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特開2017-42479本格ドリップ機能付き使い捨て簡易型コーヒー抽出器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-42479(P2017-42479A)
(43)【公開日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】本格ドリップ機能付き使い捨て簡易型コーヒー抽出器具
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/06 20060101AFI20170210BHJP
【FI】
   A47J31/06 150
   A47J31/06 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-168690(P2015-168690)
(22)【出願日】2015年8月28日
(71)【出願人】
【識別番号】515237267
【氏名又は名称】岸本 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】713013032
【氏名又は名称】岸本 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】岸本幸夫
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA06
4B104AA07
4B104BA43
4B104BA77
4B104EA30
(57)【要約】
【課題】本格的なハンドドリップ式でコーヒーを抽出する際の煩雑さや難しさを解消し、誰が抽出しても本格的な美味しさが簡単で確実に再現できる、本格ドリップ機能付きの使い捨てタイプの簡易型コーヒー抽出器具を提供する。
【解決手段】下部を二次曲線Q形状に加工した濾過袋B内にコーヒー挽き豆CBを詰め、開口部に整流フィルターRを熱シールで取り付け、濾過袋Bはカップに浸からないように、上面と底面の無い直方体のホルダーHにサポートアームAで取り付ける。整流フィルターRに沸騰直後の熱湯を注ぐと、適温に下がったお湯がコーヒー挽き豆CBに衝撃を与えることなく優しく浸透していき、二次曲線Q形状の効果により濃厚な抽出が行われ、同時にコーヒー挽き豆CBから発生する炭酸ガスの圧力により、雑味が無いのにさらに濃厚に、まるでネルドリップで丁寧に抽出したようなコクとトロ味のあるコーヒーを抽出することができる抽出器具である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部を二次曲線形状に加工した濾過袋の開口部に、円錐形又は角錐形のお湯の流れを整える整流フィルターを設置した本格ドリップ機能を付きのコーヒードリッパーであって、整流フィルターの先端が二次曲線の焦点付近に配置されていることを特徴としたコーヒードリッパー。
【請求項2】
上面及び底面が開放されている直方体形状のホルダーであって、カップ上に乗る側の底面の開放部に4箇所の切り欠きを有しているため水平方向にずれない構造になっていることを特徴とし、直方体の短面側2面共の中心を内側に折り曲げられる形状のためコンパクトに折りたため、折りたたんだ状態が元に戻る力をカップの側面を挟んで固定する力に利用した機能を有しているホルダー。
【請求項3】
請求項1のうち、濾過袋を不織布で製作し、整流フィルターを透水性の紙フィルターで製作したもので、濾過袋の開口部の縁に整流フィルターの開口部の折り代を外側に折り曲げた部分を挟み込み熱圧着して整流フィルターを固定したコーヒードリッパーを、請求項2のホルダーに厚紙で製作したサポートアームで連結したコーヒー抽出器具で、コーヒードリッパーの底面がホルダーの底面より上側に位置して、コーヒードリッパーが抽出した液に浸からないことを特徴としたコーヒー抽出器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーをハンドドリップ式で本格的に抽出するための器具に関するものである。従来の器具と大きく異なる点は2つある。一つは、誰もが簡単にコーヒー豆の持つ味を最大限に取り出す理想的な精度の高い抽出が確実に再現でき、その取扱いにはコーヒーに関する専門の知識が一切不要で個人差が全く出ないこと。もう一つは、本格的な抽出器具でありながらドリップバッグと同様の使い捨ての簡易的要素を持ち、さらにその取扱い方法は従来の使い捨てのドリップバッグ類よりもコンパクトで使い勝手が格段に向上していることである。
【背景技術】
【0002】
本当に美味しいと思えるコーヒーを得るために一番重要なのは、良質の生豆を入手することである。その次に生豆の特性を生かした最良の焙煎をすることである。そして最後に、湯温と時間に配慮した丁寧な抽出を行うことである。最終工程の抽出方法が最適でなければ、折角状態のよいコーヒー豆を準備しても、その美味しさを最大限に引き出すことができなくなる。
【0003】
生豆の入手から焙煎及び抽出までこだわった本当に美味しいコーヒーを飲むには、コーヒー専門の店に出向けば可能であるが、個人でこれら全ての工程を実現するのはかなり敷居が高い。良質の生豆を最適に焙煎したコーヒー豆を入手するところまではインターネットの普及により個人でも可能となったが、最適な抽出をする段階で知識と経験が必要となり、例えその方法を習得してもその行為には準備や後片付けを含めて物理的に多くの時間を要し、その事自体を楽しむ時間的余裕が無ければ実施が難しい。
【0004】
取扱いが比較的簡単で手軽に飲めるという点では、既存の発明品であるドリップバッグが存在するが、専用器具を使った抽出精度にはとても及ばず、あくまでも簡易抽出としての位置づけとなり本格的ではない。本発明は、ハンドドリップという抽出過程の行為が持つ問題を改善するものであり、とても簡単で手軽であるのに驚くほど本格的な抽出を誰もが確実に実現出来るようにするものである。そのためにはまず本格的な抽出過程を分析し、既存の抽出器具が持つ取扱いの煩雑性と、抽出精度の定量化が難しいという問題を解決する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-320597
【特許文献2】特許第5071640広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、近年その美味しさが認められてきたハンドドリップ式コーヒー抽出に着目し、その方式が持つ問題を解決して誰もが簡単且つ確実に精度が高い味のコーヒーが抽出できるようにし、本当に美味しい本格的なコーヒーが手軽に飲めるようにするためのものである。ハンドドリップの問題点として挙げられるのは、専用の器具が必要であり手間がかかることと、抽出行為には知識と経験が求められ定量化することが難しいことである。本発明を導くために、ハンドドリップで美味しいコーヒーを抽出するための器具や具体的な過程を理解する必要がある。
【0007】
コーヒーを本格的にハンドドリップするためには、専用のドリッパーとお湯が注ぎやすい先端形状の注ぎ口のポットが必要である。ドリッパーはコーヒー挽き豆にお湯を浸透させコーヒー液を抽出して濾過するためのもので、コーヒー挽き豆の保持と抽出及び濾過機能を有する。代表的なものに布で出来た濾過袋を手で保持するものや、陶器やプラスチック製のホルダーで保持して紙フィルターで濾過するタイプのものがあるが、ここでは総称してドリッパーと呼ぶ。ポットはドリッパーにお湯を注ぐためのもので、注湯の際に豆に対して極力お湯の衝撃を与えないように且つまんべんなく注げるようになっており、図2のように注ぎ口が細いポットPの先端をドリッパーD内のコーヒー挽き豆CBに対して近い距離に配置させ、まんべんなく全体に丁寧にお湯を注ぐことが可能となるように形状が工夫がされてる。注ぎ方は中心から外側に渦を描くようにする等が一般的であるが、目的はコーヒー挽き豆CBに対してお湯を全体にむら無く均一に浸透させることである。
【0008】
さらに、お湯を注ぐ際に重要なのは温度と時間である。ハンドドリップでのコーヒー抽出の適温は90℃前後であり、お湯の温度が高過ぎるとタンニンを多く抽出してエグ味が出てしまい、低すぎると旨味や甘味等、味が美味しく感じられるコクが十分に抽出されなくなる。そのため、ポットのお湯は沸騰後に少し時間を置くか、または別のポットに移して温度を下げる等の工夫が必要になる。抽出時間については、約3分を費やすのが良いバランスであり、時間が早過ぎると温度が低い時と同様にコクが十分に抽出されず、時間が長すぎると余計な雑味まで抽出してしまう。材質や形状や外気温にもよるが、ポット内の温度は時間の経過とともに下がり、3分程経過すると5度程度下がる。したがって、注湯開始時には90℃より少し高い95℃程度とし、3分後には90℃前後を目指すのが一つの目安となる。温度と時間のバランスによる味の変化は人によって好みがあるため絶対的なものではないが、90℃前後と約3分というのは経験上でバランスの良い味になるという一つの目安と言える条件であり、本発明における目標値とする。
【0009】
注湯で大切なことは、丁寧な注湯と適度な湯温を考慮した上で、初めてお湯が豆に触れる際の所作である。新鮮なコーヒー挽き豆にお湯が触れると炭酸ガスが大量に放出されるためコーヒー挽き豆が膨らみ、いくら丁寧に注湯してもどうしても豆に動きが生じてしまい、それが雑味の抽出につながりやすい。また、この時の注湯はコーヒー挽き豆にまんべんなくお湯をしっかりと浸透させるための蒸らしの行為でもあり、コーヒー挽き豆内に溶け出したコーヒー成分の溶液と周りのお湯との浸透圧の差によってエキスを抽出するハンドドリップにおいてとても重要なステップである。炭酸ガスの膨らみによる豆の流れの乱れを抑えるために、注湯前にコーヒー挽き豆を上から棒やヘラで押さえて挽き豆間の隙間を詰めたり、注湯時にお湯を点滴のように少しづつ垂らしてゆっくりまんべんなくお湯を浸透させるといった工夫が、手によるポットを用いての注湯には必要である。蒸らした後の本格抽出のための注湯にも細心の注意が必要で、コーヒー挽き豆全体にまんべんなくお湯が浸透して行くように、中心から外側へ渦を描くように極力低い位置から注湯しつつ、約3分を費やすようにゆっくりと時間をかける必要がある。こういった行為が本格的ハンドドリップの楽しみでもある反面、誰もが気軽にできなくなっている要因の一つでもある。
【0010】
そして抽出中に気をつけなければならない重要なことが、抽出したカップ等の容器内のコーヒーにドリッパー自体を浸からせないことである。いくら丁寧な注湯や湯温に細心の注意を払って最適な抽出を行っても、ドリッパー自体が抽出したコーヒー内に浸かってしまうと、不必要にエキスが抽出され過ぎ、雑味が出る原因となる。ドリップバッグ方式においては浸かってしまうタイプが多く、長く浸からせると味を濃くすることが出来るのは事実であるが、雑味も一緒に濃くなり本当に美味しいコーヒーとは言えなくなる。
【0011】
ここまでは、湯温と時間と注湯方法に気を配れば通常のハンドドリップで実現できることであるが、手による動作だけでは実現が難しいことがある。それはコーヒーの油脂分を効率よく抽出することである。コーヒーの油脂分は、旨味や甘味等のコクという形で味に現れ、トロ味という食感で口に感じ取れる。一般的によく用いられるペーパーフィルターでコーヒーを抽出すると、紙が油脂分を吸収してしまいコーヒーのコクやトロ味が減少する。既存のドリップ方式では布製のドリッパーを用いたネルドリップ式が高い油脂分抽出能力を有する。一度使用した布には既にコーヒー油脂分が染み込んでいるため、抽出の際に布に油脂分が染み込まずに通過し、外に抽出されやすくなるためである。また、ネルドリップのもう一つの利点は、ドリッパー自体が布であることにより、お湯を注いだ時の衝撃を袋が膨らむことで吸収するためコーヒー豆に衝撃が加わりにくくなり、これが余計な雑味を出さない効果を生み出すことである。このように、抽出にはドリッパーの材質に左右される要素が存在する。
【0012】
以上のことから、本発明の課題は次の通りである。いかにコーヒー挽き豆に衝撃を与えずに注湯するか、いかに湯温を調整するか、いかにお湯による抽出時間を3分程度に維持するか、いかに炭酸ガスによるコーヒー挽き豆の膨らみの動きを抑えるか、いかにまんべんなく豆にお湯をやさしく浸透させるか、いかにコーヒーの油脂分を取り出すか、いかにコーヒー挽き豆を抽出後のコーヒーに浸からせないようにするか、これらを再現することが誰にでも簡単に確実に行えるか、完成された器具がコンパクトで取扱が簡単であるかどうかである。これら全てを解決することが本発明を実現する上での焦点となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
通常のハンドドリップ方式が、ポットから直接ドリッパーD内のコーヒー挽き豆CBにお湯を注ぐのに対して、本発明ではポットからのお湯がコーヒー挽き豆CBに触れる前に、一旦お湯を整流する仕組みを取り入れる。具体的には図3のように円錐又は角錐形の紙フィルターにお湯を注ぎ、この紙フィルターを通過して整流されたお湯でコーヒーを抽出する発想であり、本発明ではこの紙フィルターを整流フィルターRと呼ぶ。この整流フィルターRは、お湯を丁寧に注ぐことと適温に調整する役割を果たす。整流フィルターRを通過して出てくるお湯は、ポットからの注ぎ方が雑であっても、図3のように必ず一定の速度と滑らかさを保つ。このことにより、丁寧にお湯を入れるという意識を持つ必要が無く、ただ注ぎさえすれば自然と丁寧にお湯が注がれることになる。湯温については、紙の熱伝導率を利用して調整する。紙製の整流フィルターに沸騰した100℃の熱湯を注ぐと、整流フィルターを通過する際に熱が奪われ温度が約5℃下がる。また、抽出に適切な時間である約3分の時間が経過すると、ポット内のお湯自体の温度も自然と約5℃下がる。つまり、抽出開始時の整流されたお湯は約95℃で豆に触れ始め、抽出完了時には約90℃で豆に触れ終わることとなり目標とする適温の条件をクリアする。ここで重要なのは、注ぐお湯の温度を沸騰直後の100℃と明確化することで、通常のハンドドリップのように適温となるような湯温の調整が不要になることである。
【0014】
そして注湯時の衝撃を減らすために、図4のように整流フィルターRの先端をコーヒー挽き豆CBに直接当てるように配置すると、衝撃の無いお湯があたかもコーヒー挽き豆CBの中心部から湧きだすようなイメージで全体に浸透して広がって行く。図5のように、ポットPの先端をコーヒー挽き豆CBに直接付けて注湯することは物理的に困難であり、この柔らかな浸透現象を手で作り出すのは現実的に難しく、まさに理想的な注湯が本発明の抽出器具により実現する。
【0015】
ドリッパーに求められる濾過機能にはネルドリップの良さを取り入れる。ネル袋Nは図6(a)のように周囲に支えがなく開放されており外側に膨らむため、注湯時のコーヒー挽き豆CBへの衝撃が軽減される。図6(b)のように不織布を用いて濾過袋Bを製作し、ネル袋Nのように膨らむことによる注湯時の衝撃の軽減を計る。それに加え、その形状を図7のように下部を二次曲線Qで構成する形で熱圧着形成することにより、濾過袋B内で二次曲線の焦点Fにお湯の流れが集中する効果が得られ、濃厚な抽出のためのお湯の流れを作ることが出来る。さらに整流フィルターRの先端を図8ように焦点F付近に配置することにより、注湯時のお湯が挽き豆に与える衝撃をほぼ無くすことが出来る。図9に整流フィルターRの先端を濾過袋Bの焦点Fに配置した状態でのお湯の流れを示す。図9(a)は整流フィルターRに注湯で溜まったお湯が、焦点Fから濾過袋B内にゆっくり広がり始める焦点からの対流C1の様子である。図9の(b)は、濾過袋Bに溜まったお湯が焦点への対流C2となり、焦点から下向きの流れC3に集まって濾過袋Bを通過して袋外に滴下する様子である。整流フィルターRに注湯する度に濾過袋B内にC1,C2,C3の焦点を起点とするお湯の流れが生じるため、静穏な流れでありながらコーヒー挽き豆を繰り返し通過して行くことにより、雑味が出るのを抑えながらとても濃厚な抽出が可能となる。
【0016】
また、濾過袋Bの下部を二次曲線Q形状にすることによって袋の表面積が小さくなり通過する抽出液の量が抑えられることから、お湯が濾過袋Bの内部に留まる時間が長くなる。さらに、濾過袋Bの開口部に整流フィルターRを取り付けていることから、整流フィルターR内にお湯が溜まっている状態は濾過袋Bの開口部が塞がれていることとに等しい。その状態で濾過袋B内から抽出液が袋外に出ると袋の内圧が下がり、それによりさらにお湯が袋内に留まる時間が長くなる効果が加わる。ハンドドリップに最適な時間である約3分を手でポットによる注湯で実現するためには、通常のハンドドリップでは少しづつのお湯を手で加減しながら注湯量を調整する必要があるが、本発明の場合は上述の効果により、整流フィルターRにお湯を注げば濾過袋B内のお湯は通常のハンドドリップのドリッパーのように早く落ちず袋内に留まり、カップ一杯の目安150ccのコーヒーを抽出するのに結果的に自然と約3分を経過させることが実現できる。一回目の注湯時に濾過袋B内に溜まるお湯は豆を蒸らす行為そのもので、ハンドドリップで課題となる定量化の課題が、本発明の抽出器具により次々に解決されてゆく。お湯が留まる時間は、濾過袋Bの形状やコーヒー挽き豆の粗さで、ある程度の調整が可能である。
【0017】
更なる効果として、二次曲線Qの形状により内部体積が小さくなった濾過袋Bにコーヒー挽き豆CBを充填して整流フィルターRで上部から押さえつけると、図10のようにコーヒー挽き豆CBが隙間なく固められた状態になるためその動きが制限され、注湯してもコーヒー挽き豆CBがほぼ動かず雑味の抽出が抑えられる。さらにこの状態で、図11のようにコーヒー挽き豆CBがお湯に触れた際に発生する炭酸ガスによる圧力CPにより濾過袋Bが膨張し、上側からは注湯された整流フィルターR内のお湯の自重BPによって押さえられているため袋内の圧力が高まり、コーヒー挽き豆CBに微圧がかかる。通常のドリップでは浸透圧でコーヒーが抽出されるが、本発明の抽出器具の場合、この微圧によって抽出能力がさらに高まる上に、ネル布でないと袋外へ通過しにくいコーヒーの油脂分をこの微圧で袋外へ滲出させることが出来るため、この効果によりネルドリップによる抽出の際に得られるのと同様のコーヒーのコクとトロ味を引き出すことが可能となる。手でポットによる注湯を行うハンドドリップの時には障害となっていた炭酸ガスによるコーヒー挽き豆CBの膨らむ力が、本発明の構成の場合は逆に利点となり、手による抽出では成し得なかった、雑味を最大限に抑える抽出方法が確立できるものである。
【0018】
整流フィルターRは図12のように濾過袋Bの開口部に設置するが、注湯時に発生するコーヒー豆の炭酸ガスにより図13のように上に持ち上げられてしまい、膨らんだコーヒー挽き豆CBが濾過袋Bの外にこぼれてしまうため、整流フィルター折り代ROを図14のように折り曲げて濾過袋Bの開口部の縁を挟む形で熱圧着する。これは内容物が溢れ出さないようにすると共に濾過袋Bの開口部の縁を補強することにもなるため、図15のようにお湯を整流フィルターRにギリギリ一杯まで溜めてもしっかりした形状を保ち、安定した注湯が行える効果もある。また、整流フィルターRの形状が円錐又は角錐で、濾過袋Bと円錐又は角錐の母線が鋭角になっている状態は、炭酸ガスの力で整流フィルターRが浮き上がらないようにする視点で見た場合にも適した状態である。鋭角でない場合、整流フィルターR自体が上に持ち上がらなくても、図15(c)のように整流フィルターRの中央部が炭酸ガスの力で下から上にめくり上げられてしまう。鋭角である効果で、炭酸ガスの力が整流フィルターRに加わっても水平方向に分散されてめくり上がりが防止出来る。
【0019】
特許文献1では、注湯口に帯状のカバーシートを設けることで被充填物がこぼれないことと袋内に蒸らし効果がもたらされるとある。本発明の抽出器具の整流フィルターRは濾過袋Bの開口部に設置して熱シールして封をすることになるため、濾過袋B内のコーヒー挽き豆CBがこぼれないことと袋内にもたされる蒸らし効果は同様の機能である。しかし、整流フィルターRは丁寧に注湯するためにお湯を整流することが第一の目的で円錐または角錐の形状をしており、単にこぼれない蒸らすというためのものではない。帯状のカバーシートではハンドドリップで重要な要素の一つである丁寧な注湯は実現できず、本発明の整流フィルターは特許文献1のカバーシートとは全く異なるものである。また特許文献2では、フィルターシートとカバーシートの縁辺が内面同士対向してシールされ、このシール部が袋本体の上部開口部の縁部となっていることを特徴としているが、本発明の整流フィルターは、整流フィルター折り代ROを折り曲げて濾過袋Bの開口部を挟み込んで熱圧着シールすることにより濾過袋B本体の上部開口部の縁部に厚みを持たせて強度が増す構造のため、お湯を注いでもしっかりとした形と強度を維持して注ぎやすくなり、特許文献2の構造とは全く異なるものである。
【0020】
ドリッパーに求められるコーヒー豆の保持機能は、使い捨てとコストを考慮して厚紙で製作し、本発明ではホルダーHと呼ぶ。ホルダーHに必要な要件は、濾過袋Bをカップ内に浸からないようにするためカップ上側に位置して安定させることと、設置に際して容易な手順と方法で行えることと、コンパクトに収納できることである。
【0021】
ホルダーHの基本形状は、コストを下げるために製作しやすさを考慮して簡単な構造とする。図16(a)のように上面と底面の無い単純な直方体とし、その展開図は図16(b)のようになりホルダー折り目HCで折り曲げてホルダーのりしろHOで接着して組み立てる。カップの上に安定して乗せるために、ホルダーHの底面側のカップ縁に接する四カ所に長穴形状の切り欠きCOを入れる。こうすることにより、カップ縁の四点で支えられ且つ切り欠きCOにより水平方向の動きが制限されて安定する。さらに安定性を向上させるために、直方体の短面の中心を図17(a)のように内側に折りたたむ。この状態で図17(b)のように直方体の形に戻すと、折り曲げた方向に戻ろうとする力が図17(c)のように働き、これがカップの側面を挟む力SPとなり、この場合は口の小さいカップに適している。次に、図18(a)の状態から図18(b)のように短面の中心を外側に折って広げてから離すと、図18(c)のように元の直方体に戻ろうとする力が働き、これがカップの側面を挟む力SPになり、この場合は口の大きなカップに適している。このように切り欠きCOでカップ縁に安定して乗るようにし、ホルダーHの形状の折りたたみの変化によってカップのサイズ変化に対応しながらカップ側面を挟み込んで安定させることが出来るため、シンプルな構造でありながらカップ大CL、カップ中CM、カップ小CSのサイズの変化にも柔軟に対応出来る。
【0022】
整流フィルターRを取り付けた濾過袋Bを、図20のようにホルダーHの直方体の丁度中央に厚紙製のサポートアームAで固定してカップより上に位置するように配置すると、カップ内の抽出液に浸からない。サポートアームAの正面形状は図20(b)の通りで、実線の切り目と点線の折り目から成り、濾過袋BとサポートアームAを熱シールまたは糊等で接着し、ホルダーHとサポートアームAを糊等で接着して固定する。サポートアームAにあるサポートアームたて折り目AVは、濾過袋Bが炭酸ガスで膨らむ状態の形状を補助することを目的とし、サポートアームリブ折り目AHはサポートアームリブARを形作るためのもので、図20(d)のようにホルダーHの上部開口部の中央部が、お湯が浸透した濾過袋Bの重みで内側に反り曲がらないように補強するためのものである。この状態で図21(a)のようにホルダーの短面折り目を内側に折り曲げ、図21(b)のようにホルダーHの長面を濾過袋の膨らみに沿わせるように曲線を描くように曲げると、図20(c)のように短辺の両サイドを合わせる形でホルダーHが濾過袋Bを挟みこむ状態に収納できるため、非常にコンパクトになる。
【0023】
「課題を解決するための手段」にこれまで記述してきた方法により、「発明が解決しようとする課題」で記述した既存の器具を使ってコーヒーを本格的にハンドドリップする際の問題点が全て解消される。特に整流フィルターRによる注湯の整流効果と炭酸ガスによる圧力効果は手で作り出すことは困難で、これらの効果によるコーヒーの抽出精度の向上は特筆に値する。また、シンプルで安定性の高いホルダー機能を有していながら湯温や抽出時間の定量化も同時に実現できたことにより、今までは成し得なかった、誰もが簡単確実に再現できる本格ドリップ機能付きの簡易型コーヒー抽出器具が成立するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、コーヒーに対する知識を全く持たない人が、コーヒーの専門店に行くこと無く自らの手で本格的ハンドドリップによるコーヒーの抽出が可能になる。手軽でコンパクトでありながら使い捨てであるため、わずかな時間で手間暇をかけず場所を選ばず誰もが本当に美味しいコーヒーを味わえることになる。コーヒー豆を提供する側の苦悩の一つとして、豆を手にした人がどのような方法で抽出するかをその人に委ねるしかないということがあるが、本発明品の抽出器具にコーヒー挽き豆を詰めることにより、熱湯さえあればコーヒー豆のもつ最大限の味をハンドドリップ式により誰もが簡単確実に抽出可能となり、コーヒー豆の需要側と供給側のお互いが満足できる理想的な状態が実現出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の構成部品の斜視図(a)と組立後の斜視図(b)である。
図2】一般的なハンドドリップ方式でドリッパーDのコーヒー挽き豆CBにポットPでお湯を丁寧に注ぐ様子である。
図3】本発明の抽出器具の原理図で、整流フィルターRで整えたお湯がドリッパーDのコーヒー挽き豆CBに丁寧に注がれる様子である。
図4】本発明の抽出器具の原理図で、整流フィルターRの先端をドリッパーD内のコーヒー挽き豆CBに直接触れさせる様子である。
図5】一般的なハンドドリップでポットPの先端をドリッパーD内のコーヒー挽き豆CBに近づけるのが困難な様子である。
図6】ネルドリップのネル袋Nの斜視図(a)と本発明の抽出器具の濾過袋Bの斜視図(b)である。
図7】本発明の抽出器具の濾過袋Bの下部を二次曲線Q形状に熱圧着した正面図で、焦点Fにお湯の流れが集中する様子である。
図8】本発明の抽出器具の整流フィルターRの先端を濾過袋Bの焦点F付近に配置する様子である。
図9】本発明の抽出器具の整流フィルターRにお湯を注いだ時に濾過袋B内にお湯が広がる様子(a)と、濾過袋B内に溜まったお湯がコーヒー抽出液DLとして下に落ちて行く様子である。
図10】本発明の抽出器具の濾過袋B内のコーヒー挽き豆CBが整流フィルターRで押さえられている様子である。
図11】本発明の抽出器具の濾過袋B内のコーヒー挽き豆CBから炭酸ガスが発生して圧力がかかり、濾過袋Bが膨張している様子である。
図12】本発明の抽出器具の整流フィルターRを濾過袋Bに挿入する様子の断面図(a)と斜視図(b)である。
図13】本発明の抽出器具の濾過袋Bに挿入した整流フィルターRが濾過袋B内の炭酸ガスの力で上に持ち上がってしまう様子の断面図(a)と斜視図(b)である。
図14】本発明の抽出器具の整流フィルターRを濾過袋Bの開口部に熱圧着する様子の断面図(a)と斜視図(b)である。
図15】本発明の抽出器具の濾過袋Bの開口部に熱圧着した整流フィルターRにお湯を注いで溜めた様子の断面図(a)と斜視図(b)であり、断面図(c)は濾過袋B内の炭酸ガスで膨らむ力が整流フィルターRを持ち上げる様子である。
図16】本発明の抽出器具のホルダーHがカップに乗る様子の斜視図(a)とホルダーHの展開図(b)である。
図17】本発明の抽出器具のホルダーHの斜視図で、両サイドの短面を内側に折りたたむ様子(a)と直方体形状に戻す様子(b)と内側に戻ろうとする様子(c)である。
図18】本発明の抽出器具のホルダーHの斜視図で、直方体形状の様子(a)と両サイドの短辺を外側に広げる様子(b)と内側に戻ろうとする様子(c)である。
図19】本発明の抽出器具のホルダーHがカップに乗る様子の斜視図で、カップ口の大きさがそれぞれ異なる、カップ小CSに乗る様子(a)とカップ中CMに乗る様子(b)とカップ大CLに乗る様子(c)である。
図20】本発明の抽出器具の整流フィルターR付きの濾過袋BがホルダーHの中央部にサポートアームAにて連結されている様子の上面図(a)と正面断面図(b)と側面断面図(c)である。上面図(d)は、サポートアームリブARがない場合にホルダーHが変形する様子の図である。
図21】本発明の抽出器具のホルダーHをコンパクトに折りたたむ様子で、両サイドの短面を内側に曲げる様子(a)と整流フィルターR付きの濾過袋Bを包み込む様子(b)と包み込んだ結果の様子(c)である。
図22】本発明の抽出器具の濾過袋Bにコーヒー挽き豆CBを詰めて整流フィルターRで閉じる工程の断面図である。コーヒー挽き豆CB投入(a)、整流フィルターR挿入(b)、整流フィルター折り代RO折り曲げ(c)、整流フィルターR熱シール(d)、封入完成(e)の順番である。
図23】本発明の抽出器具をコンパクトに折りたたみ外袋OBに詰める様子を表し、ホルダーHの短面を内側に折り曲げ(a)、折りたたみ(b)、外袋OBに挿入(c)する様子の斜視図である。
図24】一般的なドリップバッグが平均的なサイズの外袋に入っている様子(a)と、本発明の抽出器具が同サイズの外袋OBに収まる様子(b)である。
図25】本発明の抽出器具を外袋OBから取り出し(a)、カップに乗せ(b)、注湯口を広げ(c)、注湯する(d)手順を表した図である。
図26】本発明の抽出器具の整流フィルターRで熱湯の温度を下げながら整流する様子(a)と、整流されたお湯が濾過袋Bの内部でコーヒー挽き豆CBに作用する様子を表した図である。
図27】本発明の抽出器具の濾過袋Rの下部の形状が二次曲線Qの場合(a)と四角の場合(b)のコーヒー抽出液DLの流れの違いを表した図である。
図28】本発明の抽出器具の濾過袋Rの上部にコーヒーのアクが上がって行く様子を表した図である。
図29】本発明の抽出器具を抽出完了後にカップから持ち上げ、テーブル等の平面に置く様子の図である。
図30】本発明の抽出器具を抽出完了後に破棄する様子である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に必要な構成部品は、図1(a)のように整流フィルターRが1点、濾過袋Bが1点、ホルダーHが1点、サポートアームAが2点の4種類で、合計5点である。整流フィルターRは円錐又は角錐の形状で、濾過袋Bは下部を二次曲線Q形状にした袋状のもの、ホルダーHは直方体形状のもので、サポートアームAは濾過袋BとホルダーHを連結するためのものである。図1(b)にそれぞれの部品を組み立てた完成形の様子を示す。
【0027】
整流フィルターRは濾過袋Bにコーヒー挽き豆CBを入れてから濾過袋Bの開口部に取り付ける。図22はその過程を示すものである。図22(a)のように濾過袋Bに予めコーヒー挽き豆CBを入れてから、図22(b)のように上から整流フィルターRの先端部を差し込むように挿入する。図22(c)のように整流フィルターRを整流フィルター折り代ROまで差し込み折り代を折り曲げ、図22(d)のように熱シールすると、図22(e)のように濾過袋Bの中にコーヒー挽き豆CBを充填した状態で整流フィルターRを取る付けることが出来る。
【0028】
コーヒー挽き豆CBを封入した本発明の抽出器具を図23(a)のようにホルダーHの短面を内側に折り曲げ、図23(b)のように折畳むと、図23(c)のようにコンパクトな大きさの外袋OBに挿入出来るサイズになる。図24(a)に通常のドリップバッグを外袋に封入した様子を示す。本発明の抽出器具は、本格ドリップ機能付きでありながらも、図24(b)のように従来のドリップバッグの外袋と同等の大きさの外袋OBの中に封入することが可能であるほどコンパクトな大きさである。
【実施例】
【0029】
本発明の抽出器具で実際にコーヒーを抽出する手順を説明する。図25(a)のように、外袋OBに入った抽出器具を取り出す。図25(b)のように、折りたたまれたホルダーHを広げてカップの上に乗せる。ホルダーの構造は極めて単純であるため、手間がかからず素早く設置出来る。ホルダーの折りたたみ構造と切り欠き部COにより、カップ口の大きなものから小さなものまで柔軟にフィットして安定する。カップ上に設置後、図25(c)のように整流フィルターの注ぎ口を左右から軽く押し広げる。サポートアームリブARは、お湯が浸透した濾過袋Bの重みで、ホルダーHの開口部が内側に反り曲がらないようにするためのものである。最後に、図25(d)のように整流フィルターRにポットPで沸騰直後の熱湯を注ぐ。整流フィルターRの縁は折り曲げて濾過袋Bの開口部縁を挟んで熱シールされていることによりしっかり形作られているため、お湯で濡れても安定した形状を保つ。
【0030】
整流フィルターRに溜まったお湯は、図26(a)のようにフィルター通過時に自然と適温になる。整流された適温のお湯は、図26(b)のように滑らかにコーヒー挽き豆CBに浸透して行く。お湯は直ぐには濾過袋Bを通過せずに一旦袋内に留まり、まず初めにコーヒー挽き豆CBが蒸らされる。この時コーヒー挽き豆は、整流フィルターR内のお湯の自重の圧力BPで上から押さえられ、濾過袋Bが膨らみ内部にお湯が充満する。この時にコーヒー挽き豆がお湯に触れたことで発生する炭酸ガスにより濾過袋B内に圧力CPが発生し、浸透圧だけでない圧力がコーヒー挽き豆に加わり、抽出能力が高まる。さらに炭酸ガスによる圧力CPの力がコーヒーの油脂分を濾過袋Bから外側へ滲出させる好条件の一つとなり、ネルドリップの特徴であるコーヒー油脂分によるコクとトロ味を本発明の抽出器具で再現できる。
【0031】
コーヒー抽出液DLは、図27(a)のように濾過袋Bの二次曲線Qの先端に一筋に集まって流れ落ちる。濾過袋BはホルダーHによりカップ上側に位置しているため、濾過袋Bが図27(b)のように四角い形状だと抽出された液は四角の角部から流れ落ち、カップの口が小さい場合はカップ外にこぼれてしまう。抽出能力を高めるための二次曲線Qの形状が、こぼれることなくカップ内に抽出液を導く役割も果たす。
【0032】
整流フィルターに熱湯を注ぎ続けると、濾過袋Bの形状と整流フィルターRが開口部を塞ぐ効果でお湯の留まる時間が長くなり、およそ3分を要してコーヒー一人前の適量の一つであるカップ一杯約150ccになる。一般的にドリップコーヒーの場合、最後の抽出液には雑味が含まれるため落としきらないほうがよいと言われるが、本発明の抽出器具で抽出する場合は、図28の拡大図ように、整流フィルターRと濾過袋Bとの隙間が上に行くほど狭くなってくるため毛細管現象が生じ、コーヒーの雑味の原因となるアクが整流フィルターR上部に吸い寄せられ下に落ちず、最後まで落としきってもアクによる雑味が気にならない量に抑えられる。
【0033】
本発明の抽出器具は、抽出したコーヒーを最後までカップに落としきっても良いことから、図29のように抽出後の抽出器具を取り上げてテーブル等に直接置いてもコーヒーが下に垂れない。そのため抽出後に雫が落ちないように急いで抽出器具を捨てる必要がなく、また整流フィルターRにより上部が閉じられているため濾過袋B内部のコーヒー挽き豆CBが外にこぼれ出す心配もない。その結果、図30のようにホルダーH部分を手に持って手を汚すことなく気軽に破棄することができる。本発明の抽出器具は、抽出の精度が高いだけでなく、準備から最後の片付けまで、とても簡単で使い勝手のよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の抽出器具により、従来のような専用の器具なしで誰もが簡単に確実に本格的なハンドドリップによるコーヒー抽出が可能となる。コーヒー専門店に行くことなく個人が家で本格的に美味しいコーヒーを手軽に楽しむことはもちろん、コーヒーに関係のない店舗がアイテムとして本格的に美味しいコーヒーを専用の機械を導入しなくてもお客様に提供できるようになる。コーヒーを取り扱う飲食店であっても、コーヒーに関する設備を一切準備すること無く本格的なコーヒーとのメニューの組み合わせが考えられる。量が求められる場合も、約150cc一杯分を抽出するのに3分程度かかることから、一杯を抽出する際に待つ時間を利用し、カップを複数並べて平行して抽出することが可能である。約1リットルの容量のポットがあれば、3分30秒程度で約150ccのコーヒーを5杯分抽出することが可能である。通常のハンドドリップでもドリッパーをセットしたカップを並べて同時に平行して抽出することは可能であるが、丁寧な注湯が出来なくなる。本発明の抽出器具の場合は、人が丁寧な注湯をする必要がなく抽出器具が自動的に丁寧にお湯をコーヒー豆に浸透させてくれるため、たくさんの数を同時に平行して抽出しても全て同じ品質で高い精度の抽出が可能である。本格的なネルドリップによる抽出を手で丹念に一人で行う場合、約1杯分の抽出時間の間に5杯分の分量を同時に抽出することは不可能である。しかし本発明の抽出器具により、ネルドリップのような抽出精度で複数杯を同時に抽出することが可能となる。しかも、コーヒーのことを全く知らない人が初めて抽出してもこの品質と量が確実に再現できる。本発明の抽出器具を市場に導入することにより、個人から店舗までが今までの本格的なコーヒーの取扱いの難しさにとらわれることなく、コーヒー本来が持つ美味しい味をとても簡単に一般消費者に提供することができるようになる。
【0035】
専用器具や知識を使っての本格的なハンドドリップによるコーヒーの抽出は、コーヒーをゆったりと楽しむにはとても大切なことであり、その文化は未来永劫に受け継がれていくべきものであるが、その面倒さや難しさが一般消費者の日常生活の中まで本当に美味しいコーヒーが普及しない要因となっている。とても簡単で手軽なインスタントコーヒーは素晴らしい発明品で生活に浸透しているが、コーヒー本来の持つ美味しい味までは再現出来ていない。ドリップバッグコーヒーは、専用器具を準備しなくてもコーヒーが抽出できる利便性はあるが、抽出する人の知識と技術に左右される従来の問題を抱える上に本格ドリップが難しい構造である。近年、スペシャリティコーヒーと呼ばれる本当に美味しいコーヒーが普及し始めている。このコーヒー生豆を適切に焙煎し本格ハンドドリップすれば本当に美味しいコーヒーとなる。しかし一般消費者は、いかにコーヒーが好きであっても自ら生豆を焙煎することは殆ど稀であるし、焙煎した豆を挽くためにミルを持っていることさえ少なく、ドリッパーを持っていても本格的抽出方法を知らないのが大半で、コーヒーという飲み物が、本来は砂糖やミルクを入れること無く旨味や甘味がある優れた飲み物だと知られていないのが現状である。
【0036】
世界のコーヒー農家は、貧困の問題に直面している。その問題から生じる具体的な現象は、コーヒー農家がコスト削減のためにコーヒーの品質を低下させてしまうことで、スペシャリティコーヒーと呼ばれる品質の高いコーヒー豆を生産をする余裕がなくなることである。コーヒーの旨味や甘味を砂糖なしで感じることの出来る豆は、いわゆるスペシャリティコーヒーの品質の場合である。缶コーヒーやインスタントコーヒーの場合、安価な豆であっても他の要素で味の調整ができるため、コストの高いスペシャリティコーヒーである必要はなく、その場合はそれにふさわしい品質の豆で十分である。スペシャリティコーヒーは、その味を十分に生かすために抽出精度を高めれば高めるほどよい。その精度の高い抽出作業が一般消費者には難しく、特定のお店や人に限定されてしまうため、スペシャリティコーヒーの流通量が少なくなってしまう。コーヒーの抽出方法には、ドリップ、エスプレッソ、プレス等いくつかの種類がありそれぞれの特徴を生かした良さがあるが、旨味や甘味などのコクを引き出すのが得意なのはドリップで、その中でもネルドリップが優れている。ネルドリップによる丁寧な抽出は一般消費者には簡単に実施できない。その問題を解決できるのが、本発明の抽出器具である。本発明の抽出器具にスペシャリティコーヒーを最適に焙煎した挽き豆を詰めれば、ネルドリップの満点に届かないまでも、かなり精度の高い抽出ができるために、本当のスペシャリティコーヒーの味を確実に表現できる。取扱いが簡単で抽出方法が定量化されているため、全く知識のない一般消費者が初めて使っても高いレベルの抽出が可能である。一般消費者に普及できるということは、スペシャリティコーヒーの消費量の増加につながり、コーヒーに対する一般消費者の認識が変われば、外でコーヒーを飲む機会が一層増えてくることも期待でき、コーヒー業界全体の活性化に結びつくと考えられる。そうなれば最終的にコーヒー農家へも還元できるようになるはずである。さらに、ネルドリップで丁寧に抽出するコーヒーの良さは日本特有の文化で、扱いが簡単である本発明の抽出器具により、その良さを海外へも伝えやすくなる。コーヒー業界の活性化とは、日本だけにとどまらず世界規模で考えるべきものであり、その要件を満たすものの一つが本発明の抽出器具である。
【符号の説明】
【0037】
R 整流フィルター
RO 整流フィルター折り代
A サポートアーム
AR サポートアームリブ
AH サポートアームリブ折り目
AV サポートアームたて折り目
B 濾過袋
H ホルダー
P ポット
N ネル袋
Q 二次曲線
F 焦点
C1 焦点からの対流
C2 焦点への対流
C3 焦点から下向きの流れ
BP お湯の自重
CP 炭酸ガスによる圧力
SP 側面をはさむ力
L コーヒーのアクの流れ
CB コーヒー挽き豆
DL コーヒー抽出液
OB 外袋
CO 切り欠き部
HC ホルダー折り目
HO ホルダーのりしろ
D ドリッパー
CS カップ小
CM カップ中
CL カップ大
図1
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