(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-39113(P2017-39113A)
(43)【公開日】2017年2月23日
(54)【発明の名称】高速循環式吸着分離方法の数値シミュレーション
(51)【国際特許分類】
B01D 53/047 20060101AFI20170203BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20170203BHJP
B01D 53/28 20060101ALI20170203BHJP
B01J 20/08 20060101ALI20170203BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20170203BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20170203BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20170203BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20170203BHJP
G01N 5/02 20060101ALI20170203BHJP
【FI】
B01D53/047
B01D53/26 231
B01D53/28
B01J20/08 A
B01J20/10 D
B01J20/18 B
B01J20/20 B
B01J20/34 E
G01N5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】書面
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-173294(P2015-173294)
(22)【出願日】2015年8月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000245357
【氏名又は名称】野口 豊
(72)【発明者】
【氏名】野口 豊
【テーマコード(参考)】
4D012
4D052
4G066
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA01
4D012CA05
4D012CA06
4D012CA07
4D012CB16
4D012CB17
4D012CD07
4D012CE01
4D012CE02
4D012CE03
4D012CF01
4D012CF03
4D012CF05
4D012CG01
4D012CG06
4D012CJ01
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4D052AA01
4D052AA02
4D052CD01
4D052HA01
4D052HA02
4D052HA21
4G066AA05B
4G066AA20B
4G066AA22B
4G066AA61B
4G066BA12
4G066BA42
4G066CA01
4G066CA27
4G066CA35
4G066CA37
4G066CA43
4G066DA03
4G066DA04
4G066GA14
4G066GA31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】気体分離を精密に表現する簡単な数値シミュレーション法,新規装置の創製、操作の高効率化設計の数値解析手段の提供。
【解決手段】酸素製造装置(例)の1つの筒、7ステップの始・終点時間帯に筒外よりの出入気体(cc/cyc,実測値、理論値)と筒内気体の変化量(cc/cyc)とを組合せた物質収支式で計算する、計算対象物質は、全ガス(酸素+窒素)と酸素の2通りとする。一定の計算順序に従って物質収支計算を実施し、精度(計算値/実測値)、そのバラツキ・連関性を判断し1循環操作の数値化を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種の気体成分(Go,Gn)を主とし、微量の不要成分気体を含む原料混合気体を、同一仕様の2つの筒(2層構造の吸着剤カラム、入口端部に不要成分吸着剤、その上層にGn選択吸着剤充填)、原料送給ポンプ、複数の自動弁等で構成された装置(システム)の1つの筒A(またはB)に供給し、加圧吸着(ポンプ使用)−減圧脱着(弁解放)の1循環操作(T,秒)をA,B交代で1/2T遅れて、高速で反復させ、連続的にGo,Gnを分離する、PF−PSA(Pulsed Flow Controlled Pressure Swing Adsorption)で、前記、吸着ー再生の1循環過程は次の7ステップに細分化され、弁シーケンス(弁開放時間ー経過時間関係)により、精密に制御される。1つの筒A(またはB)の1サイクル、7ステップを時系列に記す。
Y:各ステップ始点(終点)時に、筒内に存在する、(気相Go)/(気相Go+Gn)体積比を示し、固相(吸着剤)に存在するGo,Gn量(cc)を決定する主変数である。
この値は、前ステップ終点のYにより、次のステップの終点のYが決まる、前ー後相関関係にある。上記7つのステップにつき、吸着筒構造因子(空隙容積、吸着剤量)と変動因子(気相全圧力、Y値)とを組合せた簡単な計算式にて個別に、物質収支計算を行い、その結果を(実測値との対比、Y値の相関性、ステップ、サイクル間の整合性等)を総合・判断して1循環操作の数値化を決定する、PF−PSAの数値シミュレーション。
【請求項2】
2種の気体成分(Go,Gn)を主とし、微量の不要気体成分を含む原料気体を先ず、前処理筒(不要成分吸着剤充填)加圧送入し、不要成分を除去し、続いて自動弁を介して直結する分離筒(Gn選択吸着剤充填)で、GoとGnを分離する高速循環式PGC(Parametric Gaschromatography)の数値シミュレーション。
PGCは、請求項1に示す同一仕様の2種2層構造吸着筒、A,Bをそれぞれ、1種1層吸着筒の、前処理筒D(不要気体成分吸着剤充填)と、分離筒(Gn選択吸着剤)とに、、2分割する、DとCは自動弁を介して直結、同一仕様のA列、B列としてPGC装置(システム)内に並置し、2列がT/2(T:1サイクル時間、秒)遅れて高速循環操作する。 A,B,2列の1サイクル、7ステップ操作の目的は請求項1と同じ、但し、分離筒C(Ca,Cb)内の気流方向は異なり、PSAのA,B,2筒の並流加圧ー向流減圧の交代操作に対し、PGCの分離筒Ca,Cb,2筒の交代操作はは並流加圧ー並流減圧、であって、1サイクルを通じて全並流操作である。
A筒(PSA)とA列(PGC)の分離筒Ca内の気流方向を、1サイクル・7ステップについて、比較すると、下記の通りとなる(B筒、B列も同様)。
1サイクル・7ステップについて、Ca,Cbを対象とした物質収支計算を実施し、1循環操作の数値化を決定する、高速循環式PGCの数値シミュレーション。
【請求項3】
1つの筒A(またはB)の1サイクル・7ステップの物質収支計算式はステップの種別により、次の基本式に拠る、右欄は対象ステップを記す。
(1)Qin+A(i)=A(f)+Qout S−1〜S−3,S−5,S−6
(2)A(i)+B(i)=A(f)+B(f) S−4,S−7
A,Bは筒A,Bを示す、iは各ステップの始点、fは終点を示す。
計算対象物質は、全ガス(Go+Gn)とGoで、添字:全はt、Goはoを用いる。
Qin−>Qin(t),Qout−>Qout(o)とする。Qin,0outは、 計算順序は、S−5を始点として,S−6,S−7 S−1〜S−3の順である。
(1),(2)の基本式は、計算対象物質が全ガスでは下記(3)と(4)に、Goでは、(5)と(6)に展開される、(7)はS−1/S−3の連結ステップの計算に使用。
(3)At(i)=Pi・Vε+Vt(Pi,Yi)W・η
(4)At(f)=Pf・Vε+Vt(Pf,Yf)W・η
(5)Ao(i)=Pi・Yi・Vε+Vo(Pi,Yi)W・η
(6)Ao(f)=Pf・Yf・Vε+Vo(Pf,Yf)W・η
(7)Qt(in)=Qt(out)+(Pmax−Pe)Vε+△Vt(Pmax, Yo−>Pe・Y1)W・η
Vε:空隙容積(cc/筒)
W :吸着剤量(g/筒) η:吸着剤利用効率
Pi,Pf:各ステップの始点、終点の筒A(B)内の気相全圧(ata9
Yi,Yf:各ステップの始点、終点の筒A(B)内の気相Go分率(−)
Vt(Pi,Yi)、Vt(Pf,Yf)はPi,YiおよびPf,Yf条件下の 全ガス吸着量(cc/g・吸着剤)を示す、Voも同様( )内条件下のGo吸 着量を示す。
S−5の収支計算では基本式(1)のQin(t,o)=0、Qout(t,o)は実測値で、全ガス収支は(1)に(3),(4)を代入、Go収支は(1)に(4),(5)代入して計算し、実測値と対比する。
S−6の収支計算のQin(t,o)は理論値、Qout(t,o)は実測値である、全ガス収支計算は、(1)に(3),(4)を代入、Go収支計算は、(1)に(5),(6)を代入して計算し、Qout(t,o)−Qin(t,o)=実測値と対比する。
S−1−>S−3の継続ステップの計算は、(7)式による、(7)式のQinは、原料気体送給量、Qoutは、製品Go+パージ供与量(A−>B)を示す。
各ステップの始点、終点の平衡吸着量、Vt、Voは、P(筒内気相全圧、ata)とYの函数である(操作温度、25℃一定として)。
Go,Gnの等温吸着線(実験値)を出発点として、いくつかの熱力学計算過程を経て、一定の全圧(Pmax,Pe,1.0−ata)下における、Vt〜Y及びVo〜Yの関係を求め、横軸(X軸)をYとし、縦軸(Y軸)をVtまたはVoとして図示する、
Yの適用領域を定めた上で、直線近似化する(下記)。
Vt=a−bY、 Vo=cY−d
a,b,c,dは定数、但し、この値は気相全圧により異なる
この直線近似式(1次式)を上記の(3)〜(7)式に代入し、物質収支計算式を簡単化した、請求項1に示す高速循環式PF−PSAの数値シミュレーション。
【請求項4】
1つの筒、1サイクル、7ステップのY値は、Y1−>Y2−>Y3−>Ye,Yoの順に実測値と計算により決定する、最後にY1とYoの一環性を確認する。
Y1は実測値(分取図の読み、分取図は略称)とす(但し、前段S−4操作が両均圧‐操作(A,B2筒の上端同志、下端同志を同時、同時間開放する操作)のとき。
Y2,Y3はS−5,S−6の終点における、筒の上ー下端部のGo分率をYu、Ydとしたき、1/2(Yu+Yd)とする。
【数1】
△Vo:Vo(Pe・Y1−>1.0・Y1)
△Vt:Vt(Pe・Y1−>1.0・Y1)
ー>印;筒A内の気相条件の初め(Pe,Y1)から、終り(1.0ata,Y1) の変化量を示す
【数2】
Pp:パージガスの平均Go分率
Po:製品Go分率
(分取図)S−5,S−6の継続ステップで、外部(装置外、システム外)へ放出され るガスを分割(例;0.1秒、0.5秒等)採取し、S−5ではd−1,d−2等、 S−6ではp−1,p−2等とし、各分割分の量(cc)とGo分率を測定する、そ の結果を横軸に積算ガス量(d−1+d2等)、縦軸をGo分率とした柱状図。
請求項3の物質収支式に[数1]、[数2]に示すY2,Y3の値を使用し、実測値と対比する請求項1、請求項2に示す高速循環式吸着分離方法の数値シミュレーション。
【請求項5】
Yo,Yeは両均圧操作の物質収支計算により決定する。
計算の対象物質は全ガス(Go+Gn)とGoガスとす。
全ガス関係の1次方程式(Yo,Yeが未知数)とGoガス関係の1次方程式(Yo,Yeが未知数)との2元連立1次方程式の解をもって、Yo,Yeとする。
(基本式)
全ガス対象: At(i−>f)=Bt(f−>i)
Goガス対象: Ao(i−>f)=Bo(f−>i)
(1)At(i−>f)=(Pmax−Pe)Vε+[Vt(Pmax・Yo)−
Vt(Pe・Y1)]Wη
(2)Bt(f−>i)=(Pe−1)Vε+[Vt(Pe・Ye)−
Vt(1.0・Y3)]Wη
(3)Ao(i−>f)=(Pmax・Yo−Pe・Y1)Vε+
[Vo(Pmax・Yo)−Vo(Pe・P1)]Wη
(4)Bo(f−>i)=(Pe・Ye−1.0・Y3)Vε+[Vo(Pe・Ye) − Vo(1.0・Y3)]Wη
(5)e・Ye−f・Yo=Kt
(6)g・Ye−h・Yo=Ko
(1)=(2)とした式に、請求項3に記す近似式、Vt=a−bY(パラメーター;Pmax,Pe)を代入し整理すると(5)式の形態。になる、また(3)=(4)とした式に、請求項3に示す近似式、Vo=cY−d(パラメーター;Pe,1.0)を代入し整理すると(6)式の形態になる。
(5),(6)式の、e,f,g,h,Kt,Koは一定の数値である。
(5),(6)式には請求項3で決めたY値が含まれる、Y1,Y3である。
(5)と(6)の連立1次方程式(未知数;YoとYe)の解をYo,Yeの数値とする請求項1、請求項4に示す数値シミュレーション。
【請求項6】
請求項1に示す原料混合気体を空気(酸素;21,窒素;79容量%の混合物)とし、同一仕様の2種2層構造吸着筒(入口端部;活性アルミナ、その上層:MS−5A)A,Bを交代使用する、PF−PSA装置(システム)により、空気を製品酸素と排窒素に分離する例の酸素収率の一般式化について。
2筒構成装置(システム)の1つの筒、A(B)の1サイクル・7ステップについて、系外より筒、A(B)に流入する空気量(cc/cyc)は製品酸素量(cc/cyc)と排窒素量(cc/cyc)の和に等しい。
物質収支より次式が成立する。
(全ガス収支) Qa=Qo+Qn
(酸素収支) Qa・Pa=Qo・Po+Qn・Pn
製品酸素の収率=(Qo・Po)/(Qa・Pa)
=(Qo・Po)/(Qo・Po+Qn・Pn)
Qa,Qo,Qnは空気、酸素、窒素の量(cc/cyc)
Pa(0.21),Po,Pnは空気、酸素、窒素の酸素分率(−)
Qn・Pnは、S−5ステップ(減圧放出)とS−6ステップ(パージ受取放出) により大気に放出される酸素量(cc/cyc)。
(1)S−5の排出酸素量=(Pe・Y1−Y2)Vε+△Vo(Pe・Y1−>
1.0・Y2)W (cc/cyc−筒)
(2)S−6の排出酸素量=(Pp+Y2−Y3)Vε+△Vo(1.0Y2−>
1.0・Y3)W・η (cc/cyc−筒)
Vε;空隙容積(cc/筒)
W ;吸着剤(MS−5A)量(g/筒)
Pe;A<−>B筒間の上・下、同時連通均衡圧または操作交代圧(ata)
Pp;パージ受取(供与)ガスの酸素分率(−)
η ;吸着剤利用率=0.46(S−6、実験値)
Y1,Y2,Y3;請求項4により決定した値(−)
(直線近似式)
Vo=2.43PY−0.04 (P:2.0±0.3ata)
(1)+(2)に直線近似式(上記)を代入し、整理すると下記の通りとなる。
【数3】
請求項4に記載の方法により決定したY1,Y2,Y3等の数値を使用して、空気を製品酸素と排窒素に分離にする例の、酸素収率を一般式化する請求項1に示す高速循環式PF−PSAの数値シミュレーション。
【請求項7】
請求項2に示す、PGCの構成と操作による空気の高効率分離方法について。A(B)列の前処理筒Da(Db)に活性アルミナ充填、自動弁を介して続く分離筒Ca(Cb)にMS−5Aを充填したPGC装置(システム)により、高収率で製品酸素(90%以上)を製造し、同時に製品窒素(99.5〜99%)を併産する目的のための運転操作条件(数値)の設定法について、製品酸素と製品窒素を除いた残りの粗窒素は前処理筒Da(Db)の向流再生に活用する。
上記目的達成のために必要な分離筒内部情報(気相O
2分率)の簡単なオンライン計測法(分割採取ー自動計測)要項を下記に示す、
分離筒、Ca,Cbの1サイクル・7ステップ操作について
(上表の注釈)
Va,Vbは分割サンプル弁で、Ca,Cbの出口端部の2か所のみとす
入手サンプルはバッグ経由または直接、酸素濃度計に接続し、自動測定する
分割時間△tは、0.1〜0.5秒とす
入手情報は直ちに、別置の、同一仕様PGC装置の操作の調整(第一手段:シーケンス図の書換え)に利用する。
同一仕様の2基のPGC装置1基の運転中の情報を、操作の外乱とらない簡単な方法でオンライン入手し、その数値を直ちに、他の1基の操作の調整に活用する、空気の高効率分離方法の開発手法に関わる、請求項2に示す高速循環式PGCの数値シミュレーション。
【請求項8】
請求項2に示す、同一仕様の筒列A,Bを並置し、この2列を交代操作する、高速循環式PGC装置(システム)により、原料空気(酸素;21%、窒素;79%容量%の混合物)を、製品酸素と排窒素とに分離する例の、製品酸素収率の一般式化について。
前記、PGC装置のA列(B列)は全処理筒(活性アルミナ充填)ー自動弁ー分離筒(MS−5A充填)直列筒列で、A列(B列も同様)の1サイクル・7ステップ時間内に装置(系)に系外よりA列に流入する、原料空気量(cc/サイクル)中の純酸素量は、系外へ流出する製品酸素中の純酸素量(cc/サイクル)と、排窒素中り純酸素量(cc/サイクル)の和に等しい。
Qa・Pa=Qo・Po+筒Daと筒Caより系外へ放出される酸素量
PGC装置の酸素収率の定義は、請求項6と同様、次式による。
【数4】
Oa;原料空気量(cc/サイクル)
Pa;原料空気中のO
2分率(−)
Qo;製品酸素量(cc/サイクル)
Po;製品酸素のO
2分率(−)
Vd;前処理筒の空隙容積(cc/筒)
Vc;分離筒の空隙容積 (cc/筒)
W ;分離筒Ca内の吸着剤量(MS−5A)(g/筒)
Pp;Ca−Cb間のパージ受取(供与)ガスの平均酸素分率(−)
Pe;Ca<−>Cb間の並流均圧操作の平衡圧(ata)
η :吸着剤分離効率(−)
Y1,Y2,Y3は請求項3、請求項4に示す、Y値の計算法と請求項8の実測値 に基づいて決定
[数4]に上記、A列(2筒列)の構造因子と分離筒Caの操作因子(気相全圧、Y値)に関わる数値を代入して、空気を製品酸素と排窒素に分離する例の、製品酸素収率を一般式化する請求項2に示す高速循環式PGCの数値シミュレーション。
【請求項9】
民生用、機器付設用PSA,PGC装置は、種々の使用態様(始運転、間欠運転、長期連続運転等)下で、性能の不変、安定が最重要条件である。
安定維持に関わる管理指標、不要成分吸着帯延伸度、Kzについて。
空気分離による酸素製造の場合、性能維持のためには、空気送入加圧操作(S−1〜S−3)により、不要成分吸着剤層(活性アルミナ層)に形成された、空気中の不要成分(水分;H
2O)吸着帯前縁(初期長Zi,cm)が並流流れに沿って、延伸(終期長,Zf,cm)し、Zf>Laとなり(La;活性アルミナ層長、cm)、分離用吸着剤層(MS−5A層)内へリークすると、水分に対し、強い吸着力を持つ、MS−5Aの窒素吸着力が急減し、分離性能が悪化する。
吸着帯延伸度;Kz=Zf/Zi と定義する。
物質収支より次式が成立する。
【数5】
Vε;PSA−筒A(B)の空隙率 (−)
;PGC−前処理筒Da(Db)の空隙率 (−)
ρb;不要成分吸着剤の嵩比重 (g/cc)
C1;筒内気相の不要成分濃度(P1,ata) (g/cc)
C2;筒内気相の不要成分濃度(P2,ata) (g/cc)
q1;筒内吸着剤層の不要成分濃度(P1,ata) (g/g)
q2;筒内吸着剤層の不要成分濃度(P2,aTa) (g/g)
[数5]Kzは、空気分離以外の種々の気体分離にも広く適用できる。
空気分離では、不要成分吸着剤は、活性アルミナ、分離用吸着剤(窒素選択吸着剤)にはMS−5Aが常用される。
活性アルミナの水分吸着量(q)と気相湿度が比例関係あるとしたとき(前提条件)、
Kz=φ1/φ2=Pi/Pf と簡単化できる。(*)
Pi;PSA,筒A(B)またはPGC,Da(Db)内の初期圧(ata)
Pf;PSA,筒A(B)またはPGC,Da(Db)内の終期圧(ata)
φ1;25℃,Piにおける飽和湿度(100%)
φ2;25℃,Pfにおける相対湿度(%)
(*) q=2.8×10
−3×φ(g−H
2O/g)
[数5]Kzの他の適用例。
粗水素よりの,燃料電池仕様の超高純度水素(99.999%以上)精製装置の開発に役立つ。
原料、疎水素(メタノール水添分解水素)の概略組成は、H
2;74、CO
2;24、CO;0.6 各容量% と、微量の不純物(H
20、微量の有機物)である。
不要成分除去順は、微量不純物(活性炭、シリカゲル、活性アルミナ) −>
CO
2(活性炭) −>CO(MS−5A) の3段階からなる、
括弧内は除去用吸着剤を示す。
Kzは、CO
2吸着帯前縁が、活性炭層から、CO吸着層(MS−5A層)へリークするリスク対する管理指標となる。
H
2−PSAの最高操作圧(Pmax)は10Kg/cm
2G と高い、拠って向流減圧ロスを軽減するため、並流均圧、並流減圧操作による他筒へH
2回収が行われている。
Kz数値を、事前に想定される、リスク回避のための管理指標とする、請求項1、請求項2に示す、急速循環式PSAおよびPGCの数値シミュレーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は民生用、科学実験用、機器付設等を目的とした、小形コンパクト、軽量、安価、取扱簡単、省エネ等の利便性を備えた、高性能空気分離ユニット、超高純度水素製造装置(特許文献1参照)等の気体のバルク分離装置の性能向上を企図した新規設計手法に関わる(
図1参照)。
【特許文献1】特開2011−103282
【背景技術】
【0002】
発明の名称の、高速循環式吸着分離方法とは、本発明者の先行2発明を示す、パルス流制御式圧力スイング吸着法(Flow Controlled Pressure Swing Adsorption、略称;PF−PSA、以下略称を使用、特許文献2参照)と、パラメトリック ガスクロマトグラフィ(Parametric Gas−chomatography、略称;PGC、特許文献3参照)とである。
【特許文献2】特開平10−216454 PF−PSA
【特許文献3】特開平10−225609 PGC
【0003】
PF−PSAは直近の先行特許(名称;高生産性吸着分離方法、特許文献4参照)とともに、加圧−再生の循環操作を高速化することにより、分離装置の小形コンパクト化を追究した気体分離方法である(非特許文献1参照)。
【特許文献4】特開平6−55027 高生産性気体分離方法
【非特許文献1】野口、ケミカルエンジニヤリング、44、555(1999)
【0004】
PGCは小形から大型装置まで広く適用できる、気体のバルク分離方法の基本特許である。本発明では、小形コンパクト化と省エネ(ポンプの小形化)を追究した例に限定して記述する。
【0005】
PF−PSAの基本構成は、同一仕様の2筒(A,B)、1ポンプ(加圧用)、複数の自動弁と関連配管からなり、吸着−再生の1循環操作は7ステップに細分化され、弁シーケンス(自動弁開放時間〜経過時間関係)により精密に制御される(請求項1、
図2、
図4参照)。
【0006】
PGCの基本構成と操作(弁シーケンス)はPF−PSA(PSAの系統に所属)とは異なる、PGCの基本構成と操作方法は確立している(請求項2、
図3、
図5参照)。
【0007】
空気分離を例として、PF−PSA(以下PFと略す)開発の現状を概括し、問題点を明らかにする。数年に亘り、多数の装置構成(システム)と操作(弁シーケンス)の組合わせでテストし、システム外に流出するガス量と純度、Qo,Po,Qn,Pnを測定し、(1)吸着剤生産性(以下、生産性と略す)と(2)酸素原単位(以下、原単位と略す)を評価した(
図1参照)。
PFの基本構成〜標準弁シーケンスの組合わせは、その結果に基づいて決定したものであり、その1つの実施例(PF例とす)を以下に記す(
図2,
図4参照)。
【0008】
・構成:吸着筒V;0.5l/筒×2筒 吸着剤(Wa+Wb)=0.5kg
ポンプ110W(定格)
・操作;1循環操作時間(T=10秒)の筒A(B)内の圧力変化は次の通り
Pe(2.04ata)−>Pmax(3.4)−>Pe(2.04、A−>B−交 代圧)−>Pmin(1.0)−>Pe(2.04、B−>A交代圧)
・結果:Qo=2l/分、Po=0.9、Qn=28.1l/分、Qn=0.16
収率η=Qo・Po/(2×0.9+28.1×0.16)=0.286
【0009】
PF例の結果は下記の通り
(1)生産性=(60×2)/0,5=240[l−90%O
2/kg−吸着剤・H]
(2)原単位=0.0953(Po/Pa/η)[(Pmax/Pmin)α−1]
[KWH/M
3−O
2] 式(1)
α=(k−1)/k=(1.4−1)/1.4=0.2857(kは空気の断熱指数)
注;酸素原単位のポンプ消費電力は、往復動圧縮機の理論仕事式に基づく
小形ポンプの場合、実際の消費電力≒理論仕事×2
式(1)に上記PF例数値を代入すると
(1)=0.0953×0.9/0.21/(0.285)×[3.4α−1]=1. 433×[1.4185−1]=0.6 KWH/M
3−O
2 となる
参考値;110W×10
−3/(2×0.9×60×10
−3)=1.02 KWH /M
3−O
2
【0010】
PF例の生産性向上策ーPF装置の主要部は2筒(A,B)と1ポンプである、生産性増大の常套手段は筒仕様を変えず、ポンプ送給量を増やす−>筒内圧力が早く上昇−>早く吸着能力が失われる−>サイクル時間を短縮(製品採取量がサイクル長短にかかわらず一定とすると)−>サイクル数増大−>l/分増大=> 生産性増大となる。
【0011】
初期装置と生産性増大装置の比較(システムとしての比較)。
(1)ポンプ送給量2倍(例)−>消費電力2倍−>生産性2倍の関係あり、拠って、省エネ効果はない、原単位に変化なし。
(2)ポンプの大型化に伴い、装置全体(システム)の占有容積や重量が増加する、初期システムをSy1、ポンプ送給量倍増(例)後のシステムをSy2としたとき、Sy2/Sy1の容積比、重量比が2に近付くと生産性増大効果は無くなる、(1)〜(2)=(問題1)。
【0012】
ポンプ送給速度(l−Pe、ata/s)が過大になると、次の問題も発生する。
(1)吸着剤層入口端面を通過する気流は全面に亘り、同一流速(整流)が重要な操作条件であるが、中心部は早く、周辺部は遅くなる。
(2)ひどい場合には、瞬間的、大量のガス塊の筒内突入により、吸着剤層が持ち上げられ、膨脹〜収縮の繰返しにより、吸着剤の摩耗・粉化が促進される。
(3)弁の開閉頻度増大に伴う問題の発生。(1)〜(3)=(問題2)。
【0013】
前記、問題1はサイクル数の増大策、問題2は1サイクルの製品採取量の増大策に関わり、問題2は需要と供給のバランス問題に帰着する(特許文献4参照)。
Qp;ポンプ容量、l(atPe)/秒
K ;定数、1〜4
Pe:供給開始圧;Pe(ata)
V ;筒容積 l/筒
式(2)よりK−>大(Pe,V固定)、Qp−>大.吸着剤生産性−>大となる。
Kは、吸着剤:MS−5Aの窒素吸着量(cc,/筒)により決まる、その他、ポンフの形式(往復動、ダイヤフラム、ロータリ式等)も関係する。
【0014】
上記、Kの数値化が、小形コンパクト装置設計上の課題となる。
PF例、K値は筒AのS−1始点(Pe)−>終点(Pmax)間のポンプ圧縮性能変化と、S−1開始時のMS−5Aの窒素吸着量に作用される。
KはQp(2.72ata)/Qp(2.04.ata)比とVn(2.04,0.5)/Vn(2.72,0.5)比により決まる、Q(l/秒,1ata換算)、Vn(cc/g―MS−5A)である、Vn( )内の0.5はS−1始点のYe値を示す。
【0015】
S−1始点=S−7終点、S−7始点=S−6終点、等と全ステップは、前後関連して、1循環操作を形成している。
KはS−7始点−>終点間の物質収支計算の結果(数値)により決まる。
但し、S−7(S−4も同じ)の物質収支式はA,B、2 筒が関与し、他のステップより複雑(他のステップは1筒)、操作時間が0.5秒(PF例)で短かい、また筒A,Bの始点、終点のガス‐サンプリングが不可能(操作の外乱となる)。
従ってKは、他のステップ(S−5)を計算始点とした、1循環操作の統一解の成立後に定まる、Kの評価は、1循環操作・7ステップの数値化が前提となる。
【0016】
PF例の原単位向上策について、原単位は小さい程よい(省エネ)、式(1)より原単位と収率は反比例し原単位は収率を大きくするほど小さくなる。
PF例の実験は装置性能に着目し、
図1に示すごとく、装置外へ流出する製品酸素量Qo(l/分)、と製品酸素濃度Po(90%設定)、および装置より大氣へ放出・廃棄される気体量Qn(l/分)とその平均酸素分率Pn(−)を測定し、収率を計算しているが、計算数値が筒内吸着剤(MS−5A)の分離操作(1循環・7ステップ操作)に関わる数値と直結していない、拠って原因を追求して収率向上策を講じることが出来ない、筒内の情報に基づく数値解析手段が必要となる。
【0017】
PF例でPo=0.9に設定し理由、空気組成は下記の通り(非特許文献2参照)。
N
2;78.084 O
2;20.948 Ar;0.938 容量% CO
2;358ppm(0.18ppm/yr)
【非特許文献2】理化学辞典、第5版、岩波書店(2010)
PF例のMS−5AはO
2とArとに対し、同一挙動(ガスクロマト・データ)を示す、従って、N
2を100%除去したとしても、製品酸素濃度=20.948/(20.948+0.938) =0.957が限界濃度になる、同一のサンプルの実測例を対比する。
PF例、PSAは、採取O
2濃度が95%近傍にて、採取量が急減するので、安定域の90%を製品濃度に設定した。
【0018】
収率向上策(収率の数値化)について−数値化手順を略記する、まず収率(η)とは、
[廃棄O
2=S−5およびS−6の始点−終点間の排出O
2量(cc/cyc)]
(1)S−5〜S−6の大気放出ガスの量(cc)とO
2分率の連続精密測定。
(2)S−5〜S−6の物質収支計算、(1)のデータを基にして。
(3)S−5を始点ステップとして、1循環操作・7ステップ物質収支計算をし、
全ステップの統一性、連関性を確認の上、収率の一般式化等へ展開する、吸着分離方法の数値シミュレーション。
【0019】
上記(1)についてーPF例のS−5〜S−6の操作時間は4.5秒で、瞬時的変化中の放出ガスの量(cc/秒)とO
2分率を、オンラインで連続測定する既存の手段はない。
本発明では、放出路に2つの弁、主弁と副弁(サンプル弁)を設け、放出ガス・サンプルを時系列に0−0.5、0.5−1.0等、4.5/0.5 =9分割採取し、分割‐サンプルの量(cc/cyc)とO
2分率を測定整理し、横軸ー積算放出量、縦軸−O
2分率とする柱状図を作成し、S−5の物質収支計算の基礎資料とした(解決課題1)。
【0020】
S−5,S−6の物質収支式ー筒A、1サイクル操作について。
S−5a(T) ;At(i)=At(f)+Qout(T) 式(3)
〃 b(O
2);Ao(i)=Ao(f)+Qout(o) 式(4)
S−6a(T) ;Qin(パ)+At(i)=At(f)+Qout(T) 式(5)
〃 b(O
2);Qin(O)+Ao(i)=At(f)+Qout(O) 式(6)
At(i),At(f)は筒Aの始点、終点時に筒内、気ー固相に分配・存在する‐全ガス量(cc/筒)を示す、Ao(i),Ao(f)は筒Aの始点、終点時に筒内‐気ー固相に分配・存在するO
2量(cc/筒)を示す。
Qout(全),Qout(O)は大気放出全ガス(酸素、窒素の混合ガス)、大気放出O
2ガスを示す、Qin(パ)は、B−>Aへ供与されるパージガス(酸素リッチ・ガス、cc/筒)、Qin(O)は、Qin(O)×酸素分率=純O
2換算量(cc/筒)を示す。
S−5、S−6のQout(TとO)は、実測値(分取図)を示す、Qin(パとO)は、細孔噴出理論式(実証すみ)に基づく計算値(非特許文献1参照)。
S−5a,bの2通りの計算結果を各々の実測値と対比し、計算値/実測値 比が同レベルかを検証し、数値を確定する、S−6a,bについても同様の作業をする。
【0021】
S−5,S−6の物質収支計算に必要な筒A内の数値情報。
[脚注]○印;測定可能(分取図読取り)
△、×;測定不可能、但し、熱力学理論(2成分系気ー固・平衡論)を援用すると推 測は可能(非特許文献3.4参照)。
【非特許文献3】Myers A.L.and Prausnitz J.M.,A.I.Ch.E.J.11,1,121(1965)
【非特許文献4】Myers A.L.,Ind.Eng.Chem.Applied Thermodynamics Symposium 60,5,45(1968)
【0022】
S−5,S−6物質収支式、式(3)〜(6)の数値化のための主変数Yの定義。
1循環操作・7ステップ始点、終点の筒内物質量At,Aoは、気相全圧(ata)とY(PF例;平均O
2分率)により決まる。
Y=(気相に存在する全O
2量、cc)/(気相に存在する全ガス量、cc)
で、以降、Y(平均値)と略す。
また、Yはステップ始点、終点時の、原料入口端部(x=0)ー>出口端部(x=L、Lは層長)へ向かう x〜y(気相O
2分率)関係より、次式により決まる。
x〜y関係は原則としてステップ毎に異なり、入−>出方向へ、直線近似(上昇、下降、平行型)、凹、凸、折線型等、推測出来る。
【0023】
S−5、S−6は直線近似型と考え、式(3)〜(6)の物質収支式を主変数、PとYを含む式とした、物質収支計算にはY2,Y3の数値が必要になる(Y1は実測値)。
S−5(T),(O)、S−6(T),(O)の物質収支式を数値化する、T;全ガス (O);酸素
Qout(T)=Vε(Pe−1)+[Vt(Pe,Y1)−Vt(1,Y2)]W 式(7)
Qout(O)=Vε(Pe・Y1−Y2)+[Vo(Pe,Y1)−Vo(1,Y2)]W 式(8)
Qout(T)=Pp+[Vt(Y2)−Vt(Y3)]W・η 式(9)
Qout(O)=Pp・Po+Vε(Y2−Y3)+[Vo(Y2)−Vo(Y3)]W・η 式(10)
Vε;空隙容積値,cc/筒 (375) ( )内数値はPF例
W ;吸着剤量,g/筒 (250)
Pe;A−>B交代圧,ata(2.04)
Vt(Pe,Y1)はPe、Y1条件下の固相全ガス吸着量(cc/g)
Vo(Pe,Y1)はPe,Y1条件下の固相O
2ガス吸着量(cc/g)
Vt(Y2),Vo(Y3)等は、全圧P=1ataを略して記載
Pp;パージ・ガス量(cc/筒、cyc)
η;吸着剤利用効率
以上、Y2、Y3数値の決定方法、式(7)〜(10)にY1,Y2,Y3の数値を代入して物質収支計算を実施し、S−5,S−6の実測値Qout(T,O)と対比すること(解決課題2)。
【0024】
1循環操作の数値シミュレーションにおいて、S−5を始点とする理由は7ステップ中、操作が最も単純、単に大気へ放出するのみの1方向流れで、操作始点、終点の気相O
2分率勾配が直線的と判断可能、また、放出量は正確に測定でき、計算始点に相応しいと考えられるから。
7つのステップは前ステップの終点=後続ステップの始点という前後相関関係にある。
筒Aに着目、Yの決定手順は次の通り、
実は実測値、
熱は熱力学理論、
噴は細孔噴出理論の援用を示す。
各ステップの物質収支計算は、まずY1〜Y2の組合わせで、S−5、続いて、Y2〜Y3の組合わせでS−6の計算をし、計算値/実測値 を対比し、同レベルかつ1に近いかを評価し、計算精度を判定しつつ、計算を続行する。
1循環操作の物質収支計算数=5(Y値の組合わせ数)×2(全ガスとO
2)=10通りあり、熱力学理論に基づく、P(筒内全圧)をパラメーターとして、Yより固相吸着量Vt、Voを計算する手順数は多く、計算記号も多岐に亘り、計算に時間がかり、実用上問題となる、拠って、高精度、、迅速化を目的とした計算の単純化が求められる、この単純化法により、上記10通りの収支計算を実施し、計算値/実測値 の数値のバラツキ、1への近似度等を総合評価・確定する、高速確定循環式吸着分離方法の数値シミュレーション(解決課題3)。
付記:PF例(空気分離、O
2−N
2分離)、Y−>Vt,Voを求める熱力学理論による計算手順例(非特許文献4参照)
1,等温吸着実験−−−−2(純N
2,純O
2)×2(1ata以下、以上)=4通り
2,一般式化、例;V=aP
N−−−−−O
2,N
2の2通り
3.πA/RTの計算、2通り P10、P20;平衡蒸気圧、10;O
2、20;N
2
4,X=(P−P20)/(P10−P20) X;固相のO
2/固相のO
2+N
2
5,Y=X×P10/P Y;気相のO
2分率
6,Vt Vt;O
2+N
2吸着量
7,Vo Vo;O
2吸着量
π;Spreading Pressure A;比表面積 R;ガス定数
T;絶対温度
【0025】
解決課題と手段を略述する、前出課題の要約、
(1)吸着−再生の1循環操作・7ステップの中のS−6.S−7の連接ステップの大気放出ガスの経時変化を精密測定(量と純度)。
(2)S−5,S−6の物質収支計算は、1つの筒A(B)につき、ステップ始―終点時間域に筒Aに外部より出入する気体量と、筒内物質量の始―終点値とを組合せた収支式で計算する。
出入気体は実測値。 筒内物質量は時々刻々変動している、変動支配因子はP(筒内全圧)とY(PF例、平均気相酸素分率)で、 Y1(S−5始点値),Y2(S−6始点)Y3(S−6終点)の値で、 Y1,Y2,Y3の評価の問題
(3)S−5を収支計算の始点として、S−6,S−1〜S−3,S−4の順に計算し、各ステップ毎の(計算値)/(実測値) 比のバラツキ、精度を、全ステップについて総合評価・決定する高速循環式吸着分離方法の数値シミュレーション(本発明の最終目的)。
(1)〜(2)は前段作業。
【0026】
請求項1はPF−PSA(本発明の対象技術)の基本構成、標準弁シーケンス及び解決手段を概括している、前項課題(3)の解決手段は、請求項(1),(3)−>(5)に作業順に詳述している(
図2,3参照)。
請求項2はPGC(本発明対象技術)の基本構成、標準弁シーケンス及び解決手段を概括している(
図4,5参照)。 請求項1と2は、構成と操作が全く異なる、ただし、1循環操作が7つのステップ数からなる点は同じ。
【0027】
請求項3は物質収支計算の基本式とその数値計算方法を示す、計算要項を以下に示す。
1,1つの筒Aの1サイクル・7つのステップ毎に順次計算する
註;2筒構成装置は1サイクル時間内にAのサイクル操作とBの1サイクル操作の2 つのサイクルが含まれるが、収支計算は、1つの筒に着目する
2,計算対象物質は全ガス(Go+Gn)とGoの2通りとす
空気分離例、Goは酸素、Gnは窒素
3,計算順は、S−5(計算始点ステップ),S−6,S−7,S−1〜S−3,S−4 ,(−>S−5へ)である
4,筒内物質は気相と固層に分布存在し時々刻々変化する,固相存在量は測定不可能
5,気相物質量=Vε・P・γ
P;全圧;ata γ;全ガス=1、Go=Y ・W;(g/筒)
【0027】
6,固相物質量=Vt(Vo)・W
Vt:全ガス(Go+Gn)吸着量(cc/g) Vo;Go吸着量(cc/g)
7,筒A内の固相吸着量は、変動因子、PとYを用いて、熱力学理論計算を進め、Vt, Voを算出する(非特許文献3,参照)
8,上記計算は計算手順、使用記号数多く手間と時間がかり、実用上不便、従って、
Pをパラメータとして、Y〜Vt,Y〜Voの関係を直線近似式化した
注;近似式化に当たっては、前提条件を明確にしておくこと
a,計算始点のアイソサームの適用範囲、例、O〜760mmHgまたは1〜4ata
b,筒内、気相全圧の適用領域、例、0〜2.04ataまたは1〜4ata等
【0028】
物質収支計算の2つの変動因子は、P(ata)とYである、Pは実測可能であるが、Yは推測値である。
請求項4は、S−5,S−6の収支計算に必要な、Y1,Y2,Y3の決定法を示す、但し、Y1のみは分取図の読取値である(前提条件;PF例、両均圧の場合)。
なお、Y1,Y2,Y3は下記のごとく、連関している。
Y1; S−4終点=S−5始点
Y2; S−5終点=S−6始点
Y3; S−6終点=S−7始点
請求項4は分取図について解説している(解決課題1,2)。
【0029】
請求項5はYe,Yoの決定法を記す、A筒の1循環操作のYの決定順について、
Y1−>Y2−>Y3−>Ye(筒A)[<−Yo(筒B)]−>Yo−>(Y1)へYY1=(Y1)の連関を確認する。 [ ]均圧供与、( )第2サイクルへ
Ye,Yoは筒A−>筒Bへの交代操作(両均圧)の閉鎖系物質収支式に基づいて決定する、次の2式、a,bが成立する、aは全ガス対象、bはGo対象。
a; At(i−>f)=Bt(f<−i) 左辺にYo、右辺にYeが含まれる
b;Ao(i−>f)=Bo(f<−i) 左辺にYo、右辺にYeが含まれる
添字、t,oは全ガス、Goを示す、At(i−>f)=At(i)−At(f)、Bo(f<−i)=Bo(f)−Bo(i)を示す、a,b両式共,正値である。
固相吸着量、Vt,Vo(cc/g)の計算を簡略化するため、Y〜Vt、Y〜Vo関係を直線近似式(1次式)化し、a,b、2つの式に代入し整理すると,c,d式の形になる。
c; e・Ye−f・Yo=Kt
d; g・Ye−h・Yo=Ko
c,d式は、Ye,Yo以外はすべて定数、
c,d式の2つの未知数、Ye,Yoを含む2元連立1次方程式の解をもってYe,Yoとする数値化方法
【0030】
請求項6はPF−PSAの1循環操作の数値シミュレーションの応用例である。
PF−PSAの基本構成と標準弁シーケンスにより、空気より酸素を製造する際の製品酸素収率を一般式を示す。
製品酸素収率=(Qo・Po)/(Qa・Pa)
Qa・Pa=Qo・Po+S−5,S−6連接ステップの大気放出酸素量 でS−5,S−6 の酸素収支計算の帰結として一般式化できる。
【0031】
請求項7は請求項2に示すPGCの1循環操作・7ステップの数値シミュレーションの空気分離の高効率化運転のオンライン操作設計への適用例を示す。
空気より製品酸素(90%以上)と製品窒素(99.5〜99%)を高収率で併産する例の具体的手法を示す
PGCの基本構成の筒A,Bの出口端部にVa,Vbの2つ分割サンプル弁を追加する、シーケンス(時間軸)上の測定点はS−2始点(製品酸素、パージ供与濃度の管理)、S−5始点直後と終点直前(Y1,Y2の管理)、S−6終点直前(Y3の管理)の4点のみ。制御目標値はPGCの酸素収率の一般式に基づいて仮設定した。以上4点の測定値を即座に併置した同一仕様のPGC装置の操作変更へ反映さす新規開発手法を示す。
【0032】
請求項7は、PGCの数値シミュレーションの応用例で、空気を分離して酸素を製造する例の酸素収率の一般式化を記す、PFとPSAとの構成の違いは、PFは、筒A、PGCはA列(Da−弁−Ca)であり、操作の違いを下記に記す。
加圧・吸着;PF A下−>A上へ
PGC Da下−>上 −>弁−>Ca下−>上へ
減圧・再生;PF A上−>A下−>大氣へ
PGC Ca上−>Da上−>下−>大氣へ
筒の原料加圧供給端部=筒の下端部=下 と略記
筒の製品採取端部=筒の上端部=上 と略記
PGCの減圧再生操作(S−5.S−6)終点直前にDa下の弁を閉止し、1−>Peataへ再加圧する
【0033】
請求項8は、不要成分吸着剤相層(空気分離例;不要成分は水分、吸着剤は活性アルミナ)中の吸着実施域(帯域)の1循環操作における前進・後退の数値化に関わる。
請求項1−>7は各ステップの始点・終点時間域における筒内物質増減の数値化に関わり視点が異なる。
【0034】
本発明の数値シミュレーションは、実用装置(2筒構成、1循環操作,7ステップ)の筒内における2種気体分離操作を簡単な数式で表現し、吸着分離操作の全体像を明らかにした最初の例であり、その効果は、
1,1循環時間の長短、装置容量の大小に関わらず適用可能
2,吸産性生産性(コンパクト化、省資材の尺度)や収率(省エネの尺度)に関し、 前者の制御因子の数値化、後者の一般式化が簡単に出来る
3,計算は簡単で、机上に限らず、実地でも適用可能である
4,既存吸着装置の操作の改善、新規装置の設計、操作の高効率化の新手段となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
PFによる空気分離(酸素製造)ついて、
図1に示す吸着剤生産性(生産性)と酸素原単位(原単位)の評価を目的として実施した多数の、装置構成〜弁シーケンスの組合せ実験の代表例の数値シミュレーションについて述べる。
装置構成と弁シーケンスは[0007]に記載のPF例と同じ。
・構成―同一仕様の2つの吸着筒A,Bと1つのポンプ(加圧用)、電磁弁および関連配管からなる装置(システム)で、筒内は入口端部に活性アルミナ層、その上層にMS−5A層、上下端部に空間部(気流の整流化目的)設置、ポンプはダイヤフラム式である
・操作―1循環操作時間10秒、1循環操作(1サイクル)は、S−1〜S−7の7ステップに細分化される、S−4,S−7のA筒<−>B筒の交代操作は、両均圧法で,A,B両筒の上―上端部、下ー下端部の連結弁、3a−4a,3b−4bを同時、同時間(0.5秒)開放。
図6に1サイクルの筒内圧力変動図(圧力シーケンス)を示す、この図は実験記録をモデル化記載したものである、
図7に筒A〜筒B間の気体流れ及びY(筒内平均酸素分率)値の相関関係を示す。
(本項、
図1、
図2、
図4、
図6、
図7参照)
【0036】
PF例の数値化シミュレーションは1つの筒A(B)に着目し、1循環操作、7ステップの各ステップ毎に一定の順序(S−5−>S−6−>S−7−>S−1〜S−3−>S−4)で物質収支計算を実施し、結果を総括・評価して決定する、計算対象物質は、全ガス(T=酸素+窒素)と酸素(O)の2通りとす。
物質収支基本式(各ステップ共通、ただしS−4,S−7の両均圧ステップを除く)
Qin+Ai=Af+Qout
S−5では Qin=0, Qout=大氣放出ガス(cc)で実測値
S−6では Qin=パージガスで理論値,Qout=大氣放出ガス(cc)で実測値
Ai,Af;各ステップの始点、終点時の筒内気体量で瞬時値(cc)
【0037】
前項の物質収支基本式中の筒内物質量A(cc/cyc,筒)について
1,筒A内物質質量=気相気体量+固相内気体量(cc/g)×W
2,筒A内物質量はPとYで決まり、P,Yの変化に伴い時々刻々変化している
3,Pの変化は圧力シーケンス図に示す(
図6参照)
4,Yの変化は筒A〜B間の気流及びY値の相関図に示す(
図7参照)
5,YはY1−>Y2−>Y3順に実測値(分取図)と理論値に基づき順次決定し、初期設定Y1値と次サイクル始点Y1値との連関性を確認の上、最終決定する
6,固相内気体量は熱力学計算値(ステップ切替時点の気相YとVt(cc−全ガス/g),Vo(cc―酸素/g)との瞬時平衡を仮定
7,物質収支計算に必要なP(ata),Y(−)値は下記の通り
【0038】
Y1−>‐Y2−>Y3の決定 (分取図、
図10参照)
Y1=0.196(分取図読取値)両均圧―筒上・下端部の値はほぼ同じと推定可能
Y2=(1/2)(Yd+△Vo/△Vt)=(1/2)(0.142+0.07)
=0.106 (請求項4[数4]参照)
Yd=0.142 (分取図読取値)
△Vo/△Vt=0.07 (熱力学計算値)
熱力学計算結果を図示−>近似式化し、△Vo/△Vtに代入すると下記の式となる
△Vo/△Vt=(2.364Y+0.004)/(6.635−3.328Y)
Y=0.196のとき△Vo/△Vt=0.077、Y=0.18のとき0.071
PF例では0.07とした(筒上−>下間のタイムラグ等考慮)
Y3=(1/2)[Yd+(2Pp−Po)]=1/2[0.2+(2×0.73−0.9)]=0.38
Yd;S−6終点時筒下端(放出端部)の酸素分率(分取図読取値)
Pp;S−6の分取データの細部(物質収支)を解析し、Y3と同時に決定
Po;製品酸素分率
△Vo=Vo(2.04,Y)−Vo(1.0,Y)
△Vt=Vt(2.04,Y)−Vt(1.0,Y))
【0039】
Yo,Yeの決定、同一仕様のA,B、2筒間における気体の供与と受取に関する閉鎖系・物質収支式に拠る、計算対象物質は、全ガス(T)と酸素ガス(O)である。
Ai(T)+Bi(T)=Af(T)+Bf(T)
Ai(O)+Bi(O)=Af(O)+Bf(O)
変形すると、次式が成立する、酸素ついても同様の式となる。
(左辺:A−>Bへの供与ガス量) (右辺:Bの受取量)
全ガスについて、上記の等式を、数値化展開すると、
左辺:Vε(3.4−2.04)+[Vt(3.4,Yo)−Vt(2.04,Y1)]Wη
右辺:Vε(2.04−1.0)+{Vt(2.04,Ye)−Vt(1.0,Y3)}Wη
酸素について、数値化展開すると、
左辺:Vε(3.4,Yo−2.04,Y1)+[Vo(3.4,Yo)−Vo(2.04,Y1)]Wη
右辺:Vε(2.04,Ye−1.0,Y3)+[Vo(2.04,Ye)−Vo(1.0,Y3)]Wη
全ガス、左辺=右辺、1つの方程式とし、Vtに近似式を代入する ,
酸 素、左辺=右辺、1つの方程式とし、Voに近似式を代入する、その結果、
全ガス:表5(2)S−4(b)=(5)S−7(b)
酸 素:表6(2)S−4(b)=(5)S−7(b) となる。
上式のVεは空隙容積(cc/筒)、Wは吸着剤量(g/筒)、Vt,Voの( )内は、気相圧力P(ata)、平均酸素分率Y(−)条件下の全ガス吸着量Vt(cc/g)及び酸素吸着量Vo(cc/g)、 η(吸着剤利用率)=1として計算
この際、3.4−>2.04ataへの圧力変化に対しては、1〜4ata領域式を代入,1.0−>2.04ataへの圧力変化に対しては、0〜760mmHg領域式を代入する。 (表4、表5、表6参照)
上記、2つの方程式の、左辺にYe,Yoの2変数、右辺に既知数を集め整理すると
全ガス: 8.328Ye−5.76Yo=2.342 式(11)
酸素 : 7.854Ye−11.2Yo=0.164 式(12)
式(11)の右辺=1.56+6.635+5Y3−(2.04+4.76+4.86Y1)で,Y3=0.38,Y1=0.196 を代入すると、右辺値=2.342、式(12)の右辺=−6.76Y1+3.93Y3で、Y1=0.196,Y3=0.38 を代入すると、右辺値は、0.1684 となり、式(11)と式(12)の2元連立1次方程式の解は、Ye=0.526、Yo=0.35 となる。
【0040】
前項結果に次の2つの試算結果を併せ、総合判断した結果、Yo=0.33,Ye=0.5 と最終決定した、以上により、PF例7ステップの物質収支計算に必要な5つのY値、Y1、Y2、Y3、Yo、Yeが決定した。
1,PF例の両均圧操作は、0.5秒の短時間で、終点時、筒全域に気−固平衡の成立(吸着剤利用率、100%)は考え難い、利用率80%とすると、Yo=0.327,Ye=0.493 となる
2,筒A,Bを2分割(a,b)とし、Aa<−>Ba,Ab<−>Bbの同時進行物質移動操作の収支計算を全、酸素、窒素に対して実施、6(2×3)組の2元連立方程式計算をを繰り返した結果、Yo=0.33,Ye=0.5の結果が出た
【0041】
PF例、数値シミュレーション(空気分離。7ステップ物質収支式の総括)の計算精度、信頼性は、窒素選択吸着剤、MS−5Aの基礎物性値の正しい選択と管理を前提とする。
MS−5Aは、一種のファインケミカルズで、取扱には、細心の注意が必要である、装置構成・操作は、MS−5Aの性能発現手段に過ぎない。 (表1、表2参照)
アイソサーム実験を基点として、7ステップの始―終点時の筒A内、固相吸着量(平均値)Vt,Voを熱力学理論に基づいて計算し、Vt〜Y,Vo〜Y関係、近似式作成までの一連の手順について、要項を記す。
1,アイソサーム実験―純酸素、純窒素の2種ガスについて、0〜760mmHg、1 〜4ataの2つの測定領域に分けて、4通りの実験を実施する。 (表3参照)
測定装置:BET装置(*)とカーン精密電気天秤を併用、双方テータを比較決定,
* Brunauer,Emmet,Teller の3人名の略
2,上記、実験データの一般式化―Freundlichの吸着等温式 V=aP
nへ 最小自乗法で、一般式化し、4通りの近似式を作成する
3,2の一般式より πA/RT(以下πと略す)値を起点とした、一連の熱力学理論 計算過程を経て得た、Pをパラメーターとした、Vt〜Y,Vo〜Y 関係数値を図 上に点綴、図示化し、この図を参照して、Vt=a−bY,Vo=cY−d 型 近 似式作成する、a,b,c,dは定数 (表4,
図8,
図9参照)
注記、P,Yは、各ステップの始点、終点時の、筒A(B)内の平均値を示す、Vt,VoはP,Y条件下における瞬時平衡値を示す
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
脚注、適用圧力領域
1)S−1〜S−3,S−4(操作圧、2.04ata以上)−>1〜4ata領域
2)S−5,S−6,S−7(操作圧、2.04ata以下)−>0〜760mmHg
領域
【0046】
PF例、7ステップの物質収支式計算式(全ガス、酸素別)と計算結果を、表5、表6表7に示す、表7の計算基準値は下記の通り、
【0047】
【表5】
[脚注]Vε;空隙容積(cc/筒)、W;MS−5A(g/筒)
・△V
Tは筒内の固相に分布存在するO
2ととN
2の合計量で各ステップの始点( または終点)と終点(または始点)の差(cc)
【0048】
【表6】
[脚注]代入数字:Yo=0.33,Y
1=0.196(実測値),Y
2=0.106
Y
3=0.38,Ye=0.5,η=0.46(吸着剤利用率)
Vε=375cc/筒 W=250g/筒(MS−5A)
Po=0,73,180×2=1p+2p(パージ量,cc)
【0049】
【表7】
[脚注]上表の計算値/基準値の( )内数字は吸着剤のマクロ孔を考慮した値、
理由、S−1,S−2,S−3のシーケンス操作は、他のステップに比べて、圧力が 高く、時間が長い
【0050】
図2,4,6,7に示すPF例、筒A、S−6のパージ受取量を360ccとした理由は、特許文献2の請求項2[数1]に基づく、[数1]を再録する。
Σ=Vi/Pi=αVε (実験式)
Vi:第1パルスの気体移動量[cc,lまたはM
3]
Pi:第1パルス送入直前の吸着筒内圧力(ata)
α:実験定数 α=1〜3
V:吸着筒全死容積[cc,lまたはM
3]
PFでは、α=1とし、パージ量=ΣVi/Pi=1P+2P=180+180=360cc に設定した(Vε=375ccに近い値)、ここで、1P,2Pは第1パルス、第2パルス送入量を示す。
上記の流量制御は、絞りを通る空気量の理論式(近似式)に基づき、電磁弁有効断面積の選択と弁シーケンスの書込みにより決定した[非特許文献4:日本油空圧学会編,油空圧便覧、P428、オーム社(1989)参照]。
P2/P1<0.5のとき、下流圧=大気圧、上流圧=P(Kg/cm
2abs),S(mm
2)として
Q=11.1・S・P(l/min・1/mm
2) 式(13)
Q=18.5・S・P(cc/0.1s・1/mm
2
図6に示す圧力変動説明図によると、PF例、P値は1P=2.86、2P=3.1 平均値^3.0ata(3.1Kg/cm
2abs)である、 拠って、Q=57.35(cc/0.1s・1/mm
2)、上式に、1P+2P=0.2sec S=4mm
2を代入すると Q=459cc/2P となり、安全率=0.8として、Q=367(cc/筒・cyc)で、約360ccとなる。
【0051】
S−6(パージ再生工程)における吸着剤利用効率ηを0.46とした理由は、S−6の物質収支計算結果に拠る、計算基本式:
S−6始―終点間の筒A内の、気相条件変化は、1ata,Y2(0.106)−>1ata,Y3(0.38)で、固相吸着量を、酸素Vo・Wη(cc/筒)、窒素Vn・Wη(cc/筒)で示し、数値展開する
酸素: Vε×o.106+Vo(1ata.0.106)・Wη+360×0.73 =Vε×0.38+Vo(1ata,0.38)Wη+88.1
窒素: Vε(1−0.106)+Vn(1ata,o.106)Wη+360(1− o.73)=Vε(1−0.38)+Vn(1ata,0.38)Wη+45 3.9
式(14)基本式に、左辺にWη正値項、右辺に定数項を移し、下表のVo,Vn値Vε=375cc/筒,W=250g/筒 を代入・整理すると、
次の2式が成立する。
酸素:0.6658Wη=39.75+262.8−(142.5+88.1)=71 .95
窒素:2.0Wη=232.5+453.9−(335.25+97.2)=253. 95
酸素(η: 71.95/0.6658/250=0.43
窒素(η):253.95/2/250=0.5
となり、酸素と窒素の平均値ηは0.465で、酸素利用率を0.46に最終決定した。
【0052】
PF例、7ステップの個別物質収支計算における、各ステップ始点―終点時に筒A(B)内の酸素と窒素量を規定する変数は、P((気相全圧,ata)と、Y(気相平均酸素分率)の2つであって、[0038]以下に示すごとく、Y1(計算始点値、実測値)−>Y2−>Y3−>Ye(Yo)の一定の順で決定してきた(Yo,Yeは同時に決定、
図6参照)。
Y2以下は。前ステップの終点値を基に、実測値、理論値を援用して決定した。
Yoに続くステップS−4(両均圧)終点時のY値は、次サイクルのY1で、Yoを基にして予測した値が計算初期値Y1=0.196と連関するかの問題が生じる
Yo(S−1〜S−3の終点値)より次のサイクル始点値Y(S−4の終点値)は,次式で予測できる。
Y(S−4終点値)=Vo/Vt=(1)/(2) 式(15)
(1)=Vo(3.4,Y−2.04,Y)=2.4Y+0.004
(2)=Vt(3.4,Y−2.04,Y)=4.76−0.9Y
( )内数字は気相全圧、ataを示し、(1),(2)右辺の1次式は、近似式(1〜4ata領域)を代入・整理した式である、式(15)のY値は、S−1〜S−3終点時の筒A中心点の酸素分率を示す。
S−1〜S−3終点時の筒A内の酸素分率分布は、一定域(Y=0.21)と変動域(Y:0.21−>0.56)に分かれる、Yo=0.33として計算すると、一定域は筒入口端部0cm−>6.3cm,変動域は6.3−>20cm(MS−5Aカラム出口端部)となり、筒中心点のYは計算上0.343となる。
図11、S−1〜S−3終点時の筒内気相酸素分率の分布図、PF例、参照。
一般に変動域はS字形状と考えられ、PFは高速操作故、Sを引き伸ばした直線に近い形状と考えられる、筒A中心点のY値は0.35,0.36近傍にあると予見できる。
第2サイクル初期値を式(15)により計算.すると下記の通りとなる、
計算始点値、Y1=0.196(実測値、
図10分取図読取値)より、一連の計算手順を経て7ステップ終点値、Yo=0.33を決定した、この値を基にして、
図11を作成し、第2サイクル初期値を式(15)より計算した結果、第1−>第2シリーズ間に連関性が確認でき、PF例、7ステップの一連のY値決定法は、正当と評価できる。
PF例、7ステップの物質収支計算は、この手順に基づく。
【0053】
PF例、7ステップの数値シミュレーションの総括評価、計算精度について。
計算精度=計算値/実測値 で1に近い程、精度がよい。
考えられる誤差因子1〜4に記す、
1,Vε=375cc−空隙率を0.65−>0.67にすると、375−>375+ 7.5ccとなる、カラム長(14+3cm)×22cm
2×0.02=7.5cc 2,Pp=360cc(パージ量)=理論値×安全率で、安全率0.8で、367cc 、安全率を0.82とすると、367−>367+9.2ccになる
3,マクロ孔の作用に対する考慮―S−1〜S−3は操作圧力が高く、操作時間も長い
4,吸着剤利用効率η値の設定、S−6対象、全ガスと酸素で精度が異.なる
ηを0.46−>0.48にすると、全ガスでは0.95−>0.97となり、酸 素では0.97−>0.94と逆に作用する
【表8】
A,B+10はA+10cc、B+10ccを示す、4)はS−1〜S−3を対象とした計算結果である、マクロ孔については[非特許文献4]参照
【非特許文献4】河添、川井、化学工業、36,1,71(1972)
【0054】
表8結果の総括
表8のケース1)の精度は0.94〜0.985 で表7記載値と同じ。
表8のケース4)の精度は0.97〜1.0 で精度向上あり。
ケース4)のマクロ孔を考慮した計算例を記す(表7参照)。
中間孔(450Å)0.11cc/g +マクロ孔(2000Å)0.20cc/g= 0.31cc/g−MS−5A.
全ガス;2372.4+(3.4−2.04)×0.31×250=2372.4+0
105.4= 2477.8c/筒 精度 2477.8/2522=0.98
酸素;504.4+105.4×0.21=526.53cc/筒
精度 525.53/529.7=0.99
【0055】
PF例生産性増大化のための設計諸元、Qp、ポンプ動力(W)とK値について、原料送入速度式:特許文献(4)参照
Qp=K・P・V 式(2)
Qp;原料送入速度(l/s) l(リットル)は1ata換算値、以下同様
P;送入圧(ata) S−1〜S−3の始点―終点平均値
V;吸着筒容積(l/筒)
PF実施例の実測値よりK値計算例について、
例1はPF例で、100W,60l/分型ポンプ使用
例2は190W定格,100l/分型ポンプ使用
Pは.(2.04+3.4)/2=2.72 ata(平均値)
送入速度、l/分は、実測値で、l/sへの換算は次式による、
30/分−>30/(4.5×12)=0.56 l/秒
42/分−>42/(2.5×20)=0.84 l/秒
往復動.式圧縮機の理論軸動力の計算式は次式の通り
W=5.719×Q(l/分)[(P2/P1.)
α−1.] α=0.2857
例1、30l/分 の軸動力計算例、1−>2.04ata の変化では38.75W
1−>3.4ataa の変化では71.8Wである。
実消費電力/理論軸動力=2とすると、56.8×2=113.6Wで、使用ポンプの定格110Wと整合する。
続いてK値について.
式(2)により、原料送入量Qp(l/s)はKに比例する。
Kは、原料送入ステップ始点(i)−>終点(f)で異なる、i/秒が問題になる、
Kは、次の2因子から成る、K=Kp×Ka
Kp;ポンプ因子、圧力上昇に伴う送入量の減少
Ka;活性因子、i−>f に伴うMS−5A吸着能力の低下、吸引力低下
Kp=Q(2.72)/Q(2.04)=1/2(小型ポンプ例)
Ka=Vn(2.04)/Vn(2.72)=(12.295−8.5×0.5)/
(14.72−10.21×0.5)=8.015/9.618=1/1.2.
Ka計算式の 0.5=Ye(S−1始点.時の気相酸素分圧)
Kp:i−>f 変化により1−>1/2 へ送給力か減少する
Ka:i−>f 変化により1−>1/1.2 へ吸着剤の吸引力が減少する
K=Kp×Ka=(1/2)×(1/1.2)=0.417 となり、実測値=0.4と整合する。 Ka計算の近似式Vnについて、Vn=Vt−Vo
【0056】
PF例、省エネ指標、酸素収率とパージ効率の一般式による計算について。
酸素収率(η)の定義:筒A(B)の1サイクルについて、
η=製品酸素中の酸素量(cc/cyc)/原料空気中の酸素量(cc/cyc)
一般式=(1)/[(1)+(2)+(3)] 式(16)
(1)=Qo・Po
(2)=(Pp+Pe・Y1−Y3.)Vε
(3)=(2.43Pe・Y1−1.32Y2−Y3)W
Qo,Poは製品酸素量とその酸素分率、(2)と(3)はS−5,S−6の大氣放出酸素量を示す、(2)は気相―>大氣への放出・損失量、(3)は固相―>大氣放出・損出量を示す、Ppはパージガスの酸素分率、PeはS−1は始点の気相圧、Vεは空隙容積、WはMS−5A量(g/筒)を示す、PF例、請求項4で示す方法で決定した Y1,Y2,Y3を代入・計算結果を記す
(1)=180×0.9=162(cc/cyc)
(2)=(0.73+2.04×0.196−0.38)(375)=282.2
(3)=(2.43×2.04×0.196−1.32×0.106−0.38)(25 0)=112.9
η=162/(162+282.2+112.9) =0.29
パージ効率(ηp)の定義(S−6):
ηp=大氣放出窒素量(cc/cyc)/パージ酸素量(cc/cyc)
=[(4)+(5)]/(6) 式(17)
(4)=(1−Pp−Y2+Y3)Vε
(5)=7.43(Y3−Y2)W・η 窒素のη=0.5(実測値)
(6)=Vε・Pp
(4)=(1−0.73−0.106+0.38)(375)=204(cc/cyc)
(5)=7.43(0.38−0.106)(250)(0.5)=254.48
(6)375(0.73)=273.75
パージ効率=(204+254)/274 =1.67
窒素の吸着剤利用効率η=0.5(実測値)
分取表に示す実測値:全ガス;542cc 酸素;88.1cc 窒素;453.9cc
前記、酸素収率とパージ効率計算結果の総評。
酸素収率は酸素損失=(2)+(3)が小さいほどよい(Pp−>少、Y3−>大がよい)
パージ効率は窒素損失=(4)+(5)が大きいほどよい(Pp−>少、Y3−>大がよい)
拠って、省エネ性のための装置・操作の改善方向は、パージガス.酸素濃度Ppを小さく、Y3を大きくすることにある。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は高速循環式気体分離装置の吸着筒内部の瞬時的変化を数値化した基本技術で、触媒反応装置、吸着分離装置等の新規プロセス創製や運転操作の改善に利用可能と考える但し,実施に当たっては次の2項の事前整備が必須条件となる。
1,吸着剤、触媒の信頼できる基礎物性値
2,筒内の濃度変化の精密な時系列追跡データ(分取図、請求項4参照)
上記初期値により、シミュレーション精度は,ほぼ決定される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】吸着装置(PF−PSA,PGC)の性能指標
【
図4】
図2のPF−PSAシステムを用いて、空気を分離する例の標準弁シーケンス(弁開放時間〜経過時間関係)、分取テスト例を含む
【
図5】
図3のPGCシステムを用いて、空気を分離する例の標準弁シーケンス
【
図6】空気分離を目的としたPF−PSAの1サイクル時間(T、秒)に実施される、筒AとBの2つのサイクルにおける圧力変動説明図
【
図7】空気分離を目的としたPF−PSAの1サイクル時間(T,秒)における筒A〜B間の気流およびY値の相関図
【
図8】Yo(気相酸素分率)〜Vt(全ガス、T=O
2+N
2吸着量、cc/g)関係
【
図9】Yo(気相酸素分率)〜Vo(O
2ガス吸着量、cc/g)関係
【
図10】PF−PSA分取図(G−5,G−6ステップ対象)
図3の弁シーケンスよる分取テスト結果を横軸;積算分取量(cc)〜縦軸;酸素分率 とした柱状図
【
図11】S−1〜S−3終点時の筒内気相酸素分率の分布図、PF例(3.4ata)縦軸:気相酸素分率(−),横軸:筒長(cm)
【符号の説明】
【0059】
PF−PSA,PF Pulsed Flow Controlled Pressure Swing Adsorption
PGC Parametric Gaschromatography
Go バルク成分;O
Gn バルク成分;N
Gt 原料混合ガス(T=Go+Gn)
ata Atmosphere Absolute
S−1 ステップ1 原料ガス送給(筒A対象、以下同様)
S−2 ステップ2 製品採取
S−3 ステップ3 パージ供与
S−4 ステップ4 均圧供与
S−5 ステップ5 減圧放出
S−6 ステップ6 パージ放出
S−7 ステップ7 均圧受取
Qin 1つのステップの始点―終点の時間域に筒Aに流入する気体量(cc/筒)
Qout 1つのステップの始点―終点の時間域に筒Aより流出する気体量(cc/筒)
Ai,Af 1つのステップの始点、終点時における筒A内気体量(cc/筒)
Pmax,Pe,Pmin 1循環操作の最高圧、中間圧、最低圧(ata)
P 筒A(B)の筒内平均気相圧力(ata)
Y 筒A(B)の平均Go分率(−)
Vε、W 吸着筒の空隙容積(cc/筒)、気体分離用吸着剤量(g/筒)
Vt、Vo 全ガス吸着量(cc/g)、Go吸着量(cc/g)
△Vt(i−>f) 各ステップの始点(i)―終点(f)間の全ガス吸着量の変化量(cc/筒)
△Vo(i−>f) 各ステップの始点(i)―終点(f)間のGo吸着量の変化量(cc/筒)