【解決手段】フレーム構造体1の一部を構成する制御装置62は、テープ12の移動動作の実行前に、変形の途中または完了時における三次元フレーム構造の安定性を評価する安定性評価部74と、安定性評価部74により不安定的であると評価された場合、三次元フレーム構造の不安定状態を回避させる移動動作の実行をテープ移動部61に対して指示する移動指示部75と、を有している。
前記移動指示部は、安定的であると評価された場合に前記移動動作の実行を指示し、不安定的であると評価された場合に前記移動動作の実行の指示を保留することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレーム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るフレーム構造体について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、曲げ剛性の異方性がある帯状のテープを折り曲げて三次元フレーム構造を形成するフレーム構造体について説明する。
【0017】
[フレーム本体10の構造]
<基本構造>
図1は、この実施形態に係るフレーム構造体1の一部を構成するフレーム本体10を示す斜視図である。
図2は、
図1のフレーム本体10を示す上面図である。
図3は、三次元フレーム構造が1本のテープ12より形成されていることを示す模式図である。
【0018】
図1に示すように、フレーム本体10は、帯状のテープ12と、テープ12同士を結束する結束部材13と、テープ12の一部を集約する第1ジョイント部14(集約手段)お
よび第2ジョイント部15a〜15c(集約手段)と、テープ12を繰り出し可能に巻き取るための巻取部16から略構成されている。
【0019】
テープ12は、有端状で長さ方向Cに沿って湾曲させることが可能な金属製の材質で構成されている。このテープ12は、はじめは巻取部16に巻き取られており、先端部21が巻取部16に係合可能に構成されている。
【0020】
図1および
図2に示すように、まず、テープ12を繰り出し、稜線部22a〜22f(以下、総称して稜線部22ともいう。)と、折曲部23a〜23f(以下、総称して折曲部23ともいう。)と、底辺部24a〜24c(以下、総称して底辺部24ともいう。)を形成する。そして、先端部21を巻取部16に係合し、既に繰り出された先端部21から基端部25までの範囲のテープ12により、四面体の三次元フレーム構造を形成する。
【0021】
図3に示すように、より具体的には、テープ12の先端部21を長さ方向Cに繰り出して稜線部22a、折曲部23a、底辺部24a、折曲部23b、稜線部22b、折曲部23cを形成する。以下、長さ方向Cのうち、巻取部16から先端部21側にテープ12を繰り出す方向を「繰り出し方向Cf」という。一方、長さ方向Cのうち、先端部21から巻取部16側にテープ12を繰り込む方向を「繰り込み方向Cb」という。
【0022】
同様に、繰り出し方向Cfに繰り出して稜線部22c、折曲部23d、底辺部24b、折曲部23e、稜線部22d、折曲部23fを形成する。さらに、繰り出し方向Cfに繰り出して稜線部22e、折曲部23g、底辺部24c、折曲部23h、稜線部22fを形成することにより、帯状の一本のテープ12により三次元フレーム構造を形成する。なお、折曲部23における曲率あるいは折り曲げ角度は任意(鋭角、鈍角、または直角)である。
【0023】
図1から
図3に示すように、底辺部24は、テープ12が1重に配置されており、稜線部22aと稜線部22f、稜線部22bと稜線部22c、稜線部22dと稜線部22eは、テープ12が2重に配置される。そして、四面体の頂上部Aの近傍と底面頂部Bの近傍の2箇所で結束部材13により結束して互いの稜線部22を平行に成型する。
【0024】
<第1ジョイント部14>
図1および
図2に示すように、第1ジョイント部14は、テープ12により形成された四面体の頂上部Aに配置されており、並列に配置された2つのガイドローラ41a、41b(以下、総称してガイドローラ41ともいう。)と、ガイドローラ41a、41bをそれぞれ回動可能に連結する連結部材42とから構成されている。
【0025】
ガイドローラ41は、円柱形状を有しており、周面上にテープ12を巻回することにより折曲部23cと折曲部23fを形成する。
【0026】
連結部材42は、金属製の材質で構成されている。この連結部材42は、上面視すると三叉形状を有しており、ガイドローラ41の周面上でテープ12が摺動可能にガイドローラ41の回転軸と連結する軸連結部と、巻取部16と連結する巻取連結部とから構成されている。この軸連結部と巻取連結部により、2つのガイドローラ41と巻取部16とを連結する。
【0027】
<第2ジョイント部15a〜15c>
図1および
図2に示すように、第2ジョイント部15a〜15c(以下、総称して第2ジョイント部15ともいう。)は、テープ12により形成された四面体の底面頂部Bにそれぞれ配置されており、テープ12を厚み方向から挟持する一対の駆動ローラ51a、5
1b、51d、51e、51g、51h(以下、総称して一対の駆動ローラ51ともいう。)と、一対の駆動ローラ51をそれぞれ回動可能に支持する3つの摺動ガイド52a〜52c(以下、総称して摺動ガイド52ともいう。)から構成されている。
【0028】
一対の駆動ローラ51a、51b、51d、51e、51g、51hは、円柱形状を有しており、周面上にテープ12を巻回することにより折曲部23a、23b、23d、23e、23g、23hをそれぞれ形成する。この一対の駆動ローラ51は、上面視すると上下方向に一対配置されるとともに四面体の底面頂部Bに2つずつ上下方向に配置されている。
【0029】
また、一対の駆動ローラ51は、モータ63(
図4参照)により回転駆動が可能であり、少なくとも一方が回転することによりテープ12の繰り出しおよび繰り込みを行う。
【0030】
摺動ガイド52は、側面視すると略逆T字形状を有しており、一対の駆動ローラ51に繰り込まれるテープ12の折れ曲がりを強制するガイド部材である。摺動ガイド52aは一対の駆動ローラ51h、51aを、摺動ガイド52bは一対の駆動ローラ51b、51dを、摺動ガイド52cは一対の駆動ローラ51e、51gをそれぞれ回動可能に支持する。
【0031】
[フレーム本体10の取扱方法]
<変形方法>
図1〜
図3に示すように、フレーム本体10は、折曲部23a〜23hが第1ジョイント部14または第2ジョイント部15により集約され、集約箇所Fの全てを頂部(頂上部Aまたは底面頂部B)とする四面体の三次元フレーム構造を構成している。そして、この三次元フレーム構造は変形することが可能である。なお、上述したように構成されたフレーム本体10の「集約箇所F」は、機械的な固い結合でも緩い結合でもよい。
【0032】
このフレーム本体10は、駆動ローラ51が回転することによりテープ12の繰り出しおよび繰り込みが可能であるため、繰り出しおよび繰り込みによりテープ12を移動、第1ジョイント部14および第2ジョイント部15の位置を移動することにより、三次元フレーム構造を所定の形状に変化することができる。たとえば、直稜四面体の形状、垂心四面体の形状、当面四面体の形状等、様々な四面体の形状に形成することができる。
【0033】
また、上述したように構成されたフレーム本体10のテープ12は、曲げ剛性に異方性があるので、長さ方向Cに沿って容易に折曲可能である一方、幅方向に沿って折り曲げるのが難しい。つまり、テープ12を折り曲げまたは捻り曲げることにより、三次元フレーム構造を変形自在にすることができる。
【0034】
<収納方法>
次に、このフレーム本体10の収納方法について説明する。たとえば、底辺部24a〜24cの両端から略等距離にある点を折り曲げ、三次元フレーム構造を縦方向に引き伸ばすことにより、四面体の三次元フレーム構造を縦長状に折り畳む。これにより、縦長状のフレーム本体10を筒状容器に収納することができる。
【0035】
あるいは、上述した巻取部16の巻取ボタン(図示省略)を押圧することによりテープ12を巻き取り、フレーム本体10を小型化した後に収納してもよい。あるいは、結束部材13を外し、ガイドローラ41や一対の駆動ローラ51の周面上に巻回されたテープ12を解いてから、一気にテープ12を巻き取ることも可能である。
【0036】
<展開方法>
次に、このフレーム本体10の展開方法について説明する。縦長状に折り畳んで収納した場合、テープ12の復元力によりフレーム本体10を展開する。また、テープ12を巻き取って収納した場合、テープ12を繰り出し方向Cに繰り出した後、整形作業または組立作業を経てフレーム本体10を展開する。
【0037】
[フレーム構造体1のブロック図]
図4は、
図1のフレーム本体10を含むフレーム構造体1の概略ブロック図である。このフレーム構造体1は、上述したフレーム本体10の他、フレーム本体10の一部を構成するテープ12を長さ方向Cに移動させるテープ移動部61(テープ移動手段)と、テープ移動部61を制御する制御装置62(制御手段)から略構成されている。
【0038】
テープ移動部61は、制御装置62から出力された駆動信号に応じて回転力を付与する6つのモータ63からなる。なお、テープ移動部61はこの構成に限られることなく、テープ12を長さ方向Cに移動させるための種々の構成を採り得る。
【0039】
左側から1番目、2番目のモータ63、63は、第2ジョイント部15aが備える一対の駆動ローラ51h、51a(
図2)をそれぞれ回動可能である。左側から3番目、4番目のモータ63、63は、第2ジョイント部15bが備える一対の駆動ローラ51b、51d(同図)をそれぞれ回動可能である。左側から5番目、6番目のモータ63、63は、第2ジョイント部15cが備える一対の駆動ローラ51e、51g(同図)をそれぞれ回動可能である。
【0040】
制御装置62は、情報入力部64、情報出力部65(報知手段)、および移動制御部66を含んで構成されるコンピュータである。情報入力部64は、たとえばマウス、キーボード、タッチセンサ、マイクロフォンを含む入力デバイスである。情報出力部65は、たとえばディスプレイ、ランプ、スピーカを含む出力デバイスである。
【0041】
移動制御部66は、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro-Processing Unit)を含んで構成される。移動制御部66は、図示しないメモリに格納されたプログラムを読み出し実行することで、座標系設定部71、目標位置取得部72、移動手順決定部73、安定性評価部74、および移動指示部75の各種機能を実行可能である。
【0042】
[フレーム構造体1の動作]
続いて、フレーム構造体1の動作について、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。以下、フレーム本体10のテープ12を長さ方向Cに移動することで三次元フレーム構造を変形させる制御を「テープ移動制御」という。
【0043】
<通常動作>
ステップS1において、座標系設定部71は、テープ移動制御に必要な変換座標系を設定する。ここでは、[1]仮想三次元座標系81、[2]仮想一次元座標系82、および[3]テープ長さ座標系83、の3つの座標系をそれぞれ定義する。
【0044】
図6は、仮想三次元座標系81の設定方法を示す概略説明図である。より詳しくは、
図6(a)は仮想三次元座標系81の定義を例示する図であり、
図6(b)は頂部と理想点P1〜P10との対応関係を示す図である。
【0045】
図6(a)に示す仮想三次元座標系81は、X軸・Y軸・Z軸を3軸とする直交座標系であり、展開前の三次元フレーム構造を三次元的に表現するための作業領域に相当する。ここでは、四面体の頂上部Aが任意の位置に存在するとともに、底面(三角形B1・B2・B3)がXY平面上に配置されている。また、1つの底面頂部B1が原点Oに固定配置
されている。以下、3つの底面頂部Bを明確に区別する際、B1、B2、B3と表記する場合がある。
【0046】
図6(b)は、
図3の折り曲げ順により三次元フレーム構造が形成される場合における対応関係を示す。理想点P1〜P10は、三次元フレーム構造を一筆書き(一次元的に展開)する際の1つの始点(P1)、8つの屈曲点(P2〜P9)、および1つの終点(P10)に対応する。
【0047】
図7は、仮想一次元座標系82とテープ長さ座標系83の対応関係を示す概略説明図である。より詳しくは、
図7(a)は仮想三次元座標系81から仮想一次元座標系82に変換した結果を示す図であり、
図7(b)は仮想一次元座標系82からテープ長さ座標系83に変換した結果を示す図である。
【0048】
図7(a)に示す仮想一次元座標系82は、L1軸に沿った一次元座標系であり、展開後の三次元フレーム構造を一次元的に表現するための作業領域に相当する。ここでは、一筆書きの始点(理想点P1)を原点Oとし、残りの理想点P2〜P10が正方向に沿って順次配置されている。
【0049】
図3および
図6(b)から理解されるように、先端部21は理想点P1に、基端部25は理想点P10にそれぞれ対応する。また、折曲部23hは理想点P2に、折曲部23gは理想点P3に、折曲部23fは理想点P4に、折曲部23eは理想点P5にそれぞれ対応する。また、折曲部23dは理想点P6に、折曲部23cは理想点P7に、折曲部23bは理想点P8に、折曲部23aは理想点P9にそれぞれ対応する。
【0050】
ところが、理想点P1〜P10をそのまま用いて実際のフレーム本体10を具現化する場合、理想的な三次元フレーム構造との乖離が生じる。その理由は、たとえば、[1]連結部材42の形状、[2]摺動ガイド52の形状、[3]ガイドローラ41の外径、[4]巻取部16の存否及びサイズ、[5]理想点P1〜P10と折曲点22との位置の乖離、によりテープ12の長さ誤差が発生するためである。そこで、仮想一次元座標系82からテープ長さ座標系83に変換し、テープ12の長さ誤差を予め補正しておくことが好ましい。
【0051】
図7(a)に示すテープ長さ座標系83は、L2軸に沿った一次元座標系であり、テープ12上の位置を一次元的に表現するための作業領域に相当する。ここでは、理想点P1に対応する「制御点Q1」を原点Oとし、理想点P2〜P10にそれぞれ対応する「制御点Q2〜Q10」が正方向に沿って順次配置されている。
【0052】
具体的には、頂上部Aでは、折曲部23c、22f、巻取部16を1つの集約箇所Fに配置する必要があるため、空間上の制約を受けて頂点形状が僅かに鈍化している。たとえば、稜線部22dから稜線部22eまでのテープ12の長さが理想値よりもΔだけ短くなると想定する。この場合、理想点P4をΔ/2だけ負方向にシフトした位置に制御点Q4を配置するとともに、理想点P5をΔだけ負方向にシフトした位置に制御点Q5を配置すればよい。
【0053】
図7(b)は、
図1および
図4の構成を採用した場合における対応関係を示す。6つの制御点Q2、Q3、Q5、Q6、Q8、Q9は、一対の駆動ローラ51を用いて、テープ12上で隣り合う折曲部23の間の距離を主体的に制御可能な点である。これに対して、残り4つの制御点Q1、Q4、Q7、Q10は、隣接する2つの制御点との関係で一意に決まる点である。具体的には、制御点Q3、Q5の両方が決定すれば、制御点Q3、Q5の「中点」が制御点Q4として決定される。
【0054】
このようにして、座標系設定部71は、仮想三次元座標系81、仮想一次元座標系82およびテープ長さ座標系83をそれぞれ設定する(ステップS1)。これら3つの座標系の間で相互に変換することで、頂上部Aの位置に応じた6つの制御点Q2、Q3、Q5、Q6、Q8、Q9を算出できる。
【0055】
ステップS2において、目標位置取得部72は、特定頂部(ここでは頂上部A)における目標位置T1、T2を取得する。目標位置取得部72は、情報入力部64から入力された情報を取得してもよいし、図示しないメモリに格納された情報を読み出して取得してもよい。また、この情報として、「絶対位置」を示す三次元座標、あるいは現在位置からの「相対位置」を示す移動方向・移動量を用いることができる。
【0056】
ステップS3において、移動手順決定部73は、ステップS2で取得された目標位置T1、T2に基づいてテープ12の移動手順を決定する。ここで、「移動手順」とは、三次元フレーム構造の変形に伴う移動動作のシーケンスである。このシーケンスは、テープ12の移動量、移動方向、およびモータ63の駆動順序の組み合わせからなる。
【0057】
移動手順決定部73は、予め付与された制約条件の下、頂上部Aを目標位置T1、T2まで移動させるための移動手順を1つ決定する。たとえば、底面頂部B1〜B3の位置をすべて固定しながら頂上部Aのみを移動させる場合、幾何学的考察により、6つの制御点Q2、Q3、Q5、Q6、Q8、Q9は一意に定められる。一方、1つ以上の底面頂部Bをさらに移動させる場合、公知の最適化手法を用いて、最適解としての移動手順が1つだけ決定される。
【0058】
図8(a)は、テープ12の一方向(繰り込み方向Cb)からモータ63を順次駆動させる移動手順を示す。1番目には、制御点Q2に対応するモータ63のみを駆動し、移動量ΔL11(符号付き;繰り込み方向Cbは正値)の長さ分のテープ12を移動させる。2番目には、制御点Q3に対応するモータ63のみを駆動し、移動量ΔL12の長さ分のテープ12を移動させる。以下、テープ12を合計6回だけ順次移動することでフレーム本体10の変形が完了する。
【0059】
図8(b)は、テープ12の双方向(繰り出し方向Cfおよび繰り込み方向Cb)からモータ63を順次駆動させる移動手順を示す。1番目には、制御点Q2、Q9に対応する2つのモータ63を同時に駆動し、移動量ΔL21、ΔL22の長さ分のテープ12をそれぞれ移動させる。2番目には、制御点Q3、Q8に対応する2つのモータ63を同時に駆動し、移動量ΔL21、ΔL22の長さ分のテープ12をそれぞれ移動させる。以下、テープ12を合計3回だけ順次移動することでフレーム本体10の変形が完了する。
【0060】
なお、
図1例では、制御点Q9に対応するモータ63を駆動することで、テープ12の繰り出し長さが変化する点に留意する。繰り出し長さの変更を伴う場合、移動手順の最初に制御点Q9を移動させ、テープ12の繰り出し長さを早い段階で固定することが好ましい。
【0061】
ステップS4において、安定性評価部74は、ステップS3で決定された移動手順に従う移動動作を実行する場合、一連の動作時(変形の途中または完了時)における三次元フレーム構造の安定性を評価する。ここで、「安定性」とは、三次元フレーム構造の自立状態を維持するために必要である機械的または力学的な安定性を意味し、フレーム本体10が転倒・倒壊等を起こさない確度(可能性)を示す特性である。
【0062】
具体的には、安定性評価部74は、公知の推定手法を用いて、シーケンス番号が示す各
回の移動が終了した三次元フレーム構造の安定性(たとえば、荷重、応力、重心、高さ)を示す評価値を算出する。そして、安定性評価部74は、算出した各指標に基づいて、三次元フレーム構造が「安定状態」であるか「不安定状態」であるかをそれぞれ判別する。
【0063】
たとえば、フレーム本体10を構成する各部の重量・形状や、頂部の三次元座標等を用いて重心の高低を定量的に示す評価値を算出し、この評価値と閾値の大小関係に応じて「安定状態」であるか「不安定状態」であるかを判別してもよい。また、三次元フレーム構造の各辺に発生する形状の歪み、テープ12の張力・撓みを考慮した評価値を算出してもよい。また、予め格納した多次元のテーブルデータを参照し、各変数の組み合わせに応じた評価値を求めてもよい。
【0064】
図8(a)例の場合、安定性評価部74は、6種類の形状のうちすべて「安定状態」であると判別した場合、その移動動作は安定性が確保されている(つまり「安定的」)と評価する。一方、安定性評価部74は、6種類の形状のうち少なくとも1つが「不安定状態」であると判別した場合、その移動動作は安定性が確保されていない(つまり「不安定的」)と評価する。なお、
図8(b)例の場合、3種類の形状について評価される点に留意する。
【0065】
図9は、安定領域84および不安定領域85の区分を模式的に示す説明図である。本図では、仮想三次元座標系81の上には、破線で囲まれる安定領域84と、安定領域84の補集合に相当する不安定領域85が表記されている。ここで、不安定領域85は、フレーム本体10の可動範囲内でありながら「不安定的」である領域と、フレーム本体10の可動範囲外である領域からなる点に留意する。
【0066】
安定領域84は、現在位置を基準として、頂上部Aを「安定的」に移動させる位置の集合に相当する。一方、不安定領域85は、現在位置を基準として、頂上部Aを「不安定的」に移動させる位置の集合に相当する。本図から理解されるように、目標位置T1は安定領域84に属するとともに、目標位置T2は不安定領域85に属する。
【0067】
ステップS5において、ステップS4にて三次元フレーム構造の安定性が確保されている、つまり「安定的である」と評価された場合(ステップS5:YES)、次のステップS6に進む。この状況は、ステップS2にて目標位置T1が取得された場合に該当する。
【0068】
ステップS6において、テープ移動部61は、ステップS3で決定された移動手順に従って、フレーム本体10の一部を構成するテープ12を移動させる。具体的には、移動指示部75は、駆動順序に応じたモータ63を選択した上で、テープ12の移動量および移動方向に応じた駆動信号を順次出力する。このテープ移動制御により、フレーム本体10は、一連の移動動作を1つ経て、三次元フレーム構造の安定状態を維持しながら所望の形状に変化する。変形の完了時には、頂上部Aが目標位置T1に移動されている。
【0069】
ステップS7において、移動制御部66は、終了指令を受け付けたか否かを判定する。終了指令を受け付けていない場合(ステップS7:NO)、ステップS2に戻って、以下、ステップS2〜S7を順次繰り返す。一方、終了指令を受け付けた場合(ステップS7:YES)、フレーム構造体1の動作を終了する。
【0070】
このように、制御装置62は、頂上部Aにおける目標位置T1(T2)を取得する目標位置取得部72と、取得された目標位置T1(T2)まで頂上部Aを移動させるためのテープ12の移動手順を決定する移動手順決定部73と、をさらに有し、移動指示部75は、決定された移動手順に従う移動動作の実行をテープ移動部61に対して指示してもよい。これにより、頂上部Aを所望の目標位置T1(T2)に移動させることが可能となる。
【0071】
<不安定回避動作>
ところで、
図5のステップS5に戻って、三次元フレーム構造の安定性が確保されていない、つまり「不安定的である」と評価された場合(ステップS5:NO)、ステップS8に進む。この状況は、ステップS2にて目標位置T2が取得された場合に該当する。
【0072】
ステップS8において、移動指示部75は、不安定回避動作の実行をテープ移動部61に対して指示する。ここで、「不安定回避動作」とは、三次元フレーム構造の不安定状態を回避させる移動動作を意味する。具体的には、「安定的」であると評価された場合には1つの移動手順をもって目標位置T1まで直接移動させるのに対して、「不安定的」であると評価された場合には複数の移動手順をもって目標位置T2まで移動させる点が異なっている。
【0073】
図10は、不安定回避動作の一例を示す概略説明図である。より詳しくは、
図10(a)は1つ目の移動手順による頂上部Aの移動を示す図であり、
図10(b)は2つ目の移動手順による頂上部Aの移動を示す図である。
【0074】
図10(a)に示すように、頂上部Aの現在位置から目標位置T2までの経路(たとえば、直線状の経路86)を均等分割した位置を「中間位置Tm」と定義する。このとき、中間位置Tmは、目標位置T2の場合と異なり、現在位置を基準とする安定領域84に属している。そこで、移動手順決定部73は、仮の目標である中間位置Tmまで頂上部Aを移動させるための1つ目の移動手順を決定する。
【0075】
図10(b)に示すように、頂上部Aが中間位置Tmまで移動させることで、目標位置T2は、中間位置Tmを基準とする安定領域84に属するようになる。そこで、移動手順決定部73は、最終の目標である目標位置T2まで頂上部Aを移動させるための2つ目の移動手順を決定する。このように、移動手順決定部73は、頂上部Aを目標位置T2まで移動させるための2つの移動手順を決定し(ステップS8)、ステップS7に進む。
【0076】
ステップS7において、テープ移動部61は、ステップS8で決定された2つの移動手順に従って、フレーム本体10の一部を構成するテープ12を順次移動させる。具体的には、移動指示部75は、駆動順序に応じたモータ63を選択した上で、テープ12の移動量および移動方向に応じた駆動信号を順次出力する。このテープ移動制御により、フレーム本体10は、一連の移動動作を2つ経て、三次元フレーム構造の安定状態を維持しながら所望の形状に変化する。変形の途中には頂上部Aが中間位置Tmに移動され、変形の完了時には頂上部Aが目標位置T2に移動されている。
【0077】
このように、移動指示部75は、不安定的であると評価された場合には目標位置T2までの経路86上にある1つ以上(ここでは、1つ)の中間位置Tmを経由して、目標位置T2まで移動させるための2つ以上(ここでは、2つ)の移動手順に従う移動動作の実行をテープ移動部61に対して指示してもよい。頂上部Aの移動量が少ないほど三次元フレーム構造の変形量が小さくなる傾向を考慮して、2つ以上の移動手順に分けて目標位置T2まで順次移動させることで、安定性を確保しながら三次元フレーム構造を所望の形状に変形できる。
【0078】
<不安定回避動作の別例>
三次元フレーム構造の不安定状態を回避させる動作は上記した例に限られない。以下、「不安定回避動作」の別例について説明する。
【0079】
第1例として、移動指示部75は、「安定的」であると評価された場合に移動動作の実
行を指示する一方、「不安定的」であると評価された場合に移動動作の実行の指示を保留してもよい。移動動作の実行自体を保留することで、三次元フレーム構造の不安定状態を回避させることが可能となる。この保留には、[1]所定の動作又は操作を受け付けるまで待機する場合、あるいは[2]所定の時間が経過するまで待機する場合、が含まれる。
【0080】
第2例として、情報出力部65は、移動指示部75による不安定回避動作の実行有無にかかわらず、三次元フレーム構造が「不安定的」である旨をユーザに報知してもよい。これにより、三次元フレーム構造の不安定状態を回避させる措置を講じるようにユーザに注意を喚起できる。この報知には、メッセージ、点灯表示、画像表示、音声を出力することで、人間の五感に訴える方法を適用できる。
【0081】
[フレーム構造体1による効果]
以上のように、このフレーム構造体1は、テープ12と、テープ12を折り曲げてなる複数の折曲部23を、少なくとも1つ(たとえば4つ)の集約箇所Fで集約する集約手段(第1ジョイント部14、第2ジョイント部15a〜15c)と、テープ12を長さ方向Cに移動させるテープ移動部61と、テープ移動部61によるテープ12の移動動作を制御する制御装置62を備え、集約箇所Fを頂部(頂上部A、底面頂部B1〜B3)に含む三次元フレーム構造の全部がテープ12により形成される。
【0082】
制御装置62は、移動動作の実行前に、変形の途中または完了時における三次元フレーム構造の安定性を評価する安定性評価部74と、安定性評価部74により不安定的であると評価された場合、三次元フレーム構造の不安定状態を回避させる移動動作の実行をテープ移動部61に対して指示する移動指示部75と、を有する。
【0083】
テープ12を折り曲げた折曲部23を少なくとも1つの集約箇所Fで集約し、集約箇所Fを頂部に含む三次元フレーム構造がテープ12により形成されているため、テープ12上で隣り合う折曲部23の間の距離を変更することにより、三次元フレーム構造を使用に適した形状に容易に変形することができる。
【0084】
しかも、テープ12の移動動作の実行前に、変形の途中または完了時における三次元フレーム構造の安定性を評価し、不安定的であると評価された場合にこの不安定状態を回避させる移動動作の実行を指示するので、テープ12の移動に起因するフレーム構造体1の転倒・倒壊等を未然に防止できる。
【0085】
また、テープ12の曲げ剛性の異方性により三次元フレーム構造を容易に変形可能な外力作用方向が存在することとなる。このような作用方向を利用して、三次元フレーム構造を収納および展開に適した形状に容易に変形することができる。これらにより、フレーム構造体1の取扱性が向上する。
【0086】
[他の実施形態]
以上、フレーム構造体1を図示して実施形態に基づいて説明したが、フレーム構造体1はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。以下、他の実施形態におけるフレーム構造体について説明する。
【0087】
たとえば、フレーム本体10は、三次元フレーム構造の全部が1本のテープ12により形成されているが、2本以上のテープ12を組み合わせることで1つの三次元フレーム構造をなしてもよい。すなわち、1本のテープにより三次元フレーム構造の一部を形成する形状であってもよい。また、テープ12は有端状に限られず、無端状であってもよい。
【0088】
また、フレーム本体10は、複数の折曲部23a〜23hが第1ジョイント部14または第2ジョイント部15により集約され、集約された集約箇所Fの全てを頂部(頂上部Aまたは底面頂部B)とする四面体となっている場合について説明したが、折曲部23のいずれかが集約箇所Fに集約していなくてもよく、集約箇所Fの全てが頂部とならなくてもよい。
【0089】
また、複数の折曲部23のうち集約した2つの集約箇所Fと、複数の折曲部23のうち2つの箇所が集約していない非集約箇所とから四面体で構成されたフレーム本体であってもよい。なお、「非集約箇所」とは、複数の折曲部が集約されていない箇所、すなわち、折曲部23を1つのみ有する箇所である。
【0090】
また、頂部の総数(たとえば4つ)を超える個数(たとえば7つ)の集約箇所Fのうち、選択した4つを頂部とする四面体で構成されたフレーム構造体であってもよい。
【0091】
また、フレーム本体10は、第2ジョイント部15の数を増加することにより、四面体のみならず、四角錐の形状、五角錐の形状、六角錐の形状等の様々な角錐の形状にも形成することができる。さらに、立方体を含む、五面以上を有する任意の立体にも形成することができる。
【0092】
また、フレーム構造体1は、様々な用途で使用され得る。たとえば、空間演出、デザイン家具、舞台装置、建築、産業機械、宇宙産業等で使用可能であり、用途は問わない。