特開2017-44317(P2017-44317A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-44317(P2017-44317A)
(43)【公開日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】フローティングシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20170210BHJP
【FI】
   F16J15/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-169645(P2015-169645)
(22)【出願日】2015年8月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100096873
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 廣泰
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155871
【弁理士】
【氏名又は名称】森廣 亮太
(72)【発明者】
【氏名】森原 健太郎
【テーマコード(参考)】
3J041
【Fターム(参考)】
3J041AA07
3J041BC02
3J041BC10
3J041BD01
(57)【要約】
【課題】環境温度に左右されずに安定的にシール性を発揮させることができ、かつ外部から侵入する異物に対する耐久性にも優れたフローティングシールを提供する。
【解決手段】固定側ハウジング300と回転側ハウジング400の内側で、固定軸200に対して環状隙間を空けて配置され、互いに摺動する金属製の一対の第1シールリング10a,10bと、固定側ハウジング300と回転側ハウジング400に対してそれぞれ密着し、一対の第1シールリング10a,10bをそれぞれ押圧することで、これら一対の第1シールリング10a,10bの位置決めを行う弾性を有する一対の第2シールリング20a,20bと、を備えるフローティングシール100であって、一対の第2シールリング20a,20bは、いずれも金属のみにより構成されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軸に固定された環状の固定側ハウジングと、前記固定軸に対して同心的に回転する環状の回転側ハウジングとの間の軸方向の隙間を封止して、これら固定側ハウジングと回転側ハウジングとの間の隙間から前記固定軸側に異物が侵入することを抑制するフローティングシールにおいて、
前記固定側ハウジングと回転側ハウジングの内側で、前記固定軸に対して環状隙間を空けて配置され、互いに摺動する金属製の一対の第1シールリングと、
前記固定側ハウジングと回転側ハウジングに対してそれぞれ密着し、前記一対の第1シールリングをそれぞれ押圧することで、これら一対の第1シールリングの位置決めを行う弾性を有する一対の第2シールリングと、
を備えるフローティングシールであって、
前記一対の第2シールリングは、いずれも金属のみにより構成されていることを特徴とするフローティングシール。
【請求項2】
前記一対の第2シールリングは、いずれも環状の空洞部を有する環状部材により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフローティングシール。
【請求項3】
前記一対の第2シールリングは、いずれも側面側に前記空洞部を開放する環状隙間が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のフローティングシール。
【請求項4】
前記一対の第2シールリングは、いずれも、前記環状隙間が前記固定側ハウジングと回転側ハウジングとの間の隙間が設けられる側とは反対側を向くように配置されていることを特徴とする請求項3に記載のフローティングシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の足回り(例えば、トラックローラーやアイドラー)等に用いられ、泥水等の異物のシールを行うフローティングシールに関する。
【背景技術】
【0002】
図7を参照して、従来例に係るフローティングシールについて説明する。図7は従来例に係るフローティングシールの使用状態を示す模式的断面図である。フローティングシール500は、固定軸200に固定された環状の固定側ハウジング300と、固定軸200に対して同心的に回転する環状の回転側ハウジング400との間の軸方向の隙間を封止する。これにより、フローティングシール500は、これら固定側ハウジング300と回転側ハウジング400との間の隙間から図7中矢印X方向に侵入してきた泥水や砂利等の異物が固定軸200側に侵入することを抑制する。
【0003】
そして、フローティングシール500は、金属製の一対の第1シールリング510a,510bと、ゴム製の一対の第2シールリング520a,520bとから構成される。一対の第1シールリング510a,510bは、固定側ハウジング300と回転側ハウジング400の内側で、固定軸200に対して環状隙間を空けて配置され、互いに摺動するように構成される。また、一対の第2シールリング520a,520bは、固定側ハウジング300と回転側ハウジング400に対してそれぞれ密着し、一対の第1シールリング510a,510bをそれぞれ押圧することで、これら一対の第1シールリング510a,510bの位置決めを行う。
【0004】
以上のように構成されたフローティングシール500においては、回転側ハウジング400の回転に伴って、第2シールリング520bと共に第1シールリング510bが回転し、第1シールリング510aと第1シールリング510bが摺動する。
【0005】
ここで、上記の通り、一対の第2シールリング520a,520bはゴムにより構成されている。そのため、高温環境下で用いられる場合には、熱によって変形したり、表面が硬化したりすることにより劣化が促進され、シール性が低下してしまう問題がある。また、低温環境下で用いられる場合には、弾性が失われ、シール性が低下してしまう問題がある。更に、外部から侵入してくる土砂などにより変形したり傷ついたりし易いという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−178283号公報
【特許文献2】特開2005−9530号公報
【特許文献3】実開平2−51767号公報
【特許文献4】実開平4−23879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、環境温度に左右されずに安定的にシール性を発揮させることができ、かつ外部から侵入する異物に対する耐久性にも優れたフローティングシールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明のフローティングシールは、
固定軸に固定された環状の固定側ハウジングと、前記固定軸に対して同心的に回転する環状の回転側ハウジングとの間の軸方向の隙間を封止して、これら固定側ハウジングと回転側ハウジングとの間の隙間から前記固定軸側に異物が侵入することを抑制するフローティングシールにおいて、
前記固定側ハウジングと回転側ハウジングの内側で、前記固定軸に対して環状隙間を空けて配置され、互いに摺動する金属製の一対の第1シールリングと、
前記固定側ハウジングと回転側ハウジングに対してそれぞれ密着し、前記一対の第1シールリングをそれぞれ押圧することで、これら一対の第1シールリングの位置決めを行う弾性を有する一対の第2シールリングと、
を備えるフローティングシールであって、
前記一対の第2シールリングは、いずれも金属のみにより構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、一対の第2シールリングが、いずれも金属のみにより構成されているため、低温環境下であっても高温環境下であっても、第2シールリングの劣化が抑制される。また、第2シールリングは金属のみにより構成されているので、外部から侵入する異物に対する耐久性にも優れている。
【0011】
前記一対の第2シールリングは、いずれも環状の空洞部を有する環状部材により構成されているとよい。
【0012】
これにより、第2シールリングに弾性を持たせることができ、第1シールリングの位置決めを行うという本来的な機能も十分発揮させることができる。
【0013】
前記一対の第2シールリングは、いずれも側面側に前記空洞部を開放する環状隙間が形成されているとよい。
【0014】
これにより、第2シールリングに対して、より確実に弾性を持たせることができる。
【0015】
前記一対の第2シールリングは、いずれも、前記環状隙間が前記固定側ハウジングと回転側ハウジングとの間の隙間が設けられる側とは反対側を向くように配置されているとよい。
【0016】
これにより、第2シールリングの空洞部に異物が侵入してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、環境温度に左右されずに安定的にシール性を発揮させることができ、かつ外部から侵入する異物に対する耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の実施例に係るフローティングシールの使用状態を示す模式的断面図である。
図2図2は本発明の実施例に係るフローティングシールの模式的断面図である。
図3図3は本発明の実施例に係る第2シールリングの変形例1を示す模式的断面図である。
図4図4は本発明の実施例に係る第2シールリングの変形例2を示す模式的断面図である。
図5図5は本発明の実施例に係る第2シールリングの変形例3を示す模式的断面図である。
図6図6は本発明の実施例に係る第2シールリングの変形例4を示す模式的断面図である。
図7図7は従来例に係るフローティングシールの使用状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
(実施例)
図1及び図2を参照して、本発明の実施例に係るフローティングシールについて説明する。図1は本発明の実施例に係るフローティングシールの使用状態を示す模式的断面図である。図2は本発明の実施例に係るフローティングシールの模式的断面図である。なお、図1及び図2は、いずれも環状のフローティングシールにおける中心軸線を含む面で切断した断面図を示している。また、図2においては、寸法関係を分かり易くするために、フローティングシールを構成する第1シールリングと第2シールリングはいずれも外力を受けていない場合の状態を示している。従って、図2においては、第1シールリングと第2シールリングが一部重なって示されている。
【0021】
<フローティングシールの全体構成>
フローティングシール100は、固定軸200に固定された環状の固定側ハウジング300と、固定軸200に対して同心的に回転する環状の回転側ハウジング400との間の軸方向の隙間を封止する。これにより、フローティングシール100は、これら固定側ハウジング300と回転側ハウジング400との間の隙間から図1中矢印X方向に侵入してきた泥水や砂利等の異物が固定軸200側に侵入することを抑制する。
【0022】
フローティングシール100は、鋳鉄などの金属製の一対の第1シールリング10a,10bと、弾性を有する一対の第2シールリング20a,20bとから構成される。第1シールリング10a及び第2シールリング20aは、固定側ハウジング300側に配置される。また、第1シールリング10b及び第2シールリング20bは、回転側ハウジング400側に配置される。なお、図2においては、フローティングシール100のうち、第1シールリング10b及び第2シールリング20bのみを示している。第1シールリング10aと第1シールリング10bは同一の構成であり、第2シールリング20aと第2シールリング20bは同一の構成である。第1シールリング10aと第1シールリング10b、及び第2シールリング20aと第2シールリング20bは配置される向きのみが異なっている。
【0023】
そして、第1シールリング10a,10bは、互いに摺動する平面状の摺動部11a,11bと、つば部12a,12bと、第2シールリング20a,20bがそれぞれ密着されるテーパ面13a,13bを有している。
【0024】
一対の第1シールリング10a,10bは、固定側ハウジング300と回転側ハウジング400の内側で、固定軸200に対して環状隙間を空けて配置され、互いに摺動するように構成される。また、一対の第2シールリング20a,20bは、固定側ハウジング3
00と回転側ハウジング400に対してそれぞれ密着し、一対の第1シールリング10a,10bをそれぞれ押圧することで、これら一対の第1シールリング10a,10bの位置決めを行う。
【0025】
すなわち、固定側ハウジング300のうち第2シールリング20aが密着する面、及び第1シールリング10aのうち第2シールリング20aが密着する面(テーパ面13a)はいずれも回転側ハウジング400に向かって拡径するテーパ面で構成されている。これにより、第1シールリング10aは第2シールリング20aの弾性反発力によって、内周面側かつ回転側ハウジング400側に向かって押圧される。一方、回転側ハウジング400のうち第2シールリング20bが密着する面、及び第1シールリング10bのうち第2シールリング20bが密着する面(テーパ面13b)はいずれも固定側ハウジング300に向かって拡径するテーパ面で構成されている。これにより、第1シールリング10bは第2シールリング20bの弾性反発力によって、内周面側かつ固定側ハウジング300側に向かって押圧される。これにより、第1シールリング10a,10bは互いに密着した状態、かつ固定軸200と同心的な位置で固定軸200と環状隙間を空けた状態で位置決めされる。
【0026】
以上のように構成されたフローティングシール100においては、回転側ハウジング400の回転に伴って、第2シールリング20bと共に第1シールリング10bが回転し、第1シールリング10aの摺動部11aと第1シールリング10bの摺動部11bが摺動する。
【0027】
<第2シールリングの詳細>
一対の第2シールリング20a,20bは、いずれも弾性を有し、かついずれも金属のみにより構成されている。そして、これら一対の第2シールリング20a,20bは、いずれも環状の空洞部21a,21bを有する環状部材により構成されている。また、一対の第2シールリング20a,20bは、いずれも一方の側面側に空洞部21a,21bを開放する環状隙間22a,22bが形成されている。より具体的には、本実施例に係る一対の第2シールリング20a,20bは、断面形状が略C字形状の環状部材により構成されている。
【0028】
ここで、本実施例においては、一対の第2シールリング20a,20bは、いずれも、環状隙間22a,22bが固定側ハウジング300と回転側ハウジング400との間の隙間が設けられる側とは反対側を向くように配置されている(図1参照)。
【0029】
<本実施例に係るフローティングシールの優れた点>
本実施例に係るフローティングシール100によれば、一対の第2シールリング20a,20bが、いずれも金属のみにより構成されているため、低温環境下であっても高温環境下であっても、第2シールリング20a,20bの劣化が抑制される。また、第2シールリング20a,20bは金属のみにより構成されているので、外部から侵入する異物に対する耐久性にも優れている。従って、本実施例に係るフローティングシール100によれば、環境温度に左右されずに安定的にシール性を発揮させることができ、かつ外部から侵入する異物に対する耐久性を向上させることができる。なお、本実施例に係る第1シールリング10a,10bについても、金属により構成されており、フローティングシール100を構成する全ての部品が金属により構成されている。
【0030】
ここで、一対の第2シールリング20a,20bは、いずれも環状の空洞部21a,21bを有する環状部材により構成されている。これにより、第2シールリング20a,20bが金属で構成されていても、第2シールリング20a,20bに対して弾性を持たせることができ、第1シールリング10a,10bの位置決めを行うという本来的な機能も
十分発揮させることができる。
【0031】
また、本実施例に係る一対の第2シールリング20a,20bは、いずれも一方の側面側に空洞部21a,21bを開放する環状隙間22a,22bが形成されている。これにより、第2シールリング20a,20bに対して、より確実に弾性を持たせることができる。
【0032】
更に、本実施例においては、一対の第2シールリング20a,20bは、いずれも、環状隙間22a,22bが固定側ハウジング300と回転側ハウジング400との間の隙間が設けられる側とは反対側を向くように配置されている。これにより、第2シールリング20a,20bの空洞部21a,21bに異物が侵入してしまうことを抑制することができる。ただし、使用環境下において、異物の侵入があまり問題にならないのであれば、環状隙間22a,22bが固定側ハウジング300と回転側ハウジング400との間の隙間が設けられる側に向くように、一対の第2シールリング20a,20bを配置させても構わない。
【0033】
<第2シールリングの変形例>
上記実施例においては、第2シールリングとして、断面形状が略C字形状の環状部材により構成される場合を示した。しかしながら、本発明における第2シールリングは、そのような構成に限定されることはない。すなわち、本発明における第2シールリングは、少なくとも、弾性を有し、かつ金属のみにより構成され、シール機能を発揮する環状部材であればよい。以下に、いくつか具体例を説明する。
【0034】
図3は第2シールリングの変形例1を示す模式的断面図である。図3に示す第2シールリング20Eは、断面形状が略E字形状の環状部材により構成される。この第2シールリング20Eの場合、3か所の環状の空洞部21E及び環状隙間22Eを有している。図4は第2シールリングの変形例2を示す模式的断面図である。図4に示す第2シールリング20Wは、断面形状が略W字形状の環状部材により構成される。この第2シールリング20Wの場合、2か所の環状の空洞部21W及び環状隙間22Wを有している。図5は第2シールリングの変形例3を示す模式的断面図である。図5に示す第2シールリング20Uは、断面形状が略U字形状の環状部材により構成される。この第2シールリング20Uの場合、略C字形状の場合と同様に、1か所の環状の空洞部21U及び環状隙間22Uを有している。
【0035】
図6は第2シールリングの変形例4を示す模式的断面図である。図6に示す第2シールリング20Oは、断面形状が略O字形状の環状部材により構成される。この第2シールリング20Oの場合、環状の空洞部21Oを有しているが、環状隙間は設けられていない。従って、弾性については、他の変形例に比べて劣るものの、物理的に異物が空洞部21Oに侵入し得ない点で他の変形例よりも優れている。
【符号の説明】
【0036】
10a,10b 第1シールリング
11a,11b 摺動部
12a,12b つば部
13a,13b テーパ面
20a,20b,20E,20W,20U,20O 第2シールリング
21a,21b,21E,21W,21U,21O 空洞部
22a,22b,22E,22W,22U 環状隙間
100 フローティングシール
200 固定軸
300 固定側ハウジング
400 回転側ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7