(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-42484(P2017-42484A)
(43)【公開日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】靴の構造
(51)【国際特許分類】
A43B 7/00 20060101AFI20170210BHJP
【FI】
A43B7/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-168763(P2015-168763)
(22)【出願日】2015年8月28日
(71)【出願人】
【識別番号】315011485
【氏名又は名称】藤江 一秀
(72)【発明者】
【氏名】藤江 一秀
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BC01
4F050BC07
4F050EA04
4F050LA01
(57)【要約】
【課題】 歩行時に靴に傾き力やねじれ力が作用せず、体にストレスを与えない靴の構造を提供することである。
【解決手段】アウターソール21を備えた靴に関する。そして、このアウターソール21を水平面に置いたとき、アウターソール21の踵部の第1ポイントと、歩行時に屈曲する足の踏み付け部22の位置に相当するアウターソール21の両外側の第2,3ポイントとの3点が同時に接触するようにしたものである。そして、足の踵から踏み付け部にかけて形成される2本の縦アーチ26,27と前記踏み付け部22に形成される横アーチ24との交点に対応するアウターソールの位置に前記第2,3ポイントを設定している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターソールを備えた靴であって、このアウターソールを水平面に置いたとき、靴の踵部となる第1ポイントと、歩行時に屈曲する足の踏み付け部の位置に相当するアウターソールの両外側の第2,3ポイントと、の3点が同時に接触する靴の構造。
【請求項2】
足の踵から前記踏み付け部にかけて形成される2本の縦アーチと前記踏み付け部に形成される横アーチとの交点に対応するアウターソールの位置に前記第2,3ポイントを設定した請求項1に記載の靴の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴の不安定性からくる種々の障害を予防できる靴の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性の高い靴として、歩行時に屈曲する足の踏み付け部に対応する部分の屈曲性がしばしば取り上げられる。確かに、足の踏み付け部に対応する部分の屈曲性が悪ければ、足底のアーチの機能が劣化し、歩行中の疲労の原因になったり、足底の筋肉や神経などの保護に支障をきたしたりすることになる。
しかし、靴を水平面に置いた時の安定性については、ほとんど問題にされていなかった。
【0003】
例えば、市販の靴を水平面に置いたとき、多くの靴は、
図4に示したアウターソール1の第1〜第6ポイント2〜7のうち、少なくとも2個所が接地面から浮いてしまう。
また、市販の靴のうち、両方もしくは左右いずれかの靴は、それを水平面に接触させたとき、上記第1〜第4ポイント2〜5がしっかりと接触しているが、他方の靴は上記のように少なくと2個所が水平面から浮いてしまっているということも多くあった。
【0004】
いずれにしても、第1〜第4ポイント2〜5が水平面にしっかり接触する靴でなければその安定性が保てない。例えば、第2ポイント3と第4ポイント5が水平面から浮いていて、第1ポイント2、第3ポイント4、第5,6ポイント6,7が水平面に接触している状態で、押し点9を間欠的に押すと、第2,3ポイント3,4を結ぶ線を中心に靴ががたつく。
【0005】
このような靴を履いて歩いたとき、第1,2ポイント2,3が接地した後、第6,4ポイント7,5が接地し、さらに第5ポイント6が接地する。そして、最後に第4ポイント5は第6ポイント7が接地した後に接地する。
【0006】
上記のように第6ポイント7が接地した後に第4ポイント5が接地するので、第4ポイント5が接地する瞬間は、この第4ポイント5で足の力を支えられない。そのために、第4ポイント5の着地時には第6ポイント7が支点になって、靴が傾いたり、ねじれたりする。
【0007】
また、第2,3ポイント3,4が浮いて、他のポイントが接地している状況で、押し点8を間欠的に押すと、第1,4ポイント2,5を結ぶ線を中心に靴ががたつくことになり、靴が傾いたり、ねじれたりすることになる。
なお、先行技術文献として公開公報を調査したが、従来技術に相当するものはなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにした従来の靴には、歩行時に傾き力やねじれ力が作用するので、その靴をはいた人には体全体に大きなストレスが蓄積される。このストレスは、関節の障害や腰痛などの原因になったり、外反母趾の原因になったりするという問題があった。
この発明の目的は、歩行時に靴に傾き力やねじれ力が作用せず、体にストレスを与えない靴の構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、アウターソールを備えた靴に関する。そして、このアウターソールを水平面に置いたとき、靴の踵部の第1ポイントと、歩行時に屈曲する足の踏み付け部の位置に相当するアウターソールの両外側の第2,3ポイントと、の3点が同時に接触するようにしたものである。
【0010】
第2の発明は、足の踵から踏み付け部にかけて形成される2本の縦アーチと前記踏み付け部に形成される横アーチとの交点に対応するアウターソールの位置に前記第2,3ポイントを設定している。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明における靴の構造によれば、歩行中の靴に、傾き力もねじれ力も作用しないので、当該靴を履いて歩いても体にストレスを蓄積することがない。このように体にストレスが蓄積されないので、関節障害や外反母趾を引き起こしたりしない。
【0012】
第2の発明における靴の構造によれば、歩行時に3つのポイントがしっかりと接地するので、縦アーチや横アーチを維持することができる。このように足にあるアーチを維持できるので、足を蹴り出す力、衝撃の緩衝あるいは足底の筋肉や神経の保護に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】歩行時に屈曲する踏み付け部の屈曲状況を示した斜視図である。
【
図3】縦アーチと横アーチが交差する状況を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図示の実施形態の靴は、それを水平面に置いたとき、アウターソール21の第1〜第3ポイントP1〜P3のすべてが上記水平面に同時に接触する構造にしている。
上記第1ポイントP1は、アウターソール21の踵部21aのほぼ中心位置に設定している。
【0015】
また、上記第2,3ポイントP2,P3は、次のように設定している。
すなわち、足Fには
図2に示すように、歩行時に屈曲する部分に踏み付け部22が存在する。この踏み付け部22の上記屈曲部23には、
図3に示すように横アーチ24が形成されている。また、足Fの踵25の中心位置から、親指の内側及び小指の内側に向かって2本の縦アーチ26,27が形成されている。
【0016】
そして、上記横アーチ24と2本の縦アーチ26,27とは交差するが、この交差部に相当するアウターソール21の部分を上記第2,3ポイントP2,P3としている。
上記のようにアウターソール21の踵部21aのほぼ中心位置、及び足Fに形成されている横アーチ24と2本の縦アーチ26,27との交差部分に対応するアウターソール21の位置のそれぞれに、第1〜第3ポイントP1〜P3を設定し、当該靴を水平面に接触させたとき、第1〜第3ポイントP1〜P3の3点が上記水平面に同時に接触するようにしている。
【0017】
上記のように3つのポイントP1〜P3が水平面に同時に接触するようにしているが、上記第1ポイントP1は、靴の接地時に最も大きな力が作用する踵部21aにあり、また、第2,3ポイントP2,P3は、歩行時に足Fを蹴り出す力が作用する位置にある。
【0018】
このように歩行時に大きな力が作用する第1〜第3ポイントP1〜P3のそれぞれが、歩行時に確実に接地するので、例えば、従来のように、歩行時に第2ポイントP2あるいは第3ポイントP3が接地面から離れて力を支えきれないということがなくなる。
【0019】
しかも、歩行時には先ず踵部21aが接地するとともに、足Fを蹴り出す直前は、第1〜第3ポイントP1〜P3のすべてが同時に接地する。このように足Fを蹴り出す直前に第1〜第3ポイントP1〜P3のすべてが同時に接地するので、足Fを蹴り出すために大きな力が作用する次の段階で、その蹴り出し力の大きさと方向を安定させることができる。したがって、靴に傾き力やねじれ力が作用しない。靴に傾き力やねじれ力が作用しないので、靴を履く人にはストレスがほとんど蓄積されない。
【0020】
また、上記のように蹴り出し力の大きさと方向を安定的に保てるので、足底に現れる横アーチや縦アーチを維持することができる。したがって、これらアーチがもっている、足を蹴り出す力、衝撃の緩衝及び足底の筋肉や神経の保護等の機能を維持することができる。
【0021】
なお、この発明は、靴を水平面に置いたときにそれがガタ付くと、足Fを安定的に支えられないという点に着目したことが最大の特徴である。
ところが、従来は、靴を水平面に置いたときのガタ付きを修正するという考えがなかったので、市販されている靴には、上記第1〜第3ポイントP1〜P3がぴったり接触するものが非常に少なくなっている。
しかし、第1〜第3ポイントP1〜P3に着目して安定的な靴という概念が明確なれば、靴の製造過程で不安定性を確実に解消できる。
【0022】
なお、上記実施形態において、踵部21aに設定した第1ポイントP1は、踵部21aの中心に限定されるものではない。また、横アーチ24と縦アーチ26,27との交点に対応する第2,3ポイントP2,P3も、その交差する1点を指すのではなく、当該靴を水平面に接触させたとき、第1〜第3ポイントP1〜P3が同時に接触できる範囲であれば、ある程度の誤差は許される。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、種々の障害を予防できる安定的な靴の構造として有益である。
【符号の説明】
【0024】
21…アウターソール、21a…踵部、P1〜P3…第1〜第3ポイント、22…踏み付け部、23…屈曲部、24…横アーチ、F…足、26,27…縦アーチ