特開2017-43723(P2017-43723A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-43723(P2017-43723A)
(43)【公開日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】液状樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20170210BHJP
   C08K 3/02 20060101ALI20170210BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20170210BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20170210BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20170210BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170210BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K3/02
   C08K5/00
   C09J201/00
   C09J11/04
   C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-168474(P2015-168474)
(22)【出願日】2015年8月28日
(71)【出願人】
【識別番号】515237120
【氏名又は名称】吹田 浩記
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】吹田 浩記
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002BB011
4J002BB201
4J002BC021
4J002BC031
4J002BG031
4J002CF001
4J002CG001
4J002CL001
4J002EA006
4J002EA016
4J002EA026
4J002EC016
4J002EE026
4J002EH036
4J002FD206
4J002GJ00
4J040CA071
4J040CA081
4J040DA001
4J040DB031
4J040DB041
4J040DF041
4J040DF051
4J040ED001
4J040EG001
4J040EL021
4J040HA086
4J040HB02
4J040HB03
4J040HB08
4J040HB18
4J040HB24
4J040JA01
4J040KA23
(57)【要約】
【課題】種々の用途に使用でき、加熱時の引火性が低下した状樹脂組成物を提供する。
【解決手段】溶媒成分に樹脂成分を溶解した液状樹脂組成物であって、前記溶媒成分が液体臭素を含み、かつ前記樹脂成分が前記液体臭素に可溶な熱可塑性樹脂を含む、液状樹脂組成物。該溶媒成分は、液体臭素と共に、有機溶剤を含むことができる。該液状樹脂組成物を含む接着剤により接着された接着物および接着方法、並びに繊維を含む構造体に該液状樹脂組成物を含浸または付着させ、該組成物を固化させる繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒成分に樹脂成分を溶解した液状樹脂組成物であって、前記溶媒成分が液体臭素を含み、かつ前記樹脂成分が前記液体臭素に可溶な熱可塑性樹脂を含む、液状樹脂組成物。
【請求項2】
前記溶媒成分が前記液体臭素に相溶可能な有機溶剤をさらに含む、請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂成分0.1〜30重量%、前記液体臭素0.5〜60重量%、および前記有機溶剤35〜95重量%を含む、請求項2に記載の液状樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、スチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、及び変性ポリオレフィン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤が、芳香族炭化水素類、脂環式炭化水素類、鎖式飽和炭化水素類、酢酸エステル類、ケトン類、及びアルコール類よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の液状樹脂組成物。
【請求項6】
一の物品と、他の物品と、前記一の物品と前記他の物品との間に介在してこれらを接着する接着層とを含み、前記接着層が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液状樹脂組成物の固化層である、接着物。
【請求項7】
前記一の物品および他の物品の少なくとも表層部が同種または異種の熱可塑性樹脂からなる、請求項6に記載の接着物。
【請求項8】
前記一の物品と前記接着層との間に介在し、前記一の物品に含まれる熱可塑性樹脂と前記接着層に含まれる熱可塑性樹脂とが混在した第1層、および/または前記他の物品と前記接着層との間に介在し、前記他の物品に含まれる熱可塑性樹脂と前記接着層に含まれる熱可塑性樹脂とが混在した第2層をさらに含む、請求項7に記載の接着物。
【請求項9】
一の物品に請求項1〜5のいずれか一項に記載の液状樹脂組成物を塗布する工程と、前記一の物品の前記液状樹脂組成物が塗布された面に他の物品を密着させる工程と、前記液状樹脂組成物を固化させる工程とを含む、接着方法。
【請求項10】
繊維を含む構造体に請求項1〜5のいずれか一項に記載の液状樹脂組成物を含浸または付着させる工程と、前記液状樹脂組成物を固化させる工程と、を含む、繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状樹脂組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
臭素は、有機化合物や合成樹脂を臭素化または難燃化するための反応試薬として用いられることが一般的である。臭素の反応試薬以外の用途としては、例えば、主鎖にケトン結合を有する芳香族系重合体からなる成形体表面に臭素を接触させ、該成形体表面をエッチングする表面処理方法(特許文献1)、溶質を貯留する閉鎖圧力チェンバーと、溶剤を貯留する溶剤チェンバーと、これらの間に介在しかつ溶剤のみを透過させる半透性隔壁とを含み、静水圧エネルギーを発生させるシステムにおいて、溶剤として液体臭素を用い、かつ溶質としてNaCl、AlCl3、LiCl、溶剤−可溶性酸、塩基、無機酸の金属塩、有機酸の金属塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、糖類、コロイド浸透剤、無機又は有機重合体、糖類、アルコール及びその混合物を用いるエネルギー発生システム(特許文献2、請求項1、36〜37)、合成樹脂成形体の表面に臭素を付着させ、次いで無機過酸化物を接触させ、臭素と無機過酸化物との反応により合成樹脂成形体表面を活性化又は粗面化した後、無電解めっき法により合成樹脂成形体の表面にめっきを付けるめっき方法(特許文献3)などが提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の表面処理方法で用いられる臭素は液体ではなく、気体である。特許文献2のエネルギー発生システムは、溶剤チェンバー中の液体臭素を半透性隔壁を通して閉鎖圧力チェンバー中に移動させ、閉鎖圧力チェンバーの内圧を高めることにより静水圧エネルギーを発生させるものであり、液体臭素に溶質を溶解させた溶液を工業的に利用するものではない。特許文献3のめっき方法は、臭素と無機過酸化物との反応により樹脂成形体表面をエッチングするものであり、特許文献2のエネルギー発生システムと同様に、液体臭素に溶質を溶解させた溶液を工業的に利用するものではない。さらに、特許文献1〜3は、液体臭素に樹脂成分を溶解させることを一切開示しない。
【0004】
一方、熱可塑性樹脂を他の成分と共に有機溶剤に溶解させて得られた樹脂溶液は、従来から塗料、接着剤などとして用いられ、また、繊維強化樹脂成形体を作製する原料として用いられている。該樹脂溶液を例えば接着剤として用いる場合、該樹脂溶液を被塗体に塗布し、得られた塗膜を加熱乾燥させて固化層とすることが一般的である。しかしながら、該樹脂溶液は、引火の危険性が大きい有機溶剤を比較的多量に含んでいるため、塗膜を加熱乾燥させて固化層を形成する際に厳密な安全管理を実施する必要があり、工程の長時間化及び高コスト化の一因になっている。また、従来の樹脂溶液から形成された固化層は、被塗体表面に対する密着性が十分満足できる水準にはない。また、シアノアクリレートなどの、空気中の水分との反応により硬化する有機化合物を含む瞬間接着剤が多く用いられているが、接着力がより一層高い接着剤が望まれている。
【0005】
また、熱可塑性樹脂を含む繊維強化樹脂成形体を得るためには、一般的には、熱可塑性樹脂を200℃前後又はそれよりも高い温度に加熱して溶融させ、得られた溶融物を繊維構造体に含浸させることが必要である。しかし、熱可塑性樹脂の溶融物は比較的粘度が高いことから、繊維構造体への含浸が不均一または不十分になる場合があり、また、該溶融物は通常100℃以上の温度を有することから、ハンドリング性の点で良好なものとは言えない。また、上記樹脂溶液を繊維構造体に含浸させ、有機溶剤を加熱により除去する場合には、前述のように引火の危険性が大きいため、極めて厳格な工程管理が必要になり、繊維強化樹脂成形体の製造コストを低く抑えることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−118417号公報
【特許文献2】特表2006−528740号公報
【特許文献3】特開平2−277778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂を含み、種々の用途に使用できる液状樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂を溶解させる溶媒として、液体臭素を含む溶媒成分を用いることにより、多種類の熱可塑性樹脂を溶解可能であり、加熱などで溶媒を揮散させる際の引火の危険性が緩和され、熱可塑性樹脂の種類を選択すれば種々の用途に好適に使用できる液状樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)〜(5)の液状樹脂組成物、(6)〜(8)の接着物、(9)の接着方法、及び(10)の繊維強化樹脂成形体の製造方法を提供する。
【0010】
(1)溶媒成分に樹脂成分を溶解した液状樹脂組成物であって、溶媒成分が液体臭素を含み、かつ樹脂成分が液体臭素に可溶な熱可塑性樹脂を含む、液状樹脂組成物。
(2)溶媒成分が液体臭素に相溶可能な有機溶剤をさらに含む、上記(1)の液状樹脂組成物。
(3)樹脂成分0.1〜30重量%、液体臭素0.5〜60重量%、および有機溶剤35〜95重量%を含む、上記(2)の液状樹脂組成物。
(4)熱可塑性樹脂が、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、スチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、及び変性ポリオレフィン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記(1)〜(3)のいずれかの液状樹脂組成物。
(5)有機溶剤が、芳香族炭化水素類、脂環式炭化水素類、鎖式飽和炭化水素類、酢酸エステル類、ケトン類、及びアルコール類よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記(2)〜(4)のいずれかの液状樹脂組成物。
(6)一の物品と、他の物品と、一の物品と他の物品との間に介在してこれらを接着する接着層とを含み、接着層が、上記(1)〜(5)のいずれかの液状樹脂組成物の固化層である、接着物。
(7)一の物品および他の物品の少なくとも表層部が同種または異種の熱可塑性樹脂からなる、上記(6)の接着物。
(8)一の物品と接着層との間に介在し、一の物品に含まれる熱可塑性樹脂と接着層に含まれる熱可塑性樹脂とが混在した第1層、および/または他の物品と接着層との間に介在し、他の物品に含まれる熱可塑性樹脂と接着層に含まれる熱可塑性樹脂とが混在した第2層をさらに含む、上記(7)の接着物。
(9)一の物品に上記(1)〜(5)のいずれかの液状樹脂組成物を塗布する工程と、一の物品の液状樹脂組成物が塗布された面に他の物品を密着させる工程と、液状樹脂組成物を固化させる工程とを含む、接着方法。
(10)繊維を含む構造体に上記(1)〜(5)のいずれかの液状樹脂組成物を含浸または付着させる工程と、液状樹脂組成物を固化させる工程と、を含む、繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶媒成分として液体臭素を含み、かつ樹脂成分として液体臭素に溶解可能な熱可塑性樹脂を含む液状樹脂組成物が提供される。該液状樹脂組成物は、例えば、加熱しても引火の危険性が少なく、例えば、接着剤、塗料等として好適に使用でき、また、繊維強化樹脂成形体の製造にも利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液状樹脂組成物は、溶媒成分に樹脂成分を溶解させたものであり、溶媒成分として液体臭素および必要に応じて液体臭素に相溶可能な有機溶剤を含み、かつ、樹脂成分として液体臭素に可溶な熱可塑性樹脂を含む。好ましい一実施形態の液状樹脂組成物は、液体臭素、有機溶剤、および樹脂成分を含み、さらに好ましい一実施形態の液状樹脂組成物は、液体臭素0.5〜60重量%、有機溶剤35〜95重量%、および樹脂成分0.1〜30重量%を含む。以下、本発明の液状樹脂組成物の各成分についてさらに詳しく説明する。
【0013】
液体臭素は、常温液状で引火点を持たず、また、熱可塑性樹脂を溶解する能力が高いという特徴を有している。液体臭素が引火点を持たないことから、本発明の液状樹脂組成物における液体臭素の含有量が比較的少ない場合でも、該液状樹脂組成物の引火性を比較的大きく低下させることができるので、該液状樹脂組成物の塗膜または層を厳格な工程管理を行なうことなく加熱し、安全におよび低コストで固化させることができる。また、引火の危険性が少ないことから、塗膜または層の加熱温度を高めて固化層形成に要する時間を短くすることが可能になる。
【0014】
また、液体臭素を用いることにより、本発明の液状樹脂組成物を乾燥および固化させて形成される固化層(以下単に「固化層」と呼ぶことがある)の被塗物品または被接着物品(以下これらを単に「物品」と呼ぶことがある)表面に対する固化層の密着性を高めることができる。これは、例えば、液体臭素による物品表面に対するエッチング効果によるものであると考えられる。
【0015】
また、物品の少なくとも表層部が液体臭素に可溶な熱可塑性樹脂からなる場合(好ましくは液体臭素に可溶な熱可塑性樹脂の成形体である場合)は、物品に対して本発明の液状樹脂組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥すると、物品の表面に、該液状樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(樹脂成分A)からなる固化層が形成されると共に、液体臭素が物品の表層部の熱可塑性樹脂(樹脂成分B)の少なくとも一部を溶解することにより、樹脂成分A、Bが混在した接合層が形成される。接合層は、物品表面と固化層との間に介在し、固化層の物品に対する密着性を顕著に向上させるものと考えられる。なお、接合層はミクロンオーダーの領域で形成されるものと考えられるので、塗装品や接着品の外観や表面平滑性を損なうものではない。
【0016】
また、液体臭素の熱可塑性樹脂に対する溶解能力を利用して、2種以上の熱可塑性樹脂を溶解させ、アロイ化することにより、固化層に複数の特性や機能を付与することも容易である。
液体臭素としては、市販品を特に限定なく使用でき、再生品を用いてもよい。
【0017】
本発明の液状樹脂組成物では、溶媒成分として液体臭素のみを用いてもよいが、液体臭素は熱可塑性樹脂を溶解することによる粘度上昇が比較的大きいことから、液状樹脂組成物のハンドリング性などを考慮して、液体臭素の含有量は、液状樹脂組成物全量に対して、好ましくは0.5〜60重量%、より好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。
【0018】
液状樹脂組成物が前記範囲内の液体臭素を含有することにより、液状樹脂組成物のハンドリング性を良好に維持しながら、多くの種類の熱可塑性樹脂を十分に溶解させることが可能になり、液状樹脂組成物の用途が拡がる。また、加熱時における引火の危険性が緩和され、溶媒成分が有機溶剤のみからなる場合に比べてより高い温度での加熱が可能になるので、液状樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の固化層を比較的短時間で得ることができ、低コスト化を図ることができる。
【0019】
なお、液体臭素の含有量が0.5重量%未満では、本発明の液状樹脂組成物からなる固化層の各種物品に対する密着性が不十分になり、また、溶媒成分の熱可塑性樹脂の溶解能力、及び引火の危険性を緩和する効果が不十分になる傾向があり、60重量%を超えると、液状樹脂組成物の粘度上昇によるハンドリング性ひいては物品に対する塗布性の低下が大きくなり、液状樹脂組成物の応用範囲が狭まる傾向にある。
【0020】
有機溶剤としては、熱可塑性樹脂を溶解可能であり、かつ液体臭素に相溶可能なものを特に限定なく使用でき、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、テトラリン、デカリン、シクロヘキサン、シクロヘキサノンなどの脂環式炭化水素類、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘブタン、n−オクタンなどの鎖式飽和炭化水素類、ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリット、シンナー等の脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素との混合物、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどの酢酸エステル類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどのアルコール類などが挙げられる。これらの中でも、液状樹脂組成物のハンドリング性と、液状樹脂組成物の引火性の緩和とを高水準でかつバランス良く達成する観点から、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シンナーなどが好ましい。有機溶剤は1種を単独で又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。これらの有機溶剤としては、市販品を特に限定なく使用でき、また、再生品を用いてもよい。
【0021】
液状樹脂組成物における有機溶剤の含有量は特に限定されないが、液状樹脂組成物のハンドリング性、加熱時などにおける引火性の緩和などを考慮すると、液状樹脂組成物全量に対して、好ましくは40〜95重量%、より好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは60〜90重量%である。有機溶剤の含有量が前記範囲内であることにより、液状樹脂組成物の良好なハンドリング性を維持しながら、液体臭素が有機溶剤の引火性を緩和し、液状樹脂組成物全体としての引火性を低下させることができる。
【0022】
なお、有機溶剤の含有量が40重量%未満では、液状樹脂組成物のハンドリング性が低下することに起因して、液状樹脂組成物により形成される塗膜の均一性が不十分になり、液状樹脂組成物の応用範囲が狭まる傾向があり、95重量%を超えると、相対的に液体臭素および/または樹脂成分の含有量が少なくなることから、液状樹脂組成物から形成された固化層の物品表面に対する密着性が低下し、また、液体臭素による有機溶剤の引火性の緩和が不十分になり、液状樹脂組成物の引火性が高まる傾向がある。
【0023】
熱可塑性樹脂としては、液体臭素に溶解可能なものであれば、従来から公知のものを特に限定なく使用できる。熱可塑性樹脂は液状樹脂組成物の用途に応じて適宜選択できる。本発明の液状樹脂組成物に好適に使用できる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。これらの熱可塑性樹脂としては、市販品を特に限定なく使用できる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、変性ポリオレフィン樹脂と、それ以外の熱可塑性樹脂とを併用する。この併用により、液状樹脂組成物から形成された固化層と物品表面との密着性をさらに高めることができる。なお、このような効果が得られるのは、変性ポリオレフィン樹脂が物品表面に対して化学的な結合を形成することによるものと推測される。
【0025】
変性ポリオレフィン樹脂とは、ポリオレフィン樹脂に塩素原子などのハロゲン原子および/または有機官能基を置換することにより、ポリオレフィン樹脂に極性を付与したものである。変性ポリオレフィン樹脂の主原料となるポリオレフィン樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。プロピレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンとしては特に限定されないが、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。また、有機官能基としては、例えば、マレイン酸基、無水マレイン酸基などの不飽和カルボン酸基、水酸基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルエステル基などが挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂としては、市販品を特に限定なく使用できる。
【0026】
上記した変性ポリオレフィン樹脂の中でも、本発明の液状樹脂組成物から形成された固化層の物品に対する密着性をより一層向上させる観点から、塩素化ポリオレフィン樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、およびアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂がさらに好ましい。
【0027】
変性ポリオレフィン樹脂と他の熱可塑性樹脂とを併用する場合、これらの使用割合は特に限定されないが、樹脂成分全量に対し、他の熱可塑性樹脂の含有量は好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%であり、変性ポリオレフィン樹脂の含有量は好ましくは45〜85重量%、より好ましくは50〜75重量%、さらに好ましくは55〜70重量%である。
【0028】
また、液状樹脂組成物における樹脂成分の含有量は特に限定されないが、液状樹脂組成物の粘度上昇によるハンドリング性の低下などの観点から、液状樹脂組成物全量に対し、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1〜15重量%である。樹脂成分の含有量が前記範囲内であることにより、液状樹脂組成物を加熱乾燥させた固化層に、該熱可塑性樹脂の特性を生かした機能性を十分に付与することができ、また、液状樹脂組成物が良好なハンドリング性を有することから、液状樹脂組成物の応用範囲を拡げることができる。
【0029】
なお、樹脂成分の含有量が0.1重量%未満では、熱可塑性樹脂の特性を十分に生かし切れない傾向がある。また、30重量%を超えると、粘度上昇により、液状樹脂組成物のハンドリング性は低下するものの、用途に応じて使用可能な場合もある。
【0030】
本発明の液状樹脂組成物は、液体臭素、熱可塑性樹脂、及び必要に応じて有機溶剤を混合し、熱可塑性樹脂を液体臭素又は液体臭素と有機溶剤との混合物に溶解させることにより得ることができるが、液体臭素と共に有機溶剤を用いる場合は、均質な樹脂溶液である液状樹脂組成物を得る観点から、熱可塑性樹脂を液体臭素に溶解し、得られた溶液と有機溶剤とを混合することが好ましい。この一連の工程は、室温で行なってもよいが、40〜50℃程度の加温下で行なうことにより、液状樹脂組成物がより均質な樹脂溶液として得られるので、好ましい。
【0031】
こうして得られる本発明の液状樹脂組成物は、例えば、下記の用途に使用できる。
【0032】
本発明の液状樹脂組成物は、接着剤として用いられる。すなわち、本発明によれば、液状樹脂組成物を含む接着剤、該接着剤を用いて作製された接着物、及び該接着剤を用いる接着方法が提供される。
【0033】
本発明の接着剤は、液状樹脂組成物を有効成分とし、さらに液状樹脂組成物の物性を損なわない範囲で、一般的な接着剤用添加剤を含むことができる。液状樹脂組成物中に含まれる熱可塑性樹脂としては、液体臭素に溶解可能な熱可塑性樹脂を特に限定なく使用でき、その中でも、例えば、ポリメチルメタクリレート、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂などが好ましく、ポリメチルメタクリレート、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂などがさらに好ましい。熱可塑性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
本発明の接着剤は、該接着剤が含む熱可塑性樹脂と同じ熱可塑性樹脂からなる物品(樹脂成形体)の接着に最も適している。該接着剤が含む熱可塑性樹脂は、液体臭素に対して溶解性の高い熱可塑性樹脂であるため、該物品に本発明の接着剤を塗布した場合に、該物品表面の表層部分の少なくとも一部が本発明の接着剤からなる塗膜中に溶け出した状態になる。この状態で塗膜を乾燥させると、物品の表層部分と塗膜とがほぼ均一に一体化した固化層が形成されるので、物品同士の接着強度を顕著に高めることができる。
【0035】
また、本発明の接着剤に含まれる接着剤用添加剤としては、例えば、レベリング剤、充填剤(例えばコロイド状シリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子やポリメチルメタクリレート系などの有機微粒子、タルク、マイカ、ガラス繊維、珪酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、炭素繊維などの繊維状又は板状の無機充填材)、消泡剤、タレ防止剤、湿潤分散剤、カップリング剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、架橋剤(有機過酸化物など)、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、防錆剤、蛍光性増白剤、熱線吸収剤、防炎剤、帯電防止剤、脱水剤などが挙げられる。添加剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、本発明の接着剤は、さらに、顔料、染料などの各種着色剤を含むことにより、塗料としても好適に使用できる。
【0036】
本発明の接着物は、一の物品と、他の物品と、両者の間に介在しこれらを接着する接着層とを含み、接着層が本発明接着剤を乾燥および固化させることにより形成された固化層であることを特徴とする。接着層の厚みは特に限定されないが、例えば、1μm〜3mm、好ましくは10μm〜50μmの範囲に設定される。
【0037】
ここで、一の物品及び他の物品の形状は特に限定されず、また、これらを構成する材料も特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの合成樹脂材料、各種金属材料、セラミックス材料、木材、紙類などが挙げられる。これらの中でも、接着強度などの観点から、少なくとも表層部を構成する材料が合成樹脂材料であることが好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましく、接着剤中の液体臭素や有機溶剤に溶解可能な熱可塑性樹脂がさらに好ましく、熱可塑性樹脂をシート又はフィルム状に成形した成形体が特に好ましい。一の物品及び他の物品を構成する材料は、同じでも異なっていてもよいが、接着強度などの観点から、同じ材料が好ましい。また、接着剤の一及び他の物品との接触面積は、接着剤に含まれる熱可塑性樹脂の種類、一及び他の物品の材質や、形状、寸法、接着物の用途などに応じて適宜選択される。
【0038】
本発明の接着物は、例えば、一の物品表面の所定領域(接着予定領域)に接着剤を塗布する工程(塗布工程)と、接着剤の塗膜が形成された面(塗布面)と他の物品の所定領域(接着予定領域)とを密着させ、一の物品と他の物品との間に介在し、両者と接触する接着剤層を形成する工程(密着工程)と、接着剤層を乾燥させて固化する工程(乾燥工程)と、を含む接着方法により得ることができる。
【0039】
ここで、一の物品および他の物品として、少なくとも表層部が熱可塑性樹脂からなる物品(好ましくは該熱可塑性樹脂の成形体である物品、より好ましくは液体臭素に可能な熱可塑性樹脂の成形体)を用いる場合には、一の物品の表面と接着層との間に介在し、一の物品の表層部を構成する熱可塑性樹脂と、接着剤に含まれる熱可塑性樹脂とが混在した第1層(第1接合層)、および/または、他の物品の表面と接着層との間に介在し、他の物品の表層部を構成する熱可塑性樹脂と、接着剤に含まれる熱可塑性樹脂とが混在した第2層(第2接合層)が形成される。これにより、一および他の物品と接着層との密着性が顕著に高まり、一および他の物品の接着強度が顕著に向上する。
【0040】
塗布工程では、必要に応じて、一の物品の接着予定領域だけでなく、他の物品の接着予定領域にも接着剤を塗布してもよい。接着剤の塗布方法としては、公知の塗布方法をいずれも採用でき、例えば、フローコート法、ロールコート法、吹き付け法、エアレススプレー法、エアスプレー法、刷毛塗り法、コテ塗り法、浸漬法、引き上げ法、ノズル法、巻き取り法、流し法、盛り付け法、パッチング法、静電塗装法、バーコーダ法、カーテンコータ法、カーテンフローコート法、エアナイフ法、グラビア法、スクリーン印刷法等が挙げられる。これらの塗布方法の中でも、吹き付け法、エアレススプレー法、エアスプレー法などが好ましい。また、接着剤の塗布量も特に限定されないが、例えば、接着剤からなる塗膜の固化層の層厚が、例えば、1μm〜0.5mm、好ましくは10μm〜30μmの範囲になるように、接着剤中の樹脂濃度などに応じて塗布量が選択される。
【0041】
また、乾燥工程における加熱温度は特に限定されず、接着剤中の液体臭素や有機溶剤の含有量、有機溶剤の種類などに応じて適宜選択されるが、例えば、40℃〜130℃の範囲に設定される。前記範囲の温度に加熱しても、本発明の接着剤は液体臭素の存在により有機溶剤の引火性が緩和されているので、引火の危険性が低下している。また、時間を要しても差し支えない場合は、室温にて自然乾燥させることにより接着剤の固化層を形成してもよい。
【0042】
また、本発明の液状樹脂組成物は、繊維を含む構造体と熱可塑性樹脂とを一体化した繊維強化樹脂成形体の製造にも利用できる。すなわち、本発明の繊維強化樹脂成形体の製造方法は、繊維を含む構造体に液状樹脂組成物を含浸または付着させる工程と、前記構造体に含浸させた液状樹脂組成物を乾燥および固化させる工程と、を含む。
【0043】
本発明の製造方法によれば、液状樹脂組成物が有機溶剤の引火性を緩和する液体臭素を含み、引火の危険性が少ないことから、液状樹脂組成物を繊維構造体に含浸または付着させ、液体臭素などの溶媒成分を揮散させるという非常に簡易な方法により、熱可塑性樹脂を繊維構造体に含浸及び固化させた繊維強化樹脂成形体を容易にかつ低コストで製造することができる。
【0044】
繊維を含む構造体としては、例えば、無機質繊維及び/又は有機質繊維よりなる織布及び不織布を使用できる。織布としては、例えば、クロス、耐熱性樹脂を被覆又は含浸したクロス等が挙げられる。不織布としては、湿式抄造、乾式抄造、ケミカルボンド、レジンボンド、サーマルボンド、ニードルパンチ、スパンレース、ステッチボンド、フェルト等が挙げられる。これらはいずれもシート状繊維構造体であるが、立体的な繊維構造体を用いる場合は、前記した織布又は不織布を複数枚重ね合せればよい。
【0045】
繊維構造を構成する無機質繊維としては、例えば、ロックウール、アルミナ繊維、シリカ繊維、シリカアルミナ繊維、ガラス繊維、ミルドガラス、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ワラストナイト(珪酸カルシウム繊維)、炭酸カルシウム繊維、二酸化チタン繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維、窒化珪素繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、酸化亜鉛繊維、金属繊維等が挙げられる。有機質繊維としては、レイヨン繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維などが挙げられる。なお、無機質繊維及び有機質繊維は短繊維でも長繊維でもよい。無機質繊維及び有機質繊維はそれぞれ1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
本発明の繊維強化樹脂成形体の製造方法によれば、繊維構造体に所定量の液状樹脂組成物を含浸または付着させ、得られた含浸体または付着体を室温で乾燥させるかまたは加熱乾燥することにより、シート状の繊維強化樹脂成形体を得ることができる。このシート状の繊維強化樹脂成形体を複数枚重ね合せ、加圧加熱することにより、立体的な形状を有する繊維強化樹脂成形体を得ることができる。加熱乾燥に要する加熱温度は、本発明の接着剤を固化させる温度と同程度でよい。ここで、液状樹脂組成物の使用量は、目的とする繊維強化樹脂成形体の用途に応じて広い範囲から適宜選択できるが、一例を挙げれば、繊維構造体100重量部に対して、好ましくは1〜300重量部、より好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは45〜70重量部である。また、加熱乾燥温度は、接着剤と同様に40℃〜130℃の範囲としてもよく、また、室温としてもよい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。以下において、「%」及び「部」は特に断らない限り、重量基準とする。なお、以下の各実施例で、液状樹脂組成物を乾燥させる際に、発火は起こらなかった。
【0048】
(実施例1)
[液状樹脂組成物の調製]
下記に示す配合1(部)で、まず、ABS樹脂及びポリスチレン樹脂を液体臭素及びシンナーに溶解し、A液を得た。次に、アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂をトルエンの一部及びシクロヘキサンに溶解し、B液を得た。A液とB液との混合液をトルエンの残部及びキシレンで希釈し、本発明の液状樹脂組成物を調製した。
【0049】
〔配合1〕
ABS樹脂(商品名:QF、電気化学工業(株)製) 2
ポリスチレン樹脂(商品名:MWID、東洋スチレン(株)製) 0.5
アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂(商品名:930S、日本製紙(株)製)5
液体臭素 10
シンナー 10
シクロヘキサン 2.5
トルエン 43
キシレン 27
【0050】
(実施例2)
上記配合1の液状樹脂組成物を接着剤として用いた。すなわち、縦100mm、横100mm、厚さ2mmのABS樹脂板(商品名:タフエース、住友ベークライト(株)製)の一方の表面に、乾燥固化後の厚みが5μmになるように配合1の液状樹脂組成物を塗布し、得られた塗膜の表面に前記と同じABS樹脂板を貼り合せ、40℃で30分間乾燥し、ABS樹脂接着体を作製した。得られた接着体の固化層に対して、厚さ1.5mmのステンレス鋼製のヘラをABS樹脂板と固化層との間に差し込もうとしたが、差し込むことができなかった。そして、さらにヘラを押し当てたところ、接着体全体の変形が生じたものの剥離は発生せず、2つのABS樹脂板が極めて強固に接着していることが判った。
【0051】
(実施例3)
上記配合1の液状樹脂組成物において、ABS樹脂をポリメチルメタクリレート樹脂(以下「PMMA樹脂」とする。)に変更する以外は、実施例1と同様にして配合2の液状樹脂組成物を得た。この液状樹脂組成物を接着剤として用いた。すなわち、縦100mm、横100mm、厚さ2mmのPMMA樹脂板(商品名:アクリライト、三菱レイヨン(株)製)の一方の表面に、乾燥固化後の厚みが5μmになるように上記液状樹脂組成物を塗布し、得られた塗膜の表面に前記と同じPMMA樹脂板を貼り合せ、40℃で30分間乾燥し、PMMA樹脂接着体を作製した。得られた接着体の固化層に対して、厚さ1.5mmのステンレス鋼製のヘラをPMMA樹脂板と固化層との間に差し込もうとしたが、差し込むことができなかった。そして、さらにヘラを押し当てたところ、接着体全体の変形が生じたものの剥離は発生せず、2つのPMMA樹脂板が極めて強固に接着していることが判った。
【0052】
(比較例1)
上記配合1の液状樹脂組成物において、液体臭素を使用せず、かつシンナー配合量を10部から20部に変更したABS塗料を用いる以外は、実施例2と同様にして、ABS樹脂接着体を作製した。得られた接着体の固化層に対して、厚さ1.5mmのステンレス鋼製のヘラを押し当てたところ、ABS樹脂板と固化層との境界周辺でABS樹脂板が剥離した。
【0053】
(比較例2)
上記配合1の液状樹脂組成物に代えて市販の瞬間接着剤(商品名:アロンアルファ(商標名)、東亜合成(株)製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、ABS樹脂接着体を作製した。得られた接着体の固化層に対して、厚さ1.5mmのステンレス鋼製のヘラを押し当て、ABS樹脂板の剥離を試みたところ、固化層周辺で剥離が発生し、2つのABS樹脂板が部分的に剥離した。
【0054】
(実施例4)
上記配合1の液状樹脂組成物および開繊処理した厚み 0.1mmの平織E−ガラス布 (品名; ♯1031 S640、日東紡績 (株) 製) を用い、溶剤予備含侵槽、液状樹脂組成物含侵槽、ピンチロール、及び、長さ10mの加熱・乾燥ゾーンからなる装置を用い、溶剤予備含侵槽にメチルエチルケトンを、液状樹脂組成物含侵槽に上記配合1の液状樹脂組成物を供給し、平織E−ガラス布の送給速度を1〜1.5m/分に調整し、加熱・乾燥ゾーンの最終温度を30〜70℃に保ち、繊維強化フィルムを製造した。
【0055】
(実施例5)
平織E−ガラス布に代えて、炭素繊維製のクロス(商品名:トレカC6373、東レ(株)製)又はアラミド繊維製のクロス(商品名:K−281、カネボウ(株)製)を用いる以外は、実施例4と同様にして、繊維強化フィルムを製造した。
【0056】
実施例4、5の結果から、本発明の液状樹脂組成物を用いることにより、熱可塑性樹脂を200℃前後の高温で加熱溶融させることなく、30〜70℃という加熱温度を用いるだけの非常に簡便な方法で、繊維強化フィルムが得られることが明らかである。