(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-441(P2017-441A)
(43)【公開日】2017年1月5日
(54)【発明の名称】洗浄作業支援システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/12 20060101AFI20161209BHJP
A61B 90/70 20160101ALI20161209BHJP
【FI】
A61B1/12
A61B19/00 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-117584(P2015-117584)
(22)【出願日】2015年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 賢裕
(72)【発明者】
【氏名】花島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】▲辻▼ 健至
(72)【発明者】
【氏名】小久保 貴章
(72)【発明者】
【氏名】石野 直巳
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161GG04
4C161JJ11
4C161JJ17
4C161NN07
4C161WW13
4C161WW14
4C161YY01
4C161YY14
(57)【要約】
【課題】洗浄処理の作業手順を容易に確認することができるようにした洗浄作業支援システムを提供する。
【解決手段】複数の洗浄対象物に関してそれぞれ標準化された洗浄処理の作業手順を示した作業指示書を記憶した記憶手段と、上記洗浄対象物にマーキングされた識別記号を読み取る読み取り手段と、上記読み取り手段に読み取られた識別記号に基づいて、上記記憶手段に記憶された作業指示書から上記読み取り手段に読み取られた上記洗浄対象物に対応する作業指示書を選択する選択手段と、上記選択手段により選択された作業指示書を表示する表示手段とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の洗浄対象物に関してそれぞれ標準化された洗浄処理の作業手順を示した作業指示書を記憶した記憶手段と、
前記洗浄対象物にマーキングされた識別記号を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段に読み取られた識別記号に基づいて、前記記憶手段に記憶された作業指示書から前記読み取り手段に読み取られた前記洗浄対象物に対応する作業指示書を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された作業指示書を表示する表示手段と
を有することを特徴とする洗浄作業支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄作業支援システムにおいて、さらに、
作業者の手の移動を監視する監視手段と、
前記監視手段による前記作業者の手の移動の監視結果に基づいて、前記表示手段の表示を変更する変更手段と
を有することを特徴とする洗浄作業支援システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の洗浄作業支援システムにおいて、さらに、
作業履歴を記憶する第2の記憶手段と
を有することを特徴とする洗浄作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄作業支援システムに関し、さらに詳細には、2次元シンボルなどの識別記号をマーキングされた手術用鋼製器具や内視鏡などのような各種の医療に用いられる種々の器材(本明細書においては、手術用鋼製器具や内視鏡などのような各種の医療に用いられる種々の器材を総称して「医療器材」と適宜に称する。)を洗浄する際に用いて好適な洗浄作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、医療行為には各種の医療器材が使用されており、こうした医療器材は一般に繰り返し使用されている。
【0003】
使用済みの医療器材を再度使用する際には、殺菌のために使用済みの医療器材を分解して洗浄する必要があった。
【0004】
従来、こうした医療器材の分解や洗浄の際には、作業者が製本されたマニュアルを適宜に参照しながら、作業者自身の手作業により医療器材の分解や洗浄を行っており、作業者の能力に依存した作業となっていた。
【0005】
即ち、従来の医療器材の洗浄処理においては、マニュアルの確認作業は作業者に依存していて作業標準が明確には決められていないため、作業の属人化により作業手順が不均一となって作業時間にばらつきが生じたり、作業品質や洗浄結果にもばらつきを生じたりするなどの問題点が指摘されているとともに、使用済みの医療器材に対して誤った分解作業や洗浄作業を行って、医療器材に故障を発生させる恐れがあるという問題点も指摘されていた。
【0006】
このため、洗浄処理の作業手順を容易に確認することを可能にして、作業時間、作業品質、洗浄結果のばらつきを低減するとともに、使用済みの医療器材に対する誤った分解作業や洗浄作業の発生を低減することのできる手法の提案が要望されていた。
【0007】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の技術の有する上記したような要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、洗浄処理の作業手順を容易に確認することができるようにした洗浄作業支援システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による洗浄作業支援システムは、各種の医療器材に関してそれぞれ標準化された洗浄処理の作業手順を示した作業指示書を記憶した記憶手段から、洗浄処理の対象の医療器材に対応した作業指示書を選択して表示手段に表示させ、作業者は表示手段に表示された作業指示書を視認しながら洗浄作業を行うようにしたものである。
【0010】
従って、本発明による洗浄作業支援システムによれば、作業者は表示手段に表示された作業指示書を視認しながら洗浄作業を行うので、どのような作業者であっても同じ洗浄作業を実施することが期待できる。
【0011】
また、作業者が洗浄作業支援システムを利用して行った作業の履歴については、作業履歴として自動的に記録するようにしておくことで、洗浄作業の工程管理が可能となり、作業時間の平準化にも資することができるようになる。
【0012】
即ち、本発明による洗浄作業支援システムは、複数の洗浄対象物に関してそれぞれ標準化された洗浄処理の作業手順を示した作業指示書を記憶した記憶手段と、上記洗浄対象物にマーキングされた識別記号を読み取る読み取り手段と、上記読み取り手段に読み取られた識別記号に基づいて、上記記憶手段に記憶された作業指示書から上記読み取り手段に読み取られた上記洗浄対象物に対応する作業指示書を選択する選択手段と、上記選択手段により選択された作業指示書を表示する表示手段とを有するようにしたものである。
【0013】
なお、後述する発明を実施するための形態においては、パーソナルコンピューター12が上記記憶手段、選択手段および表示手段に相当し、二次元コードリーダー16が上記読み取り手段に相当する。
【0014】
また、本発明による洗浄作業支援システムは、上記した本発明による洗浄作業支援システムにおいて、さらに、作業者の手の移動を監視する監視手段と、上記監視手段による上記作業者の手の移動の監視結果に基づいて、上記表示手段の表示を変更する変更手段とを有するようにしたものである。
【0015】
なお、後述する発明を実施するための形態においては、モーションセンサー14が上記監視手段に相当し、パーソナルコンピューター12が上記変更手段に相当する。
【0016】
また、本発明による洗浄作業支援システムは、上記した本発明による洗浄作業支援システムにおいて、さらに、作業履歴を記憶する第2の記憶手段とを有するようにしたものである。
【0017】
なお、後述する発明を実施するための形態においては、パーソナルコンピューター12が上記第2の記憶手段に相当する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上説明したように構成されているので、洗浄処理の作業手順を容易に確認することができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明による洗浄作業支援システムの実施の形態の一例の外観構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、本発明による洗浄作業支援システムの実施の形態の一例の機能的構成を示すブロック構成図である。
【
図3】
図3(a)(b)(c)(d)は、本発明による洗浄作業支援システムにおけるモーションセンサーの監視状況を示す説明図である。
【
図4】
図4は、本発明による洗浄作業支援システムにおけるタッチパネルに表示される作業指示書の画面表示の一例である。
【
図5】
図5は、本発明による洗浄作業支援システムにおけるタッチパネルに表示される作業指示書の画面表示の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による洗浄作業支援システムの実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0021】
図1には、本発明による洗浄作業支援システムの実施の形態の一例の外観構成を示す説明図があらわされており、
図2には、本発明による洗浄作業支援システムの実施の形態の一例の機能的構成を示すブロック構成図があらわされている。
【0022】
この
図1および
図2に示す洗浄作業支援システム10は、抗菌および防水処理を施された医療用に用いるパーソナルコンピューター12と、作業者の手の移動を監視するモーションセンサー14と、個体を識別するために医療器材にマーキングされた2次元シンボルなどの識別記号を読み取る二次元コードリーダー16と、パーソナルコンピューター12とモーションセンサー14と二次元コードリーダー16とを搭載するとともにこれらに電力をそれぞれ供給するための医療用に用いる電源内蔵台車18とを有して構成されている。
【0023】
なお、電源内蔵台車18の底部にはキャスター20が配設されており、洗浄作業支援システム10を病院などの施設内を自由に移動できる。
【0024】
より詳細に説明すると、パーソナルコンピューター12は、洗浄作業支援システム10全体の動作を制御する制御部12aと、各種の医療器材に関してそれぞれ標準化された洗浄処理の作業手順を示した作業指示書を記憶したデータベースならびに作業者が洗浄作業支援システム10を利用して行った作業の履歴を含む各種の情報を記憶する記憶部12bと、液晶パネルのような表示装置とタッチパッドのような位置入力装置とを組み合わせた電子部品であって画面上の表示を押すことで機器を操作する入力装置であるタッチパネル12cとを有して構成されている。
【0025】
タッチパネル12cには、記憶部12bに記憶されたデータベースから、後述する処理により選択された作業指示書を表示する。
【0026】
モーションセンサー14は、作業者の手の移動を監視しており、パーソナルコンピューター12と連動して、作業者が手を少し開いて水平に右に振るとタッチパネル12cに表示されている作業指示書の画面を次の画面へ進め(
図3(a)を参照する。)、作業者が手を少し開いて左に振るとタッチパネル12cに表示されている作業指示書の画面を前の画面へ戻し(
図3(b)を参照する。)、作業者が両手を少し開いて下へ降ろすとタッチパネル12cに表示されている作業指示書の画面を終了し(
図3(c)を参照する。)、作業者が手の指を1本突き出して右回しに回すとタッチパネル12cに表示されている作業指示書の画面中に示された選択可能な領域を選択する(
図3(d)を参照する。)。
【0027】
二次元コードリーダー16は、作業者により読み取り部16aに医療器材にマーキングされた識別記号が翳されると、その識別記号を読み取ってパーソナルコンピューター12へ読み取った識別記号を出力する。
【0028】
パーソナルコンピューター12は、二次元コードリーダー16から出力された識別記号から、その識別記号がマーキングされた医療器材を特定し、記憶部12bのデータベースから特定した医療器材に対応する作業指示書を選択してタッチパネル12cに表示する。
【0029】
以上の構成において、作業者が洗浄作業支援システム10を利用して医療器材の洗浄処理を行う場合には、まず、作業者は、洗浄処理の対象となる医療器材にマーキングされた識別記号を二次元コードリーダー16の読み取り部16aに翳して読み取らせる。
【0030】
次に、二次元コードリーダー16は、読み取り部16aで読み取った識別記号をパーソナルコンピューター12へ出力する。
【0031】
二次元コードリーダー16から出力された識別記号を入力したパーソナルコンピューター12は、入力した識別記号から洗浄処理の対象の医療器材を特定し、記憶部12bのデータベースから特定した医療器材に対応する作業指示書を選択してタッチパネル12cに表示する。
【0032】
タッチパネル12cに作業指示書が表示されると、作業者はタッチパネル12cに表示された作業所を参照しながら、洗浄処理の対象の医療器材の分解や洗浄の作業を行うことになる。
【0033】
図4ならびに
図5には、タッチパネル12cに表示される作業指示書の画面表示が例示されている。
【0034】
画面表示には、
図4に示すように、洗浄処理の各工程を示す領域Aや、洗浄処理の対象の医療器材を分解した状態を示す領域Bなどが含まれる。また、領域Bには、作業者が注意すべき点などを示す領域B−1が設けられている。
【0035】
また、画面表示には、
図5に示すように、作業者の作業をガイドするための作業方法を画像として表示した領域Cや文章により表示した領域Dなどが含まれる。
【0036】
これらの画面表示は、モーションセンサー14の前方で作業者が手を移動することにより、その手の移動態様に応じて表示画面を進めたり戻したりの変更を行うことができ、作業者が洗浄作業支援システム10に直接触れることなく作業指示書の所望の表示画面を表示することができる。
【0037】
また、作業者がタッチパネル12cをタッチして作業指示書の所望の表示画面を表示することも可能であり、例えば、
図4における表示画面の領域Bにおける符号B−2で示す表示をタッチすると、当該符号B−2で示す表示画像に関するより詳細な表示画像および説明が表示される。
【0038】
また、上記したような作業者が洗浄作業支援システム10に対して行った操作ならびにタッチパネルに表示された表示画面の履歴(表示履歴)を含む、作業者が洗浄作業支援システム10を利用して行った作業の履歴については、作業履歴としてパーソナルコンピューター12の記憶部12に自動的に記憶される。
【0039】
以上において説明したように、洗浄作業支援システム10によれば、作業者はパーソナルコンピューター12のタッチパネル12cに表示された作業指示書の表示画面に従って洗浄作業を行えばよく、どのような作業者であっても同じ洗浄作業を実施することが期待できる。
【0040】
また、洗浄作業支援システム10によれば、洗浄作業支援システム10に直接触れることなくタッチパネル12cに表示される作業指示書の表示画面を選択することができるので、作業者の手が汚染されている場合でも、作業者は洗浄作業を中断して手を除菌してから作業指示書の次の表示画面の選択操作を行う必要がなく、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0041】
さらに、洗浄作業支援システム10によれば、作業履歴がパーソナルコンピューター12の記憶部12bに自動的に記憶されるので、作業履歴の管理が容易になる。
【0042】
なお、上記した実施の形態においては、医療器材が洗浄作業支援システム10の洗浄対象の場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0043】
即ち、二次元コードリーダー16の読み取り部16aで読み取り可能な識別記号をマーキングされた物体であるならば、本発明による洗浄作業支援システム10の洗浄対象とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、医療器材などの各種の物体を洗浄する際に用いて好適である。
【符号の説明】
【0045】
10 洗浄作業支援システム、12 パーソナルコンピューター、12a 制御部、12b 記憶部、12c タッチパネル、14 モーションセンサー、16 二次元コードリーダー、16a 読み取り部、18 電源内蔵台車、20 キャスター