【実施例1】
【0011】
図1に、本発明のアタッチメントアンテナの構成例を示す。アタッチメントアンテナ100は、近接アンテナ110、防水部120、取付け手段130、外部アンテナ140、同軸ケーブル150を備える。
図2は、
図1の矢印Aの方向から防水部120、取付け手段130を見た図である。
図3は、無線通信機能を有する装置にアタッチメントアンテナを取り付けて水が充満したマンホール内に入れた状態を示す図である。無線通信機能を有する装置としては、2.4GHz〜2.5GHzや900MHz〜1GHz(例えば、WiFi:ワイヤレスフィデリティー)での無線通信機能を有するデジタルカメラがある。本発明を適用する対象として、WiFiでの通信機能を有するデジタルカメラが最も効果を説明しやすい。また、2.4GHz〜2.5GHzや900MHz〜1GHzは簡易な通信によく利用されている周波数帯であり、周波数の低い電波よりも水による減衰量が大きいので、本発明の効果が得やすい周波数帯である。ただし、無線通信をWiFiに限定するものではなく、装置をデジタルカメラに限定するものでもない。
【0012】
防水部120は、近接アンテナ110の周囲に防水性を有するように誘電材料で形成される。防水部120は、中空のケースでもよいし、内部に誘電材料が充填されていてもよい。なお、内部に誘電材料を充填すれば防水性を確保しやすいという長所がある。そして、後述のシミュレーションで示すように、防水部120の取付け手段130が設けられている面の反対側の面と近接アンテナ110との距離は、使用する電波の空気中での波長の1/25以上(例えば、2.4GHzのときは5mm、920MHzのときは13mm)である。なお、空気中の波長の1/12以上にすれば、さらに結合損失を小さくできるので有効である。また、防水部120を小型にすることも考慮すると、使用する電波が2.4GHz〜2.5GHzのときは距離を20mm以内とすればよい。使用する電波が900MHz〜1GHzであれば、少し大きくなるが距離を50mm以内とすればよい。
【0013】
装置900は、アンテナ910を備えた本体920と防水ケース950と操作棒960で構成されている。本体920が、一般的なデジタルカメラなどに相当する。なお、本体920自体に防水性がある場合は、防水ケース950は不要であり、操作棒960を本体920に直接取り付ければよい。
【0014】
取付け手段130は、無線通信機能を有する装置900と防水部120との間に水が浸入しないように、装置900にアタッチメントアンテナ100を取り付け可能な手段である。例えば、柔軟性を有する厚みのある両面テープを取付け手段130とし、両面テープで装置900と防水部120を張り付けてもよい。または、ゴムのシートとバンドを取付け手段130とし、ゴムのシートを装置900と防水部120の間に配置し、バンドで装置900に防水部120を締め付けてもよい。
【0015】
外部アンテナ140は、防水部120の外に存在する。同軸ケーブル150は、近接アンテナ110と外部アンテナ140とを電気的に接続する。外部アンテナ140は、
図3に示すように操作棒960の一端に取り付けてもよいし、道路上に置いてもよい。
【0016】
<第1のシミュレーション>
図4に第1のシミュレーションでの近接アンテナと防水部と装置の構成を示す。このシミュレーションでは、2.45GHzを使用することを前提としている。防水部120の取付け手段130が設けられている面の反対側の面と近接アンテナ110との距離Dを変化させたときの、装置内のアンテナと近接アンテナとの結合損失を
図5に、装置内のアンテナと近接アンテナのリターンロスを
図6に示す。
図7に、防水部120の取付け手段130が設けられている面の反対側の面と近接アンテナ110との距離が20mmのときと、水がない場合(空気中の場合)の結合損失の違いを示す。
【0017】
シミュレーションでは、近接アンテナと装置内のアンテナは厚さ1mmのFR4(Flame Retardant Type 4)に形成された2.4GHz〜2.5GHz用のアンテナとし、防水部、本体ケース、防水ケースは、厚さ1mmのABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)で形成されているとした。近接アンテナの大きさは41×41mm、装置内のアンテナは50×50mmである。防水部の装置とは反対側の面と近接アンテナとの距離(水の無い部分の距離)をDとしている。寸法の詳細は
図4に示す。なお、水の部分は、厚さ2mmの金属壁に置き換えてシミュレーションした。
【0018】
図5〜7の図中の寸法の情報は、距離Dを示している。シミュレーションの結果では共振周波数が低域側にずれているが、
図5から、距離Dを大きくしていくと結合損失が小さくなっていることが分かる。また、
図7の空気中の場合の結合損失と比較してみると、2.4GHz〜2.5GHzでは距離Dが5mm〜20mmのときに空気中と同等以上の結合損失であることが分かる。また、距離Dが5mm以上であればリターンロスも3dB程度確保できている。したがって、距離Dを5mm以上とすればよい。なお、5mmは2.4GHzの場合の空気中の1/25波長である。
【0019】
なお、水中では水壁に囲まれた範囲に電波が閉じ込められるため、距離Dが20mmの場合などで空気中よりも結合損失が小さい現象が生じていると考えられる。シミュレーションの範囲(距離D=20mmまで)では距離Dを大きくすると結合損失が小さくなっているが、空気中を距離Dが無限大と考えると、距離Dを大きくし続けるといずれは結合損失が大きくなっていくと考えられる。また、距離Dを大きくすると防水部120が大きくなってしまう。したがって、距離Dは5mm〜20mm程度が実用的と考えられる。
【0020】
<第2のシミュレーション>
図8に第2のシミュレーションでの近接アンテナと防水部と装置の構成を示す。このシミュレーションでは、900MHzを使用することを前提としている。防水部120の取付け手段130が設けられている面の反対側の面と近接アンテナ110との距離Dを変化させたときの、装置内のアンテナと近接アンテナとの結合損失を
図9に、装置内のアンテナと近接アンテナのリターンロスを
図10に示す。
図11に、防水部120の取付け手段130が設けられている面の反対側の面と近接アンテナ110との距離が53mmのときと、水がない場合(空気中の場合)の結合損失の違いを示す。
【0021】
シミュレーションでは、近接アンテナと装置内のアンテナは厚さ1mmのFR4(Flame Retardant Type 4)に形成された900MHz用のアンテナとし、防水部、本体ケース、防水ケースは、厚さ1mmのABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)で形成されているとした。近接アンテナの大きさは110×110mm、装置内のアンテナは130×130mmである。防水部の装置とは反対側の面と近接アンテナとの距離(水の無い部分の距離)をDとしている。寸法の詳細は
図8に示す。なお、水の部分は、厚さ2mmの金属壁に置き換えてシミュレーションした。
【0022】
図9〜11の図中の寸法の情報は、距離Dを示している。シミュレーションの結果では共振周波数が低域側にずれているが、
図9から、距離Dを大きくしていくと結合損失が小さくなっていることが分かる。また、
図11の空気中の場合の結合損失と比較してみると、900MHzでは距離Dが13mm〜53mmのときに空気中と同等以上の結合損失であることが分かる。また、距離Dが13mm以上であればリターンロスも2dB程度確保できている。したがって、距離Dを13mm以上とすればよい。なお、13mmは920MHzの場合の空気中の約1/25波長である。また、26mm以上(約1/12波長以上)とすれば、900MHzでのリターンロスを4dB確保できる。
【0023】
なお、水中では水壁に囲まれた範囲に電波が閉じ込められるため、距離Dが53mmの場合などで空気中よりも結合損失が小さい現象が生じていると考えられる。シミュレーションの範囲(距離D=53mmまで)では距離Dを大きくすると結合損失が小さくなっているが、空気中を距離Dが無限大と考えると、距離Dを大きくし続けるといずれは結合損失が大きくなっていくと考えられる。また、距離Dを大きくすると防水部120が大きくなってしまう。したがって、距離Dは13mm〜50mm程度が実用的と考えられる。
【0024】
<効果>
本発明のアタッチメントアンテナによれば、近接アンテナの後ろ側(取付け手段の反対側)に水が浸入しない領域を空気中での波長の1/25以上確保することで、装置内のアンテナと近接アンテナとの結合損失を抑えている。したがって、本発明のアタッチメントアンテナを用いれば、無線通信機能を有する装置を水中に入れた場合でも、その装置と簡易に通信できる。
【0025】
本体920がデジタルカメラの場合であれば、水にある程度の透明度があれば、水をくみ出さなくてもマンホール内部を視覚による点検ができるため、点検作業が容易になる。また、デジタルカメラ以外の測定器の場合でも、水中に測定器を入れた状態で測定結果を得ることができるので、測定作業が容易になる。