(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-44679(P2017-44679A)
(43)【公開日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】パーティクルカウンタ
(51)【国際特許分類】
G01N 15/14 20060101AFI20170210BHJP
【FI】
G01N15/14 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-182283(P2015-182283)
(22)【出願日】2015年8月28日
(71)【出願人】
【識別番号】595099889
【氏名又は名称】日本システムデザイン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】麥田 憲司
(57)【要約】
【課題】小型でパーティクルを安定して精度よく検出出来るパーティクルカウンタを提供すること。
【解決手段】楕円ミラーの第1の焦点を囲み試料気体の流入孔、試料気体の流出孔、光ビームの入射孔及び光ビームの吸収孔を楕円ミラーに設け、第1の焦点の近傍で試料気体の流路と光ビームが直交し、第1の焦点近傍で発生する散乱光を検出する受光部を第2の焦点近傍に設置することで試料気体に含まれるパーティクルを効率よく検出できるパーティクルカウンタを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
楕円ミラーの第1の焦点を囲み試料気体の流入孔、試料気体の流出孔、光ビームの入射孔及び光ビームの吸収孔を楕円ミラーに設け、第1の焦点の近傍で試料気体の流路と光ビームが直交し、第1の焦点近傍で発生する散乱光を検出する受光部を第2の焦点近傍に設置することを特徴とするパーティクルカウンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のパーティクルカウンタにおいて、第1の焦点と第2の焦点の間に集光レンズを設置しレンズで集光した散乱光を検出出来る位置に受光部を設置したことを特徴とするパーティクルカウンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティクル(気中に存在する微粒子)の粒径や個数を計測するパーティクルカウンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のパーティクルカウンタは、クリーンルームなどで清浄度を測定するための計測器として使用されており、光ビームを通過する試料気体中の微粒子が発生する散乱光を検出してパーティクルの計測を行なうものが一般的に使用されている。
すなわち、パーティクルを含む試料流体を流す通路と光ビームを検出領域において交差させ、試料流体中のパーティクルに光ビームが当たることで発生する散乱光を集光し受光部でその強度とパルス数を計測してパーティクルの粒径と個数の検出をおこなっている。
【0003】
計測精度向上のために、複数の光ビームを試料流体に同時に照射するもの(特許文献1参照)や、散乱光を効率的に検出するために、散乱光が発生する位置を挟むように球面反射ミラーと受光部を設置し、光ビームと反射ミラー受光素子のなす角度を90度以外の例えば60度に設定したパーティクルカウンタも使われている。
また粒度および蛍光の同時測定による病原体検出装置(恃許文献2参照)においては楕円ミラーを用いて蛍光の検出精度向上を図るものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−293143号公報
【特許文献2】特表2010−513847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係るパーティクルカウンタが測定するパーティクルは主に3μから0.1μの範囲で、光ビームの波長は可視光領域にあることからその散乱光発生メカニズムはほぼミー散乱の領域にある。
ミー散乱においては光ビーム入射方向への散乱が極大となるため理想的には光ビームを発生するところと同じ位置で散乱光を受光するのが望ましい。
また、試料流体に含まれる微粒子すなわちパーティクルは様々な形とサイズをしており、パーティクルに光ビームが当たることによって発生する散乱光の方向は一定していない。
【0006】
しかし、従来のパーティクルカウンタに於いては構造的な制限のため、
図2に示すように光ビームLを挟み反射ミラーM2と受光部PDを設け光ビームLと直交する角度で散乱光RLを検出している。
また、出来るだけ効率よく散乱光RLを検出するために、
図3に示すように光ビームLと反射ミラーM2と受光部PDの角度を例えば60度にして散乱光強度が高いことが期待される角度で散乱光RLを検出するものや特許文献2のように蛍光の発生部分を楕円ミラーの焦点に置いて集光効率の向上を図る狙いのものが考案されているが、いずれにしても散乱光の一部しか捕捉出来ない構造のため、計数効率の低下や微小粒径パーティクルの測定が困難であるのが実情であった。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的はパーティクルに光ビームが当たることによって発生する散乱光を効率よく捉え、パーティクルの形状に応じて変化する散乱光の向きによる受光部での受光量の変動を出来るだけ少なくすることでより検出精度の高いパーティクルカウンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
【0008】
(1)本発明に係るパーティクルカウンタは、
図1に示すように第2の焦点S2に設置した受光部PD付近を開放した楕円ミラーM1の第1の焦点S1近傍で試料気体aの流路と光ビームLが交差するように楕円ミラーM1に試料気体aと光ビームLが通過する最小限の孔を設けることで第1の焦点S1を囲む全球面に対し楕円ミラーM1の鏡面で散乱光RLを投影面の7割以上でカバー出来ることを特徴としている。
【0009】
また、従来のパーティクルカウンタでは捉えることの出来なかった、相対的に光強度が高い光ビーム周辺の散乱光を効果的に捕捉することが出来るため計数効率の向上が図れ、より微小なパーティクルの検出が可能となる。
【0010】
本発明に係るパーティクルカウンタが対象とするパーティクルのサイズは3μから0.1μであるが、特に0.1μのパーティクルによる散乱は波長の短い405nmのレーザー光を用いてもミー散乱領域の下限であるため散乱光の強度が急激に弱くなり受光部で発生するノイズから散乱光による電気信号を安定して分離することが技術的に困難となっている。
そのため本発明が提案する、パーティクルに光ビームが当たって発生する散乱光を効率的に集光することができる光学系はパーティクルカウンタの性能向上に画期的な効果がある。
【0011】
(2)本発明に係るパーティクルカウンタにおいて、
図4に示すように第1の焦点S1と第2の焦点S2の距離を無限大に拡張した楕円ミラーすなわち放物面ミラーM3を用いて、放物面ミラーM3の解放部に集光レンズLeを設置し、受光部PDに大面積の受光素子、例えば有効径の大きいフォトダイオードを使用すればさらに効率良く散乱光を捕捉することが出来る。
ただし、放物面ミラーM3と集光レンズLeを用いる構成では検出部のサイズが大きくなり装置のコストも高くなるため、要求される仕様に応じて楕円ミラーのみで集光する構造と使い分けることが望ましい。
【0012】
本発明に係るパーティクルカウンタによれば、パーティクルカウンタの性能が向上し、より微小なパーティクルまで安定して精度よく測定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るパーティクルカウンタの構造を示す図である。
【
図2】従来のパーティクルカウンタの構造例1を示す図である。
【
図3】従来のパーティクルカウンタの構造例2を示す図である。
【
図4】本発明に係るパーティクルカウンタの変形例を示す図である。
【
図5】本発明に係る実施形態であってパーティクルカウンタの測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るパーティクルカウンタの実施形態について説明する。
なお、本実施形態では高度な清浄度を要求されるクリーンルーム内の空気清浄度を管理するための測定器として用いられている場合を例に挙げて説明する。
【0015】
(パーティクルカウンタの使用環境)
本実施形態のパーティクルカウンタはクリーンルーム内に設置されクリーンルーム内の空気をパーティクルカウンタに連続的に吸入し、空気中に存在するパーティクルのサイズと個数をカウントすることで清浄度を管理するために使われる。
パーティクルとは空気中を浮遊する微粒子の総称である。
クリーンルーム内の空気は天井から床に向かって循環し、天井に設置したフィルターでパーティクルを取り除くことで清浄度を保つようになっている。
クリーンルームが使用される業種により清浄度の管理基準は異なるが、基準の厳しい業界においてはクリーンルーム内に設置したパーティクルカウンタで0.1μの粒子が一つも検出されてはならないという場合もある。
【0016】
図1に示すようにパーティクルカウンタは吐出孔Dhに吸入ポンプを接続し試料気体aを流入孔Ihより検出部の中に試料気体aを通し、接続した吸入ポンプの排気部分にフィルターを接続して発生したパーティクルをクリーンルーム内に排出しないように構成されている。
【0017】
検出部を通過する気体にパーティクルが含まれていれば光ビーム内を通過するパーティクルが散乱光を発生し、受光部の受光素子によりその微弱な光を電気信号に変換する。
【0018】
図5は検出した電気信号を処理する方法を示すブロック図である。
受光部PDで受光された散乱光を電気信号に変換し、プリアンプ1により適度な大きさに増幅され、その電気信号はパーティクルのサイズに依存する波高を持つパルス信号2となり、パルスの数がパーティクルの個数を示している。
【0019】
波高検出部3は波高レベルに応じて複数のカウントパルスを発生するよう調整されている。
パーティクルカウンタの校正において波高レベルの設定は例えば0.3μのパーティクルが通過するときのレベルに合わせて調整し、0.3μのパルスカウントは0.3μ以上のパーティクル全ての個数を含んでいる。同様に0.5μのパルスカウントは0.5μ以上のパーティクル全ての個数を含む。
【0020】
パーティクルカウンタは一定時間の間連続して試料気体の吸引をおこない、パルスカウント部4でカウントした値を通過した気体の総体積で割ることで一定体積あたりのパーティクル数として管理する。
【0021】
クリーンルームの清浄度管理では、例えば「0.3μのパーティクルが検出されないこと」のように非常に厳しい場合が多く、本発明に係るパーティクルカウンタが提供する微小なパーティクルを安定して検出できる性能は特に有益となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係るパーティクルカウンタは製薬設備や半導体製造設備等の高度な清浄度を要する環境の清浄度を保つためのモニタリング装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0023】
P パーティクル
LD 光ビーム投射装置
L 光ビーム
Lh1 光ビーム投射孔
Lh2 光ビーム吸収孔
a 試料気体
Fh 流入孔
Dh 吐出孔
S1 第1の焦点
S2 第2の焦点
PD 受光部
M1 楕円ミラー
M2 反射ミラー
M3 放物面ミラー
Le 集光レンズ
RL 散乱光
1 プリアンプ
2 パルス信号
3 波高検出部
4 パルスカウント部
5 粒径別個数表示部