(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-44226(P2017-44226A)
(43)【公開日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】滑り軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/74 20060101AFI20170210BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20170210BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20170210BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20170210BHJP
F16F 9/54 20060101ALI20170210BHJP
B60G 13/06 20060101ALI20170210BHJP
【FI】
F16C33/74 Z
F16C17/04 Z
F16J15/18 C
F16J15/32 311S
F16F9/54
B60G13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-165132(P2015-165132)
(22)【出願日】2015年8月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩司
(72)【発明者】
【氏名】小山内 啓徳
【テーマコード(参考)】
3D301
3J006
3J011
3J016
3J043
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA75
3D301CA09
3D301DB17
3J006AE25
3J006AE38
3J006CA01
3J011AA12
3J011BA09
3J011DA02
3J011KA03
3J011KA09
3J011LA08
3J016AA03
3J016AA08
3J016BB03
3J016CA02
3J016CA03
3J043AA15
3J043CA02
3J043CB13
3J043DA06
3J069AA50
3J069CC36
3J069DD44
(57)【要約】
【課題】塵埃、泥水等の浸入による摺動性能の低下を防止する。
【解決手段】滑り軸受1は、アッパーケース2と、アッパーケース2に回動自在に組み合わされて環状空間5を形成するロワーケース3と、環状空間5に配置され、アッパーケース2およびロワーケース3間の回動を許容しつつ、アッパーケース2に加えられた荷重を支持するセンタープレート4と、環状空間5の隙間を防ぐダストシール6と、を備える。アッパーケース2は、下面24に形成された環状溝25を有する。ロワーケース3は、上面32に形成され、環状溝25に挿入されることにより環状空間5を形成する環状突部33を有する。ダストシール6は、環状突部33の側壁に接合され、軸方向の端部603、613がこの側壁に沿ってロワーケース3の上面32に形成されたシール装着溝320、321に挿入されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーケースと、
前記アッパーケースに回動自在に組み合わされて、当該アッパーケースとの間に環状空間を形成するロワーケースと、
前記環状空間に配置された環状のセンタープレートと、
前記環状空間の隙間を塞ぐ環状のダストシールと、を備え、
前記ダストシールは、
当該ダストシールの軸方向の端部が前記ロワーケースの前記アッパーケースとの対向面あるいは前記アッパーケースの前記ロワーケースとの対向面に形成された凹部を有するシール装着溝に挿入されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の滑り軸受であって、
前記滑り軸受は、支持対象の荷重を支持するものであり、
前記アッパーケースは、
前記ロワーケースとの対向面に形成された環状溝を有し、
前記ロワーケースは、
前記アッパーケースとの対向面に形成され、前記アッパーケースの前記環状溝に挿入されることにより前記環状空間を形成する環状突部を有し、
前記センタープレートは、
前記ロワーケースの前記環状突部上に載置され、前記アッパーケースの前記環状溝の溝底に形成された支持対象面と摺接することにより、前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間の回動を許容しつつ、前記アッパーケースに加えられた前記支持対象の荷重を支持し、
前記シール装着溝は、
前記ロワーケースの前記環状突部あるいは前記アッパーケースの前記環状溝の側壁に沿って前記ロワーケースの前記アッパーケースとの対向面あるいは前記アッパーケースの前記ロワーケースとの対向面に形成されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項3】
請求項2に記載の滑り軸受であって、
前記ダストシールは、
前記ロワーケースの前記環状突部の外周側壁面に接合された筒状のシール本体と、
前記シール本体の外周面から径方向外方に延びて、前記アッパーケースの前記環状溝の外周側壁面と接触する環状のリップ部と、を有し、
前記シール装着溝は、
前記ロワーケースの前記環状突部の外周側壁面に沿って前記ロワーケースの前記アッパーケースとの対向面に形成され、前記ダストシールの前記シール本体の軸方向の端部が挿入される
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項4】
請求項2に記載の滑り軸受であって、
前記ダストシールは、
前記ロワーケースの前記環状突部の内周側壁面に接合された筒状のシール本体と、
前記シール本体の内周面から径方向内方に延びて、前記アッパーケースの前記環状溝の内周側壁面と接触する環状のリップ部と、を有し、
前記シール装着溝は、
前記ロワーケースの前記環状突部の内周側壁面に沿って前記ロワーケースの前記アッパーケースとの対向面に形成され、前記ダストシールの前記シール本体の軸方向の端部が挿入される
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項5】
請求項2に記載の滑り軸受であって、
前記ダストシールは、
前記アッパーケースの前記環状溝の外周側壁面に接合された筒状のシール本体と、
前記シール本体の内周面から径方向内方に延びて、前記ロワーケースの前記環状突部の外周側壁面と接触する環状のリップ部と、を有し、
前記シール装着溝は、
前記アッパーケースの前記環状溝の外周側壁面に沿って前記アッパーケースの前記ロワーケースとの対向面に形成され、前記ダストシールの前記シール本体の軸方向の端部が挿入される
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項6】
請求項2に記載の滑り軸受であって、
前記ダストシールは、
前記アッパーケースの前記環状溝の内周側壁面に接合された筒状のシール本体と、
前記シール本体の外周面から径方向外方に延びて、前記ロワーケースの前記環状突部の内周側壁面と接触する環状のリップ部と、を有し、
前記シール装着溝は、
前記アッパーケースの前記環状溝の内周側壁面に沿って前記アッパーケースの前記ロワーケースとの対向面に形成され、前記ダストシールの前記シール本体の軸方向の端部が挿入される
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記ダストシールは、
インサート成形により前記ロワーケースの前記環状突部あるいは前記アッパーケースの前記環状溝の側壁に接合されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記滑り軸受は、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、当該ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持するものであり、
前記アッパーケースは、前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で当該ストラットアッセンブリの前記車体への取付機構に取り付けられ、
前記ロワーケースは、前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で前記ストラットアッセンブリに組み合わせられたコイルスプリングの上端部のばね座に取り付けられ、
前記センタープレートは、前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で前記環状空間に配置される
ことを特徴とする滑り軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持対象の荷重を支持する滑り軸受に関し、特に、ストラット式サスペンション(マクファーソンストラット)のストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持する滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前輪に用いられるストラット式サスペンションは、ピストンロッドおよび油圧式ショックアブソーバを備えたストラットアッセンブリに、コイルスプリングを組み合わせた構造を有しており、ステアリング操作によってストラットアッセンブリがコイルスプリングと共に回動する。このため、ストラットアッセンブリの円滑な回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる荷重を支持するべく、通常、車体へのストラットアッセンブリの取付機構であるアッパーマウントとコイルスプリングの上端部のばね座であるアッパースプリングシートとの間に、軸受が配置されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ストラット式サスペンション用の軸受として、合成樹脂製の滑り軸受が開示されている。この滑り軸受は、アッパーマウント側に取り付けられる合成樹脂製のアッパーケースと、アッパースプリングシート側に取り付けられ、アッパーケースに回動自在に組み合わされる合成樹脂製のロワーケースと、アッパーケースおよびロワーケース間を円滑に回動させるための合成樹脂製のセンタープレートと、を備えている。
【0004】
ここで、アッパーケースのロワーケースとの対向面には、環状溝が形成されており、ロワーケースのアッパーケースとの対向面には、アッパーケースの環状溝に挿入される環状突部が形成されている。アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより、ロワーケースの環状突部がアッパーケースの環状溝に挿入されて、環状空間が形成される。センタープレートは、この環状空間に配置される。
【0005】
また、ロワーケースの環状突部の外周側壁面には、外側シールがインサート成形により接合されており、ロワーケースの環状突部の内周側壁面には、内側シールがインサート成形により接合されている。外側シールは、アッパーケースの環状溝の外周側壁面に撓んで接触することにより、ロワーケースの環状突部の外周側壁面とアッパーケースの環状溝の外周側壁面との隙間を塞ぐ。また、内側シールは、アッパーケースの環状溝の内周側壁面に撓んで接触することにより、ロワーケースの環状突部の内周側壁面とアッパーケースの環状溝の内周側壁面との隙間を塞ぐ。このため、外側シールおよび内外側シールには、ポリウレタン樹脂、ポリエステルエラストマー等の弾性体が用いられる。
【0006】
特許文献1に記載の合成樹脂製の滑り軸受によれば、外側シールおよび内側シールにより、アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより形成される環状空間が密閉され、過酷な条件下でも、塵埃、泥水等がこの環状空間に侵入するのを防止でき、したがって、この環状空間に配置されたセンタープレートの軸受面上に塵埃、泥水等が侵入して、摺動性能が低下するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−083303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1に記載の合成樹脂製の滑り軸受には、ポリウレタン樹脂、ポリエステルエラストマー等の弾性体からなる外側シールおよび内側シールがインサート成形により合成樹脂製のロワーケースに設けられた環状突部の外周側壁面および内周側壁面に接合されている。しかし、外側シールおよび内側シールは、インサート成形の際あるいは長年の使用により、ロワーケースの環状突部の外周側壁面あるいは内周側壁面から剥離することがある。そして、外側シールあるいは内側シールの剥離により、アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより形成される環状空間の密閉性が低下し、過酷な条件下にいて塵埃、泥水等がこの環状空間に侵入してしまい、摺動性能が低下する可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、塵埃、泥水等の浸入による摺動性能の低下を防止することができる滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の滑り軸受では、アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより形成される環状空間にセンタープレートを配置するとともに、この環状空間を塞ぐダストシールを設けている。そして、アッパーケースのロワーケースとの対向面あるいはロワーケースのアッパーケースの対向面にシール装着溝を形成し、ダストシールの軸方向の端部をこのシール装着溝に装着している。
【0011】
例えば、本発明の滑り軸受は、
アッパーケースと、
前記アッパーケースに回動自在に組み合わされて、当該アッパーケースとの間に環状空間を形成するロワーケースと、
前記環状空間に配置された環状のセンタープレートと、
前記環状空間の隙間を塞ぐ環状のダストシールと、を備え、
前記ダストシールは、
当該ダストシールの軸方向の端部が前記ロワーケースの前記アッパーケースとの対向面あるいは前記アッパーケースの前記ロワーケースとの対向面に形成された凹部を有するシール装着溝に挿入されている。
【0012】
ここで、前記滑り軸受は、支持対象の荷重を支持するものであり、
前記アッパーケースは、
前記ロワーケースとの対向面に形成された環状溝を有し、
前記ロワーケースは、
前記アッパーケースとの対向面に形成され、前記アッパーケースの前記環状溝に挿入されることにより前記環状空間を形成する環状突部を有し、
前記センタープレートは、
前記ロワーケースの前記環状突部上に載置され、前記アッパーケースの前記環状溝の溝底に形成された支持対象面と摺接することにより、前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間の回動を許容しつつ、前記アッパーケースに加えられた前記支持対象の荷重を支持し、
前記シール装着溝は、
前記ロワーケースの前記環状突部あるいは前記アッパーケースの前記環状溝の側壁に沿って前記ロワーケースの前記アッパーケースとの対向面あるいは前記アッパーケースの前記ロワーケースとの対向面に形成されていてもよい。
【0013】
また、前記ダストシールは、インサート成形により前記ロワーケースの前記環状突部あるいは前記アッパーケースの前記環状溝の側壁に接合されたものでもよい。
【0014】
また、前記滑り軸受は、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持するものであり、
前記アッパーケースは、前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で当該ストラットアッセンブリの前記車体への取付機構に取り付けられ、
前記ロワーケースは、前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で前記ストラットアッセンブリに組み合わせられたコイルスプリングの上端部のばね座に取り付けられ、
前記センタープレートは、前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で前記環状空間に配置されるものでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アッパーケースのロワーケースとの対向面あるいはロワーケースのアッパーケースとの対向面にシール装着溝を形成し、ダストシールの軸方向の端部をこのシール装着溝に装着させているので、ダストシールがロワーケースあるいはアッパーケースから剥離するのを防止できる。このため、アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより形成される環状空間の密閉性が低下するのを防止することができ、したがって、塵埃、泥水等の浸入による摺動性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(A)、
図1(B)および
図1(C)は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、
図1(D)は、
図1(A)に示す滑り軸受1のA−A断面図である。
【
図2】
図2(A)は、
図1(D)に示す滑り軸受1のB部拡大図であり、
図2(B)は、
図1(D)に示す滑り軸受1のC部拡大図である。
【
図3】
図3(A)、
図3(B)および
図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、
図3(D)は、
図3(A)に示すアッパーケース2のD−D断面図である。
【
図4】
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、
図4(D)は、
図4(A)に示すロワーケース3のE−E断面図である。
【
図5】
図5(A)、
図5(B)および
図5(C)は、センタープレート4の平面図、底面図および正面図であり、
図5(D)は、
図5(A)に示すセンタープレート4のF−F断面図であり、
図5(E)は、
図5(A)に示すセンタープレート4のG部拡大図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の変形例の
図2(B)に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0018】
図1(A)、
図1(B)および
図1(C)は、本実施の形態に係る滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、
図1(D)は、
図1(A)に示す滑り軸受1のA−A矢視断面図である。また、
図2(A)は、
図1(D)に示す滑り軸受1のB部拡大図であり、
図2(B)は、
図1(D)に示す滑り軸受1のC部拡大図である。
【0019】
本実施の形態に係る滑り軸受1は、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリ(不図示)を収容するための収容孔10を備え、この収容孔10に収容されたストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持する。図示するように、滑り軸受1は、アッパーケース2と、アッパーケース2と回動自在に組み合わされて、アッパーケース2との間に環状空間5を形成するロワーケース3と、この環状空間5に配置された環状のセンタープレート4と、この環状空間5を密閉して、塵埃等の異物が環状空間5に侵入する環状のダストシール6と、図示していないが、環状空間5に充填された潤滑グリースと、を備えている。
【0020】
アッパーケース2は、必要に応じて潤滑油が含浸されたポリアセタール樹脂等の滑り特性に優れた熱可塑性樹脂で形成され、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリが挿入された状態でこのストラットアッセンブリの車体への取付機構であるアッパーサポート(不図示)に取り付けられる。
【0021】
図3(A)、
図3(B)および
図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、
図3(D)は、
図3(A)に示すアッパーケース2のD−D断面図である。
【0022】
図示するように、アッパーケース2は、ストラットアッセンブリを挿入するための挿入孔20を備えた環状のアッパーケース本体21と、アッパーケース本体21の上面22に形成され、アッパーサポートに取り付けるための取付面23と、ロワーケース3に対向するアッパーケース本体21の下面24に形成され、ロワーケース3と回動自在に組み合わされることにより環状空間5を形成する環状溝25と、環状溝25の溝底26に形成され、センタープレート4の後述の軸受面42と摺接する環状の支持対象面27と、を備えている。
【0023】
環状溝25の溝底26において、支持対象面27の外周縁側には、溝底26から下面24の方向に突き出した環状の防壁28が形成されている。この防壁28は、環状空間5に配置されたセンタープレート4の外周側の側面49を囲んでおり、ストラット式サスペンションに荷重が加わった場合に、環状空間5に充填された潤滑グリースがセンタープレート4の軸受面42上から径方向外方へ押し出されるのを防止する役割を果たす。
【0024】
ロワーケース3は、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を用いた樹脂成形体に、補強材であるスチールプレート7が埋め込まれたインサート成形品であり、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリが挿入された状態でストラット式サスペンションのコイルスプリング(不図示)上端部のばね座であるアッパースプリングシート(不図示)に取り付けられる。
【0025】
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、
図4(D)は、
図4(A)に示すロワーケース3のE−E断面図である。
【0026】
図示するように、ロワーケース3は、ストラットアッセンブリを挿入するための挿入孔30を備えた筒状のロワーケース本体31と、アッパーケース2に対向するロワーケース本体31の上面32に形成され、ロワーケース3がアッパーケース2と回動自在に組み合わされた場合に、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状溝25に挿入されて環状空間5を形成する環状突部33と、ロワーケース本体31の側面34から径方向外方に張り出したフランジ35と、を備えている。
【0027】
環状突部33の上面330には、センタープレート4を載置するための載置面331が形成され、さらに、この載置面331の外周側には、載置面331に載置されたセンタープレート4の回転を防止するための回止め332が円周方向に等間隔で複数形成されている。
【0028】
フランジ35は、ロワーケース本体31の上面32側において、ロワーケース本体31の外周側の側面34から径方向外方に張り出しており、フランジ35の下面350がアッパースプリングシートに取り付けられる。
【0029】
ダストシール6は、ポリウレタン樹脂、ポリエステルエラストマー等の弾性体で形成され、インサート成形によりロワーケース3のロワーケース本体31の環状突部33に取り付けられている(
図4参照)。
図2(A)および
図2(B)に示すように、ダストシール6は、環状突部33の外周側壁面333とアッパーケース2の環状溝25の外周側壁面250との隙間を防ぐ外側シール部60と、環状突部33の内周側壁面334とアッパーケース2の環状溝25の内周側壁面251との隙間を防ぐ内側シール部61と、を有する。
【0030】
外側シール部60は、環状突部33の外周側壁面333に接合された筒状の外側シール本体601と、外側シール本体601の外周面603から径方向外方に延びて、アッパーケース2の環状溝25の外周側壁面250に撓みながら接触する環状の外側リップ部602と、を有する。ロワーケース本体31の上面32の外周側には、環状突部33の外周側壁面333に沿って環状の外側シール装着溝320が形成されており、外側シール本体601の軸心O方向におけるロワーケース3側の端部604は、この外側シール装着溝320に装着されている。
【0031】
また、内側シール部61は、環状突部33の内周側壁面334に接合された筒状の内側シール本体611と、内側シール本体611の内周面613から径方向内方に延びて、アッパーケース2の環状溝25の内周側壁面251に撓みながら接触する環状の内側リップ部612と、を有する。ロワーケース本体31の上面32の内周側には、環状突部33の内周側壁面334に沿って環状の内側シール装着溝321が形成されており、内側シール本体611の軸心O方向におけるロワーケース3側の端部614は、この内側シール装着溝321に装着されている。
【0032】
なお、本実施の形態では、インサート成形によりロワーケース3のロワーケース本体31の環状突部33にダストシール6を取り付けているが、接着剤あるいはその他の方法により、ロワーケース3のロワーケース本体31の環状突部33にダストシール6を取り付けてもよい。
【0033】
センタープレート4は、必要に応じて潤滑油が含浸されたポリオレフィン樹脂等の摺動特性に優れた熱可塑性樹脂で形成され、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の載置面331に固定され、アッパーケース2のアッパーケース本体21に設けられた環状溝25の支持対象面27と摺接する。これにより、アッパーケース2に伝達されたストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持しつつ、アッパーケース2およびロワーケース3間の自在な回動を実現する軸受体として機能する。
【0034】
図5(A)、
図5(B)および
図5(C)は、センタープレート4の平面図、底面図および正面図であり、
図5(D)は、
図5(A)に示すセンタープレート4のF−F断面図であり、
図5(E)は、
図5(A)に示すセンタープレート4のG部拡大図である。
【0035】
図示するように、センタープレート4は、環状のセンタープレート本体40と、センタープレート本体40の上面41に形成された軸受面42と、センタープレート本体40の下面43の内周側から軸心O方向に沿って下方向に張り出して形成された環状リブ44と、円周方向に等間隔に形成され、センタープレート本体40の下面43から径方向外側に突き出す複数の回止め45と、を備える。
【0036】
軸受面42には、潤滑グリース溜め46が多数形成されている。
【0037】
環状リブ44は、センタープレート本体40の下面43とロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の載置面331とが接触するようにして、センタープレート4がロワーケース3上に載置された場合に、この環状突部33の内側に挿入される。
【0038】
回止め45は、センタープレート本体40の下面43とロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の載置面331とが接触するようにして、センタープレート4がロワーケース3上に載置された場合に、この環状突部33に設けられた回止め332同士の隙間335と円周方向に係合することにより、センタープレート4がロワーケース3に対して相対的に回転するのを防止する。
【0039】
上記構成を有する本実施の形態に係る滑り軸受1において、センタープレート4は、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に形成された環状突部33の載置面331に固定され、センタープレート4の軸受面42がアッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状溝25の支持対象面27と摺接する。このため、センタープレート4は、ロワーケース3のフランジ35の裏面350に取り付けられたアッパースプリングシートおよびストラット式サスペンションのコイルスプリングによって支持され、アッパーケース2およびロワーケース3間の回動を許容しつつ、アッパーケース4に伝達されたストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持する。
【0040】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0041】
本実施の形態によれば、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の外周側壁面333に、この環状突部33の外周側壁面333とアッパーケース2のアッパーケース本体21に設けられた環状溝25の外周側壁面250との隙間を塞ぐ外側シール部60の外側シール本体601を接合するとともに、この環状突部33の外周側壁面333に沿ってロワーケース3のロワーケース本体31の上面32の外周側に外側シール装着溝320を形成し、外側シール本体601の軸心O方向におけるロワーケース3側の端部604を、この外側シール装着溝320に装着させている。このため、外側シール部60の外側シール本体601がロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の外周側壁面333から剥離するのを防止して、環状空間5の密閉性が低下するのを防止できる。したがって、塵埃、泥水等の浸入による摺動性能の低下を防止することができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の内周側壁面334に、この環状突部33の内周側壁面334とアッパーケース2のアッパーケース本体21に設けられた環状溝25の内周側壁面251との隙間を塞ぐ内側シール部61の内側シール本体611を接合するとともに、この環状突部33の内周側壁面334に沿ってロワーケース3のロワーケース本体31の上面32の内周側に内側シール装着溝321を形成し、内側シール本体611の軸心O方向におけるロワーケース3側の端部614を、この内側シール装着溝321に装着させている。このため、内側シール部60の内側シール本体611がロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の内周側壁面334から剥離するのを防止して、環状空間5の密閉性が低下するのをより確実に防止できる。したがって、塵埃、泥水等の浸入による摺動性能の低下をより確実に防止することができる。
【0043】
また、本実施の形態に係る滑り軸受1は、センタープレート4の軸受面42に潤滑グリース溜め46を多数形成しているので、軸受面42上により多くの潤滑グリースを保持することができる。このため、軸受面42を潤滑グリース膜で覆うことができ、より長期に亘り、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリの円滑な回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持することができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る滑り軸受1は、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状溝25の溝底26に、アッパーケース2およびロワーケース3を組み合わせることにより形成される環状空間5に配置されたセンタープレート4の外周側の側面49を囲む環状の防壁28を設けている。この防壁28により、ストラット式サスペンションに荷重が加わった場合に、環状空間5に充填された潤滑グリースがセンタープレート4の軸受面41上から径方向外側に押し出されるのを防止して、軸受面42をより確実に潤滑グリース膜で覆うことができる。したがって、より長期に亘り、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリの円滑な回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持することができる。
【0045】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形は可能である。
【0046】
例えば、上記の実施の形態では、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の外周側壁面333に沿ってロワーケース3のロワーケース本体31の上面32の外周側に外側シール装着溝320を形成し、外側シール本体601の軸心O方向におけるロワーケース3側の端部604を、この外側シール装着溝320に装着させている。しかし、本発明はこれに限定されない。
図6に示すように、環状突部33の外周側壁面333に沿って環状突部33の上面330の外周側に外側シール装着溝320aを形成するとともに、外側シール本体601の軸心O方向におけるアッパーケース3側の端部605をフック形状として、この外側シール装着溝320aに装着することにより、外側シール部60がロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の外周側壁面333から剥離するのを防止してもよい。
【0047】
また、上記の実施の形態では、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の内周側壁面334に沿ってロワーケース3のロワーケース本体31の上面32の内周側に内側シール装着溝321を形成し、内側シール本体611の軸心O方向におけるロワーケース3側の端部614を、この内側シール装着溝321に装着させている。しかし、本発明はこれに限定されない。
図6に示すように、環状突部33の内周側壁面334に沿ってロワーケース本体31の上面32の内周側に内側シール装着溝321aを形成するとともに、内側シール本体611の軸心O方向におけるアッパーケース3側の端部615をフック形状として、この内側シール装着溝321aに装着することにより、内側シール部61がロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の内周側壁面334から剥離するのを防止してもよい。
【0048】
また、上記の実施の形態では、外側シール部60および内側シール部61が一体的に形成されたダストシール6を用いているが、本発明はこれに限定されない。外側シール部60および内側シール部61を別個の部品としてもよい。
【0049】
そして、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の外周側壁面333に外側シール部60を取り付ける代わりに、アッパーケース2のアッパーケース本体21に設けられた環状溝25の外周側壁面250に外側シール部を取り付けてもよい。この場合、外側シール部は、アッパーケース2のアッパーケース本体21に設けられた環状溝25の外周側壁面250に接合された筒状の外側シール本体と、シール本体の内周面から径方向内方に延びて、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の外周側壁面333と接触する環状の内側リップ部と、を有する。また、外側シール装着溝は、アッパーケース2のアッパーケース本体21に設けられた環状溝25の外周側壁面250に沿ってアッパーケース本体21の下面24に形成され、外側シール本体の軸方向におけるアッパーケース2側の端部が挿入される。
【0050】
また、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の内周側壁面334に内側シール部61を取り付ける代わりに、アッパーケース2のアッパーケース本体21に設けられた環状溝25の内周側壁面251に内側シール部を取り付けてもよい。この場合、内側シール部は、アッパーケース2のアッパーケース本体21に設けられた環状溝25の内周側壁面251に接合された筒状の内側シール本体と、シール本体の外周面から径方向外方に延びて、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の内周側壁面334と接触する環状の外側リップ部と、を有する。また、内側シール装着溝は、アッパーケース2のアッパーケース本体21に設けられた環状溝25の内周側壁面251に沿ってアッパーケース本体21の下面24に形成され、内側シール本体の軸方向におけるアッパーケース2側の端部が挿入される。
【0051】
また、上記の実施の形態では、外側シール部60および内側シール部61を用いているが、環状空間5への塵埃、泥水等の浸入に影響しないならば、外側シール部60および内側シール部61の一方を省略してもよい。
【0052】
また、上記の実施の形態では、センタープレート4をロワーケース3に載置し固定しているが、センタープレート4をロワーケース3に対して回動自在に載置してもよい。すなわち、センタープレート4の上面41と同様に、センタープレート4の下面43にも軸受面を形成し、この軸受面を、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に形成された環状突部33の載置面331と摺動可能に接触させてもよい。この場合、センタープレート4の下面43に形成された軸受面により多くの潤滑グリースを保持させるため、軸受面に潤滑グリース溜めを多数形成してもよい。
【0053】
また、本発明の滑り軸受は、ストラット式サスペンションを含む様々な機構において、軸部材の回動を許容しつつ、この軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:滑り軸受、 2:アッパーケース、 3:ロワーケース、 4:センタープレート、 5:環状空間、 6:ダストシール、 7:スチールプレート、 10:滑り軸受1の収容孔、 20:アッパーケース2の挿入孔、 21:アッパーケース本体、 22:アッパーケース本体21の上面、 23:アッパーケース本体21の取付面、 24:アッパーケース本体21の下面、 25:アッパーケース本体21の環状溝、 26:環状溝25の溝底、 27:アッパーケース本体21の支持対象面、 28:アッパーケース本体21の防壁、 30:ロワーケース3の挿入孔、 31:ロワーケース本体31、 32:ロワーケース本体31の上面、 33:ロワーケース本体31の環状突部、 34:ロワーケース本体31の側面、 35:ロワーケース本体31のフランジ、 40:センタープレート本体、 41:センタープレート本体41の上面、 42:センタープレート本体41の軸受面、 43:センタープレート本体41の下面、 44:センタープレート本体41の環状リブ、 45:センタープレート本体41の回止め、 46:軸受面42の潤滑グリース溜め、 49:センタープレート4の外周側の側面、 60:外側シール部、 61:内側シール部、 320:外側シール装着溝、 321:内側シール装着溝、 330:ロワーケース本体31の環状突部33の上面、 331:ロワーケース本体31の載置面、 332:ロワーケース本体31の回止め、 333:ロワーケース本体31の環状突部33の外周側へ液面、 334:ロワーケース本体31の環状突部33の内周側壁面、 335:回止め332同士の隙間、 350:フランジの裏面、 601:外側シール本体、 602:外側リップ部、 604、605:外側シール本体の端部、 611:内側シール本体、 612:内側リップ部、 614、615:内側シール本体の端部