特開2017-45620(P2017-45620A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧 ▶ イーグル工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2017045620-電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置 図000003
  • 特開2017045620-電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置 図000004
  • 特開2017045620-電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置 図000005
  • 特開2017045620-電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置 図000006
  • 特開2017045620-電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置 図000007
  • 特開2017045620-電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置 図000008
  • 特開2017045620-電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-45620(P2017-45620A)
(43)【公開日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20170210BHJP
   H01G 11/16 20130101ALN20170210BHJP
【FI】
   H01M2/34 A
   H01G11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-167205(P2015-167205)
(22)【出願日】2015年8月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】大井手 竜二
(72)【発明者】
【氏名】岩 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】小川 義博
(72)【発明者】
【氏名】光安 淳
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 騎慎
【テーマコード(参考)】
5E078
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA13
5H043CA22
5H043CB04
5H043CB09
5H043DA09
5H043DA20
5H043EA35
5H043EA36
5H043EA60
5H043GA13
5H043GA22
5H043GA24
5H043HA06
5H043HA08E
5H043JA01E
5H043JA02E
5H043JA13E
5H043LA21
(57)【要約】
【課題】 簡易な構造でありながら、変形板の作動圧力の変化を抑制することができる技術を開示する。
【解決手段】 電流遮断装置10は、ケース1内に収容されており、通電板20と、第1変形板30と、絶縁性のホルダ80とを備える。通電板20は、電極組立体3に電気的に接続されている。第1変形板30は、端子7に電気的に接続されている。ホルダ80は、通電板20とケース1の間に配置され、通電板20を支持する。第1変形板30は、電極組立体3と端子7とが導通している状態では通電板20と電気的に接続しており、電極組立体3と端子7とが非導通の状態では通電板20と電気的に非接続である。ホルダ80と通電板20の一方は、凹部79を有している。ホルダ80と通電板20の他方は、凹部79と対応する位置に凸部24を有している。凸部24を凹部79に圧入することにより、通電板20がホルダ80に固定されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に収容されており、前記ケースに収容された電極組立体と、前記ケースに設けられた正極又は負極の端子とを電気的に接続し、前記ケースの内圧が所定値を超えて上昇したときに前記電極組立体と前記端子とを電気的に接続する通電経路を遮断する電流遮断装置であり、
前記電極組立体に電気的に接続されている通電板と、
前記端子に電気的に接続されていると共に、前記通電板に対向して配置される第1変形板と、
前記ケースと前記通電板の間に配置され、前記通電板を支持する絶縁性のホルダと、を備えており、
前記第1変形板は、前記電極組立体と前記端子とが導通している状態では前記通電板と前記通電板の中央部において当接した状態で電気的に接続しており、前記電極組立体と前記端子とが非導通の状態では前記通電板から離間した状態で前記通電板と電気的に非接続であり、
前記ホルダと前記通電板の一方は、凹部を有しており、
前記ホルダと前記通電板の他方は、前記凹部と対応する位置に凸部を有しており、
前記凸部が前記凹部に圧入された状態で、前記通電板が前記ホルダに固定されている、電流遮断装置。
【請求項2】
前記通電板は、前記ホルダよりも引張強度が高い材料で形成されており、
前記ホルダが前記凹部を有しており、前記通電板が前記凸部を有している、請求項1に記載の電流遮断装置。
【請求項3】
前記ホルダは、前記通電板側に第1面を有しており、
前記通電板は、前記ホルダ側に第2面を有しており、
前記通電板が前記ホルダに固定された状態では、前記第1面と前記第2面とが、少なくとも前記凹部と前記凸部の圧入箇所の周囲において当接しており、かつ、前記凸部の圧入方向の先端は、前記凹部の壁面に接触していない、請求項1又は2に記載の電流遮断装置。
【請求項4】
前記通電板に対して前記第1変形板とは反対側に配置されているとともに、前記通電板の中央部に向かって突出している突起が設けられている第2変形板をさらに備えており、
前記第2変形板は、前記電極組立体と前記端子とが導通している状態では前記突起が第1位置に位置して前記通電板と前記第1変形板とが当接している第1状態と、前記電極組立体と前記端子とが非導通の状態では前記突起が前記第1位置から前記通電板側の第2位置に移動して前記通電板と前記第1変形板とを離間させる第2状態とに切り替えられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電流遮断装置を備える蓄電装置。
【請求項6】
前記蓄電装置は、二次電池である請求項5に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の蓄電装置は、ケース内の圧力が上昇したときに、通電経路を遮断する電流遮断装置を有している。電流遮断装置は、ケース内の発電要素と電気的に接続された集電体と、集電体と電極端子とを電気的に接続する感圧部材と、集電体を支持するホルダとを有している。ケース内の圧力が上昇すると、感圧部材が変形して、電極端子と発電要素との電気的接続が遮断される。集電体は、熱カシメ処理によってホルダに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−225500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の蓄電装置では、集電体として用いられる通電板を熱カシメ処理によってホルダに固定するため、通電板をホルダに固定するための部材が不要となり、その構成を簡易にすることができる。しかしながら、通電板とホルダとを熱カシメ処理によって固定すると、熱カシメ処理時の熱が感圧部材(いわゆる変形板)に伝わり、感圧部材の作動圧力が変化する虞がある。本明細書は、簡易な構造でありながら、変形板の作動圧力の変化を抑制することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する電流遮断装置は、ケース内に収容されている。電流遮断装置は、ケースに収容された電極組立体と、ケースに設けられた正極又は負極の端子とを電気的に接続し、ケースの内圧が所定値を超えて上昇したときに電極組立体と端子とを電気的に接続する通電経路を遮断する。電流遮断装置は、通電板と、第1変形板と、絶縁性のホルダとを備える。通電板は、電極組立体に電気的に接続されている。第1変形板は、端子に電気的に接続されていると共に、通電板に対向して配置される。ホルダは、通電板とケースの間に配置され、通電板を支持する。第1変形板は、電極組立体と端子とが導通している状態では通電板と通電板の中央部において当接した状態で電気的に接続しており、電極組立体と端子とが非導通の状態では通電板から離間した状態で通電板と電気的に非接続である。ホルダと通電板の一方は、凹部を有している。ホルダと通電板の他方は、凹部と対応する位置に凸部を有している。凸部が凹部に圧入された状態で、通電板がホルダに固定されている。
【0006】
上記の電流遮断装置では、ホルダと通電板の一方が有する凸部を、ホルダと通電板の他方が有する凹部に圧入することにより、通電板がホルダに固定される。圧入することで通電板をホルダに固定するため、電流遮断装置の構造を簡易なものとすることができる。また、熱カシメ処理が不要となるため、熱により変形板の作動圧力が変化することを抑制することができる。
【0007】
また、本明細書は、上記の電流遮断装置を備えた蓄電装置を開示する。また、上記の蓄電装置は、二次電池であってもよい。この構成によると、電流が端子間を適切に流れることができる。
【0008】
本明細書が開示する技術の詳細、及び、さらなる改良は、発明を実施するための形態、及び、実施例にて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の蓄電装置の縦断面図。
図2図1の二点鎖線部200の部分拡大図。
図3】圧入前の通電板の凸部近傍の部分拡大図。
図4】圧入前のホルダの凹部近傍の部分拡大図。
図5】実施例2の蓄電装置の負極端子近傍の部分拡大図。
図6】実施例3の蓄電装置の負極端子近傍の部分拡大図であり、電流遮断装置が動作していない状態を示す。
図7】実施例3の蓄電装置の負極端子近傍の部分拡大図であり、電流遮断装置が動作した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0011】
(特徴1) 本明細書に開示する電流遮断装置では、通電板が、ホルダよりも引張強度が高い材料で形成されていてもよい。ホルダが凹部を有しており、通電板が凸部を有していてもよい。この構成によると、圧入の際に凸部が破損し難くなり、凸部を凹部に適切に圧入できる。
【0012】
(特徴2) 本明細書に開示する電流遮断装置では、ホルダが、通電板側に第1面を有しており、通電板が、ホルダ側に第2面を有していてもよい。通電板がホルダに固定された状態では、第1面と第2面とが、少なくとも凹部と凸部の圧入箇所の周囲において当接していてもよく、かつ、凸部の圧入方向の先端が、凹部の壁面に接触していなくてもよい。この構成によると、圧入終了のタイミングを、ホルダの第1面と通電板の第2面とが当接したときとすることができる。このため、圧入終了のタイミングを容易に検知できる。また、圧入終了時に凸部の先端が凹部の壁面に接触しないため、圧入荷重が不必要に過大となることを抑制できる。
【0013】
(特徴3) 本明細書に開示する電流遮断装置は、通電板に対して第1変形板とは反対側に配置されているとともに、通電板の中央部に向かって突出している突起が設けられている第2変形板をさらに備えていてもよい。第2変形板は、電極組立体と端子とが導通している状態では突起が第1位置に位置して通電板と第1変形板とが当接している第1状態と、電極組立体と端子とが非導通の状態では突起が第1位置から通電板側の第2位置に移動して通電板と第1変形板とを離間させる第2状態とに切り替えられてもよい。
【実施例1】
【0014】
以下、図1図4を参照して実施例1の蓄電装置100について説明する。蓄電装置100は、二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池である。図1に示すように、蓄電装置100は、ケース1と、ケース1に収容された電極組立体3と、ケース1に固定された端子5、7とを備えている。電極組立体3と端子5、7とは電気的に接続されている。また、蓄電装置100は、電極組立体3と端子7との間に配置された電流遮断装置10を備えている。ケース1の内部は、電解液が注入されており、電極組立体3は、電解液に浸漬している。
【0015】
ケース1は、金属製であり、略直方体形状の箱型部材である。ケース1は、本体111と、本体111に固定された蓋部112とを備えている。蓋部112は、本体111の上部を覆っている。ケース1の蓋部112には、開口部11、13が形成されている。端子5は、開口部11を介してケース1の内外に通じており、端子7は、開口部13を介してケース1の内外に通じている。
【0016】
電極組立体3は、正極シートと、負極シートと、正極シートと負極シートとの間に配置されたセパレータとを備えている。電極組立体3は、複数の正極シート、複数の負極シート及び複数のセパレータが積層されて構成されている。正極シート及び負極シートは、集電部材と、集電部材上に形成されている活物質層とを備えている。集電部材としては、正極シートに用いられるものは例えばアルミ箔であり、負極シートに用いられるものは例えば銅箔である。また、電極組立体3は、正極集電タブ41及び負極集電タブ42を備えている。正極集電タブ41は、正極シートの上端部に形成されている。負極集電タブ42は、負極シートの上端部に形成されている。正極集電タブ41及び負極集電タブ42は、電極組立体3の上方に突出している。正極集電タブ41は正極リード43に固定されている。負極集電タブ42は負極リード44に固定されている。
【0017】
正極リード43は、正極集電タブ41と端子5とに接続されている。正極リード43を介して、正極集電タブ41と端子5とが電気的に接続されている。正極リード43とケース1との間には、絶縁部材72が配置されている。絶縁部材72は、正極リード43とケース1の蓋部112とを絶縁している。
【0018】
負極リード44は、負極集電タブ42と接続端子46とに接続されている。接続端子46は、電流遮断装置10を介して端子7に電気的に接続されている。よって、負極リード44、接続端子46及び電流遮断装置10を介して、負極集電タブ42と端子7とが電気的に接続されている。これにより、電極組立体3と端子7とを接続する通電経路が形成されている。電流遮断装置10は、この通電経路を遮断可能である。電流遮断装置10の構成については後述する。負極リード44とケース1との間には、絶縁部材73が配置されている。絶縁部材73は、負極リード44とケース1とを絶縁している。
【0019】
蓋部112の上面には、樹脂製のガスケット62、63が配置されている。ガスケット62は端子5に固定されている。ガスケット62の上面には、平板状の外部端子60が配置されている。外部端子60には、貫通孔60aが形成されている。貫通孔60aは、上面側に比べ、下面側のサイズが大きくなっている。ガスケット62は、蓋部112と外部端子60を絶縁している。ボルト64が、貫通孔60aを通過している。具体的には、ボルト64の頭部が、貫通孔60a内に収容されている。また、ボルト64の軸部が、貫通孔60aを通って外部端子60の上方に突出している。端子5、外部端子60及びボルト64は、互いに電気的に接続されており、正極端子を構成している。ガスケット63は、端子7に固定されている。ガスケット63の上面には、平板状の外部端子61が配置されている。外部端子61には外部端子60の貫通孔60aと同様の貫通孔が形成されており、貫通孔内にボルト65の頭部が収容され、ボルト65の軸部が貫通孔を通って外部端子61の上方に突出している。ガスケット63、外部端子61及びボルト65の構成は、上述したガスケット62、外部端子60及びボルト64の構成と同様である。端子7、外部端子61及びボルト65は、互いに電気的に接続されており、負極端子を構成している。
【0020】
ここで、図2を参照して端子7について説明する。図2に示すように、端子7は、ケース1にカシメ固定されている。端子7は、円筒部14、基底部15及び固定部16を備えている。円筒部14は開口部13に挿通されている。円筒部14には貫通孔14aが形成されている。基底部15は環状に形成されている。基底部15は円筒部14の下端部に位置しており、ケース1の内部に配置されている。基底部15には、凹所15aが形成されている。凹所15aは貫通孔14aと連通しており、凹所15a内は大気圧に保たれる。固定部16は環状に形成されている。固定部16は円筒部14の上端部に位置しており、ケース1の外部に配置されている。端子7は、固定部16によりケース1の蓋部112に固定されている。
【0021】
ケース1の蓋部112と端子7との間には、シール部材19が配置されている。シール部材19は環状であり、端子7の円筒部14を一巡している。シール部材19は、ケース1の蓋部112の下面及び開口部13の内周面と、端子7の基底部15及び円筒部14に当接しており、これにより、ケース1の内外をシールしている。シール部材19は、絶縁性及び耐電解液性を有する材料(本実施例ではパーフルオロアルコキシアルカン(PFA))によって形成されている。蓋部112と端子7とは、シール部材19によって絶縁されている。なお、シール部材19の材料は、絶縁性及び耐電解液性を有するものであればこれに限られない。
【0022】
次に、電流遮断装置10について説明する。図2に示すように、電流遮断装置10は、変形板30と、通電板20と、ホルダ80を備えている。変形板30は、下方に凸となった円形の導電性のダイアフラムであり、通電板20に対向して配置されている。変形板30は、例えば銅によって形成される。変形板30は、中央部32と外周部31を有している。変形板30の中央部32は通電板20と接続されている。変形板30の外周部31は、端子7の基底部15の外周部と接続されている。即ち、変形板30は端子7に電気的に接続されている。基底部15の凹所15aは変形板30により覆われている。凹所15a内は大気圧に保たれているため、変形板30の上面には大気圧が作用する。なお、変形板30は、「第1変形板」の一例に相当する。
【0023】
通電板20は、導電性を有する金属部材であり、本実施例では銅によって形成されている。通電板20は、平面視において変形板30よりも大径である円形状に形成されており、変形板30の下方に配置されている。通電板20の上面20aは平坦であり、ケース1の蓋部112と略平行である。通電板20には接続端子46が接続されている。即ち、通電板20は、接続端子46及び負極リード44を介して電極組立体3に電気的に接続されている。通電板20は、中央部22と外周部21を有している。外周部21は、通電板20の半径方向において、後述の通気孔20bより外周側に位置している。通電板20の下面には溝部20cが形成されている。溝部20cは中央部22の周囲に形成されており、溝部20cの内側で通電板20の中央部22と変形板30の中央部32とが接続されている。溝部20cが形成された位置における通電板20の機械的強度は、溝部20c以外の位置における通電板20の機械的強度よりも低い。通電板20には通気孔20bが形成されており、変形板30と通電板20との間の空間50が通気孔20bを介してケース1内の空間と連通している。変形板30の外周部31と通電板20の外周部21との間には環状の絶縁部材75が配置されている。なお、通電板20の上面20aは、「第2面」の一例に相当する。
【0024】
図2及び図3に示すように、通電板20は、複数の凸部24を有する。凸部24は略円柱形状であり、通電板20の上面20a(厳密には、平面視した状態で変形板30よりも外周側の上面20a)から、上面20aと略直交する方向に上方に延びている。複数の凸部24は、通電板20の外周に沿って周方向に等間隔(例えば、90°間隔で4箇所)で配置されている。図2に示すように、凸部24は、ホルダ80に形成された凹部79に圧入されている(後述)。通電板20は、凸部24が凹部79に圧入されることでホルダ80に固定され、ホルダ80によって支持されている。
【0025】
図2に示すように、ホルダ80は、ケース1の蓋部112と通電板20の間に配置されている。ホルダ80は、その内部に端子7の基底部15と、変形板30と、絶縁部材75を収容し、これらを保持する。ホルダ80は環状であり、その中心には端子7が挿通されている。ホルダ80は、絶縁性及び耐電解液性を有し、通電板20よりも引張強度が低く、かつ、通電板20よりもヤング率が低い材料(本実施例ではポリフェニレンサルファイド(PPS))によって形成されている。即ち、通電板20は、ホルダ80よりも引張強度が高く、かつ、ヤング率が高い材料によって形成されている。なお、通電板20の材料である銅の引張強度及びヤング率はそれぞれ約220〜275MPa、約110〜128GPaであり、ホルダ80の材料であるPPSの引張強度及びヤング率はそれぞれ約66〜86MPa、約3300〜3800MPaである。なお、ホルダ80の材料は上記に限られず、例えば、ポリプロピレン(PP)等であってもよく、シール部材19よりも高い圧縮強度を有する材料が好ましい。
【0026】
ホルダ80は、上端部77と側部78を有する。上端部77は、ケース1の蓋部112と端子7の基底部15の間に配置されている。上端部77は、蓋部112の下面と基底部15の上面に当接しており、蓋部112と基底部15との間隔を決定するスペーサの役割を果たす。蓋部112と基底部15とは、上端部77によって絶縁されている。側部78は、上端部77の外周縁から下方に延びている。側部78は、その内部に基底部15と変形板30と絶縁部材75を収容する。側部78の下面78aは平坦であり、ケース1の蓋部112と略平行である。なお、側部78の下面78aは、「第1面」の一例に相当する。
【0027】
図2、4に示すように、側部78は、複数の凹部79を有する。凹部79は略円柱形状であり、側部78の下面78aから、下面78aと略直交する方向に上方に延びている。通電板20の複数の凸部24のそれぞれは、複数の凹部79のそれぞれと対応する位置(厳密には、凸部24の軸線が凹部79の軸線と一致する位置)に形成されている。
【0028】
図3、4に示すように、圧入前においては、通電板20の凸部24の径D1は、ホルダ80の凹部79の径D2よりも僅かに大きい(いわゆる締め代)。ここで、径D1とは凸部24を軸方向から平面視したときの凸部24の直径であり、径D2とは凹部79を軸方向から平面視したときの凹部79の直径である。また、凸部24の軸方向の長さL1は、凹部79の軸方向の長さL2よりも僅かに短い。また、凸部24の長さL1は、径D1よりも大きい。
【0029】
上述したように、通電板20はホルダ80よりもヤング率が高い材料により形成されている。このため、凸部24を凹部79に圧入していくと、凹部79の径が比較的に大きく拡張すると共に凸部24の径が比較的に小さく縮小し、凸部24の外周面と凹部79の内周面とが密着して、凹部79と凸部24との接触面には摩擦力が生じる。凸部24は、凸部24と凹部79との間に生じる摩擦力によって凹部79内に固定され、これにより、通電板20がホルダ80に固定される。圧入作業は、通電板20の上面20aがホルダ80の下面78a全体に当接するまで実施される(図2参照)。上述したように、L1<L2であるため、圧入が終了して通電板20がホルダ80に固定された状態では、凸部24の軸方向(圧入方向)の先端面24a(図3参照)は凹部79の底面79a(図4参照)に接触しておらず、両者の間には隙間52(図2参照)が形成されている。この構成によると、圧入終了のタイミングを、通電板20の上面20aとホルダ80の下面78aとが当接したときとすることができる。このため、圧入終了のタイミングを容易に検知できる。また、凸部24の凹部79への圧入が完了したときに、凸部24の先端面24aが凹部79の底面79aに接触しない構成とするため、凸部24を凹部79へ圧入するときの圧入荷重が不必要に過大となることを抑制できる。なお、凸部24の先端面24aは、「凸部の圧入方向の先端」の一例に相当し、凹部79の底面79aは、「凹部の壁面」の一例に相当する。
【0030】
上述した説明から明らかなように、電流遮断装置10は、接続端子46と、通電板20と、変形板30と、端子7とを直列につなぐ通電経路を有している。このため、電極組立体3と端子7は、電流遮断装置10の通電経路を介して電気的に接続されている。
【0031】
ここで、電流遮断装置10の遮断動作について説明する。上述した蓄電装置100においては、変形板30は、通電板20と、通電板20の中央部22において当接した状態で電気的に接続しており、端子5と端子7との間が通電可能な導通状態となっている。蓄電装置100の過充電等によってケース1内の圧力が上昇すると、通気孔20bを介して変形板30の下面に作用する圧力が上昇する。一方、変形板30の上面には大気圧が作用する。このため、ケース1の内圧が上昇して所定値に達すると、変形板30が反転して、上方に凸の状態に変化する。すると、変形板30の中央部32に接続されていた通電板20が、機械的に脆弱な溝部20cを起点に破断し、変形板30が通電板20の残部(通電板20のうち溝部20cの外周側の部分)から離間する。これによって、通電板20と変形板30とを接続する通電経路が遮断され、電極組立体3と端子7とが非導通状態となる。このとき、変形板30は接続端子46から絶縁されると共に、通電板20は端子7から絶縁される。
【0032】
実施例1の電流遮断装置10の作用効果について説明する。上記の電流遮断装置10では、通電板20が有する凸部24を、ホルダ80が有する凹部79に圧入することにより、通電板20がホルダ80に固定される。圧入することで通電板20をホルダ80に固定するため、電流遮断装置10の構造を簡易なものとすることができる。また、通電板20をホルダ80に固定するために熱カシメ処理を行う必要がないため、熱により変形板30の作動圧力が変化することを抑制できる。
【0033】
また、実施例1の電流遮断装置10では、凸部24を有する通電板20が、凹部79を有するホルダ80よりも引張強度が高い材料で形成されている。このため、凸部24を凹部79に圧入する際に凸部24が破損し難くなり、凸部24を凹部79に適切に圧入できる。また、通電板20を引張強度が高い材料で形成することにより、凸部24がより大きな圧入荷重に耐え得るようになるため、凸部24と凹部79の締め代を大きくでき、圧入による固定力を増大させることができる。
【実施例2】
【0034】
次に、図5を参照して実施例2の蓄電装置について説明する。以下では、実施例1と相違する点についてのみ説明し、実施例1と同一の構成についてはその詳細な説明を省略する。その他の実施例でも同様である。
【0035】
図5の二点鎖線部300は、図1の二点鎖線部200に相当する。この蓄電装置では、電流遮断装置110の構成が実施例1の電流遮断装置10と異なっている。この電流遮断装置110では、通電板120が凹部124を有しており、ホルダ180が凸部179を有している。具体的には、通電板120は、中央部22と外周部121を有している。外周部121は、実施例1の外周部21よりも肉厚となっている。通電板120は、複数の凹部124を有する。凹部124は略円柱形状であり、通電板120の上面120aから、上面120aと略直交する方向に下方に延びている。ホルダ180は、上端部77と側部178を有する。側部178は、複数の凸部179を有する。凸部179は略円柱形状であり、側部178の下面178aから、下面178aと略直交する方向に下方に延びている。複数の凸部179のそれぞれは、通電板120の複数の凹部124のそれぞれと対応する位置に形成されている。なお、通電板120の上面120aは、「第2面」の一例に相当し、ホルダ180の下面178aは、「第1面」の一例に相当する。
【0036】
ホルダ180の凸部179の径は、通電板120の凹部124の径よりも僅かに大きい。凸部179の長さは、凹部124の長さよりも僅かに短い。凸部179の長さは、凸部179の径よりも大きい。凸部179は、凸部179と凹部124との接触面に生じる摩擦力によって凹部124内に固定され、これにより、通電板120がホルダ180に固定される。通電板120がホルダ180に固定された状態では、通電板120の上面120aとホルダ180の下面178aとが当接しており、かつ、凸部179の圧入方向の先端面は凹部124の底面に接触しておらず、両者の間には隙間152が形成されている。このため、圧入終了のタイミングを容易に検知できると共に、圧入荷重が不必要に過大となることを抑制できる。
【0037】
この構成によっても、ホルダ180の凸部179を通電板120の凹部124に圧入することで通電板120をホルダ180に固定するため、電流遮断装置110の構造を簡易なものとすることができる。また、熱カシメ処理が不要となるため、熱により変形板30の作動圧力が変化することを抑制できる。
【実施例3】
【0038】
次に、図6及び図7を参照して実施例3の蓄電装置について説明する。図6の二点鎖線部400は、図1の二点鎖線部200に相当する。この蓄電装置では、電流遮断装置210の構成が実施例1の電流遮断装置10と異なっている。電流遮断装置210は、第1変形板230と、通電板220と、ホルダ80と、第2変形板240を備えている。第1変形板230、通電板220及び第2変形板240はいずれも銅によって形成されている。
【0039】
第1変形板230は、実施例1の変形板30と略同一の構成を有する。即ち、第1変形板230は、その外周部が基底部15の外周部と接続されており、基底部15の凹所15aは第1変形板230により覆われている。第1変形板230の上面には大気圧が作用する。
【0040】
通電板220は、第1変形板230の下方に配置されており、中央部222と外周部221を有している。通電板220は、外周部221が実施例1の外周部21よりも肉厚となっている点を除いて、実施例1の通電板20と略同一の構成を有する。即ち、通電板220の上面220aに設けられた凸部224は、ホルダ80の凹部79に圧入されており、これにより、通電板220はホルダ80に固定されている。第1変形板230と通電板220との間の空間250は、通電板220の通気孔220bを介して、通電板220と第2変形板240との間の空間254(後述)と連通している。ホルダ80の内周部の下面78aには、切欠部78bが形成されている。切欠部78bには、シール部材290が配置されている。シール部材290は、ホルダ80と通電板220の両者に当接しており、これにより、ケース1内の空間と、空間250及び空間254とをシールしている。なお、通電板220の上面220aは、「第2面」の一例に相当する。
【0041】
第2変形板240は、通電板220の下方に配置されている。即ち、第2変形板240は、通電板220に対して第1変形板230とは反対側に配置されている。第2変形板240は、その中央部が下方に突出している。第2変形板240の外周部は、通電板220の外周部221に接続されている。第2変形板240の上面中央には、上方に突出する突出部242が設けられている。突出部242の上方には通電板220の中央部222(溝部220cに囲まれた部分)が位置している。第2変形板240の上面には空間254の圧力が作用し、第2変形板240の下面にはケース1内の空間の圧力が作用する。なお、突出部242は、「突起」の一例に相当する。
【0042】
図6に示すように、電流遮断装置210は、接続端子46と、通電板220と、第1変形板230と、端子7とを直列につなぐ通電経路を有している。このため、電極組立体3と端子7は、電流遮断装置210の通電経路を介して電気的に接続されている。
【0043】
ここで、電流遮断装置210の遮断動作について説明する。上述した蓄電装置では端子5と端子7の間が通電可能な状態となっている。ケース1の内圧が上昇すると、第2変形板240の下面に作用する圧力が上昇する。一方、第2変形板240の上面には、ケース1内の空間からシールされた空間254の圧力が作用する。このため、ケース1内の圧力が所定値を超えると、第2変形板240が下方に凸の状態から上方に変位した状態に変化する(図7参照)。このとき、空間254内の空気は通気孔220bを通って空間250に移動し、空間250内の圧力が上昇する。また、第2変形板240が上方に変位すると、第2変形板240の突出部242が通電板220の中央部222に衝突し、通電板220が溝部220cで破断する。これにより、第1変形板230が反転し、第1変形板230及び通電板220の中央部222が上方に変位する(図7参照)。このため、通電板220と第1変形板230を接続する通電経路が遮断され、電極組立体3と端子7との間の導通が遮断される。このとき、第1変形板230は接続端子46から絶縁されると共に、通電板220は端子7から絶縁されている。なお、第2変形板240が下方に凸の状態のときの突出部242の位置が「第1位置」の一例に相当し、第2変形板240が上方に変位した状態のときの突出部242の位置が「第2位置」の一例に相当する。また、通電板220が破断しておらず、中央部222において第1変形板230と当接している状態が「第1状態」の一例に相当し、通電板220が破断し、通電板220と第1変形板230とが電気的に離間した状態が「第2状態」の一例に相当する。
【0044】
この構成によっても、実施例1の蓄電装置100と同様の作用効果を奏することができる。なお、上記の電流遮断装置210は、実施例2の蓄電装置に取付けられてもよい。
【0045】
以上、本明細書が開示する技術の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本明細書が開示する電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置は、上記の実施例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0046】
例えば、凸部24の形状は略円柱形状に限られない。例えば、凸部24は円筒形状であってもよいし、圧入方向に向かって先細りとなるテーパ形状であってもよい。凹部79は、凸部24を圧入固定するのに適した形状とされることが好ましい。また、凸部24及び凹部79の個数は4個に限られず、要求される固定力に応じて3個以下としてもよいし、5個以上としてもよい。
【0047】
また、実施例1、3の構成において、ホルダ80を通電板20よりも引張強度の低い材料で形成する代わりに、ホルダ80の凹部79の壁面に、通電板20よりも引張強度の低い材料をコーティングする構成としてもよい。この場合、コーティングの膜厚は、圧入による変形量よりも厚いことが好ましい。この構成によると、凸部24を破損させずに凹部79に圧入できるという効果に加えて、ホルダ80の材料を、通電板20の引張強度によらずに選択することができる。或いは、通電板20の凸部24の表面に、ホルダ80よりも引張強度の高い材料をコーティングする構成としてもよい。この場合も、コーティングの膜厚は、圧入による変形量よりも厚いことが好ましい。この構成によると、通電板20の材料を、ホルダ80の引張強度によらずに選択することができる。
【0048】
また、実施例1、3の構成において、通電板20がホルダ80よりも引張強度が低い材料によって形成されていてもよい。このとき、凸部24と凹部79の締め代は、十分な固定力を確保でき、かつ、圧入荷重により凸部24が破損することがない大きさに設定されることが好ましい。
【0049】
また、実施例1、3の構成において、ホルダ80を通電板20よりもヤング率の低い材料で形成する代わりに、ホルダ80の凹部79の壁面に、通電板20よりもヤング率の低い材料をコーティングする構成としてもよい。或いは、通電板20の凸部24の表面に、ホルダ80よりもヤング率の高い材料をコーティングする構成としてもよい。いずれの場合も、コーティングの膜厚は、圧入による変形量よりも厚いことが好ましい。
【0050】
また、上記の実施例では、通電板20がホルダ80に固定された状態では、通電板20の上面20aはホルダ80の下面78a全体に当接していたが、この構成に限られない。例えば、通電板20の上面20aは、凸部24と凹部79の圧入箇所の周囲においてホルダ80の下面78aと当接する一方で、圧入箇所から離間した箇所では下面78aと当接していなくてもよい。また、圧入終了のタイミングを検知する別の手段がある場合は、通電板20の上面20aとホルダ80の下面78aは当接していなくてもよい。また、凸部24の長さが凹部79の長さよりも長く、圧入時に通電板の上面20aがホルダ80の下面78aに当接する前に、凸部24の先端面24aが凹部79の底面79aに当接する構成であってもよい。
【0051】
また、電流遮断装置10は、端子5側に設けられてもよいし、端子5と端子7の双方に設けられてもよい。また、上記の実施例では、変形板30が反転することで通電板20との導通が遮断される。しかしながら、変形板30の変形の仕方は反転に限られない。例えば、変形板30の中央部が上方に撓むことで通電板20が溝部20cを起点に破断し、変形板30と通電板20との導通が遮断される構成であってもよい。変形板30は、変形板30と通電板20との導通が遮断されるのであればどのように変形してもよい。第2変形板240についても同様である。
【0052】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0053】
1:ケース
3:電極組立体
5、7:端子
10:電流遮断装置
20:通電板
20a:上面
21:外周部
22:中央部
24:凸部
24a:先端面
30:変形板
78a:下面
79:凹部
79a:底面
80:ホルダ
100:蓄電装置
220:通電板
221:外周部
222:中央部
230:第1変形板
240:第2変形板
242:突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7