特開2017-3921(P2017-3921A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017003921-遠近両用メガネレンズ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-3921(P2017-3921A)
(43)【公開日】2017年1月5日
(54)【発明の名称】遠近両用メガネレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20161209BHJP
   G02B 3/10 20060101ALI20161209BHJP
【FI】
   G02C7/06
   G02B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-120527(P2015-120527)
(22)【出願日】2015年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】515163379
【氏名又は名称】佐藤 吉男
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉男
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BD03
(57)【要約】
【課題】累進屈折力メガネレンズに遠近両用メガネにおいて、中間部及び近用部の左右の側方にある非点収差の領域で像が歪んで物体がぼやけた状態で見えてしまう欠点を無くすとともに、前記中間部や近用部とその左右の側方との境界の部分で像の位置ずれが生じないようにし、中間部や近用部の左右の側方においても像を良好に見ることのできる遠近両用メガネを提供する。
【解決手段】中間部4と近用部3とのそれぞれの左右両側に、遠用部2における中間部4の左右両側に対応する部分をレンズ下方に延設して遠用部2の屈折力と同一の屈折力とされている延長部6を設けた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠景に対応する屈折力を有する遠用部と、近景に対応する屈折力を有する近用部と、前記遠用部と近用部との間において屈折力が累進的に変化する中間部とを備えた累進屈折力レンズからなる遠近両用メガネレンズにおいて、
前記中間部と近用部とのそれぞれの左右両側に、前記遠用部における中間部の左右両側に対応する部分をレンズ下方に延設して前記遠用部の屈折力と同一の屈折力とされている延長部を設けたことを特徴とする遠近両用メガネレンズ。
【請求項2】
上記中間部と近用部と延長部とのそれぞれのレンズ内形面は、研削研磨された曲面であり、前記中間部と延長部との間でのレンズ内形面が曲面とされて中間部のレンズ内形面と延長部のレンズ内形面とが連続しているとともに、前記近用部と延長部との間でのレンズ内形面が曲面とされて近用部のレンズ内形面と延長部のレンズ内形面とが連続している請求項1に記載の遠近両用メガネレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、累進屈折力メガネレンズでの側部における歪みを抑えた遠近両用メガネレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から遠近両用メガネのレンズには、レンズ中心を通るレンズ縦方向においてレンズの上部側に遠景に対応する屈折力を有する遠用部が設けられているとともに、遠用部の下方であってレンズの下部側にして近景に対応する屈折力を有する近用部が設けられている。そして、遠用部と近用部との間に、屈折力が遠用部の屈折力から近用部の屈折力へと累進的に変化する中間部を設けて、遠用部と近用部との間に境目を無くした累進屈折力メガネレンズよりなる遠近両用メガネレンズが現在では主流となっている。
【0003】
このような遠近両用メガネレンズにおいて、遠用部と近用部のそれぞれの領域(明視域)を広げるとともに、遠用部と近用部とを上記中間部を介して連続するようにしたものでは、中間部を設けたことによる曲面のゆがみが形成されてしまい、中間部の両側方に曲面の前記ゆがみによる非点収差が生じる部分が集中した状態となっている。
【0004】
そのため、累進屈折力メガネレンズの遠近両用メガネを使用している場合、前方にある物体を正面に捉えて遠用部や近用部を通して見ているときには像に歪みがないが、視線が中間部の側方を通るときにはその中間部の側方での像が歪んだ状態で捉えて、物体がぼやけた見え方となってしまい、頭を動かした際には中間部の側方で見える像に揺れを感じて、不快感を与えるものとなってしまう。
【0005】
このような点から近年にあっては、中間部と近用部との左右側方に、その部分で本来形成される非点収差が顕著な高非点収差領域の代わりに、遠用部の領域に適用した屈折力と同じ屈折力から遠用部に対して非点収差を知覚しない限界範囲内の屈折力の間で構成した低非点収差の領域を配置する技術が提案されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−305053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1にあっては、中間部及び近用部の明視域の左右外方に上記低非点収差の領域を設ければ、従来に比べて極めて非点収差が少なくなるために、低非点収差を通して見る像のぼけが緩和される効果が期待できるものとなる。しかし、高非点収差の領域の代わりに配置された低非点収差の部分と中間部及び近用部との境界で目標物の像の位置がずれたイメージジャンプが生じるという問題がある。
【0008】
そこで本発明は事情に鑑み、累進屈折力メガネレンズに遠近両用メガネにおいて、中間部及び近用部の左右の側方にある非点収差の領域で像が歪んで物体がぼやけた状態で見えてしまう欠点を無くすとともに、前記中間部や近用部とその左右の側方との境界の部分で像の位置ずれが生じないようにすることを課題として、中間部や近用部の左右の側方においても像を良好に見ることのできる遠近両用メガネを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、遠景に対応する屈折力を有する遠用部と、近景に対応する屈折力を有する近用部と、前記遠用部と近用部との間において屈折力が累進的に変化する中間部とを備えた累進屈折力レンズからなる遠近両用メガネレンズにおいて、
前記中間部と近用部とのそれぞれの左右両側に、前記遠用部における中間部の左右両側に対応する部分をレンズ下方に延設して前記遠用部の屈折力と同一の屈折力とされている延長部を設けたことを特徴とする遠近両用メガネレンズを提供して、上記課題を解消するものである。
【0010】
そして本発明によれば、上記中間部と近用部と延長部とのそれぞれのレンズ内形面は、研削研磨された曲面であり、前記中間部と延長部との間でのレンズ内形面が曲面とされて中間部のレンズ内形面と延長部のレンズ内形面とが連続しているとともに、前記近用部と延長部との間でのレンズ内形面が曲面とされて近用部のレンズ内形面と延長部のレンズ内形面とが連続していることが良好である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、中間部と近用部とのそれぞれの左右両側の部分には、遠用部の屈折力と同一の屈折力の延長部が設けられているので、中間部と近用部とのそれぞれの左右両側では非点収差が集中せず、遠用部の中心と中間部と近用部の中心とを通るレンズの子午線部分(レンズ縦方向)に視線が有るときに、前記左右両側の部分で像の歪みを感じることが無くなる。また、子午線部分から両眼の視線が側方に移動して両眼の視線それぞれが延長部を通ることで、目標物の像がぼやけて見えるということが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の遠近両用メガネレンズの一例を示すもので、(イ)は内面側から見た状態を示す説明図、(ロ)は(イ)X−X線部の断面を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに本発明を図1に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。図中1は遠近両用メガネレンズを示していて、この遠近両用メガネレンズ1は一つのセミフィニッシュレンズのレンズ外表面及びレンズ内表面を研削研磨することで形成されたものであり、部分的に他のレンズ素材を接合してから研削研磨して所要部分に必要とする屈折力を形成するようにしたものではない。勿論、他のレンズ素材に、コーティング層を形成するコーティング材料を含むものではない。
【0014】
上記遠近両用メガネレンズ1は、図1に示されているように遠景に対応する屈折力を有する遠用部2を上部に備えているとともに、近景に対応する屈折力を有する近用部3を下部に備え、さらに前記遠用部2と近用部3との間において屈折力が累進的に変化する中間部4を備えていて、レンズ1の子午線部分5にレンズ上部側から遠用部2の中心と中間部4と近用部3の中心とが位置するように設けられている。
【0015】
そして本発明の遠近両用メガネレンズ1では、上記遠用部2での前記中間部4の左右両側に対応する部分がレンズ下方に延設され、近用部3の左右両側を経てレンズ1の外縁に至る範囲にして延長部6が設けられている。この延長部6は、遠用部2の屈折力と同じ屈折力を有しており、前記中間部4及び近用部3それぞれの左右両側において遠用部2の屈折力を前記近用部3の屈折力に連続的に変化させる際に従来生じていた曲面の歪み自体を無くして上記中間部4と近用部3とのそれぞれの左右両側に非点収差が集中しないように図られている。
【0016】
上述したようにこの遠近両用メガネレンズ1はセミフィニッシュレンズでの研削研磨することで得られるものであって、遠用部2と中間部4と近用部3と延長部6とのそれぞれのレンズ内形面2a,4a,3a,6aを研削研磨された曲面として形成し、この研削研磨による曲面にて遠用部2、中間部4、近用部3、延長部6での必要とされる屈折力が得られるようにしている。
【0017】
なお、レンズ外表面も研削研磨された曲面であるが、遠用部2、中間部4、近用部3、延長部6それぞれの領域で必要とする屈折力の設定は、各領域で研削研磨形成されたレンズ内形面2a,4a,3a,6aの曲面によって行われている。また、前記レンズ外表面は、上記セミフィニッシュレンズが成形される時点で基本的な曲面形状が形成されているものであっても構わない。
【0018】
上記中間部4と延長部6との間でのレンズ内形面が曲面として研削研磨により形成されて中間部延長部間レンズ内形曲面7としており、この中間部延長部間レンズ内形曲面7を介して中間部4のレンズ内形面4aと中間部4における左右両側の延長部6のレンズ内形面6aとが連続している。
【0019】
また、近用部3と延長部6との間でのレンズ内形面が曲面にして研削研磨により形成されて近用部延長部間レンズ内形曲面8としており、この近用部延長部間レンズ内形曲面8を介して近用部3のレンズ内形面3aとこの近用部3における左右両側の延長部6のレンズ内形面6aとが連続している。
【0020】
これによって視線が中間部4や近用部3にあるときに、この中間部4や近用部3から延長部6側に股がって見える目標物の像が境目を持った位置ずれによるイメージジャンプとして捉えられるということがなく、違和感を感じさせないようになるという効果を有する。
【0021】
なお、図において説明を容易にするために中間部延長部間レンズ内形曲面と近用部延長部間レンズ内形曲面との位置それぞれを一点鎖線で表しているが、中間部延長部間レンズ内形曲面と近用部延長部間レンズ内形曲面とが線状に目視できるわけではない。
【符号の説明】
【0022】
1…遠近両用メガネレンズ
2…遠用部
2a…遠用部のレンズ内形面
3…近用部
3a…近用部のレンズ内形面
4…中間部
4a…中間部のレンズ内形面
5…子午線部分
6…延長部
6a…延長部のレンズ内形面
7…中間部延長部間レンズ内形曲面
8…近用部延長部間レンズ内形曲面
図1