特開2017-43132(P2017-43132A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-43132(P2017-43132A)
(43)【公開日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】人力推進車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20170210BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20170210BHJP
【FI】
   B62B3/00 B
   B62B5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-165034(P2015-165034)
(22)【出願日】2015年8月24日
(71)【出願人】
【識別番号】593222805
【氏名又は名称】アスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】武満 知彦
(72)【発明者】
【氏名】出口 寛
(72)【発明者】
【氏名】樋口 励
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA03
3D050BB04
3D050DD01
3D050EE09
3D050EE15
3D050EE18
3D050FF03
3D050FF06
3D050JJ07
(57)【要約】
【課題】 従動輪を有する人力推進車に駆動輪を設けたり、従動輪を全て駆動輪にした人力推進車では、駆動輪が電気モータにより駆動される。しかも、電気モータは同時搭載しているバッテリーから給電されるが、該バッテリーが充電切れを生ずると車の負荷が大きくなり、人力推進が困難になった。
【解決手段】 従動輪14を有する人力推進車にモータ駆動の駆動輪26を搭載するが、この駆動輪26はレバー操作により該駆動輪26が地面から簡単に離れるため、バッテリーの充電切れが生じても軽く移動させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の従動輪(14)を有する人力推進車であって、
前記人力推進車の本体(12)に枢支されて、上下に揺動可能なスイング部材(22)と、
前記スイング部材(22)に設けられ、該スイング部材(22)の下降位置で地面に接触する駆動輪(26)と、
前記スイング部材(22)および前記本体(12)の夫々に接続されて、前記駆動輪(26)を常に接地方向へ付勢する弾性部材(50)と、
前記スイング部材(22)に設けられて、該スイング部材(22)を選択的に上昇位置で保持する切換ハンドル(58)とからなる
ことを特徴とする人力推進車。
【請求項2】
前記駆動輪(26)の駆動源は電気モータ(28)であって、前記電気モータ(28)の回転軸は前記駆動輪(26)に直接接続されている請求項1記載の人力推進車。
【請求項3】
前記駆動輪(26)の駆動源は電気モータ(28)であって、前記電気モータ(28)の回転軸は動力伝達部材(30)を介して前記駆動輪(26)に間接的に接続されている請求項1記載の人力推進車。
【請求項4】
前記電気モータ(28)へ給電するバッテリーおよび電気コントローラ(40)が前記本体(12)に設けられている請求項1〜3の何れか一項に記載の人力推進車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば手押し車のように従動輪を有する人力推進車にモータ駆動の駆動輪を設け、レバーによる切換操作で該駆動輪が地面への接触および離脱を選択し得るようにした人力推進車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の従動輪を備え、人力で押したり引いたりして地面や床を移動させる人力推進車が広く実用化されている。例えば、老人の歩行を補助するため4つの従動輪を備えた手押し車や、病院・学校等で使用される配膳車、その他郵便局やホテル等で使われる手荷物車等がある。
【0003】
これらの人力推進車は、基本的には4つの従動輪を備え、荷物等の負荷が積載されるものであるが、当然のことながら自力推進は出来ない。しかし、積載される荷物等の負荷が大きい場合は、前記従動輪の一部または全部に替え電気モータによる駆動輪を採用し、これにより人力推進を補助する車種が実用化されている。例えば、前述した配膳車は食器用ラックを多段に備えているが、各ラックには調理済みの御膳が多数載置されるので、これを人力で押して運搬するのは大きな負担になる。このため、例えば配膳車における前の2輪は従動輪とし、後の2輪は電気モータによる駆動輪とすることで、人力での推進を補助するものが普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−47943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述した電気モータで駆動される駆動輪は、常に地面や床に接触しているので、該駆動輪を停止させるには前記電気モータへの給電をオフすることで行っている。従って、当該車両に搭載したバッテリーの充電量が低下したような場合は、駆動輪は地面に接した状態で停止するから、これを充電ポートまで移動させるには手押しにならざるを得ない。このとき、回転を停止している駆動輪は地面に対し大きな抵抗を生ずるので、当該台車の移動は極めて困難になる。勿論、電気モータと駆動輪との間にクラッチを介在させ、該クラッチを解放することで抵抗を軽減させる手段はあるが、一般にコストが嵩んでしまう。
【0006】
なお、「手動推進車両」に関する特開2015−47943号公報には、老人の歩行を補助する歩行補助車に、電気モータで駆動される駆動輪を設ける技術が開示されている。この歩行補助車によれば、老人が上り坂を歩行するような場合に、前記駆動輪の回転により歩行を積極的に補助するから非常に有用である。しかし、このような歩行補助車では電気モータへの給電にバッテリーを搭載しているが、該バッテリーの充電切れは常に予想されるところである。そして、バッテリーの充電切れで駆動輪が回転しなくなったときの困難性は、前述した配膳車等の比ではない。
【0007】
本発明は、従動輪だけを有する人力推進車や、従動輪と駆動輪とを混在させた人力推進車が内在している前記欠点に鑑み、これを克服するべく提案されたものであって、仮にバッテリー切れになっても駆動輪を地面から離間させることで、大きな抵抗を受けることなく人力推進(手押しや手引き)をなし得るようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、複数の従動輪を有する人力推進車であって、前記人力推進車の本体に枢支されて、上下に揺動可能なスイング部材と、前記スイング部材に設けられ、該スイング部材の下降位置で地面に接触する駆動輪と、前記スイング部材および前記本体の夫々に接続されて、前記駆動輪を常に接地方向へ付勢する弾性部材と、前記スイング部材に設けられて、該スイング部材を選択的に上昇位置で保持する切換ハンドルとからなることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、高価なクラッチ等の動力伝達遮断手段を使用することなく、簡単に駆動輪を地面に接触させたり、離間させたりすることができて有意義である。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記駆動輪の駆動源は電気モータであって、前記電気モータの回転軸は前記駆動輪に直接接続されていることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、電気モータと駆動輪が直結されているので構造が簡単であり、該モータからの動力伝達損失が殆どない。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記駆動輪の駆動源は電気モータであって、前記電気モータの回転軸は動力伝達部材を介して前記駆動輪に間接的に接続されていることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、電気モータの種類によっては駆動輪と直結するのに適しないものがあるが、ベルトやチェーン等の動力伝達部材を介在させるときは該モータの種類を選ぶことがない。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る人力推進車によれば、高価なクラッチ等の動力伝達遮断手段を使用することなく、簡単に駆動輪を地面や床面に接触させたり、離間させたりすることができて簡便であり、また有意義である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る人力推進車の概略構成を示す側面図である。
図2図1に示す人力推進車を後方から観察した概略斜視図である。
図3図2に示す人力推進車に関して、駆動輪を設けたスイング部材が本体に枢支されている状態を示す要部斜視図である。
図4図2に示す人力推進車に関して、駆動輪を備えると共に一端が本体に枢支されたスイング部材と前記本体とを接続する弾性部材の関係を示すと共に、この弾性部材を介して前記スイング部材を昇降させる切換えレバーの取付け状態を併せて示す斜視図である。
図5】スイング部材に設けられる駆動輪と電気モータとが直結される型式であることを示す概略説明図である。
図6】スイング部材に設けられる駆動輪と電気モータとが間接的に接続される型式であることを示す概略説明図である。
図7】実施例に示す電気モータを制御する回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る人力推進車につき、人力による手押し車(歩行補助車)を例に挙げて、添付図面を参照して説明する。図1および図2に示す手押し車10の基本構成は既存の車両であって、金属パイプのフレームを組合せて構成した本体12の脚部には、前後に自由回転する従動輪14が枢支されている。実施例では、前の各従動輪14はダブルホイールになっていて、手押し時の安定性を確保してある。前記フレーム本体12の後方に立ち上がるハンドル部12aには手掛け部12bが設けられ、前方には腰掛け用の座面16および該座面16が蓋になるバスケット18が設けられている。
【0014】
先に説明したところは、既存の手押し車の基本構造であるが、本発明の実施例では、電気モータで駆動される駆動輪を備えるスイング部材が、該手押し車に取り付けられている。すなわち、図1図3に示すように、前記フレーム本体12の前方には、該本体12の左右を横方向に接続する横梁20が設けられている。この横梁20には、板材からなるスイング部材22の一端がヒンジ24により接続されて、ヒンジ24を中心に斜め上方および下方へ揺動し得るようになっている。
【0015】
図1図3に示すように、前記スイング部材22の下面には車支持部25が固定され、この車支持部25に電気モータ28で駆動される駆動輪26が取り付けられている。実施例では、前記駆動輪26は1個であって、該駆動輪26の直径は、前記スイング部材22を上昇させると該駆動輪26が地面から離れ、また該スイング部材22を下降させると地面に接触する寸法に設定されている。なお、本発明で前記駆動輪26が接触する対象は、屋外の地面や家屋等の床面であるが、これら「地面」や「床面」を併せて、本明細書では「地面」と称する。
【0016】
前記駆動輪26は、図5に示すように、電気モータ28の回転軸に直結させた所謂直接駆動方式が採用されている。但し、図6に示すように、前記駆動輪26と前記電気モータ28の回転軸との間に、例えば無端ベルトやチェーンのような動力伝達部材30を介在させて、該駆動輪26を間接的に駆動するようにしてもよい。
【0017】
前記電気モータ28は、充電式のバッテリーにより給電され、このバッテリーは図1の電装箱32に収納されている。また前記電装箱32には、図7に示すモータ制御用のコントローラ40が併せて収納されている。なお、前記電気モータ28としては、DCブラシモータやDCブラシレスモータが好適に採用される。図7に示すように、前記電気モータ28の回転軸にはエンコーダ38が直結され、検出された回転数はCPUコントローラ40中のカウンタ42に読み込まれる。また前記フレーム本体12には、前記手押し車10の地面に対する傾きを検出する傾斜センサ44が設けられ、該傾斜センサ44が検出した傾き角に関する信号は前記コントローラ40に入力される。すなわち、前記傾斜センサ44は地面に対する手押し車10の傾きをリアルタイムで検出し、上り勾配または下り勾配に応じて、前記電気モータ28の回転速度や回転トルクを制御して使用者の負荷を補助する。
【0018】
なお、図2に示すように、前記手掛け部12bには在来の手動ブレーキのレバー46が設けられ、またこれとは別に、前記電気モータ28への給電をON・OFFするグリップスイッチ48が設けられている。前記グリップスイッチ48としては、上下の電極をテープで挟んだテープスイッチや、在来の押しボタンスイッチ等から選択される。そして、前記グリップスイッチ48を握る(または押す)と、前記電気モータ28への給電が開始されて前記駆動輪26が回転し、また握りを解放(または離す)すると、該電気モータ28への給電が絶たれて、該駆動輪26が安全に回転を停止する。
【0019】
図2および図4に示すように、弾性部材50が前記スイング部材22の後端部と前記フレーム本体12の中間部位とに介在し、常には該スイング部材22を下方へ弾力的に付勢することで、前記駆動輪26を地面に接触(接地)させている。この弾性部材50は、例えばピストンタイプのガス圧式シリンダであって、本体をなすシリンダ52とピストン54とからなり、該シリンダ52中に緩衝体として低圧ガスが封入してある。前記スイング部材22の後端上面にはサポート56が立設され、このサポート56に前記ピストン54の先端がピン57で接続されている。また前記シリンダ52の上端は、前記フレーム本体12に上下動自在に枢支した切換ハンドル58の端部にピン接続されている。そして、前記切換ハンドル58を押し上げると、該切換ハンドル58に接続したシリンダ52(弾性部材50)は上昇し、これにより前記ピストン54と共に前記スイング部材22は上昇して前記駆動輪26を地面から離間させる。また前記切換ハンドル58を押し上げると、前記弾性部材50は下降して前記スイング部材22を下降させるため、前記駆動輪26は地面に接触する。
【0020】
前記手押し車10を手で押して進む際に、操作者が前記グリップスイッチ48を握ると前記電気モータ28が回転して前記駆動輪26が回転する。すなわち前記手押し車10は、前記駆動輪26の回転により推進が補助されるので、操作者は快適に歩行することができる。殊に、前記バスケット18に荷物を積んだ場合のアシスト効果が大きい。また、坂を下る際は、前記電気モータ28に回生ブレーキがかかるので惰性で走行することがなく、極めて安全である。加えて、回生により前記電気モータ28で発電された電気は、前記バッテリーに再充電することが可能である。
【0021】
また、前記スイング部材22に駆動輪26および電気モータ28が一般的に搭載されているので、市販の歩行補助車等に該スイング部材22および電装箱32を取り付けるだけで使用できるから、低コストで広く普及させることが可能である。
【符号の説明】
【0022】
12 本体,14 従動輪,22 スイング部材,26 駆動輪,28 電気モータ,
30 動力伝達部材,40 コントローラ,50 弾性部材,58 切換ハンドル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7