【解決手段】複数の鉄心片12を積層して形成された積層鉄心本体13を、搬送治具25に載せた状態で積層方向両側から挟み込む、下型23及びこれに対して昇降可能な上型24を有する金型21を備え、この金型21で挟み込まれた積層鉄心本体13の積層方向に形成された貫通孔に、搬送治具25を介して下型23から樹脂を注入する積層鉄心の製造装置10であり、搬送治具25を下型23に対して昇降可能とする昇降手段29が、金型21とは異なる位置に設けられている。
複数の鉄心片を積層して形成された積層鉄心本体を、搬送治具に載せた状態で積層方向両側から挟み込む、下型及び該下型に対して昇降可能な上型を有する金型を備え、該金型で挟み込まれた前記積層鉄心本体の積層方向に形成された貫通孔に、前記搬送治具を介して前記下型から樹脂を注入する積層鉄心の製造装置において、
前記搬送治具を前記下型に対して昇降可能とする昇降手段が、前記金型とは異なる位置に設けられたことを特徴とする積層鉄心の製造装置。
請求項1記載の積層鉄心の製造装置において、前記貫通孔は磁石挿入孔であって、該磁石挿入孔に樹脂を注入することで、該磁石挿入孔に永久磁石を固定することを特徴とする積層鉄心の製造装置。
請求項1又は2記載の積層鉄心の製造装置において、前記昇降手段は、平面視して四角形状の前記搬送治具を、幅方向両側から支持して昇降可能な対となる支持部を有し、しかも、該各支持部には、前記搬送治具を水平移動させてスライド装着可能にし、前記下型と前記上型の間に配置するガイド溝が設けられていることを特徴とする積層鉄心の製造装置。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造装置において、前記昇降手段の動作を前記上型の動作に連動させる制御部を有することを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、積層鉄心本体の磁石挿入孔に挿入した永久磁石を樹脂で固定する積層鉄心の製造装置が開示されている。
具体的には、
図2に示すように、積層鉄心の製造装置80は、樹脂注入を行う下型81と、昇降可能な上型82を有する金型83を備え、この上型82にガイドレールユニット84が設けられたものである。使用にあっては、積層鉄心本体86を載置した搬送治具85をガイドレールユニット84にスライド装着した後、上型82の下降に伴って搬送治具85を下型81上に装着し、積層鉄心本体86を上型82と下型81で挟んで樹脂を注入する。
【0003】
しかし、積層鉄心本体86には、平面視した形状は同一であるが、積厚(厚み)が異なるものがあり、この場合、金型83は共通で使用できるものの、ガイドレールユニット84の高さ位置は積層鉄心本体86の積厚に対応させる必要があった。
そこで、上型82とガイドレールユニット84との間にスペーサ87を配置し、このスペーサ87を積層鉄心本体86の積厚に応じて入れ替えることで、上型82と積層鉄心本体86の位置関係を調整している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の積層鉄心の製造装置80には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
製造装置内のスペースが狭いため、スペーサの入替え時に作業がしづらい(製造装置の隙間に手を入れて作業を行う場合がある)。
また、積層鉄心の生産上(生産効率を高めるため)、金型の冷却が不十分な状態で、作業者がスペーサを入替える場合があり、火傷するおそれがある。
更に、試作品等、通常とは異なる積厚の積層鉄心を製造する場合、スペーサを新規に製作する必要があり、不経済である。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、積厚の異なる積層鉄心を、生産性の低下を招くことなく、作業性よく経済的に製造可能な積層鉄心の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る積層鉄心の製造装置は、複数の鉄心片を積層して形成された積層鉄心本体を、搬送治具に載せた状態で積層方向両側から挟み込む、下型及び該下型に対して昇降可能な上型を有する金型を備え、該金型で挟み込まれた前記積層鉄心本体の積層方向に形成された貫通孔に、前記搬送治具を介して前記下型から樹脂を注入する積層鉄心の製造装置において、
前記搬送治具を前記下型に対して昇降可能とする昇降手段が、前記金型とは異なる位置に設けられている。
【0008】
本発明に係る積層鉄心の製造装置において、前記貫通孔は磁石挿入孔であって、該磁石挿入孔に樹脂を注入することで、該磁石挿入孔に永久磁石を固定することができる。
【0009】
本発明に係る積層鉄心の製造装置において、前記昇降手段は、平面視して四角形状の前記搬送治具を、幅方向両側から支持して昇降可能な対となる支持部を有し、しかも、該各支持部には、前記搬送治具を水平移動させてスライド装着可能にし、前記下型と前記上型の間に配置するガイド溝が設けられていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る積層鉄心の製造装置において、前記昇降手段の動作を前記上型の動作に連動させる制御部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る積層鉄心の製造装置は、搬送治具を下型に対して昇降可能とする昇降手段を、金型とは異なる位置に設けているので、従来の製造装置のように、スペーサを用いる必要がなくなる。これにより、積厚の異なる積層鉄心を、生産性の低下を招くことなく、作業性よく経済的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、
図1を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造装置10を用いて製造する積層鉄心11について説明する。
【0014】
積層鉄心11は、回転子鉄心(ロータ)である。
この積層鉄心11は、環状(所定形状)の複数の鉄心片12を積層して構成された積層鉄心本体13を有している。なお、積層鉄心本体は、環状の複数の鉄心片を積層して形成した複数のブロック鉄心を、順次転積して構成することもできる。
この鉄心片12は、環状の一体構造のものである。なお、鉄心片は、複数の円弧状の鉄心片部を環状に連結できる分割構造のものや、複数の円弧状の鉄心片部の周方向の一部が連結部で繋がり、この連結部を折曲げて環状にできる構造のものでもよい。
【0015】
鉄心片12は、厚みが、例えば、0.10〜0.5mm程度の電磁鋼板やアモルファス等からなる薄板材(薄板条材)から打抜き形成されるものである。なお、鉄心片は、1枚の薄板材から打抜いたものや、薄板材を複数枚(例えば、2枚、更には3枚以上)重ねた状態で打抜いたものでもよい。
積層方向に隣り合う鉄心片12、12同士は、かしめ接合により連結されているが、更に、樹脂(熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂)、接着剤、及び、溶接のいずれか1又は2以上を用いて、連結することもできる。なお、樹脂を用いる場合は、積層鉄心本体の積層方向に連結孔(貫通孔の一例)を形成し、これに樹脂を注入する。
【0016】
積層鉄心11の中央には、軸孔(シャフト孔)14が形成され、この軸孔14を中心としてその周囲に、積層鉄心11(積層鉄心本体13)の積層方向に形成された図示しない磁石挿入孔(貫通孔の一例)が、複数形成されている。この磁石挿入孔への永久磁石の固定は、上記した樹脂を用いて行う。
なお、積層鉄心11には更に、軸孔14を中心としてその周囲に、積層方向に貫通する重量軽減孔(図示しない)が複数形成されている。
【0017】
また、積層鉄心は、固定子鉄心(ステータ)でもよい。
この積層鉄心は、前記した薄板材から打抜いた環状の複数の鉄心片を積層して構成された積層鉄心本体を有するものであり、環状のヨーク部と、このヨーク部の内周側に一体的に連接した複数の磁極部とを有している。
なお、積層方向に隣り合う鉄心片同士は、前記した樹脂により連結されているが、更に、かしめ、接着剤、及び、溶接のいずれか1又は2以上を用いて、連結することもできる。この樹脂による連結は、前記した積層鉄心11の連結孔と同様の構造で実施できる。
【0018】
続いて、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造装置(以下、単に製造装置ともいう)10について、
図1を参照しながら説明する。
積層鉄心の製造装置10は、積層鉄心本体13を挟み込む金型21を備え、この金型21で挟み込まれた積層鉄心本体13の積層方向に形成された磁石挿入孔(更には連結孔)に、樹脂を注入して、磁石挿入孔に永久磁石を固定する装置である。
【0019】
金型21は、製造装置10のベース台22上に配置された下型23と、この下型23に対して昇降可能な上型24を有している。
この下型23と上型24は、積層鉄心本体13を搬送治具25に載せた状態で、積層方向両側から挟み込み、積層鉄心本体13を型締めするものである。
なお、下型23には、断面円形の樹脂溜めポット(図示しない)が複数形成され、この樹脂溜めポット内の樹脂を、プランジャによって積層鉄心本体13へ向けて押出す構造となっている。
【0020】
搬送治具25は、積層鉄心本体13を載置する載置台26と、この載置台26の中央部に立設された位置決めロッド27を備えている。
載置台26は、平面視して正方形状(四角形状の一例)となって、その裏面側には、複数の溝部(図示しない)が形成され、各溝部の端部には、磁石挿入孔に連通するゲート(図示しない)が形成されている。これにより、下型23の樹脂溜めポットから押出された樹脂は、載置台26の溝部とゲートを介して、積層鉄心本体13の磁石挿入孔に注入される。なお、使用にあっては、下型23の上面に載置台26の下面が当接することで、溝部が塞がれて樹脂流路(ランナー)が形成される。
【0021】
位置決めロッド27は、積層鉄心本体13の軸孔14に嵌入して、載置台26に載せた積層鉄心本体13を位置決めするものである。
この位置決めロッド27は、積層鉄心本体13の積厚よりも高くなっている(先部が積層鉄心本体13の上面から突出している)。なお、使用にあっては、位置決めロッド27の先部は、上型24の下部に設けられた逃げ穴28に挿入される。
これにより、金型21で挟み込まれた積層鉄心本体13の磁石挿入孔に、搬送治具25(載置台26)を介して下型23から樹脂を注入できる。
【0022】
ベース台22には、搬送治具25を下型23に対して昇降可能とする昇降手段29が設けられている。
昇降手段29は、下型23の両側側方に立設されたガイドポスト30、31と、このガイドポスト30、31に沿って昇降可能に設けられた対となる支持部32、33と、この各支持部32、33をガイドポスト30、31に沿って昇降させる、図示しないサーボモータ(駆動源)とを有している。即ち、昇降手段29のガイドポスト30、31、及び、支持部32、33は、金型21とは異なる位置に設けられ、支持部32、33は上型24とは独立して昇降可能となっている。
【0023】
対となる支持部32、33には、搬送治具25(載置台26)を幅方向両側から支持し、この搬送治具25を下型23と上型24の間に配置するガイド溝34、35が、それぞれ設けられている。
この各ガイド溝34、35は、側面視してコ字状となって、搬送治具25の載置台26を幅方向両側から挟み込み、スライド装着可能な構造となっている。これにより、載置台26を水平方向にガイドしながら移動させ、下型23と上型24の間に配置できる。
なお、下型23の上側両端部には、切欠き36、37が設けられ、支持部32、33を下降させた際に、支持部32、33が下型23に接触しない構造となっている。
【0024】
対となる支持部32、33は、制御部(図示しない)からの指令により、サーボモータによって同期して昇降する。
ここで、制御部は、支持部32、33の昇降動作を、上型24の昇降動作に連動させている。具体的には、予め入力されたプログラムに基づき、上型24の下降に連動して、支持部32、33を下降させ、また、上型24の上昇に連動して、支持部32、33を上昇させる。
【0025】
続いて、上記した積層鉄心の製造装置10を用いた積層鉄心11の製造方法について、
図1を参照しながら説明する。
複数の鉄心片12を積層して積層鉄心本体13を製造し、これを搬送治具25に載せる。このとき、積層鉄心本体13の軸孔14に、搬送治具25の位置決めロッド27を嵌合させて、積層鉄心本体13を搬送治具25の載置台26の所定位置に取付ける。
なお、搬送治具25を、積層鉄心本体13を製造する金型装置に配置して、鉄心片12を金型装置内で順次積層してもよい。
【0026】
次に、積層鉄心本体13の各磁石挿入孔に永久磁石(未磁化)を挿入する。この場合、積層鉄心本体13を横に傾けて、永久磁石を入れてもよい。
そして、積層鉄心本体13を搬送治具25に載置した状態で水平移動させ、昇降手段29の支持部32、33に装着する。この状態では、搬送治具25の下面と下型23の上面との間に空間(隙間)がある。
なお、下型23の樹脂溜めポットには、予め樹脂のタブレットを充填しておく。
【0027】
昇降手段29により、搬送治具25を下降させる。このとき、上型24も下降させる。
そして、搬送治具25の下面が下型23の上面に当接し、その後、上型24の下面が積層鉄心本体13の上面に当接することで、積層鉄心本体13を下型23と上型24で型締めする。
これによって、磁石挿入孔の上部は上型24によって閉塞され、更に位置決めロッド27の先部が逃げ穴28に挿入される。
【0028】
この状態で、樹脂溜めポット内で加熱されて溶融した樹脂を、プランジャを上昇させて押出し、樹脂流路からゲートを介して、磁石挿入孔に充填する。
樹脂が硬化した後は、搬送治具25と上型24を上昇させる。なお、搬送治具25と上型24の上昇は、搬送治具25が初期の高さ位置となるまで同期して行い、その後、上型24のみを上昇させればよいが、上型24を上昇させた後、搬送治具24を上昇させてもよい。
【0029】
これによって、樹脂溜めポットに残っていて硬化した樹脂、及び、樹脂流路に残って硬化した樹脂は、搬送治具25(載置台26)に付着した状態で、搬送治具25と永久磁石が樹脂封止された積層鉄心本体13と共に引き上げられる。
その後、搬送治具25から積層鉄心本体13を取外すことによって、積層鉄心11が得られる。
【0030】
従って、本発明の積層鉄心の製造装置を使用することで、積厚の異なる積層鉄心本体でも、同じ金型で樹脂注入を実施できる。このため、従来のように、積厚の異なる積層鉄心本体ごとに、スペーサの入替え作業を行う必要がなく、また、スペーサを製作する必要がなくなる。
また、積層鉄心の生産上、金型の冷却が十分でない状態でも、従来のように、作業者が装置内に手を入れてスペーサを交換する必要がなくなるので、安全性の向上が図れる。
そして、昇降手段を金型とは異なる位置に設けているので、金型をシンプルかつ小さくでき、金型のコストを低減できる。
【0031】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の積層鉄心の製造装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、搬送治具(載置台)を平面視して正方形状とした場合について説明したが、これに限定されるものではない。搬送や位置決めに支障がなければ、四角形状以外の形状、例えば、多角形状や円形状でもよく、適宜選択可能である。
【0032】
また、前記実施の形態においては、積層鉄心本体の積層方向に形成された貫通孔(磁石挿入孔や連結孔)に、搬送治具を介して下型から樹脂を注入する場合(積層鉄心の製造装置及び製造方法)について説明したが、上型から樹脂を注入してもよい。この場合、上型に、断面円形の樹脂溜めポットを複数形成する。
その際、樹脂を上型から貫通孔に直接注入してもよいし、また、積層鉄心本体と上型の間に設けたダミー板を介して、樹脂を上型から貫通孔に注入してもよい。
なお、ダミー板の構成は、前記した搬送治具の載置台と略同様の構成にできる。具体的には、ダミー板の表面側(上型側)に、複数の溝部を形成し、各溝部の端部に、貫通孔に連通するゲートを形成する。使用にあっては、ダミー板の上面に上型の下面が当接することで、溝部が塞がれて樹脂流路(ランナー)が形成される。