(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-4541(P2017-4541A)
(43)【公開日】2017年1月5日
(54)【発明の名称】切削工具の作動条件を最適化する方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20161209BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20161209BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20161209BHJP
【FI】
G05B19/18 W
B23Q15/00 301H
B23Q17/09 H
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-145323(P2016-145323)
(22)【出願日】2016年7月25日
(62)【分割の表示】特願2012-542393(P2012-542393)の分割
【原出願日】2010年12月8日
(31)【優先権主張番号】0905926
(32)【優先日】2009年12月8日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】512149949
【氏名又は名称】アルト.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141081
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 庸良
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム フロマンタン
【テーマコード(参考)】
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C029CC07
3C269AB02
3C269AB26
3C269BB03
3C269EF02
3C269MN16
3C269MN29
(57)【要約】
【課題】旋削、フライス削り及び穿孔における切削工具の加工条件を最適化すること。
【解決手段】本発明の方法では、デジタル制御装置7の特定のプログラム10aを用いて、テスト用の1つの加工経路で変数の値を連続的に変動させ、該1の加工経路の間に、比切削エネルギーKcに対応する値を計算、導出する機械の主軸モーターのトルク電流Iqの値からデータが生成、記録される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
COM法を適用して、数値制御された機械により、切削工具(6)を使用して部品(4)上の材料を取り除くことによる機械加工作業(フライス削り、旋削、機械加工)の最適化パラメータを取得する方法であって、
前記機械が、前記部品(4)または前記工具(6)を駆動するモーター駆動スピンドル(3)を備え、
それにより、比切削エネルギー(Kc)を表すデータの複数の読取が、前記切削作業の少なくとも1つの重要な変数の、テストごとに異なる付与された値で実施される同じである複数のテストの際に行われ、
前記変数の1つが切削速度(Vc)であり、前記変数の別の1つが進行度(f)であり、
それにより、前記規準に準拠して付与された変数及び記録されたデータを処理することによって、機械加工作業を実施するための、結果を処理することよって得られた前記変数の最適値を含む前記変数の各々の値の範囲が判断される方法において、
各変数について、前記付与された値及びこれらの傾向が、テストとしての1回の加工パスの際に前記変数の前記値の連続的な変動を付与する前記数値制御装置(7)の特定のプログラム(10a)から生じ、かつ、前記記録されたデータは、前記1回の工程の際に、前記機械の前記スピンドルの前記モーターのトルク電流(Iq)から取得された様々な値から構成され、前記値から前記比切削エネルギー(Kc)に対応する値が計算処理によって導出されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記数値制御装置(7)が、前記スピンドルの前記トルク電流(Iq)によって、前記工具の前記進行度及び前記切削速度の前記最適値を判断する特定のソフトウェア(13)(10a)を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法を実施する数値制御された機械。
【請求項3】
前記数値制御装置が、人間―機械インターフェイス(7b)を有し、
前記インターフェイスが、前記プログラムされた機械加工作業のために選択される前記切削速度及び前記進行度の前記最適値を表示及び入力する手段を構成することを特徴とする請求項2に記載の機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切屑を取り除くことによる部品の造形、主に旋削、フライス削り及び穿孔における切削工具の加工条件を最適化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
仏国規格「NF E66-520」の目的は、切削工具の作動条件を判断して、そこから生産における最適の使用範囲を導き出すようにされた工具/工作物の組合せ(COM:Couple Outil Matiere)と称される方法を定義することである。実用上、上記規格の序説において思い出されるように、「今日、生産システムを改良し予め寸法を定めながら、これを直ちに正しく理解することが肝要である」。
【0003】
上記規格によって推奨された方法に従うことが、今日において相当に広く普及されている慣習となっている。非常に概略的には、この規格は、工具及び機械の安定作動点(認定点)を定義した後、この作動点に関して、例えば工具の切削速度Vc及び進行度fなどの少なくとも2つのパラメータを相互に別個に変動させることによって、テストを実施することを規定することが思い出されることになる。テストの際に行われた記録は、変数Vc及びfの関数として機械加工作業によって消費されたエネルギーの変動を判断できるようにする。このエネルギーは、いわゆる比切削エネルギーまたは(旋削の場合では)応力Kcである。このエネルギーの最小値は、パラメータVc及びfの最大値と最小値との間の範囲(この範囲内において機械加工は最適化される)を判断できるようにする。最適データと生成された切屑の監視及び取得した表面条件など他の基準との様々な相関を適用することによって、前記規格に従って上記の作業を改良することができる。
【0004】
規範的方法は、工具の最適作動条件を選択する際に使用される曲線(または、データベース)を生成する際に結果が統計的な値を持つためには多数のテストを実行することが要求される。これらのテストを実行することは、2つの欠点を有する。すなわち、連続生産のために「予め寸法設定される」べき機械及び工具を計装する必要性と最適作動を判断するテストを実施するために必要な時間の消費とである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、機械の計装を排除することによって、さらにCOM法に使用されるパラメータの記録における時間を節約することによって、COM法を単純化する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の主題は、
COM法を適用して、数値制御された機械によって、切削工具を使用して部品上の材料を取り除くことによる機械加工作業の最適化パラメータを取得する方法であって、
前記機械が、前記部品(旋削)または前記工具(フライス削りもしくは穿孔)を駆動するモーター駆動スピンドルを備え、
それにより、比切削エネルギー(Kc)を表すデータの複数の読取が、前記切削作業の少なくとも1つの重要な変数の、テストごとに異なる付与された値で実施される同じである複数のテストの際に行われ、
前記変数の1つが切削速度(Vc)であり、前記変数の別の1つが進行度(f)であり、
それにより、前記規準に準拠して付与された変数及び記録されたデータを処理することによって、機械加工作業を実施するための、結果を処理することによって得られた前記変数の最適値を含む前記変数の各々の値の範囲が判断される方法において、
各変数について、前記付与された値及びこれらの傾向が、テストとしての1回の加工パスにおいて前記変数の前記値の連続的な変動を付与する前記数値制御装置(7)の特定のプログラム(10a)から生じ、かつ、前記記録されたデータは、前記1回の工程の際に、前記機械の前記スピンドルの前記モーターのトルク電流(Iq)から取得された様々な値から構成され、前記値から前記比切削エネルギー(Kc)に対応する値が計算処理によって導出されることを特徴とする方法である。
【0007】
本発明の際立つ利点の1つは、切屑を取り除くことによる機械加工作業の工具/工作物の組合せが生産機械上で直接得られるという点にある。もはや、機械を計装する必要及び規格によって規定された一連のテストを実施するために機械を動かないようにする必要がない。従って、相当の時間が節約され、これに、作業場において使用するには適さないことが多い高価な設備の節約が伴い、従って、テスト専用の計装機械を保護された空間に組み立てる必要がなく(このことは投資の点で無視できない。)、さらに、市場取引に適さずかつ小規模生産において少なからぬ影響を持つ場合があるテスト部品の数の減少を伴う。
【0008】
本発明は、機械の数値制御装置に導入される特定のプログラミングに反映される。このプログラミングは、一方で変数Vc及びfを連続的に変動させ、他方でデータからCOM法に有益な値を導き出す既知の公式に従った計算によって、また人−機械インターフェイスによってデータを処理できるようにする。人−機械インターフェイスは、連続生産を開始させるための2つのテスト工程の後に、機械の設定に有益な結果を(例えば、グラフで)表示できるようにする。
【0009】
さらに、生産サイクルの際に、機械の数値制御装置の、本発明による適切なプログラミングによって、生産の際の加工パスを特徴付ける付与された値及び取得した値の抽出を続行することが可能である。
【0010】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の代表的実施形態の以下の説明から明らかになる。
【0011】
以下の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の方法が実施される旋盤の概略図である。
【
図2】切削速度(Vc)及び進行度(f)変数の関数として比切削エネルギーを示すグラフによって、既知の方法から得られるデータと比較して本発明から得られるデータの妥当性を確認する図である。
【
図3】切削速度(Vc)及び進行度(f)変数の関数として比切削エネルギーを示すグラフによって、既知の方法から得られるデータと比較して本発明から得られるデータの妥当性を確認する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、旋削作業用の数値制御された機械の概略図である。目的を達成するために、歯車モーター1が、伝動装置2によってスピンドル3に結合され、スピンドルは、機械加工される部品4を回転するように駆動する。さらに、機械は往復台5を備える。往復台は、旋削加工される部品の軸線に実質的に平行な方向に沿ってモーターによって移動できる。往復台は、部品4を機械加工するための切削工具6を支える。
【0014】
数値制御装置7は、歯車モーター用電源の調整器8及び往復台5を駆動するモーターの調整器9に作用するプログラム可能なコンピュータユニットであり、機械加工ソフトウェアまたは機械加工プログラム10に従って作用する。通信バス7aは、調整器を数値制御装置に、また数値制御装置を、スピンドルの回転を記録するセンサー11(コーダー)及び往復台の変位のセンサー12につなぐ。調整器8は、各時点において、スピンドルモーターのトルク電流(Iq)の値を計算して、数値制御装置が各時点でこの値を認知できるようにする。
【0015】
本発明に従って、数値制御装置は、加工パスの実行をプログラムできるようにする相補的ソフトウェア10aを有する。工程の際に、COM規格によって列挙される可変的テストパラメータ、すなわち主に切削速度(Vc)及び進行度(f)は連続的に可変な値をとる。また、このソフトウェアは、例えば、規格の意味する範囲内にある認定点を判断するために、テスト工程前に複数の加工パスをプログラムできるようにしてもよい。
【0016】
テストプログラムの実行は、まず、第1の加工パスを含む。この工程では、切削速度(Vc)を、例えば120メートル/秒から380メートル/秒へ変動させる一方で、進行度(f)は、例えば認定値で固定される。モーター1の調整器8によって数値制御装置へ送られたトルク電流(Iq)は、連続的に読み取られて、記録される。
【0017】
このデータから、テストプログラムは、(Vc)の各値に対応する比エネルギー(Kc)を算出できる。
【0018】
その結果は、
図2の曲線14のような曲線である。この曲線は、フィルタリングされている。この曲線は、(Kc)の測定値の、圧電性動力計によって得られた曲線15及び同じく圧電性動力計を用いて従来の方法から得られた分散的測定値16と完全に相関することが分かる。数値のこの範囲において、(Kc)の最小値に最も適する切削速度(Vc)を判断することが、ひいては、切削速度(Vc)であるこの第1の基準に関して機械加工を最適化することができる。
【0019】
第2のテスト加工パスにおいては、決定された範囲内、例えば旋削作業の場合、百分の数ミリメートルから0.35(10分の3.5)ミリメートル/回転までの範囲内で進行度(f)を変動させる。トルク電流(Iq)を読取り、記録することによって、
図3の曲線17を得ることができる。(Kc)の値は(Iq)の処理からもたらされる。
【0020】
既述のように、この曲線は、他の従来の測定手段(圧電性動力計)によって読み取られた点(点18など)付近を通るので、或いは、これらの従来の手段を用いて実行されたテストの結果の連続的記録である曲線19に非常に近いので、求められた値の変動を表すことが認識される。このように、機械加工の最適化された実行のための進行度は即時に選択される。
【0021】
本発明は、単一の加工パスにおいて切削パラメータを連続的に変動させることによって、COM規格の適用に必要なデータを取得できるようにする一方で、同時にこのために機械を計装して多数のテストを続ける必要を避けることが理解されるだろう。
【0022】
このソフトウェアの解決法の妥当性は、これを各生産機械にインストールでき、かつ通常は正確な測定の実行に向いていない作業場環境において作用する点で、優れている。
【0023】
この機械またはその数値制御装置は、既知のように、ディスプレイ画面7bなど人−機械インターフェイスを備える。このインターフェイスは、機械加工作業を最適化するために選択すべき値を数値またはグラフで表示する手段を構成する。また、このインターフェイスは、オペレータが機械によって提案された値の妥当性を立証するための、またはオペレータがより妥当であるとみなす自身が選択した値を入力するためのアクセス手段を備えてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 歯車モーター
2 伝動装置
3 スピンドル
4 部品
5 往復台
6 切削工具
7 数値制御装置
7a 通信バス
7b ディスプレイ画面
8 調整器
9 調整器
10 機械加工プログラム
10a 相補的ソフトウェア
11 センサー
12 センサー
【手続補正書】
【提出日】2016年8月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値制御された機械により、切削工具(6)を使用して部品(4)上の材料を取り除くことによる機械加工作業(フライス削り、旋削、機械加工)のパラメータを決定する方法であって、
前記機械が、前記部品(4)または前記工具(6)を駆動するモーター駆動スピンドル(3)を備え、
単一の加工パスを実行する間に複数の試験が実行され、該複数の試験は、切削速度(Vc)の与えられた1つの値に対して進行度(f)が連続的に変化するように進行度(f)を変化させるテストと、進行度(f)の与えられた1つの値に対して切削速度(Vc)が連続的に変化するように切削速度(Vc)を変化させるテストとを含み、前記切削速度(Vc)と進行度(f)の与えられた1つの値、および、前記連続的に変化する進行度(f)と切削速度(Vc)は、数値制御装置(7)によって与えられ、
前記単一の加工パスを実行する間に前記機械のスピンドルのモータのトルク電流値(Iq)によって得られた異なる値から、前記単一の加工パスを実行する間の比切削エネルギ(kc)が演算され、
演算された比切削エネルギ(Kc)の値を用いて、前記数値制御装置(7)の特定のソフトウェア(13)によって、切削工具(6)の特定の値の進行度(f)と特定の値の切削速度(Vc)とを含む機械加工作業のパラメータを決定ようにした方法。
【請求項2】
前記数値制御装置が、前記切削速度(Vc)および進行度(f)の特定の値を表示する人間―機械インターフェイス(7b)を有する請求項1に記載の方法。
【外国語明細書】