするミシンモーターの電源回路。
【請求項2】
前記判定部は、前記電圧検出部の検出電圧の連続的な変化における最大電位の継続時間を求め、当該最大電位の継続時間から前記交流電源の相数を判定し、
前記モーター制御部は、前記判定部が求めた前記交流電源の相数からミシンモーターの出力制御を行うことを特徴とする請求項1記載のミシンモーターの電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンモーターの電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各国又は地域ごとに使用される交流電源は、電圧と単相と三相の総数について規格が統一されておらず、国毎、地域毎にバラバラであった。例えば、電圧については100〜120Vの帯域(以下、100V帯域とする)と200〜240V(以下、200V帯域とする)の帯域とに大別されている。
【0003】
交流電源電圧の整流を行う従来の電源回路は、交流電源に接続される二つの入力部と負荷に接続される二つの出力部とを備えたダイオードブリッジと、ダイオードブリッジの二つの出力部の間で直列に接続された二つのコンデンサーと、二つのコンデンサーの間とダイオードブリッジの一方の入力部とを短絡状態と切断状態とに切り替えるスイッチとを備えている(例えば、特許文献1参照)。
この電源回路では、スイッチを切断状態としたときには全波整流を行い、短絡状態としたときには倍電圧整流を行うことができる。
そして、100V帯域の交流電源に対してはスイッチを短絡状態に操作して倍電圧整流を行い、200V帯域の交流電源に対してはスイッチを切断状態に操作して全波整流を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−285253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の電源回路は、交流電源の電圧や相数、全波整流と倍電圧整流のいずれの整流を実行しているか等を外部に認識させる仕組みを備えてはいなかった。このため、ミシンモーターの制御回路として適用した場合に、交流電源の電圧や相数等に応じて適切な制御を行わせることができなかった。
【0006】
本発明は、交流電源の電圧や相数に応じて適切な制御を行わせるミシンモーターの電源回路を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、ミシンモーターの電源回路において、
交流電源に接続される二つの入力部と負荷に接続される二つの出力部とを備えた第一のダイオードブリッジと、
前記第一のダイオードブリッジの二つの出力部の間で直列に接続された二つのコンデンサーと、
前記二つのコンデンサーの中間と前記第一のダイオードブリッジの一方の入力部とを短絡状態と切断状態とに切り替える切替部と、
前記第一のダイオードブリッジと並列に前記交流電源に接続される二つの入力部を備えた第二のダイオードブリッジと、
前記第二のダイオードブリッジの二つの出力部の電圧を検出する電圧検出部とを備え、
前記電圧検出部の検出電圧の連続的な変化における最小電位の継続時間を求め、当該最小電位の継続時間から前記切替部が倍電圧整流状態か全波整流状態かを判定する判定部と、
前記判定部が求めた整流状態からミシンモーターの出力制御を行うモーター制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のミシンモーターの電源回路において、
前記判定部は、前記電圧検出部の検出電圧の連続的な変化における最大電位の継続時間を求め、当該最大電位の継続時間から前記交流電源の相数を判定し、
前記モーター制御部は、前記判定部が求めた前記交流電源の相数からミシンモーターの出力制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、交流電源の交流電圧の帯域がいずれであるかを識別することができ、モーター制御部は、交流電圧の帯域に応じて交流電源の負荷がより少なくなるようにミシンモーターを制御することが可能となる。
また、これにより、ミシンを複数台使用する縫製工場等の施設の交流電源に接続してミシンモーターに電源を供給する場合であっても、供給電源の電圧低下(フリッカー)の発生を低減し、複数台のミシンについて良好な縫製を行わせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】発明の実施形態であるミシンモーターの電源回路を示すブロック図である。
図2】交流電源が単相100V帯域である場合の検出電圧の波形を示す線図である。
図3】交流電源が単相200V帯域である場合の検出電圧の波形を示す線図である。
図4】交流電源が三相200V帯域である場合の検出電圧の波形を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[発明の実施形態の概要]
以下、本発明の実施形態としてミシンモーターの電源回路10を図面に基づいて説明する。このミシンモーターの電源回路は、ミシンの縫製駆動源であるミシンモーター11に対して、電源供給とその出力制御を行うものである。
【0012】
ミシンに供給される交流電源は、国毎、地域毎に電圧、相数に違いがある。
ここでは、交流電源として、(1)単相100V帯域(100〜120V)で50Hz、(2)単相200V帯域(200〜240V)で50Hz、(3)三相200V帯域(200〜240V)で50Hz、の三種類が使用され得る場合を例に説明する。
ミシンモーターの電源回路10は、上記三種類のいずれの交流電源が接続された場合でも、ミシンモーター11の駆動に適した280Vの直流電圧に変換して電源供給を行う。しかしながら、上記(1)〜(3)のいずれの場合にも同一の出力でミシンモーター11を行うと、(1),(2),(3)の順番で交流電源に対する負担が大きくなる。
このため、例えば、ミシンが工業用であって、工場内で多くの台数が一度に稼働する環境では、(1),(2)の交流電源の場合には、負荷が過剰となり、供給電源の電圧低下(フリッカー)が発生するおそれがある。
そこで、上記ミシンモーターの電源回路10は、交流電源の電圧、相数を判定して、ミシンモーター11に対して適切な出力制御を行うことを目的としている。
【0013】
[ミシンモーターの電源回路の概略構成]
図1はミシンモーターの電源回路10のブロック図である。
図示のように、ミシンモーターの電源回路10は、交流電源12に接続される二つの入力部21,22と負荷(ミシンモーター側)に接続される二つの出力部23,24とを備えた第一のダイオードブリッジ20と、第一のダイオードブリッジ20の二つの出力部23,24の間で直列に接続された二つのコンデンサー41,42と、二つのコンデンサー41,42の間と第一のダイオードブリッジ20の一方の入力部22とを短絡状態と切断状態とに切り替える切替部としての手動スイッチ43と、第一のダイオードブリッジ20と並列に交流電源12に接続される二つの入力部31,32を備えた第二のダイオードブリッジ30と、第二のダイオードブリッジ30の二つの出力部33,34の電圧を検出する電圧検出部44と、第二のダイオードブリッジ30の二つの出力部33,34の間に直列に接続された二つの抵抗器45,46とを備えている。
【0014】
[第一のダイオードブリッジ]
第一のダイオードブリッジ20は、入力部21にアノード端子、出力部23にカソード端子を接続したダイオード25と、出力部24にアノード端子、入力部21にカソード端子を接続したダイオード26と、入力部22にアノード端子、出力部23にカソード端子を接続したダイオード27と、出力部24にアノード端子、入力部22にカソード端子を接続したダイオード28とを備えている。
【0015】
第一のダイオードブリッジ20の出力部23と出力部24は、それぞれモーター駆動回路52に接続されており、これらの出力部23,24とモーター駆動回路52との間には、三相用整流回路51を構成する直列接続された二つのダイオード511,512と、直列接続された二つのコンデンサー41,42とが、それぞれ架設されている。
ミシンモーター11はACサーボモーターであり、三相用整流回路51は、第一のダイオードブリッジ20とコンデンサー41,42により整流化された電流をさらにACサーボモーター駆動用に適正化する。
三相用整流回路51の直列接続された二つのダイオード511,512はいずれも出力部24側にアノード端子、出力部23側にカソード端子を向けている。
また、ミシンに供給される交流電源が三相である場合には、U相が第一のダイオードブリッジ20の入力部21に接続され、V相が第一のダイオードブリッジ20の入力部22に接続され、W相が三相用整流回路51の二つのダイオード511,512の間に接続される。
【0016】
[コンデンサー及び手動スイッチ]
上記コンデンサー41とコンデンサー42の中間点と第一のダイオードブリッジ20の入力部22の間には、前述したように、これら相互間を短絡状態と切断状態とに切り替える手動スイッチ43が設けられている。
この手動スイッチ43は、交流電源12が(1)単相100V帯域の場合に短絡状態に切り替えて倍電圧整流を実行し、交流電源12が(2)単相200V帯域(200〜240V)又は(3)三相200V帯域の場合に切断状態に切り替えて全波整流を実行する。
【0017】
手動スイッチ43を短絡状態にすると、交流電源12の出力が正電位の場合には、第一のダイオードブリッジ20の入力部21から出力部23を通り、さらに、コンデンサー41、手動スイッチ43を経て交流電源12に帰還する経路で電流が流れる。
また、交流電源12の出力が負電位の場合には、手動スイッチ43及びコンデンサー42を介して第一のダイオードブリッジ20の出力部24から入力部21を通り、交流電源12に帰還する経路で電流が流れる。
その結果、倍電圧整流が行われて、入力側の交流100Vに対して出力側が直流280Vに昇圧される。
【0018】
また、手動スイッチ43を切断状態にすると、交流電源12の出力が正電位の場合には、第一のダイオードブリッジ20の入力部21から出力部23を通り、さらに、コンデンサー41,42を経て、第一のダイオードブリッジ20の出力部24から入力部22を通り、交流電源12に帰還する経路で電流が流れる。
また、交流電源12の出力が負電位の場合には、第一のダイオードブリッジ20の入力部22から出力部23を通り、さらに、コンデンサー41,42を経て、第一のダイオードブリッジ20の出力部24から入力部21を通り、交流電源12に帰還する経路で電流が流れる。
その結果、全波整流が行われて、入力側の交流200Vに対して出力側が直流280Vに昇圧される。
【0019】
[第二のダイオードブリッジ]
第二のダイオードブリッジ30は、入力部31にアノード端子、出力部33にカソード端子を接続したダイオード35と、出力部34にアノード端子、入力部31にカソード端子を接続したダイオード36と、入力部32にアノード端子、出力部33にカソード端子を接続したダイオード37と、出力部34にアノード端子、入力部32にカソード端子を接続したダイオード38とを備えている。
【0020】
第二のダイオードブリッジ30の入力部31は、第一のダイオードブリッジ20の入力部21と共に交流電源12に接続され、第二のダイオードブリッジ30の入力部32は、第一のダイオードブリッジ20の入力部22と共に交流電源12に接続されている。これにより、第一のダイオードブリッジ20と第二のダイオードブリッジ30とは並列状態で交流電源12に接続される。
【0021】
第二のダイオードブリッジ30の出力部33から出力部34の間には直列接続された二つの抵抗器45,46が設けられており、電圧検出部44は、抵抗器46の両側の電位差を検出する。
上記第二のダイオードブリッジ30の構成と抵抗器45,46により、電圧検出部44は、第一のダイオードブリッジ20及びコンデンサー41,42により整流化された電源電圧を一定の比率で低減された値で検出することができる。
【0022】
[判定部]
電圧検出部44は判定部53に接続されており、当該判定部53に対して、検出電圧を入力する。
この判定部53は、電圧検出部44からの検出電圧の時系列変化を監視しており、当該検出電圧の変化から、交流電源12が、(1)単相100V帯域、(2)単相200V帯域、(3)三相200V帯域のいずれであるかを判定する。
【0023】
ここで、判定部53による判定の方法について説明する。判定部53は、電圧検出部44の検出電圧を時系列で記録する。ここで、図2は交流電源12が(1)単相100V帯域である場合の検出電圧の変化の記録を示し、図3は(2)単相200V帯域である場合の検出電圧の変化の記録を示し、図4は(3)三相200V帯域である場合の検出電圧の変化の記録を示す。
【0024】
図2を例にとると、まず、判定部53は、得られた検出電圧の最小値である最小電位Vlを求め、最小電位Vlが継続する期間である最小電位時間Tlを算出する。最小電位時間Tlは、最小電位Vlから予め定められた増加幅αの電位が継続する期間、つまり、電位がVl〜Vl+αの範囲内となる期間を求めることで取得することができる。
同様に、判定部53は、得られた検出電圧の最大値である最大電位Vhを求め、最大電位Vhが継続する期間である最大電位時間Thを算出する。最大電位時間Thは、最大電位Vhから予め定められた減少幅βの電位が継続する期間、つまり、電位がVh−β〜Vhの範囲内となる期間を求めることで取得することができる。
【0025】
例えば、(1)単相100V帯域、(2)単相200V帯域、(3)三相200V帯域の場合、一例として下記の数値を得ることが出来る。
(1)単相100V帯域の場合、最大電位:2.5V、最大電位時間4ms、最小電位:1.25V、最小電位時間10ms、繰り返し時間20ms(後述する)
(2)単相200V帯域の場合、最大電位:2.5V、最大電位時間4ms、最小電位:0.63V、最小電位時間1.5ms、繰り返し時間10ms(後述する)
(3)三相200V帯域の場合、最大電位:2.5V、最大電位時間12ms、最小電位:0.63V、最小電位時間2ms、繰り返し時間20ms(後述する)
【0026】
上記の例からも分かるように、最小電位時間は、倍電圧整流か全波整流かによって明確に異なるので、判定部53は、予め最小電位時間について閾値(例えば4〜8ms程度、ここでは6msとする)を定め、当該閾値以上である場合は倍電圧整流が行われ、閾値未満である場合には全波整流が行われていると判定することができる。
また、倍電圧整流と全波整流のいずれが行われているかによって、交流電源12は、交流電圧が100V帯域(上記(1))か200V帯域(上記(2)又は(3))であるかを判定することができる。
【0027】
さらに、最大電位時間は、単相か三相かによって明確に異なるので、判定部53は、予め最大電位時間について閾値(例えば6〜10ms程度、ここでは8msとする)を定め、当該閾値以上である場合は交流電源12の相数は三相(上記(3))であり、閾値未満である場合には相数は単相(上記(1)又は(2))であると判定することができる。
【0028】
このように、判定部53は、最小電位時間と最大電位時間とについて場合分けすることにより、(1)単相100V帯域、(2)単相200V帯域、(3)三相200V帯域を全て識別することができる。
【0029】
さらに、判定部53は、上記(1)〜(3)の帯域の判定結果と電圧検出部44の検出電圧から、交流電源12の電源周波数を求めることができる。
即ち、判定部53は、連続する波形の繰り返しの周期を求めることにより交流電源12の電源周波数を取得する。
【0030】
具体的には、図2図4に示すように、最小電位Vl(又は最大電位)が検出されてから次の最小電位Vlが検出されるまでの繰り返し時間Tfを検出電圧の変化の記録から算出する。
そして、判定部53は、帯域が(1)単相100V帯域である場合には、(電源周期)=(繰り返し時間Tf)なので、繰り返し時間Tfの逆数から電源周波数(=1/Tf)を算出する。
また、判定部53は、帯域が(2)単相200V帯域である場合には、(電源周期)=(繰り返し時間Tf)×2なので、繰り返し時間2・Tfの逆数から電源周波数(=1/(2・Tf))を算出する。
また、判定部53は、帯域が(3)三相200V帯域である場合には、(電源周期)=(繰り返し時間Tf)なので、繰り返し時間Tfの逆数から電源周波数(=1/Tf)を算出する。
【0031】
例えば、繰り返し時間Tf=20[ms]が求められ、帯域が(1)単相100V帯域である場合には、1/Tf=1/20[ms]から電源周波数50[Hz]と算出することができる。
同様に、繰り返し時間Tf=10[ms]、帯域が(2)単相200V帯域である場合には、1/(2・Tf)=1/(2・10)[ms]から電源周波数50[Hz]と算出することができ、繰り返し時間Tf=20[ms]、帯域が(3)三相200V帯域である場合には、1/Tf=1/20[ms]から電源周波数50[Hz]と算出することができる。
【0032】
[モーター駆動回路]
前述した三相用整流回路51はモーター制御部としてのモーター駆動回路52に接続されている。このモーター駆動回路52は、原則的な機能として、図示しないミシンの制御装置から速度指令が入力され、現在のミシンモーター11と指令速度との差に応じた加速度で加速するようミシンモーター11の電流制御を行う。これにより、制御装置の速度指令が示す目標速度となるようにミシンモーター11を駆動させることができる。
【0033】
さらに、モーター駆動回路52は、判定部53からの(1)単相100V帯域、(2)単相200V帯域、(3)三相200V帯域の識別結果が入力される。
即ち、モーター駆動回路52は、(1)単相100V帯域、(2)単相200V帯域、(3)三相200V帯域のそれぞれについて異なる係数K1,K2,K3が設定されており、前述したミシンモーター11の電流制御における「現在のミシンモーター11と指令速度との差に応じた加速度」に対して、識別結果に応じた係数K1,K2,K3を乗算した加速度で加速するようにミシンモーター11を制御する。
【0034】
上記係数K1,K2,K3は、その大きさがK1<K2<K3となるように設定されている。即ち、交流電源12が(1)単相100V帯域の場合には低加速で加速する速度制御が行われ、(2)単相200V帯域の場合には中加速で加速する速度制御が行われ、(3)三相200V帯域の場合には高加速で加速する速度制御が行われる。
これは、ミシンモーター11を加速させる場合に加速度が大きくなればなる程、交流電源12から流れ込む電流量が大きくなり、交流電源12の負荷が大きくなることに起因する。
即ち、交流電源12は、交流電圧が高くなるほど大電流を流すことができ、相数が多くなるほど大電流を流すことができる。
【0035】
従って、モーター駆動回路52は、流すことができる電流が最も小さい(1)単相100V帯域の場合には加速度を抑え、流すことができる電流が最も大きい(3)三相200V帯域については加速度を大きくすることで、交流電源12がいずれの場合であっても、負荷の発生を低減することができるようにミシンモーター11を制御している。
【0036】
[ミシンモーターの電源回路の作用]
ミシンモーターの電源回路10の使用時には、まず、交流電源12の交流電圧の帯域に応じて手動スイッチ43の切り替えが行われる。即ち、倍電圧整流と全波整流のいずれを行うかはミシンのオペレーターが判断して手動スイッチ43の切り替え操作が行われる。
この結果、交流電源12が(1)単相100V帯域の場合には、倍電圧整流が行われ、交流電源12が(2)単相200V帯域又は(3)三相200V帯域の場合には全波整流が実行される。
【0037】
電圧検出部44は、電圧検出を行い、交流電源12が(1)単相100V帯域の場合には図2のような波形で電圧検出を行い、(2)単相200V帯域の場合には図3のような波形で電圧検出を行い、(3)三相200V帯域の場合には図4のような波形で電圧検出を行い、判定部53に入力する。
判定部53は、電圧検出部44からの電圧検出から、最小電位Vlと最小電位時間Tlと最大電位Vhと最大電位時間Thとを算出し、それぞれを閾値と比較して、交流電源12が(1)単相100V帯域、(2)単相200V帯域、(3)三相200V帯域のいずれであるかを特定してモーター駆動回路52に入力する。
【0038】
モーター駆動回路52は、判定部53の判定結果に応じて係数K1〜K3を選択し、当該係数を乗じた加速度でミシンモーター11の速度制御を実行する。
【0039】
[発明の技術的効果]
以上のように、ミシンモーターの電源回路10は、交流電源12に接続される第一のダイオードブリッジ20と、第一のダイオードブリッジ20の出力部23,24に接続された二つのコンデンサー41,42と、二つのコンデンサー41,42の中間と第一のダイオードブリッジ20の22入力部とを短絡状態と切断状態とに切り替える切替部としての手動スイッチ43と、第二のダイオードブリッジ30と、第二のダイオードブリッジ30の二つの出力部33,34の電圧を検出する電圧検出部44と、電圧検出部44の検出電圧の連続的な変化における最小電位Vlの継続時間(最小電位時間Tl)を求め、当該最小電位時間Tlから手動スイッチ43が倍電圧整流状態か全波整流状態かを判定する判定部53と、判定部53が求めた整流状態からミシンモーターの出力制御を行うモーター制御部としてのモーター駆動回路52とを備えている。
【0040】
このため、交流電源12の交流電圧の帯域がいずれであるかを識別することができ、モーター駆動回路52は、交流電圧の帯域に応じて交流電源12の負荷がより少なくなるようにミシンモーター11を制御することが可能となる。
また、これにより、ミシンを複数台使用する縫製工場等の施設の交流電源に接続してミシンモーター11に電源を供給する場合であっても、供給電源の電圧低下(フリッカー)の発生を低減し、複数台のミシンについて良好な縫製を行わせることが可能となる。
【0041】
さらに、判定部53は、電圧検出部44の検出電圧の連続的な変化における最大電位Vhの継続時間(最大電位時間Th)を求め、当該最大電位時間Thから交流電源12の相数を判定し、モーター駆動回路52は、判定部53が求めた交流電源12の相数からミシンモーター11の出力制御を行うので、その相数に応じて交流電源12の負荷がより少なくなるようにミシンモーター11を制御することが可能となる。
従って、ミシンを複数台使用する環境下でも供給電源の電圧低下(フリッカー)の発生をさらに低減し、より良好な縫製を行わせることが可能となる。
【0042】
また、判定部53は、交流電源12の交流電圧の帯域がいずれであるかを識別することができるので、電圧検出部44の検出電圧から連続する波形の繰り返しの周期を求めることにより、交流電源12の電源周波数も求めることが可能である。
【0043】
[その他]
また、判定部53は、交流電源12の交流電圧の帯域の種別を求めているが、交流電圧の帯域ではなく、帯域内のより詳細な交流電源の交流電圧を求めることも可能である。
即ち、判定部53は、電圧検出部44からの検出電圧の時系列変化を取得し、最大電位Vhを求めているが、この最大電位Vhの値は、交流電源の交流電圧の値と相関があるので、最大電位Vhの値と交流電源電圧の値との対応関係を記録したテーブルを格納する記憶部を判定部53に併設することで、最大電位Vhの値から交流電源の交流電圧の値を求めることが可能である。最大電位Vhの値からは、交流電源の交流電圧の値をおよそ1[V]単位の精度で求めることができるので、例えば、(1)単相100V帯域は交流電圧の値は100〜120Vの範囲内となるが、この値を1[V]単位特定することができる。他の(2),(3)の帯域についても同様である。
【符号の説明】
【0044】
10 電源回路
11 ミシンモーター
12 交流電源
20 第一のダイオードブリッジ
21,22 入力部
23,24 出力部
25〜28 ダイオード
30 第二のダイオードブリッジ
31,32 入力部
33,34 出力部
35〜38 ダイオード
41,42 コンデンサー
43 手動スイッチ(切替部)
44 電圧検出部
45,46 抵抗器
51 三相用整流回路
52 モーター駆動回路(モーター制御部)
53 判定部
Th 最大電位時間(最大電位の継続時間)
Tl 最小電位時間(最小電位の継続時間)
Vh 最大電位
Vl 最小電位
図1
図2
図3
図4