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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-44276(P2017-44276A)
(43)【公開日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】電磁比例制御弁システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/124 20060101AFI20170210BHJP
【FI】
   F16K31/124
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-167474(P2015-167474)
(22)【出願日】2015年8月27日
(11)【特許番号】特許第5876185号(P5876185)
(45)【特許公報発行日】2016年3月2日
(71)【出願人】
【識別番号】512233259
【氏名又は名称】山路 憲平
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】山路 憲平
【テーマコード(参考)】
3H056
【Fターム(参考)】
3H056AA09
3H056BB07
3H056CA01
3H056CB02
3H056CB07
3H056CC06
3H056CC12
(57)【要約】
【課題】 スプリング力を小さくした上で所定の制御特性を得ることができ、小型コンパクト化が可能である電磁比例制御弁システムを得る。
【解決手段】 3位置比例制御弁10のメインスプールの両端に設けられてその移動制御を行う左右の位置制御装置20,30を備える。左右の位置制御装置はそれぞれ、メインスプールの端部に対向配置された位置フィードバックスプリング25,35、このスプリングを挟んでメインスプールの端部と反対側においてこのプリングに対向配置されたパイロット制御弁21,31、およびそのパイロットスプールにおける上記スプリングが対向する端部とは反対側の端部に電磁押圧力を加える比例ソレノイド27,37を備える。パイロットスプールが位置フィードバックスプリングの押圧付勢力および比例ソレノイドの電磁力を受けて移動されてパイロット制御弁が作動制御され、その出力圧をパイロットスプールの両端に作用させて、比例ソレノイドの電磁力に対して逆特性で出力圧を出力させる制御を行う。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3位置比例制御弁と、前記3位置比例制御弁のメインスプールの両端に設けられて前記メインスプールの移動制御を行う左右の位置制御装置とを備えて構成され、
前記左右の位置制御装置はそれぞれ、前記メインスプールの端部に対向して押圧付勢可能な位置フィードバックスプリング、前記位置フィードバックスプリングを挟んで前記メインスプールの端部と反対側において前記位置フィードバックスプリングに対向配置されたパイロット制御弁、および前記パイロット制御弁のパイロットスプールにおける前記位置フィードバックスプリングが対向する端部とは反対側の端部に電磁押圧力を加える比例ソレノイドを備え、
前記パイロットスプールは前記位置フィードバックスプリングの押圧付勢力および前記比例ソレノイドの電磁力を受けて移動されて前記パイロット制御弁が作動制御され、その出力圧を前記パイロットスプールの両端に作用させて、前記比例ソレノイドの電磁力に対して逆特性で前記出力圧を出力させる制御を行うように構成されたことを特徴とする電磁比例制御弁システム。
【請求項2】
前記メインスプールが中立位置から左右いずれかに移動されたときに、移動側の前記位置フィードバックスプリングが前記メインスプールにより押圧圧縮され、移動側と反対側においては前記メインスプールの反対側端部が反対側の前記位置フィードバックスプリングから離れるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁比例制御弁システム。
【請求項3】
前記移動側と反対側の位置制御装置は、前記比例ソレノイドの電磁力に対して発生する前記パイロット制御弁の出力圧が逆特性を有し、この位置制御装置は電磁比例減圧弁として作用することを特徴とする請求項2に記載の電磁比例制御弁システム。
【請求項4】
前記移動側の位置制御装置は、前記メインスプールによる押圧圧縮により変化する前記位置フィードバックスプリングのスプリング力を前記パイロットスプールに作用させて前記パイロット制御弁をフィードバック制御させ、前記比例ソレノイドの電磁力に対する閉ループ制御を行うように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の電磁比例制御弁システム。
【請求項5】
前記左右の位置制御装置のそれぞれにおいて、前記比例ソレノイドと並列に押圧力調整手段を設け、前記押圧力調整手段により調整された付加押圧力を、前記比例ソレノイドの電磁力に加えて、前記パイロットスプールにおける前記位置フィードバックスプリングが対向する端部とは反対側の端部に加えるように構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電磁比例制御弁システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁力を用いてスプール位置制御を行う電磁比例制御弁を用いたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
方向切換弁としては、3位置方向(順方向の流体供給位置、供給停止位置および逆方向の流体供給位置)の流体供給切換制御を行う3位置方向切換弁が知られている。この方向切換弁は、単純に3位置のオン・オフ切換を行うものもあるが、スプールが供給停止位置(中立位置)にあるときから、スプールの移動に応じて供給流体量を比例制御するものもある。このときのスプールの移動は、手動により直接制御するものもあるが、パイロット圧を用いた比例制御弁や、電気的に作動制御する(電磁力を用いて作動制御する)比例制御弁も良く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電気的に作動制御する3位置方向切換弁のシステム構成の一例を図7に示している。このシステムは、3位置比例制御弁100に加えて、そのスプール位置制御のために、左右のスプリング102a,102bと、パイロット圧供給源115からスプール左右端部へのパイロット圧供給制御を行う左右の電磁比例減圧弁111,112とを備える。3位置比例制御弁100は、スプール位置に応じて中立位置(供給停止位置)101cと、左作動位置101aと、右作動位置101bとを切換設定するもので、スプール位置を中立位置101cに設定することによりアクチュエータ108への油圧供給を停止し、左作動位置101aに設定(左作動位置101aを図示の中立位置101cの所に設定)することにより油圧ポンプ105からの作動油をアクチュエータ108の左油室(ボトム油室)に供給するとともに右油室(ロッド油室)の油をタンク106に排出させ、右作動位置101bに設定することにより油圧ポンプ105からの作動油をアクチュエータ108の右油室に供給するとともに左油室の油をタンク106に排出させる。
【0004】
3位置比例制御弁100の位置制御、すなわちスプール位置制御を行うには、電磁比例減圧弁111,112に作動指令信号を送り、作動指令信号に応じたパイロット圧をスプール端部に作用させる。例えば、スプールを左動させるには、右の電磁比例減圧弁112によりパイロット圧をスプールの右端部に作用させる。これによりスプールは左方向に押圧され、左スプリング102aのスプリング力と釣り合う左動位置に移動され、上述した右作動位置101bが設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−98936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような構成のシステムにおいて、電磁比例減圧弁の動作範囲と制御精度、パイロット圧を受けるスプール端部の面積、スプールに作用する流体力、スプール移動に対する摩擦力などの外乱要因の影響を抑えるために必要とされる力、スプールを確実に中立位置に復帰させるために必要な力等を考慮すると、必要なスプリング力は比較的大きなものになり、大きなサイズのスプリングが必要となるという問題がある。さらに、電磁比例制御弁はスプリングを収容するスプリング室に一体的に設置することが望ましいが、このためには、3位置比例制御弁のスプール端部側に大きな空間を必要とし、制御弁が大型化するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、スプリング力を小さくした上で所定の制御特性を得ることができ、小型コンパクト化が可能である電磁比例制御弁システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するため、本発明に係る電磁比例制御弁システムは、3位置比例制御弁と、前記3位置比例制御弁のメインスプールの両端に設けられて前記メインスプールの移動制御を行う左右の位置制御装置とを備えて構成され、前記左右の位置制御装置はそれぞれ、前記メインスプールの端部に対向して押圧付勢可能な位置フィードバックスプリング、前記位置フィードバックスプリングを挟んで前記メインスプールの端部と反対側において前記位置フィードバックスプリングに対向配置されたパイロット制御弁、および前記パイロット制御弁のパイロットスプールにおける前記位置フィードバックスプリングが対向する端部とは反対側の端部に電磁押圧力を加える比例ソレノイドを備え、前記パイロットスプールは前記位置フィードバックスプリングの押圧付勢力および前記比例ソレノイドの電磁力を受けて移動されて前記パイロット制御弁が作動制御され、その出力圧を前記パイロットスプールの両端に作用させて、前記比例ソレノイドの電磁力に対して逆特性で前記出力圧を出力させる制御を行うように構成される。
【0009】
上記の電磁比例制御弁システムにおいて、好ましくは、前記メインスプールが中立位置から左右いずれかに移動されたときに、移動側の前記位置フィードバックスプリングが前記メインスプールにより押圧圧縮され、移動側と反対側においては前記メインスプールの反対側端部が反対側の前記位置フィードバックスプリングから離れるように構成される。
【0010】
上記の電磁比例制御弁システムにおいて、好ましくは、前記移動側と反対側の位置制御装置は、前記比例ソレノイドの電磁力に対して発生する前記パイロット制御弁の出力圧が逆特性を有し、この位置制御装置は電磁比例減圧弁として作用する。
【0011】
上記の電磁比例制御弁システムにおいて、好ましくは、前記移動側の位置制御装置は、前記メインスプールによる押圧圧縮により変化する前記位置フィードバックスプリングのスプリング力を前記パイロットスプールに作用させて前記パイロット制御弁をフィードバック制御させ、前記比例ソレノイドの電磁力に対する閉ループ制御を行うように構成される。
【0012】
上記の電磁比例制御弁システムにおいて、好ましくは、前記左右の位置制御装置のそれぞれにおいて、前記比例ソレノイドと並列に押圧力調整手段を設け、前記押圧力調整手段により調整された付加押圧力を、前記比例ソレノイドの電磁力に加えて、前記パイロットスプールにおける前記位置フィードバックスプリングが対向する端部とは反対側の端部に加えるように構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電磁比例制御弁システムによれば、位置フィードバックスプリングを小型化することができ、このスプリングをパイロット制御弁と一体化することにより、システムをコンパクトな構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る電磁比例制御弁システムの概略構成を示す説明図である。
図2】前記電磁比例制御弁システムの位置制御装置の構成を詳しく示しながらシステムの全体構成を示す説明図である。
図3図2に示す電磁比例制御弁システムにおける右側の位置制御装置を詳しく示す構成説明図である。
図4】上記右側の位置制御装置による制御特性を示すグラフである。
図5図2に示す電磁比例制御弁システムにおける左側の位置制御装置を詳しく示す構成説明図である。
図6】本発明にかかる電磁比例弁制御システムおよび従来の比例制御弁システムにおけるスプールストロークと制御圧との関係を示すグラフである。
図7】従来の比例制御弁システムを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る電磁比例制御弁システムは、図1に示すように、油圧ポンプ15からの作動油をアクチュエータ18に供給する制御を、3位置比例制御弁10により行うもので、3位置比例制御弁10の作動を制御する左位置制御装置20および右位置制御装置30を備える。これら左右の位置制御装置20,30は、3位置比例制御弁10のメインスプール11の移動位置を制御するもので、3位置比例制御弁10を左作動位置10a、中立位置10cおよび右作動位置10bのいずれかに設定する。
【0016】
具体的には、中立位置10cに設定することにより、油圧ポンプ15からのアクチュエータ18への油圧供給を停止し、左作動位置10aに設定(左作動位置10aを図示の中立位置10cの所に移動)することにより油圧ポンプ15からの作動油をアクチュエータ18の左油室(ボトム油室)に供給するとともに右油室(ロッド油室)の油をタンク16に排出させ、右作動位置10bに設定することにより油圧ポンプ15からの作動油をアクチュエータ18の右油室に供給するとともに左油室の油をタンク16に排出させる。なお、左作動位置10aもしくは右作動位置10bに設定するときには、メインスプール11の移動量に応じて油圧ポンプ15からアクチュエータ18に供給する油量を制御(比例制御)する。
【0017】
左右の位置制御装置20,30は、図2にその構成を詳しく示すように、メインスプール11を挟んで左右対称に構成される。なお、図2においては、3位置比例制御弁10のハウジング14およびこのハウジング14により軸方向に移動自在に支持されたメインスプール11のみを示しており、その他の構成は省略している。左右の位置制御装置20,30はそれぞれ、左右のパイロット制御弁21,31と、左右の位置フィードバックスプリング25,35と、左右の比例ソレノイド27,37とを備える。3位置比例制御弁10のハウジング14内に、メインスプール11の左右端部に対向して左右の収容室12a,12bが形成されている。メインスプール11の左右端部はこれら左右の収容室12a,12bに対向し、左右の収容室12a,12b内には左右の位置フィードバックスプリング25,35がそれぞれ配置されている。これら位置フィードバックスプリング25,35は図示のように、内側支持板25b,35bを介してメインスプール11の左右端部とそれぞれ当接するようになっている。
【0018】
さらに、左右の収容室12a,12bの外側に位置フィードバックスプリング25,35とそれぞれ対向して左右のパイロット制御弁21,31が設けられている。これら左右のパイロット制御弁21,31のパイロットスプールの内側端部が、プッシュピン25c,35cおよび外側支持板25a,35aを介して位置フィードバックスプリング25,35と対向当接し、パイロットスプールの外側端部が左右の比例ソレノイド27,37と対向当接する。このため、左右のパイロット制御弁21,31のパイロットスプールは、内側から位置フィードバックスプリング25,35の付勢力を受け、外側からは左右の比例ソレノイド27,37の押圧力を受ける。比例ソレノイド27,37は制御ライン29a,39aを介してコントローラ29,39に繋がり、コントローラ29,39からの制御信号を受けて作動される。なお、コントローラ29,39は一体構成である。
【0019】
左右のパイロット制御弁21,31には、パイロット圧供給源23,33からのパイロット圧ライン23a,33aと、タンク24,34に至るタンクライン24a,34aと、出力ライン22,32が繋がっている。出力ライン22,32は、左右のパイロット制御弁21,31の出力ポートに繋がる第1出力ライン22a,32aと、ここから左右に分岐した第2出力ライン22b,32bおよび第3出力ライン22c,32cを有する。第2出力ライン22b,32bはそれぞれ左右のパイロット制御弁21,31の外側端部油室に繋がり、第3出力ライン22c,32cは上記左右の収容室12a,12bに繋がる。このため、左右の収容室12a,12bの内圧がプッシュピン25c,35cを介してパイロットスプールの内側端部に作用し、これと同一圧力の油圧がパイロットスプールの外側端部にも作用する。図においてプッシュピン径がパイロットスプール径より小さく示されているように内側端部の受圧面積は外側端部の受圧面積より小さい。なお、パイロット圧供給源23,33は同一のものであり、同一のパイロット圧を供給する。タンク24,34は一体のものであっても良い。
【0020】
左右のパイロット制御弁21,31は、パイロットスプールの移動に応じて、中立位置21c,31c、外側作動位置21a,31aおよび内側作動位置21b,31bに設定される構成である。中立位置21c,31cに設定されたときには、パイロット圧ライン23a,33aおよびタンクライン24a,34aと出力ライン32の連絡が遮断される。内側作動位置21b,31bに設定されたときには、パイロット圧ライン23a,33aと出力ライン22,32が繋がり、パイロット圧供給源23,33からパイロット圧が出力ライン22,32に供給される。一方、外側作動位置21a,31aに設定されたときにはタンクライン24a,34aと出力ライン22,32が繋がり、出力ライン22,32からタンク24,34に油が排出される。
【0021】
以上のように構成された電磁比例制御弁システムにより、油圧ポンプ15からアクチュエータ18への作動油供給を制御する作動を説明する。図2には、メインスプール11が距離Xだけ左動した状態を示しており、まず、この状態での右位置制御装置30の作動を説明する。右位置制御装置30においては、右内側支持板35bがハウジング14に当接しており、メインスプール11は右内側支持板35bから離れている。このため、右位置フィードバックスプリング35からメインスプール11に付勢力が作用せず、逆に言えば、右位置フィードバックスプリング35にはメインスプール11からの押圧力が作用しない。
【0022】
この状態での右位置制御装置30を図3に詳しく示している。右比例ソレノイド37と並列に右調整機構38があり、右調整ネジ38bにより付勢力が調整可能となった右調整スプリング38aを備える。このときの、右比例ソレノイド37から右パイロット制御弁31の右パイロットスプールに作用する内側への電磁押圧力をF(R)solとし、右位置フィードバックスプリング35から右パイロットスプールに作用する外側への付勢力をF(R)fbとし、右調整スプリング38aから右パイロットスプールに作用する内側への押圧力を
F(R)adとし、右収容室12b内の油圧をPbとし、右パイロットスプールにおける右収
容室12bからの油圧を受ける受圧面積をA(R)yとし、右パイロットスプールの右側(
外側)端部における右出力ライン32からの油圧を受ける受圧面積をA(R)zとすると、
右パイロットスプールに作用する力関係を示す下記の条件式(1)が成立する。なお、A(R)y>A(R)zとなるように両受圧面積が設定されている。
【0023】
(数1)
Pb*(A(R)y−A(R)z)+F(R)sol+F(R)ad=F(R)fb ・・・(1)
この条件式(1)から右収容室12b内の油圧Pb、すなわち、右パイロット制御弁31により調圧される出力ライン32の圧力である左制御圧力Pbは、条件式(2)で表さ
れる。
(数2)
Pb=[−F(R)sol+(F(R)fb−F(R)ad)]/(A(R)y−A(R)z)・・・(2)
【0024】
条件式(2)において、右位置フィードバックスプリング35の付勢力F(R)fbおよび
右調整スプリング38aによる押圧力F(R)adは一定で、メインスプール11の受圧面積
をA(R)yおよび右パイロットスプールの受圧面積をA(R)zも一定(但し、A(R)y>A(R)z)であるので、右比例ソレノイド37の電磁押圧力F(R)solを制御すれば、右制御圧力Pbを制御できることが分かる。条件式(2)において、右制御圧力Pbは負の値となることから分かるように、電磁押圧力F(R)solに反比例する関係である。この関係を図4に示しており、この図では縦軸に右制御圧力Pbを示し、横軸に電磁押圧力F(R)solを示している。このことから分かるように、この状態における右位置制御装置30は、電磁比例減圧弁として作用する。
【0025】
なお、図3に示す状態から右制御圧力Pbが高くなると、受圧面積A(R)y>A(R)zの関係から、右パイロットスプールが左に押され、右パイロット制御弁31は外側作動位置31aが設定される。これにより右収容室12b内の作動油がタンク34に排出されて右制御圧力Pbが下がり、右パイロットスプールが右に戻される。一方、右制御圧力Pbが低くなると、右パイロットスプールが右に移動し、右パイロット制御弁31は内側作動位置31bが設定され、出力ライン32にパイロット圧供給源33からパイロット圧が供給されて右制御圧力Pbが上がり、右パイロットスプールが左に戻される。以上の作動により、右パイロットスプールは図3に示す状態、すなわち、電磁押圧力Fsolにより決まる
条件式(2)の関係が成立する位置に保持され、右制御圧力Pbは電磁押圧力Fsolに対
応して条件式(2)により決まる圧力に維持される。
【0026】
次に図2に示す状態における左位置制御装置20を図5に詳しく示している。左位置制御装置20においても右位置制御装置30と同様に、左調整ネジ28bにより付勢力が調整可能となった左調整スプリング28aを備えた左調整機構28が、左比例ソレノイド27と並列に設けられている。この状態では、メインスプール11が左収容室12a内に突出して左内側支持板25bを介して左位置フィードバックスプリング25を押圧圧縮している。このときの、左比例ソレノイド27から左パイロット制御弁21の左パイロットスプールに作用する内側への電磁押圧力をF(L)solとし、このように圧縮された状態の左位置フィードバックスプリング25から左パイロットスプールに作用する外側への付勢力をF(L)fbとし、左調整スプリング28aから左パイロットスプールに作用する内側への押
圧力をF(L)adとし、左収容室12a内の油圧をPaとし、メインスプール11の受圧面
積(収容室12a,12bからの圧力を受ける面積であり、左右同一の面積である)をAspとし、左パイロットスプールにおける左収容室12aからの油圧を受ける受圧面積をA(L)yとし、左パイロットスプールの左側(外側)端部における左出力ライン22からの
油圧を受ける受圧面積をA(L)zとする。その上で、メインスプール11および左パイロ
ットスプールに作用する力関係を考える。なお、A(L)y>A(L)zであり、左位置フィードバックスプリング25のバネ定数がKであり、左位置フィードバックスプリング25が中立位置のとき(X=0のとき)のスプリング力をF(L)fb0とする。
【0027】
まず、メインスプール11に作用する力関係は下記条件式(3)で表せる。
(数3)
Asp*Pa+F(L)fb=Asp*Pb ・・・(3)
【0028】
一方、左位置フィードバックスプリング25が中立位置のとき(X=0のとき)のメインスプール11に作用する力関係は下記条件式(4)で表せる。但し、メインスプール11が右内側支持板35bと当接する直前位置での力関係で、メインスプール11の右動開
始位置での力関係である。また、このときの収容室12a内の油圧をPa0とする。
(数4)
Asp*Pa0+F(L)fb0=Asp*Pb ・・・(4)
【0029】
左パイロット制御弁21の左パイロットスプールに作用する力関係は下記条件式(5)となる。
(数5)
F(L)sol+F(L)ad+Pa*A(L)y=F(L)fb+Pa*A(L)z ・・・(5)
【0030】
また、左位置フィードバックスプリング25が中立位置のとき(X=0のとき)の左パイロットスプールに作用する力関係は下記条件式(6)で表せる。
(数6)
Pa0*(A(L)y−A(L)z)+F(L)sol0+F(L)ad=F(L)fb0 ・・・(6)
【0031】
上記条件式(3)〜(6)を整理すると、下記の条件式(7)が得られる。
(数7)
F(L)sol=(F(L)fb−F(L)fb0)*[1+(A(L)y−A(L)z)/Asp]+F(L)sol0
・・・(7)
また、左位置フィードバックスプリング25の特性から下記条件式(8)が成立する。
(数8)
F(L)fb=K*X+F(L)fb0 ・・・(8)
【0032】
条件式(7)および(8)から下記の条件式(9)が得られる。
(数9)
F(L)sol=K*[1+(A(L)y−A(L)z)/Asp]*X+F(L)sol0 ・・・(9)
【0033】
上記条件式(9)において、K*[1+(A(L)y−A(L)z)/Asp]およびF(L)sol0 はともに定数であるので、左比例ソレノイド27の押圧力とメインスプール11のス
トロークXは比例関係にあることが分かる。ここで、左比例ソレノイド27の電磁押圧力F(L)solを増加させると、パイロットスプールを右動させて左パイロット制御弁21を外側作動位置21bに設定し、出力ライン22をタンクに接続させる。この結果、左収容室12a内の左制御油圧Paが下がるので、メインスプール11が左に動き、左位置フィードバックスプリング25を圧縮し、パイロットスプールを押し戻す。そして、上記条件式(9)の関係が成立する状態でパイロットスプールが釣り合って停止する。このようにメインスプール11の位置が、左位置フィードバックスプリング25を介して、指令(左比例ソレノイド27の電磁押圧力F(L)sol)に対し、閉ループ制御される。
【0034】
ここで、図7に示した従来の3位置比例制御弁100の場合と、上記実施形態に係る電磁比例制御弁システムに係る3位置比例制御弁10の場合との比較を説明する。図7の従来の3位置比例制御弁100の場合において、例えば、スプール径が28mmで、中立位置からいずれか片方への最大ストローク10mmで、電磁比例減圧弁111,112のパイロット圧制御範囲を2.5barから26barとした場合、スプリング102a,102bには取付荷重15.4kgf、10mmの最大ストローク10mm時に最大荷重160.0kgfの仕様のものが必要である。
【0035】
一方、上記本発明の実施形態に係る電磁比例制御弁システムにおいては、メインスプール径28mmで、左右いずれか片方への最大ストローク10mmの場合、比例ソレノイドの電磁力を最大1.5kgfとし、電磁力が0kgfのときの制御圧力を20bar、パイロット
スプール内外端受圧面積差(上記A(L)y−A(L)z)を4.50mm2 とすると、取付荷重0.9kgf、10mmストローク時の最大荷重2.4kgfの小さな位置フィードバックスプ
リング25,35とすることができる。このようにスプリングの最大荷重を160kgfか
ら2.4kgfまで、約1/67に小型化することが可能である。
【0036】
以上説明した本願発明の実施形態に係る電磁比例制御弁システムによれば、位置フィードバックスプリング25,35を小型化することができ、さらに、このスプリングをパイロット制御弁21,31と一体化することにより、システムをコンパクトな構成とすることができる。
【0037】
また、図7に示す従来の電磁比例弁制御システムでは大きな対向スプリングを圧縮させる構成であるため、図6(B)に示すように、スプールの中立位置でこれを保持するに必要なスプリング力が必要とする上に、ストロークの増加に応じてスプリング力が増加し大きなバネ圧縮エネルギーが蓄積される。また、スプールを中立位置に戻すときにはこのように蓄積された大きなエネルギーが解放されるので、スプール作動速度に対する制御性は良くない。これに対して上記本発明の実施形態に係る電磁比例制御弁システムでは、位置フィードバックスプリング25,35を収容する収容室12a,12b内の制御圧力Pa,Pb、すなわちパイロット制御弁21,31の出力圧は概ね一定であるので、図6(A)に示すように、位置フィードバックスプリング25,35のメータインおよびメータアウトの制御用オリフィスを通る差圧ΔPpは概ね一定で、制御性をメインスプール11のストローク全般に亘り一定で且つ良好に保つことができる。
【0038】
さらに、図5において示すように、メインスプール11により位置フィードバックスプリングが圧縮される側においては閉ループ制御されるため、位置保持の剛性を、制御圧を用いて高くすることかでき、小型の位置フィードバックスプリングを使用しつつも、流体力や、流体固着力などの外乱の影響を受けにくく、高精度の位置制御が可能である。
【0039】
また、不測の事態により指令信号が断たれたような場合にも従来の制御システムと同じ動作が補償される。例えば、左右両方の比例ソレノイド27,37の制御信号が断たれるとメインスプール11は中立位置に復帰する。図3で示す側の位置制御装置において比例ソレノイドの制御信号が断たれた場合には、現在のメインスプール11の位置を保持する。さらに、この状態から反対側の位置制御装置を用いてメインスプール11を中立位置に戻すことが可能である。図5で示す側の位置制御装置において比例ソレノイドの制御信号が断たれた場合には、収容室の内圧が高くなってメインスプールが反対側に押されるが、これにより反対側の位置制御装置が位置制御を開始し、メインスプールの両端の圧力が等しくなるまで(左右の収納室の圧力が等しくなるまで)この位置制御が行われ、メインスプールは中立位置近傍に戻って保持される。
【符号の説明】
【0040】
10 3位置比例制御弁 11 メインスプール
15 油圧ポンプ 16 タンク
20,30 左右の位置制御装置 21,31 左右のパイロット制御弁
25,35 左右の位置フィードバックスプリング
27,37 左右の比例ソレノイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2015年12月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3位置比例制御弁と、前記3位置比例制御弁のメインスプールの両端に設けられて前記メインスプールの移動制御を行う左右の位置制御装置とを備えて構成され、
前記左右の位置制御装置はそれぞれ、前記メインスプールの端部に対向して押圧付勢可能な位置フィードバックスプリング、前記位置フィードバックスプリングを挟んで前記メインスプールの端部と反対側において前記位置フィードバックスプリングに対向配置されたパイロット制御弁、および前記パイロット制御弁のパイロットスプールにおける前記位置フィードバックスプリングが対向する端部とは反対側の端部に電磁押圧力を加える比例ソレノイドを備え、前記パイロット制御弁から出力されるパイロット制御圧が前記パイロットスプールの左右端部に作用するように構成され、
左右の前記パイロット制御弁から出力される左右のパイロット制御圧が前記メインスプールの左右の端部に作用して前記メインスプールの位置制御が行われる構成を有し、
前記メインスプールが中立位置から左右いずれかに移動されたときに、移動側の前記位置フィードバックスプリングが前記メインスプールにより押圧圧縮され、移動側と反対側においては前記メインスプールの反対側端部が反対側の前記位置フィードバックスプリングから離れるように構成されており、
前記移動側の前記パイロット制御弁において、前記パイロットスプールは前記位置フィードバックスプリングの押圧付勢力および前記比例ソレノイドの電磁力を受けるとともに左右端部にパイロット制御圧による押圧力を受け、これらの力に応じて前記パイロットスプールが移動されて前記パイロット制御弁が作動制御され、前記メインスプールの端部に作用するパイロット制御圧を前記比例ソレノイドの電磁力に対し逆特性で制御して前記メインスプールの位置制御が行われるように構成されたことを特徴とする電磁比例制御弁システム。
【請求項2】
前記パイロットスプールの左右端部におけるパイロット制御弁から出力されるパイロット制御圧を受ける面積が、前記位置フィードバックスプリングに対抗する端部より前記ソレノイドの電磁力を受ける側の方が大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁比例制御弁システム。
【請求項3】
前記移動側と反対側の位置制御装置は、前記比例ソレノイドの電磁力に対して発生する前記パイロット制御弁の出力圧が逆特性を有し、この位置制御装置は電磁比例減圧弁として作用することを特徴とする請求項2に記載の電磁比例制御弁システム。
【請求項4】
前記移動側の位置制御装置は、前記メインスプールによる押圧圧縮により変化する前記位置フィードバックスプリングのスプリング力を前記パイロットスプールに作用させて前記パイロット制御弁をフィードバック制御させ、前記比例ソレノイドの電磁力に対する閉ループ制御を行うように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の電磁比例制御弁システム。
【請求項5】
前記左右の位置制御装置のそれぞれにおいて、前記比例ソレノイドと並列に押圧力調整手段を設け、前記押圧力調整手段により調整された付加押圧力を、前記比例ソレノイドの電磁力に加えて、前記パイロットスプールにおける前記位置フィードバックスプリングが対向する端部とは反対側の端部に加えるように構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電磁比例制御弁システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
このような目的を達成するため、本発明に係る電磁比例制御弁システムは、3位置比例制御弁と、前記3位置比例制御弁のメインスプールの両端に設けられて前記メインスプールの移動制御を行う左右の位置制御装置とを備えて構成され、前記左右の位置制御装置はそれぞれ、前記メインスプールの端部に対向して押圧付勢可能な位置フィードバックスプリング、前記位置フィードバックスプリングを挟んで前記メインスプールの端部と反対側において前記位置フィードバックスプリングに対向配置されたパイロット制御弁、および前記パイロット制御弁のパイロットスプールにおける前記位置フィードバックスプリングが対向する端部とは反対側の端部に電磁押圧力を加える比例ソレノイドを備え、前記パイロット制御弁から出力されるパイロット制御圧が前記パイロットスプールの左右端部に作用するように構成され、左右の前記パイロット制御弁から出力される左右のパイロット制御圧が前記メインスプールの左右の端部に作用して前記メインスプールの位置制御が行われる構成を有する。そして前記メインスプールが中立位置から左右いずれかに移動されたときに、移動側の前記位置フィードバックスプリングが前記メインスプールにより押圧圧縮され、移動側と反対側においては前記メインスプールの反対側端部が反対側の前記位置フィードバックスプリングから離れるように構成されており、前記移動側の前記パイロット制御弁において、前記パイロットスプールは前記位置フィードバックスプリングの押圧付勢力および前記比例ソレノイドの電磁力を受けるとともに左右端部にパイロット制御圧による押圧力を受け、これらの力に応じて前記パイロットスプールが移動されて前記パイロット制御弁が作動制御され、前記メインスプールの端部に作用するパイロット制御圧を前記比例ソレノイドの電磁力に対し逆特性で制御して前記メインスプールの位置制御が行われる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記の電磁比例制御弁システムにおいて、好ましくは、前記パイロットスプールの左右端部におけるパイロット制御弁から出力されるパイロット制御圧を受ける面積が、前記位置フィードバックスプリングに対抗する端部より前記ソレノイドの電磁力を受ける側の方が大きく設定されている