【解決手段】ワークWの搬送面を有するトラフ6と、トラフ6を支持する弾性変形可能な弾性支持手段5と、この弾性支持手段5を通じてトラフ6に対して搬送方向(X方向)への直線振動、および前記搬送面内において搬送方向と交差(直交)する方向の一方の縁部6tと他方の縁部6rが交互に昇降するロール振動を同一周波数で与えるアクチュエータ71、72と、アクチュエータ71、72を制御してトラフ6の一方の縁部6t側にワークWを搬送方向(X方向)に移動させる搬送力を付与し、他方の縁部6r側にワークを搬送方向と逆方向であるリターン方向(−X方向)に移動させる搬送力を付与するコントローラCとを備えてなるものにした。
物品の搬送面を有するトラフと、該トラフを支持する弾性変形可能な弾性支持手段と、この弾性支持手段を通じて前記トラフに対して搬送方向への直線振動、および前記搬送面内において搬送方向と交差する方向の一方の縁部と他方の縁部が交互に昇降するロール振動を同一周波数で与える加振手段と、前記加振手段を制御して前記トラフの一方の縁部側に物品を搬送方向に移動させる搬送力を付与し、他方の縁部側に物品を搬送方向と逆方向であるリターン方向に移動させる搬送力を付与する振動制御手段とを備えたことを特徴とするパーツフィーダ。
弾性支持手段が、搬送方向に沿って配置され搬送方向にも当該搬送方向と交差する方向にも弾性変形可能な一対の支持体を備え、加振手段が、前記支持体を搬送方向に変形させる周期的加振力を加える第1加振部と、前記支持体を搬送方向と交差する方向に変形させる周期的加振力を加える第2加振部とを備える請求項1に記載のパーツフィーダ。
第1、第2加振部を制御する振動制御部を、第1加振部によりトラフ全体に現れる直線振動の振動位相に対し、第2加振部によるロール振動を通じて前記一方の縁部側に現れる上下方向の振動位相を前記直線振動の位相に対して遅れ位相とし、前記他方の縁部側に現れる上下方向の振動位相を前記直線振動の位相に対して進み移相とするように設定している請求項2に記載のパーツフィーダ。
弾性支持手段が、搬送方向に沿って配置され搬送方向にも当該搬送方向と交差する方向にも弾性変形可能な一対の第1支持体と、上端部をこの第1支持体に懸下され搬送方向に対し所定角度をなす方向に弾性変形可能な一対の第2支持体とを備え、第2支持体に前記トラフを支持させるようにしたものであって、前記加振手段が、前記第2支持体を前記所定方向に変形させる周期的加振力を加える加振部を備える請求項1に記載のパーツフィーダ。
加振部を制御する振動制御部を、加振部によりトラフ全体に現れる直線振動の極性に対し、ロール振動を通じて前記一方の縁部側に現れる上下方向の振動の極性を合致させ、前記他方の縁部側に現れる上下方向の振動の極性を逆極性とするように設定している請求項4に記載のパーツフィーダ。
前記一方の縁部側に設けた整列トラフと、前記他方の縁部側に設けたリターントラフと、前記整列トラフの終端側に接続した排出シュートと、前記整列トラフの下流側において整列条件を満たさない物品を整列トラフから排除する排除機構とを備え、前記整列トラフの下流側を相対的に高位置とするように当該整列トラフの下流側と前記リターントラフの始端側とを接続するとともに、前記リターントラフの下流側を相対的に高位置とするように当該リターントラフの下流側と前記整列トラフの始端側とを接続している請求項3または5の何れかに記載のパーツフィーダ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
【0019】
この実施形態のパーツフィーダ1は、リニアフィーダとも称されるもので、
図1および
図2に示すように、機械装置部2と振動制御部3とから構成される。この振動制御部3は、後述するように機械装置部2に組み込まれた加振手段たるアクチュエータ71、72の制御を行うことで、機械装置部2に
図3に示す搬送方向であるX方向の周期的加振力およびX方向と交差(直交)するロール方向(R方向)の周期的加振力を与えてトラフ6を振動させるようにしたものである。
【0020】
機械装置部2は、
図1および
図2に示すように、上面に載置した物品たるワークWを搬送するトラフ6と、トラフ6を弾性的に支持する弾性支持手段5とを具備する。
【0021】
弾性支持手段5は、
図1〜
図3に示すように、2本の支持体である角支柱状のバネ部材51を備え、それらバネ部材51、51間にトラフ6が架け渡される。
【0022】
各バネ部材51は、それぞれ下端部51bをベース4に固定され、当該下端部51bより鉛直上方(Z方向)に向かって起立している。
【0023】
加振手段は、トラフ6にX方向の直線振動を付与する第1加振部たる直線加振アクチュエータ71と、トラフにR方向のロール振動を付与する第2加振部たるロール加振アクチュエータ72とを備える。
図6に示すように、直線加振アクチュエータ71はバネ部材51の長手方向(上下方向)中央部を避けた下端側でX軸と直交する面(YZ面)の表裏に、扁平直方体状の圧電素子71a、71bを取り付けて構成される。これらの圧電素子71a、71bは電圧を印加することによりZ方向の伸縮を生じさせるもので、表裏を差動的に駆動することによって相対的に表裏何れか一方の面を伸張状態、他方の面を縮退状態させ、バネ部材51を
図3(a)に示すように湾曲させるバイモルフ型のものである。
【0024】
一方、ロール加振アクチュエータ72はバネ部材51の長手方向(上下方向)の略全域に亘ってY軸と直交する面(XZ面)の表裏に、扁平直方体状の圧電素子72a、72bを取り付けて構成される。これらの圧電素子72a、72bも電圧を印加することによりZ方向の伸縮を生じさせるもので、表裏を差動的に駆動することによって相対的に表裏何れか一方の面を伸張状態、他方の面を縮退状態としてバネ部材51を
図3(b)に示すように湾曲させるバイモルフ型のものである。
【0025】
そして、直線加振アクチュエータ71、ロール加振アクチュエータ72を各々独立して駆動できるように、
図2に示すようにそれぞれがアンプAx、Arを介して振動制御手段3のコントローラCに接続されている。
【0026】
コントローラCは、発電機Gに接続され、アンプAx、Arへの制御電圧の振幅を生成する振幅設定回路31aを有するとともに、アンプAxへの制御電圧の位相を基準としてアンプArへの制御電圧の位相を設定する位相設定回路31bを有する。コントローラCからアンプAx、Arに出力する指令に係る周波数は、パーツフィーダ1の質量や各部のバネ定数等で定まる直線振動系やロール振動系の固有周波数にほぼ一致させてあり、これらの固有振動数が電源周波数の±5%以内としておくことが望ましい。
【0027】
そして、直線加振アクチュエータ71およびロール加振アクチュエータ72に各々正弦波状の制御電圧を付与することによって、バネ部材51にX方向およびR方向の周期的加振力を与えるようにしている。
【0028】
具体的には、X方向に関しては、一対の直線加振アクチュエータ71、71に振幅および位相の等しい電圧を印加することにより、各々のバネ部材51を
図3(a)に示すように同期して長手方向中央部を基点としてS字状をなすようにX方向に周期的に撓ませる。また、R方向に関しては、一対のロール加振アクチュエータ72、72に振幅および位相の等しい電圧を印加することにより、X方向から見て見掛け上1本であるバネ部材51を同図(b)に示すように全体が弓状に撓るようにR方向に周期的に撓ませる。このときトラフに、
図4(a)に示す直線振動モードと、同図(b)に示すロール振動モードとが現われる。なお、本実施形態ではバネ部材51の長手方向中央部を避ける位置に直線加振アクチュエータ71を取り付けたが、X方向の周期的加振力を与える構成であればこれに限らない。
【0029】
ここで、トラフ6の周期的振動とワークWの搬送方向の関係について説明する。
【0030】
図5(a)はトラフ6の平面図であり、直線振動とロール振動を組み合わせると、領域Tと領域Rでは異なる振動をする。ロール振動に仮想の回転軸mを定義すると、領域Tは回転軸mより+Y方向のトラフ上面であり、領域Rは回転軸mより−Y方向のトラフ上面である。
【0031】
直線振動とロール振動を位相差φで駆動する。具体的には、領域Tでは直線振動Xt=a×sinωt、ロール振動Zt=b×sin(ωt+φ)となるように駆動し、領域Rでは直線振動Xt=a×sinωt、ロール振動Zr=−b×sin(ωt+φ)となるように駆動する。これらの振動の組み合わせはトラフ6に楕円振動を励起する。
【0032】
一般的に、
図7(a)においてX=a×sinωt、Z=b×sin(ωt+φ)の条件でトラフ6が楕円振動する場合、トラフ6上のワークWの搬送速度VはX方向とZ方向の位相差φにより変化する。楕円振動においては楕円振動の垂直成分が下向きから上向きに変わる領域でトラフ6上のワークWとの摩擦が大きくなり、このときトラフ6が水平方向のどちらに動いているかによってワークWの搬送方向が決まる。この搬送速度Vと位相差φの関係を
図7(b)に示す。X方向の振動に対してZ方向の振動の位相差φが0〜180°の間で遅れているとき、換言すればZ方向の振動に対してX方向の振動が0〜180°の間で進んでいるときは、ワークの速度Vは+X方向を向き、逆に、X方向の振動に対してZ方向の振動の位相差φが0〜180°の間で進んでいるとき、換言すればZ方向の振動に対してX方向の振動が0〜180°の間で遅れているときは、ワークの速度Vは−X方向を向く。
【0033】
領域Tと領域Rでは、Z方向の振動が逆相になるため、位相差φと搬送速度Vxは
図8(a)に示すようになる。
【0034】
この実施形態では、例えばφ=−90°に設定し、
図8(b)に示すように領域T側のトラフ6上のワークWが+X方向すなわち搬送方向下流側に向かって搬送力を与えられ、逆相である領域R側のトラフ上のワークWは−X方向すなわちリターン方向に向かって搬送力を与えられるように設定している。
【0035】
また、
図8(a)において領域T、Rの搬送速度が同時に0になる位相差ψ(約6°)のときは、両領域T、RでワークWは静止する。
【0036】
回転軸m上のトラフ面(
図8(b)破線部)では、Z方向の振動がないため、ワークWは搬送されない。また、回転軸mから±Y方向に離れるに従い、トラフ上面のZ方向の振動が大きくなるため、搬送速度が速くなる。
【0037】
以上の振動搬送を利用し、
図8(b)および
図9(a)の平面図に示すようにトラフ6上において一方(+Y方向)の縁部6t側の領域Tのうち縁辺付近に溝61aを設けて整列トラフ61とし、他方(−Y方向)の縁部6r側の領域Rのうち縁辺付近に溝62aを設けてリターントラフ62として、ワークWを循環させるように構成する。
【0038】
図9(b)、(c)はそれぞれ
図9(a)のG−G線断面、H−H線断面であり、これらの図においてリターントラフ62側の溝62aは省略してある。整列トラフ61の溝61の下流には整列されていないワークWを検出する透過型等によるセンサ63やそれを排除するエアブロー方式等による排除機構64を設けて、整列したワークWのみを排出シュート側65に送り出すように構成する。排除機構64はワークWをリターントラフ62側に移送するが、排除されたワークWが途中で整列トラフ61の溝61aに戻ったり、トラフ6から落下しないようにするため、整列トラフ61の終端61eからリターントラフ62の始端62sに導くガイド62gを取り付け、整列トラフ61の終端61e側からリターントラフ62の始端62s側に向かって
図9(c)のように下り勾配となる傾斜62ψ1が設けてある。同様に、リターントラフ62の終端62e側から整列トラフ61の始端61s側に向かってワークが還流するように、
図9(b)のように同方向に向けて下り勾配となる傾斜62ψ2が設けてある。したがって、リターントラフ62に沿って破線Q上の傾斜は登り勾配となるように構成されている。
【0039】
次に、このトラフの搬送順路を
図10(a)に示す。
図8(b)で示した搬送方向でワークWが搬送される場合、整列トラフ61の始端61sから溝61aに沿って終端61eに接続された排出シュート65まで整列されながら振動搬送される。その問、整列されなかったワークWは、
図10(b)に示すように、センサ63、排除機構64により、検出・排除され、整列トラフ61の終端61eからリターントラフ62の始端62sに進む。このとき
図9(c)で示した傾斜62ψ1があるので、破線で示す回転軸m上に留まったりせず、滑落してリターントラフ62の始端62sに進む。このときエアの排除作用やガイド62gを利用してワークWの姿勢を変える。次にワークWはリターントラフ62の始端62sから終端62eへ振動搬送される。終端62e以降は
図9(b)で示した傾斜62ψ2があるため、ワークWは後から来るワークWに押されることもあって、滑落して再び整列トラフ61の始端61sに戻る。このように、ワークWは整列されて排出シュート65から次の工程に排出されるまで、トラフ6上を循環する。
【0040】
以上のように、本実施形態のパーツフィーダ1は、ワークWの搬送面を有するトラフ6と、トラフ6を支持する弾性変形可能な弾性支持手段5と、この弾性支持手段5を通じてトラフ6に対して搬送方向(X方向)への直線振動、および搬送面内において搬送方向と交差(直交)する方向の一方の縁部6tと他方の縁部6rが交互に昇降するロール振動を同一周波数で与える加振手段71、72と、加振手段71、72を制御してトラフ6の一方の縁部6t側にワークWを搬送方向(X方向)に移動させる搬送力を付与し、他方の縁部6r側にワークを搬送方向と逆方向であるリターン方向(−X方向)に移動させる搬送力を付与する振動制御手段3を備えたものである。
【0041】
このように構成すれば、1つのトラフ6で搬送方向の振動とリターン方向の振動とを同時に作りだすことができるので、搬送トラフとリターントラフを別々に設け、各々を別異の駆動手段で駆動するといった必要がなくなる。しかも、トラフ6は全体として一体であって同じ振動をしているだけであるから、トラフ間にクリアランスを設ける等の対策を講じることも不要となる。そして、これらの結果、パーツフィーダ1の小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
【0042】
具体的には、弾性支持手段5が、搬送方向に沿って配置され搬送方向にも搬送方向と交差(直交)する方向にも弾性変形可能な一対の支持体51、51を備え、加振手段が、支持体51を搬送方向に変形させる周期的加振力を加える第1加振部たる直線加振アクチュエータ71と、支持体51を搬送方向と交差する方向に変形させる周期的加振力を加える第2加振部たるロール加振アクチュエータ72とを備えている。このため、搬送方向の一対の支持体51、51に支持されたトラフ6は、搬送方向(X方向)の加振に対しては略直線動作を行い、搬送方向と交差(直交)する方向(Y方向)に対しては見掛け上1本の支持体51に支持されて同交差方向の変形によりロール動作が生じる。そして、各アクチュエータ71、72で独立した加振力を加えることができるため、直線振動やロール振動を自在に設定することが可能である。
【0043】
より詳細には、両アクチュエータ71、72を制御する振動制御手段3を、直線加振アクチュエータ71によりトラフ6の全体に現れる直線振動の振動位相に対し、ロール加振アクチュエータ72によるロール振動を通じて一方の縁部6t側に現れる上下方向の振動位相を直線振動の位相に対して遅れ位相とし、他方の縁部6r側に現れる上下方向の振動位相を直線振動の位相に対して進み位相とするように設定しているので、一方の縁部6t側を搬送トラフとして利用し、他方の縁部6r側をリターントラフとして利用する構成を有効に実現することができる。
【0044】
そして本実施形態は、一方の縁部6t側に設けた整列トラフ61と、他方の縁部6r側に設けたリターントラフ62と、整列トラフ61の終端61e側に接続した排出シュート65と、整列トラフ61の下流側において整列条件を満たさないワークWを整列トラフ61から排除する排除機構64とを備え、整列トラフ61の下流61e側を相対的に高位置とするように整列トラフ61の下流61e側とリターントラフ62の始端62s側とを接続するとともに、リターントラフ62の下流62e側を相対的に高位置とするようにリターントラフ62の下流62e側と整列トラフ61の始端61s側とを接続しているので、整列条件を満たさないワークWを排除し、リトライして再度整列トラフ61に供する循環を形成して、処理効率を効果的に高めることができる。
【0045】
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0046】
例えば、
図11(a)に示す直線振動に対して同図(b)に示すように搬送面の中心にロール振動の回転軸mが設定されたるトラフ6に比して、同図(c)で示すように回転軸mの位置を幅方向にΔdだけ異ならせることも有効である。
図12に回転軸mの位置とトラフ6上の領域Tおよび領域Rとの関係を示す。
図11に示したロール振動(b)をするトラフ6の場合、
図12(a)に示す領域T、Rはほぼ等幅であるが、
図11(b)に示したロール振動(b)に対しては
図12(b)に示すように領域Tの方が領域Rよりも幅広となっている。このように、ロール振動の回転軸mの位置を変えることで、トラフ6上の領域T、Rの幅を変えることができる。
【0047】
また、上記実施形態で第1加振部と第2加振部はバイモルフ型の圧電アクチュエータによって構成したが、他の駆動源を利用することもできる。
図13(a)に他の構成によって直線振動とロール振動を実現した構造物の例を示す。この図はトラフ101を搬送方向の上流側から見た図であり、トラフ101は可動子103、コイル104および固定子105からなる一対のボイスコイル型アクチュエータ100Aによって一方の縁部101t側と他方の縁部101r側をピン接合部102を介して支持され、2つのアクチュエータ100A、100Aを逆相で振動させる。これにより、同図(b)に示すようにトラフ101に搬送方向と交差(直交)するロール振動が励起される。また、このボイスコイル型アクチュエータの固定子105を固定子106および可動子107からなるリニアモータ100Mの可動子107に支持させ、当該可動子107を固定子106との間でX方向に駆動することによって、トラフ101を直線振動させる。
【0048】
このように構成しても、上記実施形態と同様の効果が奏される。
(第2実施形態)
【0049】
この実施形態のパーツフィーダは、
図14に示すように、ベース208に所定間隔を隔てて第1支持体たる一対の防振バネ207を起立状態で取り付け、これらの防振バネ207の上端間をスペーサ209および第2支持体たる駆動バネ203の上端部を介してカウンターウェイト205で接続している。駆動バネ203の下端部には可動台204が取り付けられ、トラフ201は前記可動台204に側板202を介してカウンターウェイト205と干渉しないように取り付けられている。
【0050】
すなわち、防振バネ207を介してベース208にカウンターウェイ205を弾性支持させ、カウンターウェイト205の下方で且つベース208よりも上方に可動台204を配置するとともに、駆動バネ203を介してカウンターウェイト205に対し可動台204を相対動作可能に懸下している。加えて、カウンターウェイト205の上方にトラフ201を配置し、側板202によって可動台204とトラフ206が一体に作動するようにしている。
【0051】
こうすることで、駆動バネ203が撓むと、カウンターウェイト205と可動台204は逆位相で振動することになる。
【0052】
片方もしくは両方の駆動バネ203の表裏には、
図15に示すように加振部たる圧電アクチュエータ271を構成する圧電素子271a、271bを貼り付けている。この圧電アクチュエータ271も差動的に電圧を印加されるバイモルフ型のものである。
【0053】
このような構成において、
図16に示すように、一対の防振バネ207の内面に当該防振バネ207に対して角度θのテーパ面を有する台形状のスペーサ209を設け、これらのテーパ面に板状の駆動バネ203を角度θ傾いた状態で取り付けて、対向する駆動バネ203の内面間を平行四辺形状のカウンターウェイト205によって接続している。駆動バネ205によって接続されている
図14の可動台204も平面視平行四辺形状に設けてある。この場合のθは約0.01〜0.1°とする。
【0054】
そして、圧電アクチュエータ271を駆動するために、
図14に示すようにアンプAを介して振動制御手段3のコントローラCに接続している。
【0055】
コントローラCは、アンプAへの制御電圧の振幅を生成する振幅設定回路31aを有するもので、コントローラCからアンプAに出力する指令に係る周波数は、パーツフィーダの質量や駆動バネの剛性で決まる固有振動数にほぼ一致させてある。
【0056】
そして、圧電アクチュエータ271に正弦波状の制御電圧を付与することによって、駆動バネ203に周期的加振力を与えるようにしている。
【0057】
具体的には、圧電アクチュエータ271を駆動すると、
図16に矢印で示すように駆動バネ203とともにカウンターウェイト205が搬送方向に対して所定角度θ傾いたX´方向に加振される。これにより防振バネ207も矢印で示すように所定角度θ傾いたX´方向に振動する。このときの防振バネ207の動作のうち搬送方向(X方向)の成分によって可動台204およびトラフ201が逆方向に作動し、トラフ201に
図17(a)に示すようにX´の分力として−X方向に直線モードが励起される。また、Y方向に対しては、
図16に示す防振バネ207の動作のうち搬送方向と交差(直交)する方向の成分に起因した撓みによって、
図17(b)に示すように一方の縁部201tと他方の縁部201rが交互に昇降するR方向のロールモードが励起される。
【0058】
すなわち、トラフ201は直線モードとロールモードの振動が組み合わさった状態で振動する。
【0059】
ここで
図18(a)にトラフ201の平面図を示し、
図19にトラフ201の正面図を示す。防振バネが
図16の基準位置より右上に変位すると、
図17(a)に示すように防振バネ207は+X方向に変位し、かつ
図16における防振バネ207の+Y方向成分により
図17図(b)に示すようにYZ面で防振バネ207は左にロールして左肩が下がった(領域Tが沈み込んだ)状態になる。このときトラフ201は逆動作によって
図19(a)に示す−X方向に後退する。すなわち、領域Tは−X方向に後退して沈み込んだ状態になる。この位置から防振バネ207が基準位置に復帰する動作を行うと、トラフ201の領域Tは+X方向に復帰しながら浮き上がるので、このときワークWに+X方向の搬送力を与える。逆に、防振バネ207が
図16の基準位置より左下に変位すると、防振バネは
図17(a)に示す状態とは逆の−X方向に変位し、かつ
図16の−Y方向成分により
図17同図(b)とは逆に右にロールして右肩が下がった(領域Rが沈み込んだ)状態になる。このときトラフ201は逆動作によって
図19(b)に示す+X方向に前進する。すなわち、領域Rは+X方向に前進して沈み込んだ状態になる。この位置から防振バネが基準位置に復帰する動作を行うと、トラフ201の領域Rは−X方向に復帰しながら浮き上がるので、このときワークWに−X方向の搬送力を与える。以上により、領域Tが搬送トラフ、領域Rがリターントラフとしての機能を備える。
【0060】
このような振動搬送を利用したトラフ201上の具体的な構成やワークWの搬送順序については、
図9、
図10に基づいて説明したと同様である。
【0061】
以上のようにして、本実施形態も、ワークWの搬送面を有するトラフ201と、トラフ201を支持する弾性変形可能な弾性支持手段(第1、第2支持体207、203)と、この弾性支持手段(第1、第2支持体207、203)を通じてトラフ201に対して搬送方向(X方向)への直線振動、および前記搬送面内において搬送方向と交差(直交)する方向の一方の縁部201tと他方の縁部201rが交互に昇降するロール振動を同一周波数で与える加振手段たる圧電アクチュエータ271と、圧電アクチュエータ271を制御してトラフ201の一方の縁部201t側にワークWを搬送方向(X方向)に移動させる搬送力を付与し、他方の縁部201r側にワークWを搬送方向と逆方向であるリターン方向(−X方向)に移動させる搬送力を付与する振動制御手段3とを備えることになり、上記第1実施形態と同様にして小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
【0062】
しかも、弾性支持手段が、搬送方向に沿って配置され搬送方向(X方向)にも搬送方向と交差(直交)する方向にも弾性変形可能な一対の第1支持体たる防振バネ207と、上端部をこの防振バネ207に懸下され搬送方向(X方向)に対し所定角度θをなす方向(X´方向)に弾性変形可能な一対の第2支持体たる駆動バネ203とを備え、駆動バネ203にトラフ201を支持させるようにしたものであり、圧電アクチュエータ271が加振部として駆動バネ203を所定方向(X´方向)に変形させる周期的加振力を加えるようにしている。このため、一対の駆動バネ203が所定角度方向(X´方向)に変形すると、その搬送方向(X方向)成分により防振バネ207は搬送方向(X方向)に変形し、搬送方向と交差(直交)する方向(Y方向)の成分により防振バネ207は同Y方向に変形する。その結果、防振バネ207および駆動バネ302を介して支持されたトラフ201は、搬送方向(X方向)に対しては略直線動作を行い、搬送方向と交差する方向(Y方向)に対しては見掛け上1本の防振バネ207に支持されて同Y方向の変形によりロール動作を引き起こす。このように、圧電アクチュエータ271から入力される加振力でトラフ201を搬送方向(X方向)とロール方向(R方向)に加振でき、加振部が1つで足りるので、駆動系や振動制御系の部品点数の更なる削減が図れ、振動制御部3による制御もより簡易なものとなる。
【0063】
特に、圧電アクチュエータ207を制御する振動制御部3を、圧電アクチュエータ207によりトラフ201の全体に現れる直線振動の極性に対し、ロール振動を通じて一方の縁部207t側に現れる上下方向の振動の極性を合致させ、他方の縁部207r側に現れる上下方向の振動の極性を逆極性とするように設定しているため、一方の縁部201t側を搬送トラフとして利用し、他方の縁部201r側をリターントラフとして利用する構成をここでも有効に実現することができる。
【0064】
なお、上記各実施形態において、支持体に角度を付けることにより、ワークの順方向、逆方向の速度に速度差をつけることができる。
【0065】
図20に上記第2実施形態を変形したリニアフィーダの構成を示す。駆動バネ207をθ´度傾けることができるように、カウンターウェイト205、防振バネ203、スペーサ209、可動台204、側板202等を対向2辺がθ´傾いた平行四辺形状にする。ただし、θ´は0.1〜3とする。
図20(b)に示すように平面視は
図16におけると同様である。ここでも
図21に示す方向にワークWが搬送される場合を考え、領域Tの搬送速度をVt、領域Rの搬送速度をVrとする。このときのトラフの領域T、Rに発生する振動を
図22に示す。ただし、駆動バネをθ´度傾けていないときである。この図の意味は
図19と同様である。このとき、領域Tにおけるトラフの振動をXt=Asinωt、Zt=Bsinωtとし、領域Rにおけるトラフの振動をXr=Asinωt、Zr=−Bsinωtとする。
【0066】
一方、ロール振動しない条件で、駆動バネをθ´度(>0)傾けた場合、トラフに発生する振動を
図23に示す。このときのトラフの振動を、X0=Asinωt、Z0=Csinωtとする。
【0067】
したがって、ロール振動が発生する条件で、駆動バネをθ´度傾けた場合、領域T、Rで発生するZ方向の振動は次のようになる。
【0070】
C−B<0の場合、領域RではZ方向の変位振幅は小さくなり、速度Vrは減少する。領域TではZ方向の変位振幅は大きくなるため、速度Vtは増加する。
【0071】
C−B>0の場合、両領域においてワークはXが正の方向に搬送される。ただし、速度は│Vt│>│Vr│である。
【0072】
以上のように、駆動バネをθ´度傾けることで、トラフ201の片方の領域での搬送速度を上げ、もう片方の領域での搬送速度を下げる設定をことができる。このため、例えばトラフ201の排出側の速度を上げ、リターン側の速度を下げることで、ワークの供給量を増やすことが可能となる。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、交差する方向として直交以外の方向を設定するなど、各部の具体的な構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。