(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-44678(P2017-44678A)
(43)【公開日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】ステンレススケール
(51)【国際特許分類】
G01B 3/04 20060101AFI20170210BHJP
【FI】
G01B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-182273(P2015-182273)
(22)【出願日】2015年8月29日
(71)【出願人】
【識別番号】301070830
【氏名又は名称】株式会社ワークス松下
(72)【発明者】
【氏名】松下 将人
(72)【発明者】
【氏名】松下 太陽
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061AA16
2F061AA46
2F061DD27
2F061JJ02
2F061JJ17
2F061JJ37
2F061VV42
2F061VV43
2F061VV46
2F061VV48
(57)【要約】 (修正有)
【課題】目盛り線や表示文字の視認性が非常に高いステンレススケールを提供する。
【解決手段】ステンレススケールAは、ステンレススケール本体1の表面が窒化チタン被膜の着色処理を施され、その表面にレーザー加工にて目盛り線2や表示文字3を施されている。ステンレススケール本体に表面処理(黒色等処理)を施し、レーザー加工にて目盛り線や表示文字となる部分の表面処理部分を剥離することにより形成されるものであり、ステンレススケール本体の着色と目盛り等の色の濃淡の対比により、目盛り線や表示文字の視認性が非常に高く、また、窒化チタン被膜自体の耐久性がよいので、目盛り線や表示文字の破損がない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレススケール本体の表面に電気的イオンプレーティングの着色処理を施し、その表面にレーザー加工にて目盛り線や表示文字を施したことを特徴とするステンレススケール。
【請求項2】
前記電気的イオンプレーティングによる表面着色処理が窒化チタン被膜であることを特徴とする請求項1に記載のステンレススケール。
【請求項3】
前記目盛り線や表示文字の深さが20〜40μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のステンレススケール。
【請求項4】
前記レーザー加工がYAGレーザーであることを特徴とする請求項1乃至3に記載のステンレススケール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が電気的イオンプレーティングによる加工されたステンレススケールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からステンレススケールは種々提案されている。従来のステンレススケールは、ステンレススケール本体の素材色(金属色)の表面にエッチング処理で目盛りを所定の深さまで腐食させ、その腐食された目盛り部分に塗料(黒色等)を埋めてスケールの目盛りを施すものが最も一般的である。例えば、特許文献1に開示の製図用金属製直尺は、ステンレス尺にフォトエッチングで目盛り線並びに表示数字を形成し、そのエッチングされた目盛り線並びに表示数字にメッキ処理や、電着塗装処理を施し、目盛り線や表示文字を着色したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 実用新案登録第3033499号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような従来のステンレススケールでは、ステンレススケール本体の金属色の表面に着色された目盛り線や表示文字が形成されているため、スケールを使用するものにとって、その使用する環境によってはスケール本体の金属色により目盛り線や表示文字の視認性が悪くなる場合があった。
【0005】
一方、ステンレス本体の表面全体をカラー化したステンレススケールも提案されているが、表面をカラー化するには塗装であるため、その表面は凹凸になっており均一な膜厚ではなく、仮にレーザー加工による目盛りを施したとしても、レーザーの焦点が合いにくくなるため、目盛り線にムラができるものである。
【0006】
本発明は、目盛り線や表示文字の視認性が高く、耐久性のよいステンレススケールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載のステンレススケールは、ステンレススケール本体の表面に電気的イオンプレーティングの着色処理を施し、その表面にレーザー加工にて目盛り線や表示文字を施したことを特徴とする。
【0008】
即ち、本発明のステンレススケールは、ステンレススケール本体に表面処理(黒色等処理)を施し、レーザー加工にて目盛り線や表示文字となる部分の表面処理部分を剥離することにより形成されるものである。
【0009】
本発明の請求項2に記載のステンレススケールは、電気的イオンプレーティングによる表面着色処理が窒化チタン被膜であることを特徴とする
【0010】
本発明の請求項3に記載のステンレススケールは、前記目盛り線や表示文字の深さが20〜40μmであることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に記載のステンレススケールは、前記レーザー加工がYAGレーザーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係るステンレススケールによれば、ステンレススケール本体の表面が電気的イオンプレーティングの着色処理を施され、その表面にレーザー加工にて目盛り線や表示文字を施されているので、ステンレススケール本体の着色と目盛り等の色の濃淡の対比により、目盛り線や表示文字の視認性が非常に高く、また、電気的イオンプレーティングの被膜自体の耐久性がよいので、目盛り線や表示文字の破損がないものである。電気的イオンプレーティングの着色処理を施された被膜表面は薄く均一になっており、そのため、レーザー加工が精度よく容易にでき、目盛り線や表示文字に視認性が良いものである。
【0013】
本発明の請求項2に係るステンレススケールによれば、窒化チタン被膜であるので、均一で耐久性、耐摩耗性に優れており、窒化チタン被膜の着色により高級感があり、レーザー加工のデータの変更でデザインを容易に変えることができ、オリジナル性の高く、デザイン性の高いステンレススケールを提供できるものである。
【0014】
本発明の請求項3に係るステンレススケールによれば、目盛り線や表示文字の深さが20〜40μであるので、目盛り線や表示文字を形成しやすく、視認性の高いものである。
【0015】
本発明の請求項4に係るステンレススケールによれば、レーザー加工がYAGレーザーであるので、目盛り線や表示文字を形成するのが容易に精密にでき、目盛り線等の精度が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】 本発明の実施形態に係るステンレススケールの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るステンレススケールについて説明する。
図1に示されるように、Aはステンレススケール、1はステンレススケール本体、2は目盛り線部、3は表示文字部、4は角度目盛り部である。
【0018】
ステンレススケールAは、そのステンレススケール本体1の表面が窒化チタン被膜の着色処理を施されており、その表面にレーザー加工にて目盛り線2や表示文字3が施されている。即ち、ステンレススケール本体1の表面コーティング膜は均一で耐久性、耐摩耗性に優れた表面加工となる。
図1において、白地の部分が窒化チタン被膜のカラー層となるもので、黒線となる目盛り線2や表示文字3の部分がレーザー加工にてカラー層が剥離されてステンレスの素材色(金属色)となっている。
【0019】
ここで、窒化チタン被膜の着色処理について説明する。窒化チタン(TiN)被膜形成技術は多陰極方式のイオンプレーティング技術であり、基材であるステンレスの表面に金属(チタン)と反応ガス(窒素や炭化水素系ガス)によりTiN、TiCN等の硬化層を形成するものであり、黒・茶・グレー・ダークブルーのコーティング被膜のカラー化である。硬化層の第一層の上に同系色のAu、Pt、Pdなどの貴金属合金層を形成しても良いものである。その膜厚は0.3μm〜5μmで、被膜の密着性が良いため耐食性、耐摩耗性が優れており、付きまわりが良く美しい仕上げが可能であり、肌にやさしく、無公害のプロセスである。この表面処理は耐久性、耐摩耗性などを考慮した貴金属類や機械工具の加工部面などに使用されている。膜厚が0.3μm未満であれば、薄すぎて被膜に不具合が生じるものであり、膜厚が5μmを越えるものでれば、高価なものになりすぎて実用にそぐわないものであり、また、レーザー加工に時間がかかり過ぎ高価なものなる。膜厚が0.3μm〜5μmが実用的なものであり、実施例では膜厚が3μmである。なお、電気的イオンプレーティングは、PVD(物理気相成長法)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等である。
【0020】
一方、レーザー加工は、YAGレーザーにて目盛り等の加工を行う。このレーザー加工は30W程度の微弱なレーザーにより、繊細かつ熱による素材の変形を起こさない加工が可能となった。レーザー加工では、データの変更で簡単にデザインを変更できるものであるので、オリジナル性の高い高級感のあるステンレススケールを提供できる。
【0021】
ステンレススケールAの素材は、例えばSUS420J2であり、硬度上げるため焼き入れされた素材である。このため、その表面処理方法は容易でなく、表面処理方法が限定されることになるが、電気的イオンプレーティングの着色処理では問題なく、均一な膜厚にて表面処理ができる。
【0022】
目盛り線2や表示文字3の部分の深さは20〜40μmであり、好ましくは30μmとなるものである。
【0023】
図1の実施例において、図の右側の円孔の周囲には角度目盛り部4が形成されている。レーザー加工であるため、この角度の刻みも精密に行えるものである。
【0024】
以上、本発明の実施形態に係るステンレススケールについて添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【符号の説明】
【0025】
A ステンレススケール
1 ステンレススケール本体
2 目盛り線
3 表示文字
4 角度目盛り部