【解決手段】モータは、第1〜第6mのティースにそれぞれ巻き回され、デルタ結線された第1〜第6mのコイルと、ステータと径方向に対向し、該ステータと同心に設けられているロータと、を備える。第1〜第6mのコイルは、m個のコイルが直列接続された第1U相と、ステータの中心に対して第1U相と対称位置にある、m個のコイルが直列接続された第2U相と、が並列接続されたU相と、m個のコイルが直列接続された第1V相と、ステータの中心に対して第1V相と対称位置にある、m個のコイルが直列接続された第2V相と、が並列接続されたV相と、m個のコイルが直列接続された第1W相と、ステータの中心に対して第1W相と対称位置にある、m個のコイルが直列接続された第2W相と、が並列接続されたW相と、を構成している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。以下では、インナーロータタイプのブラシレスモータを例に説明するが、本発明はアウターロータタイプのブラシレスモータにも適用可能な技術である。
【0024】
[第1の実施の形態]
(ブラシレスモータ)
図1は、第1の実施の形態に係るブラシレスモータの全体斜視図である。
図2は、第1の実施の形態に係るブラシレスモータの側面図である。
図3は、第1の実施の形態に係るブラシレスモータの分解斜視図である。
【0025】
第1の実施の形態に係るブラシレスモータ(以下、「モータ」と称する場合がある。)10は、マグネットを有する円柱状のロータ12と、ロータ12が配置される空間を中央部に有するステータ14と、フロントベル16と、ハウジング本体18と、給電部19と、を備える。
【0026】
フロントベル16は、板状の部材であり、中央に回転シャフト20が貫通できるように孔16aが形成されているとともに、孔16aの近傍に軸受22を保持する凹部16bが形成されている。そして、フロントベル16は、ロータ12の回転シャフト20の一部を軸受22を介して支持する。また、ハウジング本体18は、円筒状の部材であり、基部18aの中央に軸受(不図示)を保持する凹部18bが形成されている。そして、ハウジング本体18は、ロータ12の回転シャフト20の他部を軸受を介して支持する。第1の実施の形態では、フロントベル16およびハウジング本体18は、ロータ12およびステータ14を収容する収容部材を構成する。
【0027】
(ステータ)
次に、ステータ14の構造について説明する。
図4は、ステータコアの上面図である。なお、
図4に示すステータコアの形状は概略であり細部を省略している。
【0028】
ステータコア36は、円筒状(環状)の部材であり、複数枚の板状のステータヨーク38が積層されたものである。ステータヨーク38の内周側には、周方向に順に設けられている12本のティースT1〜T12が中心に向かって形成されている。
【0029】
各ティースT1〜T12には、インシュレータ(不図示)が取り付けられる。次に、ティースT1〜T12ごとにインシュレータから導体である導線(銅線)を巻き付けて第1のコイルC1〜第12のコイルC12を形成する。そして、このような工程を経て完成したステータ14の中央部にロータ12を配置する。
【0030】
図5は、第1の実施の形態に係るステータ14のデルタ結線を模式的に示した図である。
図6は、第1の実施の形態に係るステータ14のデルタ結線の状態を軸方向から見て模式的に示した図である。
【0031】
図5、
図6を参照して12溝タイプのステータへのコイルの巻き回し状態について詳述する。なお、
図5に示す結線構造は、ノズルタイプの巻線機で行った例である。また、U相、V相、W相が入れ替わっても本質的には同一である。以下では、第1のコイルC1から形成する場合について説明する。また、コイルの巻き回しの際には、巻線機のノズルおよびステータのいずれか又は両方が動くことで、ノズルとステータとが相対的に回転できる巻線機であればよい。
【0032】
図5、
図6に示すように、はじめにU相として、第1の給電端子50から導線がステータの一方の周方向(
図6ではステータ14の外周の反時計回りの方向)に延出し、ステータコア36の外周側において中心角約60度の第1の渡り線F1を形成し、第1のコイルC1を時計回り(CW)に形成し、第12のコイルC12を反時計回り(CCW)に形成し、第2の給電端子52に到達する。ここで、第1のコイルC1(U11相)および第12のコイルC12(U12相)は、この順で直列接続された第1U相を構成する。
【0033】
第2の給電端子52を経た導線は、中心角約30度の第3の渡り線F3を形成し、引き続き第11のコイルC11を反時計回りに形成し、第10のコイルC10を時計回りに形成し、第3の給電端子54に到達する。ここで、第11のコイルC11(V11相)および第10のコイルC10(V12相)は、この順で直列接続された第1V相を構成する。
【0034】
第3の給電端子54を経た導線は、引き続き第9のコイルC9を時計回りに形成し、第8のコイルC8を反時計回りに形成し、ステータコア36の外周側において中心角約150度の第5の渡り線F5を形成し、第1の給電端子50に到達する。ここで、第9のコイルC9(W11相)および第8のコイルC8(W12相)は、この順で直列接続された第1W相を構成する。
【0035】
導線が第1の給電端子50に到達すると、ステータコア36が搭載されたターンテーブルが反転し、導線がステータの他方の周方向(
図6ではステータ14の外周の時計回りの方向)に延出し、ステータコア36の外周側において中心角約90度の第2の渡り線F2を形成し、第6のコイルC6を時計回りに形成し、第7のコイルC7を反時計回りに形成し、中心角約120度の第2の渡り線F2’を形成し、第2の給電端子52に到達する。ここで、第6のコイルC6(U22相)および第7のコイルC7(U21相)は、この順で直列接続された第2U相を構成する。
【0036】
第2の給電端子52を経た導線は、中心角約120度の第4の渡り線F4を形成し、引き続き第4のコイルC4を反時計回りに形成し、第5のコイルC5を時計回りに形成し、中心角約150度の第4の渡り線F4’を形成し、第3の給電端子54に到達する。ここで、第4のコイルC4(V22相)および第5のコイルC5(V21相)は、この順で直列接続された第2V相を構成する。
【0037】
第3の給電端子54を経た導線は、中心角約150度の第6の渡り線F6を形成し、引き続き第2のコイルC2を時計回りに形成し、第3のコイルC3を反時計回りに形成し、第1の給電端子50に到達する。ここで、第2のコイルC2(W22相)および第3のコイルC3(W21相)は、この順で直列接続された第2W相を構成する。
【0038】
その後、U相の始線L1と、W相の末線L2とを結線処理し、デルタ結線が形成される。なお、上述の第1U相および第2U相は、ティースの軸中心を挟んで対称位置にあり、かつ、互いに並列接続されてU相を構成する。また、上述の第1V相および第2V相は、ティースの軸中心を挟んで対称位置にあり、かつ、互いに並列接続されてV相を構成する。また、上述の第1W相および第2W相は、ティースの軸中心を挟んで対称位置にあり、かつ、互いに並列接続されてW相を構成する。
【0039】
このように、第1の実施の形態に係るステータ14の第1のコイルC1〜第12のコイルC12は、巻き線機の連続した動作によりデルタ結線が実現されている。また、隣接する異相(W相とU相、U相とV相、V相とW相)のコイルは互いに巻き回し方向が同じであり、隣接する同相のコイルは互いに巻き回し方向が逆向きである。
【0040】
また、
図6に示すように、周方向の渡り線の総延長は最大で3周分であり、また渡り線の重なりは軸方向または径方向において最大で3層である。そのため、ステータ14においては、離れたコイル同士を結ぶ渡り線の総延長を短くできるとともに、渡り線の重なりによるモータ10の軸方向の厚みまたは径方向の大きさの増大を抑制できる。
【0041】
上述の構成をまとめると以下のようになる。第1の実施の形態に係るモータ10は、環状のステータコア36と、ステータコア36の内周側に、周方向に順に設けられている第1〜第12のティースT1〜T12と、を有するステータ14と、第1〜第12のティースT1〜T12にそれぞれ巻き回され、デルタ結線された第1〜第12のコイルと、ステータ14の中央部に設けられているロータ12と、を備える。
【0042】
第1〜第12のコイルは、2個のコイル(第1のコイルC1および第12のコイルC12)が直列接続された第1U相と、ステータの中心に対して第1U相と対称位置にある、2個のコイル(第6のコイルC6および第7のコイルC7)が直列接続された第2U相と、が並列接続されたU相と、2個のコイル(第11のコイルC11および第10のコイルC10)が直列接続された第1V相と、ステータの中心に対して第1V相と対称位置にある、2個のコイル(第4のコイルC4および第5のコイルC5)が直列接続された第2V相と、が並列接続されたV相と、2個のコイル(第9のコイルC9および第8のコイルC8)が直列接続された第1W相と、ステータの中心に対して第1W相と対称位置にある、2個のコイル(第2のコイルC2および第3のコイルC3)が直列接続された第2W相と、が並列接続されたW相と、を構成している。
【0043】
モータ10は、U相およびW相に接続される第1の給電端子50と、V相およびU相に接続される第2の給電端子52と、W相およびV相に接続される第3の給電端子54と、を更に備える。
【0044】
U相は、第1の給電端子50から第1U相を経て第2の給電端子52を結ぶ途中の第1の渡り線F1と、第1の給電端子50から第2U相を経て第2の給電端子を結ぶ途中の第2の渡り線F2,F2’とを有する。V相は、第2の給電端子52から第1V相を経て第3の給電端子54を結ぶ途中の第3の渡り線F3と、第2の給電端子52から第2V相を経て第3の給電端子54を結ぶ途中の第4の渡り線F4,F4’とを有する。W相は、第3の給電端子54から第1W相を経て第1の給電端子を結ぶ途中の第5の渡り線F5と、第3の給電端子54から第2W相を経て第1の給電端子50を結ぶ途中の第6の渡り線F6とを有する。
【0045】
図6に示すように、第1の渡り線F1および第2の渡り線F2,F2’は、軸方向から見て互いに重畳しないように、ステータの周方向の異なる位置に配置されている。第3の渡り線F3および第4の渡り線F4,F4’は、軸方向から見て互いに重畳しないように、ステータの周方向の異なる位置に配置されている。第5の渡り線F5および第6の渡り線F6は、軸方向から見て互いに重畳しないように、ステータの周方向の異なる位置に配置されている。
【0046】
上述のように、本実施の形態に係るステータ14は、渡り線の長さが、最大でステータの外周約3周分である。そのため、一本のコイルをU相、V相、W相の順で巻回す工程を2回繰り返す場合や、二本のコイルをまとめてU相、V相、W相の順で巻回す場合では渡り線が最大4周分必要なのに対して、渡り線の長さ(体積)を減らすことができる。
【0047】
また、本実施の形態に係るコイルの巻き回し方法では、各相のティースには一本のコイルで一度に所望の巻回数の巻線が巻かれることになる。そのため、各ティースに2回に分けて巻き回す場合や、二本のコイルをまとめて巻き回す場合と比べて、隙間ができにくく、また巻き回しに乱れが生じ難いため、各ティース間におけるコイルの占積率を向上できる。
【0048】
なお、第1〜第12のコイルは、一筆書きで結べるように配置されている。これにより、コイルを巻く際の工程を簡易にでき、巻線機の動作においてコイルの巻き回しに寄与しない無駄な時間を低減できる。
【0049】
本実施の形態に係るステータ14においては、第1の給電端子50および第2の給電端子52がステータの中心と成す角α=120°であり、第2の給電端子52および第3の給電端子54がステータの中心と成す角をβ=60°であり、第3の給電端子54および第1の給電端子50がステータの中心と成す角をγ=180であり、α≠β、β≠γ、γ≠αを満たしている。
【0050】
これにより、第1から第3の給電端子の位置をステータの半円側に配置することできるため、各給電端子から出た無駄な配線を減らすとともに、束ねやすくできる。
【0051】
なお、後述するα=180°の場合も、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。このとき、γ=120°である。
【0052】
なお、γが180°以上または120°以下となるように第1から第3の給電端子の位置を設定してもよい。これにより、第1から第3の給電端子の位置をステータの半円側のより狭い範囲に配置することできるため、各給電端子から出た無駄な配線をより減らすとともに、束ねやすくできる。
【0053】
なお、ロータは、ステータのティースの数を6mとすると、周方向に6m±2個の磁極を有しているとよい。本実施の形態では、ロータのマグネットの磁極数は、10極又は14極が好ましい。
【0054】
なお、本実施の形態に係る発明をモータの製造方法として捉えると、以下のようになる。この方法は、環状のステータコア36と、ステータコア36の内周側に、周方向に順に設けられている第1〜第12のティースT1〜T12と、を有するステータ14と、第1〜第12のティースT1〜T12にそれぞれ巻き回され、デルタ結線された第1〜第12のコイルC1〜C12と、ステータ14の中央部に設けられているロータ12と、を備えたモータの製造方法である。そして、第1の給電端子50から導線をステータの一方の周方向(
図6では反時計回り方向)に延出して第1のコイルC1および第12のコイルC12を直列に形成し、第2の給電端子52を経て第11のコイルC11および第10のコイルC10を直列に形成し、第3の給電端子54を経て第9のコイルC9および第8のコイルC8を直列に形成し、第1の給電端子50まで導線を延ばす第1工程と、第1工程の後に、第1の給電端子50から導線をステータの他方の周方向(
図6では時計回り方向)に延出して第6のコイルC6および第7のコイルC7を直列に形成し、第2の給電端子52を経て第4のコイルC4および第5のコイルC5を直列に形成し、第3の給電端子54を経て第2のコイルC2および第3のコイルC3を直列に形成し、第1の給電端子50まで導線を延ばす第2工程と、を含む。
【0055】
すなわち、第1の工程でステータの一方の周方向に導線を1回転する間に、U相、V相、W相の各相にそれぞれ直列接続されたコイル群を形成した後、第2の工程で反対の周方向に導線を2回転する間に、U相、V相、W相の各相にそれぞれ別の直列接続されたコイル群を形成し、第1の工程で形成された各相のコイル群と、第2の工程で形成された同相の各コイル群は各端子間において並列に接続されている。
【0056】
これにより、導線を延出する方向を第1工程と第2工程とで反転させることで、導線の延出する方向が常に同じ場合と比較して、渡り線の体積(長さ)を抑えながら、各ティース間におけるコイルの占積率を向上できるモータを、比較的短時間で製造できる。
【0057】
なお、隣接する異相(W相とU相、U相とV相、V相とW相)のコイルは互いに巻き回し方向が同じであり、隣接する同相(例えばU11相とU12相)のコイルは互いに巻き回し方向が逆向きである。
【0058】
このように、第1の実施の形態に係るステータ14の第1のコイルC1〜第12のコイルC12は、巻き線機の連続した動作によりデルタ結線が実現されている。また、ステータ14においては、離れたコイル同士を結ぶ渡り線を短くできる。そのため、磁力の発生に寄与しないコイルの量を減らすことができ、コイル抵抗を低減できるとともに、コイルの配置スペースも低減できる。つまり、ステータにおけるコイルの巻き方の工夫によって小型で高トルクなブラシレスモータを実現できる。
【0059】
[第2の実施の形態]
図7は、第2の実施の形態に係るステータのデルタ結線を模式的に示した図である。
図8は、第2の実施の形態に係るステータのデルタ結線の状態を軸方向から見て模式的に示した図である。本実施の形態に係るステータは、6つのティースを有する6溝タイプの構成である。それに伴いロータの磁極数は、4極又は8極が好ましい。なお、以下の説明では、第1の実施の形態と同様の構成については説明を適宜省略する。
【0060】
図7、
図8を参照して6溝タイプのステータへのコイルの巻き回し状態について詳述する。
【0061】
図7、
図8に示すように、はじめにU相として、第1の給電端子50から導線がステータの一方の周方向(
図8ではステータ114の外周の反時計回りの方向)に延出し、ステータコア136の外周側において中心角約60度の第1の渡り線F1を形成し、第1のコイルC1を時計回り(CW)に形成し、第2の給電端子52に到達する。ここで、第1のコイルC1(U1相)は、第1U相を構成する。
【0062】
第2の給電端子52を経た導線は、引き続き第6のコイルC6を時計回りに形成し、第3の給電端子54に到達する。ここで、第6のコイルC6(V1相)は、第1V相を構成する。
【0063】
第3の給電端子54を経た導線は、引き続き第5のコイルC5を時計回りに形成し、ステータコア136の外周側において中心角約120度の第5の渡り線F5を形成し、第1の給電端子50に到達する。ここで、第5のコイルC5(W1相)は、第1W相を構成する。
【0064】
導線が第1の給電端子50に到達すると、ステータコア136が搭載されたターンテーブルが反転し、導線がステータの他方の周方向(
図8ではステータ114の外周の時計回りの方向)に延出し、ステータコア136の外周側において中心角約60度の第2の渡り線F2を形成し、第4のコイルC4を時計回りに形成し、中心角約120度の第2の渡り線F2’を形成し、第2の給電端子52に到達する。ここで、第4のコイルC4は、第2U相を構成する。
【0065】
第2の給電端子52を経た導線は、中心角約180度の第4の渡り線F4を形成し、引き続き第3のコイルC3を時計回りに形成し、中心角約120度の第4の渡り線F4’を形成し、第3の給電端子54に到達する。ここで、第3のコイルC3(V2相)は、第2V相を構成する。
【0066】
第3の給電端子54を経た導線は、中心角約180度の第6の渡り線F6を形成し、引き続き第2のコイルC2を時計回りに形成し、第1の給電端子50に到達する。ここで、第2のコイルC2(W2相)は、第2W相を構成する。
【0067】
その後、U相の始線L1と、W相の末線L2とを結線処理し、デルタ結線が形成される。なお、上述の第1U相および第2U相は、ティースの軸中心を挟んで対称位置にあり、かつ、互いに並列接続されてU相を構成する。また、上述の第1V相および第2V相は、ティースの軸中心を挟んで対称位置にあり、かつ、互いに並列接続されてV相を構成する。また、上述の第1W相および第2W相は、ティースの軸中心を挟んで対称位置にあり、かつ、互いに並列接続されてW相を構成する。
【0068】
このように、第2の実施の形態に係るステータ114の第1のコイルC1〜第6のコイルC6は、巻き線機の連続した動作によりデルタ結線が実現されている。また、隣接する異相(W相とU相、U相とV相、V相とW相)のコイルは互いに巻き回し方向が同じである。
【0069】
また、
図8に示すように、渡り線の総延長は最大で3周分であり、また渡り線の重なりは最大で3層である。そのため、ステータ114においては、離れたコイル同士を結ぶ渡り線の総延長を短くできるとともに、渡り線の重なりによるモータの軸方向の厚みおよび径方向の大きさの少なくとも一方の増大を抑制できる。
【0070】
[第3の実施の形態]
図9は、第3の実施の形態に係るステータのデルタ結線を模式的に示した図である。本実施の形態に係るステータは、18のティースを有する18溝タイプの構成である。それに伴いロータの磁極数は、16極又は20極が好ましい。なお、以下の説明では、第1、第2の実施の形態と同様の構成については説明を適宜省略する。
【0071】
図9を参照して18溝タイプのステータへのコイルの巻き回し状態について詳述する。
図9に示すように、はじめにU相として、第1の給電端子50から導線がステータの一方の周方向に延出し、ステータコアの外周側において中心角約60度の第1の渡り線F1を形成し、第1のコイルC1を時計回り(CW)に形成し、第18のコイルC18を反時計回り(CCW)に形成し、第17のコイルC17を時計回りに形成し、第2の給電端子52に到達する。ここで、第1のコイルC1(U11相)、第18のコイルC18(U12相)および第17のコイルC17(U13相)は、この順で直列接続された第1U相を構成する。
【0072】
第2の給電端子52を経た導線は、第3の渡り線F3を形成し、引き続き第16のコイルC16を時計回りに形成し、第15のコイルC15を反時計回りに形成し、第14のコイルC14を時計回りに形成し、第3の給電端子54に到達する。ここで、第16のコイルC16(V11相)、第15のコイルC15(V12相)および第14のコイルC14(V13相)は、この順で直列接続された第1V相を構成する。
【0073】
第3の給電端子54を経た導線は、引き続き第13のコイルC13を時計回りに形成し、第12のコイルC12を反時計回りに形成し、第11のコイルC11を時計回りに形成し、ステータコアの外周側において中心角約120度の第5の渡り線F5を形成し、第1の給電端子50に到達する。ここで、第13のコイルC13(W11相)、第12のコイルC12(W12相)および第11のコイルC11(W13相)は、この順で直列接続された第1W相を構成する。
【0074】
導線が第1の給電端子50に到達すると、ステータコアが搭載されたターンテーブルが反転し、導線がステータの他方の周方向に延出し、ステータコアの外周側において中心角約80度の第2の渡り線F2を形成し、第8のコイルC8を時計回りに形成し、第9のコイルC9を反時計回りに形成し、第10のコイルC10を時計回りに形成し、中心角約120度の第2の渡り線F2’を形成し、第2の給電端子52に到達する。ここで、第8のコイルC8(U23相)、第9のコイルC9(U22相)および第10のコイルC10(U21相)は、この順で直列接続された第2U相を構成する。
【0075】
第2の給電端子52を経た導線は、中心角約140度の第4の渡り線F4を形成し、引き続き第5のコイルC5を時計回りに形成し、第6のコイルC6を反時計回りに形成し、第7のコイルC7を時計回りに形成し、中心角約120度の第4の渡り線F4’を形成し、第3の給電端子54に到達する。ここで、第5のコイルC5(V23相)、第6のコイルC6(V22相)および第7のコイルC7(V21相)は、この順で直列接続された第2V相を構成する。
【0076】
第3の給電端子54を経た導線は、中心角約140度の第6の渡り線F6を形成し、引き続き第2のコイルC2を時計回りに形成し、第3のコイルC3を反時計回りに形成し、第4のコイルC4を時計回りに形成し、第1の給電端子50に到達する。ここで、第2のコイルC2(W23相)、第3のコイルC3(W22相)および第4のコイルC4(W21相)は、この順で直列接続された第2W相を構成する。
【0077】
その後、U相の始線L1と、W相の末線L2とを結線処理し、デルタ結線が形成される。なお、上述の第1U相および第2U相は、ティースの軸中心を挟んで対称位置にあり、かつ、互いに並列接続されてU相を構成する。また、上述の第1V相および第2V相は、ティースの軸中心を挟んで対称位置にあり、かつ、互いに並列接続されてV相を構成する。また、上述の第1W相および第2W相は、ティースの軸中心を挟んで対称位置にあり、かつ、互いに並列接続されてW相を構成する。
【0078】
このように、第3の実施の形態に係るステータの第1のコイルC1〜第18のコイルC18は、巻き線機の連続した動作によりデルタ結線が実現されている。また、隣接する異相(W相とU相、U相とV相、V相とW相)のコイルは互いに巻き回し方向が同じであり、隣接する同相のコイルは互いに巻き回し方向が逆向きである。
【0079】
[第4の実施の形態]
図10は、第4の実施の形態に係るステータのデルタ結線を模式的に示した図である。なお、第4の実施の形態に係るステータは、第1の実施の形態に係るステータ14と類似の構成であるが、U相の端子の配置が異なる。具体的には、第1の給電端子50および第2の給電端子52がステータの中心と成す角α=180°の場合である。このとき、第3の給電端子54および第1の給電端子50がステータの中心と成す角γ=120°である。このような構成の第4の実施の形態に係るステータであっても、第1の実施の形態に係るステータと同様の効果が得られる。
【0080】
図10に示すように、はじめにU相として、第1の給電端子50から導線がステータの一方の周方向に延出し、ステータコアの外周側において中心角約120度の第1の渡り線F1を形成し、第1のコイルC1を時計回り(CW)に形成し、第12のコイルC12を反時計回り(CCW)に形成し、第2の給電端子52に到達する。ここで、第1のコイルC1(U11相)および第12のコイルC12(U12相)は、この順で直列接続された第1U相を構成する。
【0081】
第2の給電端子52を経た導線は、中心角約30度の第3の渡り線F3を形成し、引き続き第11のコイルC11を反時計回りに形成し、第10のコイルC10を時計回りに形成し、第3の給電端子54に到達する。ここで、第11のコイルC11(V11相)および第10のコイルC10(V12相)は、この順で直列接続された第1V相を構成する。
【0082】
第3の給電端子54を経た導線は、引き続き第9のコイルC9を時計回りに形成し、第8のコイルC8を反時計回りに形成し、ステータコア36の外周側において中心角約90度の第5の渡り線F5を形成し、第1の給電端子50に到達する。ここで、第9のコイルC9(W11相)および第8のコイルC8(W12相)は、この順で直列接続された第1W相を構成する。
【0083】
導線が第1の給電端子50に到達すると、ステータコアが搭載されたターンテーブルが反転し、導線がステータの他方の周方向に延出し、ステータコアの外周側において中心角約30度の第2の渡り線F2を形成し、第6のコイルC6を時計回りに形成し、第7のコイルC7を反時計回りに形成し、中心角約120度の第2の渡り線F2’を形成し、第2の給電端子52に到達する。ここで、第6のコイルC6(U22相)および第7のコイルC7(U21相)は、この順で直列接続された第2U相を構成する。
【0084】
第2の給電端子52を経た導線は、中心角約120度の第4の渡り線F4を形成し、引き続き第4のコイルC4を反時計回りに形成し、第5のコイルC5を時計回りに形成し、中心角約150度の第4の渡り線F4’を形成し、第3の給電端子54に到達する。ここで、第4のコイルC4(V22相)および第5のコイルC5(V21相)は、この順で直列接続された第2V相を構成する。
【0085】
第3の給電端子54を経た導線は、中心角約150度の第6の渡り線F6を形成し、引き続き第2のコイルC2を時計回りに形成し、第3のコイルC3を反時計回りに形成し、中心角約60度の第6の渡り線F6’を形成し、第1の給電端子50に到達する。ここで、第2のコイルC2(W22相)および第3のコイルC3(W21相)は、この順で直列接続された第2W相を構成する。その後、U相の始線L1と、W相の末線L2とを結線処理し、デルタ結線が形成される。
【0086】
[第5の実施の形態]
図11は、第5の実施の形態に係るステータのデルタ結線を模式的に示した図である。なお、第5の実施の形態に係るステータは、第2の実施の形態に係るステータ114と類似の構成であるが、U相の端子の配置が異なる。具体的には、第1の給電端子50および第2の給電端子52がステータの中心と成す角α=180°の場合である。このとき、第3の給電端子54および第1の給電端子50がステータの中心と成す角γ=120°である。このような構成の第5の実施の形態に係るステータであっても、第2の実施の形態に係るステータと同様の効果が得られる。
【0087】
図11に示すように、はじめにU相として、第1の給電端子50から導線がステータの一方の周方向に延出し、ステータコアの外周側において中心角約120度の第1の渡り線F1を形成し、第1のコイルC1を時計回り(CW)に形成し、第2の給電端子52に到達する。ここで、第1のコイルC1(U1相)は、第1U相を構成する。
【0088】
第2の給電端子52を経た導線は、引き続き第6のコイルC6を時計回りに形成し、第3の給電端子54に到達する。ここで、第6のコイルC6(V1相)は、第1V相を構成する。
【0089】
第3の給電端子54を経た導線は、引き続き第5のコイルC5を時計回りに形成し、ステータコア136の外周側において中心角約60度の第5の渡り線F5を形成し、第1の給電端子50に到達する。ここで、第5のコイルC5(W1相)は、第1W相を構成する。
【0090】
導線が第1の給電端子50に到達すると、ステータコアが搭載されたターンテーブルが反転し、導線がステータの他方の周方向に延出し、ステータコアの外周側において中心角約60度の第2の渡り線F2を形成し、第4のコイルC4を時計回りに形成し、中心角約120度の第2の渡り線F2’を形成し、第2の給電端子52に到達する。ここで、第4のコイルC4は、第2U相を構成する。
【0091】
第2の給電端子52を経た導線は、中心角約180度の第4の渡り線F4を形成し、引き続き第3のコイルC3を時計回りに形成し、中心角約120度の第4の渡り線F4’を形成し、第3の給電端子54に到達する。ここで、第3のコイルC3(V2相)は、第2V相を構成する。
【0092】
第3の給電端子54を経た導線は、中心角約180度の第6の渡り線F6を形成し、引き続き第2のコイルC2を時計回りに形成し、中心角約60度の第6の渡り線F6’を形成し、第1の給電端子50に到達する。ここで、第2のコイルC2(W2相)は、第2W相を構成する。その後、U相の始線L1と、W相の末線L2とを結線処理し、デルタ結線が形成される。
【0093】
上述のように、各実施の形態に係るブラシレスモータは、モータ特性に寄与しない渡り線の数を少なく、また長さも短くできる。そのため、巻線(コイル)抵抗減少によりモータ効率が向上する。
【0094】
以下に、本願発明を好適に用いることができるブラシレスモータの諸元について説明する。本実施の形態に係るブラシレスモータは、外径が30〜180mm程度、好ましくは35〜120mm程度である。また、ロータの直径は、20〜100mm程度が好ましい。
【0095】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、導線の延出方向およびコイルの巻回し方向の少なくとも一方の方向を、全て逆方向にしても同様の効果が得られる。なお、給電端子の配列も導線の延出方向に合わせて変更すればよい。また、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。