特開2017-41923(P2017-41923A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-41923(P2017-41923A)
(43)【公開日】2017年2月23日
(54)【発明の名称】スイッチング電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20170203BHJP
【FI】
   H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-160584(P2015-160584)
(22)【出願日】2015年8月17日
(71)【出願人】
【識別番号】506334171
【氏名又は名称】トレックス・セミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128532
【弁理士】
【氏名又は名称】村中 克年
(72)【発明者】
【氏名】早川 耕亮
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730DD04
5H730DD41
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H730FF02
5H730FG05
5H730FG25
5H730FG26
(57)【要約】
【課題】放電モードにおいては安全かつ円滑に所定の放電を行うことができるスイッチング電源回路を提供する。
【解決手段】 放電モードを表す放電制御信号DISCHGに基づき放電モードの制御を開始する放電制御回路8を有するとともに、前記放電モードにおいて、コイル電流ILが所定の監視値に達するまでは、出力端子Voutからトランジスタ10を介して接地に至る第1の放電経路を形成し、その後1次電源1の電源電圧Vinが所定の最大値となるまでは、出力端子Voutからトランジスタ9を介して1次電源1に至る第2の放電経路を形成し、さらに1次電源1の電源電圧Vinが所定の監視値に達するまでは1次電源1、トランジスタ9および出力端子Voutを介して接地へ至る第3の放電経路を形成し、その後トランジスタ10および出力端子Voutを介して接地へ至る第4の放電経路を形成するよう放電制御回路8がトランジスタ9,10の動作を制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端子が1次電源に接続されたスイッチング素子である第1のトランジスタと、一方の端子が接地されたスイッチング素子である第2のトランジスタとの他方の端子同士を接続することにより形成される接続点からコイルおよび出力端子を介して所定の出力電圧を負荷に与えるスイッチングモードと、前記負荷に対する電力供給を終了する際に、出力側に残留する電荷を放電させる放電モードとを有するスイッチング電源回路であって、
前記放電モードを表す放電制御信号に基づき前記放電モードの制御を開始する放電制御回路を有するとともに、
前記放電制御回路の制御に基づき、前記出力端子、前記コイルおよび前記第2のトランジスタを介して接地に至る第1の放電経路と、前記出力端子、前記コイルおよび前記第1のトランジスタを介して前記1次電源に至る第2の放電経路と、前記第2の放電経路を介して前記出力端子から前記1次電源へ伝送された電荷を前記1次電源から接地または前記出力端子へ伝送するための放電経路とを形成することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
請求項1に記載するスイッチング電源回路であって、
前記第2の放電経路は前記第1のトランジスタのドレイン端子をアノード、ソース端子をカソードとする寄生ダイオードを利用して形成され、
前記コイルに流れるコイル電流値を検出するコイル電流監視回路と、前記1次電源の電圧である1次電源電圧値を検出する電源電圧監視回路を有するとともに、
前記放電モード時、前記第1の放電経路を経由して前記残留電荷を放電する際に前記コイル電流監視回路で検出する前記コイルに流れるコイル電流値が所定の値に達すると、前記第1の放電経路の形成を終了するとともに、
前記第2の放電経路を経由して放電する際に前記電源電圧監視回路が検出する前記1次電源電圧値が所定の値に達すると、前記1次電源の電荷を接地または前記出力端子へ伝送するための経路を形成することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項3】
請求項2に記載するスイッチング電源回路であって、
前記放電モードを表す放電制御信号に基づき前記第1の放電経路を形成するとともに、前記コイル電流値が所定の値に達するまでは前記第1の放電経路の形成を継続し、
前記コイル電流値が所定の値に達すると前記第1の放電経路の形成を終了して前記第2の放電経路を形成するとともに、
前記1次電源電圧値が所定の値に至るまでは前記第2の放電経路の形成を継続して前記第2の放電経路を介して前記出力端子から前記1次電源へ電荷が伝送されることに伴い上昇する前記1次電源電圧値が所定の値に至った時点で前記第2の放電経路の形成を終了し、
その後前記1次電源から前記第1のトランジスタ、前記コイルを介して前記出力端子へ至る第3の放電経路を形成し、前記第3の放電経路を介して前記1次電源から前記出力端子へ電荷が伝送されることに伴い下降する前記1次電源電圧値が所定の値に至るまでは前記第3の放電経路の形成を継続し、
前記1次電源電圧値が所定の値に至った時点で前記第3の放電経路の形成を終了して前記第1の放電経路を形成するように前記放電制御回路が前記第1および第2のトランジスタを制御することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項4】
請求項3に記載するスイッチング電源であって、
前記放電制御回路は、前記電源電圧監視回路と前記コイル電流監視回路と、前記電源電圧監視回路の出力信号および前記電流監視回路の出力信号により、前記第1および第2のトランジスタを導通状態または不導通状態とする制御信号を生成する論理回路を有し、
前記放電制御信号が前記放電制御回路に与えられると、前記論理回路は前記第1のトランジスタを不導通状態、前記第2のトランジスタを導通状態とする制御信号を生成して前記第1の放電経路を形成し、前記コイル電流値が所定の値に達するまでは前記第1の放電経路を経由して放電電流を流し、
前記コイル電流値が所定の値に達したことを前記コイル電流監視回路が検出した時点で前記論理回路が前記第1のトランジスタを不導通状態、前記第2のトランジスタを不導通状態とする制御信号を生成し、前記第1の放電経路の形成を終了するとともに、前記第2の放電経路を形成し、前記第2の放電経路を介して前記出力端子から前記1次電源へ電荷が伝送されることに伴い上昇する前記1次電源電圧値が所定の値に至るまでは前記第2の放電経路を経由して放電電流を流し、
前記1次電源電圧値が所定の値に達したことを前記電源電圧監視回路が検出した時点で前記論理回路が前記第1のトランジスタを導通状態、前記第2のトランジスタを不導通状態とする制御信号を生成し、前記第2の放電経路の形成を終了するとともに、前記第3の放電経路を形成し、前記第3の放電経路を介して前記1次電源から前記出力端子へ電荷が伝送されることに伴い下降する前記1次電源電圧値が所定の値に至るまでは前記第3の放電経路を経由して放電電流を流し、
前記1次電源電圧値が所定の値に達したことを前記電源電圧監視回路が検出した時点で前記論理回路が前記第1のトランジスタを不導通状態、前記第2のトランジスタを導通状態とする制御信号を生成して前記第3の放電経路の形成を終了して前記第1の放電経路を形成することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項5】
請求項4に記載するスイッチング電源であって、
前記電源電圧監視回路が検出する電圧値が、前記1次電源のノードに印加し得る最大の電圧値>第1の監視電圧値>第2の監視電圧値、という関係を有し、
前記1次電源電圧値が前記第1の監視電圧値に達すると、前記第2の放電経路の形成を終了して前記第3の放電経路を形成し、
前記1次電源電圧値が前記第2の監視電圧値に達すると、前記第3の放電経路の形成を終了して前記第1の放電経路を形成することを特徴とするスイッチング電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスイッチング電源回路に関し、特に同期整流方式によりプロセッサ等の負荷に供給する電流を遮断した際の残留電荷を処理する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
複数の電源系統を有する電気機器においては、ラッチアップによる半導体製品の損傷を防ぐ為に、電圧の高い系統から低い系統へと順に電源を投入していく制御(電源オンシーケンス)がなされている。一方、電圧を遮断する際には、電圧の低い系統から高い系統へと順に遮断していく制御(電源オフシーケンス)がなされている。
各電源系統へ電圧を供給する際には、通常、安定化電源が用いられるが、供給する電力が大きい場合には、電力変換効率の高いスイッチング電源回路が安定化電源に用いられることが多い。スイッチング電源回路には、出力側への電圧の供給を終了した際に、出力側に残留している電荷を放電する機構が備えられているものがある。例えば、特許文献1で提案されている手法は電圧供給を終了した際に、コイルと接地間に備えられているスイッチ素子を導通状態にさせて残留電荷の放電を行う。
【0003】
放電に際しては、専用の放電回路を設置する方法もあるが、専用回路を設置するためには追加のコストが必要になる。特許文献1で示されている手法には、スイッチング電源が1次電源から出力側へ電力を伝送する目的で備えている接地側のスイッチ素子を放電時に用いているので追加のコストが発生しないという利点がある。
ただ、特許文献1に示されている手法の場合、スイッチ素子の抵抗値が低い場合や出力側の電圧が高い場合には、放電時に出力側から接地側へ流れる放電電流値も大きくなるので、放電経路中のコイルやスイッチ素子を破損する恐れがある。
【0004】
かかる問題を解消するものとして特許文献2に示す手法が提案されている。特許文献2では放電電流を観測し、電流値が所定の値を超えると接地側のスイッチ素子を導通状態から不導通状態とすることで過大な放電電流が流れるのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−113496号公報
【特許文献2】特開2008−160967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2では、接地側への放電電流が所定の値に達した際に接地側のスイッチ素子を不導通にしているので、1次電源とコイルの間に接続されている電源側のスイッチ素子のドレイン端子-ソース端子間に存在する寄生ダイオードを介して、出力側から1次電源へと至る放電経路が構成される。このときの、出力側から1次電源への放電経路は、コイルに蓄えられているエネルギーの放出が終了するまで継続される。よって特許文献2に開示されている手法では、出力側のコンデンサから接地という放電経路を形成するフェーズと、出力側のコンデンサから1次電源という放電経路を形成するフェーズを交互に行き来しながら電荷を放電していく。
【0007】
ここで、出力側に設置されている負荷がプロセッサである場合、容量値の大きい安定化用のコンデンサが出力側に設けられることがある。これは、プロセッサへ与える電圧に対しては静的にも動的にも高い精度が必要とされる一方、プロセッサ自身が消費する駆動電流の変化が急峻であるために電圧が変動しやすいという状況に対処するものである。
このように、出力側のコンデンサの容量値が大きくなると、放電しなければならない電荷も増えるので、出力側のコンデンサから1次電源という放電経路が形成される頻度も多くなる。
【0008】
一方、スイッチング電源回路の1次電源側にも電圧安定化のためにコンデンサが設けられているが、1次電源側への放電頻度が多くなるのに伴って出力側から伝送される電荷量も増え、この放電電荷に起因して1次電源の電圧が上昇する。この放電電荷によって上昇した電圧が1次電源側の定格電圧を超えるとスイッチング電源回路や1次電源を破損する恐れがある。よって1次電源側の電圧の過上昇を防止するために、当該スイッチング電源回路の出力側のコンデンサの容量値を大きくする場合には、1次側のコンデンサの容量値も大きくする必要があり、コストアップの原因となる。
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑み、出力側に設けられたコンデンサが大容量であっても、コストアップを招来することなく放電モードにおいては安全かつ円滑に所定の放電を行うことができるスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
一方の端子が1次電源に接続されたスイッチング素子である第1のトランジスタと、一方の端子が接地されたスイッチング素子である第2のトランジスタとの他方の端子同士を接続することにより形成される接続点からコイルおよび出力端子を介して所定の出力電圧を負荷に与えるスイッチングモードと、前記負荷に対する電力供給を終了する際に、出力側に残留する電荷を放電させる放電モードとを有するスイッチング電源回路であって、
前記放電モードを表す放電制御信号に基づき前記放電モードの制御を開始する放電制御回路を有するとともに、
前記放電制御回路の制御に基づき、前記出力端子、前記コイルおよび前記第2のトランジスタを介して接地に至る第1の放電経路と、前記出力端子、前記コイルおよび前記第1のトランジスタを介して前記1次電源に至る第2の放電経路と、前記第2の放電経路を介して前記出力端子から前記1次電源へ伝送された電荷を前記1次電源から接地または前記出力端子へ伝送するための放電経路とを形成することを特徴とするスイッチング電源回路にある。
本様態によれば、第1のトランジスタと第2のトランジスタが放電経路を形成するので、放電に際して別途回路や素子を設ける必要がない。さらに、出力端子側から1次電源へ伝送された電荷を1次電源から接地または出力端子へ伝送するための経路を形成することができるので、放電電荷による1次電源の電圧の過上昇を防止することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載するスイッチング電源回路であって、
前記第2の放電経路は前記第1のトランジスタのドレイン端子をアノード、ソース端子をカソードとする寄生ダイオードを利用して形成され、
前記コイルに流れるコイル電流値を検出するコイル電流監視回路と、前記1次電源の電圧である1次電源電圧値を検出する電源電圧監視回路を有するとともに、
前記放電モード時、前記第1の放電経路を経由して前記残留電荷を放電する際に前記コイル電流監視回路で検出する前記コイルに流れるコイル電流値が所定の値に達すると、前記第1の放電経路の形成を終了するとともに、
前記第2の放電経路を経由して放電する際に前記電源電圧監視回路が検出する前記1次電源電圧値が所定の値に達すると、前記1次電源の電荷を接地または前記出力端子へ伝送するための経路を形成することを特徴とするスイッチング電源回路にある。
【0012】
本態様によれば、コイル電流監視回路および電源電圧監視回路を設けて、コイル電流および電源電圧を直接に検出し得るようにしたので、放電電流や電源電圧が過大になるのを確実かつ容易に防止し得る。
本発明の第3の態様は、
第2の態様に記載するスイッチング電源回路であって、
前記放電モードを表す放電制御信号に基づき前記第1の放電経路を形成するとともに、前記コイル電流値が所定の値に達するまでは前記第1の放電経路の形成を継続し、
前記コイル電流値が所定の値に達すると前記第1の放電経路の形成を終了して前記第2の放電経路を形成するとともに、
前記1次電源電圧値が所定の値に至るまでは前記第2の放電経路の形成を継続して前記第2の放電経路を介して前記出力端子から前記1次電源へ電荷が伝送されることに伴い上昇する前記1次電源電圧値が所定の値に至った時点で前記第2の放電経路の形成を終了し、
その後前記1次電源から前記第1のトランジスタ、前記コイルを介して前記出力端子へ至る第3の放電経路を形成し、前記第3の放電経路を介して前記1次電源から前記出力端子へ電荷が伝送されることに伴い下降する前記1次電源電圧値が所定の値に至るまでは前記第3の放電経路の形成を継続し、
前記1次電源電圧値が所定の値に至った時点で前記第3の放電経路の形成を終了して前記第1の放電経路を形成するように前記放電制御回路が前記第1および第2のトランジスタを制御することを特徴とするスイッチング電源回路にある。
【0013】
本様態によれば、第2の態様のコイル電流監視回路および電源電圧監視回路の出力信号を用いて第1〜第3の放電経路の形成と形成の終了のタイミングを適切に決定し得る。
本発明の第4の態様は、
第3の態様に記載するスイッチング電源であって、
前記放電制御回路は、前記電源電圧監視回路と前記コイル電流監視回路と、前記電源電圧監視回路の出力信号および前記電流監視回路の出力信号により、前記第1および第2のトランジスタを導通状態または不導通状態とする制御信号を生成する論理回路を有し、
前記放電制御信号が前記放電制御回路に与えられると、前記論理回路は前記第1のトランジスタを不導通状態、前記第2のトランジスタを導通状態とする制御信号を生成して前記第1の放電経路を形成し、前記コイル電流値が所定の値に達するまでは前記第1の放電経路を経由して放電電流を流し、
前記コイル電流値が所定の値に達したことを前記コイル電流監視回路が検出した時点で前記論理回路が前記第1のトランジスタを不導通状態、前記第2のトランジスタを不導通状態とする制御信号を生成し、前記第1の放電経路の形成を終了するとともに、前記第2の放電経路を形成し、前記第2の放電経路を介して前記出力端子から前記1次電源へ電荷が伝送されることに伴い上昇する前記1次電源電圧値が所定の値に至るまでは前記第2の放電経路を経由して放電電流を流し、
前記1次電源電圧値が所定の値に達したことを前記電源電圧監視回路が検出した時点で前記論理回路が前記第1のトランジスタを導通状態、前記第2のトランジスタを不導通状態とする制御信号を生成し、前記第2の放電経路の形成を終了するとともに、前記第3の放電経路を形成し、前記第3の放電経路を介して前記1次電源から前記出力端子へ電荷が伝送されることに伴い下降する前記1次電源電圧値が所定の値に至るまでは前記第3の放電経路を経由して放電電流を流し、
前記1次電源電圧値が所定の値に達したことを前記電源電圧監視回路が検出した時点で前記論理回路が前記第1のトランジスタを不導通状態、前記第2のトランジスタを導通状態とする制御信号を生成して前記第3の放電経路の形成を終了して前記第1の放電経路を形成することを特徴とするスイッチング電源回路にある。
【0014】
本態様によれば、コイル電流監視回路と電源電圧監視回路の検出結果を論理処理する論理回路を設け、この論理回路における論理処理で第1および第2のトランジスタの導通、不導通を制御するようにしたので、第1〜第3の放電経路を容易かつ確実に形成することができる。
本発明の第5の態様は、
第4の態様に記載するスイッチング電源であって、
前記電源電圧監視回路が検出する電圧値が、前記1次電源のノードに印加し得る最大の電圧値>第1の監視電圧値>第2の監視電圧値、という関係を有し、
前記1次電源電圧値が前記第1の監視電圧値に達すると、前記第2の放電経路の形成を終了して前記第3の放電経路を形成し、
前記1次電源電圧値が前記第2の監視電圧値に達すると、前記第3の放電経路の形成を終了して前記第1の放電経路を形成することを特徴とするスイッチング電源回路にある。
【0015】
本態様によれば、1次電源の電源電圧を確実に定格最大電圧以下に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、スイッチング電源回路が備えているスイッチ素子であるトランジスタが出力側のコンデンサの放電回路の一部を兼ねているので、別途放電経路を形成するための素子を付加する必要がない。また、出力側から接地へ流れる放電電流が所定の値に達すると放電経路を変更して放電電流値を低減させるので、放電電流が過大な値に至ることがなく、放電経路を構成するコイルやスイッチ素子であるトランジスタ等の損傷を未然に防止し得る。さらに、1次電源の電荷を出力側へ伝送する期間を設けたので、放電電荷による1次電源の電圧の過昇圧を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るスイッチング電源回路を示す回路図である。
図2図1の各部の波形を示す波形図である。
図3図1のVin監視回路のさらに詳細な構成に関する実施例を示す回路図である。
図4図1のIL監視回路のさらに詳細な構成に関する実施例を示す回路図である。
図5】従来技術における、放電動作時の各部の挙動を示した波形図である。
図6】本発明の実施の形態における、放電動作時の各部の挙動を示した波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るスイッチング電源回路を示す回路図である。同図に示すように、本形態に係るスイッチング電源回路は、同期整流方式の降圧DC/DCコンバータを構成している。さらに詳言すると、スイッチング素子である第1のトランジスタ9はPMOSトランジスタであり、一端側のソースが1次電源1に接続されている。この結果、トランジスタ9のソースには入力電圧Vinが印加される。また、1次電源1には電圧安定化用のコンデンサ2が並列に接続してある。他のスイッチング素子である第2のトランジスタ10はNMOSトランジスタであり、一端側であるソースが接地されている。トランジスタ9,10はそれぞれの他端側のドレイン同士を接続点Nで直列に接続してある。トランジスタ9、10のスイッチング動作に伴い生成される所定の電圧は、トランジスタ9,10のドレイン側の接続点Nからコイル3および出力端子Voutを介して外部の負荷5に印加される。出力端子Voutには、電圧安定化用のコンデンサ4が負荷5と並列に接続してある。
【0019】
出力端子Voutの電圧情報は、スイッチング制御回路6にフィードバックされる。スイッチング制御回路6にフィードバックされた出力端子Voutの出力電圧Voは、分割抵抗61,62で、出力電圧Voと分割抵抗61,62の抵抗値とで決まる分割比で規定されるフィードバック電圧信号として増幅器63に与えられる。増幅器63にはフィードバック電圧信号とともに、基準電圧源64から基準電圧Vrefが印加される。かくして増幅器63は与えられた2つの電圧信号の電圧値の差分を増幅した増幅信号を比較器66の反転入力端子に印加する。比較器66の非反転入力端子には三角波発生器65が発生する三角波信号が印加される。かくして、比較器66では増幅器63の出力である前記増幅信号の電圧値と三角波発生器65の出力である前記三角波信号の電圧値とを比較し、三角波信号の電圧値が高い場合はHiレベル信号を、増幅信号の電圧値が高い場合はLoレベル信号を出力する。比較器66の出力信号はプリドライバ回路7へ与えられる。
【0020】
プリドライバ回路7は、トランジスタ9の駆動を制御する選択回路71および駆動回路72と、トランジスタ10の駆動を制御する選択回路73および駆動回路74とを有している。選択回路71,73の一方の入力端子には比較器66の出力信号が与えられる。また、選択回路71,73の他方の入力端子には後に詳述する放電制御回路8の出力信号が与えられる。さらに、選択回路71,73には放電制御信号DISCHGが与えられ、該放電制御信号DISCHGがLoレベル信号である場合は、後に詳述するスイッチングモードとなり、Hiレベル信号である場合は、放電モードとなり、駆動回路72,74を介してそれぞれ所定のスイッチ制御を行う。すなわち、スイッチングモードでは、スイッチング制御回路6の出力信号で、放電モードでは、後述する放電制御回路8の出力信号に基づき駆動回路72,74を介してそれぞれトランジスタ9,10のスイッチ制御を行う。
【0021】
放電制御回路8は、電源電圧Vinを監視するVin監視回路81、コイル電流ILを監視するIL監視回路85および所定の論理処理を行う論理回路を有している。ここで、Vin監視回路81には電源電圧Vinの電圧情報が与えられ、電源電圧Vinの値が所定の監視値より高い場合はHiレベル信号を出力し、低い場合はLoレベル信号を出力する。Vin監視回路81へは選択回路71からも信号が与えられており、トランジスタ9が導通状態であるか不導通状態であるかによりVin監視回路81が適用する監視値を変更させている。以下、トランジスタ9が不導通状態である場合の監視値を第1の監視値、導通状態である場合の監視値を第2の監視値という。
【0022】
IL監視回路85は接続点Nに流れ込むコイル電流ILを検出しており、コイル電流ILが所定の監視値より高い場合にHiレベル信号を出力し、低い場合にLoレベル信号を出力する。
本形態における論理回路は、インバータ82、オア回路83、Dフリップフロップ84を有しており、Vin監視回路81およびIL監視回路85の出力信号の状態または状態変化によりトランジスタ9,10を導通状態または不導通状態とする。さらに詳言すると、インバータ82には、Vin監視回路81の出力信号の状態を反転して選択回路71の他方の端子に与える。また、選択回路73の他方の端子にはDフリップフロップ84のQ出力信号が与えられる。Dフリップフロップ84のD端子には、電源電圧Vinの情報が与えられ、クロック(CLK)端子にはオア回路83の出力信号が与えられる。さらにDフリップフロップ84のリセット端子には、IL監視回路85の出力信号が与えられる。この結果、Dフリップフロップ84は、IL監視回路85の出力信号のHiレベル状態への立ち上がりでリセットされる。オア回路83は、インバータ82で反転させたVin監視回路81の出力信号と放電制御信号DISCHGとのオア論理を表す状態信号である論理和信号を出力する。
【0023】
また、放電制御信号DISCHGは、前述の如く、選択回路71,73にも与えられており、これがLoレベル信号である場合にスイッチングモードとなり、Hiレベル信号である場合に、放電モードとなってそれぞれ所定のスイッチ制御を行う。なお、放電モードとは、当該スイッチング電源回路により負荷5に対する電力の供給を遮断する際に、出力端子Vout、コイル3およびコンデンサ4を含む出力側に蓄積された電荷を放電させることをいう。
【0024】
次に、上記スイッチング電源回路の動作を、図2を追加して詳細に説明する。図2図1に示すスイッチング電源回路の各部の波形を示す波形図で、同図(a)は放電制御信号DISCHG、(b)は駆動回路72の出力信号、(c)は駆動回路74の出力信号、(d)はコイル電流IL(ただし、出力端子Voutからトランジスタ9,10のドレイン端子に向かう方向を正とする)、(e)はトランジスタ9,10のドレイン端子電圧、(f)は拡大して示す電源電圧Vin、(g)はVin監視回路81の出力信号、(h)はIL監視回路85の出力信号、(i)は拡大して示す出力電圧Voをそれぞれ示す。
【0025】
また、図2は放電モードにおける波形を示している。放電モードでは、負荷5に対する負荷電流(コイル電流IL)の供給を遮断することに伴い、コイル3およびコンデンサ5等に蓄積された電荷を出力端子Voutから接続点Nを介して1次電源1または接地に移動させる。一方、スイッチングモードでは、従来の同期整流方式のDC/DCコンバータと同様に、スイッチング制御回路6の出力信号によりトランジスタ9,10が交互に動作し、出力端子Voutを介して負荷5に一定の出力電圧Voを印加する。
【0026】
図2は、出力側のコンデンサ4の放電動作開始直前であって負荷電流が0の平衡状態からの波形を示している。ここで、電荷の移動するノードと方向により、4個の期間A,B,C,Dに分割し、各期間A〜Dごとに動作を説明する。期間Aは出力端子Voutから接地へ電荷が移動している期間、期間Bは出力端子Voutから1次電源1へ電荷が移動している期間、期間Cは1次電源1から出力端子Voutへ電荷が移動している期間、期間Dは接地から出力端子Voutへ電荷が移動している期間である。
【0027】
<期間A>
図2では、本形態に係るスイッチング電源回路が供給している電源電圧VinがVin監視回路81の監視値に近い値である場合の波形を示している。前述のように与えられている放電制御信号DISCHGのレベルがLoからHiへ変更されたことにより放電動作が開始される。放電制御信号DISCHGがHiレベルとなったことにより、選択回路71,73は放電制御回路8から与えられる出力信号を選択してそれぞれの出力信号を送出する。この結果、駆動回路72,74は放電制御回路8が送出する出力信号に則りトランジスタ9,10の駆動制御を行う。
【0028】
すなわち、放電制御回路8には放電制御信号DISCHGが与えられているので、放電制御信号DISCHGのLoレベルからHiレベルへの状態遷移がオア回路83を通してDフリップフロップ84へ与えられる。かかる放電制御信号DISCHGのLoレベルからHiレベルへの状態遷移をトリガとしてDフリップフロップ84のQ出力信号もLoレベルからHiレベルへ遷移する。
ここで、Dフリップフロップ84のQ出力信号はプリドライバ回路7内の選択回路73を介して駆動回路74へ与えられている。この結果、駆動回路74は入力信号と同論理のHiレベル状態信号をNMOSのトランジスタ10のゲートに与える。このHiレベル状態信号によりトランジスタ10は導通状態となる。同時に、選択回路71にはVin監視回路81の出力信号の状態をインバータ82で反転した状態信号が与えられるので、選択回路71および駆動回路72を介してPMOSのトランジスタ9へもHiレベルの状態信号が与えられる。この結果、トランジスタ9は不導通状態となる。
【0029】
このように、トランジスタ10が導通状態、トランジスタ9が不導通状態となったことで、コイル3とトランジスタ10を経由して、出力端子Voutから接地への放電経路が形成される。
かかる放電経路中にはコイル3があるため、放電電流はコイル3のドレイン−ソース端子間電圧と電圧印加時間に依存して漸増する。当該期間Aの間、コイル3のドレイン−ソース端子電圧は接地電圧と出力電圧Voであり、端子間電圧はVo-0=Voである。よって、単位時間における放電電流の増加の程度はdIL/dt=Vout÷L(Lはコイル3のインダクタンス)と表される。
【0030】
このときの放電電流はトランジスタ10の電流値を監視するIL監視回路85により監視されている。漸増する放電電流値が監視値Iaに至ると、IL監視回路85はこれを検出し、Hiレベル信号を出力してDフリップフロップ84のリセット端子に与える。この結果、Dフリップフロップ84はリセットされ、そのQ出力信号をHiレベルからLoレベルへ遷移させる。かかる状態遷移は選択回路73を介して駆動回路74へ与えられ、駆動回路74は入力信号と同論理のLoレベル状態信号をトランジスタ10のゲートに与える。この結果、トランジスタ10は不導通状態となる。トランジスタ10が不導通状態となったことで出力端子Voutから接地へ向かう放電経路の形成は終了される。
【0031】
当該期間Aは放電が開始されてからコイル電流ILが監視値Iaに至るまでの期間であり、その時間は、
【0032】
【数1】
と表される。
【0033】
この間出力端子Voutから放電される電荷量は、
【数2】
である。
【0034】
<期間B>
出力端子Voutから接地への放電経路の形成が終了されたとき、コイル3には監視値Iaに相当するコイル電流ILが流れており、これは電気エネルギーが蓄えられている状態である。このように蓄積されたエネルギーによりコイル3は出力端子Voutからトランジスタ9、10のドレイン端子の接続点Nへと電荷を移動させる。移動した電荷によりドレイン端子の電圧は上昇する。
【0035】
この結果、ドレイン端子電圧がVin+Vfを超えると、トランジスタ9のドレイン端子をアノード、ソース端子をカソードとする寄生ダイオードが導通状態となり、コイル3と前記寄生ダイオードを経由して出力端子Voutから1次電源1への放電経路が形成される。ここで、Vfはトランジスタ9の寄生ダイオードの順方向降下電圧である。また、コイル電流ILは出力端子Voutからドレイン端子接続部へ向かう方向を正としており、ドレイン端子接続部の電圧はVin+Vfである。この電圧値は出力電圧Voより高いので、コイルには負方向へ電流を変化させる電圧が印加されており、放電電流は期間Bの経過時間に伴い漸減する。
【0036】
コイル3のドレイン-ソース端子間電圧は、Vo-(Vin+Vf)であるので、放電電流の減少の程度はdIL/dt=-(Vin+Vf-Vo)÷L、と表される。
1次電源1への放電経路が形成されると出力端子Voutから1次電源1へ電荷が伝送されるので、電源電圧Vinが上昇する。ここで、電源電圧VinはVin監視回路81により監視されており、電源電圧Vinの電圧値が第1の監視値を超えるとVin監視回路81はHiレベル状態信号を出力する。Vin監視回路81の出力信号はインバータ82を介して選択回路71に与えられている。選択回路71は、選択回路73と同様に、放電制御信号DISCHGがHiレベルの間は放電制御回路8から与えられる信号を選択出力する。したがって、Vin監視回路81の出力は論理反転されて駆動回路72へ与えられ、この信号に則って駆動回路72はトランジスタ9を駆動する。すなわち、電源電圧Vinの電圧値が第1の監視値を超えると駆動回路72はLoレベルの状態信号をトランジスタ9のゲートに与え、PMOSトランジスタであるトランジスタ9を導通状態にする。
【0037】
トランジスタ9が導通状態となると放電経路が、コイル3からトランジスタ9の寄生ダイオードを経由する経路から、コイル3からトランジスタ9自身を経由する経路へと変わる。また、ドレイン端子接続部の電圧は電源電圧Vinとなり、放電電流の減少の程度はdIL/dt=-(Vin-Vo)÷Lとなる。
放電経路が、寄生ダイオードを経由するかトランジスタ9を経由するかに依らず、コイル電流ILが正である間は、出力端子Voutから1次電源1へ電荷が移動し、この結果電源電圧Vinは上昇する。一方、放電電流が漸減してコイル電流ILが0になると出力端子Voutから電源電圧Vinへの電荷の移動が無くなり期間Bが終了する。
【0038】
1次電源1側に設けられているコンデンサ2の容量値をCin、期間Bが開始してから第1の監視値に至るまでの電源電圧Vinの変化量をΔVin1とすると、トランジスタ9の寄生ダイオードを経由して出力端子Voutから1次電源1へ移動する電荷量Qb1は、
【数3】
と表される。
【0039】
期間Bが開始されてから第1の監視値に至るまでの時間をTb1、そのときのコイル電流ILの電流値をIbとすると、
【数4】
と表される。
【0040】
出力端子Voutから1次電源1への放電経路がトランジスタ9の寄生ダイオードからトランジスタ9自身へと変わってからコイル電流ILが0になるまでの時間をTb2、Tb2の間に出力端子Voutから1次電源1へ移動する電荷量をQb2とすると、
【数5】
【数6】
と、それぞれ表される。
【0041】
Qb2による電源電圧Vinの変化量をΔVin2とすると式4より、
【数7】
である。
【0042】
第1の監視電圧の電圧値をVin_th1、1次電源1に印加され得る電圧の許容最大値をVinMaxとすると、電源電圧Vinの上昇による当該スイッチング電源回路の損傷を防ぐ為には、
【数8】
なる関係が成立する必要がある。式7よりTb1=0のときにΔVin2は最大となる。よって、
【数9】
と表され、この関係が成立する範囲でVin_th1、Iaなどを設定する。
【0043】
<期間C>
トランジスタ9が導通状態でコイル電流ILが正から0になった時点で期間Bが終了し、期間Cが開始される。期間Cにおいても1次電源1と出力端子Voutの間で放電経路が形成されている。コイル3の端子間電圧はVin-Voであり、ドレイン端子の接続点Nから出力端子Voutへ正の電圧が印加されている。期間Cが開始されてからの時間経過に伴いコイル電流ILは負の方向へ漸増して1次電源1から出力端子Voutへ電荷が移動する。
【0044】
Vin監視回路81は電源電圧Vinを監視しており、トランジスタ9が導通状態であるときは、第2の監視値が適用される。ここでは1次電源1が供給する電圧値は第2の監視値に等しいとしている。Vin監視回路81は電源電圧Vinの電圧値が第2の監視値より高い場合はHiレベル状態信号を出力し、低い場合はLoレベル状態信号を出力する。
出力端子Voutへ電荷が移動するに伴い電源電圧Vinが減少する、電源電圧Vinが第2の監視値より低くなるとLoレベル状態信号を出力してインバータ82へ、そのLoレベル状態信号を与える。この結果、インバータ82は信号の状態を反転し、Hiレベル状態信号として選択回路71およびオア回路83へ与える。
【0045】
選択回路71へHiレベル状態信号が与えられると、選択回路71は駆動回路72へ同論理の信号を与え、駆動回路72も同論理のHiレベル状態信号である駆動制御信号をトランジスタ9へ与える。トランジスタ9はPMOSトランジスタであるので、Hiレベル状態信号が与えられて、導通状態から不導通状態となる。
Vin監視回路81の出力信号の状態を反転するインバータ82の出力信号は、オア回路83を介してDフリップフロップ84のクロック端子へ与えられる。この結果、Dフリップフロップ84は、そのクロック端子に与えられたLoレベル状態からHiレベル状態への状態遷移をトリガとして、そのQ出力信号のレベル状態をLoレベルからHiレベルへ遷移させる。このQ出力信号は選択回路73を経由して駆動回路74からトランジスタ10へと全て同論理で与えられる。
【0046】
トランジスタ10へ与えられる駆動信号のレベルがLoレベルからHiレベルへ遷移することにより、トランジスタ10は不導通状態から導通状態となる。
ここでは、第2の監視電圧と電源電圧Vinが等しいとしているので、放電動作が開始されたときの電源電圧Vinと第2の監視電圧は等しい。よって、期間Bで変動した電源電圧Vinの電圧変動値と期間Cで変動した電源電圧Vinの電圧変動値は等しい。すなわち、期間Bの間、出力端子Voutから1次電源1へ移動した電荷量と、期間Cの間、1次電源Vinから出力端子Voutへ移動した電荷量が等しくなると、トランジスタ9は不導通状態となり1次電源1と出力端子Voutの間で形成されていた放電経路の形成は終了され、トランジスタ10を経由して接地と出力端子Voutの間で放電経路が形成される。
【0047】
ここで、期間Cから期間Dへ遷移したときのコイル電流ILの電流値をIc、期間Cの長さをTc、期間Cで1次電源1から出力端子Voutへ移動した電荷量をQcとすると、
【数10】
【数11】
と表され、式11から求まる、Tc=(Ic×L)/(Vin−Vo)を式10に代入して
【数12】
を得る。
【0048】
期間Bについても同様に考え、簡単化のためにTb2=0とすると、期間Bの長さTb=Tb1であり、期間Bで出力端子Voutから1次電源1へ移動した電荷量Qbは、
【数13】
【数14】
と表され、式14から求まる、Tb=(Ia×L)/(Vin+Vf−Vo)を式13に代入して、
【数15】
を得る。
【0049】
期間Bで移動した電荷量と期間Cで移動した電荷量は等しいので、Qb=Qcであり、
{(L×Ic)/2(Vin−Vo)}={(L×Ia)/2(Vin+Vf−Vo)}
から、
【数16】
と表される。
【0050】
<期間D>
期間Cが終了したとき、電流値Icのコイル電流ILが流れていることによりコイル3は電磁エネルギーを有している、このエネルギーにより接地から出力端子Voutへ電荷が移動される。コイル3の電磁エネルギーが全て放電されたとき、コイル電流ILは0となり電荷の移動はなくなる。このとき期間Dが終了する。
【0051】
期間Dが終了したとき、出力電圧Voの電圧値以外の値は放電動作が開始する前と同じであり、放電経路は期間Aと同様にコイル3とトランジスタ10を経由して出力端子Voutと接地との間で形成されている。
また、コイル3の端子間電圧は出力電圧Voと接地電圧の差であり、時間の経過とともにコイル電流ILは正の方向へ漸増する、これは出力端子Voutから接地へ電荷が移動することを示している。よって、期間Dが終了した後には、再度期間Aの動作が開始される。
【0052】
期間Dの長さをTd、期間Dで接地から出力端子Voutへ移動した電荷量をQdとすると、
【数17】
である。
式16から、
【数18】
なる関係が成立する。
【0053】
期間Dと期間Aでは放電経路が等しくコイル3の端子間電圧も等しいので、コイル電流ILの変化の程度も等しくdIL/dt=Voutである、よって、(Ic/Td)=(Ia/Ta)から、
【数19】
なる関係も成立し、(Qd/Qa)=(Td×Ic/Ta×Ia)から、
【数20】
という関係を得る。
【0054】
ここで、期間A〜Dを1つのサイクルとして考えると、出力端子VoutからはQa+Qbの電荷が流出し、出力端子VoutへはQc+Qdの電荷が流入してくる。電荷Qbと電荷Qcは等しいので、1サイクルで出力端子Voutから移動する電荷、つまり1サイクルで出力端子Voutから放電される電荷量ΔQはQa-Qdである。
【0055】
式20より、
【数21】
となる。式21においては分子、分母ともに正の値であるので、1サイクル経過するとΔQなる電荷量が出力端子Voutから低減されることが分かる。
また、式2を用いると、
【数22】
と表される。
【0056】
このように、図1に示した実施の形態では、スイッチトランジスタであるトランジスタ9,10が放電経路を形成するので放電に際して別途回路や素子を設ける必要が無く、また放電電流を監視して所定の値に至ると放電経路を変更して放電電流値の増加を防ぐので、放電経路を形成するコイル3やトランジスタ9,10などの損傷を防ぐことができる。
【0057】
さらに、電源電圧Vinの電圧値を観測して所定の値に至ると放電経路を変更して電荷の移動を抑制し、且つ出力端子Voutから1次電源1へ移動する電荷量と等しい量の電荷を1次電源1から出力端子Voutへ移動させるので、所定の値以上に電源電圧Vinの電圧値が上昇することはなく、別途電源電圧Vinの電圧上昇に対処するための手段を講じる必要がない。
【0058】
図1に示す実施の形態では、所定の放電電流値と電源電圧Vinの電圧値をトリガに設定して放電制御信号DISCHGを生成しているが、予め指定された制御信号を出力する制御回路により代替することもできる。例えば、専用の放電パターンを出力する波形生成回路を用いれば、放電電流値と電源電圧Vinの電圧値を観測する手段を備えていなくても放電動作を行わせることができる。ただし、この場合、放電動作により放電電流と電源電圧Vinが所定の値以上にならないようにパターン設計されなければならない。
【0059】
図3図1に示すVin監視回路81のさらに詳細な構成に関する実施例を示す回路図である。同図に示すように、Vin監視回路81は、抵抗811、812、813と、スイッチ814、815と、基準電圧源816と、比較器817とを有している。比較器817へは基準電圧源816が出力する第1の基準電圧Vref81と、スイッチ814,815を介して電源電圧Vinの電圧情報が与えられている。電源電圧Vinが第1の基準電圧Vref81で規定される所定の値以上になったとき比較器817はHiレベル状態信号をインバータ82へ与える。以下、比較器817の出力信号のレベルがLoレベルからHiレベルへ遷移する電源電圧Vinの電圧値をVin検出値という。
【0060】
スイッチ815へは選択回路71の出力信号が与えられ、スイッチ814へはインバータ818を介して状態反転した選択回路71の出力信号が与えられている。そこで、選択回路71の出力信号がHiレベルであるときはスイッチ815が導通状態、スイッチ814が不導通状態となり、Loレベルであるときは、逆にスイッチ814が導通状態、スイッチ815が不導通状態となる。
【0061】
抵抗811の抵抗値をR1、抵抗812の抵抗値をR2、抵抗813の抵抗値をR3、基準電圧源816の電圧値を第1の基準電圧Vref81とし、選択回路71の出力信号がLoレベルであるときの電源電圧Vinの検出値をVin_Lo、Hiレベルであるときの電源電圧Vinの検出値をVin_Hiとすると、
【数23】
【数24】
と、それぞれ表される。
【0062】
ここで、選択回路71の出力信号のレベルがHiであるとき、トランジスタ9は不導通状態であり、電源電圧Vinの監視値としては、図2に示す第1のVin監視値が適用される。したがって、式24に示されるVin_HiがこのときのVin監視値となる。一方、選択回路71のレベルがLoであるとき、トランジスタ9は導通状態であり、電源電圧Vinの監視値としては、図2に示す第2の監視値が適用される。したがって、式23に示されるVin_LoがこのときのVin監視値となる。
【0063】
図4図1に示すIL監視回路のさらに詳細な構成に関する実施例を示す回路図である。同図に示すように、IL監視回路85は、比較器851と、基準電圧源852とを有している。比較器851へはトランジスタ10のドレイン端子電圧と、基準電圧源852から第2の基準電圧Vref2が与えられている。かくして、IL監視回路85は出力端子Voutから接地への放電電流を監視しており、トランジスタ10のソース端子とドレイン端子の電圧差から電流値を監視している。この結果、トランジスタ10のドレイン端子電圧が所定の値を超えると、比較器851はHiレベルの状態信号を出力してDフリップフロップ84のリセット端子に与えられる。
【0064】
ここで、トランジスタ10のオン抵抗をRon10、基準電圧源852の出力電圧値を第2の基準電圧Vref85とすると、図2においてIaと示されているコイル電流IL_thは、
【数25】
と示される。
【0065】
ここで、放電モード時の各部の波形を従来技術との対比において説明しておく。図5は従来技術での放電モード時の各部の波形を示す波形図、図6は上記実施の形態での放電モード時の各部の波形を示す波形図である。両図では、放電制御信号DISCHGがLoからHiとされて放電動作が開始された直後からの挙動を示している。
【0066】
図5に示す従来技術では、出力端子Voutと接地の間で形成される第1の放電経路と、出力端子Voutと1次電源1の間で形成される第2の放電経路を用いて所定の放電動作を行う。すなわち、放電モードが開始されると第1の放電経路を形成して出力端子Voutの電荷を接地へ放電する。これに伴いコイル電流ILは漸増し、電流値が所定の値に達するか第1の放電経路が形成されてから所定の時間が経過すると第1の放電経路の形成を終了させ、第2の放電経路を形成する。第2の放電経路が形成されている間、出力端子Voutから1次電源1へ電荷が移動するので、1次電源1の電源電圧Vinは上昇する。第2の放電経路が形成されている間、コイル電流ILは漸減し、電流値が所定の値に達するか第2の放電経路が形成されてから所定の時間が経過すると第2の放電経路の形成を終了させ、第1の放電経路を形成する。
【0067】
従来技術では、上述のように第1の放電経路と第2の放電経路の形成を交互に繰り返して出力端子Voutの電荷を放電する。したがって、第2の放電経路が形成される頻度が高く1次電源1へ移動される電荷量が多い場合には電源電圧Vinが過上昇し、許容できる電圧値である電源電圧Vinの最大定格を超えるという問題を生起する。
一方、図6に示す本形態では、出力端子Voutと接地の間で形成される第1の放電経路と、1次電源1側のトランジスタ9の寄生ダイオードを経由して出力端子Voutから1次電源1へ至る第2の放電経路とともに、1次電源1側のトランジスタ9を経由して出力端子Voutと1次電源1の間で第3の放電経路を形成し、この第3の放電経路も用いる。したがって、放電モードが開始されると、第1の放電経路を形成して出力端子Voutの電荷が接地へ放電される。電源電圧Vinが第1および第2のVin監視電圧よりも低い場合は、従来技術と同様に、第1の放電経路と第2の放電経路を交互に形成して放電を行う。第2の放電経路が形成される頻度に伴い電源電圧Vinは上昇し、第1のVin監視電圧に達する。第1のVin監視電圧に達すると、前述したように、第1の放電経路と第2の放電経路に加えて第3の放電経路も用いて、1次電源1の電荷を出力端子Voutへ移動させるため、電源電圧Vinが上昇し続けることが無く、電源電圧Vinの最大定格に至ることがないようにすることができる。
【0068】
なお、上記実施の形態では、1次電源1側の電荷を出力端子Voutへ移動させるため、トランジスタ9を利用した第3の放電経路を形成したが、これに限るものではない。要は、1次電源1の電源電圧Vinが最大定格以下の所定値に至った場合に、1次電源1側の電荷を出力端子Voutまたは接地に放電する放電経路が形成されるようにすれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、プロセッサ等を負荷とする電源装置を製造・販売する産業分野において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 1次電源
2,4 コンデンサ
3 コイル
5 負荷
6 スイッチング制御回路
7 プリドライバ回路
8 放電制御回路
9,10 トランジスタ
81 Vin監視回路
84 Dフリップフロップ
85 IL監視回路
Vin 電源電圧
Vout 出力端子
Vo 出力電圧
DISCHG 放電制御信号
N 接続点
図1
図2
図3
図4
図5
図6