【解決手段】鉄道車両1の車両中央部17に設けられた中央天井部121と、中央天井部121より鉄道車両1の第1車端部18側に設けられ、裏側に第1空調装置3を配置されて中央天井部121より高さを低くされた第1車端天井部122と、中央天井部121より鉄道車両1の第2車端部19側に設けられ、裏側に第2空調装置4を設置されて中央天井部121より高さを低くされた第2車端天井部124とを有すること、情報表示器5,6が、中央天井部121と第1車端天井部122との間に設けられた第1段差部123に設置された第1情報表示器5と、中央天井部121と第2車端天井部124との間に設けられた第2段差部125に設置された第2情報表示器6であることを特徴とする鉄道車両用天井構造2とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には、以下の問題があった。
例えば、地下鉄や新交通システムで使用される鉄道車両は、クーラが鴨居部付近の屋根構体に落とし込まれた形で取り付けられ、車体断面積を小さくされている。かかる鉄道車両は、鴨居部(天井面と側出入り口との間)が狭い。そのため、特許文献1に記載される情報表示器の設置構造では、情報表示器の設置スペースが足りないことがあった。
また、特許文献2記載の情報表示器の設置構造は、荷棚の下に座っている乗客に圧迫感を与えないために、小型のLCDを使用していた。小型のLCDには、小さい文字等しか表示できない。そのため、特許文献2記載の情報表示器の設置構造では、広く乗客に情報提供するために、たくさんの突起を荷棚に設けて小型LCDを設置しなければならず、手間やコストがかかっていた。
また、情報表示器を通路の天井に垂設する場合、天井が局所的に低くなるため、乗客に圧迫感を与えていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、天井が局所的に低くなることを防ぎ、2台の情報表示器でも乗客が情報を視認しやすい鉄道車両用天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の鉄道車両用天井構造は、次の構成を有している。
(1)情報を表示する表示画面を備える情報表示器が設置された鉄道車両用天井構造において、鉄道車両の車両中央部に設けられた中央天井部と、前記中央天井部より鉄道車両の第1車端部側に設けられ、裏側に第1機器を配置されて前記中央天井部より高さを低くされた第1車端天井部と、前記中央天井部より鉄道車両の第2車端部側に設けられ、裏側に第2機器を配置されて前記中央天井部より高さを低くされた第2車端天井部とを有すること、前記情報表示器が、前記中央天井部と前記第1車端天井部との間に設けられた第1段差部に設置された第1情報表示器と、前記中央天井部と前記第2車端天井部との間に設けられた第2段差部に設置された第2情報表示器であることを特徴とする。
ここで、第1及び第2機器とは、車両に搭載する機器をいい、例えば、空調装置、集電装置や集電装置に関連する機器等の屋上機器、補助電源装置や主制御装置や平滑リアクトルなどの基本機器、若しくは、放熱器や水タンクなどの付属機器等が第1及び第2機器に含まれる。また、第1及び第2機器は、同種(例えば双方空調装置)でも、異種(例えば一方が空調装置で、他方が集電装置)でも良い。
【0007】
上記構成では、第1及び第2車端天井部が、第1及び第2機器の設置により中央天井部より低く設けられ、第1及び第2車端天井部と中央天井部との間に設けられる第1及び第2段差部に第1及び第2情報表示器を設置するので、第1及び第2情報表示器の設置スペースが十分に確保される。
また、第1及び第2情報表示器は、縦幅が中央天井部と第1及び第2車端天井部との高低差程度(第1及び第2機器の厚さ程度)、横幅が鉄道車両の車幅程度となり、鴨居部に設置される場合より、表示画面のサイズが大きくなる。よって、第1及び第2情報表示器は、文字や図形等を大きく表示でき、第1及び第2車端部に乗っている乗客でも表示内容を視認しやすい。
また、例えば、第2車端部に立っている乗客は、第1情報表示器から離れているので、第1情報表示器を見る際に第2車端天井部に視線を遮られにくい。
更に、第1及び第2機器の設置により生じる第1及び第2段差部を利用して第1及び第2情報表示器を設置するので、天井が局所的に低くならず、乗客に開放感を与えることができる。
【0008】
(2)(1)に記載する構成において、前記第1及び前記第2情報表示器は、前記表示画面を傾斜させた状態で前記第1及び前記第2段差部に設置されていることが好ましい。
【0009】
上記構成では、第1及び第2情報表示器は、表示画面を垂直に設ける場合より、表示画面の縦幅を大きくして表示画面のサイズを大きくできる。よって、第1及び第2車端部に立っている乗客が、第1及び第2情報表示器に表示される表示内容を視認しやすい。
【0010】
(3)(1)又は(2)に記載する構成において、前記第1及び前記第2情報表示器は、前記表示画面が第1表示画面と第2表示画面で構成されていること、前記第1表示画面と前記第2表示画面を連動させて表示する表示制御手段を有することが好ましい。
【0011】
上記構成では、例えば、第1表示画面と第2表示画面により1つの情報(例えば停車駅名)を拡大表示すれば、第2車端部に乗車する乗客が、第1情報表示器の表示内容を視認しやすい。また例えば、関連する情報(例えば停車駅名、又は、停車駅名とその周辺地図)を第1表示画面と第2表示画面に表示すれば、情報を乗客に見やすく、分かりやすく提供できる。
【発明の効果】
【0012】
よって、本発明によれば、天井が局所的に低くなることを防ぎ、2台の情報表示器でも乗客が情報を視認しやすい鉄道車両用天井構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る鉄道車両用天井構造の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る鉄道車両用天井構造2(以下「天井構造2」と略記する。)を備える鉄道車両1を示す。
図2に、鉄道車両の比較例を示す。
図3及び
図4に、
図1の鉄道車両1における乗客M1,M2の視界を示す。
図5と
図6と
図7と
図8に、表示画面例を示す。以下の説明では、まず、最初に鉄道車両1と天井構造2の概略構成を説明する。次に、情報表示動作を説明する。次に、被視認性について説明する。最後に天井構造2の作用効果を説明する。
【0015】
(鉄道車両1と天井構造2の概略構成)
図1に示すように、鉄道車両1は、台枠1Aと屋根構体1Bと一対の側構体1Cと第1及び第2妻構体1E,1Fで車体を構成され、車室11を備える。一対の側構体1Cには、前方開閉扉14と後方開閉扉15と窓16が対称に設けられている。鉄道車両1は、第1及び第2空調装置3,4(第1及び第2機器の一例)を備え、車室11の温度や湿度等が調整される。第1空調装置3は、屋根構体1Bの第1車端部18側に落とし込まれた形で設置されている。また、第2空調装置4は、屋根構体1Bの第2車端部19側に落とし込まれた形で設置されている。そのため、鉄道車両1は、第1及び第2空調装置3,4の外形と屋根構体1Bの外形が近似し、車体断面積が小さくされている。また、本実施形態の鉄道車両1は、車長が短くされている。このような鉄道車両1は、運転室を備える鉄道車両や同様に構成された鉄道車両1と連結され、2両又は3両以上に編成される。尚、運転室を備える鉄道車両も、鉄道車両1と同様の天井構造2を備える。
【0016】
車室11の天井12は、車室11を極力広くして乗客に開放感を与えるために、第1空調装置3と第2空調装置4との間の中央天井部121が屋根構体1Bに近づけて高くされている。そして、天井12は、第1及び第2車端部18,19側に位置する第1及び第2車端天井部122,124が、第1及び第2空調装置3,4の底面に合わせて設けられている。このように、第1及び第2車端天井部122,124が中央天井部121より低い。よって、第1車端天井部122と中央天井部121との間には第1段差部123が形成される。また、第2車端天井部124と中央天井部121との間には第2段差部125が形成される。
【0017】
第1段差部123は、第1車端天井部122から中央天井部121へ向かって勾配を大きくするように傾斜している。第1情報表示器5は、フラットな形状をなし、第1段差部123の傾斜面に設置されている。そのため、
図3及び
図4に示すように、第1情報表示器5は、表示画面50を斜め下向きに傾斜させた状態で第1段差部123に設置され、表示画面50が大きくされている。
【0018】
ここで、
図1に示すように、表示画面50の傾斜角度θは、第1車端天井部122に対して40度〜60度であることが望ましい。第2車端部19に乗車する乗客M1が、第2車端天井部124に視界を遮られないように第1情報表示器5を視認するためである。本実施形態では、傾斜角度θを45度とする。
【0019】
図3及び
図4に示すように、表示画面50は、第1表示画面51と第2表示画面52が、あたかも1画面であるかのように近接した状態で車幅方向に並んで配置されている。1つの情報を第1及び第2表示画面51,52により違和感なく表示するためである。
【0020】
第2段差部125には第2情報表示器6が設置されている。第2段差部125及び第2情報表示器6は、第1段差部123及び第1情報表示器5と同様に構成されるので、説明を省略する。
【0021】
第1及び第2情報表示器5,6は、例えば天井裏に設置された表示制御手段7に接続され、表示動作を制御される。本実施形態では、鉄道車両1に表示制御手段7を設置するが、他の鉄道車両に設置される表示制御手段7に第1及び第2情報表示器5,6を接続しても良い。
【0022】
尚、本実施形態の鉄道車両1は、車長が14.6m、車幅が2840mm、中央天井部121の床13からの高さH1は2250mm、第1及び第2車端天井部122,124の床13からの高さH2は2050mmとする。また、第1及び第2表示画面51,52は、それぞれ、縦幅Dが250mm、横幅Wが430mmの大きさである。
【0023】
(情報表示動作)
次に、第1及び第2情報表示器5,6の情報表示動作について説明する。第1及び第2情報表示器5,6の動作は同様である。ここでは第1情報表示器5の動作を中心に説明し、第2情報表示器6の動作は説明を適宜割愛する。
図5、
図6、
図7、
図8に示すように、第1情報表示器5は、表示制御手段7により、第1及び第2表示画面51,52が連動するように表示動作を制御される。
【0024】
例えば、
図5に示すように、第1及び第2表示画面51,52は、1つの情報を連動して表示する。具体的には、例えば、第1表示画面51は「次は、」と拡大表示し、第2表示画面52は「名古屋」を拡大表示する。これにより、次の停車駅名を一方の画面だけで表示する場合より大きて見やすく表示できる。
【0025】
また例えば、
図6に示すように、第1及び第2表示画面51,52は、同じ内容を表示する。具体的には、例えば、第1及び第2表示画面52は、「次は、名古屋」と表示する。これにより、乗客の死角範囲を減らすことができる。
【0026】
また例えば、
図7に示すように、第1及び第2表示画面51,52は、別内容の関連情報を表示する。具体的には、例えば、第2表示画面52は、次の停車駅名を告知する「次は、名古屋」とのメッセージを表示する。そして、第1表示画面51は、次の停車駅周辺の地図を表示する。これによれば、多様な情報を分かりやすく表示できる。
【0027】
また例えば、
図8に示すように、第1及び第2表示画面51,52は、1つの情報を2言語で交互に表示する。例えば
図8に示すように、第1表示画面51には日本語で「次は、名古屋」、第2表示画面52には英語で「NEXT NAGOYA」と表示し、次の停車駅名を2言語表示する。日本語表示も英語表示も文字が大きく表示されるので、視認性が良い。更に、一定時間間隔で第1及び第2表示画面51,52の2言語表示を交互に切り換えて表示すれば、死角範囲を減らして視認性を向上させることができる。
【0028】
(視認性について)
次に、
図1に示す本実施形態の鉄道車両1と
図2に示す比較例の鉄道車両101における情報の視認性を説明する。鉄道車両101は、第1及び第2情報表示器5,6の設置構造を除き、鉄道車両1と同様に構成されている。鉄道車両101は、中央天井部121に突起1121が垂設され、その突起1121の車長方向両側面に傾斜が設けられている。突起1121の傾斜は、鉄道車両1の第1及び第2段差部123,125と傾斜角度θと同様とする。突起1121は、第1車端部18側の傾斜面に第1情報表示器5が表示画面50を第1車端部18側へ向けるように設置されている。また、第2車端部19側の傾斜面には、第2情報表示器6が表示画面を第2車端部19側へ向けるように設置されている。乗客M1〜M3の身長は、180cmとする。
【0029】
図2のL3は、乗客M3が第2情報表示器6を視認する際の視線を示す。第2妻構体1F付近に立っている乗客M3は、例えば次の停車駅を確認する場合、第2情報表示器6を見る。鉄道車両101は、乗客M3の頭上にある第2車端天井部124が中央天井部121より低くなっている。そのため、乗客M3は、第2情報表示器6を見上げたときに、視線L3が第2段差部125の角部126に遮られ、第2情報表示器6の表示内容を視認できない。
【0030】
図1のL1,L2は、乗客M1,M2が第1情報表示器5を視認する際の視線を示す。第2妻構体1F付近に立っている乗客M1は、例えば次の停車駅を確認する場合、第1情報表示器5を見る。この場合、乗客M1は、視線L1が第2段差部125の角部126に遮られず、第1情報表示器5の表示内容を視認できる。その理由は、第1情報表示器5と乗客M1との間の距離L11が、
図2に示す第2情報表示器6と乗客M3との間の距離L12より長いため、乗客M1が第1情報表示器5を見上げる角度(乗客M1の目の高さにおける水平線と視線L1とがなす角度)が、乗客M3が第2情報表示器6を見上げる角度(乗客M3の目の高さにおける水平線と視線L3とがなす角度)より小さいからである。
【0031】
第1情報表示器5の表示画面50(第1及び第2表示画面51,52)は、斜め45度下向きに傾斜している。そのため、乗客M1が、第1情報表示器5から遠く離れていても、角部126に視線L1を遮られにくい。
【0032】
また、表示画面50(第1及び第2表示画面51,52)の縦幅Dは、垂直に配置される場合の縦幅(例えば180mm)に対して、約1.4倍になる(例えば250mm)。これに加え、第1及び第2表示画面51,52の横幅Wは、鉄道車両1の車幅(2840mm)の範囲内で大きくでき、鴨居部や荷棚に設置される情報表示器より大きくされる。よって、表示画面50(第1及び第2表示画面51,52)は、例えば鴨居部や荷棚に設置される情報表示器の表示画面より、画面サイズが縦幅と横幅の両方に大きくなる。画面サイズが大きくなると、表示される文字や図形も当然大きくなる。従って、乗客M1と第1情報表示器5との距離L11が、乗客M3と第2情報表示器6との距離L12より長くても、表示画面50(第1及び第2表示画面51,52)の表示内容を視認しやすい。
【0033】
しかも、第1情報表示器5は、例えば
図5に示すように、第1及び第2表示画面51,52に一つの情報(次の停車駅名)を拡大表示する。この場合、停車駅名は、第1及び第2表示画面51,52の各々に表示される場合より、大きくて太い文字で表示される。そのため、第2車端部19に立っている乗客M1は、第1情報表示器5から離れていても、第1及び第2表示画面51,52の表示内容を視認しやすい。
【0034】
更に、鉄道車両1は、車長が14.6mであり、一般的な鉄道車両の車長20mより5.4m短い。そのため、鉄道車両1では、第1情報表示器5と乗客M1との間の距離L11が、一般的な鉄道車両より短くなる。よって、乗客M1は、第1及び第2表示画面51,52の表示内容を見やすい。
【0035】
尚、第1及び第2情報表示器5,6は、第1及び第2段差部123,125に対して車幅方向に設置され、乗客がどの角度からも見やすい。そのため、第1及び第2情報表示器5,6の2台だけでも、全ての乗客が第1及び第2情報表示器5,6の表示内容を視認できる。よって、天井構造2によれば、第1及び第2情報表示器5,6を設置するためのコストや手間を軽減できる。
【0036】
ここで、
図1及び
図4に示すように、第1情報表示器5は、一方の側構体1Cに設けられた後方開閉扉15付近に立っている乗客M2によっても、視認される(
図1の視線L2参照)。例えば、車室11が混み合う場合、乗客M2は、車両中央部17に立っている乗客の頭等により、第2表示画面52が見えないことがある。この場合でも、
図6に示すように、同じ情報(例えば次の停車駅名)を第1及び第2表示画面51,52に各々表示すれば、乗客M2は第1表示画面51の表示内容を見て次の停車駅等を知ることができる。
【0037】
また、例えば
図7に示すように、第1情報表示器5は、第1表示画面51に次の停車駅周辺の地図を表示し、第2表示画面52に次の停車駅名を表示する。この場合、乗客M1,M2は、次の停車駅を確認すると共に、その周辺地図を頭に入れて降車後の行動をイメージできる。このことは、特に、旅行者や出張者など、その土地に関する知識が乏しい人にとって便利である。
【0038】
また、例えば
図8に示すように、第1情報表示器5は、第1及び第2表示画面51,52に同じ内容の情報を日本語と英語で表示する。これによれば、例えば、乗客M1,M2が英語しか理解できない場合でも、乗客M1,M2は、拡大表示される英語により表示内容を理解できる。また例えば、車室11が混み合い、乗客M2が第1表示画面51しか見えない場合でも、第1及び第2表示画面51,52の日本語表示と英語表示を一定時間間隔で交互に切り替えれば、乗客M2は、第1表示画面51の英語表示により表示内容を理解できる。これらのことは、特に、外国人旅行者やビジネスマンにとって便利である。
【0039】
ところで、
図1に示すように、鉄道車両1は、第1及び第2空調装置3,4の取り付けにより発生した天井12の第1及び第2段差部123,125に第1及び第2情報表示器5,6を設置している。そのため、鉄道車両1は、
図2に示す鉄道車両101のように、わざわざ中央天井部121に突起1121を設けて第1及び第2情報表示器5,6を設置する必要がなく、天井12が局所的に低くならない。特に、小型の鉄道車両1は、第1及び第2車端天井部122,124の高さH2が中央天井部121の高さH1より200mm低く設けられ、ただでさえ車室11が狭く感じる。このような鉄道車両1において天井12に局所的な突出部分を設けないことは、車室11を少しでも広げて乗客に開放感を与える上で、非常に効果的である。
【0040】
(天井構造2の作用効果)
以上説明したように、本実施形態の天井構造2は、情報を表示する表示画面50を備える情報表示器5,6が設置された天井構造2において、鉄道車両1の車両中央部17に設けられた中央天井部121と、中央天井部121より鉄道車両1の第1車端部18側に設けられ、裏側に第1空調装置3を配置されて中央天井部121より高さを低くされた第1車端天井部122と、中央天井部121より鉄道車両1の第2車端部19側に設けられ、裏側に第2空調装置4を設置されて中央天井部121より高さを低くされた第2車端天井部124とを有すること、情報表示器5,6が、中央天井部121と第1車端天井部122との間に設けられた第1段差部123に設置された第1情報表示器5と、中央天井部121と第2車端天井部124との間に設けられた第2段差部125に設置された第2情報表示器6であることを特徴とする。
【0041】
上記構成では、第1及び第2車端天井部122,124が、第1及び第2空調装置3,4の設置により中央天井部121より低く設けられ、第1及び第2車端天井部122,124と中央天井部121との間に設けられる第1及び第2段差部123,125に第1及び第2情報表示器5,6を設置するので、第1及び第2情報表示器5,6の設置スペースが十分に確保される。
また、第1及び第2情報表示器5,6は、縦幅Dが中央天井部121(本実施形態では高さ2250mm)と第1及び第2車端天井部122,124(本実施形態では高さ2050mm)との高低差(本実施形態では200mm)程度(第1及び第2空調装置3,4の厚さ程度)、横幅Wが鉄道車両1の車幅(本実施形態では2840mm)程度となり、鴨居部に設置される場合より、表示画面50のサイズが大きくなる。よって、第1及び第2情報表示器5,6は、文字や図形等を大きく表示でき、第1及び第2車端部18,19に乗っている乗客M1でも表示内容を視認しやすい。
また、例えば、第2車端部19に立っている乗客M1は、第1情報表示器5から離れているので、第1情報表示器5を見る際に第2車端天井部124に視線L1を遮られにくい。
更に、第1及び第2空調装置3,4の設置により生じる第1及び第2段差部123,125を利用して第1及び第2情報表示器5,6を設置するので、天井12が局所的に低くならず、乗客M1,M2に開放感を与えることができる。
【0042】
また、天井構造2では、第1及び第2情報表示器5,6は、表示画面50を傾斜させた状態で第1及び第2段差部123,125に設置されているので、表示画面50を垂直に設ける場合より、表示画面50の縦幅Dを大きくして表示画面50のサイズを大きくできる。よって、第1及び第2車端部18,19に立っている乗客が、第1及び第2情報表示器5,6に表示される表示内容を視認しやすい。
【0043】
また、天井構造2は、第1及び第2情報表示器5,6は、表示画面50が第1表示画面51と第2表示画面52で構成されていること、第1表示画面51と第2表示画面52を連動させて表示する表示制御手段7を有することを特徴とする。かかる天井構造2は、例えば
図5に示すように、第1表示画面51と第2表示画面52とにより1つの情報(例えば次の停車駅名)を拡大表示すれば、第2車端部19に乗車する乗客M1が第1情報表示器5の表示内容を視認しやすい。また例えば
図6及び
図7に示すように、関連する情報(例えば停車駅名、又は、停車駅名とその周辺地図)を第1表示画面51と第2表示画面52に表示すれば、情報を乗客に見やすく、分かりやすく提供できる。
【0044】
よって、本発明によれば、天井12が局所的に低くなることを防ぎ、第1及び第2情報表示器5,6の2台でも乗客が情報を視認しやすい天井構造2を提供することができる。
【0045】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
(1)例えば、上記実施形態では、例えば、第1段差部123の傾斜面にフラット形状の第1情報表示器5を設置することにより、第1及び第2表示画面51,52を傾斜させた。これに対して、第1段差部123を垂直にし、第1情報表示器5の形状を台形形状にして第1及び第2表示画面51,52を傾斜させるようにしても良い。
【0046】
(2)例えば、上記実施形態では、表示画面50を第1及び第2表示画面51,52の2つで構成したが、1画面で構成しても良い。
【0047】
(3)例えば、上記実施形態では、第1及び第2車端部18,19の屋根構体1Bに形成した開口部に第1及び第2空調装置3,4を落とし込む形で屋根構体1Bに埋設したが、屋根構体1Bの第1及び第2車端部18,19に対応する部分だけを低くして、その低くした部分に第1及び第2空調装置3,4を取り付けても良い。この場合にも、第1及び第2車端天井部122,124は、裏側に第1及び第2空調装置3,4を配置されて中央天井部121より高さを低くされ、第1及び第2車端天井部122,124と中央天井部121との間に第1及び第2段差部123,125が設けられ、その第1及び第2段差部123,125に第1及び第2情報表示器5,6が設置される。
【0048】
(4)例えば、上記実施形態では、第1及び第2車端天井部122,124の高さが、第1及び第2空調装置3,4の設置により中央天井部121より低くなっている。しかし、例えば、第1及び第2車端部18,19の屋根構体1Bを切り取って集電装置とその関連機器(第1及び第2機器の一例)を第1及び第2車端天井部122,124の裏側に配置したために、第1及び第2車端天井部122,124の高さが中央天井部121より低くなっていても良い。また例えば、車両の低床化のために、補助電源装置や主制御装置や平滑リアクトルなどの基本機器(第1及び第2機器の一例)を第1及び第2車端天井部122,124の裏側に配置することで、第1及び第2車端天井部122,124が中央天井部121より低くなっていても良い。この場合、薄型の空調装置を中央天井部121の裏側に設置しても良い。更に、放熱器、水タンクなどの付属機器(第1及び第2機器の一例)を、第1及び第2車端天井部122,124の裏側に配置したために、第1及び第2車端天井部122,124の高さが中央天井部121より低くなっていても良い。
【0049】
このように、第1及び第2車端天井部122,124の裏側に設置される第1及び第2機器は、鉄道車両に搭載される機器であれば良い。その中でも、車端部屋根上に搭載されることの多い機器は、第1及び第2機器の対象になりやすい。それに該当するものとしては、空調装置や集電装置が挙げられる。その理由は、以下の通りである。
【0050】
空調装置は、例えば、地下鉄などで建設費低減のためにトンネル断面寸法を小さくしている路線向けの車両の場合、その取り付けのために車両全体の屋根を低くすると車室の居住性を低下させてしまう。そのため、空調装置は、上記実施形態のように、屋根構体に形成した開口部に落とし込んだ形で取り付けられる他、空調装置の取付部の屋根だけを低くしてその上に取り付けられる。これら何れの場合でも、空調装置の取付部において、天井が部分的に低くなる。その場合、車両の中央部の天井を低くすると特に圧迫感が大きいため、空調装置を車端部屋根構体上に設け、車端部のみ車室内の天井面を低くするという場合が殆どである。また、そのような場合は、空調装置を前後2台に分けることで各空調装置の全長を短くして、空調装置の取付部として天井が低くなる範囲を極力車端部のみに限定することもしばしば行われている。よって、第1及び第2機器の具体例として、空調装置が該当することは十分に考えられる。
【0051】
また、集電装置は、架線電車線方式の電車においては屋根の上に取り付けることになる。集電装置は、狭いトンネルを含む区間などの電車線が低く張られている区間を含んだ路線で使用される車両の場合、集電装置を折り畳んだ状態でも電車線との絶縁距離を十分保つように、集電装置の取付部の屋根だけを低くしてその上に取り付けられる。また、集電装置の車体長手方向の取付位置については、その舟体(架空電車線と摺動する部分)が極力軌道中心線と一致して動くように、なるべく台車中心の真上近くに取り付けることが一般的である。この場合、例えばシングルアーム式パンタグラフなどの場合には、付属の機器を含めると、台車中心付近から車端にかけての屋根上に集電装置とその関連機器や配線・配管が並ぶことになる。よって、集電装置を車両の車端部に取り付け、その取付部分の屋根を低くしている事例はしばしば見られ、第1及び第2機器の具体例として、集電装置とその関連機器が該当することは十分に考えられる。
【0052】
(5)例えば、トンネル等の制約を受けない場合には、第1及び第2車端天井部122,124の高さが通常の車室天井高さになるように、第1及び第2空調装置3,4を屋根構体1Bより上方に突出した状態で第1及び第2車端部18,19の屋根に取り付ける一方、車両中央部に設置される機器を床下に設置することで中央天井部121を通常の車室天井高さより高くしてもよい。これによれば、車室11を広く確保できる。この場合にも、第1及び第2車端天井部122,124が裏側に第1及び第2空調装置3,4を配置されて中央天井部121より低くなり、第1及び第2車端天井部122,124と中央天井部121との間に第1及び第2段差部123,125が設けられ、その第1及び第2段差部123,125に第1及び第2情報表示器5,6を設置できる。
【0053】
(6)例えば、屋根構体を車両限界いっぱいに高く配置し、第1及び第2車端部の屋根構体の内面に空調装置を吊り下げる形で取り付ける鉄道車両に、本願発明の鉄道車両用天井構造を適用しても良い。この場合、中央天井部を屋根構体の近くまで高くする一方(例えば2550mm)、第1及び第2車端天井部を空調装置の位置に合わせて中央天井部より低くすることにより(例えば2150mm)、中央天井部と第1及び第2車端天井部との間に第1及び第2段差部を形成し(例えば高低差400mm)、その第1及び第2段差部に第1及び第2情報表示器を設置しても良い。これによれば、第1及び第2段差部の高低差を上記実施形態より大きく確保でき、第1及び第2情報表示器の表示画面を大きくして視認性を向上させることが可能である。尚、空調装置は、室内機を天井裏に、空調装置の室外機を床下にそれぞれ設置し、室内機と室外機を側構体の内部に通した冷媒配管で接続し、室内機の熱を床下に排出するスプリット型のものであっても良い。この場合、室内機と室外機を一体にした空調装置よりも、第1及び第2車端天井部を高くして客室を広げることができる。